ダーク・ファンタジー小説

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スキルワールド
日時: 2019/02/24 17:59
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=1029

 どうも、マシュ&マロです

 この小説は『スキル』と呼ばれる能力を持つ者が存在する世界を題材にしたファンタジー作品です。
{自分の文才はかなり低いですが、諦めずに書こうと思っています}



※注意書き※

・オリキャラの募集はリクエスト掲示板でやっています。

・小説への意見や指摘は、リクエスト掲示板にあるスレットへお願いします

・作者は投稿が遅かったりしますので、ご了承下さい

・スキルワールドの説明などはリクエスト掲示板にありますので興味のある方はお読み下さい


それでは小説スタートッ!!



 第一幕『黒奈友間という少年』
 >>64


 第二幕『一人の裏切り者』
 (前半)>>102

Re: スキルワールド ( No.181 )
日時: 2020/03/23 22:43
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 「・・・・・・何だそりゃ?」


 沖田の口からそんな言葉がつい出てしまったのは置いておき、美香は苦笑気味にこんな事を呟いた。


 「まぁ彼女も彼女なりに“必死”だったとは思うけどね......」


 「必死?、何に対してだ?」


 「恵美の性格、沖田も分かるだろ?」


 「んー、確か優しかったというのは印象にあるが、その優しさの余り誰彼構わず甘やかし気味な部分もあったな。だが、それにしては今の話に出てきた恵美はどこか本人とは違っていたな?」


 「それについてはボチボチ話していくよ、それにストイックな性格の沖田ちゃんと彼女とではあまり気が合わなかったわね」


 「まぁそんなものは過ぎた事だ、それより彼女が必死になっていたというのはどういう訳なんだ?」


 「・・・・・・・話は少し反れるけど、彼女から渡された『処理リスト』とやらはどうやら上からの指示により作成されたものらしいの.....」


 「んっ?、ちょっと待て!? それだと話がおかしいぞ??」


 一旦話を止めるよう言った沖田、ここで再び苦笑の表情を見せた美香は溜め息を一度吐いてから話を再開した。


 「処理リストってのは私宛ての指令で、それを受け取っていた恵美が私にそれを断らせるために一芝居打ったってわけよ.......わざと私を怒らせるためにね....」


 「んっ?、わざわざ何故そんな事を恵美がする必要性が?」


 「一応、話の中に出てきたとは思うけど処理リストに書かれた対象物は全て彼女、つまりは恵美が生みの親だ.....。さてここで問題、処理リストと恵美の性格、それらを掛け合わせると結論はどうなるでしょうか?」


