社会問題小説・評論板
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- Re:愛してる
- 日時: 2012/07/26 14:34
- 名前: おかゆ (ID: uOIKSYv5)
『非常識だとしても皆が常識といえばそれは常識になるんだ』
こんにちわ。
名前を変えて他の所でもちょくちょくやってますが、社会系が一番書きやすいと思ってまた書いてみることにしました。
どうぞ生暖かい目で見守ってください。
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2012.0219
- Re: Re:愛してる ( No.128 )
- 日時: 2013/06/15 00:29
- 名前: おかゆ (ID: pH/JvMbe)
「・・・・・理紗」
その声は驚くほど優しくて。
「会いたかった」
「・・私もだよ」
「伊藤に言われた?」
「・・・・・・うん」
理紗は一瞬だけ暗い表情をしたがすぐに顔を上げて、
「あっ、でもね、伊藤君は悪くないよっ!その・・伊藤君は、私や・・瑠璃のためにと思って・・」
「そーゆーのがおせっかいって言うかありがた迷惑ってのがわかってないんだよなあいつは・・・」
「だからっ・・・・・伊藤君は悪くないの・・・私も・・瑠璃に、会いたいって・・思っちゃった、から・・」
そして、理紗は。
「——約束、やぶっちゃった」
そう、笑うのだ。
あまりにも綺麗に笑うもんだから。
思わず泣きそうになって。
「——伊藤君にお礼を言わなきゃね」
「・・・・・あいつに、お礼?」
「そ。おせっかいで、ありがた迷惑・・・それでも、私は瑠璃にあえて嬉しいの。会いたかったの。私は彼にお礼を言う義務があるわ」
そして小さく私にもお礼を言った。
「・・・?」
「私のためにこんなに頑張ってくれて」
「まだ言うか・・私はそんな理紗にお礼を言ってもらえる人間じゃ、」
「私がいいたいんだって・・」
「・・・・・うん・・」
それからは他愛もない話をした。
最近の出来事、嬉しかったこと、楽しかったこと、
一日じゃとても足りない時間を私たちはなんとか、必死で埋めようとしていた。
次はいつ会えるんだろう、
そんなことを考えながら、まるで、あのときに——・・中学に戻ったときのようだった。
嗚呼、
今、私たちは欠けていた青春を必死で取り戻そうとしてるのね。
そんなことを考えながら。
文化祭という祭りに便乗して、流れに身を任せながら、一分一秒でも長く、
理紗と話がしたかった。
『本日はお越し頂き、ありがとうございました。まもなく文化祭は終了しますので、つきましては——』
「・・・・・もう、帰らなきゃね」
「あ、本当だ。もうそんな時間か」
「ふふ・・伊藤君には本当に感謝してる」
「また伊藤ばっかり」
「妬けた?」
「・・・・・まさか」
そしてゆっくりと理紗が立ち上がる。
まるでこの時間を惜しむかのように。
「じゃあね」
「・・・・うん」
「次はいつだろうね」
「わかんないよ」
そしてゆっくり、ゆっくりと足を進めて。そして。
「—————」
ゆっくりと理紗がいった言葉は放送によってかき消されてしまって。
でも、確かにその言葉は聞こえたんだ。
「・・・・・うん、楽しみ」
今はただ、それだけ言えば十分だろう。
(——もうじき終了の合図、なんて)
(なくなってしまえばよかったのにね)
- Re: Re:愛してる ( No.129 )
- 日時: 2013/06/22 23:16
- 名前: おかゆ (ID: X9g0Xy3m)
パソコンの調子が悪く、編集ができないのでここにまとめて続きを載せておきます。よろしければどうぞ^^
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番外編『名前で呼んでみよう』
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- Re: Re:愛してる ( No.130 )
- 日時: 2013/07/18 23:40
- 名前: おかゆ (ID: vkkVQEZj)
文化祭から一ヶ月。
そろそろ祭り気分も抜けきったころ、
私たちは中間試験勉強に追われていた。
「あぁ!?この元素記号ってどっからでた!?」
「伊藤、ここの問題は——・・」
「あーお前。まずこれ問題文から違うから」
「えっ!?」
私、伊藤、そして北村先生の三人で化学の勉強をしていた。
「ったくよぉ、俺だって録画を消費しなくちゃならんけぇ。お前らに付き合ってる場合じゃないんに・・」
「アニメでしょ。大丈夫大丈夫。あれ一本三十分だろ、あいた時間にさくっと」
「バッカ。それが大量にあったらどうなる?すぐパンクするだろ」
