ダーク・ファンタジー小説

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スキルワールド
日時: 2019/02/24 17:59
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=1029

 どうも、マシュ&マロです

 この小説は『スキル』と呼ばれる能力を持つ者が存在する世界を題材にしたファンタジー作品です。
{自分の文才はかなり低いですが、諦めずに書こうと思っています}



※注意書き※

・オリキャラの募集はリクエスト掲示板でやっています。

・小説への意見や指摘は、リクエスト掲示板にあるスレットへお願いします

・作者は投稿が遅かったりしますので、ご了承下さい

・スキルワールドの説明などはリクエスト掲示板にありますので興味のある方はお読み下さい


それでは小説スタートッ!!



 第一幕『黒奈友間という少年』
 >>64


 第二幕『一人の裏切り者』
 (前半)>>102

Re: スキルワールド ( No.90 )
日時: 2018/12/21 22:53
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 「やあニコラ。 ニコラのおかげで助かったよ」


 「もぉー“おに〜ちゃん”!、いくら何でも一人で挑むなんて危険なんだからね」


 そう言って頬を膨らませながらフリストの方へと近づいていくニコラ。その様子に友間は驚きを隠せずにいた。


 (ニコラがどうして敵の方に!? しかも目の前のがお兄ちゃんなの!?)


 「いい!、次からは私も付いていくからおに〜ちゃん一人で無茶はしないでよね!」


 「ああ分かったよニコラ。約束するよ」


 だが友間はフリストの片方の手が背後でクロスするのを見た。多分だが約束が守られる事はないだろう、と友間は思った。


 (まだ体は動かないままだ。それにシロも動けない状況だから不利かもしれないな)


 「あっ、それと友間さ......いえ友間。お願い『解除』」


 ニコラのそんな声が聞こえてきた、すると次の瞬間には体が自由に動かせる様になったのだった。


 「友間、・・・・・これは忠告であり命令です。私達及び伊月にはもう関わらないで下さい」


 「どうして......、どうしてニコラが敵になるの!? 今まで仲良く皆で笑ってたはずじゃ・・・・・・」


 「私にも......私なりの道理があるんです・・・・・・。ただそれを通すだけです」


 「これが道理なの!、本当にこれがニコラのしたい事なのッ!?」


 「・・・・・・・ここでは話の邪魔が入ってしまうので場所を移しましょうか、お願い『転移』」


 一瞬の情景の揺らぎと共に目の前の風景は朽ち果てた屋敷へと変化した。友間は夢ではないのかと自身を疑ったが鼻を貫くような腐敗の臭いからすると高い割合で現実のようだ。


 ーーガチャッ!


 そこへ誰かが入ってきた_____。


 「おいフリスト!、急に人を呼び出しておいて何の用だって・・・・・・・。」


 「ど、どうもー・・・・・。」


 「ぶっ殺してやるッ!! 今すぐに腸をぶち抜いてソーセージに・・・・・。」


 「・・・・・お願い『黙って』」


 ーーバギッ!!


