ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

スキルワールド
日時: 2019/02/24 17:59
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=1029

 どうも、マシュ&マロです

 この小説は『スキル』と呼ばれる能力を持つ者が存在する世界を題材にしたファンタジー作品です。
{自分の文才はかなり低いですが、諦めずに書こうと思っています}



※注意書き※

・オリキャラの募集はリクエスト掲示板でやっています。

・小説への意見や指摘は、リクエスト掲示板にあるスレットへお願いします

・作者は投稿が遅かったりしますので、ご了承下さい

・スキルワールドの説明などはリクエスト掲示板にありますので興味のある方はお読み下さい


それでは小説スタートッ!!



 第一幕『黒奈友間という少年』
 >>64


 第二幕『一人の裏切り者』
 (前半)>>102

Re: スキルワールド ( No.111 )
日時: 2019/04/01 23:43
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 「こ....、此処で良いんだろうか?」


 友間は今、姉である美香に手渡されていたメモを頼りに“ある人物”の部屋の前に来ていた。


 「お姉ちゃんの推薦した人だから少し心配だなぁ.....」


 ーーピーンポーン、.....ガチャッ!


 「んっ....あぁ、美香の弟とやらか。美香の弟だけあって鍛えがいがありそうだ」


 「えーと。これからお世話になりますね」


 出てきたのは青いセーターに茶髪でロングヘアの女性だった、挨拶がてら握手を求めてきたので友間も手を伸ばしてそれに応じたのだが腕が痺れる程の握力で握り返されてしまい思わず小さな呻き声を挙げてしまった。


 「おっと悪い、仕事柄が体を張ったものばかりでな。人に対しての力加減が苦手なんだ」


 「いえいえ、力量を肌で感じられて感激ですよ」


 痛みで涙袋に少量の涙が溜まってきた友間だが、それを無理矢理に作った笑顔で吹き飛ばすと不意に女性の下の方へと目がいき思わず驚いてしまった。


 「うわっ!、刀ッ!?」


 「むっ?、この刀の事か。私の一部みたいなものだから気にしないでいてくれ。それと名はなんて言うんだ?」


 「えっ?、あっ! 黒奈 友間って言います!」


 「そうか、私は沖田 一(おきた はじめ)と言う。ストラングで幹部兼指導係をしている者だ」


 「ところで、沖田さんの部屋ってどんな雰囲気なのか少し見てみたいのですが・・・・・・」


 沖田の背後に見える部屋を少し覗いてみようとした友間だったが、弾かれたかのように沖田がドアを閉めてしまったために部屋の中は見ることが出来なかった。

 すると沖田は焦り気味に友間の肩を掴むと口早にこんな事を発した。


 「え、えーと....つまりだな!、私の部屋を見てしまうとこの先の人生が大変な事になるぞ!」


 「えっ!、人生が大変な事にッ!?」


 「そう.....大変な事になるのだ、私が!」


 「へっ?、沖田さんが?」


 「あっ、えーと...今のは忘れてくれ!」


 「中に何があるんですか?」


 「ほら行くぞ友間!、訓練はもう始まっているのだからな!」


 「あっ!、ちょっと待って下さい沖田さん!?」


 話を断ち切って何処かへと向かって足早に突き進んでいく沖田だったが、後ろから追いかける友間からも確認できるぐらいに耳が真っ赤になっていたのであった。












 「着いたぞ、此処だ! それとメニューの方は手短に強くするよう美香から頼まれている、だから妹の手伝いを借りつつお前に実戦訓練をさせる予定だ」


 「はい、分かりました! ではお願いします!」


 「まずは私の妹との挨拶が済んでからにしよう。おい!、ルカッ!!」


 「もぉーうるさいな〜、私って盲目なんだから耳が生活において大事なんだよ!」


 「お前の場合はスキルで平気だろ?」


 「酷いなぁー、本当に私の姉なのか確かめたくなっちゃうじゃん」


 「もういい、コイツは私の妹の『ルカ』だ。目は見えないがストラング内にある研究室でそこそこの実績を挙げているらしい」


 ルカと呼ばれた人物は沖田とは似ても似つかず桃色の髪はショートヘアで服装は膝までの長さがあるパーカーとパンパンに何かが詰まったリュックを背負っていて研究職をやっている人間には見えない。


