二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】
日時: 2011/10/25 19:37
名前: アニホとミシン (ID: Qh0QXHw.)

夢小説好きの友人に「銀魂の夢小説書いて!」と頼まれて書いた作品です。
初めての夢小説なので可笑しいところも多々あると思いますが、よろしくお願いしたします!


〜目次〜


>>1 プロローグ
>>2->>9 第一話(1)『魔法の国からやって来た少女』
>>10->>20 第一話(2)『とある使い魔の奔走』
>>21->>23 第一話(3)『オーガVS万事屋銀ちゃん』
>>24->>31 第一話(4)『魔法使いもヒーローも遅れてやって来る』
>>32->>57 第二話(1)『武装警察真選組』
>>58->>62 第三話(1)『その男の名は』
>>63->>72 第三話(2)『花よりも団子よりも』
>>73->>82 第四話(1)『リーフレット・キルケゴール』
>>83->>93 第四話(2)『下着泥棒って懲役何年くらいなのかな』
>>96->>100 第五話(1)『和の祭に洋の姫』
>>101->>120 第五話(2)『かくして祭がやって来る』
>>121- 第五話(3)『眠れる姫君は夢を見る』

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Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.14 )
日時: 2011/10/19 13:55
名前: アニホとミシン (ID: WPbx8B95)


 そして次の瞬間、ハルピュイアの予想は裏切られる事になる。

 見知らぬ少女は縛られたまま男の顔面に向かって跳び蹴りし、その反動で自ら海に落ちていった。
 この程度の距離、シャングリラでなら余裕で声が聞こえる範囲なのに、主人の魔力と適合しない異世界では自分の力も弱くなる。
 よって海に落下していく少女が何と言っているのかは聞き取れないが、しかし口の動きで分かってしまった。

 ——足手まといなるのは御免ヨ、バイバイ。

 そしてその言葉を理解した瞬間、ハルピュイアは少女に向かって急降下していた。

 別に目の前の人間を全て助けたいとか、そういうのじゃない。
 ただ死に向かうその瞬間ですら微笑む少女の姿が、弱音を吐かない少女の姿が。

『エスペランサと被るんっちゃよ……!』

 船の外側ギリギリを旋回し接近、腕の代わりに足先で少女のチャイナドレスを掴む。
 よく間に合ったと自分を褒めつつ上昇……しようとした所で、自分とは逆方向から走ってきた男に激突された。

「おわぁっ!?」
『うわっ!』

 激突された拍子に右腕が船に擦られ、軽くすり傷が出来る。
 しかし、ここででぶつかってきた男に文句を言うのは検討違いだろう。
 何故ならハルピュイアの体には隠蔽魔法がかけられていて、見知らぬ男にも少女にも、その姿は見えないのだから。

 いや、見えなかったのだから。

『お前、何するんだっちゃか! ウチが咄嗟に離さなかったから良いものの、下手したらコイツが落ちてるところだったんっちゃよ!?』

 男と少女を抱えてなんとか船上に降り立ったハルピュイアは、聞こえる筈がないと思いつつも男を怒鳴りつける。
 だが聞こえない筈の自分の声は相手に聞こえているようで……それだけでなく姿まで見えているようで、驚いたような顔を浮かべられた。
 そしてその反応に気付いた自分も、同じように驚いた顔を浮かべる。

『なっ……おまっ、ウチが見えてるんだっちゃか!?』
「お前どっから湧いてきたんだよ!?」

 お互いがお互いを指差して、訳が分からないとばかりに叫ぶ。

 どうやらさっき自分が右腕を擦った拍子に、刻まれていた隠蔽魔法の魔法陣が消えてしまったらしい。
 どうやって誤魔化そうかと思案するが、しかし自分の知能ではロクな誤魔化し方など思い浮かばない。
 そうこうして悩んでいる内に、急にどこからともなく爆発音が聞こえてきた。

「陀絡さん! 倉庫で爆発が!」

 煙が上がっている方向から陀絡の部下が飛び出し、そう必死に伝える。
 そしてその爆発音をBGMに「俺はキャプテンカツーラだァァァ!!」と長髪の奇妙な男が飛び降りてきたのを切っ掛けに、ハルピュイアは自分を誤魔化す事を放棄し、この場における行動方針を決めた。

