ダーク・ファンタジー小説

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スキルワールド
日時: 2019/02/24 17:59
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=1029

 どうも、マシュ&マロです

 この小説は『スキル』と呼ばれる能力を持つ者が存在する世界を題材にしたファンタジー作品です。
{自分の文才はかなり低いですが、諦めずに書こうと思っています}



※注意書き※

・オリキャラの募集はリクエスト掲示板でやっています。

・小説への意見や指摘は、リクエスト掲示板にあるスレットへお願いします

・作者は投稿が遅かったりしますので、ご了承下さい

・スキルワールドの説明などはリクエスト掲示板にありますので興味のある方はお読み下さい


それでは小説スタートッ!!



 第一幕『黒奈友間という少年』
 >>64


 第二幕『一人の裏切り者』
 (前半)>>102

Re: スキルワールド ( No.156 )
日時: 2019/11/17 20:02
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 土神は今、体ごと宙に投げ飛ばされていた。その勢いは部屋の壁を破壊し土神自身も壁の向こうへと消えていく



 「いやー、まいった。信じられない程の力を持っているね君は.....」


 そう言って壁の向こうから姿を現した土神、見る限りは分厚い筋肉のお陰であまりダメージを喰らわずに済んだようだが、土神の額からは冷や汗が垂れていた。


 「ふっ、俺がそんな肥大化させただけの肉に負ける理由がない」


 「確かにその通りだ、こんな取って付けたような筋肉では君に勝てるわけがない」


 そう言って肩から力を抜く土神、と思いきや壁の向こうから部屋の中へ入り直すと肩の位置辺りで両の拳を構える。


 「まだ殺る気があるようだな」


 「ジャッキーを上へと送った今は、これぐらいしか選択肢がなくてね。それに君のスキルは単純な『肉体の強化』ってとこで正解なのかな? まぁ当てた所でどうなる事もないんだけどね」


 そう言って苦笑の表情を浮かべた土神は、ベーシンの方へと飛び出していく。両者の拳は双方の顔面を捉えると拳を交差させクロスカウンターのような状況になる。

 しかし、今の状況で力負けしている土神は響き渡るような殴打の音と共に後方へと軽く吹き飛ばされてしまい、それに耐えようと衝撃によりのけぞってしまった体を何とか立て直して再び構えた。


 「はぁ....はぁ.....はぁ..、今ので鼻血が出たよ。それと今のままだと重みがなく、キレもなく、ただの肉の塊のままだ」


 「まだ来る気か?、いい加減にしろ」


 そう言って溜め息を漏らすベーシン、それに対して土神の足元はどこかふらつき気味で疲労は限界にまで達していた。


 「このまま続けて何の意味がある?、お前の体力は減っていく一方だろうに」


 「ある少年から俺は学べたことが一つある.....。それは絶対に諦めない事だっ!」


 そう言って飛び出していく土神、だがその道中、その肥大化していた体は徐々に縮小していき代わりに石でも刻み込まれたような細く屈強な肉体へと変貌を遂げる。


 「ほう、たかるハエには相応の制裁が必要なようだ......なあ土神とやらッ!」


 向かって来る土神に対してベーシンは頭上からの手刀を振り落とした。その手刀は斜めに弧を描きつつ土神の肩へと打ち込まれる。

 だがベーシンの手は、今回ばかりは先程とは違った感覚を催していた。


 「どうだいベーシン、今回はちょっと違うだろ?」


 「その細い体躯で、よくぞ受け切った!」


 その直後、土神の腹へ鋭いベーシンの蹴りが入れられ土神の“細い体躯”と評された体が吹き飛ばされていく。

 それに対して土神は体を一回転させると身軽すぎるとまで言える動きで床へと着地する。そしてニコリとベーシンへ微笑んでみせた。


 「確かに....先程より随分と小柄になってしまったが、ただ細くなったのではなく言い方を変えれば筋肉を“束ねた”んだ」


 「束ねた?、また不思議なことを言うようになったな」


 「俺はなベーシン、今まではただ力を増強させる事だけに意識を向け過ぎていたんだ、だけど何事にも限界はあり肥大化し過ぎた肉体が動きの邪魔になって結果的に足を引っ張られていたんだ」


