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【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】
日時: 2011/10/25 19:37
名前: アニホとミシン (ID: Qh0QXHw.)

夢小説好きの友人に「銀魂の夢小説書いて!」と頼まれて書いた作品です。
初めての夢小説なので可笑しいところも多々あると思いますが、よろしくお願いしたします!


〜目次〜


>>1 プロローグ
>>2->>9 第一話(1)『魔法の国からやって来た少女』
>>10->>20 第一話(2)『とある使い魔の奔走』
>>21->>23 第一話(3)『オーガVS万事屋銀ちゃん』
>>24->>31 第一話(4)『魔法使いもヒーローも遅れてやって来る』
>>32->>57 第二話(1)『武装警察真選組』
>>58->>62 第三話(1)『その男の名は』
>>63->>72 第三話(2)『花よりも団子よりも』
>>73->>82 第四話(1)『リーフレット・キルケゴール』
>>83->>93 第四話(2)『下着泥棒って懲役何年くらいなのかな』
>>96->>100 第五話(1)『和の祭に洋の姫』
>>101->>120 第五話(2)『かくして祭がやって来る』
>>121- 第五話(3)『眠れる姫君は夢を見る』

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Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.39 )
日時: 2011/10/19 15:06
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)



     *     *     *


「ったく、このヤローは……」

 悪趣味なアイマスクをつけて眠っている沖田に、土方はストレスで痛む胃を抑えつつ刀を向けた。

「おい、おきろ統悟。警備中に寝るたぁどういう了見だコラ」
「なんだよ母ちゃん、今日は日曜日だぜィ。まったくおっちょこちょいなんだから……」

 沖田はぼやきながらアイマスクを上げて目をこすり、そこに土方の「今日は火曜日だ!」というツッコミが飛んだ。
 土方が、ストレスを抑えるように煙草に火をつける。

 あれから禽夜という幕府の高官を護衛しなけばならなくなった真選組隊士たちは、屯所の周りで各配置に着いていた。
 ……のだが、やはり沖田にやる気はないらしく、いつも通りのいざこざになる。
 そして恒例の真剣勝負未遂になったところで、「仕事中に何遊んでんだアァァァァ!」と、近藤の拳骨が飛んできた。
 その光景を見ていた禽夜がさらに近藤に拳骨を落とし、「役立たずの猿めが!」と呟きながら去っていくのを眺め、沖田は気に入らなさそうな表情でぼやいた。

「なんだィありゃ。こっちは命がけで身辺警護してやってるってのに」
「お前は寝てただろ」
「幕府の高官だかなんだか知りやせんが、なんであんなガマ護らにゃイカンのですか?」

 土方の華麗なるツッコミをスルーして悪態を吐く。
 そんな沖田を諭すように、近藤が隣に座って語り始めた。
 曰く、自分達は幕府に拾われた身だから恩に報いるべきで、忠義を尽くすは武士の本懐。
 つまり、真選組は幕府を護るためにあるという。

 しかしそんな意見を保持しているのは近藤ぐらいなもので、沖田を筆頭とした殆どの隊士たちは禽夜を護ることに消極的、監察方の山崎退に至っては全力でミントンをしていた。
 それに気付いた土方が、「山崎イィィィィィ!」と叫んで彼を追いかける。
 そんな光景をバックに、近藤は続ける。

「総悟よォ、あんまりゴチャゴチャ考えるのは止めとけ。
目の前で命狙われてる奴がいたら、いい奴だろーが悪い奴だろーが手ェ差し伸べる。それが人間のあるべき姿ってもんだよ」

 と、そこまで語ったところで、勝手にどこかに出歩こうとしている禽夜の後姿を発見。
 気付いた近藤が慌てて禽夜を追い掛けるのを見ながら、沖田はしょうがないとばかりに呟いた。

「はぁー……。底無しのお人好しだ、あの人ァ」

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.40 )
日時: 2011/10/19 15:08
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)



     *     *     *


 逃げた部下を追い掛けていた土方十四郎が、その少女と会ったのは、屯所の前の事だった。

 どこぞの万事屋の娘が着ていたのとソックリ……というか明らかに神楽が着ていたのと同じチャイナドレスを身に纏った、銀髪の少女。
 その銀髪を視界に入れた瞬間に思い浮かんだのは、憎たらしい万事屋の顔と、今朝隊士たちが話していた噂だった。
 化物と戦っていたという、銀髪の美少女。
 イイ女など腐るほど見てきた土方だったが、それでもこの少女には思わず目を見張った。

