二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】
- 日時: 2011/10/25 19:37
- 名前: アニホとミシン (ID: Qh0QXHw.)
夢小説好きの友人に「銀魂の夢小説書いて!」と頼まれて書いた作品です。
初めての夢小説なので可笑しいところも多々あると思いますが、よろしくお願いしたします!
〜目次〜
>>1 プロローグ
>>2->>9 第一話(1)『魔法の国からやって来た少女』
>>10->>20 第一話(2)『とある使い魔の奔走』
>>21->>23 第一話(3)『オーガVS万事屋銀ちゃん』
>>24->>31 第一話(4)『魔法使いもヒーローも遅れてやって来る』
>>32->>57 第二話(1)『武装警察真選組』
>>58->>62 第三話(1)『その男の名は』
>>63->>72 第三話(2)『花よりも団子よりも』
>>73->>82 第四話(1)『リーフレット・キルケゴール』
>>83->>93 第四話(2)『下着泥棒って懲役何年くらいなのかな』
>>96->>100 第五話(1)『和の祭に洋の姫』
>>101->>120 第五話(2)『かくして祭がやって来る』
>>121- 第五話(3)『眠れる姫君は夢を見る』
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- Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.54 )
- 日時: 2011/10/19 15:35
- 名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)
* * *
「……なんですか、この食べ物かどうかも怪しい物体は」
急に目の前にドンッ! と置かれた奇妙などんぶりに、エスペランサは困惑全開の顔で呟いた。
シンプルなどんぶりの上に米。
そこに惜しげもなく浴びせられた、大量の白と黄色の中間色っぽい流動体。
こんな食べ物は教科書ですら見た事がない。
そんなエスペランサの様子を尻目に、隊士たちと、沖田と、いつの間にかいた土方までもが周りを取り囲んで言った。
「いいから食べなせェ」
「美味いから喰ってみろって」
「すいません姫姉様、こんなクソマズイものをお出ししてしまって……でももう少しカロリーとらないと姫姉様がヤバイから!」
「見た目はこんなんですけど毒とか入ってませんし、とりあえず一口からでもどうぞ!」
「口直しにドリンク大量準備してますんで!」
必死な様子で口々にそう言われてしまえば、断る術もない。
自分の胃が拒絶反応を示さないか心配しつつ、エスペランサはその謎のどんぶりに恐る恐るスプーンを近づけた。
ごくり、と、周りで見守っていた隊士たちがつばを飲み込む。
そしてエスペランサの唇にスプーンが運ばれると、その瞬間、エスペランサの動きがピタリと停止した。
「ひ、姫姉様……?」
心配するようにエスペランサの顔を覗き込む隊士。
そんな隊士を尻目に、エスペランサは黙々とスプーンを口に運び続けた。
そして十五分もすれば、どんぶりの中身が平らげられる。
からんっ、とどんぶりの中にスプーンを置いて、エスペランサは手の平をゆっくりと合わせた。
「……ごちそうさまでした」
その声は、どことなく生気がないように感じられる。
傍らに用意されていたミネラルウォーターを、砂漠でオアシスを見つけた遭難者のような勢いで飲み干すと、そのままテーブルに突っ伏した。
「なんとか食べ尽くしましたが……胃が機能不全をおこしそうです。あと二週間は何も食べなくても活動できやがりそうな気がします」
いつもにも増して青白い顔のエスペランサ。
その呟きを聞いて、隊士たち全員の殺気が篭った視線が土方に送られた。
「何で俺!? 土方スペシャル持って来いって言ったのお前らだろーが!」と吠える土方を背景に、沖田が新しいミネラルウォーターのボトルを持って近付いてくる。
そしてテーブルに倒れ伏すエスペランサの隣に跪くようにしてしゃがみ込むと、ボトルキャップを開けながら顔を近づける。
「水、飲めますかィ?」
「ええ、なんとか……」
テーブルに向いていた視線がこちらを向き、その顔のあまりの端整さに、思わずドキリとした。
隊士たちと違って目を合わせただけで気絶するような真似はしないが、もし微笑みかけられたりすれば自分でも危ないかもしれない。
そんな不埒なことを考えつつ、ペットボトルをエスペランサに差し出す沖田。
それを受け取ったエスペランサは、またしてもオアシスを見つけたようにミネラルウォーターを飲み始めた。
その病的なまでに白い喉が蠕動する様に、土方に殺気を送っていた隊士たちまでもが見惚れた。
その場にいる隊士全員の心は一緒。
(((ああ、なんてお美しいんだ姫姉様……)))
- Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.55 )
- 日時: 2011/10/19 15:36
- 名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)
周囲の思考など露知らず、ミネラルウォーターを飲み干したエスペランサはやっと落ち着いたようにテーブルから顔を上げる。
顔色は相変わらず悪かったが、どうやら胃の不快感は治まったようだ。
「もしもーし、多串くんに総一郎くーん! ここに斑鳩桔梗さんはいませんかー!!」
そんな棒読みの大きな声が聞こえてきたのは、突然のことだった。
やる気のなさそうな、なんとなく眠たそうな、とにかく覇気がまったく感じられない声。
聞き覚えのある声に、さっきまで和気藹々(?)な食事タイムを楽しんでいたエスペランサはがばりと立ち上がった。
「この声……もしかしてももしかしなくても、坂田さんじゃねーですか」
窓から姿は見えないから、どうやら屯所の入り口前から大声で叫んだらしい。
「あれ? なんで旦那の声なんかするんだ?」とざわつく隊士たちを背景に、エスペランサは悩む。
はっきり言って、顔を合わせるのが気まずい。
しかしここで行かなければ、あの男はいつまでたっても門の前から動かないだろう。
会って一週間も経過していないが、坂田銀時という男がそのくらい平気でやれる男だということはなんとなく分かる。
「……しゃあねぇ、行きますか」
立ち上がり、エスペランサは苦々しい表情で一歩を進めた。
- Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.56 )
- 日時: 2011/10/19 15:37
- 名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)
* * *
屯所の門の前で叫びながら、銀時はエスペランサになんと謝るかを考えていた。
(「お前を傷つけてしまったことを……本当にすまないと思っている」いや駄目だ、これただのジャック・バウアーだし。「この哀れな下僕めをお許し下さい」……いや、俺どこの奴隷?)
