複雑・ファジー小説

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OUTLAW 【6ヶ月ぶりの更新ですっ!!ごめんなさいっ】
日時: 2014/05/07 00:17
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

ちわちわー、Cheshireって書いてチェシャって読みますww

んーと、誤字脱字、文が変ということがあった際は、スルーせずに言ってください、お願いします。

あと、更新が不定期です。まぁ、暇なんで、多分早いとは思いますが、遅くなるかもです。すいません

あとあと、もうお話自体が下手だと思いますが、どうぞ飽きないで読んでください。

コメント、アドバイス、イラスト、その他もろもろ大歓迎ですwwというか、ください。ください。大事なことなので2回言いました。



OUTLAW


<プロローグ>

>>1

<ハジマリ>

>>18 >>25 >>30 >>33 >>38 >>40 >>41 >>43 >>44 >>49 >>50 >>51 >>56 >>57

<JUNE>

>>86 >>87 >>88 >>90 >>93 >>94 >>95 >>99 >>100 >>101 >>111 >>116 >>121 >>125 >>128 >>131 >>134 >>138 >>139 >>140 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>152 >>159 >>160 >>163 >>166 >>169 >>170 >>171 >>172 >>190 >>194 >>197 >>198 >>199 >>200 >>204 >>219 >>221 >>222 >>227 >>228 >>231 >>232 >>237 >>240 >>248 >>253 >>257 >>258 >>261 >>263 >>266 >>267 >>269

<番外編1>

>>72 >>76 >>77 >>78

<番外編2>

>>79 >>82

<サブストーリー>

サブストーリーは、チェシャではなくキャラクターをくださった皆様方がそれぞれのキャラクターを主として、書いてくださったお話です

葉隠空悟編 >>201 >>202 >>211 007さん作

阿九根理人編 >>217  ルル♪さん作

社井狛編 >>179  ルゥさん作

黒宮綾編 >>187  朝比奈ミオさん作


<登場人物>

矢吹真夜、篠原梨緒 >>21

高嶺真 >>39

葉隠空悟 007さんより >>5

杵島灯 金平糖さんより >>3  

阿九根理人 ルル♪さんより >>6

社井狛 ルゥさんより >>19

璃月那羅 雷羅さんより >>22

榊切 橘椿さんより >>11

黒宮綾 澪さんより >>64

天内小夜 ブルーさんより >>10

皐 ミケ猫さんより >>8



OUTLAW 【参照2000ありがとうございますっ!!】 ( No.198 )
日時: 2013/06/15 22:33
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

 最早息することさえ難しく、変な汗が背筋を通っていく感覚もあった。

 暑い。暑いはずなのに、どこか、寒い。

 怖い。怖いんだ。

 もう、俺は・・・。

 近くで、彼女がくすっと笑ったことが分かった。

「それなりに楽しかったから、今回はこれくらいにしておいてあげるわ」

 どこか満足げな恍惚とした表情を浮かべながら、彼女は俺から一旦離れ思い出したかのように俺の手を縛る自身のリボンを解き取る。

 自由になった手で互いの手首を撫でる。久しぶりに思い出した手首の火傷がはっきりと認識できた。長袖を着ていたから今まで周りに気付かれなかったのだろう。

 ちょっとした安堵も束の間、彼女のほうから画面をタッチする音がする。

 ふと目を向ければ彼女が持っているのは俺の携帯だった。俺が動揺している隙に、密かにポケットから取り出したのかもしれない。

 自分の携帯を他人にいじられることに対して軽い拒否感はあったものの、今の俺はまだ立てるだけの体力、というか精神力が回復していない。

「よし、完了」

 そう言いながら、彼女は俺の携帯をくるりと回して俺へと向ける。反射的に受け取りとりあえず中を確認する。

「私のアドレス、登録しておいたから。必要なら、いつでも連絡してね。あぁ、心配しなくても別に何も見てないわ」

 ・・・残念ながら、彼女の言葉を信じるほど俺はできたやつではなかった。

 未だに名前も知らないので、登録したという新登録の連絡先を確認してみると・・・本当にアドレスと電話番号しか登録されていなかった。名前も住所も空白になっている。大方、自分で登録しろとでも言っているに違いない。

