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【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】
日時: 2011/10/25 19:37
名前: アニホとミシン (ID: Qh0QXHw.)

夢小説好きの友人に「銀魂の夢小説書いて!」と頼まれて書いた作品です。
初めての夢小説なので可笑しいところも多々あると思いますが、よろしくお願いしたします!


〜目次〜


>>1 プロローグ
>>2->>9 第一話(1)『魔法の国からやって来た少女』
>>10->>20 第一話(2)『とある使い魔の奔走』
>>21->>23 第一話(3)『オーガVS万事屋銀ちゃん』
>>24->>31 第一話(4)『魔法使いもヒーローも遅れてやって来る』
>>32->>57 第二話(1)『武装警察真選組』
>>58->>62 第三話(1)『その男の名は』
>>63->>72 第三話(2)『花よりも団子よりも』
>>73->>82 第四話(1)『リーフレット・キルケゴール』
>>83->>93 第四話(2)『下着泥棒って懲役何年くらいなのかな』
>>96->>100 第五話(1)『和の祭に洋の姫』
>>101->>120 第五話(2)『かくして祭がやって来る』
>>121- 第五話(3)『眠れる姫君は夢を見る』

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Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.44 )
日時: 2011/10/19 15:16
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)

 その並外れた美しさのせいで過去に陵辱されたことを鑑みれば、彼女にとって美しさとは呪いでしかないのかもしれないが。

「ふん、猿どもがギャーギャーと騒がしい。騒いでいる暇があったらさっさとこちらを護れ」

 バァンッ! と襖が開かれて、そこからカエルめいた容姿の生物——禽夜が不機嫌そうに室内に入ってきた。
 その瞬間、口には出さないものの全員が嫌そうな顔で禽夜に視線を送る。
 当然だ。近藤や自分達を“猿”呼ばわりした上に、宇宙海賊春雨と繋がっていたかもしれない相手なのだから。

 そんな周りの反感的な視線には気付いていないのか禽夜はズカズカと部屋の中に踏み入ってくる。
 さらに文句を言ってやろうと隊士達を見回したところで、そこで一際の輝きを放っている少女を見つけた。
 言うまでもなく、エスペランサ・アーノルドである。

 禽夜はエスペランサの千人が千人とも認めるであろう美貌を見て、へにゃりとだらしなく顔つきを崩す。
 このとびっきりの美少女を前にして、大抵の男は恥も外聞もなく見惚れてしまうらしまうのだ。

「これはこれは、今まで見た事がないほど美しいお嬢さんですね。本当にお綺麗だ。もしや貴方はこの世に舞い降りた天使か女神ですか?」

 歯が浮くを通り越して飛んでいきそうな臭い台詞を言いながら近寄られ、僅かに顔をしかめるエスペランサ。
 しかめられたその顔さえ、冷ややかな魅力を放っていて非常に美しかった。
 隊士たちに対してここまで偉そうという事は、つまりそれなりに立場が上の人間なのだろう。
 ならば失礼な物言いをして彼らに迷惑をかける訳にはいかない。
 禽夜からの好色な視線になんとか表情を取り繕いつつ、エスペランサは答えた。

「……いえ、ただの一般人です」
「なんと! それほどまでのお美しさなら、てっきり天界の姫君か何かだと思っていましたよ。ああ、本当に美しい……よければ名前を教えて頂けませんか?」
「斑鳩桔梗」

 なんて臭い台詞を下心丸出しの顔で言える奴なんだ消え失せろ馬鹿、とエスペランサのオーラが語っていたが、それに禽夜が気付く様子はない。
 「桔梗さんですね、私の名前は禽夜と言って……」と何故か自分の紹介をし始めたところで、見かねた近藤が仲裁に入った。

