複雑・ファジー小説
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- OUTLAW 【6ヶ月ぶりの更新ですっ!!ごめんなさいっ】
- 日時: 2014/05/07 00:17
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
ちわちわー、Cheshireって書いてチェシャって読みますww
んーと、誤字脱字、文が変ということがあった際は、スルーせずに言ってください、お願いします。
あと、更新が不定期です。まぁ、暇なんで、多分早いとは思いますが、遅くなるかもです。すいません
あとあと、もうお話自体が下手だと思いますが、どうぞ飽きないで読んでください。
コメント、アドバイス、イラスト、その他もろもろ大歓迎ですwwというか、ください。ください。大事なことなので2回言いました。
OUTLAW
<プロローグ>
>>1
<ハジマリ>
>>18 >>25 >>30 >>33 >>38 >>40 >>41 >>43 >>44 >>49 >>50 >>51 >>56 >>57
<JUNE>
>>86 >>87 >>88 >>90 >>93 >>94 >>95 >>99 >>100 >>101 >>111 >>116 >>121 >>125 >>128 >>131 >>134 >>138 >>139 >>140 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>152 >>159 >>160 >>163 >>166 >>169 >>170 >>171 >>172 >>190 >>194 >>197 >>198 >>199 >>200 >>204 >>219 >>221 >>222 >>227 >>228 >>231 >>232 >>237 >>240 >>248 >>253 >>257 >>258 >>261 >>263 >>266 >>267 >>269
<番外編1>
>>72 >>76 >>77 >>78
<番外編2>
>>79 >>82
<サブストーリー>
サブストーリーは、チェシャではなくキャラクターをくださった皆様方がそれぞれのキャラクターを主として、書いてくださったお話です
葉隠空悟編 >>201 >>202 >>211 007さん作
阿九根理人編 >>217 ルル♪さん作
社井狛編 >>179 ルゥさん作
黒宮綾編 >>187 朝比奈ミオさん作
<登場人物>
矢吹真夜、篠原梨緒 >>21
高嶺真 >>39
葉隠空悟 007さんより >>5
杵島灯 金平糖さんより >>3
阿九根理人 ルル♪さんより >>6
社井狛 ルゥさんより >>19
璃月那羅 雷羅さんより >>22
榊切 橘椿さんより >>11
黒宮綾 澪さんより >>64
天内小夜 ブルーさんより >>10
皐 ミケ猫さんより >>8
- Re: OUTLAW 【コメントその他もろもろ大歓迎っ!w】 ( No.168 )
- 日時: 2013/05/15 19:34
- 名前: ルゥ (ID: 1MLq3CAv)
あぁ狛くん
僕の大切な狛くんww
君が一体今どこでどんな風に発狂してるのか……
あぁあ、想像しただけでゾクゾクが止まらないぃぃ!!!!!((殴
あぁごめんね狛くんw
こんなドSが生み親でwww
今後がどうなるのか、とっても楽しみです!更新待ってます!
体に気を付けて頑張って下さい!
- Re: OUTLAW 【コメントその他もろもろ大歓迎っ!w】 ( No.169 )
- 日時: 2013/05/15 21:55
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
わぁー!! 更新遅れてしまってごめんなさいっ・・・
はい! ご支援ありがとうございますです!更新します!
「んで?何でそれが俺に関係あんの?」
「あなたがいれば、その犯人を取り押さえることができるの」
「はぁ?何で」
他所の高校の事件の犯人が、俺に何で関係してんだよ。馬鹿か。
「その人、あなたのお父さんなのよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?
「詳しいことはあまり言えないけど・・・もし協力してくれるなら、あなたをお父さんに会わせてあげるわ。どう?」
待て。子供を捨てるんだからろくな大人じゃないんだろうなとは思っていたけど、そんなことを起こすほどロクでもねぇやつだったのか?
ふざけんなよ・・・そんなこと言われてすぐに理解できるわけないだろ。
「まぁ・・・お父さん、って言っていいのか分からないけれど。あの人にとってあなたは紛れもない子供でしょうけど、あなたにとって父親かって聞かれると・・・答えづらいわね」
は?それどういうことだよ?意味分かんねぇ。
俺にとって父親じゃないのに、その人にとって俺が子供?
矛盾しすぎだろ、ふざけてんのか?
「とにかく、もう被害者は4人も出てるわ。あなたが協力してくれればすぐに収まる」
いきなり父親に会える・・・とか言われても困る。
そもそも俺は生き別れた父親に会いたいと思っているのか。それすら曖昧だというのに。
でもその拉致された子たちは可哀相だな・・・どんな理由で俺の父親らしき人がそういうことをしてしまったのかはあまり分からないけど・・・。
つーか。俺はこんなに簡単にこいつを信じていいのか?