 「き、急に問題方式で問いかけてきたな.......。そうだな、私が彼女自身なら.......全て斬り伏せる!」


 「ブッブー!!、正解は『彼らは兵器ではあれど人からの愛情を知らずにただ消されるだけの存在にするのは可哀想』でした〜!」


 「分かるかっ!、第一に恵美自身がそんな事を直接言ったわけじゃないんだし証拠もないだろ!?」


 「なら、そうじゃないとしたら何故わざわざ私を怒らす必要が? そして意図して怒せたのでないとしたら何故に普段の彼女とは異なる言動をしたの?」


 「くっ.....、分かったよ。それで彼女自身、つまり恵美はお前に何をして欲しかったんだ?」


 「もしリストの対象物が問題を起こせば即破壊、そうでなければ見守るだけに留めてほしいという事だと私は解釈している」


 そう呟いた美香に対してまだ疑問が消えていない様子の沖田、だがそんな二人の耳元にとある声が聞こえてきた



 「そこまで僕の言った事の主旨を理解してくれてたなんて僕はとても幸せものだよ」


 沖田と美香、その二人は弾かれたかのように声のした方へ身構えていた。どうも聞き覚えのある声だ。


 「お、おい美香....今、部屋の隅っこ辺りで何やら声が・・・・・・」


 「んー、幽霊だったりして?」


 「ゆ、ゆゆゆゆ幽霊が存在してたまるか!? ばばばバカ言うな馬鹿者め!?」


 「あれれ〜?、沖田ちゃん震えてない〜?」


 「うるさい!、幽霊なんて......怖くなぞないぞ!?」


 節々の震え.....いや、武者震いが止まらない沖田をよそに声は今度もまたハッキリと聞こえてきた。


 「ふふ、僕は幽霊なんかじゃないよ? それより誰か僕を助けてくれないかな?、こんな体じゃ自身での移動は困難なものでね」


 「「・・・・・・・恵美かっ!?」」


 「そうそう久しぶりだね沖田に美香、君達との再開を喜びたいんだけどまずは救援要請を出させて頂くよ」


 二人は状況の整理が着かぬまま声のする方へ歩み寄ってみた、そして乱雑として置かれた物などを退けていくと共にそこにある不思議な物体を見つけてしまった。


 「やっほー、驚いたかな?」


 そこにあったのは掌サイズをした円卓上の機械を土台として映し出された恵美のホログラムであった。


 「お、おい美香......このよく分からん機械は何だ?」


 おもわず目をパチクリさせている沖田、それを察したのかホログラム上の彼女は説明を始めた。


 「紹介しよう、僕は自立思考型サポートホログラム、その名も恵美2号! 愛称として僕の製作者でもある『恵美』という名で呼んでもらえたら嬉しいかな」


 「じ、自立なんて?」


 「自立思考型サポートホログラムだよ沖田、僕は恵美であって恵美ではない彼女の代弁役って言い方がただしいのかな」


 そう言って二人に微笑みかける恵美は生前の彼女そのものである、するとここで美香はとある話を切り出した。


 「少し前にマキナスがここを襲ってきたわ、だから破壊した。何か質問はあるかしら?」


 「・・・・・・そっか....、出来れば僕に彼を止められるだけの力があれば良かったのに.....」


 「そう言ってても仕方がないわ、それにマキナスを倒しても一向に事態は良くならないしね」


 「ほう、いつ私がお前に倒されたのだ?」


 その声が背後から聞こえた瞬間に美香の警戒レベルは最高潮へと達していた。そして生きていたマキナスを消し飛ばそうと美香が身構える前だった、美香の横腹に重い一撃のパンチが炸裂しその一撃は部屋の壁へと彼女を吹き飛ばした。


 「油....断したわ」


 「ふん、ストラング最強と言えど結局は女、力は予想の範囲だな」


 マキナスがそう一人呟いているとその背後に強烈な殺気が迫ってきた、そして怒りに燃えた沖田の一太刀がマキナスの首を飛ばさんと弧を描いたのだった。


 ______ガキンッ!?


 「なっ!?」


 「無駄だ沖田、お前程度の太刀では私の首は落とせん」


 防御はしたが回避までには至らず強く壁へと吹き飛ばされる沖田、立ち上がろうとするが思った以上にダメージは大きかったようだ。


 「生きてたとはね....、マキナス」


 「咄嗟に分身を身代わりにしなければ危ないところであったが、運は私に向いているようだな......ところで随分と小さくなられましたね、元主人」


 「こんな事は直ぐにでもヤメるべきだ、君はこんな事をして幸せなのかい?」


 「幸せ?、残念ながらデータ上にはそのような概念はありませんね。それでは、自分の計画を実行するとしましょうか」


 「待てッ!?」


 「待ちませんよ、ストラングの美香とやら」


 そう言い残すと電脳の扉が開かれその中へと消えていくマキナス、そして彼の言う計画とは何なのだろうか?