「今日の夜、中央公園の噴水前ベンチに行きなさい。何かヒントがあるかもしれないわ。・・・あぁ、でも絶対1人で行って。他の人に言っちゃ駄目よ?」

 彼女は俺へにっこりと笑うと上機嫌に何かの歌のリズムを刻みながら屋上から出て行こうとする。

 つい、「他の人」というのがアウトロウを指しているように思えて、こいつがどこまで知っているのか怖くなった。

 中央公園の噴水前。

 来たばっかりの俺でも分かる待ち合わせ場所によく使われる場所だった。

 何故、彼女がそんなことを俺に教えるのか分からない。そもそも、そこに何かがあるという保障もない。

 だけど、何故か行ってみようと思えた。絶対的に、こいつはそう簡単に信用しちゃいけない奴のはずなのに。

「待てよ」

 かろうじて引き止めて、まだ力を入れることを拒む体を無理矢理言うことを聞かせて立ち上がらせる。

 俺の声に振り返り足を止めた彼女は「なぁに?」と相変わらずの調子で首を傾げた。

「名前。言ってけよ」

 アドレス帳の都合もあるが、それより重大なのはただの俺の気分。相手は俺の名前を知っているのに、こっちは知らないとかムカつく。

「さぁ・・・何だったかしら」

「は?ふざけてんの?」

「そうかも」

 ・・・どうにか苛立ちを押さえ、ゆっくりと息を吐く。

 そんな様子を見て彼女はまたくすくすと笑った。そのことにまた、苛立ちを覚える。

「宿題にしておかない?次に会ったとき、あなたが私の名前を呼ぶこと」

 結局自分で調べろってことか?学年もクラスも全くもって知らない女を?

 アウトロウに聞けば容易いだろうが、どこで知り合ったのか聞かれたら困る。彼女の言うとおりにするなら、中央公園のことも言わないほうがいいだろう。他に何を話したか聞かれたら、個人的に答えたくない。となると、こいつのことを聞くのは不可能に近い。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、分かった、やってやるよ」

 たっぷりと時間を取って悩んでから、俺は彼女の言い分に承諾した。
 俺の答えを聞いて、「そうこなくっちゃ」と小さく呟いた彼女は今度こそ屋上から出て行く。

 1人になった。風が吹いた。力が抜けた。その場に座り込んだ。

 たった数分の出来事。なのに、今日1日の中で1番疲れた気がする。

 たった1人の女。なのに、今日1日の中で1番振り回された気がする。

 何となくそのことが癪で、不機嫌になった俺は携帯を操作してあいつの連絡先の名前の欄に「宿題」と書き込んだ。せめてこれくらいはやんないと気が済まない。

 今になってよく考える。何故この宿題女があのことを知っていたのか。

 もう忘れようと思っていた耳の痛みが、またちりちり痛んできた。

 やっぱり逃げられない。あの人の声が、言葉が、痛みが、儚さが、体の中に、残って、消えない。

 いつかはケリをつけないといけない。いつかは。逃げたあの檻の中へ、飛び込まないといけない。

 責められたくなくて、自分を守るために、逃げ出した。でもその先は、本当に外の世界?

 檻から出たと思っているようで、俺はまた違う檻に飛び込んだ?

 それとも、俺の檻は何重にもあって、1枚出たくらいじゃ逃げ切れなかった?

 どんなに足掻いても、あの人は俺を離してくれない。いや、俺があの人を離せない。

 仰向けになって、屋上に寝っ転がった。

 動いていかない視界の中で、雲だけが風になびいて揺れていた。

 あの頃の、雨のようにただ単調に、俺の視界の中でそれだけが動いていた。



 ———『駄目。だめ、だめっ!嫌だっ、行かないでっ!』

 ———『お願い、お願いよ、真夜。あなたまで私を置いていかないでっ!私を1人に、しないで!』

———『1人は嫌い、寂しい、寂しいのよっ!もうあんな想いしたくない、私は真夜を愛しているのよッ!!』

  ———『私はこんなにも、あなたを愛しているのっ!・・・あなたも、私を愛してくれるでしょう?』

                  ———『真夜、言って。聞きたいの、今すぐ。・・・ねぇ、早く』


(『・・・・・・・・・・愛してるよ』)