黒宮・・・綾、って言ったっけか。こいつが言っていることが全て正しいとも限らないじゃないか。
それ以前に、何でそいつが俺の父親って言い切れるんだ。本人である俺が分かっていないのに。ありえないじゃないか。
「・・・すぐに返事をしてくれとは言わないわ。とりあえず、はい。これ私の連絡先」
手渡されたのは2つに折られた小さな紙切れだ。
随分、用意周到だな。まるで最初から俺が他者を信じることを躊躇することを知っていたみたいだ。
「あなたの連絡先は聞かないようにするわ。・・・そうね、答えは3日以内にお願い。じゃあ、私はこれで」
彼女はにっこりと笑い、俺と逆の方向に足を伸ばし歩き始めた。
振り返った瞬間に広がった彼女の黒髪が綺麗で、後ろのうるさい街という背景ごと描きたい衝動に駆られた。
この瞬間を、俺は忘れることはないだろう。空の暗さも、通り過ぎる人の影も、卑猥なライトの色も・・・全部。写真を撮ったように。
俺とは正反対な奴だ。綺麗で・・・でも、純粋とは言えないな。白すぎて・・・黒い・・・俺も矛盾してるな。でも、そんな感じだ。
「あ、最後に」
そう言いながら振り返った彼女に、俺は少し驚いてしまう。
何なんだよ。・・・まぁ、今起こっていた事態に足が竦んでこの場を立ち去れなかったのは俺だけど。
「女の子が“俺”っていうのは、やめたほうがいいと思うよ」
・・・本当にこいつは何なんだ?
*翌日*
社井がいなくなって一晩明けた。
みんなどこか真剣な眼差しで、それでも周りには気付かれないように学校で過ごしている。
それは俺も変わらず、珍しく今日は全ての授業を起きて過ごしている。授業なんてまるで聞いていないが、教卓の前の教師だけずっと観察していた。
今は昼休み。今朝昼飯を買い忘れたので梨緒と一緒に購買へ向かっているところだ。
ちなみに今日受けた教科は数学と日本史と理科Ⅰ英語。だが、どの先生もあまりピンとこなかった。4人の生徒を拉致しているのだから、少しくらいの動揺が垣間見れておかしくないはず。だが、どの先生もそういった傾向は見られなかった。
高嶺高校在籍の教師が何人いるか知らないけど、少ない数ではないはずだ。そういう意味では、たった4人で落胆するのはまだ早いかもしれない。
気になることといえばもう1つ。それは璃月のことだ。
璃月は今日は欠席。まぁ、まぁ学校の準備も何も全て社井に任せっきりだったらしいので無理もない。昨夜、理人に気絶されたあといつ起きたのかは定かではないが、真曰く部屋に引きこもっているらしい。それほど社井の行方不明はショックだったのだろう。
そのためにも、早く社井を見つけ出さなくては、と気合が入る。
だがとりあえず今は休憩だ。早いところ食い物を買って食べてしまおう。話はそれからだ。
無駄に広い廊下を歩いて、少し離れた購買へと足を伸ばす。ちなみに購買もとい食堂は校庭や体育館と一緒で3学年合同だ。
普通の高校生なら、休み時間にほとんどと言っていいほど一緒にいる姫路兄妹も気を遣って付き添ってくれるところだが、生憎あの兄妹たちに常識、・・・ではないが、そこらへんの価値観は通用しない。
自分たちに必要がないもの、または興味の沸かないものには、一切触れないのがあいつらの自己流価値観だ。ちなみに俺と梨緒は後者のほうだと思う。
相変わらず俺と梨緒の風貌のアンバランス差が際立つのか、すれ違う生徒たちが恐怖と好奇心がいっぱい詰まった視線を向けてくる。
もうそろそろ慣れてきたな・・・と思いつつ、梨緒はどう思っているんだろう、と不安になる。が、どうせ聞いても無駄なんだろうなと思い直して溜息をつく。
そのうち購買が見えてくる。多いとも少ないとも言えない人数の生徒たちが群がっており、パンが売り切れになってないか少し心配になった。まぁ、資金が大きく残っているお金持ち高校なので、そんなことはありえないだろう。
列に並び、そんなに短くない時間が経ってすぐにパンに辿り着く。ついでに後ろにいる梨緒のぶんのパンも取り、そのぶんの金も支払う。あとでこいつに請求すればいいだけだ。何というか、本当に犬か猫かを連れて歩いている気分だった。
俺に釣りを返すときのあのおばさんの嫌そうな顔を二度と拝まないためにも、朝絶対昼飯を調達しよう。満員電車に乗ったとしても。昨日の姫路たちのようにはならない自信がある。もしあんな気持ち悪い事態になったら、証拠写真を撮った上で相手の指をへし折ってやる。