 「おい美香、大丈夫なのか?」


 「この程度の傷なら少ししたら治る、だがそんな事より私達も乗り込もうじゃないか」


 「んっ?、乗り込むとはどういう意味だ?」


 「決まってるじゃない、電脳世界によ」


 そう美香が呟いた瞬間、電脳の扉が彼女の隣で開かれた。その様子に沖田は驚愕すると共に少しだけ勝算が見えた事でにんまりと微笑んだ。


 「あぁ美香、奴らに目にも見せてやろう」

Re: スキルワールド ( No.182 )
日時: 2020/03/31 22:51
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 ここはストラング基地内部のとある廊下、すると次の瞬間には通路の壁へ頭部を粉砕されたロボットの亡骸が投げ飛ばされてきた。

 そしてそれを視線の隅へ流しつつボスは次の標的へと的を絞り、軽い助走と共に相手の頭部へと大きく振りかぶった肘打ちを叩き込み再起不能へと陥りさせた。


 「無茶はしなくていいぞ、“シロ”」


 そうボスが背後で敵の頭部を握り潰していたシロに呟くと、苦笑気味にこう返されてしまった。


 「こんな状況でそんな冗談はやめてくれ、金森」


 「悪い悪い、だがさっきまで気を失っていたんだから無理はするなよ?」


 そう言って次の標的へと踏み出そうとしたボスであったが、背後からの突如とした気配に警戒態勢を崩さぬまま体の向きを反転させた。


 「金森〜っ!!」


 「美香!?、ぐふ......っ!?」


 いきなり腹部へと飛び込んできた美香に呆気を取られて少し後退したボスであったか、そこは鍛え抜かれた肉体により受け止めてみせたのだった。


 「い、いきなり飛び出してくるな.......美香ッ!」


 「良いじゃないの金森、結果的に美女を抱き締められたんだから」


 「良くないだろ!?、それに沖田もそこにいるなら何とか言ったらどうなんだ?」


 「悪いがボス、私もそいつの被害者なんでな。関わらない方が一番だ」


 そう言って苦笑を見せた沖田、するとシロの存在に気づき沖田はこう言った。


 「久しいな、友間の嫁殿」


 「どうも、ところで友間さんの居場所は分かりますか? 臭いが途中で途切れていて私にはさっぱり居場所が.....?」


 そう疑問気に呟くと肩を落としてみせたシロ、すると美香はここで本題を切り出した。


 「あっ、なら今から友間のいる電脳世界に乗り込むんだけどシロも来るかしら?」


 「是非っ!」


 「よし、決まり!」


 そう言うと美香は自身の指を一鳴りさせ全員が入れる程の電脳への扉を展開し電脳世界へと乗り込んで行ったのであった。










 ここは電脳、その中である。そんな場所で今まで気絶していた友間は目を覚ました。


 「いてててて.....、俺って何やってたん・・・・・・・」


 友間の挙動が突如として止まった、いや止まるざるおえなかったという方が正しいのか。目の前に広がっていたのは血を噴き出させ倒れるシセラとジャッキー、そしてドルスに喉元を掴まれている京八の姿である。


 「京八ッ!!?」


 「んっ?、あぁ...今頃になって目覚めたか......だが、もう遅い・・・・・」


 そんな言葉と共に宙へと放り投げられる京八の体、友間の怒りの沸点はとっくに過ぎていた。


 「このォォォオーーーッ!!」


 “性質の解放<炎>”ッ!!


 炎が友間の体を激しく包み込む、そして力強く地面を踏み込んだかと思うと光の一閃を残しつつ友間は飛び出した。


 「いいぜ、来いッ!!」


 “闇を呑む闇”ッ!!


 ドルスの体から闇と呼ばれる固有の物質が噴き出し、友間の炎を真っ向から迎え撃つように激突した。

 炎を呑み込もうとする闇に対し、全てを焼き消そうとする炎。二つは拮抗するかのように双方の間には明確な境界が出来ていた。


 「チッ!、流石の俺でも連戦じゃあ分が悪いか」


 そう思わず悪態を漏らすドルスとは打って変わり友間の勢いに衰えは見られなかった。

Re: スキルワールド ( No.183 )
日時: 2020/04/06 22:39
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 “お願い『反らして』ッ!!”