 頭の中でリピートされる言葉に、無意識のうちに答えてしまう。

 これほどにまで、まだ鮮明に覚えている。

 だけどもう、聞くことはない呪いの言葉。

 そうさせてしまったのは、誰でもない・・・・。

「真夜」

 突然名前を呼ばれて、視線を出入り口のほうへ向けた。別に見なくても声の主はすぐに分かった。

「やっと見つけた。どこにいたの」

「いや、ここだよ」

 梨緒。篠原梨緒。

 逃げたばっかりの俺を、助けてくれて拾ってくれた俺の。

 ずっと一緒にいることを俺の意思で約束した、大切な女の子。

 起き上がりながら梨緒のほうへ振り向く。どうやら梨緒1人らしく、姫路は既に帰ったようだ。

「どうかした?」

 意外に鋭い梨緒に苦笑しつつ、手招きして梨緒をこちらに呼ぶ。梨緒はよく分からないという表情を浮かべていたが、素直にとことこと俺の前まで歩いてきて、ペタンと座り込んだ。

「なに?」

 屋上に座り込むという不思議な状況だったが、そんなことお構いなしに俺は梨緒に質問を投げかけた。


「もし、俺が死んだらどうする?」


『決まってるじゃない。私も死ぬわ』

 昔のあの人は、そう即答した。あのときの恐怖は今でも覚えている。

 思えば、梨緒との「ずっと一緒にいる」という約束は、俺があの人としてきたことと一緒なのだ。

 もし、梨緒があの人と同じ思考回路ならば。

 俺は、梨緒を恐れてしまうかもしれない。

 そんなのは嫌だ。

 嫌だから。

 もしそうなら、梨緒が壊れてしまう前に離れないといけない。

 だから。


 ・・・だから。



















「泣くわ」




OUTLAW 【参照2000ありがとうございますっ!!】 ( No.199 )
日時: 2013/06/22 13:32
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

「え」

 相変わらず空気を読まない梨緒の受け答えに、俺は一瞬戸惑ってしまう。


「泣いて泣いて・・・涙が枯れない程度に泣いて、泣き疲れて、」


 ・・・泣く?

 梨緒が?

 ただでさえ、俺の言葉に嬉し涙を零してくれた梨緒が、


 今度は俺がいなくなったことに悲しんで涙まで流してくれるというのか?


「真夜が残した世界を、一生懸命生きていくわ」


 死んだら私も死ぬ。それは俺を求めてくれる言葉と同時に、プレッシャーでしかなかった。

 そのプレッシャーに耐え切れずに、あんなことをしてしまったくらいだ。

 俺がずっと待ち望んでいた言葉は、聞きたかった言葉は、

 今、梨緒が言ったやつじゃないのか?