 伊月の体は一秒後には貫かれた壁の奥へと消えていた。そしてニコラは何事もなかった様子で淡々と話を続けたのであった。


 「確かに端から見れば私の思想は悪なのだと言えます、ですが・・・・・・」


 「この件に関しては手を退け、だろ?」


 「フゥ、理解してくれているのであれば早急にでも・・・・・・」


 だが友間は手でニコラを指して話を途中で止めさせた、すると友間本人も予想をしていなかった事をニコラに言い放った。


 「理解はしてるよ、充分すぎる程にね......だけど実感はまだ全然してないよ...。」


 「どういう事.....ですか?」


 「なんていうか......まだニコラが敵だなんて信じられないなぁ、なんて思っちゃって・・・・・。」


 その言葉を聞いてニコラ自身の顔が一瞬だけ強ばり次には友間への怒りの表情へと変わったのだった。


 「ふざけないで下さいッ!!、そんな馬鹿げた理由なら私の前から消えて下さいッ!!」


 「いや、でも・・・・・・。」


 「お願い『友間を消し・・・・・」


 ニコラは何かを言いかけたが最後までは言えなかった。その理由は気絶したニコラを抱き抱えているフリスト自身が物語っていた。


 「ニコラはまだ不安定なんだ。彼女自身は忘れているだろうが心の奥底には深く刻み込まれた傷があるんだよ......。」


 「ニコラをどうするんですか?、それにあなたは敵なのに俺にそんな事を言うんですか?」


 「それは・・・・・・いや、それは止めておこう。君やニコラのためにもね」


 「どうして俺が出てくるんですか?、ニコラは大丈夫なんですか?」


 そう友間に聞かれたフリストは少しの溜め息を吐くとこんな事を言ってきた。


 「今夜8時、そこで君の答えを聞かせてくれ・・・・・・。」


 「ちょっと・・・ッ!、少しでも答えてくれたって・・・・・・」


 「僕からの話はそれだけだ。それとニコラを取り返すのなら相当の覚悟を持って来い!」


 フリストの気迫に押されて一歩引き下がってしまった友間。ただ部屋をあとにするフリストの後ろ背を見ている事しかできなかった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「・・・・・・・友間さん....何処まで行っちゃたんでしょうか?」


 シロは自身の主人を探して沈みかけた夕方の日を浴びていた。忽然と消えてしまった主人の臭いを頼ろうにも移動した訳ではないので地面に臭いが残っているかと言われればない......そして自身への絶望と怒りがシロを押し潰そうと溢れ出してくる。

 「友間さん......友間さん......。」


 「あっ、えーと・・・・・・シロ...?」


 「ッ!!......ゆ、友間さ〜〜〜んっ!!」


 「うわっ!、ちょっとシロ!? 少し落ち着こうか!」


 「嫌です!、もう会えないかと!? もう絶対に離れませんからねっ!!」


 「・・・・・ごめんねシロ......必死で探してくれてたんだね...。」


 そう言って抱きついてきたシロの頭を優しく撫でたあげる友間。道端という状況でなければもう少しシロに抱きつかせてあげられたのだが、シロを自身から何とか引き剥がした友間は心の中では悩んでいた。


 「んっ、何かあったのですか友間さん?」


 「まあ......。それはともかく早く帰ろう、シロ」


 「・・・・・・そうですか。」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「でっ、僕たち抜きで伊月を追ってて一緒にいたニコラが拐われたと?」


 「悪かったよダン、君とユウを置いたままやったのは悪かったけど、“何かあったら”呼んでって言ってたから?」


 「だからって何かあってから報告してくる奴がいるかよっ!!」


 ダンは友間に怒号を浴びせる、友間自身は隣にいるシロの事で心配になりつつも皆への話を続けた。


 「今夜の8時、屋敷に来いってフリストは言ってた・・・・・・。」


 どうしてそんな風な嘘をついたのかは分からない、多分だがニコラがストラングに戻ってきた時にニコラの笑っていられる居場所を守っていたかったんだと思う......。


 「そう怒らなくても良いんじゃないの『僕』?、だって奪われたのなら奪い返せば良いじゃないの?」


 「あのなユウ、敵の勢力とかスキルがまだ不明なんだぞ?」


 「×××××××××××××××?」


 「ほら、キグルミさんだって『そんな下らない理由で仲間を見捨てれと?』って言ってるよ?」


 「はー、まったく。伊月って奴の捕獲からとんだ飛び火だぜ、あーもー分かったよ全面戦争でも第三次世界大戦でもやってやるよ!」


 「そう来なくちゃね『僕』♪、そうと決まればニコラを取り戻しに行くぞー! エイエイ、オー!」


 「まー待て、いちょう伊月の捕獲についても頭の中に入れとけよユウ、それから皆もな?」


 そんな感じで決まってしまったニコラ奪還作戦、そして約束の8時まであと47分......。

Re: スキルワールド ( No.91 )
日時: 2018/12/28 23:16
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 「準備は良いか?、僕とユウが屋敷の玄関前で暴れたりして気を引き付けとくからお前らはその間に屋敷内へ侵入しとけよ?」


 「分かったよダン、残りの3人で窓から侵入してニコラを奪い返してくるよ」


 「よーし! それじゃあ『僕』!、張り切って行こうね!!」


 「ちょっと落ち着けユウ、物事にはタイミングってもの・・・・・・ちょっ!待て!ユウ!!、うわっ!!」


 「そ、それじゃあ二人とも頑張ってね......。」


 何かを言い残しながら遠ざかっていくダンを苦笑い気味に見送ってあげた友間。そろそろ作戦開始といった所だろうか?


