ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 怪奇拾遺集
- 日時: 2011/03/19 18:22
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
ご機嫌麗しゅう、魔女に御座います。
**前書き**
このスレでは大体二、三話構成のもと怖い話・変な話・不思議な話を綴っていきます。
コメントは大歓迎ですが、荒らし・中傷には呪詛の刑なので悪しからず。喧嘩は両成敗です。
「怖くなかった」というコメントも困ります。「これを読んだら周りで怪奇現象が・・・」自己責任でお願いします。
微弱でしょうが、話によってグロテスクな表現が飛び出すので注意して下さい。
誤字、脱字がありましたら教えてくださいませ。
魔女は主にジャパニーズホラー・都市伝説・怪奇伝説を好みます。
アクション系・脱出系ホラーがお好きな方にはお奨めしません。
***
前書きはきちんと読まれましたね?
全てを条件を了承されたお方はどうぞ・・・
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- 入りこもうとする・・・③ ( No.127 )
- 日時: 2011/03/13 16:17
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
三十分経ったくらいかな……? 急にぴたっと打撃音が止んで、ドアの外で管理人さんの声がかけられた時、わたし思わず腰が抜けちゃって。
四つんばいで、チェーン付けたまんま覗き穴から管理人さんだって確認して、それから鍵を開けて。玄関に上げてから、
「新聞受けから手が入ってきて怖かった」
そう半泣きで話したら、管理人さん変な顔したんだよね。……新聞受けの入り口って、そんな悪戯ことが出来ないようにわざと細くしてあるんだって。5センチほど……子供の腕だって入らないくらい、細く。だから、人間の腕なんて入れるはずが無いって。
「それに、不審者なんてここに来るまで一回も見なかったわ」
隣の子もね、全然気づかなかったって。……もうここまでくると色々おかしいよね。さすがに気味悪くなって、その日は隣の子に頼んで泊めてもらうことにした。
管理人さんすごく心配してくれて、また何かあったらすぐに連絡してねって言われた。
隣の子とはもう入居した頃から仲良くなってたから、怖さも忘れてきゃっきゃっしてて色んな話して。その時に、変な話、聞いちゃったんだ。
隣の部屋……つまりわたしの部屋なんだけどね。前からすごく人の出入りが激しいらしいの。
「いつも、仲良くなる前に居なくなっちゃうんですよね」
その人は首を傾げてた。どうして居なくなるのかは分からなくって、いつの間にか居なくなって……立地もよくて、オートロックかつ家賃もお手ごろだから直ぐに埋まっちゃうらしいんだけど、やっぱり知らないうちに別の人に代わってて、って。
……その理由、分かる気がしたな。たぶんその部屋の人たち皆、あの腕を見ちゃったんじゃないかなと思う。……新聞受けから出る、あの腕をね。
わたし? 結局その後、直ぐに引っ越したよ。そこでの仕事がひと段落したから、もう部屋は入らないだろうってことで。
あ、でも隣の部屋の子とは今でも仲良しだよ。メールとかチャットでやりとりしてるし、たまにご飯も食べに行くし。
……で、わたしの引っ越した後の部屋ね、結局その後は誰も入らなくって、今は物置として使ってるらしいよ。わたしもその方がいいと思うな。
だって……いつか、腕以外のものが入ってきたら、って考えたら……ねぇ。
(終わり)
- 誘う音① (怖い話) ( No.128 )
- 日時: 2011/03/17 10:22
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: aXtewNOi)
(体験者:助高屋清次郎)
ノックの音がした。
その時清次郎は、姉や弟達と一緒に鍋を囲んでいた。
外は音が聞こえてくるほど強い風が吹いている。暖かい部屋の中で窓越しにそれを聞き流しながら、(今日の買物当番だった守時が買って来た)具材を入れた鍋が煮えるのを待っている最中のことであった。
テレビには体育系のクイズ番組が映し出されており、賑やかな笑い声が響く。
「今、ノックの音がしませんでした?」
「いや? 聞こえなかった」
清次郎が本から顔を上げて尋ねると、長姉の珊瑚は首をかしげてそう返事をした。弟達の方を見るが、彼らも首を横に振る。
(気のせいか)
(それかこの風で何かがぶつかりでもしたのだろう)
彼はそう思い直した。そもそも、玄関にはちゃんと呼び鈴がついているのだ。だからわざわざ扉をノックする必要はないだろう。
しかし、それから少したち、最後に投入したお餅も煮えた頃、再びノックの音がした。そんなに大きな音ではない。