 「んっ?、君が噂に聞く友間くんかぁー。うんうん、顔立ちは美香と似ているんだね」


 近寄って早々に友間の顔をあちらこちらと触りまくるルカ、その様子に友間は混乱しつつも沖田に助けを求める目線を送った。


 「はぁー、ルカは初対面の相手には誰とでもそうなんだ。少し悪いのだが付き合ってやってくれ」


 「うんうん、ストラングに入って間もないのに普通の子より体の造りが頑丈で引き締まってるわね」


 「それはルカ、こいつは美香の弟だからな。アイツと同じで普通じゃないのは分かりきっている事だろ?」


 「それもあると思うけど、この子を実験体....いえ!、ストラングの科学力で磨き上げたら凄い事になりそう」


 「おい、こいつはお前の被験体じゃないんだ。下手なまねをすると美香に何て言われるか分からんからな」


 「あら、そうだったわね。お姉ちゃんよく美香に悪戯されてるもんね」


 「う、うるさい! それが怖いわけではないぞ!」


 「えーと.....、うちの姉がいつもすみません」


 「いいんだ、弟のお前に罪はない。だが!、いつの日か美香に一泡を噴かせてやるつもりだ」


 「あれあれ〜?、誰に一泡を噴かせるって〜?」


 「それは決まっている!、あの憎き美香を・・・・・・美香ッ!?」


 「やっほー沖田ちゃん、おまた〜」


 沖田の肩に腕をかけている美香、その美香に対してトラウマがあるのか沖田はパニック気味に言葉を発した。


 「だだだ誰がコイツを呼んだのだッ!?」


 「あっ!、お姉ちゃん。私が呼んじゃった」


 「こらルカァ〜!、お前は悪魔の子か!?」


 「だって〜、美香に遭遇した時のお姉ちゃんの表情っていつも面白いんだもの」


 姉から顔を反らして笑いを堪えているルカ、その様子に沖田は激怒しそうになったが美香に背中をくすぐられて笑い転げてしまった。


 「やっぱり沖田ちゃんは背中が弱いわねぇ」


 「こ、この屈辱は絶対に晴らしてやるぞ美香」


 「はいはい、そう言ってる前に弟のこと死なない程度に鍛えちゃってよね」


 沖田の言葉には知らんぷりな様子の美香はそんな事を言うと両腕を構えて沖田に再度くすぐりを掛けようとしていた。


 「分かった分かった!、直ぐに始めるから止めてくれ美香!」


 「はいはい、じゃあお願いねぇ〜」


 「本当にいつも姉がすいません」


 「い、いや弟は関係ない。そうだ関係ないのだ」


 最早、自分に言い聞かせるように呟いている沖田。その目に少し闇が渦巻いているように感じるのは友間の勘違いであろうか?