 そう言って一旦言葉を止める土神、そして彫刻のように変化した自分の体を見下ろしつつ土神は話を続けた。


「だから筋肉の肥大....ではなく筋肉の質、つまりはより筋肉が高密度になるように体を作り変えたんだ。より小さくなるよう束ね、よりバネのような弾力を求め、より強靭な肉体と化した俺の体は今....自分の限界を越えたッ!!」


 「つまりは無駄を限界まで省き、そして力を一点に集中させた結果がその肉体というわけか.....」


 「あぁそうだ、しかしながら俺自身まだ試験段階でしか成った事がないんで制御するのに苦労してるんだけどね」


 そう言って軽く床の上を跳んだ土神、そして跳び終わると姿勢を低くしタックルでもするかのように両腕を構える。


 「・・・・・・・、受けてたとう」


 そう言ったベーシンは四股を踏むように土神と対峙する。少しの沈黙のあと両者は共に動き出したのであった。

 まず先手を取ったのは土神、急加速からのベーシンの懐へのタックルは相手にぶつかってなおも勢いを増していき部屋という部屋の壁をとてつもない破壊音を撒き散らせながら次々とぶち破っていった。


 「小賢しいハエ風情がッ!!」


 勢いの止まったあとベーシンは土神の胴回りを両手とガシリと掴み取ると何処かも知らぬ部屋の壁へと相手を力任せに投げつけた。


 _______バギ.....ッ!?


 壁と衝突したのは土神の背ではなく足の裏側、そして壁に着地してみせた土神は両足に力を込めて飛び出した。


 「ハエならハエで上等じゃい!!」


 再びベーシンの懐へとタックルを決めた土神の勢いは力が分散されることなくその衝撃をベーシンの体へと叩き込み、二人共々屋敷の壁を直線上にぶち抜いていったのであった。

Re: スキルワールド ( No.157 )
日時: 2019/11/19 22:55
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 ここは屋敷の三階にある部屋、そして下からの次々と起こる衝撃にジャッキーは悪態をついていた。


 「これは少し暴れすぎなんじゃないかしら?、もう少し節度というものがあっても良いような気が・・・・・・」


 「うぅ、この......私の顔を・・・・・」


 ジャッキーによる飛び蹴りが意外と効いたらしく床にうち伏せていたミリーであったが、途端に大声を張り上げてスキルを発動する。


 「『吹き飛べ』ッ!!」


 ______ガッシャァーーンッ!!


 ジャッキーの体は突如として感じた圧力によって部屋の壁まで叩きつけられてしまい、口元から音を立てて血が噴き出していく。


 「さ、最高じゃないの.....とても居心地が良いベッドね」


 「ならもっと堪能していけ!、『追加』ッ!!」


 そんなミリーの怒号と共にジャッキーを壁に押さえ付けている力が更に増していき、どんどんと骨と内蔵から苦痛の叫びが聞こえてくる。


 「な、嘗めんじゃないわよ! こんなもの.....苦でもないわ!」


 「ならば更に『追加』よッ!!」


 ______メキョ.....ッ!!?


 ジャッキーの腹部辺りからそんな肋骨の折れたような音がし、折れた肋骨はそのまま内蔵へと突き刺さり悲鳴を挙げると共にジャッキーの中で何かが音を立てて切れるのが分かった。

 するとジャッキーの意識は途切れ、その代わりに雄叫びを挙げてジャッキーの中に眠る“暴走スキル”が目を覚ましたのだ、つまりは美香の掛けていた制限が破られたしまったのである。


 「アッハハハハハハハハハハッッ!!?」


 そんな狂った笑い声と共に自身を押さえ付ける圧力に抗うようにミリーへと手を伸ばす。


 「面倒なのが目を覚ましちゃったようね、『超追加』ッ!!」


 ジャッキーを押さえつけていた力がその瞬間、何十倍にも増していき壁ごとジャッキーを奥へと吹き飛ばしていく。


 「一先ずは凌げたわね、だけど......」


 「アハハハハハハハハハハハッ!!!」


 直ぐに瓦礫の奥からけたたましい程の笑い声が聞こえてくる。どうやらダメージは然程も負っていないらしく、その証拠に山積みになっていた瓦礫が吹き飛ばされ砂埃の立ち込める中で何者かが立ち上がったのが見えた。