勇んでこの場まで来たはいいものの、肝心の言葉をまだ考えていなかった自分。
しかしそんな自分の都合など関係なしに、時間の経過は次の場面を呼び寄せた。
「……おはようございます、坂田さん」
綺麗な声に、心臓が高鳴った。
自分の本能に苦笑したくなる。
どうして何処にいてもどんなに距離があっても、彼女の声だけはすぐに聞き分けられるのだろう。
「……よう、桔梗」
彼女は屯所内の壁から顔だけを覗かせ、どこか気まずそうな表情でペコリと頭を下げた。
どうやらハルピュイアの言う通り、怒ってはいないらしい。
いっそここで怒鳴り散らしてくれたら、自分も土下座なりなんなり出来るのだが。
だがまあ、己の気位など今は構っていられない。
なんと謝るかさっきまで悩んでいた。
けれども彼女の顔を見れば、言うべきことなど決まってしまった。
銀時はゆっくりと彼女の前まで歩くと、その一歩手前で動きを止める。
そして真摯な目でエスペランサを見詰めると、まっすぐに右手を差し出す。
そして、たった一言。
「お前を幸せにさせてくれ」
目の前の彼女の瞳が、揺れたのがわかった。
しかし今更言い直す気もない。
“すまなかった”よりも、“もうしない”よりも。
彼女を傷つけてしまった自分がこれからどうしたいかを、坂田銀時はエスペランサ・アーノルドに伝えた。
形だけの謝罪なたばいくらでも口にできる。
ならば自分は、行動でそれを示そう。
これから先、彼女が元の世界に返れるまで、彼女にどんな災難が降りかかろうとも、絶対に幸せにしてみせる。
それが、自分の出した答えだ。
そんな銀時の真摯な姿に、エスペランサは俯きがちに口を開く。
「……坂田さん。実は私、天国を探してるんですよ」
「……ああ」
「あの世って意味じゃありやがりませんよ? ただ、自分が希望を抱いても否定されない、そんな場所が欲しいんです。地獄に堕ちた日からそれを探して探して探し続けて————ついに今まで見付かりませんでした」
すっと、銀時と同じように手を差し出して、桔梗は顔を上げる。
「貴方は、私の天国になってくれますか?」
涙を堪える子供のような表情。
嗚呼、彼女はまだ十三歳なのだと、このとき初めて感じた。
その表情に応えるように、銀時は差し出された手に自分の手を重ねる。
「ああ……!」
約束しよう。
これから先、彼女に何があっても、絶対に彼女を護りきってみせると。
幸せにしてみせると。
太陽に照らされた彼女の顔は、いつの間にか笑顔に変わっていた。
それを見て、ふと思う。
嗚呼、彼女はこんなにも美しく笑うのか。
- Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.57 )
- 日時: 2011/10/19 15:38
- 名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)
* * *
同時刻、屯所から上空に五十メートルほど離れたとある空中空間にて。
銀髪の二人を見下ろす影が、そこにはあった。
ショッキングピンクの髪と瞳に、腕から生えた猛禽の翼。
そんな彼女の背中に乗っているのは、メガネくらいしか特徴のない少年と、ゴシックロリータ姿の少女。
上から順にハルピュイア、志村新八、神楽の三人である。
未だエスペランサと服を交換したままの神楽は昨日からずっとゴシックロリータを着ていた。
「こっからじゃよく見えないけど、なんか仲直りしたみたいアル」
「良かったですね、ハルピュイアさん」
『……だっちゃ』
ほのぼのとした雰囲気の二人。
しかしハルピュイアだけはどこか気になるところがあるような表情をして、銀時とエスペランサを見下ろしていた。
その表情に気付いた新八が、ハルピュイアの顔を覗き込む。
「どうしたんですか? ハルピュイアさん。なんか納得いかないような顔してますけど……」
『いや、そういうわけじゃないんだっちゃ。ただ……気になる事ができただけで』
ポツリ、と、それが最大級の心配事であるかのように、ハルピュイアは呟いた。
『桔梗に対して、“あの禁句”とか言ってなければいいんだっちゃけど……』
* * *
そしてさらに同時刻。
場所は京都のとある旅館にて、その男は窓際に腰掛けていた。
右手でパイプの煙を燻らせ、その視線の先には真選組に関する記事が書かれた新聞紙。
女物の毒々しい着流し姿の彼は、その記事に掲載されている少女の写真を見て唇を吊り上げる。
そしてゆっくりと、煙を吐き出した。
「……近々、江戸に戻るのも悪かねェな」
巻かれた包帯のその奥で、瞳は得物を狙う獣のように光った。
- Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.58 )
- 日時: 2011/10/19 15:56
- 名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)
第三話(1)『その男の名は』
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