社会問題小説・評論板
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- Re:愛してる
- 日時: 2012/07/26 14:34
- 名前: おかゆ (ID: uOIKSYv5)
『非常識だとしても皆が常識といえばそれは常識になるんだ』
こんにちわ。
名前を変えて他の所でもちょくちょくやってますが、社会系が一番書きやすいと思ってまた書いてみることにしました。
どうぞ生暖かい目で見守ってください。
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2012.0219
- Re: Re:愛してる ( No.113 )
- 日時: 2013/02/03 23:47
- 名前: おかゆ (ID: fZAC/ZMy)
「——じゃぁこれで一学期が終わるわけだがお前ら羽目をはずし過ぎないように」
先生の話も終わり、終業式も無事に終わった。
「あーっこれから一ヶ月間皆にあえなくなるのかぁ・・寂しいなぁ〜」
耳につくような声で麗華が言った。
この言葉の意味はおそらく私に対して。
「皆絶対遊ぼうねーっ!!」
キャッキャと騒いでいるのをよそに私は教室を出た。
「まーじうぜー」
麗華の言葉が聞こえたがそんなのは無視だ。
* * * * *
「最近暑くなってきたなー」
「もう前から暑いよ・・てかあんた、世界史は大丈夫だったの?」
「ん?あぁ、一応大丈夫だった」
「そう」
「心配してくれた?」
「別に?聞いただけ」
「そっか」
そして伊藤は特に何かをすることはなくただ時間だけが過ぎていった。
「・・・課題やらなくていいの?」
「・・・あっ!!・・あぁ・・課題、そうだ、課題」
「・・・・・?」
なんだか今日の伊藤はおかしい。
いや、もともとおかしいやつだとは思ってたんだけどなんか今日は・・・
「伊藤・・なんかあった?」
「ぅえ!?はっ!?べっつに?なんも?」
なんかあったんだな。
「(わかりやすい奴)」
ここまで聞いてしまったらもう聞くしかないのか。
スルーしないで聞いてしまった自分のことをひどく後悔した。
「・・・・・なんでそんなにキョドってんの?」
「・・・・いや・・えっ・・と・・」
「私は聞かないほうが良い?」
「・・・・・・いや。むしろ、」
お前に話したいことがある。
伊藤が少し目線を下げて話しをした。
「・・・・・俺、ちょっと普通の人より演じることがうまいじゃん」
自分で言うのもなんだけどな、と軽く笑った。
「まぁ・・それなりに演技するのは楽しかったりしたわけよ」
『楽しかったりした』
過去形なのは今は楽しくないということなのだろうか。
そう考えながらも伊藤の話は進んでいく。
「俺さぁ、まぁ、最初からそんな演技が上手だったってわけじゃねぇの、これは俺の親友がいろいろ教えてくれたんだよな」
その話しで解ったことは。
伊藤には演劇部に入っていた親友がいたこと。
その親友の演技の練習に付き合ってたらいつの間にか自分もうまくなっていたこと。
その親友がある日いじめられたこと。
やがて自分もその親友のことが鬱陶しく感じ、見捨ててしまったこと。
そしてその親友は——・・
「事故でな、死んだんだ」
親友の、あっけない最期。
伊藤はやっぱり軽く笑いながら話した。
——目は、笑っていなかった。
- Re: Re:愛してる ( No.114 )
- 日時: 2013/02/09 21:01
- 名前: おかゆ (ID: Xc5HYuu9)
「・・・・・え?」
「まぁ、そんな感じだ」
「そんな感じ・・って・・」
その言葉はあっけなくて。まるで。
これが作り話かのようで———・・
「ずいぶん他人事のように話すのね」
「そうか?」
伊藤が近くにあったポテチを食べる。
「・・・・それで?」
「ん?」
「なんで、その話しを私にしたの?」
「・・・・・・なんでだろうな」
俺もわかんねーや。なんて言う伊藤は何かを探すようなそぶりをしてそれで。
「俺今までそいつの墓参りに行ったことねーんだわ」
この言葉を言った伊藤はなぜだか吹っ切れたように笑った。
そして、
「で、この夏俺行こうと思うんだ。墓参り」
決心したような目。
「お前のおかげだよ」
「・・・・私何かしたっけ」
「ハハッまぁいいさ」
「『ありがとな』」
「・・・・・・・・・っ!!!!」
なぜか、なぜだか涙が出てきそうになって。
それを必死にこらえて。
「・・・・別に」
やっといえた言葉もなぜか少しかすれているような気がして。
「俺お前に会えてよかったわ」
「気持ち悪いよ」
「わかってる」
「・・・でも」
(私も同じこと思ってる)
- Re: Re:愛してる ( No.115 )
- 日時: 2013/02/22 22:47