先生は伊藤のシャーペンをくるくると回しながらだるそうに答えた。
「・・・それなのに私たちに勉強教えてくれるなんて優しいですねー」
「市川。お前はその棒読み加減やめろよ・・・まぁ、お前らに恩売っときゃのちのち・・・なぁ?」
悪い顔だ。絶対後でネチネチ言われる。
「・・・あっ、おい伊藤ここちげぇっつってんだろ何回言えばわかるんだよ」
「はぁぁっ!?だってここマグネシウムがっ!!」
「マグネシウムの存在は忘れろ!!さっきとで問題が違うの!!酸素と銅は酸化銅に——・・ってこれ中学生でならうんだけど!!?」
ギャーギャー言い合ってるのを見て本当に高校生と先生なのだろうかとよく思う。
「っあーーー!!疲れた!!休憩!!!」
そういって伊藤は席を立ち廊下へ出てしまった。
「ったくあいつ人がせっかく教えてやってるって言うのに・・・」
そういいながら先生はポケットの中にあった飴を袋から取り出し口に入れた。
少しの沈黙が流れる。
「——伊藤」
ふと、静かに先生が呟いた。
「・・・とはどーなったのかなぁって」
「別にどうもしてません」
そして私の持ってたシャーペンの芯が折れた。どんだけ動揺してるんだよ私。
「おぉ怖い」
先生は意地悪く笑うとポケットから飴を取り出して私に差し出す。
よほど動揺していたのか、わからないけど私の声はかなり低かったらしい。
「ありがとうございます・・」
「伊藤には内緒だかんね」
子供っぽく笑った先生。本当に子供のようで。
「かかった?マジック」
「・・・・・・」
これを認めたら、私はどうなるんだろう。
いや、本当はもう認めている。
でも関係が壊れるのが嫌だから動かない。動けない。
「・・・無言ってことは?もう認めちゃったりして?」
「——・・どうして、そんなこと聞くんですか」
先生にとったら私と伊藤なんてただの一生徒。
そんな一生徒達の長い人生の一瞬にしか過ぎないようなただの恋なんて。
「・・なんかな、お前ら見てるとハラハラするんだよ」
「・・・・・・・、」
「それで、応援したくなる」
ガリ・・と飴の砕ける音がした。
「それ、ただの自己満足じゃ・・ないですか?」
「・・・・・そうだな」
そして、切なげに笑った。
「所詮、ただの自己中で、自己満足だ」
今見ていて何よりも面白い。
そう、先生は付け加えた。
「・・・・・・最低、ですね」
「まぁ俺もいろいろあって—・・ってそんなの言い訳にもならないな。すまん、忘れてくれ」
そして私の顔を覗き込む。
「・・・・・・だからそんな泣きそうな顔すんなよ・・」
今、私はどんな顔をしていたんだろう。
- Re: Re:愛してる ( No.131 )
- 日時: 2013/07/20 02:05
- 名前: おかゆ (ID: YcdoPNqn)
「——別に泣きそうな顔なんて、」
「してるから」
そして先生は申し訳なさそうに飴をまた差し出した。
「ん」
「いいです」
そしてその飴を持った手は行き場をなくして、空をさまよって、そして机の上に飴をおいた。
今の私にある感情は、なぜか
怒り
が多くなっていて。
「——なんでこんなことしたんですか」
「・・・・・」
「・・・なんでこんなことしたんですか?先生がこんなことしなかったら私はこんな気持ちにも気付かなかっただろうしこんな思いもしなくてよかった」
あぁ、もう止まって。
「あぁそうですよ!!!好きですよ!!!!気付いちゃったんですよ認めちゃいますよ!!・・・・・認めるしかないじゃないですかっ・・・・!!!」
止まらない感情があふれ出して息継ぎもしないままにいっきに零れて。
理紗以外に友達で大切な人と呼べる人がいなかった。
伊藤に会うまでは別に一人でも寂しくなかった。
それがまるで当然かのような感覚だった。
それが、私の『世界』だった。
——そんな私の『世界』にある日突然伊藤が現れた。
伊藤は私にいろんなものを教えてくれた。
そんな恩人とも呼べる人を好きになってしまった。
もしこの気持ちがバレてしまったら。
もう絶対今のような生活には戻れない。
そんなのは嫌だ。たまらなく嫌だ、何よりも嫌だ。
大切な人が離れていく。
寂しさを知って、同時に人と触れ合う温かさを知ってしまった。
そうすると今度は寂しさに戻るのが怖くなる。
また、寂しくなるのは——
「・・・・・嫌だ・・」
いつのまにか自分でもわかるくらい声が湿っていることに気付いた。
「・・・・・・本当に、先生は最低だ」
「悪い」
「・・・・嫌いだ」
「知ってる」
「・・・・・・アホ」
「何言われてもかまわねぇよ」
「・・・・・っ・・」
「俺は不器用ながらも大切なものを必死で守ろうとしてるお前、嫌いじゃないけど」
「・・・だか、ら・・っなんだ・・・」
「かっこいいってこと」
「・・・・・・・、」
何を言っているんだこのクソ教師。
こんな自分の感情ひとつコントロールできない奴が、かっこいいって?