 「じゃあ、何か物事があったら作戦開・・・・・・。」


 ーードッガァアァアアアアンッ!!!


 「・・・・・・んー、あの二人は何をしたのかなー?」


 あまりの音に振り返ってしまった友間、しかし作戦の事を思いだし残ったシロとキグルミと一緒に近くにあった窓から侵入した。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「君の答えは充分に理解したよ、友間くん・・・・・・。」


 屋敷の玄関から響いてくる音を聞いてフリストはそう言った。軽い笑いが込み上げてきて思わず笑い挙げてしまった。


 「フハハハハハッ!! ヒロインを助けるヒーローか、これも作品に取り入れよう!......と、少し前までなら考えてたかもしれんが今の僕は本気だよ、友間くん」


 フリストは待っていた。もし目の前に友間が現れたならニコラの前に二度と来れないようにするつもりなのだった。


 「ふふふ、ニコラ。お兄ちゃん今日は名作を作れるような気がするよ。」


 そう言って不敵に笑うフリスト、そしてフリストの周辺からは何か妙な物音が聞こえきたのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「いいシロ?、絶対に誰かを殺すのは禁止だからね? それと半殺しも禁止」


 「むー、友間さんがそう言うのなら分かりました......。」


 「それからキグルミさんも死なない程度に手加減とかお願いしますからね?」


 「××××××××!」


 「えーと...、それじゃあOKって意味で受け取っときます。」


 少し心配した様子の友間は、ニコラを助けようと早まる気持ちを抑えつつ薄暗い廊下を慎重に進んでいった

Re: スキルワールド ( No.92 )
日時: 2019/01/01 00:14
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 廊下を歩いていた友間一行は上の階からの騒がしい物音に足を止めていた、音は少ししたら止まったのだがどうやら屋敷には大勢の人がいるらしかった。


 「友間さん、気をつけて下さい。それから私から離れない様に......。」


 「うん、分かったシロ・・・・・。」


 ーーバギ.....ッッ..!!


 シロの後ろに回った直後、天井が不気味な音と立てて雪崩のように迫ってきたのだ。この時に初めてシロが居てくれた事を心の底から感謝の気持ちが込み上げてきた。


 「邪魔だな.........。」


 シロは迫ってくる天井を睨みつけると片手で全重量を受け止めて友間の安否を確認した。そして友間の無事が分かると安堵の溜め息を吐いて虫でも払うかのように瓦礫を押し退けたのだった。


 「ありが...とう、シロ.....。」


 「無事で本当に良かったです、友間さん」


 「××××××××××××?」


 「えーと、はい大丈夫ですキグルミさん」


 勘にも似たような感じで返事をキグルミへと返した友間は瓦礫の中で何かが動いているのが分かった。それは徐々に近づいて来ており数までは分からないがこちらより多いのは確かだろう。


 「友間さん。」


 「うん、分かってる。性質・・・・・」


 「いえ、友間さんは先に行って下さい。ここは私が引き受けます」


 「どうしたのシロ?、いつものシロと違うよ?」


 「いえ、いつも通りのシロです友間さん。ただ少し暴れるので近くにいるのは危険かと」


 「分かった! じゃあ気をつけ・・・・・いや、シロには無駄なお世話かな」


 「気をつけて下さい友間さん。それとキグルミ!、友間さんの事を任せたぞ!」


 「×××××××××!、××××××!」


 「ああ、そうか。なら安心だ」


 「何て言ってたのキグルミさんは?」


 「何でもありません友間さん、さあ先へ行って下さい」


 「うん、分かっ・・・・・うわっ....!...。」


 最初の一歩を踏み出そうとする前にシロに体を掴まれ持ち上げられてしまった。疑問を思いながら半分パニックという状態でシロを見てみると可愛く微笑みながらこんな事を言うのだった。


 「ニコラの臭いは上の階からします、なのでご覚悟をお願い致しますね♪」


 「えっ?、ちょっと待っ....!」


 だが友間が何かを言い終える前にシロによって高らかに屋敷の上の階へと投げ出されてしまい軽い悲鳴と共に友間の姿は消えていったのだった。

Re: スキルワールド ( No.93 )
日時: 2019/01/01 12:22
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 「せ、性質<炎>ッ!!」


 シロによって低空飛行のスリリングな旅をさせられていた友間は、向かう先に壁が現れてスキルを発動させた。しかし友間の意思に反して体が炎から鉄へと上書きされてしまった。


 「あれ?、何でだろ?」


 ーーガッシャァアァン!!