 その肌も瞳も髪も手も足も唇も腰も、目に映るもの全てが人間では有り得ないほどに美しい。
 彼女が自分を女神だと名乗れば、きっとどんなに理知的な男でも一瞬でそれを信じてしまうだろう。
 その荒んだ気配を感じさせる美は、女神というより魔女かもしれないが。

「……私に何か用でもありやがりますか、黒服さん」

 可憐な鈴の音が聞こえてきた。
 そう思ったらそれは目の前にいるこの少女が発した声で、声までこんなに美しいのかと改めて驚いた。
 どれだけ才能のある歌手が練習を積み重ねたところで、この美しすぎる声は到底出せないだろう。
 少し乱雑な口調も、それが一種のギャップとなって、不思議と彼女の魅力を引き立てていた。

「……あの、聞いてやがるんですか?」

 怪訝そうに眉を顰める少女の一声に、慌てて意識を現実へと引き戻した。
 いつまでも眺めていたくなるこの少女の美貌は、一種の麻薬に等しい。
 与えられる感動と恍惚は、そんな下賤な物体の比ではないが。

「あ、ああ。特に用ってわけでもねぇんだがよ……そのチャイナドレスって、万事屋んとこのチャイナ娘が着てた奴だろ? 知り合いなのか?」

 素直に『貴方の素晴らしい美しさに見惚れていました』とはさすがに言えず、土方は少女のチャイナドレスを指差して誤魔化す。
 少女は「ああ……」と納得したような表情になり、自分の姿を確認するように下を見る。

「ええ、神楽さんとは昨日知り合ったばかりです。
 私のゴシックロリータに興味があると言っていたので、神楽さんのこのチャイナドレスと交換させて頂きました」
「そうか……えっと、お前の名前は? 俺は土方十四郎というんだが」

 言ってから、名前を聞くのが急すぎたかと後悔。
 しかし口が勝手に開いたのだから仕方がない。
 この眩いばかりの美少女の前で、常識の抑止力などないに等しい。

「土方さんですか。私は斑鳩桔梗、斑鳩でも桔梗でも、そうぞお好きに呼びやがって下さい」

 呟き、少女、斑鳩桔梗はこちらをじっと見つめる。
 正しくは、土方が着用している真選組の隊服をだ。
 何か隊服に思い当たる節でもあるのだろうか。
 もしかしたら、今朝この少女の噂話で盛り上がっていた隊士たちに知り合いがいるのかもしれない。

 そう考え、逃げた部下を追いかけることも忘れて少女との親睦をさらに深めようと思い立ったところで、その音は唐突に聞こえてきた。

 バァンッ! と、銃器——狙撃銃の類で何かを撃ったような、そんな破壊音。
 次いで響いてくる、「局長ォォ!!」という叫び声。
 それだけで全てを理解し、土方は屯所の中に向かって駆け出した。

「ちょっ、どこに行きやがるんですか!?」

 何故か、少女の腕まで握った状態で。

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.41 )
日時: 2011/10/19 15:11
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)



     *     *     *


 斑鳩桔梗……もとい、エスペランサ・アーノルドは混乱していた。
 坂田銀時を相手に珍しく感情的になってしまい、頭を冷やそうと歩いていたら知らない奴に話し掛けられて、銃声が聞こえたと思ったら知らない奴に腕を引かれて知らない建物に入らされる。
 これはどんな三流映画のあらすじなのだろうか。
 しかもその相手が精悍な顔立ちの美青年ともくれば尚更。
 前に出会った沖田総悟と同じ服を着ていたことなど気にせずさっさと歩いて行ってしまえば良かった……と考えていたところで、急に土方が自分の腕を離し、奇妙なカエルのような生命体に切りかかろうとしていた少年を制止した。

 その栗毛の少年には見覚えがある。
 沖田総悟。初対面から、自分の目を麻薬中毒者なみにイッていると称した男。

 そんな彼の目は、いま瞳孔が開ききって非常に危ない雰囲気を放っている。

(私の目をヤバイなんて言っておいて、向こうもあんな目ェしてんじゃねーですか……)