それなのに、外の風やテレビの音にも負けず、確かに清次郎の耳には届いた。
「やっぱりノックの音、しましたよね?」
「いいや」
「そうですか?」
「聞こえませんよ?」
しかし、三人の返事は先ほどの通りだった。
清次郎は首を捻りつつも立ち上がり、玄関の方へと向かった。暖かなこたつを抜け出すのは億劫だったが、どうにも気になったのだ。
自分は人並み外れて聴覚が冴えていると思っているわけではないが、あれは間違いなくノックの音だった。ならば、誰かが来ているのだろう。夕飯時だからといって、それを無視するわけにはいかない。姉弟達に聞こえなかったのが不思議だったが。
(続く)
- 誘う音② ( No.129 )
- 日時: 2011/05/15 15:54
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: 7vvUHEHF)
「どなたですか?」
清次郎は玄関の扉を開ける前に声を掛けた。玄関の扉は磨りガラスの引き戸だ。鍵はかかっているが、磨り硝子なので向こう側に人がいればすぐに分かる。そして今、細長い影が見えていた。
清次郎は思った。やはり、訪問者が来ている。しかし、彼の問いかけに、向こうにいるであろうものは答えない。
怪訝に思っていると、再びノックの音がした。
「……え?」
扉の前の影は微動だにしない。それなのに、ノックの音がした。磨り硝子の扉が振動で微かに揺れる。
(おかしい)
清次郎は訝しみはじめた。唾を飲み込み、急激に乾き始めた喉をしめらせてからもう一度尋ねる。
「どなたですか?」
するとその刹那、ドアがものすごい勢いで叩かれ出した。
ドン、ドン、ドン、ドン、ドンッ!
拳で叩いているような激しいそれに、ドアが振動する。清次郎は声も出ないまま、慌てて部屋へと戻った。
「ね、姉さん! 守時、良雄!」
「どうした、清次郎?」
「清兄さん?」
「何でしょう」
ノックの音は、まだ聞こえている。しかし、姉弟達は全く普段通りに鍋をつついている。
「どうしたって……流石に聞こえるでしょう、扉を叩く音が!」
「いいえ?」
「何も聞こえませんよ?」
「お前の空耳なんじゃないのか?」
何がおかしいのか、テレビの中で観客がドッと笑う。
ノックの音はまだ続いている。いや、これはもはやノックの音とは呼べなかった。渾身の力を込めて、扉を壊そうとしているような音だ。離れていても、振動が伝わってくる気さえする。空耳であるはずがない。
「何を言っているんですか、ほら……」
(聞こえない筈はないだろうに!)
清次郎がもどかしく思いながらふと顔を上げた。すると窓の外には、黒い影が、いくつも折り重なっているのが見えた。そして、その窓が激しく振動で揺れはじめた。
ドン、ドン、ドン、ドン、ドン!
真っ青になった彼を不思議に思ったのか、襖の近くの方に座っていた珊瑚と守時が、同時に振り向いて窓を見た。
「どうした」
それなのに彼らはやはり不思議そうな顔をして、そんなことを聞いてくる。
「何もないぞ? それとも、さっきまでは何かがいたのか?」
身体を強張らせた一つ下の弟を心配するように立ち上がり、珊瑚はゆっくりと窓の側に寄った。清次郎は姉が何をしようとしているのかを悟り、震える唇で何とか止めさせようとする。だが、残念なことにそれは間に合わなかった。
珊瑚の手が鍵にかかり、カチャリと音を立てていとも簡単に外れる。そして。
「ほら、何もいない」
窓を叩く音がぴたりと止んだ。それと同時に、開いた窓から、冷たい空気が流れ込んできた。
冷え冷えとするそれに頬を撫でられながら、清次郎はガタガタと身体が震えるのを止めることが出来なかった。奥歯もがちがちと鳴っている。それは寒いせいではない。
「清次郎? どうしたというんだ?」
珊瑚の問いかけに、清次郎は答えることが出来なかった。
ただ、姉が扉を開けたと同時に聞こえた声だけが、耳に残り、頭の中を何度も旋回していた。
ハイレタハイレタヤットハイレタ——。
男とも女とも、子どもとも老人ともつかない声だった。それっきり、再びノックの音がすることはなかった。
(終わり)
- とっておきの話① (怖い話) ( No.130 )
- 日時: 2011/03/29 09:34
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: 7vvUHEHF)
(語り部:ウィッカ・K・ダウディー)
はいはい! 今度はわたし、ウィッカちゃんの出番ですからねー!
わたしだってですね、こわーいお話をたっくさん知ってますよ!
……あれ? 皆さんどうしたんですか? マリアさんまで顔が真っ青になってて面白いですよー!
……え? なんでわたしがこんなに元気なのかって? ふふふ……それはですね、わたしは魔よけ代わりの猫さんを抱っこしてるのでぜーんぜん怖くないのですよ!
