社会問題小説・評論板
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- Re:愛してる
- 日時: 2012/07/26 14:34
- 名前: おかゆ (ID: uOIKSYv5)
『非常識だとしても皆が常識といえばそれは常識になるんだ』
こんにちわ。
名前を変えて他の所でもちょくちょくやってますが、社会系が一番書きやすいと思ってまた書いてみることにしました。
どうぞ生暖かい目で見守ってください。
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2012.0219
- Re: Re:愛してる ( No.123 )
- 日時: 2013/04/04 23:25
- 名前: おかゆ (ID: VKUUDnij)
「文化祭マジック?」
「そうそう♪」
文化祭も残り一週間をきったある日、伊藤が遅れると連絡が入っていたので私は一人で時間をつぶしていたら突然自称顧問と言い張る北村先生が入ってきて、どこから持ってきたのかみたらし団子を食べだしたのだ。
「つーかさぁ、お前は居残りとかしなくてもいいん?」
「私がやるところはもう終わってるので」
「つれないなぁ。暇なら手伝うとかすりゃぁええのに」
「別に私がやっても周りが迷惑でしょ?」
だからやらないほうがいいの。
そういうと先生は黙ってしまった。
「・・・・で、なんですかそれ」
「んぁ?おぉ・・おふ、あおは、おっほはっへ・・」
「食べ終わってからでいいんで」
「・・・・ん、ふぅ、んで、何だっけ・・あぁそう、文化祭マジック」
先生は食べかけの串をくるくると軽く回しながら私に言った。
「お前はこの学校の雰囲気をみて何も思わなかったのか?」
「えっ、はい」
「おまっ・・まぁこれは一種のラブイベントだ」
「ラブイベント?」
笑いそうになった。
「そうだ」
ドヤ顔で決めてくる先生にまた笑いをこらえながらも先生は続ける。
「こういうクラスで団結してひとつのことを成し遂げるというのがいいんだ。あぁ、団結してってのなら体育大会や音楽会とかもそれにあたるな。でも文化祭は残って自分の担当の作業をやったりする。同じ担当の男女が同じ教室で遅くまで作業をする。するとどうだろう——・・意識しないか?」
先生が怪しい笑みを浮かべながら団子を一口。
「つり橋効果・・・みたいなものですか」
「んまぁ・・そうなるかな」
先生は残りの団子も食べて、そして。
「伊藤も今頃女子とそうなってるかも——・・♪」
「はっ?」
素っ頓狂な声を出してしまった。
「あれ?お前もしかして、」
「なっ、わけないじゃないですか!」
「んー?そーぉ?」
相手の反応を楽しむかのように団子のなくなった串を軽く噛んだ。
「文化祭マジックにかかった男女のカップルが異常に多くなるんだよなぁ」
なんて楽しそうに言いながら串を軽く噛む。
「実際この文化祭準備で付き合ったやつらは俺の知ってる限りではもう三組いる」
「あんたそんな情報どこから——・・」
「んー?まぁ・・・・な、」
黒縁メガネの奥に隠れている目がきらりと光る。
「まっ、お前伊藤が好きでもそれは友情としての好きだろ?まだ」
「まだも何も、私は友情以上の好意なんて持たないと思いますけど」
「どーかなぁー?」
ごちそうさまと先生がみたらし団子のパックを手にもち、資料室をでた。
「まっ、せいぜいがんばれ」
なんて言葉を残しながら。
- Re: Re:愛してる ( No.124 )
- 日時: 2013/04/26 22:02
- 名前: おかゆ (ID: zTrrcKzh)
先生のよくわからない話しが終わって数分後。
「あー疲れた・・悪ぃ遅れた」
伊藤がやってきた。
「・・・別に待ってないし」
「まぁそう言うなって」
伊藤は軽く笑いながら近くにあった椅子に腰掛けた。
「今日で俺が分担してた仕事が終わったんだ」
「ふぅん、」
「でもまだまだ仕事が残ってるからな・・いろいろ手伝わないと」
「へぇ・・」
独り言なのか、私に向かっていったのか、どちらかは解らなかったけど。
「・・・・なぁ、」
「何よ」
なんだか。
「おい」
「だから何」
ヤバイ。
「市川」
「何って——」
あ。
顔と顔。距離、数十センチ。
「お前、怒ってる?」
警告、警告
「・・・・お、こって・・ないけど」
少し噛んでしまって、だらしない。
「何で目を合わせてくんないの?」
「は?」
そういえば。そんなこともあったなぁ。
なんて冷静に頭の隅で考えた。
でも、待ってよ。
まるで私が先生に言われて伊藤のこと意識してるみたいじゃない・・!!