 「さあ始めるぞ友間!」


 「あっ!、お願いしますっ!」


 懐にある刀を構えた沖田から距離を取るように友間は後ろの方へ下がると、状況を把握するため周りを見回すと巨大なシェルターの中に自分がいるような感じがした。


 「ここは特殊な部屋でな、どんなに暴れようとストラング基地内には全くの影響がない。だから全力でぶつかりに来い!」


 「スキル『性質<炎>』ッ!、それじゃあ行きますよっ!」


 少し遠くに見える沖田と更に遠くでリュックから銃機らしき物を取り出したルカを視界に納めると、地面を強く蹴って友間は飛び出して行った。












 「・・・・・・・始まったか....」


 遠くで友間の様子を見ていた美香は不意にそんな事を言った。しかし弟である友間を心配しているのか顔が少し曇ったように感じられた。


 「1分.......いや、3秒か」


 そう美香が言った直後、遠くで友間の“胴体”が斬り飛ばされたのが見えて美香は思わず目を背けてしまった。


 「・・・・・堪えろ私、堪えろ」


 そう言っている美香に反して左手は今にも指を鳴らしてやろうと疼いて仕方がなかった。


 「あーもー私の言う事を聞きなさいよ!、じゃなきゃ肘の方から切り落としてやるんだから!」

Re: スキルワールド ( No.112 )
日時: 2019/04/17 22:20
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 死に目を見たなんて言葉では言い表せない、むしろ三度は軽く死んでいるだろう。


 「ハァ、ハァ、ハァ....取り敢えず、勝てそうにはないな」


 友間はそう言うと視線の先にいる刀を構えて立つ沖田と、こちらに銃口を向けているルカを視界におさめると次の一手に息が詰まりそうになった。


 (沖田さんに近付けば胴体を切り裂かれる上にルカさんの援護射撃で体の節々を撃ち抜かれるし、だからと言ってルカさんに向かおうとしても沖田さんが許さないし近付く前に撃ち殺されちゃうしな・・・・・)


 状況を変えようにも二つある内のどちらの壁も高すぎて跳び越えるのは無理に等しい。だが道は一つではない、飛び越えられないのなら壁を壊せば良いのだ。


 「どうした友間!、時間は有限なんだぞ!」


 「分かってます!、本当の意味で死ぬ気で殺らないとこっちが死んじゃいますからね!」


 「良い覚悟だが、覚悟は行動で示すものだというのを忘れるな!」


 十分に距離は取っていたつもりだが、次の瞬間には沖田の持っている刀が友間の肩から斜めにかけて半円を描くように振り落とされ胴体が地面へと落下する。


 「美香の弟だから期待していたが、“まだ”早すぎたようだな」


 「まだ、....です......。」


 「いいや、もう今日は遅いし腹が減った。この続きは明日としよう」


 体が両断されようとも沖田の足を掴んで訴えた友間だったが、それを制止するように言った沖田は刀を自身の懐にある鞘に納めると踵を返して友間に背を向けた。


 (沖田さんとルカさんには勝てるイメージが湧いてこない.....あっ、それとお姉ちゃん)