「まあまあ、落ち着いて下さいって禽夜様。桔梗ちゃんは男性恐怖症なんですよ。こっちから近付いたら嫌われますよ?」

 言いながら、背中越しにちらりと視線を向けてきた近藤。
 どうやら口裏を合わせろという事らしい。
 今度は取り繕った表情を怯える子供のような表情に変えて、エスペランサは隣にいた沖田の背中に隠れてみた。
 顔だけを向こうから見えるように覗かせる体勢。
 それなら仕方がないと諦めたのか、禽夜は残念そうな面持ちで手を引いた。
 そして、ぱんぱんっ、と手を叩いて、近藤はその場にいる全員からの注目を集める。

「今から俺は別室で禽夜様を護衛しておくから、お前らはその間に会議をして配置を決め直しておいてくれ! くれぐれも桔梗ちゃんばっかに見惚れるなよ!」
「「「はいっ!!」」」

 禽夜から離れられる事がよほど嬉しいのか、隊士たちの返事の声も大きくなる。
 「猿ごときに護衛が務まるかっ!」と喚き散らす禽夜を宥めながら、去っていく近藤。
 それらを見送った後、今まで静かにしていた土方が「こほんっ」と咳払いを一つした。

「……それじゃテメェら、会議始めんぞ」

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.45 )
日時: 2011/10/19 15:19
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)



     *     *     *


『過去の詮索って、それエスペランサ相手に一番やっちゃいけない事だっちゃよ?』

 そんなハルピュイアの言葉を聞いて、銀時はうっと息を詰まらせた。

 エスペランサとの一件から数時間後。
 あれからさすがにパチンコに行く気も失せ、どうエスペランサに謝るべきかと思案しながら歌舞伎町を徘徊していたものの、全く切り出し方がわからず、結局は万事屋に戻ってきた銀時。
 その事についてアドバイスを貰おうとハルピュイアに話した所、上記のような返答が返ってきた。
 ちなみに神楽と新八の二人は買い物に行かせてある。

『いわゆる“トラウマ”とか“心の傷”ってやつなんだっちゃ、エスペランサにとっての過去っていうのは。銀時は魔女狩りって知ってるだっちゃか?』
「……いや、知らねーけど」

 銀時のその言葉に、『じゃあ、説明するだっちゃ』とハルピュイアは続けた。

『魔女狩りっていうのは、エスペランサやウチがいる世界……つまりシャングリラで数年前まで行われてたものなんだっちゃ。
 男も被害にあってたから“魔法使い狩り”って称するべきかもしれないけど、まあ女の魔法使いに被害者が多かったから魔女狩りになったんだっちゃよ。
 被害にあった魔法使いは考えうる限りの拷問にかけられた後に処刑だれるのがお決まりっちゃ』

 銀時がテーブルに出したいちご牛乳を飲みながら、ハルピュイアは話す。

『加害者は魔術師、被害者は魔法使い。
 何百年も前から続いてきた悪習で、原因は魔法使いに対する魔術師の嫉妬やら羨望やらだっちゃ。
 エスペランサの属するアーノルド家もその被害にあって』
「はいストップ! 質問なんだけど、その“魔法使い”と“魔術師”の違いってなんだ?」

 ハルピュイアの言葉に被せるようにして発せられた銀時の疑問。
 その疑問に、ハルピュイアはポンッと手を打って返す。

『そういえば、そっちの説明もしなきゃならないんだっちゃね。んー……言葉で説明すると、魔術は学問で魔法は才能って所っちゃ。
 生まれた時から魔法使いになることを義務付けられてるシャングリラ。そこで魔法使いという天才になれなかったから、魔術という学問で勝負するのが魔術師だっちゃ。
 わかりやすく物で例えると……そうっちゃねぇ』

 呟き、ハルピュイアはいちご牛乳を飲み干して空になったコップを右手で持ち上げた。
 そこに銀時の視線が移るのを確認すると、『例えばこれが爆弾だとするっちゃ』と意味不明な発言をする。
 思わずツッコミを入れそうになる銀時だったが、説明を聞かなければ判らないとなんとか堪えた。