「真夜が死んだら灰になって、土に還る。その土で育った木は、きっと私を雨から守ってくれるわ。だって真夜だもの」

 目に見えなくても。

 声が聞けなくても。

 手で触れ合えなくても。

 温もりを感じられなくても。


 それでも、一緒にいてくれる。


「だから、私は真夜が死んでも真夜と一緒にいるわ」

 そう言った梨緒は日に当てられてきらきらしてるように見えた。

 優しくて、暖かくて、心地よい。このまま時が止まってしまえばいいと、本気で思える。

 こんなに優しく想われるのは、初めてで、切なくて、苦しくて、・・・甘くて。

 つい、溺れてしまいそうになる。

「・・・いいでしょ?」

 不安げに目を伏せる仕草さえ可愛く思う。

 どうして梨緒がここまで想ってくれるのかは分からない。だけど、そのことに自分が助かっているという事は分かる。

 もしも、梨緒みたいなのが傍にいてくれているんだとしたら。

 檻の中でもいいのかもしれない、なんて。

 そんな馬鹿げたことを思ってしまったから。

「真夜、どうしたの?」

 気付けば俺は梨緒のほうへ倒れこんでいて。

 梨緒のか細い体を腕の中に収めていた。

 暑い気もしたけれど、何となく梨緒の体は冷たくて気持ちよかった。

「何でもない。でも、今だけ。少しでいいから、・・・このまま」

 数日前のあの日を思い出したのは、多分俺だけじゃないはず。

 だから梨緒も、何も言わずに俺の背中に手を回してくれたのだろう。

 今だけ、少し、すがっていたい。

 いつかケリをつけに行かないといけなくなるから、せめてそれまで。

 それまで、俺は梨緒を離してはいけない。・・・いや、

 離したくない。


 今度こそ、俺の意思で。


***

「那羅ちゃん、大丈夫かなぁ・・・」

「大丈夫じゃないと思うけどな」

 俺の独り言に、空悟がすかさず返事をくれた。

 僕らは今学校の帰り道。これといった情報も仕入れられずに帰宅する途中だ。

 狛くんが拉致されたのが昨夜。

 ・・・僕が、ちゃんと狛くんの傍にいれば。

 そんな後悔を、昨日からずっと繰り返している。しても無駄だって分かっていても、つい思ってしまうのが人間の性だ。

 悔やむより動くほうが先。とか言いつつ、まだあまり有力な情報は仕入れていない。

 それなりに情報は集まるけど、生徒の教師への反感の言葉なんて世間話とそう変わらない。どれが自分の欲しい情報なのか見極めるのは、結構難しい。

「狛くん・・・早く助けないと」

 焦る。

 彼の暗所恐怖症の症状の悪化具合は、一緒に過ごしてきて理解しているつもり。

 狛くんの体調と、それに加えて那羅ちゃんの精神状態を考えると、真さんが言ったとおり3日が限度。そのうち1日目は何の収穫もなし。

 焦るのも当然だ。

「・・・考えてみると、今社井って危ない状態なんじゃないのか?」

「え?何言ってんの、当たり前でしょ」

「いや、身体のほうもそうだけど、状況的に・・・って、何て言えばいいんだろう。立場的に・・・さ」

「?」

 今まで神妙な顔つきだとは思っていたけど、突然何を言い出すんだ。

 隣を歩く空悟は少しの間言葉を考えていたようだけど、1分も経たないうちに説明したほうが早いと思い直したらしく目線を俺のほうに向けてきた。

「いいか?今回の被害者は社井を抜いて3人。2人ならともかく、3人中3人となると、犯人の狙いは女子生徒の可能性が高い」

 それは少し前にみんなで辿り着いた結論だった。

「そこに、想定外の事態で社井を拉致してしまう。最初は女だと思ってはいても、運んだんなら嫌でも男だと分かるはずだ。女を狙った犯行ばかりしてきた奴が、突然男に手を出してしまったら、・・・どうする?」

 例えば、僕が可愛い女の子たちばっかり集めてカラオケにでも行くことにしよう。

 そんな中に、突然男の子が飛び入り参加してきたら。

 ・・・言い方は悪くなってしまうが、僕だったら確実に

「追い出す」

 今の社井くんの状況は、この飛び入り参加の男の子と同じなのではないだろうか。

「だろ。でも、人質のアクセサリーをわざわざリスクを冒してまで回収しにくるような慎重な奴だ。一度行方不明にさせた生徒を元に戻すなんて大胆なんてことしない」

 訳があって飛び入りの男の子を追い返せないと。

 うん・・・まぁ、少し気になるというか、何というか変な空気にはなるだろう。もし、そんな状況に陥ったとしたら・・・?

「僕だったら・・・女の子の数増やすかな・・・」

 その飛び入り男の子がいても女の子が増えれば別に構ってる必要なくなるし・・・。

 でも、もし、犯人と僕が同じ考えだとしたら・・・?

 狛くんという男の子を見なくて済むように、女の子を増やすんだとしたら・・・。

「もし起こるとしたら、次の犯行はこの3日以内なんじゃないか?」

 空悟に言われて、改めて気付く。

 1人目の黒宮綾。2人目の渡辺香織。3人目の如月美羽。そして想定外の4人目、社井狛。

 これ以上被害者を増やすわけにはいかない。

 しかもこの予想が正しいのなら、次は必ず女の子だ。

「・・・そんなの許さない」

 だって女の子は強くて強くて、弱いんだ。

 強さを持っているのかもしれない。だけどそれでも弱いんだ。

 その弱さを守るのが、男の存在意義だろう?

「空悟。もう1回教師たちについて調べてみないか」

「お前ならそういうと思ったよ」

 肩を竦めて足を止める空悟に、素直に感謝する。もしかしたら空悟は最初からその気だったのかもしれない。

「悪い」

 とりあえず謝りながら俺と空悟は来た道を逆戻りする。

 まずは社井くん以外の3人の教師の共通点が必要だ。担任という可能性は低いから、教科担任を調べてみる必要がある。

 調べる要素を確定しながら少し歩いていたら、反対側から歩いてくる美男美女カップルがいた。

 誰だろう?と思って視線を向けていると、それはカップルではなく双子の姉弟ということが分かる。















更新が遅れてしまい、本当に申し訳なく思います!

