ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 怪奇拾遺集
- 日時: 2011/03/19 18:22
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
ご機嫌麗しゅう、魔女に御座います。
**前書き**
このスレでは大体二、三話構成のもと怖い話・変な話・不思議な話を綴っていきます。
コメントは大歓迎ですが、荒らし・中傷には呪詛の刑なので悪しからず。喧嘩は両成敗です。
「怖くなかった」というコメントも困ります。「これを読んだら周りで怪奇現象が・・・」自己責任でお願いします。
微弱でしょうが、話によってグロテスクな表現が飛び出すので注意して下さい。
誤字、脱字がありましたら教えてくださいませ。
魔女は主にジャパニーズホラー・都市伝説・怪奇伝説を好みます。
アクション系・脱出系ホラーがお好きな方にはお奨めしません。
***
前書きはきちんと読まれましたね?
全てを条件を了承されたお方はどうぞ・・・
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- 違和感 ( No.82 )
- 日時: 2010/07/16 18:00
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
(語り部:山吹桃壺)
少し前、つっても十年くらいは昔になるかな。ちょーどミレニアムとかがどうのこうのって周りでは騒いでいた頃のことだけど。
そういえばあれさあ、まあミレニアムって特別な感じはするけどさ、別にそんなに騒ぐほどのことでもなかったよね。
まあそれはいいや、今話したいのはそこじゃないから。
その年の夏、きっかけは覚えてないんだけど、あたしふとおかしなことに気がついたんだ。
家のね、絶対閉めたはずのドアが、なぜか開いてんのよ。
もちろん最初は気のせいだって思った。
壊れてんのかなとか、閉めるときに力が足りなくてちょっとだけ開いちゃうこととか、あるもんね。そうじゃなくても、しっかり閉めなかったから隙間風で自然に開いたとかね。
そもそもあたしはそこまで几帳面な女じゃないし、ドアがいちいちちゃんと閉まったかどうかなんて確認しない。
でも、入って、しっかり鍵までかけた玄関のドアが開いてたことが何回かあって、それでさすがに妙だなーって思いはじめたんだわ。
それで、最後まで閉まったかどうか、チェックすることにしたわけ。
家とか部屋に出入りしたときに、きちんとドアを閉めて、さらに振り返って確認、ってね。
でもねぇ、やっぱ変なんだ。
絶対に閉めたはずのドアが、確認しようと思って振り向いたときにはもう隙間が開いてんの。
きちんと閉めて、確認する。振り返るまでの間なんてせいぜい数秒ぽっちだろうし、なによりあたしはひとり暮らしで、飼ってるペットつったって金魚よ?
気のせいだなんて強がれたのは最初の頃だけだった。
だって、そのうち家ン中だけじゃなくて、外でも仕事場でも同じことが起きるようになってきちゃったんだもん。
自分の手で閉めたドアが、後ろを見るとうっすら開いてる怖さ、……一度でも体験したらわかるって。しかもときにはドアだけじゃなくてエレベーターとか。
一人で乗りこんで、誰も居ないのを確認して閉めるボタン押すでしょ。ドアが完全に閉まったと思ったらすぐに開いちゃうわけ。誰か滑り込んできたのかなって思ってドアから顔を出しても誰もいない……。
悪戯にしたって、すぐに隠れられそうなトコなんて全然ないんだから、マジ気味悪かったね……。うん、エレベーターも何回かあったな。
一番怖かったのはあれだね、お風呂場に入ってドアを閉めて、正面のシンクで顔洗って……顔上げたら鏡に映ってるドアがうっすら開いてたとき。
暗—い廊下が隙間から誰かがこっちを覗いている感じに見えて……バリ不気味だったけど、どうしようもないからそのままにするしかなかった。
……神社のあの子にでも来てもらえば良かったのかも。
そんなことが起きはじめてから、一ヶ月くらい経ってたと思う。
ある日、あたしは仕事のために(ペットはご近所の後輩に預けて)ホテルに泊まってたんだ。
出先から帰って来たらもうくたくたで、汗もたっくさんかいてたし、すぐにシャワーを浴びることにしたの。え、あたしのシャワーシーン見たいの? ……ウソウソ、冗談です! ったく、短気なんだから……。
シャワールームに入って、ドアを閉めたとたん気がついた。あ、バスジェルとトリートメント出すの忘れた、って。
実はあたしにはこだわりのバスジェルとトリートメントがあってね、旅行先でもそれしか使わないの。
だから、それがないとちょっと困るというわけで急いで引き返そうと後ろを振り向いた。そのときに見えたのよ。
後ろのドアの隙間から、真っ赤な指がドアノブからすっと離れてくとこ。
もちのろん、あたしは誰も部屋につれてきてないし、ホテルの従業員の人は白い手袋してるし大体ンなことするわけないと思わない?