 疑問をよそに壁に衝突した友間だったが、さすが鉄と言うべきか壁は友間に痛みを与えるどころか壁自体が砕けてしまい友間はその中へと入っていく。


 「あー怖かった!、次こんな場面があったら優しく投げてもらう様にシロに頼まなきゃ.....」


 「ビックリした!、何でお前が飛んで来るんだよ?」


 「へっ?、誰?」


 と言って、振り向いてみるとそこに居たのは驚いた表情の伊月だった。だがそんな表情も束の間に険しい表情に変わると伊月は戦闘態勢へ移り瞬時に友間を取り抑えた。


 「ちょっと待って!、別に君に危害を加えに来たわけじゃない!・・・・・・あっ、でも元々の依頼内容って伊月の目を覚まさせるみたいな内容だった様な......。」


 「なら! やっぱりお前も俺にとっての敵だ!」


 ーーバリィン!


 すると丁度飛んできたところのキグルミが二人の横を過ぎ去っていき窓を突き破って視界から消えていったのだった。今起きた事に少しの間の沈黙が生じたが気を取り戻して話を続ける事にした。


 「え...と、友間」


 「あっ、ごめん伊月! どうしたの!?」


 「そのな、お前は敵で・・・・・・って!、俺とお前は友達か何かかよ!、お前は俺の敵だ!」


 「ああ、そうだね」


 すると友間は背中を反らして取り抑えていた伊月に後頭部からの頭突きを喰らわして態勢を崩させると床へと押し退け友間は次に備えて身構えた。


 「さすがに鉄だと少し痛ぇな。まあ鉄だろうが何だろうが強引にねじ伏せるだけだけどな」


 「こちちも無理にでも貴方を倒して美琴さんの所へ連れて行くだけです。」


 「そうか、なら死ぬんだな!」


 ーードゴンッ!


 パワータイプの伊月の拳は重いという言葉で表せる代物ではなかった。例えてみればジャッキーに殴られた感じで鉄に変化している体でも持ち堪えるだけで精一杯という心境だった。


 「ま...だ、だッ!」


 渾身の右ストレートが伊月の右頬にメリ込んだ、一瞬よろめいた様子だったが決定的な一打とは行かず伊月のアッパーが迫ってきた。


 「まだマダァッ!!」


 そう叫んだ友間は寸前で頭を傾けて攻撃を避けると伊月のアッパーを頬辺りで感じながら全力の膝蹴りを伊月の腹に叩き込んで吹き飛ばした。


 「ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ.....疲れた....。」


 最初に受けた伊月から攻撃が今になって回ってきたらしく、友間は力尽きたように床へと崩れ落ちる。しかし伊月の方はそうとはいかなかった。


 「絶対! 負けられねぇんだよ!、俺は姉さんのためにも負けられねぇんだよっ!」


 「ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ、何の事...?..」


 「お前には関係ねぇ、さあ続きをやるぜ」


 「伊月!、何してるの!!」


 「えっ、姉さん...、何で・・・・・・」


 二人の戦いに割って入るような形で現れた美琴、彼女自身も驚いている様だが伊月の方が更に驚いている様子だった。


 「これは......、これはどういう事なのっ!?」

Re: スキルワールド ( No.94 )
日時: 2019/01/13 00:11
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 「伊月ッ!、・・・・・・・ハァ...どうして....。」


