ダーク・ファンタジー小説
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- スキルワールド
- 日時: 2019/02/24 17:59
- 名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=1029
どうも、マシュ&マロです
この小説は『スキル』と呼ばれる能力を持つ者が存在する世界を題材にしたファンタジー作品です。
{自分の文才はかなり低いですが、諦めずに書こうと思っています}
※注意書き※
・オリキャラの募集はリクエスト掲示板でやっています。
・小説への意見や指摘は、リクエスト掲示板にあるスレットへお願いします
・作者は投稿が遅かったりしますので、ご了承下さい
・スキルワールドの説明などはリクエスト掲示板にありますので興味のある方はお読み下さい
それでは小説スタートッ!!
第一幕『黒奈友間という少年』
>>64
第二幕『一人の裏切り者』
(前半)>>102
- Re: スキルワールド ( No.100 )
- 日時: 2019/02/17 23:28
- 名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)
友間の従者であるシロは今、群がってくる異形のゾンビ達を紙でも千切るように両手で裂いては瓦礫の方へと叩きつける。
「チッ! 数が以上に多いな、私を足止めするためか」
掴んでは裂いて、群がってくるゾンビに投げ捨てるの繰り返し。シロは主人の安否を気にかけていたが、今の自分が行けばこのソンビ達を連れて行くことになり主人に迷惑が掛かるのだと悟っていた、だから無尽蔵に湧いてくるソンビ達を殺し尽くす必要があった。
「待ってて下さいね、友間さん」
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「はっくしょんッ!、今頃になって風邪をひくのは嫌だな」
「おい黒奈っ!、危ねぇぞッ!?」
京八に強く肩を掴まれ後ろの方へと投げ飛ばされ、一歩遅れて化け物の拳が降り下ろされた。
先程までの場所にいたら間違いなく潰されていたと思い、不意に悪寒というものが走った。
「ところで黒奈、どうして俺らあんなのと戦ってんだ?」
「えっ、今更!? でも京八って途中まで行方不明だったしね」
「そうなんだよ、伊月に脚をちょっと抉られちまって逃げられはしたんだが、止血するためにスキルで傷口を焼いたら痛みのあまり気絶しちまったんだよな」
「だったら何でここが分かったの?、ここって町から離れてるし木々とかも茂ってるから」
「あー何か、森の中に身を隠してたら見つけた。それで急にデカイ音がしたから見てみたらユウとダンを見かけたんだよ」
そう京八が言った直後、化け物の乱入で話が中断されてしまった。回避していた二人は埃の舞うなかでそれぞれのスキルを使用して化け物に攻撃を食らわす。
「それで屋敷の中に入ろうとしたんだが、今度はキグルミさんが窓から飛び出してきたりしてビックリしちまったぜ」
「こっちの状況を言うとニコラが裏切ったと言えば良いのかな?、だけど色々あってニコラの救出をしてるとこ」
「OK!、状況は何となく分かった。そんで目の前のフリストとか言う奴をぶっ倒せば良いんだな」
京八はそう言うと腰を低くして眼前に見えるフリストへと標的を合わせた。そして一呼吸を置くと自身のスキルで体に電気を流して強化するとフリストに向けて飛び出した。
「若いって恐いものだね、まぁ若さなりの単純さがあるけどね」
フリストは京八の突進を寸前で体を捻って避けると体の回転を活かしたまま通り過ぎていく京八の背に手刀を浴びせた。
「痛てッ!、おいおい俺の背骨ってまだ完治してねぇんだよ!」
「おっと、これは失礼な事をしたね」
4ヵ月前の出来事が脳裏にチラつきつつ身構えた京八、まだ背骨のヒビは完全には完治していない状態で戦うのは勝つという要素も含めれば不可能に近いだろう。
「痛ててて、これは背骨の傷が開いちまったな」
「京八!、大丈夫なのっ!?」
「モチのロンだぜ黒奈、こっからが俺の本領発揮だ!」
「怪我を庇いながら僕と戦うつもりかい?、なら退場をオススメするよ」
「俺からの答えはノーサンキューだぜ!、それにお前を倒したら庇う必要なんてないだろ!」
威勢よく踏み出した京八はまず最初にフェイントで蹴りを放つ、京八は避けられる前に放った脚を一旦退いて床を強く踏みしめると前へ飛び出して右ストレートを打ち出した。
放たれた右腕はフリストの肩を掠めただけだったが拳の通り際にフリストの肩をガシリと掴んで自身へと引き寄せた。そして引き寄せられたフリスト顔には驚きの二文字だけが塗り潰していた。
「歯ァ食いしばれよッ!!」
「ちょ...待っ・・・・・・!」
ーーメキッ!!