『なんだかよく分からないっちゃけど……あの耳の長い男がアイツを突き落としたんだから、それの仲間っぽい見た目の奴は片せば良いんっちゃね』

 一度助けた相手は最後まで助け通せと、主人もよく言っていた。

 ハルピュイアはキャプテンカツーラを名乗る男に向かっていく天人の一人との距離を素早く詰めると、鋭い爪のついた鷲の足でそれを蹴り上げる。
 戦闘専門のモンスターでないとはいえ怪物の力で蹴り上げられた天人は、その後ろにいた何人かの天人を巻き込んで壁に頭を打つ。
 突然バトルに混じってきたハルピュイアにキャプテンカツーラも不思議がるような眼差しを向けたが、仲間だとわかるとこちらに笑顔を向け、爆弾で周りの敵を吹き飛ばしながら言った。

「何者かは知らぬが、恩に着る!」
『たまには戦場じゃなくて、船上で舞い飛ぶのも悪くはないっちゃよ!』

 後ろから自分を襲おうとしていた天人にひざ蹴りを浴びせ、そのままの勢いで顎にアッパーカットを喰らわせる。
 何の武道も武術も下地に置いていない単調な戦い方だが、こういうザコ相手なら充分に効き目はあるようだ。

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.15 )
日時: 2011/10/19 13:58
名前: アニホとミシン (ID: WPbx8B95)


「やれえぇぇぇ! 桂の首をとれえぇぇぇぇ!」

 動物と人間を足して割ったような生物達が、いきり立ってキャプテンカツーラを攻撃している。
 桂と呼ばれているから、もしかするとキャプテンカツーラは仇名か何かなのかもしれない。

 桂は軽やかな身のこなしで敵の群れを掻い潜っては、えらく範囲の狭い爆弾で敵を倒して行く。
 時々自分の方にも届いてくる爆風に少しイライラしたが、別に熱くはないからと無理やり怒りを沈静した。


 そうこうしている内に、さっき自分にぶつかった男と耳の尖った男が勝負している光景が目に入った。
 勝負しているというか、勝負していたと言った方が正しいのだが。
 何せ耳の長い男の方は、既に地面とキスした状態で気絶している。

『へえ、アイツ強いんっちゃね……』

 言いつつ、最後に残っていた敵にひざ蹴りを喰らわせるハルピュイア。

 こうして本人すらも気付かぬ内に。
 異世界からの来訪者ハルピュイアは、銀魂世界の主要人物である坂田銀時・神楽・志村新八・桂小太郎の四人に干渉しているのであった。


     *     *     *


「それじゃ、貴方はそのシャングリラって世界からモンスターを討伐しにこっちに来た異世界人だって言うんですか?」

 主と同じ銀髪の男(本人曰く、坂田銀時という名前らしい)の背中に乗った志村新八は、信じられないものを見るような顔でそう首を傾げる。

 船から抜け出し、現在の居場所は近場の港。

 ハルピュイアはすぐに此処から飛び去るつもりだったのだが、助けてくれた礼がしたいと長髪の男に呼び止められたのだ。

 女と見紛う黒い長髪の青年は、自分の名を桂小太郎と紹介し、甘い物でも奢ると言ってきた。
 さっき『キャプテンカツーラ』と名乗っていたのは、きっと何らかのギャグか、もしくは偽名だったのだろう。
 現に今は、さきほどのよく分からない洋装から目立たない袴姿に着替えている。

『厳密に言えばウチは異世界“人”じゃないし、討伐しに来たのはエスペランサ。ウチはエスペランサの使い魔っちゃ』
「エスペランサ……なんか、随分と洋風な響きの名前ですね。外国の方なんですか?」
『外国っていうか、別世界だっちゃよ。『シャングリラ』っていう幻想と魔法の国で、第四級魔法使いをやってる十三歳の少女っちゃ』
「そ、そうですか……じゃあ、貴方のお名前は?」
『種族名はハルピュイア、個別の名前は秘密っちゃ』

 なんだか噛み合わない会話を交わしつつ、どこを目指しているのかも知らぬまま、ハルピュイアは坂田銀時(背中に神楽&志村新八を装備中)と桂小太郎に着いて行く。
 主人に似ているとハルピュイアが思わず助けた神楽は、疲れたのだろう、坂田銀時という男の背中でぐっすりと眠っていた。

「で、そのエスペランサって奴はどこにいやがんだよ。何かあぶねー生物を倒しに来たんだろ?もう戦闘中なのかよ」

 白髪ともとれる淡い銀に、死んだ魚のような目。
 和洋折衷したファッションと腰に差した木刀。
 ずっと「あー、おもてーなチクショウ」とか「俺が筋肉痛になったらどーすんだよ」としか呟いていなかった坂田銀時は、船上での会話以来、初めてハルピュイアに話しかけてきた。