 「本物の化け物ね、あなた」


 「アハハハハハハハハハハハハハッ!!!」


 姿勢を低くし飛び出そうと構えるジャッキー、そして瓦礫の山から襲るべき速度で飛び出していくと狂った笑い声を挙げつつミリーへと迫ってくる。


 「『吹き飛びなさい』ッ!!」


 そうジャッキーの心にある筈の自身への恐怖へと語りかけたつもりが、既に今のジャッキーには恐怖というものはないらしくそのまま突っ込んでくる。

 衝突する直前で何とか避けられたミリーではあったが、回避しきる寸前に脇腹を少々もっていかれたらしく肉の抉れられた部分からは血がポタポタと垂れ落ちていく。


 「う....っ!?、こんな仕返しが待ってるなんて予想もしてなかったわ」


 脇腹を抱えつつ逃げようとするがジャッキーはそれを許さない、逃げるミリーの背後から髪を掴み取るとそれを引っ張り自身へと引き寄せたのだった。


 「ちょっ!?、待ってジャッキー!! 話せば分かるわ! きっと貴方なら分かってくれる筈よ!?」


 「・・・・・??、....アッハハハハハハハハハハハハツッ!!」


 もはや痛みと恐怖で半泣き状態になりながら懇願するようにジャッキーへと語りかけるミリー、しかし目に映るのは圧倒的なまでの絶望感だけである。


 「お願い......助けて....」


 そんなミリーの声も虚しく、ジャッキーが相手の顔面を粉砕してみせようと高らかに拳を振り上げる。


 すると______。


 「待って!、待ってお姉ちゃん!」


 シセラが二人の間に割って入ろうと走り寄ってくる、しかし入ろうとする寸前に床に足を滑らせ転んでしまう。それに加えて両腕の方は使いものになら状況、勢いよく転んでしまい痛みに対し微かな呻き声を漏らす。