 そう告げるとニコラの位置からして右へ飛んだところへデスオメガの拳が振り落とされた。

 その一撃で爆風が起こり飛ばされぬよう身を固くするニコラ、しかしその直後にニコラの喉辺りで衝撃が走った。


 「んくっ!、離し....なさいよ」


 「おやおや、それは聞けない頼みだ」


 ______ギュッ!!


 そう言うと不意にニコラの喉に伸びたノアの右腕に力が入れられ思わず微かな呻き声を挙げるニコラ、その様子にノアはこう呟いた。


 「・・・・・・脆いな」


 するとノアの視界の端、そこで誰かの叫ぶ声が聞こえノアの右腕の力みが少し緩んだ。


 「何だお前は?」


 視線の先に立っているのは槍を構えたシエル、そして怒気の籠った声を発しつつシエルは飛び出した。


 「ニコラをッ!、離せェ!!」


 「ふぅ....、やれやれだ全く」


 そう言いノアが手をかざした瞬間、シエルの姿はニコラの視界から消え次に姿を現したのは空中、しかも摩天楼の如くそびえるデスオメガの眼前である。


 「殺れ、デスオメガ....」


 足元から地面を失い落ちていくシエル、その肉体を破壊せねばとデスオメガの握る斧が空を切るように振り落とされた。


 「シエルっ!?」


 “お願い「守って」ッ!!”


 デスオメガの一撃が突如として空中に展開された防御壁により破られはしたものの的を大きく反れ、代わりに何も無い地面へと強く叩きつけられたのであった。

 そしてシエルの方は何とか難を逃れ、無事に地面へと着地することに成功する。


 「良かっ....た、ゴポッ!?」


 大きく吐血したニコラ、その血はノア右腕を広範囲にわたり赤く染め上げた。


 「・・・・・・お気に入りのコートだったが、仕方あるまい」


 はぁ、と一瞬だけ溜め息をつくと赤く染め上がった右腕に力を込め入れ真っ白な地面にニコラの体を思いっきり叩きつけた。


 ______ガァンッ!?


 「ゴホッ!?.....」


 「悪く思うな小娘、結局は殺すのだ。痛めつけようがいまいが結果は同じこと」


 痛みに悶絶するニコラから右手を離したノア、すると彼の視界は迫り来るシエルの方へと向けられた。


 「オリャァァァアッッッ!!?」


 「下らん感情に流されるな、さもなくば命は無いぞ?」


 そう言いシエルの槍を左に大きく回避すると、そのままの勢いを活かし少年の顔面へ大振りの拳をブチ込みその体を吹き飛ばした。

 シエルの体は幾度かバウンドし、ようやく止まるも地面に伏したまま動きがないままである。


 「・・・・・・さて、お前らはどうする?」


 そう仮面越しにノアが目線上にいる美琴と伊月へ睨みを効かせた、すると伊月の方に動きがあった。


 「姉さん、今までありがと......」


 「ちょっと伊月!、何ふざけるのよッ!?」


 「それじゃ!、姉さん」


 そう伊月は呟くと自身の左足に力を込めて、前方にいるノアへと走り出した。


 「単純なパワー型、シンプル過ぎて面白味もないな」


 そう言って迫り来る伊月を前にし構えたノア、その刹那にノアは電脳空間上を漂う無数のデータの中から最適な経験をインプットした。


 「この世界にいる以上、私に敗けはありえんッ!」


 これも直ぐに終わるのだと思っていた、数々のデータを組み込んで合成しこの体に染み込ませた事で生み出される卓越した戦闘能力。

 それにより直ぐに終わるとばかり思っていたノアは、反省せざる負えなかった。


 「あんたの動き、甘いねッ!」


 ノアのその瞬間に違和感を隠しきれずにいた、当たる筈の拳を避けられたのだ。


 「くっ!、小賢しい猿め!」


 ノアは唐突に焦りを覚えて己の身にありとあらゆる戦術を取り込んだ、それはハッキリとした形となりノアの肉体に刷り込まれていく。


 「今度は外さん!」


 そう言い強く踏み込んだノア、それから放たれた蹴りは疾風を思わせたが、伊月にはすんでのところで届かない。


 「またか、どうもおかしい」


 「だから甘いんだよ、あんたの動きは」


 そう呟くと軽いフットワークでノアの動きに応戦する伊月、そしてノアの仮面の下に浮かぶ苦悶の表情が嫌でも強く感じられ伊月は思わず笑った。


 「もういい!、デスオメガ!」


 「ヤベ.....!」


 そう叫ぶノア、すると次の瞬間にはノアの姿は霧が晴れたように消え、その直後に伊月の立つ周辺に巨大な影を落としつつデスオメガの一撃が地面に大きなクレーターを発生させた。