フリストの頬に京八の放った左の黄金ストレートが炸裂した、そして京八の発していた電気がフリストに放電して京八とフリストとの間で強烈な火花が散った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふぅー、いっちょ上がりだな」
気絶しているフリストを横目に尻餅をついている京八、主人の意識が途切れたせいか先程まで暴れ狂っていた化け物も糸の切れた操り人形のように屋敷の屋根に突っ伏していた。
「そんで黒奈、これからどうするんだったけか?」
「ニコラを助けに行くつもり、でも敵意剥き出しだったから自信はないかな」
「それはそれで良いんだが、あっちにいる伊月とその姉の方はどうするんだよ?」
「ここで待ってもらうか、後でユウとダンに合流して保護してもらうしかないかな。伊月の方は気絶しちゃってるし」
「そうか、ならニコラを説得したらシロとキグルミさんを探して一件落着だな」
疲れが今頃になって追いついて来たのか京八は苦笑いし自身の背中をさすった、友間の方もスキルが強制的に解除されて体が生身に戻ると床に倒れるような形で休憩をとった。
「シロの方も大丈夫かな?、ちょっと心配」
「シロなら無事よ一応、それよりも自分の心配した方が良いんじゃないの友間?」
その場にいた京八と友間は声のした方へ迷う事なく体を向けて身構えた。視界の先に見えたのは動きのないシロを引き摺りながら現れたニコラの姿だった。
「安心して下さい、少し眠ってもらってるだけですから」
「ニコラ、どうして君が敵になるの?」
「友間、あなたからの質問の意味が分かりませんね?」
「君は少し前まで仲間だった、それなのに今は敵になってる・・・・・・。」
「勘違いしないで下さいよ、私は誰の味方でもありません。むしろ全てに敵対する存在と言っても良いでしょうね」
「じゃあ、どうして君は・・・・・・」
「質問が多いですよ、私はただ取引をしに来たんです」
「もし拒否すると言ったら?」
「あなたの存在ごと私のスキルで消し去ります、これは最後の忠告です。私と取引しなさい」
「・・・・・・分かった、取引の内容は何なの?」
「フリストとシロとの交換、そして私の存在はストラング内部では“殉職”という事にして下さい」
- Re: スキルワールド ( No.101 )
- 日時: 2019/03/30 13:08
- 名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)
「私を殉職という事にして下さい、それが私からの条件です」
「ニコラ、君のスキルなら事実を捻り曲げるなんて簡単なんじゃないの?」
「もちろん、そんな事は簡単なのですが私も私なりにスキルに頼ってばかりは嫌なだけです」
そう言って近寄ってくるニコラ、小柄な体でシロを抱えているニコラに対して少し面食らい気味な友間だったが気を取り戻すと眠っているシロを受け取る。
「それじゃあ殉職の件はお任せします、くれぐれも私を悲しませないで下さいね」
ニコラが小声で何かを呟き直後にフリストの姿が消えた、ニコラは冷えきった眼で友間と京八を見据えると不意に視線を反らした。
どうしてあんな冷たい眼になってしまったのか、友間は少し悲しくなり一人の人物の事を思い出した。
「カマキリ.....」
「えっ、今なんて?」
「あっ! いや!、なんか母親を殺した人の事を思い出しちやってさ」
「あなたの母親を殺したのはカマキリという名前なんですね.....」
「う、うん。それがどうしたの?」
「・・・・・・ある組織があなたの事を狙ってます。....気をつけて下さい」
「あ、ありがとニコラ.....」
「それと勘違いしないで下さいよ、ただ次に会う時まで誰かに殺されていて欲しくないだけなので。あなたを殺すのは私ですから」
