二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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レッドレイヴン  —からっぽの人形—
日時: 2012/05/11 17:40
名前: 黒猫 (ID: okEdKXH3)
参照: http://www,kuroneko.cc/novel

 小説、書きまーす。
 

  

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Re: レッドレイヴン ( No.84 )
日時: 2012/04/02 19:02
名前: 黒猫 (ID: XsTmunS8)

 アンディは自室に戻ると、ベッドに腰掛けた。
 『すごいな』
 ライアーの言葉が頭から離れない。
 そんな自分に首をかしげながら、横になろうとしたその時。



 ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ


 何かが崩れるような音がした。
 思わず立ち上がってしまう。そこまで、大きな音だった。
 (ウォルターが掃除…そんなわけがないか)
 掃除という言葉をウォルターが知っているとは思えない。そもそも、今は仕事でいないはずだ。
 一番目も三番目もいない。ということは…
 (ライアーか)
 アンディは、隣の部屋に向かった。

Re: レッドレイヴン ( No.85 )
日時: 2012/04/02 19:17
名前: 黒猫 (ID: XsTmunS8)

 一応ノックをして部屋に入ったアンディは唖然とした。
 そこには、見渡す限り本、本、本…。
 ライアーが来たのはついこの間のことだ。なのに、どこからこの大量の本を持ってきたのだろうか。
 よく見れば本が塔のように積み重なっている。その一角が壊れたのだろう。しかし、本はあるのにライアーの姿がない。
 「ライアー?」
 床に広がった本の山がモゾモゾと動き、手が出てきた。これだけ見ればまさに…
 (ホラー映画みたいだ)
 アンディはその手をつかむと、引っ張り出した。
 

Re: レッドレイヴン ( No.86 )
日時: 2012/04/03 14:40
名前: 黒猫 (ID: XsTmunS8)

 「…何をやっているのだ、君?」
 ライアーは床に座り込んだままアンディに聞いた。
 「埋もれた君を助けようとしただけだよ」
 そう言って出ていこうとしたが、ガシッと足を掴まれた。
 「勝手に入ってきたのか」
 「一応ノックはしたよ」
 「入る許可はしていない」
 ライアーが何が言いたいのか、さっぱりわからず困惑しているアンディにライアーは小さい声で言う。
 「勝手に入ってきた罰として、ここを片付けるのを手伝え」
 「無茶苦茶な…」
 「黙れ」
 アンディはしかたなく、手伝うことにした。



 
 耳が痛くなるほどの静寂。
 (気まずい…早く出たい)
 さすがのアンディでさえそう思った。
 「ライアー、もっと積み重ねて持ってくれない?」
 4冊ずつ腕に持って、積み重ねていくライアーにアンディは文句を言う。
 「無理だ」
 ライアーは辞書並みに分厚い本4冊を、重そうに抱えた。腕力はないらしい。
 「…〈首狩り屋〉さん、どうして政府のカラスになろうと思ったんだ?」
 「スキャッグスに復讐するため」
 「無理な夢を持つのだね」
 アンディは手を止めた。ライアーは気付かず、本の塔を積み重ねる。
 「スキャッグスは君の力を作ったところだ。その力の欠点を知らないわけがな」
 「そんなことわかっている」
 強い口調でさえぎったアンディにライアーも手を止めた。
 「君のはわかっているつもりだろ?本当に分かっているのなら関わらないだろ」
 「君に言われたくないよ」
 「ボクは安全な家と情報が欲しくてここに来た」
 アンディはライアーをにらんだ。
 「なら、どうしてローエンで復讐の文字を残したんだ」
 「…どうしてだろうね」
 ライアーの心底不思議そうな声を聴いて、アンディは眉をひそめた。
 「ボクにもわからないのだよ。もう、スキャッグスを壊すだけでいようと思っていたのに、腹が立って残してしまったんだ」
 アンディは呆れてしまった。ライアーは気付いていないのだ。自分がまだスキャッグスを憎んでいることに。
 「僕は、誰が何と言おうがスキャッグスに復讐する」
 「それが、手が届かないものだとしても?」
 アンディがうなずく。
 「…無謀な奴なのだね」
 「なっ!」
 「でも……すごい」
 反論しようとしたアンディは口を閉じた。
 「ボクには、そんなこと出来ない。それをやるにはかなりの代償を払うことになる。大切なものも失うだろう」
 だからできない。そう言うライアーはどこか悲しげに見えた。
 そんなライアーから目を離せずにいたアンディの手から本が落ちた。
 「…何手を止めている。早く片付けるぞ」
 ライアーはアンディの額を指ではじいた。
 「いっ」
 「それは、貴重な本だから丁寧に扱え」
 アンディは額をさすりながら、先ほどのライアーが幻ではないかと考えた。
 

Re: レッドレイヴン ( No.87 )
日時: 2012/04/03 14:52
名前: 黒猫 (ID: XsTmunS8)

 チクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタク


 時計の音が部屋に響く。
 部屋には女が1人、銃をうっとりとした表情で眺めていた。その様子は宝石を眺めるそれに似ていた。
 わずかに波打った艶やかな黒髪、起伏に富んだからだ、整った顔立ち。色っぽい美女だ。
 黒い目を満足そうに細め、美女は口を開いた。
 「ようやく見つけた」
 美しい声でつぶやくと、艶を含んだ笑みを浮かべた。
 「動いていいって許可はもらっているし、そろそろ行こうかしら?」
 


 美女は笑う。
 妖艶に、毒花のように。
 楽しくてたまらないといった様子で、笑った。

Re: レッドレイヴン ( No.88 )
日時: 2012/04/03 15:13
名前: 黒猫 (ID: XsTmunS8)

 暗い。
 ここはどこだろうか。暗くて何も見えない。
 (逢いたい…逢いたい)
 手を伸ばした。あの少女がいないかと。
 シャララララ
 金属音。鈴に似たその音に固まった。
 知っている。この音は鎖の音だ。何故、自分の手首から聞こえる?
 もしかして…


                        自分はまだ、あそこに囚われているのか?

















 

 
 




 「…イアー、ライアー!」
 バッと起き上がったライアーは、シャルルの首を絞めた。
 「グエっ!?」
 「…カラス君か。悪い、寝ぼけていた」
 ライアーが手を放すと、シャルルは翼でたたいてきた。
 「どうして、寝ぼけて殺されなければ、ならないんだよ!!」
 ライアーは髪をかきあげる。
 「ノアは?」
 「ウォルターと一緒にアンディを探しに行ってる。…大丈夫か?うなされていたぞ」
 ライアーは答えず、手首を握った。
 コートと手袋の下にあるのは、硬い感触。
 ライアーは深く息を吐いた。それが微かに震えていたことには気づかなかった。


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