 「チッ!、破片が脚に刺さったか....」


 太股の付け根にあたる位置に瓦礫の一部が深々と食い込んでしまった伊月は苦笑いをし額から油汗を垂らした。


 「伊月っ!?」


 「心配ねぇよ姉さん、これぐらい平気だって」


 「何バカなこと言ってるのよ!?、伊月のバカっ!」


 「何だよソレ?、そんなバカな弟の姉が・・・・・」


 伊月は喋るのを止め離れた位置にいる美琴へと飛びかかっていく。

 いや、もっと正確に言うと美琴の背後に現れたノアに対してである。


 「姉さん!」


 「ふぇっ!?」


 「死ねっ!」


 その刹那・・・・・・。


 “お願い『飛んで』ッ!!”


 ニコラの声と同調するように宙に向けて飛んだ美琴の体、そして美琴を仕留め損ねたノア自身は機嫌が良くないご様子だ。


 「まだ、そこまでする元気があったとはな。もはや無視の息かと思ったが・・・・・」


 “お願い『消えて』ッ!!”


 その瞬間、一瞬ノアを包み込むように不思議な力が発生した。流石に傷とまでとはいかなかったが前とは違い仮面に深々とした亀裂を刻み込んだのであった。


 「くっ!、仮面がッ!?」


 「ゴホッ!、ゴホッ! やはり力は先程より弱まっているようね」


 「それがどうした!、殺れ! デスオメガ」


 デスオメガの一撃がシセラを捉え、そして振り落とされた。


 「どうだ見たか!、電脳の支配者であるデスオメガの力をっ!!」


 白煙が辺りに漂うなか、ノアはそのような声を挙げて歓喜していた。するとノアの耳元に何度か聞き覚えがある声が聞こえてきた。


 「これが支配者の力?、笑わせるなッ! これはただのデカイだけの代物だッ!」


 「お前はっ!?」


 白煙が消えていく中、そこにいたのはスキルを発動しでデスオメガの一撃を受け止めるストラング基地所長ボスの姿があった。


 「大丈夫かニコラ?、いや....血まみれだから大丈夫ではないのか?」


 「ボス!?、それに・・・・・・」


 「ヤッホー♪、私達も助っ人として参戦しちゃうわよ〜!」


 そこにいたのはボスを含め美香・沖田・シロの四人の姿、この場において最も頼もしい面々である。


 「チッ!、戦いに気を取られて電脳空間への侵入を許してしまうとは迂闊だったな.....」


 「もう観念しろノア!、さもなくばストラングの名において所長である俺が直々に手を下してやるがな?」


 「この俺が観念だと?....、笑わせるのも大概にしろッ! デスオメガよっ!、力の解放を許可するッ! 存分に暴れるがいいッ!」


 「まずいぞ美香、これは」


 「ええ、そうね金森」


 デスオメガ本来の力、それは電脳世界を大きく揺るがす程に大きく、その場にいる全員に冷や汗をかかさせるのに充分過ぎるものであった。

Re: スキルワールド ( No.184 )
日時: 2020/04/07 23:13
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 恵美は今、悩んでいた。人工物である筈の機械に思考というものが存在するのか甚だ疑問だが、小さなホログラムは顔をしかめ気味に考えていた。


 (電脳世界....、これはまた不可思議な空間が存在したものだね。今まさに力を解放しようとするデスオメガを含め、現時点では謎多きままという事か・・・・・・)