「・・・・・・どうして俺に、そんなに怒っているの?」
「さあ、どうしてでしょうか。何故かあなたを見ていると怒りが込み上げてくるんですよ、私の消えた記憶に関係しているのかもしれませんね」
ニコラの言葉に引っ掛かりを覚えて問いかけようとしたが、既にニコラの姿は消えており友間は何処かやるせない気持ちでいっぱいになった。
「まっ黒奈、済んだ事だし引き上げようぜ」
「・・・・・・・うん、そうだね....京八」
「ところで黒奈、背骨が痛くて歩けないから肩貸してくれないか?」
「分かったよ京八、それと今度こそは絶対安静だからね?」
「分かってるよ。っていうか安静にしてないとジャッキーに追加の骨折をプレゼントされるからな」
苦笑いを見せつつ友間に身を任せる京八、そんな京八に対して友間も苦笑を投げ掛けていると屋敷全体に揺れ響くような轟音が鳴り響いてきた。
脳裏にハナテを浮かべている二人だったが、屋敷自体が突如として消えて悲鳴にも似た声を挙げて二人仲良く落ちていった。
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「痛ててて、お〜い黒奈。大丈夫か?」
「う、う〜ん。平気....たぶん」
「だ、大丈夫ですか、お二人とも...?」
「ど、どうも美琴さん、なんとか.....」
友間はそう言ってゆっくり立ち上がる、どうやら屋敷の欠片が残っていた事が幸いして比較的にあまり高い位置からは落ちなかったようだ。
「ほら京八、肩を貸すから立って。それと美琴もよく無事でしたね」
「伊月が助けてくれたの、でも伊月が怪我を負ってしまって.....。」
「こんな程度の怪我、俺にとっちゃ目に止める程もないぜ」
「なに強がってるのよ!?、ほらお姉ちゃんに見せてごらんなさいっ!」
「痛たたたッ!! 姉さん痛いからっ!?、離してよちょっと待って!」
「もう、強がってるからよ伊月。辛いならお姉ちゃんに甘えたって良いのよ」
「・・・・・・姉....さん...」
「こりゃ見物だな黒奈っ!」
「こーら!、姉弟の話なんだから遠くで待ってよう」
「あ〜っ!、せっかく面白くなりそう雰囲気だったのによ〜」
友間に引き摺られてその場から遠ざかっていく京八、それを他所に伊月と美琴は気不味そうに顔を合わせた。
「その....悪かった姉さん、あの....」
「大丈夫、あなたが間違えたって私と伊月が姉弟である事に変わりはないもの♪」
「その....本当に・・・・・・」
気づかぬ内に目から涙が溢れ出てきて泣いていた。何を間違っていたのか伊月の心の中で疑問が浮かんだ、そして更に泣いてしまった。
「大丈夫よ、お姉ちゃんはいつだって・・・・・・」
もらい涙なのか美琴自身も泣いてしまっていた。これで全てが丸く収まったとは到底言えないが二人の平穏だけは戻ってきたのではないだろうか。
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「そんで伊月の奴がよ、俺の脚を掴んでから・・・・・・おっ!、ユウとダンじゃねぇか!? 調子はどうだ?」
木陰で休んでいた友間と京八、そこへユウとダンが疲れた様子でこちちに笑みを投げかけてきた。
「上々だよ、それと大変だったよね『僕』」
「ああ、ゾンビの襲来に屋敷の倒壊。末には屋敷自体が消えちまったからな」
「ごめんダン、ニコラは助けられなかった」
「・・・・・・・・まぁ失敗してからの成功だからな、そんな時もあるよなユウ?」
「そうそう、人生って長いんだしね♪」
その言葉で少し友間の気持ちは落ち着いた。ところで誰かを忘れてはいないだろうか友間?、許嫁とやらを放ったらかしにしてはいないだろうか?