 心中ぼやきつつ、近くに生えている大木に静かに寄りかかるエスペランサ。
 自分の腕を引いてきた男が何を考えているのか知らないが、連れてこられたということは何か理由があるのだろう。
 ならば迂闊にここから動けない。

(……あるいは、それは建前で万事屋に戻り難いってだけかもしれませんが)

 思わず睨みつけてしまった銀時の反応を思い返しながら、はぁ……と溜息を吐く。
 基本的に自分は、知らない奴に過去を抉るような質問をされてもあそこまで感情的にはならない。
 それなのに銀時相手にあそこまでの反応を示したということは、彼に対して多少なりとも好意を持ったりしていたのだろうか。

(いや……好意っつーか、安心感とでも表すべきですかね。私らしくもねぇ)

 初めて会ったばかりの相手の家で眠るというのに、安眠できた。
 今朝おきた時は不思議に思わなかったものの、改めて考えてみればその事実も驚きに値するもので。
 あの地獄から解放された後、一度もぐっすりと眠れた事なんてなかったのに。

 何処で何をしていても常に気を張っている。
 そうクラスメイトに評された普段の自分は、シャングリラに忘れでもしてきたのか。

「……考えてても、埒があきやがらねーですね」

 呟き、ゆっくりと木から体を離す。
 眼前の光景に意識を移動させれば、そこに倒れているのは毛深い男性。
 一言で表すならゴリラ、二言で表すなら精悍なゴリラ。
 そんな男性が右肩を打ち抜かれて、それを同じような服をきた男達が心配そうに囲んでいる。
 その光景を見て、ますます自分が連れてこられた意味がわからなくなった。
 わからない。が、それで出来ることはわかる。

「ちょっと失礼します、のきやがって下さい」

 スタスタと黒服の群れに近付き、そう淡々と呟くと負傷した男性の前で膝を着く。
 周りの男達は、突然乱入してきた見知らぬ少女に軽く固まっていた。

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.42 )
日時: 2011/10/19 15:12
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)

 時折「すっげぇ美人……」「天使だ……いや、それ以上だ……」などの血迷った発言が聞こえてきたような気がしたが、きっと自分の幻聴だろう。

「……我が手に集え、安楽の光よ」

 治癒魔法の中でも最も初歩的な呪文を唱え、倒れている男性の傷口に手を翳す。
 ぽうっ、と淡い光が傷口を包み込み、そのままギリギリ肉眼で確認できるほど遅いスピードで塞がっていく傷。
 その光景を見て、周りから「おおぉっ!」という歓声が上がる。
 全開の自分ならもっと上級の魔法を使って一瞬で治せるのだが、今は全開とは程遠いコンディション。
 普段の魔力量が一万だとすれば今は十といった所なのだ。

「お前、それどうやって……」

 傷がやっと四割ほど治ったところで、自分をここまで連れてきた土方と名乗る男が話しかけてきた。
 その表情に浮かぶのは驚愕。
 そこで、自分は事の重大さにやっと気付いた。

(……そういえば、こっちの世界じゃ魔法文化なんて一ミリ足りともありやがらねーんでした)

 なんという痛恨のミス。
 だが気付いた時にはもう遅し。
 土方の発言を皮切りに、周りで息を呑んでいた隊士たちも次々に質問を飛ばしてきた。

「それって魔法か何か!? 貴方って魔法使いなんですか!?」
「噂の銀髪の美少女さんですよね!? あの、お名前って何ですか?」
「なんで屯所にいるんですか? いや、めちゃくちゃ嬉しいですけど!」

 その凄まじい勢いに、軽く身を引く。
 な、何でこんなに喰い付いてやがるんですか……とエスペランサが目の前の男達を理解不能の生物に指定しようとした時、頭上から「なぁ」と聞き覚えのある声が降ってきた。
 治癒を続けたまま仰いで見れば、視界に入ったのは亜麻色の髪と爽やかな顔立ち。
 開いた瞳孔が普段どおりに戻った、沖田総悟だった。