 一瞬、言葉に詰まった表情になり美琴は少しだけ長く溜め息を吐いた。そして溜め息が終わり呼吸をすると揺れる視線で伊月のことを見つめた。


 「俺は....姉さんのために.....。」


 「どうして!?、どうしてこんな事が私のためになるって言うの!?」


 「・・・・・・・・・・・。」


 バツが悪そうに美琴から顔を背ける伊月、その様子はまさに親に叱られている子どもの様だった。


 「俺は......俺はさ、姉さんを助けたかっただけなんだ。ただ笑って欲しいだけなんだよ」


 「助け....たかった?」


 「ああ、姉さんの脚を治してあげたかったんだ......だけどそれには金が必要だ、俺や姉さんが見ることすらできない金が必要なんだよ!」


 そう声を荒らげて叫んだ伊月、だが友間には美琴とこの件がどう繋がっているのかが分からなかった。


 「ちょっと失礼、どうしてこの件に美琴さんが出てくるんですか?」


 「......適当に若い女を拐ってきたらフリストが金とそいつらを交換してくれるんだ.......。」


 「それって・・・・・、それじゃあ女の人たちをフリストはどうしてるの?」


 「さぁな、だが心当たりはある」


 伊月は一旦の間を置くと渋々という感じで何かを話し始めた。


 「多分、その女達は殺されてる....。」


 それを聞いた友間は全身が波打った感じがし伊月へと飛びかかりそうになったが、美琴はそれを制止すると伊月の話に耳を傾けた。


 「殺されてた...なら、まだマシだな。そのあとはフリストに体を解剖されて挙げ句、家事をこなし続けるだけの使用人として死んでもなお動き続ける事になる・・・・・・。まあ。俺の推論だから分からねぇけどな」


 「伊月...あなた・・・・・・・。」


 「み、美琴さん...?」


 怒りの含んだ声が聞こえて心配そうに友間は声を掛けてみた。美琴の顔は怒りで赤くなり今にも湯気が噴き出しそうな様子だった。


 「・・・・・・・・、伊月ッ!!」


 その一言を発して伊月へと近づいていく美琴、車椅子でありながらも怒っているからなのか淡々と前へと進んでいくその姿には迫力というものがあった。


 「伊月!、私がいつ不幸だって言ったの!」


 「いや、あの....」


 「いつ自分の脚が不憫だって言ったの!」


 迫力に圧されて後ろへと後退していく伊月、それに構わず近づいていく美琴はさらに言葉を続けた。


 「いつ!、私のために人を犠牲にしなさいって言ったの!!」


 「ひっ、あの.....その....」


 「ハッキリと言いなさいッ!、お姉ちゃんの目を見てちゃんと言いなさい!!」


 「俺は!、俺は・・・・・・・。」


 鬼と同一視すらできる程のオーラを纏った美琴、すると誰かの声が割り込んできてその場にいた人は一斉に振り返っていた。


 「これは見るに堪えない茶番劇だったな。これならハトの一生を見ていた方がまだ目の保養になるというものだ」


 「ッ!!、......フリスト!」


 「やぁ友間くん。君の答えはしかと受け取ったよ」


 「おい! フリスト!、何しにここへ来やがったんだ!」


 「伊月、君には色々とがっかりだよ。どうしようもない無能者だな」


 「あ“っ?、今何って言った?」


 気を取り直したように伊月はフリストを睨みつけると数歩前へと踏み出した。


 「だから君には失望したんだよ、姉という存在ごときに恐れを見せる君には僕の前に立っている資格さえ無い」


 伊月は怒り混じりの表情を見せると前置きなくフリストへと突っ込んでいく。しかし伊月のそんな様子を嘲笑うかのようにフリストは笑みを見せると右手に何かを構えた。


 「はい、チーズ!」


 ーーパシャ!


 「・・・・・・・・・・。」


 「全く〜、最近の若者というのは落ち着きという点に欠ける。落ち着きなくして芸術は成し得ないというのに」


 フリストはそう言って時間の停止した伊月に近寄っていく、そして何をするかと思うと何処からともなくナイフを取り出して伊月へと突き立てた。


 「さようなら、伊月。」


 「させるかッ!!」


 「友間くん、君というのは本当に単純な男だな」


 と、言ってフリストが後ろへと振り返るとフリスト自身には当たりはしなかったが友間から放たれた蹴りがナイフを掠め取りフリストの手から蹴り飛ばした。


 「すみませんが伊月を保護する事が本来の目的なんです。それに伊月を殺されると美琴さんが悲しみます」


 「君という男は単純であり馬鹿だ、これは僕自身のお墨付きだよ」


 「単純で結構です、馬鹿でも全然結構ですよ。それに伊月もニコラも返してもらいます」


 「それは楽しみだ。それじゃあ僕は視聴者として屋敷の隅っこででも楽しませてもらうよ」


 そう言って部屋を出ようとするフリストだったが、その横を瓦礫が飛び去っていきフリストの足を止めさせた。


 「ちょっと待て、あんたとは今ここで決着を着ける!」


 「まあ、お好きにどうぞ友間くん」


 「よし・・・・・、“性質ノ解放【炎】”!!」


 そう叫んだ友間の声は屋敷の全体へと木霊して響き渡った。


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