『この爆弾を一から自分で作って爆破しても、誰かから買い取って爆破させても、その威力は同じだっちゃよね?
 ただ前者には時間が、後者には代金が必要だっちゃ。
 この爆弾を魔法に置き換えて考えると、魔力(代金)を必要とせず知識と時間だけで魔法(爆弾)を造り上げるのが“魔術師”、魔力(代金)を払って魔法(爆弾)を使うのが“魔法使い”だっちゃ。
 魔術師の利点は魔力がなくても魔法が使えること、ただし魔法使いよりかなり時間がかかる。
 魔法使いの利点は時間がかからないこと、ただし魔術師のように魔力なしで戦えない。
 これでオーケーだっちゃか?』

 首を傾げて確認してくるハルピュイアに、銀時はギリギリで頷く。
 異世界の話なんて、今まで聞かされた事のない自分にはハードルが高すぎる。
 でもなんとか理解できた。

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.46 )
日時: 2011/10/19 15:21
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)


『じゃ、次は魔女狩りについての説明を再開だっちゃ』

 銀時の頭も休まらない内に、また長ったらしい話が再開される。

『エスペランサも含めたアーノルド家の面々は、エスペランサが六歳の頃に魔女狩りの被害にあったんだっちゃ。魔力を封じる魔法が施された地下室で、身の毛もよだつような拷問に散々かけられて、それで死んでいく……っていうのが普通の魔女狩りなんだっちゃけどね。でも、エスペランサだけは違ったんだっちゃ』

 どこか遠くでも見るような目で空のコップを眺める、ハルピュイア。

『綺麗すぎたんっちゃよ、エスペランサは。
 綺麗で、美々しくて、神々しくて、あまりにも姿形が整いすぎてたんだっちゃ。だからアーノルド家を襲って地下に閉じ込めた魔術師のグループも、エスペランサだけは殺せなかった。……でも、殺されなかっただけだっちゃ。いっそ殺された方がマシなくらい酷い目に遭わされた』
「……犯されたんだったよな。家族の生首の前で、その仇に」
『それだけじゃないっちゃ。ちゃんと拷問にもかけられた、普通の魔法使いなら百回は死ぬような拷問に。それでもエスペランサが死ななかった、死ねなかった理由がわかるっちゃか?』

 ピキッ、と、ハルピュイアが握っているコップに罅が入るのを眺めて、銀時はごくりと唾を飲み込む。
 そんな銀時にこちらも視線を合わせて、ハルピュイアは口を開いた。

『——手足を切り落とされても、眼球を刳り貫かれても、皮膚を剥ぎ取られても、腸を引きずり出されても、骨を叩き割られても、肉を切り裂かれても、ぜーんぶ向こうの魔術で治されるんだっちゃ。
 どれだけ死にそうな苦痛に苛まれても解放されない。そんな地獄に陵辱まで加わって、目の前で腐っていく家族の生首を見ながら過ごす地下室での一年って、一体どんな感じなんだっちゃかね。
 裂かれた自分の腹から内臓を引きずり出されて目の前で笑いながら食べられる光景って、一体どんな気分で見ればいいと思うだっちゃか?』
「っ…………!」

 あまりの内容に、思わず吐き気が込み上げる。
 それと同時に自分がやらかした事の重大さがわかった。

 そんなに惨たらしい彼女の悪夢を、俺は安易な気持ちで穿り返してしまったのか。

 口元を抑える銀時を見て、ハルピュイアは罅の入ったコップをテーブルに置き直した。
 そしてソファーから立ち上がり、『んー』と腕を上にあげて背伸びのような姿勢になった後、再び後ろ向きに倒れるようにしてソファーに座った。

『で、坂田はそれを聞いてどうするつもりだっちゃか?
 聞くだけ聞いて何もしないつもりなら、ウチ、怒るっちゃよ』
いつもとは違い真摯な光を宿した目で見据えられ、銀時は立ち上がる。