「アンタ、昨日会った斑鳩桔梗さんですよねィ? なんで万事屋んとこのチャイナと同じ格好してんでさァ」
「……あれから色々とあって、今に至りやがります」
「適当すぎまさァ。で、その魔法だか超能力だかわからない能力は?」

 あはは、万事屋と真選組って知り合いなんだー……というテンションで現実逃避を試みたが、無理だった。
 魔法。ありきたりだが幻想的なこの概念を、果たしてどう説明したものか。
 そもそも、エスペランサが魔法使いだと名乗ったところで信用されるのか。

「私の種族が得意とする特殊能力一片というか、最も安易な術と言いやがりますか……とにかくそんな感じですよ」

 ここで魔法使いと名乗るのはさすがに荒唐無稽すぎると判断し、またしても適当な嘘で誤魔化した。
 すぐに反論が返ってくるだろうと思いきや、返ってきたのは「なるほど」の一声。
 どうやらエスペランサを珍しい天人かなにかだと思い込んだらしい。
 傷は六割ほど治った。きっとこの調子なら、あと二分もあれば完治するだろう。
 周りにとっては凄い業でも、魔法使いのエスペランサには慣れた事。
 周囲のハイテンションに若干の困惑を見せつつも、エスペランサは二分間耐え切り、見事にゴリラのような男性の傷を治し終えた。

Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.43 )
日時: 2011/10/19 15:14
名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)



     *     *     *


「「「ありがとうございます、桔梗姫!!」」」
「……姫はやめやがって下さい、姫は」

 目の前で土下座する隊士達を前に、エスペランサは苦々しい顔でごちった。

 ゴリラのような男性——どうやら近藤勲という名前でここの局長らしい——の傷を治し終わり、土方も自分に用はなさそうなので屯所を出ようと思った矢先。
 何故か全力で隊士達にそれを阻まれ、土方と沖田にもゆっくりしていけと言われたので、やむなく屯所内の和室に上がった。
 目覚めた近藤からお礼を言われたのは、ちょっと嬉しかったが。

「あ、やっぱり桔梗姫だと美しさが足りませんでした?」
「ほら、だから俺が言っただろ? 桔梗姫より桔梗様の方が良いって」
「いっそ桔梗姫様で良いんじゃないか?」
「いや、俺達ごときが名前を呼ぶのがきっと駄目なんだよ。ここは姫様だけでどうだ?」
「姫様だと可愛らしさが勝ってて美しさが不足してるぞ。ここは姫姉様でどうだお前ら?」
「「「乗った!!」」」

 こんな感じで自分の仇名が『姫姉様』に決まるのを微妙な表情で眺めつつ、さっき出されたいかにも高級そうな和菓子を一口つまむ。
 後ろの方では、土方と近藤がなにかを言い合っていた。
「トシ、なんで一般の子が中にいるんだ? いや怒ってるわけじゃない。むしろ怪我を治してくれたんだから感謝してるが、あの子は屯所に何か用があったのか?」
「あー……なんつーかその、特に用もないのに連れて来ちまったっていうか……」
「……トシ、いくらとびっきりの美人でもあんな幼い子に手を出したらロリコンになるぞ」
「何もしてねぇよ!」

 漫才に近いやり取りをしている二人を尻目に、自分に近寄ってくる気配を感じる。
 ゆっくりと横を向くと、沖田総悟がエスペランサの隣に座り込んできた。

「アンタも大変ですねィ。まあ、そんなに気にしなくてもいいと思いやすぜ。アイツらは綺麗な女を前にすると大体あんな感じなんでさァ」
「綺麗な女? ……周囲を見回しても、この空間に私以外の女性はいやがらないと思いますが」
「……なるほど、無自覚ってやつですかィ」

 妙に呆れたような目でこちらを見てくる沖田に対し、エスペランサはただただ無表情で首を傾げた。

 エスペランサは、自分の顔が“それなりに整ってはいるが綺麗という程ではない”というレベルだと思っている。
 しかしそれは本人がそう思っているだけで、周囲にしてみれば“この世でもあの世でも右に並ぶ者がいない極上の美少女”だ。
 世界三大美女ですら見惚れさせ、無神論者にすら女神を連想させる。
 多少の荒みでそれに退廃的な印象が加わってはいるが、エスペランサ・アーノルドはそんな美少女なのだ。


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