「・・・・・・・・・ぅあ・・」
軽く息を漏らすと伊藤の顔が一瞬だけ青ざめたように見えた。
そして勢いよく離れるとすぐに彼の顔が赤くなって——・・
「・・・・・悪い」
「あっ・・ううん、ごめん・・」
そしてしばらく無言。・・ううん、本当は一分も経ってない。
「あぁそうだ、明日までにやらなきゃいけないものがあった」
なんて空気を換えてかばんから文化祭の準備と思われるものを取り出した。
「手伝おうか?」
「おぉ、頼む」
顔が熱い。
不自然なくらい静かだ。
『文化祭マジック』
「——・・っ!!」
先生の言葉を思い出してまた顔が熱くなる。
もう、これじゃぁまるで本当に、
「(伊藤のことが好きみたいじゃないか・・)」
でも、一度考え出した思いはとまらなくて。
それがぐるぐると回って。
(あぁもう)
私は伊藤が好きなんだ——・・
気付かない振りして、でも本当は心のどこかでもう気付いてたのかもしれない。
気付いてしまったらもう。
止まらなくなる———・・・。
- Re: Re:愛してる ( No.125 )
- 日時: 2013/06/01 00:02
- 名前: おかゆ (ID: BYRZvQv9)
——・・気付いてしまったらもう、止められない?
「おはよう市川」
「おはよ」
気付いてしまって、自覚してしまって、一日過ぎた。
普通に挨拶して、普通に席について。
でも。
いつものように過ごそうとするたびに、伊藤のことを目で追ってしまう。
「(・・・・嘘でしょ・・?)」
まさか自分がこんな情けなくなってしまうなんて。
伊藤が友達と言葉を交わした。
伊藤が友達とじゃれあった。
伊藤が教科書を開きだした。
伊藤が——・・
「———っ!!!」
目が、あった。
どうしよう、ずっと見てた、見てたのばれた?
もう一度。今度はチラッと気付かれないように。
伊藤はなんでもないという風にまた友達と話していた。
「——・・クソ・・」
世の中の女子はこんなことでドキドキするんですね。
そりゃ、これが初めての恋というわけじゃないけど。
あくまでそれは小さいころの話だったわけで。
「・・・・・・もう、」
今まで嫌で嫌で仕方がなかったこの学校も。
希望が、光が、愛しさがあふれて見えてくるだけでこんなにも楽しくなるのか。
あぁもう嫌だなぁ。
でもそれ以上に、
(幸せだなぁ)
ついこぼれそうになる笑みを必死で抑える。
——・・自分が自分じゃなくなったようだ。気持ち悪い。
・・北村先生。
あなたはなんてことをしたんですか。
私の心に爆弾を落として引っ掻き回して。
当の本人は
きっと今頃自分の好きな小説でも読んでいるのでしょうね。
- Re: Re:愛してる ( No.126 )
- 日時: 2013/06/09 01:21
- 名前: おかゆ (ID: Elg3dxRA)
私は、このままだと駄目になってしまうんじゃないか。
——文化祭当日。
時間というのは時に残酷に流れるものであって。
『これより11時から軽音部によるライブが始まります。繰り返します—・・』
どこかでそんなアナウンスが聞こえてきて。
私は一人でぶらぶらしていて。
結局皆からは誤解されたままで。
「やることないなぁ・・」
私の高校は文化祭のときは他校の生徒もこっちが招待すれば出入り可能になる。
「理紗、」
周りは皆騒いでいて私が呟いた言葉は聞こえない。
皆は私をいないものとし、足を進め、いろんなことをしゃべる。
いつかまた。
そんな言葉を交わした。
理沙が泣いた。
私も泣いた。
伊藤が優しかった。
伊藤に恩返ししようと思った。
いつしかそれが憧れから恋に変わった。
そして——・・
「いた!!!ったく!どこ回ってんだよ!!・・ってお前一人か」
どこか笑いを含めたような声。
「——あんたも一人じゃない」
伊藤。
そう言うと彼——伊藤はまた小さく笑った。
「うるせーよ。俺はお前を探してたんだよ」
「っ、」
少し、ドキッとしてしまう。
「なん、で?」
思わず、声がおかしくなって。
「お前、今までずっと一人だったの?」
「うん・・そうだけど・・?」