 「待って......」


 何とか立ち上がりジャッキーへと歩み寄るシセラ、その表情はジャッキーがこれから行おうとする事への拒絶の意が込もっていた。


 「どうして......こんな私を・・・・・」


 「あ、あなたが.....仮にも人の親だから」


 シセラはそう言うものの、目の前のジャッキーと対峙している状況で足が震えており立っているのがやっとの様に見受けられた。


 「仮にも....、“私達”の母親だから」


 「あなたは優しいのね、シセラ....。そこの部分は誰に似たのやら」


 がくりと項垂れた様子のミリー、その表情には絶望からの解放と色々なものへの疲れが滲み出ていた。


 「たぶんお父さんに似たんだと.....思う....だから、お姉ちゃんも...優しい」


 そう言って姉を見つめていたシセラの頭にジャッキーの手が優しく置かれる。そしてジャッキーのこんな声が聞こえてきた。


 「そういう事よ、今回は許してあげるけど......次はないわ」


 そう言って苦笑気味に笑うジャッキー、今回は妹に免じてという事なのだろう。


 「それにまだ、制限が完全に破られてなくて良かったわ....。お陰で何とか理性は保てたわけだし、それに・・・・・・」


 「・・・・・・ねぇジャッキー、貴方から見て私はどう映っているのかしら.....最低?、それとも最悪かしら?」


 「その両方よ! それは今までも同じだし、これからの未来永劫変わったりしないわ」


 「お姉ちゃん......」


 「だけれど、シセラに危害を加えないのであればどう接していようと文句は言わないわ」


 「えっ?、それはどういう事?」


 「だから!、別に会いに来ようが何しようが危険じゃないなら良いのよ! ただ、さっきも言った通り次はないから」


 そう言うと頬を掻いて視線を反らしたジャッキー、義母を認める気はないが緩めるべきところは緩めるといった事なのだろう。

 しかし、そんな束の間の時もシセラの悲鳴とジャッキーの顔にかかった生温かい液体のせいで断ち切られてしまう。


 「・・・・・・ナッ!?」


 ミリーの頭部が首から上を綺麗に切り落とされているのが目に映る、そしてジャッキーが自身の頬に付着した液体に触れてみたところそれは血であった。


 「あっ、あっ、あっ・・・・・・」


 指先に付いた血を凝視し肺が締め付けられたかのように息が苦しくなるジャッキー、呼吸が著しく激しくなり混乱した様子の目でこの場にいる犯人を見つめる。


 「あ、あなた誰なのよ!」


 「んっ、私か? 私の名前は『カマキリ』、そう呼んでくれてかまわない」


 そう言って笑うカマキリ、だがそれは万人受けしそうにない程の悪人相である。


 「ハァ....ハァ.....ハァ...あなた、確かアラクネの・・・・・・」


 「息が荒いぞお嬢さん?、それにアラクネと知っているという事はまさかストラングと関係があるのか?」


 「“元”ストラングの一員よ。ハァ...ハァ.....でっ、アラクネのカマキリが何の用でどうして私の義母を殺したのかしら?」


 シセラの方は母親が殺される瞬間を見ており今ショックのあまり気絶している。それにジャッキーの方も辺りに立ち込める血の臭いのせいで体の奥から何かが渦巻いて飛び出そうになる感覚を催していた。


 「義母?、それは失礼な事をした。だがこちらも、とある事情で“電脳”に関する者達を殺さなければならなくてね」


 「電脳....ノアのことかしら?」


 「そこは君の推測で頼むよ、それに私は時間がないので失礼させてもらうよ」


 そう言ってこの場を去ろうとしたカマキリ、だが直ぐにジャッキーの声がその背に呟いた。


 「悪いわね、そう易々とあなたを帰せないわ」


 「何を言っ・・・・・・・」


 カマキリが振り返った瞬間、一線の軌道を描いた一撃がカマキリの頬を強く打ち抜いていく。


 「ぐほっ!?」


 「もう私....アハハ..、抑え切れないわ」


 「一体何のことを言っているんだ?」


 ジャッキーは深く息を吸い込んだ、そして血の臭いをまんべんに味わうと狂気じみた笑顔をカマキリへと向けた。


 「アハハハハハハハハハハッ!!」


 ______バァン.....ッ!!


 再び暴走したジャッキーの拳がその刹那に放たれる。カマキリのガードを無視するかのように伝わってくる衝撃はカマキリの意識にまで影響を及ばしてくる。


 「ぐっ!? この.....化け物が!!?」


 「アハハハハハハハハハハッ!!!」

Re: スキルワールド ( No.158 )
日時: 2019/12/01 19:01
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 土神は力尽きたかたちで床に片膝をついていた。その足下に打倒したベーシンが倒れており死闘を終えて一休みをしていると、天井から何やらミシミシといった音が聞こえてくる。


 「おいおい、まさか・・・・・」


 そのまさか、一瞬の静けさのあと突如として辺り一面の天井が陥没し土神を押し潰さんと迫ってくる。


 「ッ!?、“肥大化”ッ!」


 土神はそう叫ぶと死に物狂いで自身の体に付いている脂肪をどんどん肥大化させていき、最終的には球状の肉塊と化して瓦礫に飲み込まれていった。


 「ふ〜っ、助かった.....んっ?」


 何やら上の方が騒がしい、音の出所は瓦礫の山より上にあたる所であろう。


 「まさかジャッキーかな?、まだ義母との決着がつかないでいるのかな?」


 そう言って脂肪を燃焼させつつ瓦礫の隙間から上へと昇っていく土神。すると頭を地面へと出した直後、奇妙な光景を目にしたのであった。


 「あれは、何だ?」


 暴走状態のジャッキーと巨大なカマキリとの争い、何がどうなってこうなったというのだろうか?


 「んー・・・・・・確か、ミリー・システィアの方は『恐怖で生物を支配する』スキルだったからカマキリの方は知らない奴か.....」


 「アハハハハハハハハハハハハッ!!」


 ______バァーーーッン!!!


 ジャッキーの超重量のパンチが放たれカマキリの片腕にあたる部位を根こそぎ破壊してしまった。

 カマキリの方は独特な金切り声を発しながらジャッキーの首を刈り斬ろうと残された腕の鎌を力強く振り落としたがジャッキーは首の筋肉によって多少の血を流しつつもそれを受け止めてみせる。


 「アハハハハハハハ・・・・・・ガハッ!?」


 暴走スキルの活動限界、もしくは度重なる疲労によるものなのか口から血を吐き数歩後退するジャッキー、表情はとても苦しそうであり、無意識の内にジャッキーは胸部を押さえていた。