それに、指しか見えなかったけど、染料で染めたみたいな赤色、フツーじゃなかったね。悪魔か鬼の手みたいだった。
確認? できるわけないじゃん。でも、あれが、あたしの後ろについてきてたものなんだって思ったら、情けない話だけど腰が抜けちゃってさぁ……。
とにかく一人でいられないと思ったから、その日は外のバーで一晩明かしたよ。夢であれと心底願ったね。
不思議なことに、それから閉めたドアがひとりでに開くことはなくなった。
なんでなんだろうね……やっぱり、あたしに見つかっちゃったから? だとしたらずいぶん照れ屋さんなお化けだよねぇ。
さ、短いけどこれであたしの話はお—しまい! どうだった? 怖かった?
え、後ろのドア? ……さっきトイレにいってから、ちゃんと閉めたと思うけど。
……そう? 気のせい、じゃない?
(終わり)
- 動画を観て・・・ ( No.83 )
- 日時: 2010/08/01 14:32
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
(語り部:安芸鷹元(あきたかもと))
コレは人づてに聞いた話になんだけどね。
一人の大学生がこのたび一人暮らしをはじめたんだ。
ちょっと古めのアパートだったけど、意外と交通の便が良くて防犯セキリュティもしっかりしてて、狭いとはいえベッドと勉強机と本棚、それにテレビまで置いても生活できるくらいの広さがあったって言うから、願ったり叶ったりだよね。
で、勉強して生活費を稼ぐためにバイトして、サークルに入ったり大学でできた友達と遊んだり、忙しいながらも充実したキャンパスライフを謳歌してたわけだ。
そんな彼女にはある趣味があった。別に変わったことじゃないよ、一日一回は必ず動画投稿サイトを観るってだけ。
そのサイトはとても人気があるから、彼女の友達にも同じ趣味を持つ人は多かった。その子はノートパソコンを持っていてね、それでサイトを観られたから、一人暮らしでパソコンが無いって友達を部屋に招くことが多くなった。
ある夜、高校時代から友達といつものようにそのサイトを観てみると、投稿されたばかりの動画でまだ一回も再生されてないのを見つけた。
投稿コメントはゼロ、タイトルも無題で一体なんの動画かわからないんだけど、気になるし、一番手になりたいってこともあって、一人の友人とその動画を観ることにした。
——その動画はね、一言で言えば、変な動画だった。なにをしたいのかもわからない、本当に意味のわからない映像だったんだ。
変な人がね、身体つきがからしてきっと男かな、ベッドの他には本棚とポスターしかない部屋の中で、奇妙な動きを繰り返すってだけのものなんだ。
全身包帯だらけで猫のお面を被った人間が、無表情で、ひたすらカメラを直視しながらとにかくくねくねくねくね踊ってる。
なにコレ変なのって失笑しながら二人はなんとなくその動画を観ていたんだけど。タイムバーが半分まで来たくらいのときに、友達がふと後ろを振り返ったんだ。
勉強机でパソコンをしてるから、後ろにはベッド以外になにもない。
それでも何回か振り返ってる友達にどうしたのって訊ねてみても、友達は生返事を返すだけ。一緒になって振り返ってみても、ベッドと壁に貼ったポスターが記憶のとおりにあるだけだった。
変だなあって思いながら動画を観ていると、さっきは生返事をした友達が、急に画面の一部を指差して、コレあのポスターと一緒じゃない? って言ってきた。ちょっとの間眺めてみて、彼女も同じ結論に辿り着いた。
ああ、あたしの部屋のポスターと一緒だなって。ちょっとイヤな偶然だよねって笑おうとしたとき、今度は部屋の主が先に気付いた。
彼女は結構マメな性格で、ベッドカバーをちゃんと掛けてあったんだけど、男の後ろにあるベッドのカバーと、自分が今使ってるベッドカバーが全く同じものだったんだ。
それに気付いた瞬間、彼女は一気に恐怖の底へと落ちていった。だって、その男が踊ってる部屋はまさしく彼女の部屋そのものだったんだから。
彼女の異様な反応に、さすがに友達も気付いた。
あんた、こいつと知り合いなのって聞くんだけど、彼女は男に欠片も見覚えなんかなかった。絶対に知らない人だった。
知らない、知らないわ!