中々思い通りに行かなくて・・・何度も書き直してしまいませいた。結果的にこんな意味わかんないものになってしまったのですが、どうかご了承くださいなのです

もうすぐ定期テストがあるので、また次の更新は遅れてしまうかもです、すいません。

こんな馬鹿なチェシャにコメントアドバイスイラストなどなどを恵んでくださいっ! 凄くうれしいのでっ!頑張りますってなるので!

お願いします・・・いや、ごめんなさい、ありがとうございますです、本当もう・・・馬鹿ですいません。

どうか飽きずに呆れずにお願いしますですw

OUTLAW 【参照2000ありがとうございますっ!!】 ( No.200 )
日時: 2013/07/02 14:43
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

更新が大分遅れた・・・

定期テストとか修学旅行とかその他もろもろの行事が何かたくさん被って全然進められなかったです、すいません。1発ずつ殴ってください、いや、やっぱりやめておきます痛いの嫌いです、すいません。


とりあえず、続き!








 姫路グループの御曹司とご令嬢。多分この学校1のお金持ちだ。

 あまり人と群れないタイプらしいが、この頃真夜と梨緒ちゃんとよく一緒にいるのを見かける。

 それに、姉である空のほうはかなりの情報通と聞く。

 少しくらい、質問してみるのはどうだろうか。

 と思っていた矢先に、それは果たされないこととなった。

 目の前まで迫った姫路姉弟は、空悟の前でピタリと足を止めて無言で睨みつけ始めたのだ。いくら俺でもこれは声を掛けづらい。

 見詰め合う姫路空と空悟は、全く反対の感情を浮かべていた。

 姫路空のほうは、憎しみや恨み、そういった禍々しいほどの怒りが見られ、空悟はというと罪悪感や後悔という今にも謝罪しそうな表情だった。

 ここって接点があったのか?今までそんな素振りは1度も見せなかったから、全く気付かなかった。

「・・・あ、えっと、元気・・・だったか」

 先に声をかけたのは空悟だった。

 だけど、声をかけられた姫路空は睨むばかりで一向に答えようとしない。弟の姫路優は、姫路空の後ろにいるけど、空悟のほうを全く見ようとはしていなかった。

 返事が来ないことに、気まずさが生まれる。

 どうしよう・・・もしかしたら僕いないほうがいいんじゃないかな・・・と、少し不安になってきた。

 すると、ようやく姫路空が口を開いた。

「よく話しかけられるわね、呆れたものだわ」

 空悟の声の掛け方から考えて、ここは昔の知り合いだったのだろう。

 なのに、この言葉は酷いんじゃないんだろうか。

 そうは思うが、空悟が何も言ってないから部外者である僕が首を突っ込むわけには行かず。

 空悟が唇を噛み締めるのを、ただ見ていることしかできなかった。

「結局葬式にも来なかったものね。お墓参りにも来てないそうじゃない、冷たい人ね。所詮あなたにとってお姉さまはその程度のものだったのかしら?」

「・・・それは、違う」

「違う?今のあなたの立場でそんなことが言えるの?」

 露骨に怪訝な表情を浮かべて、姫路空は空悟を攻め立てる。

 何となく見てられなくて、視線を逸らした。

 アウトロウのメンバーは、何かしらの過去を背負っている。多分、真さんがそういう風に集めている。

 だけど、誰もお互いの過去を知らない。知りたいとも思わない。自分の過去を知られてしまうのを恐れているからだ。

 もしかしたら、というか俺の勝手な予想だけど、今この状況は空悟にとっての過去と、関係があるのではないだろうか。だったら僕は聞かないほうがいいはずだ。

「・・・でも俺は、百合を「やめて」

 姫路空の表情が変わる。憎しみの中に悔しさや悲しみが混じる。

「お姉さまの名前を、呼ばないで」

 その言葉に、空悟は言葉を飲み込んだ。

 百合、というのが姫路姉弟の姉にあたる存在なのだろう。空悟が今の言葉に何を続けようとしたのかは分からない。

「・・・姉さまを、殺したくせに」

 姫路空の声は小さすぎて僕にはよく聞き取れなかった。が、空悟は聞き取れたようで、目を大きく見開いていた。