 額から流れ落ちる汗、心臓の鼓動はどんどん速くなっていき更に吐血する。暴走により膨れ上がってしまった力にジャッキーの体は対応しきれず悲鳴を挙げているのだ。


 「ハァ....ハァ...ハァ......ウッ!」


 小さくも鋭い呻き声を挙げて倒れるジャッキー、息は絶えだえとしており意識はもう微かにしか残っていなかった。


 「勝負ありだ、お嬢さん」


 折られた片腕を庇いつつ元の姿へと戻ったカマキリはそう言い、ジャッキーに止めを刺すため無事な方の腕を鎌へと変化させる。


 「これでお終わりだ」


 そう言い捨てると狙うはジャッキーの首ただ一つ、振り落とされた鎌は綺麗な湾曲を描きつつジャッキーの首へと落ちていく。


 _______ガキン......ッ!?


 「チッ!、まだ敵が潜んでいたか....」


 「悪いけど、その子は首と体がちゃんと付いた状態で返してもらうよ」


 そうカマキリの視界の端より現れた土神、そしてカマキリの鎌を防いだのはジャッキーを覆うように出現した巨大な筋繊維の壁である。


 「ほお、確かお前もリストに載っていた気がするな.....。だとすれば電脳の関係者か」


 「・・・・・・・おたくは少し勘違してるようだから言っとくが、もう俺は一人の人間としての俺だという事は知っておいてくれ」


 「・・・・・・事情はよく分からんが、リストに載っている以上は仕方がないのでな」


 そう言って構えるカマキリ、片腕を失っているが戦意までは失っておらず、殺る気は充分そうである。


 「OK、かかってきな。こういう事は個人的に大好きだからな」


 そう言ってニッコリと笑う土神の表情は昔を思い出したかのように醜く歪んでいた。そして対するカマキリも歪んだ笑みを浮かべて土神へと飛び出していったのだった。

Re: スキルワールド ( No.159 )
日時: 2019/12/01 18:40
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 場所は変わって屋敷内を駆ける友間達一行、するとそこの曲がり角でばったりシエルと出会った。


 「うわっ!?、びっくりした! 京八達か......ところで、何人か増えた?」


 「そこは後で説明するよシエル、それよりも上の階へ急ごう、物音からしてヤバイ状況なのは確実だしね」


 上からは何者かが争い合うような物音が響いており今は急いで上の階にいる筈のジャッキー達の様子を見に行くことが最優先である。

 だが、友間達が移動しようとした時だった。奥の廊下から二人組と見られる人物がこちらへと歩いて来るのが見えた。


 「ねぇねえアーベル!、この家スゴく広いんだね!」


 「・・・・・・静かにしていろ、それにまだ誰か屋敷に居たらしいな.....」


 遠くから見える人物というのは片方は身長はかなり小さく小学生ぐらいであろうか、短髪にした茶髪に見た目の幼さとは打って変わって大人びた黒のタキシードを着用している。

 そしてもう一方は身長が180cmに達するかどうか、短く揃えられた黒髪をし顔にはガスマスクを装着しており顔までは分からないが服装は黒の軍服らしきものを着ており、その両手には手甲が填められている。