——気がつけば、動画はほぼ終わりに近付いていた。
男はふと踊りを止めて、しばらく直立不動でカメラを——こっちを見つめていた。これで終わりかな、なんて思った矢先、ミイラ男はすっと背を向けて移動した。
狭い部屋の中、ベッドに向かって。男は腰をかがめて床まで垂れているベッドカバーをめくりあげた。
そしてお面を外してにこっと笑う。中年で人のよさそうな顔立ちをした男は、当然のようにベッドの下に潜り込み、そのままカバーを元のようにおろして……、そこで動画は急にブラックアウトした。タイムバーは一番右端で止まってる。終了だ。
二人が思わずベッドを振り返るとね、窓なんて開けてないのにカバーの端が風に吹かれたみたいに、ちらちらっと揺れたんだって。
おしまい。
……うん、本当にココで終わりなんだよね。
あ、でも包帯お面男が踊ってる動画は探せばどこかで観られると思うよ。僕も実際観たからね。
- 手鏡① ( No.84 )
- 日時: 2010/08/18 09:38
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
(体験者:一丸豪)
豪がまだ五つだった頃の話です。
ある日、彼の父の(双子の)兄が突然やってきて手鏡を置いていきました。
しばらく海外出張に出ていた伯父。彼は出国前と違ってかなり痩せていました。しかも妙に顔色が悪く、父も自分もひどく驚いたのを覚えています。
「おとうさん、おじさんようすがなんかヘンだったよ」
「まったく、どうしたんだろうねえ……」
しばらく仕事詰めだったからかもなあ。ため息交じりに、父が言いました。
豪は、父が手にしている手鏡が何故か気味の悪いものに見えて、なるべく視界に入れないようにしていました。
父が彼の兄から貰い受けた手鏡は、なかなか上等なものだったようです。母はとても気に入ったようで、今まで使っていた手鏡を豪の姉にやり、父から貰った手鏡を使い始めるほどでした。
その手鏡というのは、お世辞にも新しいものではありませんでしたが、とても洒落た品物でした。今知っている言葉を使うなら、アンティーク、という言葉がぴったりです。
細い蔦と小さくて白い花が飾られているデザインでした。それが何の花なのかは、豪には最後までわかりませんでしたが。
手鏡を譲り受けてから、十日あまり経ったある日。
姉に起こされた豪が居間を通ると、母がうろうろとあちこちを歩き回っていました。なにやら物を探しているようです。
「かあさん、どうしたの。なにさがしてるの?」
「ああ、豪。あんたあの手鏡知らないかい?」
「あのてかがみって、はながほってあるの?」
「そうだよ。見なかった?」
そう言われて、豪は記憶を辿ってみます。見当は付きませんでした。
「ううん。みてない」
「そう。どぉこ行ったんだか」
心底不思議そうに、母は首を傾げました。一応、姉や父とも家中を探し回りましたが、見つかりませんでした。
(続く)
- 手鏡②(怖い話) ( No.85 )
- 日時: 2010/08/19 13:33
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
伯父が青い顔をして家を訪ねきたのは、その日の夕方のことでした。
「一体どうしたんだい、兄さん」
「……これ、お前にやったろ。何で戻ってくるんだ」
そう言って、叔父は鞄から何かを取り出しました。今朝、豪の母が探していた手鏡です。
「何だい、手鏡に足でも生えて兄さんの家へ帰ったとでも言うのかい?」
「それしかないだろう!」
「まあまあ落ち着いてよ。きっと女房がその手鏡を気に入って、出かけ先にも持っていったんだ。そこで落としちまって、拾った誰かが兄さんの知り合いかなんかで、兄さんの家に届けたんだろう」
「……とにかく、これはやるから。嫁さんには、家から持ち出さないよう言っといてくれよな」
そう何度も言う念を押して、伯父はふらふらと帰っていきました。心なしか、先日会った時よりも青い顔をして。
「やれやれ……」
しかしこれで事は治まりませんでした。それからというもの、また件の手鏡が豪の家から消えては(どんなに気をつけていても!)、伯父が血相を変えて訪ねてくるのを何度も何度も繰り返しました。
さすがに何度もこんなことが繰り返されると、気味が悪くなってくるものです。
父はがたがたと震えている兄に、その手鏡を寺へと持っていくことをすすめました。
「住職さんにお経の一つも上げてもらって、供養してもらったほうがいいよ」
