二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】
日時: 2011/10/25 19:37
名前: アニホとミシン (ID: Qh0QXHw.)

夢小説好きの友人に「銀魂の夢小説書いて!」と頼まれて書いた作品です。
初めての夢小説なので可笑しいところも多々あると思いますが、よろしくお願いしたします!


〜目次〜


>>1 プロローグ
>>2->>9 第一話(1)『魔法の国からやって来た少女』
>>10->>20 第一話(2)『とある使い魔の奔走』
>>21->>23 第一話(3)『オーガVS万事屋銀ちゃん』
>>24->>31 第一話(4)『魔法使いもヒーローも遅れてやって来る』
>>32->>57 第二話(1)『武装警察真選組』
>>58->>62 第三話(1)『その男の名は』
>>63->>72 第三話(2)『花よりも団子よりも』
>>73->>82 第四話(1)『リーフレット・キルケゴール』
>>83->>93 第四話(2)『下着泥棒って懲役何年くらいなのかな』
>>96->>100 第五話(1)『和の祭に洋の姫』
>>101->>120 第五話(2)『かくして祭がやって来る』
>>121- 第五話(3)『眠れる姫君は夢を見る』

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34



Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.79 )
日時: 2011/10/19 17:12
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)

「リーフレットさん……そんな人生なのに、なんであれだけ笑ってられるんでしょう」

 すっかり陰鬱になった空気の中、ポツリと新八が呟いた。
 その疑問にエスペランサが反応する。

「……リーフレットは、周囲の人々があいつを嫌う以上に、自分自身のことが嫌いなんですよ。大嫌いな自分が酷い目にあってるのを見ると清々すると、前に言ってやがりました」
「…………」
「あいつはね、自分が不幸だなんて微塵も思っちゃいねーんです。自分は罪を背負ってるんだから罰を受けるのは当然という思考です。だから殴られても蹴られても刺されても反抗しないし、あいつはむしろ周囲が自分を暴行しながら嘲笑っている間、傷にまみれた自分を誰よりも楽しそうに嘲笑ってやがります」
「……罪を背負ってるって、あいつ、話を聞いた限りじゃなにも悪いことしてないネ」
「ええ。でも、“キルケゴール”という一族が犯しました。……遡って何百代にも及ぶキルケゴール一族たちが犯してきた罪を、あいつは今、一人で背負い込んでやがってるんです。
 そしてその償いとして、リーフレットはキルケゴールの犠牲者遺族たちの願いはなんでも聞き入れることにしています」

 すっかり冷え切った緑茶をテーブルの上に置いて、エスペランサはソファーにもたれかかり天上を見上げた。

「いま被害者遺族たちが望んでいる第一の事柄は、『リーフレットが兄を殺すこと』。これはまぁ、キルケゴールの血統自体が憎い彼らにとって、その血筋を根絶やしにするにはリーフレットが兄を殺しやがるしかないからですね。
 そして第二に望まれているのは、『リーフレット自身の死』です」

 見上げた先の電灯の眩しさに目を細め、エスペランサは腕で瞳を覆う。

「つまりリーフレットは、兄貴を殺して自分も死ぬつもりなんですよ」
「……クラスメイトなんでしょう? 止めるつもりはないんですか?」
「リーフレットを止めるのも慰めるのも、あいつの強さに対する侮辱でしかありません。弱味を見せずに強味で魅せる。あいつと私の関係は、それでいいんです」

 罪を投げ出さないというのは、一種の強さだ。
 それが例え自分の罪じゃなかったところで————背負う必要のない濡れ衣だったところで、罪という十字架を背負い続ける彼は間違いなく強い。
 いくら傷付いて、ボロボロになって、もう手遅れなところまで彼が行ってしまっても。
 それを止められることをリーフレット・キルケゴールは望んではいない。

 強くあらなければ彼は生きられないのだ。
 自分が弱いと認めてしまったら、傷の痛みに耐え切れず心が折れる。
 そして心が折れても、彼を支えてくれる人間は一人もいない。
 むしろいい気味だと嘲笑うだろう。
 だからこそ彼は自分を嫌いになったのだ。
 誰にも好かれていない自分を嫌いになれば、罪を背負う自分を客観的に嘲笑すれば、傷付いてボロボロになった心を無視できる。

 ズタズタになった心をさらに自分で引き裂き、弱味を切除したそれを継ぎ接ぎで無理やりに繋げる。
 痛い苦しいと悲鳴をあげるパーツを、彼は意図的に無視しているのだ。
 その為の、嘲笑。
 心の悲鳴を隠すための、笑い声。

「なんつーかよォ……思ったより大変なんだな、魔法の国って」
「ええ。魔法の国ではあっても、夢と希望の国ではありやがりませんから」

 陰鬱なまま停滞する室内の空気に関係なく、窓の外の世界では、次第に夜が更けていった。
 そうして夜が、訪れる。

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.80 )
日時: 2011/10/19 17:14
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)



     *     *     *


 夜が訪れた。

 窓の外を静かに眺めているリーフレットが思ったのはそんな事で、親近感の湧くそれに知らず知らず笑みが零れた。
 星の一つも見えない、それどころか月の光すらも翳った夜空。
 味方のいないその夜空は、自分によく似ていた。