 「ちょいちょい、あんたら何者だ?」


 そう二人の人物に問いかけたのは京八、背中の大火傷と少し前の戦闘のせいで力なく友間に背負われていることについては今は触れないでおこう。


 「僕の名前は草本哲(くさもと さとる)っ! それとこっちはアーベル.....えーと何だっけ・・・・・」


 「名前などこの場では不要で・・・・・・」


 「あっ!、そうそう! “アーベル・バルテルス”って名前だった筈だよ!」


 「この.....、今不要だと言った筈だぞ」


 「まーまーそう怒んないでよアーベル、.....どうせ屋敷内にいる奴らは一人残らず僕達で消すんだからさ」


 そんな事を平然と述べてみせる哲、それに対して友間とシエルはそれぞれ身構え目の前にいる二人組を警戒するうに凝視した。


 「そんなに僕達を怖がらないでさ、皆リラックスしよ?」

 「クロ....シロ..、少しの間だけ京八のこと任せるよ」


 「お、おい黒奈....殺る気なのかよ?」


 「・・・・・相手が誰だか知らないけど、消すと言われた以上はこっちだって黙って立っているわけにはいかないよ.....」


 「なら僕も同感だね友間、逆に相手に聞きたいとしたら『君達二人だけで僕達を本当に消せるのか?』って事だよ」


 その瞬間、その挑発にのったかのように哲の姿は二人の視界から消えて代わりに黒い閃光がシエルを吹き飛ばしていく。


 「ッ!?....、シエルっ!!」


 「あはははは!、良いねそのジョーク......シャレ程度には面白いよ」


 哲はそう冷たく言い放つと吹き飛ばされ姿の見えなくなったシエルを探しに驚異的な脚力でその場から消えていったのだった。


 「・・・・・・ところでアーベルでしたっけ?、さっきの子もそうですがあなた達は何者なんですか?」


 「答えない、答えられない、答える気がない......。お前ならどれを選ぶつもりだ?」


 そう返答を返したアーベル、すると友間は深く息をするとこう言った。


 「それじゃあ......、無理矢理にでも聞くしかありませんね!」


 「やってみろ.....小僧」


 そう聞いた瞬間、まず最初に友間は相手に仕掛けるため駆け出すとスキルで炎に変化しつつ距離が狭まったところで姿勢を低くし相手へと足払いを仕掛ける。


 「・・・・・遅い」


 そう呟き一歩後ろへ移動し避けたアーベル、それに対して友間は瞬時に態勢を立て直すと様子見で腹部を狙った蹴りを放ちそれが相手の片手によって弾かれると次の手として体重を加えた右ストレートを放った。


 「こんなもの....、見切れないわけがないだろ!」


 これもまたアーベルは片手でそれを弾き落とすと燃え盛っている筈の友間の顔面を鷲掴みにし、屋敷の床へと無慈悲に叩きつけたのであった。


 「この程度なのか、今のストラングというものは?」


 鷲掴みにしていた友間の顔を離しつつそう呟いたアーベル、その口調は前々からストラングについて知っているとでも言いたいのであろうか。


 「ゲホ!、ゲホ!ゲホ!.....まだ....です..」


 「そうか、なら寝ていろ....」


 そう言いつつ唐突に振り落とされるアーベルの拳、その矛先は相手の顔面へと軌道を描いて鋭く落ちていったのであった。








 こちらは場所は変わって槍を構えるシエル、そしてその視線の先はは弾丸の如く迫り来る哲へと注がれていた。


 「ふん.....」


 そう軽く鼻で笑いつつ突撃してくる小さな体躯を身一つで受け止めるシエル、直撃した瞬間に両者には不可視の火花が散っていたようにも見えた。


 「どうして僕達を襲った」


 そう相手を槍で弾き飛ばしつつ問いかけたシエル、すると相手からは意外な返答が返ってきた。


 「それ、今聞く必要ある?」


 「なっ.....、言ってくれるね」


 宙を舞う小さな体は空中で捻りを加えながら床へと着地する。

 そして立ち上がるとこう呟いた。


 「だって〜、敵でしょ?」


 「なら力づくでも後々口を割らしてやるだけだな」


 そう言って槍を前へと構えて飛び出したシエル、そしてその一歩は爆発的な超加速へと変わり視界に映る相手へと突っ込んでいく。


 「良いね〜、そうこなくっちゃ!」


 そう言った哲の瞳は爛々と輝いているように見えたのだった。

Re: スキルワールド ( No.160 )
日時: 2019/12/08 22:42
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 ここは土神とカマキリの戦っている階のとある部屋、そしてそこでは熾烈な戦闘が繰り広げられているところであった。