「そ、そうだな。それがいいな」
伯父は首を縦に振りました。
『うふふふふ』
縁側でパズルをしていた豪は、ハッと顔を上げました。
低い女の笑い声が聞こえた気がしたからです。きょろきょろと辺りを見回しましたが、買い物に行った母はまだ戻っていないし、姉は塾へ出かけたばかり。生垣の傍を女が通ったわけでもないようです。
(きのせいかな)
「おい、豪」
「なに、父さん」
「父さんはこれからおじさんと寺に行ってくる。お前はどうする?」
「いっしょにいく」
近所の寺に着くと、父と父の友人は住職に手鏡を供養してくれるように頼みました。住職は快く引き受け、二人は本堂へ入っていきます。
豪はといえば、一人本堂を歩き回っていました。近所の子どもたちが良くここを遊び場にしていましたので、会えば一緒に遊ぼうかなと考えていたのです。
(きょうは、だれもいない)
いつもなら少なくとも二、三人はいるのですが、この日に限って子どもは豪一人しか寺の境内にいませんでした。
豪は別に一人遊びが苦になる性質ではないのですが、当てが外れた気がして不満げに口を尖らせます。
「どうしよう」
しばらく考えて、豪は一人で影踏みをすることにしました。
影だけ踏んで境内を一週出来たら勝ちと決めて、彼は手近な影から影へと飛び移っていきました。影だけを踏みながら境内をぐるぐる回っていると、ふと、本堂の辺りが視界に入りました。
住職が唱えるお経を、父と伯父が神妙な顔で聞いています。
「あれ……?」
伯父の真後ろ、痩せた背中を丸くした女の人がいる気がして豪は首を傾げました。
ここへは父と伯父と豪の三人で来ました。ずっと境内で遊んでいた豪は女の人がここへ来たのも見ませんでしたし、気付きませんでした。
(ぼくらがくるまえにきてたひとなのかな)
(まあ、いいや)
だからと言って、そこまで豪は女の人に興味を抱きませんでしたので、影踏みを再開しました。
(続く)
- 手鏡③(怖い話) ( No.86 )
- 日時: 2010/08/22 14:15
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
数十分後。
ちょうど豪が影だけ踏んで境内を一周し終わった時、経は上げ終わったようです。本堂から住職と父と伯父が出てきました。そこに、先ほど豪が見た女の人はいませんでした。
(かえったのかな)
住職に指示されたのか、伯父は父と二人、焚き火の準備をはじめています。
「おとうさん、たきびしてどうするの」
「あの手鏡を燃やすんだよ」
「どうして?」
「あの手鏡がよくないものだからさ」
「ふうん」
そんな会話を交わしながら、父と伯父は焚き火の準備を終えます。住職が火をつけました。
轟々と火が燃え上がっていきます。住職は例の手鏡を焚き火の中に投げ入れますと、再び経を上げ始めました。
一心に祈る二人(特に伯父)の姿に、豪も一緒になって手を合わせました。
『うふふふふ。あはははは』
女性の高い笑い声が響きましたが、少々音量が小さかったので、住職のお経にすぐかき消されてしまいました。
「さあ、帰るぞ」
「うん」
火が燃え尽きると、手鏡は灰になっていました。
父は豪の手をとって、三人は寺を後にしました。伯父の顔色は、寺に来た時よりも少し良くなっていました。
「これで大丈夫だよな」
「ああ。流石に平気だろう」
言葉を交わすうち、叔父の家に着きました。
家の前で別れて豪たちも家へ帰ろうとしたその時、
「う、うわあぁぁぁ!」
「どうした、兄さん!?」
伯父の叫び声に、慌てて父は伯父の家へ駆け込んでいきました。
そして暴れる伯父を落ち着かそうとしているのでしょう、ガタンだのバタンだのやかましい音も聞こえてきます。
叔父はただ、叫び続けています。声を聞きつけて、近所の住人が外へ出てきました。
何故、叫び声をあげているのでしょう。豪は恐る恐る庭から家の中を覗いてみました。
「ああっ!」
豪も思わず声を上げ、伯父が錯乱して叫び続ける理由を知りました。
彼の視線の先には——寺で燃え尽きたのを見届けたはずの手鏡が、玄関のたたきのところにぽつんと……。
後日、伯父は心労が祟り、気が触れてしまったそうです。
七日間ほど意味の分からないことを叫び続け、その八日後、町外れの廃ビルから飛び降りた、と……。
——彼の死体のすぐ傍に、砕け散った手鏡があったそうです。
(続く)
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