ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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怪奇拾遺集
日時: 2011/03/19 18:22
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)

ご機嫌麗しゅう、魔女に御座います。

**前書き**
このスレでは大体二、三話構成のもと怖い話・変な話・不思議な話を綴っていきます。
コメントは大歓迎ですが、荒らし・中傷には呪詛の刑なので悪しからず。喧嘩は両成敗です。
「怖くなかった」というコメントも困ります。「これを読んだら周りで怪奇現象が・・・」自己責任でお願いします。
微弱でしょうが、話によってグロテスクな表現が飛び出すので注意して下さい。
誤字、脱字がありましたら教えてくださいませ。
魔女は主にジャパニーズホラー・都市伝説・怪奇伝説を好みます。
アクション系・脱出系ホラーがお好きな方にはお奨めしません。
***



前書きはきちんと読まれましたね?
全てを条件を了承されたお方はどうぞ・・・

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夜毎通う女③ (怖い話) ( No.52 )
日時: 2011/02/05 17:55
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)

 次の朝、蒲団を被って寝たり覚めたりを繰り返していた長政は、日の光を見て漸く人心地に着き、昨夜の事を思って頭を抱えた。
 この目で見た光景は夢か幻か。通りでは元気一杯の童達が元気よく走りまわっている。きっと、アレは己の小心が見せた幻だったのだろう。

(所詮ガキの戯言、所謂世の流言に惑わされるとは、俺もまだまだ青いな)

 自嘲し、汗にべたつく身体をシャワーで清めた。そうだとすれば、慶次は何事もなくあの部屋で寝ているか次回作でも執筆している事だろう。早速、冷やかしにでも行くかと身なりを整え、彼の家へ向かった。
 しかし、呼び鈴を鳴らしても名前を呼び、戸を叩けども中から一向に反応はなく、それでもどうも立ち去れずにいた長政は、裏口に回って声を掛けた。戸を開けてみる。鍵は開いていた。

「おい、慶次。居るなら返事くらいしねぇか」

 声を掛けながら庭に入って、井戸の前までやってくると長政はそこで足を止め、二、三歩近寄り寝室の中を覗いた途端、あっと小さく叫んで棒立ちになった。

 蚊帳の中には……必死の形相で這い出してそのまま事切れたらしい友人が、ばらばらになった骨の上にうつ伏せに倒れていた。そして、その首筋にがぶりと喰らいついていたのは黒い髑髏。
                                                         (終わり)

侵入者 (怖い話) ( No.53 )
日時: 2011/06/04 10:59
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: 7vvUHEHF)

(体験者:近江長政(オウミナガマサ))





 雨が降ってきた。とはいってもぽつぽつとした小降りレベルだったので、これぐらいなら走らなくても平気だろうと速度を変えずに歩いた。
 買い物帰りだったため、両手が重い。だからと言って下手に手を動かすわけにはいかない。今日の食材のメイン、タマゴが入っているのだ。
 うっかり割ってしまうわけにはいかない。もし割ってしまったら、俺らの今日の夕食は、タマゴの無いオムライス、いや、ただのチキンライスなってしまう。なんとも空しい。それにオレ以上に、同居人は不機嫌になることだろう。それだけは避けたい事態だ。
 タマゴには気を付けながら歩いていると、次第に雨が強くなってきた。ついでに風も。さすがにこれは、せめて早足で歩かなければ。

(こんちくしょう)

 俺は家へと急いだ。先ほどよりも早めた足で。
 水溜まりが出来た場所を踏むと、ばちゃりと泥水が跳ねる。スボンの裾が濡れ、靴もだんだんと水が染みてきた。気色悪い小石や砂の感触に眉を潜めるが、仕方ない。
 こんな日に買い物に出掛ける羽目になったのは、同居人とのじゃんけんに負けたからだ。悔しいが、負けは負け。

「いってらっしゃい」

 潔く買い物に出掛けようとした時にアイツのドヤ顔が、あまりにも憎たらしくて忘れられない。あんちくしょう。次は絶対に勝ってやる。
 家が見えてきた。雨はまだまだ勢いを増して、かなり強い。あと数分で大雨警報が出るのではないか。まさしくバケツをひっくり返したような雨。
 全身びしょ濡れ(なのに身体は温い、不思議だ)で、もう堪らなくなり、タマゴを守りながらついに走った。水溜まりの水が大きく跳ねかえってきたが、そんなのは気にならないくらいにズボンは濡れていた。
 このまま家へ入ると、アイツは怒りそうだ。玄関に入った途端、無言でタオルを投げつけられるに違いない。ああ、雨なんて良いもんじゃねー。

 内心で悪態吐きながら、家へと近づいてきた。その時、信じられない光景を目にした。
 青と白。洗濯物だ。今日干した洗濯物が、まだベランダにあった。

(アイツ、取り込まなかったのか?)

 この雨だ。きっとびしょ濡れになっているだろう。アイツのことだから、おそらく昼寝か音楽を聴いていて気付かないのだ。あのニブチン!