「さっきまでは晴れてたんだけどねぇ……ぎゃははっ、雨まで降ってきた」

 どこか面白そうに窓から手を突き出せば、ざあざあと降りしきる雨は瞬く間に手のひらを濡らした。
 空が泣いている、なんて感傷的なことは思わないけれど。

 そんな風にして外の景色を楽しんでいると、コンコン、と襖がノックされた。
 こっちにもノックという文化はあるのかと感心していると、すっと襖が開かれる。
 顔を見せたのは、着流し姿の土方十四郎だった。
 その手には、酒の一升瓶が握られている。

「……よォ、部屋は気に入ったか?」

 返事の変わりに片手を上げて応じる。

 真選組の面々が使っていいと案内してくれたこの部屋は、一言でいうと少女趣味だった。
 前にエスペランサが一日だけ泊まった時に使った部屋らしい。
 ディズニー映画のワンシーンに出てくるような、典型的な天蓋つきベッド。
 壁には大量のカボチャ型ランタンがかかっていて、中で燃える炎がゆらゆらと妖しく火花を放っている。
 畳や襖を除き全て白と黒の家具で統一されており、どことなく禍々しくも神秘的な印象を与えられる。
 魔女にはピッタリの部屋だろう。
 リーフレットは魔女ではないのだが、彼の持つ蠱惑的な淫靡さはこの部屋を甘ったる香りがするほどに満たし、エスペランサが使っていた時とはまた違う部屋の雰囲気を作り出していた。

 襖を閉めて部屋に入ってきた土方は窓際で雨に濡れているリーフレットを一瞥すると、天蓋つきベッドの白いシーツの上に腰を降ろす。
 その顔を揺らめく蝋燭の炎が照らし、窓の外では雷が鳴った。
 薄暗い部屋の闇を一瞬だけ駆逐する雷光。
 遅れて響く轟音に混じり、土方の呆れたような声が聞こえた。

「雷鳴ってんだから、窓くらい閉めろよ。風邪ひくぞ」
「ぎゃははっ、ごめんごめん。……で、おにーさんは酒瓶片手に僕に何の用? 飲もうってんなら少しは付き合えるけど」
「ご名答だ。ちょっと聞きたいこともあるからな。ついでに飲もうと思った」

 こっち来いとばかりにポンポンとベッドの隣を叩かれ、窓を閉めて大人しくそこに座る。
 髪を濡らしていた雨粒が肌を伝い落ち、白いシーツに滲んだ。
 仄暗い部屋の中、雨に濡れた彼の姿はどことなく不思議な色気を放っている。

「なんつーか……魔法使いとか魔術師ってやつァ美形が多いのか? 桔梗といいお前といい」
「魔法使いは基本的に美形だよん。魔術師は別にそうでもないから、これは僕がたまたま可愛い顔して生まれただけ! みたいなっ?」
「……桔梗よりは綺麗じゃねーだろ」
「桔梗より綺麗じゃねーが、桔梗より色気はあるぜぃ?」

 そう言ってどこか官能的な笑みを浮かべるリーフレットに、土方は誤魔化すようにして酒瓶の蓋をあけた。
 彼の色気に呑まれては負けだ。

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.81 )
日時: 2011/10/19 17:15
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)

 軽々と開いたふたに口をつけて酒を軽く流し込むと、たったいま自分がわずかに飲んだばかりの酒瓶を相手に渡す。
 お猪口でも持ってくるべきだったと今更ながらに後悔した。
 が、相手は人が飲んだ後の酒を気にする様子もなく平然と飲み、またこちらに酒瓶を渡してきた。
 飲んでは渡し飲んでは私を数回繰り返した後、タイミングを逃さないうちに口を開く。

「聞きたいことはいくつかあるから、順を追って尋ねるぜ」
「ん、りょーかい。で、記念すべき第一回目の質問は? 僕って口軽いからペラペラ簡単に喋ると思うけど」

 そう言って酒を飲む彼は、しかし本当に大切なことは言わないようなタイプに見えた。

「まず、お前がここに来た理由は?」
「おにーさんたちが泊まって良いって言ってくれたんじゃん」
「ちげぇよ、この世界にって意味だ」
「ああ、そっちか」

 演技がかった仕草でポンッと手を打つ。
 リーフレットのそんなところが、土方のストレス度数をわずかに上昇させた。
 人のペースを乱しに乱し、自分のペースは少しも乱さない。
 小悪魔的、という表現が当てはまる少年がいるならば、それはこいつのことなのだろうと土方は思った。

「桔梗たちのところで追及してこなかったから、てっきり気にしてないんだと思ってたよんっ。
 まあ、なんというか、人探しみたいなもんかな? 人っていうか魔術師なんだけど」
「異世界まで探しに来たくなるくらい親しい奴なのか?」
「まあ、親しいっちゃあ親しいんだろうけど……僕の兄貴だし」