 ______バァンッ!!


 土神の拳が音を挙げてカマキリの頬を打ち抜き、カマキリの意識にまで影響を及ぼしたのだった。


 「まだだッ!」


 そう叫んだカマキリは頬での衝撃を耐え抜くと土神の首へと高速で自身の鎌を振り抜いた。

 どうにか片手でそれを受ける土神、だがベーシンとの戦いの疲労が残っているせいかバランスを崩すかたちで真横に吹き飛ばされてしまった。


 「ヤバッ!」


 直ぐに態勢を取り戻し視界を前へと向けたは良いが、次の瞬間にはカマキリの膝蹴りが土神の顔面に炸裂する。


 「ぐほっ!?」


 「疲れているようだな、あの世で一生休んでいると良いよ」


 「それは世界一の美女からの誘いでも断らせてもらうよ」


 「それは残念だよ、土神とやら」


 カマキリは自身の折れた片腕を無視するかのように土神へと飛び出していくと、腕を振り上げて自身の鎌を振り落とす。


 「ところで、アラクネとやらは何をしに此処へ?」


 数歩後戻りしつつそう聞いた土神、それに対してカマキリに答える気はないようだ。


 「さぁな、強盗かもしれんな」


 「だとすれば、強盗にしてはボロボロだな」


 「こちらにも事情があってね。特に暴走スキル持ちがいたなんて想定外だったしな」


 両者、そう言いながら互いに譲らない攻防を繰り広げており最終的には根性論に頼るかたちとなるだろう。


 「カマキリーッ!!」


 カマキリの腹に土神の今放てる中での渾身の一撃が叩き込まれると口から呻き声を漏らしつつ土神の首に自身の鎌を突き立てる。


 「ハァ、ハァ、ハァ.....土神、お前はよくやった。 しかし最後に勝つのは私だ!」


 「なっ!?」


 その瞬間、カマキリは巨大な蟷螂へと変貌し巨大な鎌で土神の体を掠めとると土神の頭をその口で噛み締める。

 最初にメキリという様な音がし次にメキメキと小刻みな音が微かに土神のかじられている頭部から聞こえてくる。


 「ぐっ!」


 もはや疲れ切った状態の土神に抵抗する程の力は残っていない。すると土神の頭部から骨の砕けたような音が聞こえ、次いで強烈な痛みが土神を襲い力なく気絶してしまった。


 「ふぅ...、これであとは殺すだ・・・・・・ぐおッ!!」


 ______バァン.....ッ!!


 カマキリが気絶した土神を手放した瞬間、変身状態の横腹へと強烈な一撃が走りカマキリの巨体を壁際へと吹き飛ばしていく。


 「ぐっ.....、今度はなんだ!」


 「俺はイクサ、ようやく師匠からの許可が出たんだ。存分に殺り合おうじゃねぇか」


 そう言ってイクサは狂器的な笑みを浮かべるとまだ壁に横たわっている相手へと飛び出していき、その様子にカマキリは少しの愚痴を漏らしつつその巨体を動かしたのだった。












 場所は変わってここは屋敷内のとある廊下、そしてそこには友間とアーベルがおり友間の顔面へと振り落としたはずのアーベルの拳は突如現れた何者かによって止められる。


 「し、シロっ!?」


 「遅くなりました友間さん、あとは私が....」


 そう掴んでいるアーベルの腕を強く握り締めながら言うシロは友間へと一瞬微笑みを向けると、シロは殺る気十分な様子でアーベルを睨み付けるとこう言った。


 「死ぬ覚悟は出来たか?」


 「この....」


 そうアーベルが掴んでくるシロの腕を振りほどこうとした瞬間、アーベルの体は浮き上がったかに思えるほど軽々とシロに持ち上げられると冷や汗をかく暇も与えず直ぐ側にある壁へと叩きつけられた。


 「うおっ!?、・・・・・・お前は何者なんだ?」


 「友間さんの守護者兼コンヤクシャだ!」


 婚約者の意味も分からぬままそう口にしたシロ、するとアーベルはゆっくり立ち上がると軍服に付いてしまった埃をはたき落としつつこう呟いた。


 「腕力に関しては中々のものだ....。だが俺には勝てん」


 そう言うと腕に填められている手甲の隙間から見える肌が変色したのが分かり瞬時に身構えるシロ。臭いからして毒か何かしらの有害物質である事は間違いなくであり、シロは背後にいる友間の事を心配しつつも相手の出方を待った。


 「俺を警戒しているようだな.....」


 「警戒?、笑わせるな.....ただお前に先手を譲ろうという私なりのハンデのつもりなのだが?」


 その瞬間、アーベルは飛び出していきシロの腹部に向けて蹴りを放つが避けられてしまい逆にアーベル自身の腹部へとシロの膝蹴りが叩き込まれる。

 だが次の瞬間、一旦距離を取ろうとしたシロへとアーベルの手が伸びていき襟を掴むと有無を言わせず自身へと引き寄せつつシロの顔面へと平手打ちを放った。


 「くっ....こんなもの...」


 アーベルの平手打ちを片手で防ごうとしたシロであったが、相手の掌に何やら液体が付着しているのを見て急遽シロは体を後ろへと反らして攻撃を回避するといったかたちを取った。