 「ルカ!、飯を食べに行くぞ!」


 「姉が乱暴でごめんなさいね、実のところを言うと不器用なのよ」


 「ルカッ!!、いらん事を言うな!」


 「はいはい、分かりましたよ姉将軍さま」


 「くっ、その名前はやめてくれ!」


 先程までの緊迫感はなくなっており姉と妹のたわいのない会話をしながら去っていく二人。

 そして地面にまだ倒れていた友間はスキルを解除しつつ立ち上がると遠くで待っている自身の姉の方へと重い足取りで歩いていく。


 「どうだった....かな..?」


 「んー・・・・・、成長途中ってとこかな」


 「やっぱり今のままじゃ、全然ダメなのかな....」


 「まぁ、急がば曲がれって言うんだし焦っても無理な話よ。それに友間は私が絶対に守っちゃうんだから♪」


 「それとお姉ちゃん、これで体を鍛え続けたとしてスキル自体は強くなるの?」


 「ん〜、体を鍛えるというよりかはスキルを使うことで強くなっていくみたいな感じかな?」


 「スキルを使う......、ところで今って何時ぐらい?」


 「ちょっとタンマ。......えーと夜の11時半を回ったところ」


 美香のそんな声が聞こえたからか急に眠気に襲われた友間、疲れが今頃になって追いついてきたのか欠伸を一つすると美香はその様子を見てこんな事を言った。


 「今日はお疲れ、明日もあるから夜更かしはしない事!」


 「分かってるよ、部屋に戻ったら直ぐに眠るから」


 「よし!、私の弟ながら良い子だぞ〜」


 「もー、頭をクシャクシャにするのは恥ずかしいから止めてってば」


 「その反応もまた可愛いぞ友間!」


 「ちょっ!?、今汗かいてるから抱きつかないでよ!」


 「それはそれでグー」


 そんなこんなで仲が良い美香と友間はその後、それぞれの部屋に戻るため途中の道で別れて行った。











 「いてて、明日になって筋肉痛になってなきゃ良いんだけどなぁ....」


 見覚えのある通路を進んでいく友間、そして数歩ほど先に進むと一つの扉の前で立ち止まり右のポケットから部屋の鍵を取り出してドアノブを回した。


 「あっ、おかえりなさい友間さん」


 「ただいま・・・・・・えっ、ジャッキー?」


 「お邪魔してるわよ友間、それと久しぶりね」


 「こ、こん...ばん..わ...。友間...さん」


 部屋の中にはシロだけではなくジャッキーとシセラが座っており、ジャッキーの方はギブスが外れているようだが折れていた方の腕を庇うような仕草をしており完治にはもう暫くかかるようだ。

 そしてシセラの方はいつもの様に車椅子に乗っており手には初めて会った時に持っていた人形が抱えられていた。


 「どうしたの?、こんな夜中に?」


 「どうしたのってアンタねぇ、土神との面会日まで一週間もないんだから。もしもの時の打ち合わせって感じよ」


 「友間さん、『マゴ』とは何なのでしょうか?」


 「ちょっとジャッキー、またシロに変なこと吹き込んだの?」


 「だってシロの反応って可愛いし純粋すぎるんだもの」


 「マゴ?....。まご.....ん〜??」


 「それでジャッキー、土神についての話に戻すけど何か分かった事とかある?」


 「んー・・・・・・。実はね友間....」

Re: スキルワールド ( No.113 )
日時: 2019/04/21 16:55
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 「私の義母......つまりシセラの母親にあたる“あの女”について知っているらしいわ」