「ハァ・・・」
伊藤は何か呆れたとでも言うようにため息をついた。
「・・・・あの子は?」
「あの子って?」
「お前の親友だよ」
親友、
伊藤の口から出たその言葉は私の心を動かすには十分すぎる言葉で。
「・・・・呼ぶわけないじゃない」
「だろうと思った」
「何?嫌味を言いにきたわけ?」
「違うよ」
そして伊藤は決心したように。
「——・・ごめん」
謝った。
「・・・・え?」
「いや、だからさ、先に謝っておこうかなと・・ごめん」
「いやいやいや、なんで急に謝られるの?謝られるようなことしたの?」
すると伊藤は少し目線をそらした。
「・・・・・お前、あの『話し合い』があってから会ってないんだよな?」
「・・・うん」
・・・・ちょっと待ってよ。
「これからも会わないつもり」
「それは違うんじゃないか?」
「は?」
・・・・意味が解らない。
「・・・まぁ、一生ってわけじゃないけど。でもけじめをつけて、それから—」
「市川」
・・・・嫌な予感しかしない。
「・・・あの子に会って来い、市川」
- Re: Re:愛してる ( No.127 )
- 日時: 2013/06/09 21:58
- 名前: おかゆ (ID: U94d6Dmr)
「・・・あの子に会って来い、市川」
——・・全身が沸騰するように熱かった。
同時に、自分が何をやっているのかわからなくなった。
「伊藤っっ!!」
かなり大きな声で叫んだ気がする。
そして手を振り上げた。
「———市川、」
「っっ・・!!」
そして、その手は行き場を失ってトンッ・・と伊藤の肩辺りに触れただけだった。
「お前らは十分頑張ってると思うけどな」
「・・・何も、知らないくせに」
「あぁ、知らない。お前ら以上にお前らのことを知らない。けど、ほかの人たちよりは知ってるつもりだ」
「・・・・・・、」
「もう強がらなくていいんじゃね?」
「・・・・ダメ、だ」
ダメだ、ダメなんだ。
「伊藤が思っているほど・・そんな簡単なことじゃないんだ・・・」
やめて。これ以上——・・
「でもお前が思っているほど難しくないと思う」
・・・・・・・・。
「—文化祭って言うのにこんなとこで説教かよ・・」
「かもな」
伊藤は優しく笑う。
「それに・・会って来いって言ったって・・いないじゃん・・」
「いるよ」
「は?」
自分の耳を疑いそうになった。今、こいつ、なんて言った?
「実は俺が招待した」
「はっ!?」
今度こそ、自分の耳を疑った。
「お前絶対招待しないと思ってわざわざあの子の高校まで行って——」
ここから先は覚えてなかった。
なぜだか笑いがこみ上げてきて。
なぜだか自慢げにはなすこいつを見ていたら
怒りとか、全部飛んで行っちゃって。
まったく、なんてことをしてくれたんだ。
本当はすごく会いたかったのに。
それを無理やり押し込めて我慢して。
「・・・・・・あぁ、馬鹿みたいね」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもない——・・ありがとう」
「おう!!・・・・って、そうだ!もう時間がないんだよ・・あと10分で待ち合わせ時間だ・・っと」
彼は理紗を招待し、時間になったらあの資料室に来るように頼んだらしい。
そしてその時間までに私を見つけ出し、説得させ、理沙のいる資料室に連れて行くこと。
一か八かの賭けだったとか。
それを聞いてまた笑った。
「もし私が行かなかったらどうしたのよ」
「そこらへんは考えてなかった」
そしてとっとと行って来い、と背中を押す。
「・・・うん」
さぁ、速く。
急いであの子のいる場所へ。
自分から言い出したけじめなんてもう関係ないわ。
伊藤が私や理沙のためにやってくれたこと、
精一杯の感謝と行動で恩返しを。
深呼吸をして扉を開ける。
「———・・瑠璃?」
——・・あぁ、懐かしい声。
「・・・理紗、」
———そこにいたのはあの時と変わらない—・・、
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