 同じ銀髪でもエスペランサの方が綺麗だ、と失礼な事を考えつつ、ハルピュイアもその質問に答える。

『いや、もしオーガに遭遇してたらウチを呼び戻す筈っちゃよ。それにもし戦いが始まってたら、魔力の乱れで魔法を使ったかどうかが判断でき……』

 「判断できるんっちゃ」と続けようとした所で、ピタリとハルピュイアが動きを止めた。
 それに気付いた桂小太郎が、「どうしたのだ?ハルピュイア殿」とこちらを振り返る。
 ハルピュイアは、そんな桂に目もくれない。

 今、確かに魔力の乱れを感じた。

『あまり大きな乱れじゃないから……転移魔法っちゃかね? いや、自分に隠蔽魔法をかけたって可能性も……』
「……もしもーし、おじょうさーん?」

 一人でブツブツと呟き始めるハルピュイアに、銀時は少し引き気味な表情でブンブンと手を振る。
 電波系と称される桂は特に何とも思わないのか、ただただ不思議そうな顔で首を傾げるだけだった。

 そして次の瞬間、銀色の影が5人の目前に降り立つ。

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.16 )
日時: 2011/10/19 14:00
名前: アニホとミシン (ID: WPbx8B95)



     *     *     *


「刻んだ魔法陣が消えた感覚がしたから、何事かと思って転移してみれば……何してやがんですか、ハルピュイア」

 突如として目の前に降り立った少女に、志村新八は現実感を失って魅入った。

 ——それは、怖気が走るほどに美しい少女だった。

 天使の輪が輝く銀色の髪と、小さな白い顔。
 その器の中には、奇跡としか言い様のないバランスで各パーツが配置されている。
 その一つ一つのパーツも、これまた今まで見た事がないほど精巧だ。
 神様という職人が作った人形じゃないかと思うほどに。

 涼しげを通り越して凍てついている眼は、彼女の美しさを増徴させることはあっても損なうことはない。
 自分が芸術家だったなら、今すぐにでも彼女をモデルにして絵を描き出したいくらいだ。

 見る者を思わず惹き付け、そして同時に強烈な違和感や拒否感をも催させる暗い華。
 美しく刺々しく、それ故に普通の人間なら話しかけるのも躊躇うだろう少女。

 しかしそんな少女を見て、臆するどころか、ハルピュイアは大輪の向日葵が咲くような笑顔を浮かべた。

『エスペランサ! わざわざ会いに来てくれたんっちゃね!』
「貴方は一々抱きついてやがんじゃねぇです! そして押し倒すな! 馬乗りになるな! 頬を引っ付けるな!」

 ……エスペランサって、さっき言ってた魔法使いさん!?
 と驚愕する新八、そして固まるその他メンバー。
 彼らを尻目に、ハルピュイアは大量のハートマークを飛ばしてエスペランサに抱き着いていた。

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.17 )
日時: 2011/10/19 14:15
名前: アニホとミシン (ID: WPbx8B95)



     *     *     *


 場所は打って変わって、歌舞伎町のとあるファミリーレストラン。

 あれからハルピュイアを連れてその場を退こうとしていたエスペランサだったが、「ハルピュイア殿に礼をしたい」と桂小太郎の制止を受け、仕方なく中断したのだった。

 何故か着いて来ている坂田銀時・志村新八、そしていつの間にか目覚めてパフェを頬張っている神楽。
 桂小太郎と電波的なトークで盛り上がっているハルピュイアの異常な造形は、天人がいるこの世界では多少珍しい程度で、特に周りに騒がれる事もなかった。
 むしろ、それよりも目立っているのが……

(エスペランサさん、これだけ周りから黄色い悲鳴が上がってるのに全く反応なしだもんな……)

 良家の令嬢を思わせる品のある食べ方でパフェを口にしているエスペランサを見て、志村新八は再び彼女に見惚れた。
 彼女が食べていると、安物のパフェでも一流パティシェのお手製に見える。

 いや、自分だけではない。
 これ見よがしにイチャついていた男女のカップル、キャリアウーマン風の子連れ女性、マラソン帰りと思しきジャージ姿の老夫婦……周りの客全員、彼女が入店した瞬間に各々の動きを止め、その氷壁のように揺ぎ無く冷たい美貌を食い入るように見詰めた。
 それは営業スマイルを浮かべていた店員までもで、注いでいる最中のコーヒーがカップから溢れるのも気にせず、時間にしておよそ五分は彼女をガン見していた。