「あれ?・・・・・・・・あっ!、シロ!?」
ふとシロの事を思い出した友間、軽く混乱しつつも瓦礫の積もっている方へ顔を向けると体に無理を言ってそちらの方へ飛び出して行った。
だが友間が瓦礫の中に飛び込もうとした直後、爆発にも似た衝撃波が起こり瓦礫の波が友間の体を飲み込んだ。すると瓦礫の中から白い腕が伸びてきて友間の腕を万力の力で引っ張った。
「大丈夫ですか、友間さん?」
「ゲホッ! ゲホッ!、何とか無事だよシロ」
友間はそう言って苦笑いを見せると瓦礫の中を掻き分けて埋まっていた下半身を救い出した。
【・第二幕(前半)〜完〜・】
- Re: スキルワールド ( No.102 )
- 日時: 2019/02/24 17:54
- 名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)
目次ですっ!
『一人の裏切り者。』
総まとめ(>>65-101)
『あの件の以後。』
>>65、>>66、>>67、>>68
まとめ(>>65-68)
『リハビリ。』
>>69、>>70、>>71
まとめ(>>69-71)
『新たな依頼。』
>>72、>>73、>>74
まとめ(>>72-74)
『パワータイプ。』
>>75、>>76-79
まとめ(>>75-79)
『裏切りの影』
>>80
『現れた刺客。』
>>81、>>82、>>83、>>84、>>85
まとめ(>>81-85)
『裏切り者。』
>>86、>>87、>>88、>>90
まとめ(>>86-90)
『奪還作戦。』
>>91、>>92、>>93
まとめ(>>91-93)
『姉の説教。』
>>94
『異変に気づく。』
>>95、>>96
まとめ(>>95-96)
『フリストの怪物。』
>>97、>>98
まとめ(>>97-98)
『終了。』
>>99、>>100
『戻らない。』
>>101
- Re: スキルワールド ( No.103 )
- 日時: 2019/03/05 23:07
- 名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)
友間は今、ボスの部屋にある椅子に腰掛けていた。どうしてかというとニコラとの約束を果たすために今ここにいるのだ。
「ニコラが死んだ、か......今でも受け入れられない事実だな」
「そうそう!、俺が駆けつけた時には殺されちまってたんだよっ!」
「仲間が死んだにしてはハキハキとものを言うじゃないか京八」
「え?、あっ!.....えーと、あの野郎はゼッテーに俺がぶっ飛ばしてやる!」
ここでボスこと金森は自身の溜め息を挟んで一旦話を止めると京八や友間、そしてその他の面々へ話を続けた。
「はぁー......京八の言動に多少の疑問を抱く部分はあるが証言者がいるという点とニコラ自身の所在が知れないという点で今はこれで納得するしかないだろうな」
「おーニコラっ!、何であんな奴なんかに殺されちまったんだよーーーツ!」
中々の臭い芝居をしている京八をジトッとした目で見ていた金森だったが、シロの方に顔を向き直すとこんな事を言った。
「もう結構だ諸君。それとシロ、君はここを脱走したとして処分を下したいところだが、それを差し引いても友間たちの行動を援助したという点は大きい。よって処罰は無かった事とする」
「どうも、ありがとうございます」
無機質で平坦な声で返事を返したシロ、ここで何か言葉が出かかった金森だったがグッと喉の奥へと飲み込むことにした。
「私からは以上だ。疲れているだろうから各自で休養を取るようにしてくれ」
「「「「「 はいっ! 」」」」」
部屋に全員の声が木霊すると同時に去っていく者たちの背中を見送った、すると疲れたような感じで金森は椅子へと座り直した。
「今年になって死亡者12人目....か..、私のボスとしての無能さを憎たらしく思うよ」
「ほお、なら私の手によって殺されてみてはどうかね?」
突如として部屋の明かりが消えて停電だと気づく、そして暗がりの部屋の壁にもたれている人物にも気づいた。
「久しぶりだな金森」
「お前はノアッ!?、こうも易々と入ってくるとはな!」
意識が指令を出すその前に金森の体は反射的に動き出していた。
ノアに向かっていく金森は暗闇に微かに見えたソファを跳び越えると、そのままの勢いで眼下に見えるノアの仮面に蹴りを放った。
ーーガシッ!!
