二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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レッドレイヴン  —からっぽの人形—
日時: 2012/05/11 17:40
名前: 黒猫 (ID: okEdKXH3)
参照: http://www,kuroneko.cc/novel

 小説、書きまーす。
 

  

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Re: レッドレイヴン ( No.124 )
日時: 2012/04/29 21:47
名前: 黒猫 (ID: XsTmunS8)

 レイは横に避けると、地面を蹴って間合いを詰める。
 「遅い!!」
 ヘーゲルはレイの足に狙いを定めた。しかし、レイは止まらない。
 「…やめておけ。暴発するぞ」
 「なっ!?」
 銃口には短刀が刺さっていた。横にずれると同時に、投げたのだ。
 ヘーゲルはレイに銃を叩きつけると、後ろにはね大振りのナイフを出す。
 「力を使ったのか!?」
 「…あれくらい、力を使わなくても出来る」
 銃から短刀を引き抜いたレイは、銃身を斬りおとした。
 ヘーゲルはその間に距離を縮める。容赦ないその行動は、おそらくレイを殺すなとしか言われてないのだろう。しかし、
 「あのさ…あたしもいるんだけど!!」
 リリーは、レイとヘーゲルの間に入った。
 ナイフを持った手を片手で抑え込み、全身のばねを使った蹴りをくらわせる。
 「がっ!!」
 ヘーゲルは空いている腕で防御するが、バランスを大きく崩した。
 (…あれから、また強くなっている)
 

 リリー・グレニア—キャシーの弟子であり、体術の達人と呼べる人物。その技はマフィアにも通用する。


 リリーは手を放し、伸びきったヘーゲルの腕を肘と膝で挟み込むようにして打つ。
 ゴキッ—骨が折れる音が生々しく、レイは顔をそむけた。
 ヘーゲルはナイフを振るが、リリーは後退して避けた。
 「殺す…殺す殺す殺してやる!!」
 ヘーゲルは殺気に満ちた目をリリーの向けた。
 「えっ?」
 5mは離れていたはずのヘーゲルが背後に来ていて、リリーは困惑の声を上げた。
 レイはリリーを突き飛ばすと、振り上げられたナイフを短刀で受けた。ギィリッと刃物がこすれあう。
 (…重い)
 レイが1歩引くと、ヘーゲルは力を入れすぎたらしく前に体を傾けた。レイは短刀を突き出す。
 乾いた銃声が聞こえたのはその時だった。

Re: レッドレイヴン ( No.125 )
日時: 2012/04/29 12:54
名前: 黒猫 (ID: XsTmunS8)

 突然の銃声にレイは体を震わせた。
 思い出す。忘れたくても、脳に刻まれた、あの記憶を。





 





 壁に叩きつけられた小さな体。
 盗んだ武器が奪われる。
 そして銃声。
 かぶさるキャシーから赤い血が。
 当時、感じられなかった感情が胸を打つ。
 やめて、やめてやめてやめて。
 お願いだから、彼女を…





 


 

 
 
 「レイ!!」
 動きを止めたレイの右胸にナイフが迫った。

Re: レッドレイヴン ( No.126 )
日時: 2012/04/30 13:18
名前: 黒猫 (ID: XsTmunS8)

 赤い血が頬にかかった。
 「リリー?」
 迷子になった子供のような声を出すレイ。
 リリーの右胸にナイフが刺さっている。ヘーゲルは舌打ちをするとナイフを抜きリリーを蹴る。リリーはあっさりと倒れた。黒いコートにも血が飛び散る。
 「がはっ!!」
 血を吐いたリリーは荒く呼吸を繰り返す。
 「レイ…逃げて」
 それでもリリーはレイの身を心配した。出血が激しく、石畳を赤く染める。
 レイはそれを見て、ぺたんと座り込んでしまった。






 かぶさったキャシーの体で、何も見えない。
 見えないところからの銃声。火薬の少ないそれはキャシーの体の中で止まる。
 音とともに流れ込む血が多くなる。
 お願いだから、彼女を





                            殺さないで!!!














 

 
 




 
 大切なものだと気づかれないために、遠ざけてきた。なのに、どうだ。
 結局、また、失った。
 悲しみと、絶望と、諦めと、後悔と。
 それらを上回る、圧倒的な虚無感。
 首に痛みが走る。いくら痛みに慣れていても、体のほうは耐えてはくれない。
 仰向けに倒れた瞬間、雨を感じた。
 泣いてはいけないレイの涙の代わりかのように、雨は降り始めた。

Re: レッドレイヴン ( No.127 )
日時: 2012/04/30 13:15
名前: 黒猫 (ID: XsTmunS8)

 『人殺し』
 そう言われた時、顔から血の気が引いた。
 少女は嫌悪を含んだ目で僕を見た。
 彼女が言った言葉は間違っていない。だけど、彼女に言われると嫌だった。
 『あなたも、あの人と変わらないんですね』
 少女の言葉の一つ一つが、胸に刺さる。
 拒絶される—その前に自分が拒絶してしまった。
 気づけば、手にしていたナイフで肩を刺していた。
 だから、逃げた。—自分がしたことから逃げたくて。
 そして、忘れた。—自分がしたことから忘れたくて。










 










 「…し、しっかりしなよ。ラ、レイだって後悔しているから、謝れば許してくれるはず!!………たぶん」
 ノアはアンディの話を聞いて、慰める。しかし、アンディの表情は晴れない。
 (僕が見捨てたんだ…)
 見捨てられたと思っていた。それが自分が見捨てていたなんて…。
 同情と絶望が渦巻く中、シャルルは首をかしげた。
 「ラ…レイから自分を刺した奴の話を聞いたが、“ネーヴェ”っていうやつだと言ってたぞ?それに、レイの髪は黒だったじゃないか」
 「髪くらい染粉で何とかなるよ。ガラクタは黙っておいてよ」
 「黙れ、化け猫。それに、自分を刺した奴の顔を普通忘れるか?」
 アンディはボソッと
 「あの時の僕は、前髪を伸ばして顔を隠していた」
 「だとしても、刺された時に顔ぐらいは見ているだろ」
 シャルルは納得がいかないといった顔をする。
 「…!?」
 ノアが教会の扉の方を見た。
 「アンディ、落ち込んでいる最中悪いけど銃声がした。この重い音は…たぶんスキャッグスだよ」
 アンディは仕方なく、レイのケースと自分のケースを持つとノアについていく。シャルルは、駅のほうへ行った。ウォルターを迎えに行ったのだ。

Re: レッドレイヴン ( No.128 )
日時: 2012/04/30 13:32
名前: 黒猫 (ID: XsTmunS8)

 (終わったか…)
 ヘーゲルは折れた左腕をみて、舌打ちをした。
 もう死んでしまった少女—確かリリーという名だったが—は強かった。ヘーゲルが力を出すほどまでに。
 さっさと連れて行こうと思った時、レイが起き上がった。フードが外れて、顔と髪が晒された。
 真っ白な肌と、雨によって染粉が流され本来の色を取り戻した深い藍色の髪。色素の薄い唇は閉じられている。幻想的な美しさを持っているが彼女の目を見た瞬間、ヘーゲルが感じたのは“嫌悪”だ。
 禍々しいまでに紅い瞳が、ヘーゲルを捉えた。
 


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