 そして今では、彼女が一挙一動するたびに周りから歓喜の悲鳴が上がり、中には携帯電話で写真を撮っている者さえいる。
 奥の方から聞こえてくる
「おいっ、次あの子にお茶いれるの俺だからな!」
「何を言ってやがんだ、俺に決まってんだろ!」
「新米は下がってろ! ここは年功序列的に俺だろ!」
「いや、ここは店長の俺が……」
「テメェがいつ店長になった!」
 という男店員達の醜い言い争いも、もう十分以上は続いているだろう。

 既に食事を終えている客も帰る気配を見せずエスペランサを眺め続け、壁に設置された大きな窓の向こうでは、通りすがりの者達が野次馬になり頬を染めて彼女を見ている。

 芸能人が来店してもこれ程にはなるまいと断言できる。
 しかしそんな状況下に置かれても、彼女はなんら問題ないとばかりに、他の客達に比べて明らかにサービスされまくったチョコレートパフェを食べるだけだった。
 こういう状態に慣れているのか、あるいは自分がとてつもなく美しいという事実に気付いていないのか。

 どっちにしろ、通行人も含む男達から殺気じみた妬みの視線が飛んでくる事が、ナイーブな自分にはかなりキツイ。
 その視線を気にせず座っていられる銀時と桂は、さすがと表現する他ないだろう。

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.18 )
日時: 2011/10/19 14:17
名前: アニホとミシン (ID: WPbx8B95)


「……ハルピュイアの奴から聞いていやがるでしょうが、改めて自己紹介をさせて頂きます。
 エスペランサ・アーノルド、年齢は十三、性別は女。
 この世界で私の実名は浮きそうな気がするので、斑鳩桔梗とでも呼びやがって下さい」

 パフェを食べ終わりゆっくりと手を合わせると、エスペランサはそう話を切り出した。

「わかりました、斑鳩さんですね。えっと……僕の名前は志村新八で、こっちの女の子が神楽ちゃんです」
「おう、よろしくアル」
「……で、こっちのさっきから甘い物しか食べてない人が坂田銀時。僕は銀さんって呼んでます」
「おう、よろしくな」

 なんとか話を長引かせようという新八の努力も虚しく、銀時と神楽は目の前のパフェを貪るのに夢中で雑な返事しか口にしない。
 視線に限っては、ずっとパフェを向いたままだ。
 これだけ現実離れした稀代の美少女を前にしても、どうやらこの二人は食欲を優先するらしい。

 そんな二人の分を補うように、今度は桂が自己紹介を開始する。

「桂小太郎、攘夷志士をやっている。どうだハルピュイア殿とエスペラ……桔梗殿、パフェは美味いか?」
「攘夷志士ってのは判りませんが、パフェは美味しいですよ。愛情を込めて作りやがってるってのが、よく感じられます」

 知らない単語に疑問を抱きつつ、素直にパフェの感想を喋るエスペランサ。
 今エスペランサ達が食べているパフェは、ハルピュイアに礼をしたかった桂の奢りだ。
 銀時達が着いてきたのは、どうやらドサクサに紛れて自分達も奢って貰おうという魂胆らしい。
 そして自分のパフェだけが異様に豪華だった事に、エスペランサは気付いていない。
 それは『ウチも美味しかったっちゃ!』と笑顔を浮かべているハルピュイアや桂も同じようで、どうやら周りを気にしているのは自分だけらしいと思うと、志村新八は痛む胃を抑えて静かに溜息を吐くのだった。

「モグモグ……それで、桔梗はどうやってその何ちゃらっていう化物を倒すアルか? つーか、見つけられるのかがそもそもの疑問ネ」

 頬の中にパフェを詰め込み、顔を沢山の生クリームで汚した神楽がここに来て初めて口を開いた。
 その様子に若干「指摘した方がいいんですかね……」とでも言いたげな表情をしたエスペランサだったが、特に言及することもなく、その質問の素直に答えた。

「今は息を潜めてやがるみたいだから感じ取れねーですけど……何らかの行動をおこしやがれば、その些細な気配の乱れで場所を判定できますよ」
「何らかの行動って、例えば何ネ」
「モンスターが感情の昂ぶる気配を抑えやがれなくなるような行為、つまるところ殺傷行為ってとこですかね」
「なっ……!」

 何でもないように言うエスペランサに、神楽が絶句する。
 それは傍で聞いていた自分も同じだった。
 まさかこんな美しい少女の口から、殺傷なんて言葉が出てくるなんて。


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