「……探してくる」

 そう呟くが早いか否か、真剣な表情で玄関に走る銀時。
 『うん、上出来っちゃ』と満足そうなハルピュイア。
 しかし銀時は部屋を出る直前でピタリと止まると、少しだけ振り向いて「ありがとな」と薄い笑みを浮かべた。
 再び走り出した銀時を、ハルピュイアは唖然とした表情で見る。
 数秒後、完璧に扉が閉まって銀時が出ていった事がわかると、ハルピュイアはソファーに倒れ込んで呟いた。

『……あいつ、天然パーマの癖に根はまっすぐだっちゃね』

さっきより、もっと満足そうな笑みで。

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.47 )
日時: 2011/10/19 15:23
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)



     *     *     *


「ホシは“廻天党”と呼ばれる攘夷派浪士集団。桂達とは別の組織ですが、負けず劣らず過激な連中です」

 硬い雰囲気の室内に響く、山崎退という名前らしい男の声。
 そんな声を聞きながら、エスペランサは部屋の隅で椅子に座っていた。
 自分はいらないと遠慮したのに、何故か周りの隊士たちに『姫姉様のお美しい足が痺れたら大変ですから!』『そうです! もしそんな事になったら、俺達はこの部屋にある畳を姫姉様の仇として燃やしますからね!?』と訳のわからない必死さで詰め寄られ、結果としてこうなってしまった。
 和室に椅子というのはなんとも違和感がある。
 しかも用意された椅子というのが王女が座るような豪華な造りのものなので、尚更だ。

 さきほど近藤が禽夜を連れ出してから十分後。
 すぐに言われた通りに会議が始まり、何故か関係のないはずのエスペランサもここにいた。
 帰ろうとすれば止められるのだから仕方が無い。
 いっそ今日はここに泊めて貰おうかなんてことを考えながら、エスペランサは聞こえてくる隊士たちの声に耳を傾けた。

「そうか……今回のことは俺の責任だ。指揮系統から配置まで全ての面が甘かった。もっかい仕切りなおすぞ」

 煙草を吸いながらそう指示を出す土方に、「副長」と隊士の一人から声が上がる。
 その顔に張り付いた感情は、禽夜への拒否感。

「あのガマ、局長が自分を庇って打たれた時になんて言ったと思う? 『猿でも盾代わりにはなったようだな』だぜ!? そんなこと言われてもまだ奴を護るってのか!?」
「あの野郎は俺達のことをゴミみてーにしか思っちゃいねー。自分を庇った近藤さんに何も感じちゃいねーんだ」

 次いで、他の隊士たちからも異論の声。
 それらをBGMに、山崎がおずおずと口を開いた。

「副長、勝手ですが奴の屋敷を調べてみました。倉庫からどっさりとコイツが……もう間違いなく奴ァ黒です」

 そう山崎が上着の中から取り出したのは、麻薬。
 それも先日の事件で話に上がっていた“転生郷”だった。
 その白い粉を見て、エスペランサは沖田総悟との失礼な出会いを思い出す。
 目が常人じゃないとかで呼び止められたのだ。
 しかし実はそれが建前で、彼女の美貌に思わず会話したくなっただけだという事実に、エスペランサは未だに気付いていない。
 恐らくこれからも一生気付かないだろう。

(……つーか、本当に私がここにいる意味って何なんでしょうね。交わされやがる話の内容は私に一切の関係もありませんし)

 考え、エスペランサは静かに瞼を下ろす。
 別に眠るわけではないが、なんとなくこうすると安心した。

 同じ部屋の前の方では、今も隊士たちの会話が交わされている。

「こんな奴を護れなんざ、俺達のいる幕府ってのは一体どうなって……」
「フン、何を今さら」

 当惑する山崎の声を遮って、土方のそんな声が被せられる。
 そのまま部屋の出口に向かって歩きながら、土方は語った。

「今の幕府は人間の為になんて機能してねぇ。んなこたァとっくにわかってた事じゃねーか。
てめーらの剣は何の為にある? 幕府を護る為か? 将軍を護る為か? 俺は違う。覚えてるか?」