「・・・・・頭いかれたか。クソ教師・・」
「クソ教・・っ・・あぁそうだよ。いかれてるよ」
「本当は教師じゃないでしょ」
「よく言われるけど免許持ってるから」
「私今日はもう帰ります」
「・・・・・」
荷物を持って教室を後にする。
「・・・クソ教師なんていってごめんなさい」
そしてゆっくり扉を閉める。
最後に先生を見たとき
先生が何か言っているような気がした。
(本当に自分は、子供だ)
- Re: Re:愛してる ( No.132 )
- 日時: 2013/07/21 21:24
- 名前: おかゆ (ID: cFR5yYoD)
—北村蓮視点—
「あーあ・・やっちまった」
さすがに反省してる。何を急いでるんだ俺は。
「すまん市川・・」
なんて。誰もいない教室に言ったってもう遅く。
本当に何をやってるんだ。
また生徒一人を救えなくて何が先生だ。
クソ教師。——なんてピッタリなあだなだ。
「——前と同じじゃねぇか」
前と同じ。
それは口に出すとさらに自分の心にグサリと突き刺さって——・・
「・・・・・すみません先生ーちょっと友達と話してた・・ってあれ?市川は?」
人が落ち込んでるときに何帰ってきてんだお前は。
「・・・・伊藤か・・」
「え、何俺来ちゃいけないの!?」
「あーあーわかったわかったすまん」
「・・・・・で市川は?」
「帰った」
「はぁっ!?」
伊藤はアホみたいな声を出しながら椅子に座り頬杖をつきながら俺を見てきた。
「なんで?」
「・・・・予定があったんだと」
「ふーん・・」
それだけ聞くと自分の問題のほうに視線をはずした。
「なぁ伊藤」
「んー?」
「お前って好きな人いんの?」
バキッ・・とシャーペンの芯が折れた。・・お前ら動揺すると折るのか。
「なっ、な、に言ってんだよ・・」
「市川?」
今度はガタッ・・と机に足をぶつける音。
「あっ・・・・あぁああんたはっ・・・・」
「図星かよ」
「そっ・・・なっ・・そんな、わっけ・・ねぇじゃん・・・!!」
何こいつこんなにわかりやすいの?
「・・・・なぁ伊藤」
「なっ・・なんだよ・・」
「例えば、孤独な少女がいたとしよう。彼女は寂しさという概念がなかった。独りだったけどこれが寂しいという感情なのかはいまいちよくわからなかったんだよ」
伊藤が変な目で見る。俺はかまわず続ける。
「そんなある日彼女に友達ができた。それが初めてではなかったけど大切な人間だった。でも彼女はそいつを傷つけてないか不安だった。
長く人との付き合いを避けていた彼女はどう接すればいいのかもわからなくなっていた。
彼女は友達ができたのにどこかでまだ孤独を味わっていた。
——そんな時、お前だったら彼女にどうする?」
「は・・?どうって・・」
「俺はな、彼女に恋愛を体験させればいいんじゃないかと思ったんだ。青春は何かと聞かれたら友情、恋愛、を連想するだろう。だから俺は、
彼女と彼女の友達が恋人同士になるように仕向けようとした」
『仕向けようとした』
なんてひどい言い方なのだろう。
でも、
まだ足りないよな。
「その結果彼女は余計に悩んでしまった。踏み出してしまったら今までの関係が壊れてしまうと。でも俺はそんな彼女の想いを無視して引っ掻き回したそして彼女を傷つけた」
伊藤は気付いているだろうか。
この話のもうひとつの意味に。
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