二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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レッドレイヴン  —からっぽの人形—
日時: 2012/05/11 17:40
名前: 黒猫 (ID: okEdKXH3)
参照: http://www,kuroneko.cc/novel

 小説、書きまーす。
 

  

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Re: レッドレイヴン  —からっぽの人形— ( No.194 )
日時: 2012/06/11 10:03
名前: 黒猫 (ID: 0/Gr9X75)

 香菜さん、ありがとうございます!
 これからもがんばりますので、香菜さんもがんばってください!

Re: レッドレイヴン  —からっぽの人形— ( No.195 )
日時: 2012/06/11 11:01
名前: 黒猫 (ID: 0/Gr9X75)

 このままでは、またあの日のようになってしまう。
 すべてを拒絶したあの日に—


 『糸なら…ボクが断ち切るよ』
 
 
 ふと、自分に似た少年が言ってくれたことを思い出した。
 醜い自分の心を少年は知っている。知った上で。
 人形になるかならないかは、自分で決めていいと。
 守ってやると。
 自分がいなくなったら悲しむ人もいると。
 そう、言ってくれた。
 守られるだけのことを嫌がったレイは、時折自分を頼ってくれる少年の言葉に、縋り付いた。
 頼られることは、心地好かった。 




 (…ボクは、必要とされたかったのか)
 何を求めていたか、ようやくわかった。
 弱い自分も、力がある自分も、人形と評される自分も、すべてひっくるめて必要とされたかった。
 わがままな願いかもしれないが、人形として育てられたレイにとって、それが存在価値であり、生き甲斐なのだ。
 必要とされたい。そんな簡単なことでくよくよしていた自分が愚かしく思えてきた。目の前の敵に比べたら、些細な問題だ。
 (…覚悟はない。だけど、覚悟を持つために、刀を抜く)
 自分にそう言い聞かせる。キャシーが生きてたら、ため息をつきながらも納得してくれる答えだろう。
 リバースナンバーでないが厄介な力を持ったヘーゲル。向こうの力がわかっていても、不利な戦いだ。…いままでだったら。
 レイは立ち上がると、柄にて手をかけた。
 一息で刀を抜き、鞘を放った。
 こんなものなんだなと、どこかで思う。
 カラン—判決を告げる木槌に似た音を立てて、鞘は地面に落下した。

Re: レッドレイヴン  —からっぽの人形— ( No.196 )
日時: 2012/06/11 20:47
名前: 黒猫 (ID: 0/Gr9X75)

 不吉な紅い目は、揺れることなくヘーゲルを見つめる。
 レイは刀を構えず、無造作にもったままにしておく。フードを外して、長い髪を払う。
 ヘーゲルは後悔するだろう。レイの力が及ぶところにいて、その上視界にも入っている。
 ヘーゲルの姿が消えた。それと同時に…否、それよりも速くレイは左に跳ねた。
 ナイフは、レイのコートをかすめただけだった。
 「見えてるのか?」
 「…何のことかね」
 避けたことと言い、刀を下げていることと言い、ヘーゲルを動揺させるには十分すぎる出来事だ。レイはそれを理解している。
 ヘーゲルがどう動くか予知しているかのごとく、攻撃を避けるレイはまだ刀を構えない。
 接近戦では分が悪いと判断したのだろう。ヘーゲルの姿が再び消えた。
 一瞬10m離れた場所に姿を現すのをレイは見た。また、姿を消したヘーゲル。
 しかし、レイはその前に右足を前に出して刀を水平に薙ぎ払った。
 腕に重たい衝撃が走って、よろめいたレイは地面を転がったヘーゲルを見下ろす。
 「…峰打ちだ。肋骨の1,2本は折れただろ」
 うつぶせに倒れたヘーゲルの足に刀を滑らせた。束になった糸を斬るような感覚が気持ち悪い。
 腱を斬られたことを理解したヘーゲルはうつぶせの状態から動かない。動いたところでレイに斬られることが分かったのだろう。
 「…君は僕をなめすぎた」
 レイは操る対象に干渉して動かす。干渉したものは、どこにあって、どんな風に動くのか感覚で分かってしまう。だから、ヘーゲルがベンチに座った時ベンチの微かなきしみを感じて“何かが乗った”と分かったのだ。
 さすがに生き物は操れないが、干渉自体はできる。
 少しでも動けば次はどんな行動に出るか予測できる。
 「…そして速ければいいわけではない」
 軽く刀を振っただけであんな怪我をしたのは、ヘーゲル自身がそこに突っ込んだからだ。走行中は足以外を動かせないヘーゲルに刀を回避することは不可能。つまり…走行中が最も無防備になるのだ。
 「殺せよ」
 ヘーゲルの言葉にレイは刀を肩に担ぎ—ヘーゲルの頭を力の限り蹴った。
 「…ボクは人を殺さない」
 殺したら、リバースナンバーになる。だから殺さない—それがレイの覚悟だ。
 この男が憎くないかと言えば嘘になるが、殺してやりたいとは思わない。あれがレイの失態であることに、変わりはないのだ。
 (…疲れた)
 もともと体力はある方でない。
 それでも立っていたのは意地だろうか。それとも—
 「レイ!!」
 子供のような高い声を聴いて、レイは理由などどうでもよくなった。