 「でも、飲酒したまま交通事故にあって死んだんじゃ・・・・・」


 「分かってるわ友間、あの女は死んだ“はず”なのよ。だけど.....」


 口を固く結ばれたように黙り込んでしまったジャッキー。その眼は次に何を言うべきか言葉を探すように空中を泳いでいた。


 「あ、あの女は今.....生きてるそうよ。しかもノアやドルスと繋がってるらしくて裏世界では有数のブローカーになってるらしいわ」


 「ブローカー......つまり裏の世界では“何か”を売りつけているの?」


 「詳しくは土神に聞いてみなきゃ分からないけど、ノアやドルスが製造してるトリガーを仲介役として売ってるらしいわ」


 「お母....さん..。怖い.....嫌...」


 「・・・・・・私とシセラは土神からの情報を嘘だと信じたい.....けど、どうしようもない胸騒ぎがするの....」


 ジャッキーの肩は震えていた、友間自身はこんな様子のジャッキーを初めて見た。

 すると今まで黙って見ていたシロが口を開いた。


 「なら、土神に会って真偽してみれば良いんじゃないでしょうか? それとも怖いのですか?」


 「・・・・・・ッ!? 行ってやろうじゃないの!、なにが何でも土神から真意を吐き出させてやるわよ!!」


 そう言って勢いよく立ち上がったジャッキー、その様子に友間は横で座っているシロに問いかけてみた。


 「シロ、今のってまさか.....」


 「はい、元気になったようで良かったです」


 「シセラ!、私が何があろうと守ってあげるから!」


 「ちょっと元気になり過ぎたみたいだけどね」


 少し苦笑いをする友間を他所に元に戻ったジャッキーからは赤々としたオーラが溢れ出していた。


 「じゃあ友間、6日後に皆で集合よ! 忘れないでよね?」


 「わ、分かったよジャッキー」


 「それじゃあ私とシセラは失礼するわね、それとシロとの夜を楽しんでね〜」


 「.....ッ!? だからシロとは付き合ってないんだってば!!」


 「友間さん....シロさん..。おやすみなさい.....」


 ジャッキーと共に帰って行くシセラ、友間はシセラにおやすみと帰して扉の鍵を閉めた。


 「ハァー、何で皆付き合ってると思うのかなぁ?」


 もう半ば誤解について諦めかけてきた友間、そして此処で一つの疑問が浮かんできた。


 「ねぇシロ、夕食は食べたの?」


 「夕食は、その・・・・・・」


 するとシロのお腹から部屋に轟くほどの音が鳴り響いてきて夕食を食べてないのが直ぐに分かった。


 「あっ、いえ別にお腹は・・・・・・」


 「分かったよシロ、それにお腹が空いているのはお互い様みたいだしね」


 そう言うと友間の方も恥ずかしそうにしているシロに負けないほどの音が鳴り出し、友間は冷蔵庫に何かあったかと考えつつキッチンへと歩き出した。

Re: スキルワールド ( No.114 )
日時: 2019/04/28 00:02
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 あれから3日が経ちトレーニングは4日目となった....が、しかし何の成果も挙げられずにいた。