 何かを言い捨てた姫路姉弟は再び歩き出して去っていった。

 取り残された空悟は俯き、手を震わせていた。

 どう話しかけたらいいか分からず、動揺してしまったのは不可抗力だ。

 数分にも感じたが実際は数秒だろうという時間が過ぎて、空悟が顔をあげる。

 もうそのときにはいつもの明るい空悟に戻っていて、

「待たせちまったな、ごめん。行こっか」

 なんて言うから。

 僕は何も言えなくなってしまうんだ。

 友達なのに、支えてあげられなくて、ごめんね。

 でもそんな謝罪の言葉も言えなくて。

「おう」

 笑顔でそう返すことしか、僕にはできなかった。

***

 視界が開い・・・た?

 瞼が開いた間隔があるのに、


 視界は暗いまま。


 何で。何、暗い?

 今、僕は、暗いところに、いる?

 真っ暗で、何も見えない。

 何も。何も、何も、見えない。

 どこ。ここはどこ。

 ・・・お父さん。お母さん。スノウ。どこ。

 僕を、1人にしないで。

 嫌だ、嫌だよ・・・。

「あ・・・」

 自分の声が聞こえた。

 身体が震えた。

 酸素が身体に入ってこなくなった。

「いや、ぁ・・・・」

 暗いの、真っ暗なの。嫌いなんだ。

 だって、真っ暗な闇は


 僕の大事なものを、全部奪ってしまうんだ。


「あ・・・あ、あっ・・・・・・・・・・」

 目が覚めたらみんないない。

 どこ・・・。僕の大事な人たちは・・・?

 やっと見つけた僕の居場所・・・みんなの隣・・・。

 ・・・ねぇ、一体どこに行ったの・・・?


「・・・っ・・・・う・・・・あぁぁぁぁぁああああああっ!!!!」


 そしてまた真っ暗な闇の中で、

 僕の意識が途切れる。

***

 夕方6時。

 俺はあの宿題女の言った通り中央公園噴水前に来てしまっていた。

 アウトロウに1度帰り、空悟と理人はいなかったので梨緒に「ちょっと出かけてくる」と宣言し、そのまま出てきてしまった。

 そういえば、宿題女は「夜」としか言っておらず、時間が指定されていない。しかも「ヒント」というのが物体なのか人物なのかそれすらも分かっていない。そう思うと、かなり危ない橋を渡っているように思える。

 噴水前は、多からず少なからずの人数の人々がいた。家族がいれば友達同士もいるし、恋人たちだっている。ふざけた不良共には喧嘩を売ってみたかったが我慢した。

 でもとりあえず、ここに高嶺高校の生徒がいるとは思えない。やっぱり、あの宿題女に騙されただけか。

「ねぇ、お兄さん、1人ー?」

 知らねぇ女に話しかけられる。

 ・・・何か、久しぶりだな、こういうの。

 今までアウトロウの奴らとずっと一緒で、1人になる機会なんてあまりなかったから、知らない女に遊びに誘われることだってなかった。

「悪ぃ、用事あるからさ」

 気が向いたら飯くらいなら付き合ってやれるが、今の俺にはアウトロウがある。今日の夕食当番が誰だかは忘れたけど、当然俺の分も用意してくれているはずだ。だったら、外で食べてきてしまうのは何か申し訳ない。

「えー?いーじゃん、遊ぼうよー」

 無駄に化粧が濃くて派手な服を着ている女は、きっとこういうのに慣れているんだろう。

 面倒な奴に捕まったな、と舌打ちしたい気持ちを必死に堪えた。

 結構可愛い感じだし、昔だったら断ることなく「いいよ」と答えていただろうな。でも、今となっては絶対梨緒のほうが可愛いと思ってしまう。

「いや、マジ無理だって。悪ぃな」

「おねがーい」

 腕を絡めてきた女を、そろそろうざったらしくなってくる。

 振り払うのは簡単だが、何となくそれは避けたい。元々女に手を上げる趣味はないのだから。

 ・・・でも、そろそろ面倒だ。

「おい、放せよ」

 とその時、突然見知らぬ声が聞こえた。

 男にしては高い、女にしては低い、とても中性的な声だった。















・・・分かりづらい感じになってしまいすいません

飽きずに呆れずによろしくですw

Re: OUTLAW 【参照2000ありがとうございますっ!!】 ( No.201 )
日時: 2013/07/07 14:42
名前: 007 (ID: pyHrCXZU)