Re: レッドレイヴン  —からっぽの人形— ( No.197 )
日時: 2012/06/11 12:47
名前: 黒猫 (ID: 0/Gr9X75)

 「…ファーガソン一家はヘーゲルに壊されていたのか」
 レイは改めて強敵と戦ったことを自覚した。あれが失敗作でなかったら、自分は死んでいたかもしれない。
 レイは心配そうにちらちらと振り向いてくるノアから、目を離す。
 「…ノア、すまなかった」
 極力感情をこめていったつもりだが、悲しいことに抑揚のない声が出てきてしまった。
 それでも気を取り直して、レイは続ける。先ほどの戦いよりも勇気が必要だった。
 「…救われた命は重くて、逃げたくて、結局逃げ出した。そんな僕の側に君はいてくれた。いずれはいなくなる、そう思っていたのに、この間の言葉でそばにいてほしいと思った。そのために、逃げるのをやめた」
 レイはアンディとシャルルの視線に耐えながらも、言う。
 「…怖いものはまだある。それでも…」
 レイはここで切って、息を深く吐いた。そうでなければ言えない。
 
 
 「君は…ボクの大切な相棒でいてくれるかい?」
 

 「バッカじゃないの。怖いものがない人なんていないんだよ?」
 言葉とは裏腹に、幸せそうに笑うノアを見て、レイは目を細めた。
 (…可愛い)
 

Re: レッドレイヴン  —からっぽの人形— ( No.198 )
日時: 2012/06/11 22:18
名前: 黒猫 (ID: 0/Gr9X75)

 列車のコンパートメントの中、レイは窓の外を眺めていた。
 後ろに流れていく景色はいつ見ても飽きない。
 (…ノアたち、遅いな)
 カタンと列車が揺れた。とたん、肩に何か乗った。
 「…<首狩り屋>?」
 珍しくアンディが寝ている。起こしてやろうか迷ったが、やめた。疲れているのだろう。列車の揺れで起きないなんて、この少年ではありえないことだ。
 (…綺麗だ)
 光を振りまく金髪に、思わず見とれてしまった。
 自分にはない色彩。1度だけ金髪に染めてみたが、何故か汚い泥色になってしまったことは今でも気にしている。
 よく見てみれば、アンディの顔も整っていることに気付く。
 (…ボクよりも綺麗じゃないか?)
 ノアがいたら、鏡でも見てこい、と言いそうな考えを持つ。
 レイはアンディの髪に触れた。さらっとした髪はやっぱり綺麗で、ため息が漏れた。
 ガタン—列車がさらに揺れた。
 アンディは目を開けて、困惑顔になった。それはそうだろう。寝顔をまじまじと見られ、髪を触られていたら誰だって困惑する。
 一方レイは硬直した。思わずとはいえ、人の寝顔見入ったり、髪に触れたりするのは、はしたないことではないだろうか。
 (…何か言わなければ)
 無表情で—内心動揺している—口を開こうとした。
 ガラ—コンパートメントの扉が開いたのはその時だ。
 「やっと起きたか、アン…何やってんだ!?」
 シャルルは驚愕とした声を出す。ノアは目を見開いたままだ。
 「色事は外でやれ!」
 レイは首をかしげた。
 (…何かよからぬ勘違いをされてないか)
 レイは状況を整理した。偶然的とはいえ顔が近く、おまけに自分はアンディの髪に触れている。よく考えてみればアンディは男の子だ。あまりに女顔なのでつい、忘れていた。
 「…ボクは決して不埒なことをしているわけではない」
 シャルルに負けじと古臭い言葉を使うレイ。
 ノアは苦笑しながら、正面の座席に座った。
 「うん。わかっているよ。だって、レイ初心じゃん。そんなことできるわけない」
 「…そんなこととは、どんなことだ?」
 真面目に訊くと、何故かノアに笑われた。

 すぐに誤解は解けたものの、猫に初心と言われたレイは複雑な気持ちだった。
 その後、アンディがノアにからかわれたことはレイの知らないことだ。


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