 近藤と禽夜がいるであろう部屋の方を見て、土方は続ける。

「あの頃、学もねェ、居場所もねェ、剣しか脳のないゴロツキの俺達を、きったねー芋道場に迎え入れてくれたのは誰か。
廃刀令で剣を失い、道場さえも失いながら、それでも俺達を見捨てなかったのは誰か。
失くした剣をもう一度取り戻してくれたのは誰か」

 吸っていた煙草をふかし、隊士達の視線を背に土方は言う。

「……幕府でも将軍でもねェ。俺の大将はあの頃から近藤さんだけだよ。
大将が護るって言ったんなら仕方ねェ。俺ァそいつがどんな奴だろーと護るだけだよ。気にくわねーってんなら帰れ。俺ァ止めねーよ」

 言い切り、煙草を吹かして部屋から出て行く土方を見ながら、隊士達は何も返せなかった。
 そうして玉座で眠る姫は、ゆるりと瞼を開く。

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.48 )
日時: 2011/10/19 15:24
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)



     *     *     *


 外に出た土方が見た光景。
 それは、地面にしゃがみ込んで薪をくべている沖田と、その薪で燻る火に炙られかけている禽夜の姿だった。
 ああ、そういえばコイツさっきの会議で姿を見かけなかったな、と思う前に、土方は必死形相で叫ぶ。

「何してんのォォォォォ!! お前!!」
「大丈夫大丈夫、死んでませんぜ。要は護ればいいんでしょう? これで敵おびき出してパパッと一掃、攻めの護りでさァ」

 あっけらかんとした顔でそう返し、喚く禽夜の口に薪を差し込む沖田。
 むが! もぺ! と悲鳴になっていない悲鳴を上げる禽夜を尻目に、沖田は土方に視線を合わせた。

「土方さん、俺もアンタと同じでさァ。早い話、真選組にいるのは近藤さんが好きだからでしてねェ」

 でも、と、肩を竦める動作をする沖田。

「何分あの人はァ人が良すぎらァ。他人のいいところ見つけるのは得意だが、悪いところを見ようとしねェ。
 俺や土方さんみてーな性悪がいて、それで丁度いいんですよ真選組は」

 ついでに桔梗みたいな華も欲しいんですがねィ、と続けて、沖田は再び薪をくべる動作に復帰する。
 その言葉を聞いて、土方は「フン」と口角を吊り上げた。

「あー、なんだか今夜は冷え込むな……薪をもっと焚け総悟」

 「はいよっ!!」という返事と共に増やされる薪と、「むごォォォォ!!」という禽夜の下品な悲鳴。
 口に何本も押し込まれたその薪の中の一本に、銃弾が貫通したのは次の瞬間の事だった。
 来た、と二人がほくそえむと同時に、入り口となっている門から浪人めいた出で立ちの男達が数人入って来る。
 “廻天党”。禽夜の命を狙っていた攘夷浪士グループのお出ましだった。
 頭に『天誅』と書かれたハチマキを巻いた男が、代表として声を張り上げる。

「天誅ぅぅぅ!! 奸賊めェェ!! 成敗に参った!!」

 そうして沖田と土方のいる方を見据えると、刀を翳しながら進んでくる。

「どけェ幕府の犬ども。貴様らごときにわか侍が、真の侍に勝てると思うてか」

 自らを真の侍などとほざくその集団を気にすることもなく、沖田と土方はすらりと刀を抜いた。

「おいでなすった」
「派手にいくとしよーや」

 両名の間に火花が散り、どちらが先に斬り掛かるかという緊迫状態。

「……なるほど、こういうタイプの人間を攘夷浪士と言いやがるんですか」

 ——緊迫状態を打ち破るように、その澄んだ声は頭上から響いてきた。


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