 すると振り抜かれたアーベルの掌から例の液体がはねて壁へと付着すると、付着した部分から徐々に煙があがり壁の表面を溶解していく。その様子にシロは掴まれている襟元を切断すると数歩後退しアーベルと距離を取る。


 「やはり毒の類か....、無理に腕で防いでいれば今頃は皮が溶けていたところだ」


 そう言いつつ冷や汗をかいているシロ、それにシロの服の一部分は触れられていた箇所から順に少し溶けているのが分かる、流石のシロも得体の知れぬものには触れたくはないのだろう。

 だがそんな事は関係ないとばかりに迫り来るアーベル、自身の毒を相手に付着させようと両手を駆使して攻めてくるがそれに対してシロは極力相手に触れぬよう回避を徹底しアーベルとの距離を保とうとしている。


 「どうした?、毒に怖じけずいたのか?」


 「その挑発には乗らん」


 そう言ってアーベルの攻撃に合わせて屈んだシロ、そして次に攻撃が空振りし懐の空いた相手へと自身の拳を叩き入れようと拳を放ったのであった。


 _____スピンッ!!


 「なっ!?」


 シロの放った拳がアーベルに届くこはなく逆にアーベルの放った蹴りを避けるかたちで遮られてしまう。しかもブーツの先端にはナイフが仕込まれていたようで、回避する際にシロはそれにより腕を軽く切られていた。


 「お前は足癖が悪いらしいな....」


 「俺の本業は暗殺でな。暗器の扱いには慣れている」


 「そうか....、次は油断も隙も見せない」


 「本当に次があると思うか?」


 「何を・・・・・・」


 ______グラッ......。


 思わず片膝をつくシロ、視界がおかしい、それに体の感覚もどこか不安定で平衡感覚が定まらず変である。


 「ハァ....ハァ....ハァ.....訂正だ...、悪いのは足癖だけじゃなさそうだな」


 「安心しろ、じきにお前の仲間もこうなる運命だ」


 どうにか立ち上がろうとするが平衡感覚の欠如に加えて強烈な吐き気まで催してきてしまい力無く床へと倒れたシロ、その目はアーベルを睨み付けている。


 「シロッ!?」


 「来ないで下さい友間さんッ!!」


 友間の接近を必死で絞り出した声で制止するシロ、今の友間の実力ではアーベルに敵わない事は百も承知のこと。裏を返せば自分なんかのために主人に危害を与えるような事は絶対に避けたいという意思の現れでもあるのだろう。


 「仲間思いだな......まぁ、あとで全員殺すがな」


 「ハァ....はぁ.....ハァ....ハァ....私が...、させる訳がないだろ」


 「そうか....、退け」


 無理に立ち上がったシロの体を無慈悲に自身の横へと押し倒したアーベルは警戒態勢の友間に視線を向けると飛び出そうと地面を踏み絞めた。


 ______ガシ....!


 「行かせるか.....」


 「毒に侵されたお前に興味はない、それに命の灯火が消えるのも時間の問題だ」


 そう言って自身の足を掴んでくるシロの腕を踏みつけるアーベル、もはやシロにこれ以上の悪足掻きを求めるのは無理という話だろう。


 「ところで少年」


 「えっ!、俺ですか?」


 相手の思わずの言動に友間は不思議そうに自身を指差しながら言っていると、アーベルはこんな事を呟いてくる。


 「今ここに死にかけの奴がいる....、お前ならどう出る?」


 「それは・・・・・・、助けるに決まってるじゃないですかッ!」


 そう言って飛び出していく友間、そしてその行動に対して自身に迫ってくる少年へとアーベルのマスクで隠れた顔が微笑んだように感じられた。


 「あんな腐った場所にも、まだ良いのが残っていたようだな」


 そう意味深に独り事を呟いたアーベル、そして気を締めたように目の前の相手を見つめると対峙するように友間へと飛び出していったのであった。


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