蹴りが入った時の感触とは異なりノアに足首を掴まれ地面に叩きつけられそうになるが、両手で地面に着地すると態勢を戻すと同時に足首を掴んでいるノアを反対の壁へと飛ばした。
「ガハッ!、・・・・・・・・・・流石はストラングを筆頭するだけの事はあるな」
「以前とは少し違うな。お前、自分自身の体に何かしているのか?」
「私は電脳を支配する者、電脳世界にある武術の情報を脳にインプットするなど簡単な事だからな」
「手の内をどうも、絶対に真似できないという自信があって話したんだろうがな」
薄暗い空間で両者は見合うと少しの間があった後に双方は動き出した。
ノアは後ろに飛び退くと背後の壁を蹴って天高く跳躍する、一方の金森は自身のスキル『金剛』を発動し体が徐々にダイヤへと変わっていくのを尻目に跳んでくるノアへ突っ込んでいく。
「「ハアッ!!」」
ノアの蹴りが金森の顔面を捉えるも骨の組織までダイヤに変化して効くことはなく逆にノアの腹に決まっていた蹴りが唸りを挙げて吹き飛ばしていった。
「グオっ!、この力は尋常ではない」
「ただ情報を取り込んで手に入れただけの力が日々の鍛練に明け暮れている者の力に届くと思うな」
「これは少し情報が足りなかったようだな。今度また情報と同胞たちが集まり次第にお前ら全てを滅ぼしに舞い戻ってくるぞ」
「何度でも来い、今度は骨を砕き割ってみせるだけだ」
「恐いことを言うね君は。それでは失礼させてもらうよ」
床に膝を伏せると吸い込まれるようにノアは消えていき金森自身だけが残った。
そして停電が直った丁度そこへ扉が開いて複数の幹部たちが駆けつけてきて複数の中の一人であった美香が金森に歩み寄って問いかけてきた。
「ここで何があったの?、異様な雰囲気がしたのだけれど」
「・・・・・・・何もなかった」
「ちょっと金森、今は冗談なんて私聞きたくないわ」
「何もなかった、それ以上もそれ以下もない。それと数人の幹部たちを夜は所定の位置に配置させてくれ、下手に見回りを増やすよりずっと信頼できるからな」
そう言って美香に背を向けようとした瞬間、金森は額に美香の放ったデコピンを食らい少しの混乱が生じた。
「やっぱり私、あなたのそういう所が嫌い」
「そういう所というと?」
「あなたが周りを心配させないようにすると私たちが逆に心配になっちゃうのよ、あなたはストラングのボスなんだからピシッと胸を張って私たちを引っ張りなさいよ」
「あぁ分かった美香、今度とも気を付けるよ」
そう額を擦りながら言っていた金森、その顔には美香に向けての微笑みもあったのだった。
場所は変わって友間の住んでいる部屋、共同でシロとも住んでいるのだがそこに誰かが訪ねてきた。
「は〜い、どちら様ですか?」