 「ハァ...ハァ...ハァ..、あと3日しかないのに」


 「むぅー・・・・、ただ鍛えるよりお前自身のスキルの本質を調べた方が効率が良いのかもしれんな」


 「スキルの本質を調べられるんですか?」


 刀を懐に納めて歩み寄ってくる沖田、そんな沖田に友間は問いかけると呆れたような表情になって返答が返ってきた。


 「此処はストラングだぞ?、ただ悪の組織を壊滅させていくだけの単細胞集団だとでも思ったか?」


 「そこまで思ってはいませんでしたけど、何となく当たっているかもしれません」


 「まったく...、これだけは言っておくがストラングで一人のスキルの本質を調べた上にどう活かすかアドバイスするなど造作もないんだぞ」


 「えっと、じゃあ何処かに行けば良いんでしょうか?」


 「ルカーっ!!、お前が案内してやってくれ」


 少し離れた位置にいるルカに向けて大声を挙げた沖田、すると不平不満が含まれた返事が返ってきた。


 「あーもー大声を出さなきゃ届かないわけじゃないでしょ?、それと友間のスキルを解明するのは良いけど許可を取るのに数日ぐらいかかるわよ?」


 「そんなもの私の権限で無かったものとする!、いいなっ!?」


 「はいはい、あとでボスに怒られても知らないんだから」


 「その時は友間も道ずれにすれば良いことだ!」


 「えっ!?、俺もですか!」


 「よく言うだろう、敵陣には味方を巻き込んで行けとな」


 「沖田さんに任せて大丈夫なのかなぁ」


 「まあ、お姉ちゃんのワガママには嫌でも付き合うしかないから。それじゃあ行きましょうか」












 ここはストラングの特別棟、そして別名“研究所”と呼ばれるストラングの技術力が集められた場所でもある。


 「はいコレ。君専用のIDカードを作ってあげたから無くさないでようにね」


 「ありがとうございます、わざわざ」


 「実は美香がIDを作ってやれって前々から私にうるさかったのよ」


 「姉が失礼しました」


 「まぁ行きましょ。私も私でアナタの体に興味があったのよね」


 眼下に置かれた解剖用カエルを見つめるように狂気めいた視線を一瞬見せたルカ、それに少しの悪寒を感じつつも案内されるがままに友間はルカに付いて行った。








 「あのー、ルカさん?」


 「何かしら友間くん?」


 気づくと台の上に鎖で縛られている友間、その表情には色々な感情の起伏と今の状況への困惑が浮かび上がっていた。

 するとニッコリと微笑んだルカは少しの間を置くと、こんな事を口にした。


 「大丈夫、直ぐに終わるから♪」


 「えっ、ちょっ! ルカさん!? ルカさん!?」








 ぐったりとした様子で椅子に座っている友間、その横でルカは今回の検査結果についての書類に目を通していた。


 「専用の機械に入って調べるだけなら、あんな演出は要らなかった気が・・・・・」


 「一度やってみたかったのよ♪、それに意外と演技は上手かったでしょ私?」


 「まぁそうでしたが......解剖されちゃうかと思いました・・・・・」


 「さーて、君の状態はストラング内では『上の下』に限りなく近い『並の上』という位置付けになるかしら」


 「限りなく、ですか.....絶妙な立ち位置ですね」


 「本当に惜しいのだけど、二つの位置には二つを分ける壁があるの」


 「壁.....ですか..」


 「身近な人で例えるなら、ジャッキーや京八あたりがそうね」


 「なら俺のスキルの本質って何だったんですか?」


 「簡単にまとめると『物理的に存在する物質の性質を吸収することで体の性質を別の性質へと変化させられるスキル』らしいわ」


 「要約すると『吸収した性質になれるスキル』ってところですか?」


 「正解!、やっぱり子供の柔らかい思考って見習わなきゃいけないわね」


 「それと今気づいたのだけれど友間君のスキルには“隠れた効果”があったわ、それも使い方次第では誰にも負けない程に凄いのが」


 「“隠れた効果”?、その効果って何なんですか?」


 少し驚いたような顔をしているルカに対して疑問の表情を浮かべる友間、そして口から零れたように友間の口からはルカに対しての問いが出てきた。


 「それはね・・・・・・・」

Re: スキルワールド ( No.115 )
日時: 2019/04/29 12:36
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 場所は変わって此処は古びた屋敷の一室、そこには窓辺でぼんやりと外を見つめているニコラがおり奥の方には椅子に腰かけながら人体らしきモノを接着させて何かを作っているフリストの姿があった。


 「ここに来てもう数日は経ったわね、おにぃちゃん」


 「そろそろ食事がシーフードというのにも飽きてくる頃だねニコラ」


 「でも此処が良いの、なるべく誰の目にも見つからない方が良いしね」


 「ところでニコラ、少し前に訪ねてきた“奴等”への返答はどうするんだい?」


 「ストラングから脱退した今、私たち二人には後ろ盾が必要よ。もちろん答えはイエスよ」


 「分かった。また来た時にでも返答を返すとするよ」


 「だけど一つ、胸騒ぎがするわ」


 「君の勘はよく当たるからね、“前の体”の時の経験からなのかな?」


 「それは私も分からないわ。だけどそろそろでノア達の計画が実行されるわ、そしたら真っ先に狙われるのはストラングでしょうね」


 「助けるつもりなのかい?」


 「それも分からないわ。こちらに利があるのならその時はその時よ」


 そう窓の外を見ながら言ったニコラ、だが外の景色は暖かい地上ではなく凍てつくような真っ暗な深海であった。


 「ニコラ。君のスキルはとても凄いとしか言いようがないが力の使い方だけは間違いないように、それに・・・・・・」


 「それに私の命に関わるんでしょ......でも私は、自分がどうなろうと...どんなに外道になり下がったとしても今の気持ちを変えるつもりはないわ」


 「分かったよニコラ、好きにおやり」


 少し深く息を吐いたフリスト、すると廊下の奥で拍手が鳴り響いたかと思うと一人の人物が部屋に入ってきた。


 「素晴らしいスピーチだったよニコラ、それに我々『アラクネ』の元へ来てくれるとわね」


 「勘違いしないでよね“カマキリ”、あなた達とは意見が一致したから一時的に手を組んであげるだけよ」


 「本当に愛想のない子だ。まぁしかし意見が合致した今は心強い味方だがね」


 そう言うと感情のない微笑みを浮かべたカマキリ。その顔は以前より少し歪んだような形をしており瞳の奥には友間と京八に対しての表しがたい程の憎悪を抱いているようだった。


 「やるべき事は分かってるねニコラ君?」


 「えぇ、もちろんよカマキリ」


 「「ノアとその一団を一人残らず殲滅する」」


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。