 やっとマンションの入口まで着き、階段を駆け上がった。乾いた廊下の上に、靴の裏の模様が残る。この靴の持ち主はあの部屋だ、ということがばればれだ。どうでもいいが。
 軽く汗を掻きながら、部屋の前へとたどり着き、ポケットから鍵を取り出す。急いでいるので上手くいかない。どちくしょう。
 躊躇しながらも、鍵はがちゃりと言う音で開いた。扉を開け、靴を脱ぎ、部屋に入った。床が濡れるなんてしったこっちゃない。

「——スピカ?」

 なんと驚いたことに、アイツは寝ていなかったのだ。髪を括ったままだった。首にヘッドフォンをぶら下げ、ベランダのガラスにべったりと張り付くようにして、外を見ている。
 ベランダには洗濯物が干されたままだ。俺は持っていた荷物をソフアへおろし、ベランダへと駆ける。

「何やってんだ、テメェっ。洗濯物がびしょ濡れじゃねえか」
「——あ、長政、」

 俺に何か言っているが、今はそれどころではない。鍵を開け、ベランダを開けた。その瞬間、ぶわっ。
 とんでもない勢いで風が入ってきた。今冬だよなと疑ってしまうほどとても冷たく、一瞬後ずさりする。
 その時、洗濯物が顔に当たった。風で飛んだのだ。ギャグ漫画かよ。慌てて洗濯物を次々と取り込む。
 運良く落ちたのは一枚だけで、下に落ちることはなかった。やりとげたように顔の雨を拭う。そしてちらりと同居人を睨んでやる。同居人は、こちらをじっと見ている。

「手伝えよ……つーか、雨が降ったら洗濯物を取り込むのが常識——」
「あーあ」

 俺が喋っている途中に、同居人は声を出した。

「君が開けるから、入って来ちゃったじゃない」

 その時はじめて、スピカが向けている視線が、俺ではないことに気付いた。

Re: 怪奇拾遺集 ( No.54 )
日時: 2010/04/15 21:00
名前: 闇の中の影 ◆xr/5N93ZIY (ID: YDf5ZSPn)

きっと「ナニカ」がいたんだろうな・・

返信 ( No.55 )
日時: 2010/04/16 18:26
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: Kxa936Ty)

いたんですよ、『対象者が開けてくれないと入れない』ものが。

ご無沙汰しております、闇の中の影様。
ご感想有難う御座いました。
花冷えに風邪など召されませぬようご自愛下ませ。

鎮魂歌を・・・①(怖い話) ( No.56 )
日時: 2011/03/02 18:55
名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)

(語り部:クリスティーヌ・カンタータ)



*作中に出てくるオペラ演目は全てオリジナルで、実際には存在しません。
(万が一同じ題名が既に存在するかもしれませんが)





 世の中には、不思議なモノがそこここで存在しています。
 ですから、人ではないものが存在していても、なにもおかしなことではないでしょう。
 そう分かってはいるのですが……あのときばかりはつい取り乱してしまいました。
それでは、私の体験をお話しましょう……。



 ……あれはいつ頃でしたでしょうか……そんなに昔のことではありませんが、私はとある知人宅に晩餐に招かれることになりました。
 その知人とは、芸術に造詣の深いご姉妹、妹さんの幼い娘さんとの三人家族で、とても明朗なご家庭であったことを覚えています。
 ご家族の暖かい歓待を受け、楽しい時間を過ごしさせて頂いた私は、今晩のお礼にと歌を歌うことになりました。
 ミュージカルがお好きなご家庭でしたから、その系統の歌です。
 歌い終わると、知人達はとても喜んでくださいましてね。

「もう一曲、お願いしてもいいかしら」
「ええ、もちろん」

 そう言われ、私自身もう少し歌いたい気持ちもあったものですから、承諾しました。
 そこへ、人見知りらしく、いままで言葉少なだった娘さんがはじめて近づいてきたのです。
 そして、

「“棺へ入れるもの”をおねがいします」

 彼女がリクエストしたのは鎮魂歌の一つです。
 意外な選曲に驚いた私に、知人は優しく娘をいさめます。

「レクイエムはこういうときに歌って頂くものではないわ」
「でも……」

 娘さんは不満そうにうつむきました。
 ふわりと彼女の額にかかるレッドシュ(赤毛)の下にある青い目が、ちらりと部屋の隅に視線を流したように見えたのは、気のせいだったのでしょうか。

 知人(お姉様の方です)は複雑な顔をする姪の頭を撫で、

「“少女は踊る”はどうだろう」
「それはいいわね」

 そんな提案を出してきました。妹さんも微笑んで賛成し、私はそのリクエストに応えたのです。
 気づくと、楽しい時間はあっという間に過ぎていき、夜半が迫っていました。

「是非、泊まっていってくれ」

 そんな知人姉妹のお言葉に甘えて、その日はお世話になることにしたのです。

 ……しかし今から考えれば、あのとき無理にでも帰っておけばよかったと思いますよ。
                                                               (続く)


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