 ぎゃははっ……と、そこで不自然に笑い声を部屋に響かせるリーフレット。
 彼は行き詰ったときに笑う癖でもあるのだろうか。
 負の感情から生み出される所作は艶を帯びて見えることが多い。
 異常なまでの妖艶さを纏う彼の内部は、もしかすると暗く重々しい何かで満たされているのかもしれなかった。
 だからこその色めかしさ。
 それはエスペランサ・アーノルドの瞳にも似た——痛ましい陰鬱と耽美を同時に内包したような——どこか倒錯した魅力だった。
 魔性の少年は、その艶やかな唇から音楽のような美声を紡ぐ。
 無邪気に愛らしい笑顔を浮かべて。

「まあ、色々と込み入った事情があったりなかったりなんだよねんっ。ぎゃははっ! 気になったなら桔梗かハルピュイアにでも聞いてよ。僕、人と会話するの苦手なんだからよぅ」

 ぷはっ、と酒瓶に残っていた酒を一気飲みして、口の端を濡らしていた数滴を親指で拭う。
 元から色鮮やかだった唇が、水気に覆われて瑞々しく光った。
 空になった酒瓶をベッドに投げ捨て、リーフレットはリラックスするように上半身を後ろに倒す。
 気持ち良さそうな彼を見ていると自分も真似したくなってベッドに寝転んでみた。
 なんとなく左を向くと、そこには首だけ右に向けているリーフレットの顔があった。

 かちあう視線。
 甘ったるい瞳の奥に、彼の心は映らない。

「……話すの苦手って、お前さっきからめちゃくちゃ喋ってんじゃねーか」
「そりゃ緊張してんのさ。なんなら僕の心臓に手ェ当ててみな、すっげーバクバクしてるから」

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.82 )
日時: 2011/10/19 17:16
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)

「この体勢でそんなことしてみろ、俺がお前を襲ってるみたいになるだろ」
「ぎゃははっ、なんなら魔術で体の性別転換させようか? 物凄く可愛い女の子になれる自信あるけど」
「いい女なんざ見飽きてる」
「ひゅー、おにーさんかっくいー!」

 楽しそうに叫び、足で勢いをつけてベッドから飛び起きるリーフレット。
 翻った髪から、ふわりと甘い香りが土方の鼻腔を掠めた。
 香水ともまた違う、例えるなら砂糖やチョコレートのように濃密な甘々とした匂い。
 エスペランサの髪からも白百合のような香りがしたが、顔が綺麗なら纏う香りまで綺麗なのだろうか。

 ……なんてことを土方が考えていると、もぞもぞと襖の向こうで蠢く気配を感じた。
 まさかと思って耳を澄ませてみれば、襖一枚隔てた場所からわずかに聞こえてくる声。

「副長とリーフレットくん、どうなってるのかな……」
「怪しい奴じゃないか確かめてくるって言ってましたけど……とりあえず大きな物音とかは響いてこないし」
「つーかよく考えたら、この向こうにある部屋って姫姉様が使ってたんだよな? その中に入れるなんて羨ましい! しかもリーフレットくんに至っては姫姉様の使ってたベッドで眠れるんだぞ!?」
「それを言うな嫉妬で死にそうになるから! ……でもさらによくよく考えてみれば、リーフレットくん男って感じのオーラ出てないから嫉妬のしようがないよなぁ」
「わかるわかる。じゃあ副長にだけ嫉妬しとくか」
「だな」
「呪いの言葉でも呟くか。いますぐコレステロール過剰で血管ぶち切れろ副長ー」
「今すぐ沖田隊長に撃たれて木っ端微塵に吹き飛べ副長ー」

「聞こえてんだよテメェらあぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!」

 土方がシャウトすると同時にベッドの上にあった大きな枕が投げられ、恐るべき速度で襖にヒットした。
 当然のように襖は音をたてて激しく倒れ、その後ろでヒソヒソと話していた二人を押しつぶした。
 指の骨をポキポキと鳴らしながら、襖の下敷きになった隊士たちに近付いていく土方。

「誰の血管がぶち切れろって? あぁ?」

 額に浮かぶ青筋。
 リーフレットと会話していた時よりも、だいぶストレス度数が上がっているようだった。

「ご、誤解ですよニコチン中毒!」
「そうですよクソマヨラー! 俺達、瞳孔全開野郎を呪おうなんてこれっぽっちも思ってません!」
「テメェらのその発言がすでにアウトだボケ!! つーか泣いていい?」
「あ、すいません泣いてる副長とか想像できないんで勘弁してください」
「よおしそこになおれテメェらアァァァァァァッ!!」

 うわアァァァァァ!! と叫んで逃げていく隊士二人と、それを酒瓶片手に追いかける土方。
 襖の壊された部屋の中からその光景を見て、リーフレットはふわりと微笑んだ。

「ぎゃははっ……楽しそうなおにーさんたち」

 かくして訪れた夜は、騒々しく荒々しく、さらに更けていった。
 雨も雷も、いつの間にか止んでいるようだ。

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.83 )
日時: 2011/10/19 17:28
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)



第四話(2)『下着泥棒って懲役何年くらいなのかな』


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34



この掲示板は過去ログ化されています。