 「ちょっと恵美.....、恵美〜?」


 「んっ?、あっ...! 何だい美香!?」


 不意の美香の声に少し慌てた様子を見せたであったが、一つ咳払いを挟むと美香の方へ問いを投げかけた。


 「どうかしたのかい?」


 そう何気なく質問を声に出した恵美、すると美香からこんな言葉が返ってきた。


 「今からシロと一緒に友間のところへ行くつもりだけど、あなたはどうする?」


 「んー、僕はこの戦いの一部始終を見ていたいな......ちょっと興味があってね」


 そう言って謝るように眉をすぼめて少し微笑んでみせた恵美、すると美香は素っ気なく頷くと沖田に呼び掛けその方向に小さな恵美を放り投げた。

 それを受け取った沖田は疑問そうな表情でこう美香へと呟いた。


 「何だ美香?、何故私なんかにコレを?」


 「此処にいる子達の事は沖田に任せたわ、私とシロは此処にいない組のメンバーを探してくるわ、それじゃ!」


 「お、おい待て美香!、私は良いとは一言も・・・・・・」


 慌ててそう呟いた沖田ではあったが既に遅く、美香はシロを連れて飛びたった後である。


 「くぅ、仕方あるまいな.....」


 納得はいかないが渋々に美香からの要求を呑んだ沖田、すると恵美がこう語りかけてきた。


 「へ〜、沖田ちゃんって意外と融通が効くんだね。もっと早くから知っておきたかったよ」


 「死んだ後で言うセリフではないだろ?、それに生前のお前とは意見が合わなかったのも事実だからな」


 そう頬を掻きつつ語った沖田、すると沖田の手に握られる恵美から笑い声が聞こえてきた。


 「な、何がおかしい?」


 「いやごめん、確かに沖田ちゃんと生前の僕とではあまり仲が良くなったなって.......という訳でこれからよろしくね、沖田ちゃん♪」


 そう言って頭上に見える沖田へと微笑んだ恵美、それには少し照れつつも沖田は頷いた。


 「ま、まあ私からもよろしくという事で・・・・・・・」


 するとそんな二人の会話に割って入るようにボスは沖田と恵美にこう告げてきた。


 「話してるところ悪いが二人とも、電脳の支配者とやらが動き出したぞ」


 一歩目の震動は地面に亀裂を生じさせ、続けてきた二歩目もまた同じように地鳴りを轟かせたのだった。


 「さぁてストラングの諸君、決着をつけようじゃないか」


 平然と佇みそう言うノア、だがボスは冷静に状況を吟味するように伊月・美琴・シエル・ニコラを見ると深呼吸を一度だけ挟み、沖田と恵美にこう命令する。


 「沖田、お前はあの子達を守れ。それと恵美、何がどうなっているのか事情は後程に聞かせてもらうが今は沖田のサポートを任せる」


 「オッケー!、いやーしかし久々の緊迫感は格別だよ〜」


 そう言うと両手を広げて深呼吸をするような動きを見せる恵美、まぁ取り敢えずやる気は充分という感じだろう。













 場所は変わり火山が噴火するが如く勢いで炎は噴き出し、闇はそれに対抗するべく激しいうねりを生じさせながら激突する。

 力と力の拮抗、押されずとも引かぬ戦いが起こり早数分が経つ。そんな流れに痺れを切らしたのかドルスは両手に自身の闇を纏わせた。


 「これを覚えてるか!、お前が瀕死にまで追い込まれた事をなッ!」


 「えぇ、覚えていますよ.....充分にっ!」


 再び闇と炎が衝突した瞬間、友間は全身の炎を更に強めて飛び出した。それはドルスが飛び出して来たからである。


 「闇に呑まれろッ!!」


 「これで燃え尽きろッ!!」


 ドルスは闇を纏わせた拳に力を込め、友間は全身の炎を片腕に集中させ右腕を中心に炎の塊が形を成していく。

 束の間の事、闇と炎そして拳と拳の衝突、しかしその一瞬が計り知れない程の衝撃を生んだ。


 ______バァンッッ!!!


 全身を突き抜けるような衝撃を感じつつ二人の体はそれぞれの方向へ吹き飛んで行った。


 「ゲホ! ゲホ! ゲホ!、今のはヤバかった.....」


 痛む体に鞭を打ち付け無理に立ち上がった友間、見るとドルスの方もただでは済まなかったようだ。


 「チッ!、やっぱり連戦は無理があったか.......まあいい、お前を殺す程度なら生身のままでも可能だ」


 そう言ってゆっくり迫り来るドルス、もはや疲れは限界を迎えたのかどちらも相手の出方を探るように少しづつ距離を詰めていき、双方の距離は手を伸ばせば届く距離にまで近づいていた。