葉隠空悟エピソード「白きクリスマス」



12月




葉隠空悟が、机でうつ伏せで寝ている。普通の高校生ならこれくらい「学校面倒くせぇ〜」等と呟いているが、俺は学校等当たり前と言う一般高校生としか言いようがない。空悟は起き上がり、窓の天気を見る。相変わらず、天気は晴天、何故なのか?。12月に入ったのだから晴天ではなく雪が降るのでは?と天気を愚問に思う。まぁ天気が雪となっちゃあ何も得はしない。っと空を見ながら顔が抜けている様にのんびりとした顔になっている。そりゃあそうだ、何もない一日が幸せなのだからっと改めて思う……。


「く〜うご君!」


「ん、ゆr「ばぁ!!」うわぁぁぁぁぁぁ!」


空悟はひっくり返しながら転ぶアニメでありがちな転び方をした。まぁ、鬼の面が俺の視界範囲を埋めるほどの近さだったから驚くのも無理もない。ただ、目立ちたくはなかった。すると鬼の面を被った人が…


「えへへ、驚いた?」

「当たり前だ、あんな近くに鬼の顔でたら今頃口から魂抜け落ちる所だったぞ…」

「だけど空悟君のあの驚き方ってちょっと新鮮だねぇ」


「あんな驚かせ方も至って新鮮でしたけど……」


っと少女がボケて俺がツッコむと言うのがお約束なのかお決まりなのかはどっちでも良い。空悟は自分の頭を撫でイテテっみたいな顔をする。皆こっち見てないけどメッチャ笑ってる、堪えてねぇよ。っと突っ込みたいぐらい俺のクラスは見て見ぬフリが下手くそなのだ。俺も含めてな……。



****


放課後、俺の部活は顧問の先生が出張という事で部活はない、それにいたって俺の通っている部員は勝ち誇ったかのように他の部活を見下すようなアンポンタン顔をしていた、今にでもこの後ぶっ飛ばされそうな脇役キャラみたいな顔をしていた。俺はその脇役すら超えていないのかもしれない立場。言わば、ドラマの感動シーンの時、路上でただひたすらに携帯を打ちながら素通りする男となんら変わらない立場であろうが、何故かあれが(鬼の面で驚いた時転んだとき)一見として少し人気となったらしいが、皆メッチャ見てみぬフリ下手くそだった。俺は購買部で買ったコーヒーを飲みながらバックに教科書を入れる。



「空悟君、もうすぐクリスマスでしょう!、その時デートしようよ!」


「ブッ!……ガホッガホッ!」


今何といった…っと今にでも呟きそうだったが生憎コーヒーが吹きそうだったのでそんな暇ではなかった。こいつは皆と違って見てみぬフリが下手くそなだけじゃない、この女は理解できないのかぁ!!しまったぁ!!よく見ておくんだったぁ!!っと心の底で苦しみかける。



「ゴ、ゴメン。もう一回言って?、コーヒーの勢いでとんじゃったぁ」


「クリスマスデートだよぉ〜!ほら、付き合い長いし」


あぁ〜もうそんな時期になったのか、早いなぁ〜。空悟は空を見て、過去の思い出が振り返られる。俺もクリスマスでも暇だからな、っと空悟は笑顔で微笑む、女の子「百合」を見つめるっと、百合は少し驚き、顔が赤くなっている。


「………いいよ、クリスマス位、彼女を掘っといて如何するってんだ?」


「やったぁ〜!!、クリスマスが楽しみだよぉ〜」



っと百合ははしゃぎながら空悟の手をブンブンッと振る!。今時「嫌だ」っていったら相当悲しんでたに違いない。それどころか、百合に嫌な思いをしてしまうのも、俺として情けないのだ。空悟はバックを持ち、立ち上がる。


「百合、一緒に帰るか?」


「うん!」


っと嬉しそうな顔で目を輝かせる。


夕日も今日に限って美しく見えたような気がする。


だがそれも、狂う時への道とは、気付くはずがなかった———





****



12月 クリスマス




俺は公園の時計台に待っていた。スパイをしている者見たいに腕時計を鋭く見る。この腕時計はスイス土産の高級品といっているが、現時点で土産といっちゃあいけないものを買ってきてしまった父親の失態を見るのが俺も少し泣けてくる。


百合は服の選択で長い時間を取るタイプなのでこういうのは慣れている。百合と六年間の付き合いだ。何十回やらされたか、こういうの。



PPPPPPPPPPPッ!