わたしが話すのは、この前ヨイチさんと倉庫のお掃除をしてたときのことです。
……皆さん準備はいいですか? ……ほんとに怖いですよー?
……じゃあお話をはじめます!
(続く)
- とっておきの話② ( No.131 )
- 日時: 2011/03/31 11:40
- 名前: 書物狂乃魔女 ◆O8ZJ72Luss (ID: 7vvUHEHF)
ヨイチさん、東山誉一さんのお家の裏にある倉庫に、皆さん誰か入ったことがありますか? わたしは退屈になるとよく探検に行くんですけど、その倉庫は持ち主に似たのかじめじめしててうす暗くってカビ臭くって……ふあ!
なんなんですか! 別にわたしヨイチさん自体をカビ臭いなんて言ってないですよ! ……とにかく、最っ悪なのです。だから、たまにお掃除をしてあげないと倉庫の中がカビカビになってしまうのですよ。
……そしてある日仕方なく、ヨイチさんのお願いでお掃除のお手伝いをしてあげていました。わたしは心優しいレディなのでこれくらい当然ですよ。
エプロンしてお掃除道具を持って、倉庫のお掃除をはじめました。ヨイチさんは入り口の方から、わたしは奥から二手に分かれて、全部の窓を開けて、ホコリを払ったり、本を出したりしまったり……。
わたし、この日はお友達のナデシコお姉さんが遊びに来た次の日だったのを知ってたので、頑張ればネリキリっていうお菓子を食べられるの分かってたんですよ! だからいっぱいいっぱい頑張ったんです!
ナデシコお姉さんの作られるネリキリはですね! すっごくおいしいんです! やわらかくって甘くっていろんな色や形に変身して……はい? 倉庫がどんなところか……ですか?
今さっき言ったじゃないですか! ちゃんと聞いといてくださいね!
……えーと、暗くて広くてじめじめです。で、どこかの博物館みたいにたくさんの物が置いてあるんですよ。本とか、壷とか、鏡とか……玩具みたいなのもありました。
わたしがお片づけしてた奥の方は、魔法やお薬の本とか、妖精さんの辞書とか、変な染みのついた四角い箱とか……とにかくヨイチさんはヘンテコな人間さんなので、そこにあるのもほんと変なのばっかりなんですよ!
……えっと、なにか大事なお話をしてたと思ったのに、いきなり質問してくるから忘れちゃったじゃねーですか……。まあいいですけど。
それでわたしは、足元や後ろに気をつけながらお掃除を続けましたよ。でもなかなか終わらないんです……。……なぜかお掃除に集中できないんですよ。
……なーんか……もやもやみたいな……そわそわみたいな……。おかしな感じがしたんです。……どこを見ても、いつもと一緒なんですよ? いつもこの倉庫はものすっごく静かで……ちょっとだけ怖いところなんです。
わたしは気になって、めったに行かないんですけど、真っ暗な……さらに奥の奥の方に進んでみました。
奥に行けば行くほど、どこからか見られてるような、そんな気がしたから。でも、わたしのおばあちゃんのお家のお庭で感じるような、優しい感じではないんですよね。まるで怒ってるような……そんな感じでした。
わたしは急に怖くなって、急いで入り口の方へ避難しようとしました。でもそこで悲劇が起こってしまったんです!
……かたーいなにかにつまづいてわたしは転んでしまったんですよ……! ……散らかった狭いところではなにがあるか分からないから、ほんとは走っちゃいけないです。とっても痛かったですよ。
お膝がすっごくジンジンしてわたし、さすがに涙がちょっと出ちゃいました。でも、ちょうどそこに通りかかったワインレッドの服を着たお姉さんに起こしてもらいましたから、ほんのちょっと間だけですけどね!
ええと、怖いお話をしてるんでした。うー……わたし、たくさんの人の前だとお話がうまくまとまらないんですよね……。さあ! ここからがメインですから! 怖いですよー。皆さん、わたしのつまづいたカタマリの正体がなんだか分かりましたか?
カビが生えて、毛むくじゃらになっちゃってましたけど、ちょっと四角っぽかったのできっと食パンです!
キャー! どうですかどうですか? パンってカビちゃうと毛むくじゃらになってしまうんですよ! 怖いですね! 緑と白のモンスターでしたね! それになんで倉庫に食べ物が落ちてたのかも不思議でミステリーですね! ひみゃあああああああ!
きっと怒ったようなこーわい気配がしたのも、そのパンが発してたせいです。ちゃんと食べてあげなかったから、えっと、オヘソを曲げちゃってるんです! ヨイチさんったら罪なヒトですね!
(続き)
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