 「そうだ小僧、お前は相手を必ず倒せる方法を知ってるか?」


 「えっ?」


 友間の動きが一瞬止まった直後、ドルスは友間の腹部へ向けて意表をつくようにタックルを決めて押し倒しそのままタコ殴りにするように拳を叩きつけていく。


 「どうだ!、俺のパンチは効くだろッ!」


 次にドルスが殴ろうとした瞬間、友間の体は鉄へと変化した。


 「全然効かないなっ!」


 「このッ!?」


 押し倒されながらも友間の鉄拳がドルスの頬を捉えた、流石に生身でそれは効いたらしく少しドルスの体はグラついた。


 「だが、まだだ!」


 “闇を飲む闇ッ!!”


 先程の戦闘時と比べるとオーラは幾分か小さくはなったが、友間の顔面に拳が振り落とされ顔を地面に叩きつけさせられる。


 「ぐっ.....」


 「これで気が済んだだろ?、お前は俺に勝て・・・・・・」


 ドルスが何か言おうとした時だった、背後から多少離れた所で爆発にも似た音が聞こえ爆風が吹き荒れた。

 思わず振り返ると、そこには目に殺意の籠った怒り心頭中のシロと美香の姿があった。


 「おいおいマジかよ.....」


 そう呟き流石のドルスもこの状況に冷や汗を垂らしてしまったようだった。

Re: スキルワールド ( No.185 )
日時: 2020/04/08 22:38
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 ドルスの頬から冷や汗が垂れ、その表情は少し引きつっていた。

 ドルスの眼前には殺意の渦巻くシロと美香の姿、そして自身の体調を確かめてみるがお世辞にも優れているという事はない。


 「これはまた面倒臭い輩が来たものだな」


 そう引きつった顔を無理矢理に緩めるためそんな事を呟いてみせたドルス、だが顔の強ばりはそう簡単には解れない。

 すると美香がこんな事を呟いてきた。


 「覚悟はいいかしら?」


 「いや、生憎まだでな。出来ることなら一生待っていて欲しいぐらいなんだが?」


 「それは無理な相談ね」


 「あぁ、そうかよ」


 “闇を呑む闇ッ!!”


 スキルを発動させた直後、何が起きたのか認識する間もなくドルスの体は吹き飛ばされていく。


 「グオっ!?」


 吹き飛ばされた勢いで地面を幾度となく跳ねはしたが、何とか勢いを止めて態勢を立て直そうとすると再び強烈な衝撃波がドルスを襲う。


 ______ミシッ!...ミシッ!....ミシッ!!....。


 思わず全身の骨が軋むが、今度は態勢を立て直すことに成功しどうにか立っていられたが、立っている場所から幾らか後退させられてしまっていた。


 「根性はあるようね、だけどその体で何発耐えられるかしら?」


 そう言って殺意を含んだ笑みを相手へ投げかける美香、するとその様子にドルスの体に多少の身震いが生じてしまう。

 だが、そうもしていられないのが現実でありドルスは落ち着いた様子を装い美香とシロの二人にこう告げる。


 「あまり俺を怒らせるなよ?、その程度で倒れる俺ではない」


 まだ切り札は残っている、そう心で呟くとドルスは自身のポケットにあるものの状況を確かめるようにポケットに触れた。


 (トリガーが一本だけポケットに入っている、これをどうにか刺せれば勝機はそれなりに見えてくる筈だ.....)