「やっほー友間、お姉ちゃんが遊びに来てあげたわよ〜!」
「お、お姉ちゃん! ちょっと今は」
「何よ冷たいわね〜、入っちゃうわよ?」
「あっ! ちょっとストップ!」
強引とも受け取れる手法で無理矢理に入っていく美香、玄関を通り過ぎていきリビングにあたる場所に出てみると第一声にシロのこんな声が聞こえてきた。
「友間さん、“ケッコン”とはどのような行為なのてしょうか? それと夫婦の営みという言葉をジャッキーから聞いたのですが何なのでしょうか?」
「ちょっと困ってて今、ジャッキーに変なこと吹き込まれたみたいなんだ」
「それならお姉ちゃんにお任せあれ!、心配しなくても直ぐに終わるから大丈夫」
今来たばかりの姉の言葉に流されるまま床に腰を下ろした友間、少し心配する様子を見せたが姉が相手では諦める事が無難だと思い諦めて口をつぐむ。
美香の様子を見るとシロに耳元でささいて喋っているので内容までは分からないがシロの顔がみるみる熟れた林檎みたいな色になるのが分かってダイレクトに伝えたのだと察する事ができた。
「って事よ、シロちゃん」
「いやちょっと!、シロに何を教えたの!?」
「へ?、何ってディープな大人の世界を教えただけよ?」
ケロッとして無自覚な様子の美香から顔を反らしてシロに顔を向けたところ、シロはあまりの衝撃に処理が間に合わず床に倒れてブツブツと何かを詠唱していた。
「ちょっとお姉ちゃん!?、シロがおかしくなって何か唱えてるんだけども!??」
「あははははっ!、純粋なこの子にはちょっとヘビー過ぎたかしらね?」
「こ、怖い。最早この世に恐れるものなどないと思っていたが夫婦とは身を削ってまでも子が欲しいというものなのか?」
「ヘビーどころか重症だよお姉ちゃん!」
笑い転げている美香を横目に心配そうにシロの背を擦っている友間、するとシロは我に帰ったように体を少し起こしたが精神的ダメージによる疲労は尋常ではなかったようだ。
「大丈夫、シロ?」
「こ、これしきの事で屈する私ではありませんよ友間さん」
「あはははは!、“子作り”」
「キャウっ!?」
「ちょっとシロ!?、本当に大丈夫なの!!?」
またまた先程の状態に戻ってしまったシロの顔はマグマのように赤く高温を帯びていた。
その様子は従者という概念に囚われる事のない普通の少女そのものであった、しかし少女というのは言葉の語弊であり彼女自身は世界に文明ができた時代から生きているのたが......。
「もうお姉ちゃんはシロに変なことを吹き込むのは禁止だからね!」
「はいはい分かったよ友間......ぷっ!、あははははッ!!」
まだ笑いが止まらない様子で腹を抱えている美香、これに微かな殺意を抱いた友間は間違っているのであろうか?