- 名前: おかゆ (ID: 1sGb2NBG)
ヒーローになりたかったんだ。
誰にも負けなくて皆があこがれる、最高のヒーローに。
そして隣にお前がいてくれたら、
——・・最高だっただろうな。
* * * * *
『まもなく電車が来ます。白線の内側に——』
「(えーっと…この電車に乗って…)」
八月某日。世間で言うお盆の時期に俺はとある駅のホームにいた。
愁の墓参り。
今まで行かなかった。今日、初めて行くことになる。
市川に話したら「そう、」と言われて少し笑った気がした。
蝉の声がやけにうるさく聞こえてやけに緊張する。
俺はもう、逃げたくないんだ。
* * * * *
『——桃太郎?』
『そう、桃太郎。保育園の劇で俺犬役だったんだ』
『犬って・・でも、何で急に?』
『まぁ一般的に知られている桃太郎はさ、仲間集めて鬼退治して財宝持ってきて村の皆に感謝されるって言うやつじゃん?』
『・・・・・まぁそうだけど』
『あれには続きがあるんだよ』
『続き?』
『そ。続き・・桃太郎に退治されてしまった鬼は桃太郎に復讐するために自分の娘を桃太郎のところに送り込んだんだ。桃太郎を代わりに殺して来いってね』
『なんで娘なんだ?』
『さぁ?親だと顔が知られてるからとかじゃない?・・それで、鬼の娘は最初は桃太郎を殺そうとがんばるんだけど桃太郎と接しているうちに娘は恋に落ちたんだよ』
『恋って・・・まさか桃太郎にか?』
『ご名答。そして殺せなくなっちゃった鬼の娘は父親に申し訳なくなり、かといって桃太郎を殺すわけにもいかず、結局自らの命を絶った』
『・・・・・・・、』
『それを知った桃太郎は涙を流し、もう鬼退治には行かないと誓ったんだって』
『へぇー』
『俺らが知ってる話しはキラキラしたヒーローみたいな話しなのに、その続きは誰も知らないしもちろん娘のそんな気持ちも知らずに思いはいつも一方通行で——』
『あーわかったわかった・・お前自分の世界には入ってるぞ』
『えっ!?・・・あぁっ・・ごめん・・今部活で絵本を感情をこめて読もうってのにはまっててさ、ちょっと桃太郎を調べたいろいろ出てきて・・翔に教えよっかなって』
『おまえさぁ、最近思ってたけど女々しいとこあるよな』
『えー?なんで?』
『なんかやってることが全て?演劇とか』
『お前っ・・何言ってんの!?』
『だっ、』
『伝えたいことを相手に伝えたくても相手には全部伝わらない時だってる——・・だから俺は演劇で自分の思ってることを伝えたいんだよ!!』
『何言ってんのかわかんねぇキモ』
『きっ!!?キモいって!?翔も思ったことない!?伝えたくても伝えられないこととか!!俺はなぁっ!!そんな伝えたいことをどうやって伝えたいかを——』
『あー!!はいはい!!わかった俺が悪かった!!!!』
『話を聞けよー!!!』
* * * * * *
いつの間にか目を閉じていた。閉じていただけで眠ってはない。
墓参りとはいえ愁に会うからか、愁との思い出ばかりが思い浮かぶ。
- Re: Re:愛してる ( No.116 )
- 日時: 2013/03/02 21:22
- 名前: おかゆ (ID: 3/dSGefI)
「あーーーーーーー・・っつ・・・」
思わずこぼした言葉も蝉の言葉でかき消されてしまった。
墓がたくさんある。墓地だから当たり前か。
なんて当たり前のことを思いながら俺は愁の墓を探した。
暑さのせいかあまり頭が回らないような気がする。
「ヤバイ・・お茶・・」
持ってきたお茶を飲みながら愁の墓まで来た。
「はぁ・・」
予想以上に墓が多かったせいで探すのに時間がかかった。
そもそも本当にここに愁の墓があったということ自体半分驚いてる。
俺の友達が愁のお母さんが言っていたという噂を思い出してほぼ手探り状態でここまできた。奇跡といってもいいんじゃないか。
「(・・でも、墓の場所くらい愁のお母さんに聞いておくべきだったか)」
と、考えたところでやめた。
どんな顔してあえばいいんだ。
「(気まずすぎる)」
愁が死んでからろくに挨拶もせず、今の今まで墓参りすら行かなかったんだ。
正直、もしかしたら一生いかないかもって思った。
でも、市川のあんな姿見たら。
「(・・俺だけ逃げるなんてできねーだろ・・)」
そしてここまで来てあることに気付いた。
「・・・・・なんももってきてねぇ・・」
線香どころか花すら持ってきてない。
「・・・・・っあー、」
しょうがない。お参りだけして帰ろうか。
目を閉じて、手をあわせる。
「———、」
ゆっくりと、愁との思い出がよみがえってきた。
あんなこともあった、
こんなこともあった、
あぁ、そんなこともあったなぁ・・・
愁、
隣に、いない。
一緒に笑って、一緒に帰って、一緒に演劇をして。
そんな親友は、もういなかった。
本当に——?