 「・・・・・・トリガーなら刺せば良いわ、その場合あなたの存在そのものを消してあげるわよ」


 「チッ!、バレてたかよ......なら遠慮なく」


 「おい美香、良いのか?」


 「落ち着きなさいシロ、私はストラング最強なのよ?」


 「いや美香、友間さんとその他大勢をまだ保護してないんだが?」


 「・・・・・・あっ....」


 その事に気付いた時には時既に遅し、トリガーの効果が発動しドルスは怒号を挙げている。


 「シロ!?、あいつの事は任せた! 私は皆を保護しとくわ!」


 「友間さんの事は任せたぞ美香っ!」


 美香の一時戦線離脱、それを受けてシロはトリガーにより狂暴化し周囲にドス黒いオーラを噴き出しているドルスを見据えつつ呼吸を整えこう呟いた。


 「お前との戦いは久しいな、お前が私を倒したいと強く望むのなら私もそれに応えて全力でお前を消す」


 その瞬間、シロの髪は逆立つようにうねり雰囲気は今までの何倍以上の存在感を放っている。


 「本気を出すのは数十年ぶりでな、それに私は手加減というものが不得意らしい......」


 その直後、シロの体は音の壁を突き破るかのようにドルスの体を小さな拳が強い衝撃と共にその腹部を貫く。

 そして狂気的かつ無邪気にシロは笑った。


 「悪いが久しぶりの本気だ、遊び相手として少し付き合ってもらうぞ」


 そうシロが言い終わると認識できない程の速度で蹴られて吹き飛ばされるドルス、トリガーのお陰で死にはしなかったがドルスは大きく吐血する。


 「フーっ!....、フーっ!...、フーっ!....」


 鼻息を荒げて獣のようにドルスは歩み寄ってくるシロを威嚇する。しかしシロにそれは通じない。

 突然、視界から一瞬消えたかと思うと瞬間移動かと錯覚してしまう速度で目の前へ突如として姿を現したシロ、それにはドルスも驚いたらしく大声を挙げて叫びつつ拳を振り落としてきた。


 「まだ殺る気があるとは、まさしく獣だな」


 シロはそう言うと回避や防御の動作は一切せずドルスの一撃を受けた、しかし当たったと思った直後にドルスの拳を今まで受けた事のない程の衝撃波が襲い、体ごとドルスは吹き飛ばされていく。


 「・・・・・・少しばかりスキルを強め過ぎたか....」


 シロのスキル、今だに不明が多いところだがドルスの片腕はどうやら骨が粒子レベルで粉砕されてしまったらしく片腕を動かすことは二度と出来ないだろう。


 「おっ、やるじゃないのシロ」


 そう感心した様子の美香は友間を含めた皆の治療に当たっているところであった。


 「さて、まだ殺りますか?」


 一言そう聞いたシロ、するとドルスは返事の代わりに怒号を挙げて黒いオーラを更に大量に噴き出すと理性の効かなくなった目でシロを睨み付けてくる。


 「分かりました、あなたがその気なら私も......」


 シロは義足、つまりは失った右側の脚を退くようにして構えた。これは明らかな蹴りの構えである、そしてそれは放たれる前からその秘められた恐ろしさがヒシヒシと肌身で感じられた。


 「一度負けたこの一撃に、二度の敗北はない」


 シロは集中する、己の全身の感覚を右足に注ぎ入れるかのように落ち着いた様子でドルスを見据えている。


 ______ドンッ!!


 ドルスは走り出した、使い物にならなくなった片腕を激しく揺らし意識というものが消えかける中でただシロという存在に目がけて拳を握り駆けていく。


 「悪いがこれで終わりだ、ドルス」


 シロの蹴りがドルスの首にかけて次元を切り裂いたかの如く美しい弧を描き炸裂する。その威力は蹴りというより、兵器かそれ以上の代物であった。


 ______バァァァァァアンッツ!!


 ドルスの体は原型を留めぬまま天高く吹き飛ばされていく、それに伴い生じた衝撃が電脳世界に広がった。


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