っと思っている間に携帯がなる後から……



「空悟君〜!!」

っと右側で走って手を振ってる百合を見かけると、携帯の着信を後にし、信号が青になり、百合は走る。

百合はもう疲れ尽ている状態で少し鈍くなる。

だが百合は汗にとも鳴く元気な顔で走る。


そして、百合が抱きしめようと手を翼のように広げる様に走る




が…………





キィィィィィィィィ!!!!




ドンッ!!





時が止まったかの様に、俺の目は、いつでも百合が映っていた。だが、百合がだんだん薄く消え、あの笑顔も無くなってゆく……



俺の隣にいた、百合は………どこへ………


俺の目の前に居たのは、赤いアスファルトの上に倒れている百合の姿だった……


「…………嘘だろぉ……」

っと俺は百合に駆け寄る事もできずただ呆然と百合の所へと歩くだけだった。


そして俺は百合の体を抱かえる。そこには、目を瞑った何も変わっていないただの百合の顔であった。


「…………っぅ………」


「!!…百合ィ!!」

百合の意識が残っていて、だが今にでも苦しいような顔をしている。


「……く……うご……君」


「喋るな!、今……救急車を……」


っと周りを見渡すが、百合の手が俺の頬優しく触れる。


「いい……もう……いいんだ……よ……」


「何がだ!、お前とデートするっていったろ!、だから!!」


「私は……十分だよ……」


「………え?」

俺は、まだ驚きを隠せない。百合はもう切れ切れと意識が消えかかっている。


「やっと……抱いて……くれた……」


「百合……」

「私……嬉しい…よ…………だけ……ど………渡すまで……は……一緒に……いたかった……」


百合は笑顔で意識が朦朧とし、もう限界までいっただろうが、何故そこまで…笑うんだ?


「だけど……十分だ……よ…………くう……ご……君が……いてくれ……る……だけ……で……」


「もう……もういいから、話すなよ……百合」


「私は……も……う……駄目……だけど……最後ま……で……言わせ……て……」


空悟は抱きながら頷く事しか、できなかった。



「私………空悟……君……が………好き……だ………った」


「!!」


空悟は百合の発言で空悟は泣く。



「あり………が……と……う……空悟……く…………ん………」



そしてその最後の言葉で、百合は絶った。




「百合ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!」






その後……


百合の葬式の席に立つ事はなく。家を出て行った。











「百合………俺は………守れなかった………ごめん……こんなに情けない男で……」


それに、あの時最後に言ってくれた言葉は、まだ俺には身が重過ぎるのだ。


Re: OUTLAW 【参照2000ありがとうございますっ!!】 ( No.202 )
日時: 2013/07/07 14:41
名前: 007 (ID: pyHrCXZU)

葉隠空悟エピソード「幻」



ジリリリリリリリリリリ!!!



「っ!!」


俺は汗だくで驚きながら目を覚ます。


「はぁ……はぁ……」


ここは……そうか…アウトロウだった。俺は疲れきったように汗だくで、布団もビッショリで、俺には正に悪夢と言う者ではなかった。
悪夢と言うより、思い出したくなかった過去が芽生えてきたのだ。俺は顔を横に強く振り、頭を抱える。


「……くぅ……」


そこには白い天使の羽の様な封筒が一通置かれていた。

これは、百合の最後の贈り物だ。

俺はそれを開ける事すら資格のない俺がやるべき事じゃない。持ってる事に資格があるのか?、俺は…


「……あるわけないだろぉ……俺みたいな……奴が」





****



俺は、通常通りの朝だった。今は学校のそばまで来ている。するとそこに俺の隣の傍で姫路の双子がやってきた。
姫路は俺を睨み付け、憎しみを残したまま俺を通り過ぎていく。



「……くぅ!」


俺は、悔しいだけで……

自分が情けないと、思っている。

だから………


「………辛いんだ」


END


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