彼は、まだ自分のことを『親友』と思ってくれている——?
自分のことを裏切ったやつを親友なんて呼べるのか・・?
あぁ、本当にいろんなことを思い出すなぁ。
まるでまだ愁は生きているみたいだ。
昨日のことのように思い出す。
「—————っ・・」
そう、
事故前の、一方的に縁を切った、あの日に戻ったかのように。
- Re: Re:愛してる ( No.117 )
- 日時: 2013/03/02 21:58
- 名前: おかゆ (ID: 3/dSGefI)
「・・・・・・っ、」
これ以上ここにいてはいけない。
俺の頭の中で何かがそう告げた。
そしてそう思った俺は愁の墓を後にした。
「———・・翔君?」
どこか懐かしい声が聞こえた。
「・・・・覚えてるかな、私——」
「愁のお母さん・・ですよね・・」
ちょうど俺が帰ろうとしたときにばったり会った愁のお母さん。
「あの・・今さらですが・・」
「・・来てくれたのね」
「・・・はい・・・・あの、ごめんなさい・・今まで、挨拶もなしに・・墓参りも行かなくて・・」
「いいのよ。気持ちの整理とか、あまりついてなかったんでしょう?ちょっと女々しいとこもあったけど、ありがとね・・愁、あなたのこといつも楽しそうに話してて・・」
「いえ・・俺は・・」
ズキン、と胸がしまるような感覚がした。
「あの日も翔君の家に行くって・・」
「・・・・え?」
遊ぶ約束・・なんてしてないよな・・
「あ、そうだ思い出した・・ちょうど良かったわ。このあと翔君のところへ行こうと思っていたのよ」
「・・・・・俺の?」
愁のおかあさんはゆっくりとうなずいた。そして俺に一通の手紙を渡した。
「事故が起きた後ね?愁の部屋を見たのよ・・これ、あなた宛っぽかったから・・」
渡すか迷ったんだけどね。
なんていった愁のお母さんから手紙を貰う。
「・・・今でも不思議なのよ、何年経っても・・まだ愁は生きているって錯覚があるの」
まるで昔を懐かしむかのように目を細めた。
「愁の部屋も掃除しなきゃって思ってもね、物を捨てようとするたびに愁の思い出も捨てちゃうような気がして・・結局全部のこったまんま」
そして軽く涙を浮かべて。
「翔君にもたくさん迷惑かけたわね」
「いえ・・俺のほうこそ・・その、すみませんでした」
「謝らなくても良いのよ・・高校は楽しい?」
「・・・・はい、楽しいです」
「そう・・あぁ、ごめんなさいね。時間とらせちゃって・・じゃぁ」
「あっ・・ありがとうございました・・!!」
そして愁のお母さんが行った後に手紙を開いた。
「———っ!?」
衝撃が走る。
「・・・・嘘だろ・・」
それは愁が書いた俺への手紙で。
「今さら・・っんで・・」
そこには数行しか書いていなかったけど。
はっきりと————・・
『ごめん』
「・・・・・・っ」
『ごめん、
俺、言い過ぎた。 仲直りしよう
本当は直接言いたかったけど、とにかく
また遊びたいよ 』
確か事故があったのは俺ん家の近く。
愁は俺の家に行こうとしていた。
「・・・・・・俺に、謝るため・・・・?」
どんどんパズルのピースがあっていくように。
「・・・・・・いざ、俺とあったら謝れなかったときのためにこんなんも用意したのかよ・・?」
「てかなんだよこれ。知らねーぞ俺」
「いつも気が弱いしヘタレだし・・俺がいないとダメとか言って、て・・」
「・・・・・なのに・・」
手に力をこめすぎて手紙がくしゃくしゃになる。
「——俺も謝りたいよ・・」
「でももうお前いないじゃん・・」
「死んだら謝れねぇじゃん・・・!!」
いつもお前は俺の後を一生懸命走ってるようで実は、
俺よりも先に行って歩いていたのか。
(死んだ彼に謝るにはどうしたらいいのか。)
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