- Re: スキルワールド ( No.104 )
- 日時: 2019/03/09 09:28
- 名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)
『ヘル&パラディソ』
そんな名のBARがこの世にはある、その店の主人は大柄な男でいつも袖無しの革ジャンを皺が一つも見当たらないシャツの上から着けており西部ドラマに出てくるようなガンマンのような印象を抱いてしまう。
更に暗がりの室内でサングラスをかけパイプをふいているせいで初対面で話しかけるのは容易ではないだろう。
「・・・・・・・・・んっ?、お前が来るなんて珍しいな“シデムシ”」
「その呼び名は伏せてもらえないかな、ヘルミネア?」
「いつもながら何重にも皮を被った野郎だな進治」
そう言った店主の目の前には整えられた七三分けにピシリと着こなされたリクルートスーツという如何にもサラリーマンと呼べる男が軽く言葉を交わしつつ入ってきた。
席に座ったのを確認して酒の準備をしようとした店主だったが進治という男はそれを無言のまま手で制すと店主にこんな事を言った。
「今日はいいルギディア、今回は別にお酒をたしなみに来たわけじゃないんだ」
「用事ってわけか、また面倒なのに絡まれるなよ」
そう素っ気なく進治に忠告をした店主ことルギディア、その直後BARの扉が勢いよく開き二人の男が入ってくる事が分かった。
「やぁ進治、会えて嬉しいよ」
「その仮面の奥でそんな事を思っているとは思えないがな」
「久しぶりに会ったにしては連れない言葉だな進治」
その声の主はなにを隠そうノア本人であった、仮面で表情までは分からないが良い顔をしてないのは確かだろう。
「ところでドルス、俺たちに残された時間はどのくらいあったかな?」
「1カ月と少しぐらいじゃねぇか?」
「それぐらいの準備期間があるなら充分だ、君らの力を貸してくれないか進治?」
「いやいや力なんて僕には......、それに僕はただのサラリーマンですよ?」
先程の様子とは打って変わりヘラヘラとした様子で笑っている進治、すると痺れを切らしたようにノアの隣で立っていたドルスが進治をBARのカウンターへ蹴り飛ばすと体が起ききらないままの相手の髪を鷲掴みにしカウンターに押しつけた。
「そもそも話し合いなんて必要ないんだよ!、ここで野郎から組織の場所を聞き出せば・・・・・・・」
ドルスから聞き慣れない“組織”という言葉が出てきた。するとその直後、カウンターの奥で黙って聞いていた店主のルギディアがドルスの手首を万力の力で握り締めてこの事態を制止した。
「お客さん、BARでの喧嘩はタブーだって表示が見えなかったのかい?」
「あ”?、俺と殺るのか野郎」
ドルスの体から禍々しいオーラが出ると同時にサングラスで隠れるルギディアの眼が赤く光っていく。
今にも一触即発なこの状況に割って入るように歩み寄ってきたノアはその場を納めるために周囲に殺気を噴き出した。
「話を戻しても良いかな?、それとも実力行使をもって貴様に死を与えようか?」
「・・・・・・・・争う気はない、俺が戦うかどうかはそちらの動向次第だ」
「良いだろう。ドルスも了承したという事で良いな?」
一瞬、ふと互いに顔を睨みつけ合うも理性という部分が働いてそれぞれの掴んでいたモノを離し、それぞれの立ち位置に戻って行った。
「ところで話は戻すとするが、君の所属するアラクネの力を貸してくれないか?」
「さっきと同じような返事になって悪いが無理だ。マザーはお前らみたいな余所者とは話さないし俺も立場上、正式に所属しているとは言えないからな」
態度を一変してカウンターに体をもたれつつ言う進治、何重にも皮を被っているとは的確な表現だったようでノアは少し長めの溜め息を吐く。
すると電脳世界への扉がノアのすぐ横で展開され、その中から発射されたらしいレーザーがBARの店内を縦横無尽に横切った。
「うっひょー怖い怖い。それに今のは俺に手を出したって事で気を付けなよアンタ」
「それはどうも、心のノートに留めておく事にするよ」
「・・・・・・・・・俺の店を....」
楽観的な感じで笑っている進治と打って変わるようにそんな事を言ったルギディア、すると再びルギディアの眼が赤く灯りはじめ今まで掛けていたサングラスを外した。
「お客さん、店内での迷惑行為と器物破損という事で即刻に死刑を行いたいと思いますが何か遺言は?」
「無いよ。電脳の支配者であるこのノアに死など相応しくないからな」
「分かりました....ゴミ虫ども!」
束の間の無言が生じたあとスキルを発動して飛び出していく両者、ノアの周囲にはルギディアを囲むように電脳の扉が展開されルギディア自身は紅蓮をも越える赤々とした炎が噴火するかのように噴き出していた。
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