「ねぇ」
「あ?」
空いている席を探しているときに、梨緒が後ろから話しかけてきて俺は体を捻るようにして振り返った。
「昨日理人が拾ってきたパンのことだけど」
・・・。
この天然野朗も少しは考えたりするのか、と俺は心底感心した。
何も考えてなさそうなのに、こいつもそれなりにアウトロウのメンバーなのだ。当然といえば当然かもしれないが、今までが全然そういう風には見えなかったから、少し驚いてしまう。
「あのパン、ここの購買には売ってないのね」
・・・。その言葉に俺はさっき購買に売っていた商品を脳裏に思い浮かべる。
んー・・・確かに売ってなかったような気がする。
ちゃんと見たわけではないけれど、あんな硬そうなパンはなかった。
あのパンが購買で売っていないとなると、昼にここで買ったという選択肢と、調理委員さんが捨てたという選択肢が消える。つまり、学校外から持ち込んだパン、ということになる。
「そう・・・だな」
そんなに大した情報に見えなくても、今はそんな情報さえ惜しい状況だ。
今は情報が少なすぎる。犯人の手がかりがなさすぎるのだ。これでは調査が全く進まない。
- Re: OUTLAW 【コメントその他もろもろ大歓迎っ!w】 ( No.170 )
- 日時: 2013/05/22 16:51
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
今のところ、手がかりと言っていい手がかりは、理人が拾ってきたパンしかない。硬い・・・フランスパンみたいなパンだった。
携帯とかだったらまだしも、パンではそこから犯人を割り出すのは困難だ。あとは俺たちの観察力しか頼る術がない。
一通り席を見渡して、やっぱり空いている席はないか・・・と落胆したあと、後ろに梨緒がいることを確認してから今買ったパンを持ってその場を離れた。席に座るんだったら、やっぱりもっと早く来ればよかったな・・・と思いつつ、仕方ないと潔く諦める。
「どこで食いたい?できるだけ近くで」
こいつに「近くで」という言葉は通用するのかな、と心配になったが、その心配は必要なかったようだ。
「外」
「外・・・ねぇ」
高嶺高校は敷地が広い。一度に「外」と言っても、選択肢はいろいろある。
でも、昼飯を校庭で食べるなんて邪道は絶対にしたくない。その他も・・・階段とか渡り廊下とかだし・・・。
中庭に確かベンチがあったな。上履きでも入れるみたいだったし、何より近い。俺は別にどこでもよかったので、一先ず中庭へと向かう。
まぁ・・・中庭・・・と言っていいかは分からない。実際校舎の中に土地が抜けているわけでもないし。校庭とは離れた場所にあり、それなりに設備が整っている。多分学校建設時にこの変な造りの学校にしてしまったため不自然に空いてしまった敷地を埋めたのだろう。これまた広さは充分で学年を問わず入り混じっている。結構と木があったり花が咲いていたりと、女子とかそこらのカップルに人気があるところだ。穴場・・・とかスポット的な場所だ。
梨緒が俺の行き先に気付いているのかは定かではないが、とりあえず着いてきているのでよしとしよう。
距離もそんな遠くなかったので、俺らはすぐに辿り着いた。
梅雨の割りに様々な種類の花が咲いていて、何でか私立、ということを強調された気分になる。こういう風景は絶対他の学校にはないのだろう、まぁ俺のとこにもなかったし。
先約がいるものの、ベンチが運よく空いていた。
普通に歩いて行きベンチに座ると、当然の如く密着するほど近くに梨緒が座ってくる。もういい、慣れた。突っ込む気も失せた。
無言で今買ってきたパンを食べ始める。高嶺高校は意外と時間にルーズで、昼休みもかなり長い間取ってくれる。まぁ、授業の準備とか部活の練習とか、普通にできることでもこの高校はとにかく広さがありすぎる。移動時間だけでも数分かかってしまうほどだ。それらを考慮すると、この時間感覚はある意味正当なのかもしれない。
特に話すこともなく俺らはただもくもくとパンを食い続ける。梨緒は随分とペースが遅いが、・・・どうにかなるだろう。
あまりこうしてのんびりもしていられない。引きこもってしまった璃月のためにも、拉致された3人の生徒たちのためにも、暗所恐怖症の社井のためにも、できるだけ早く手がかりを入手して、助け出さないといけない。
・・・こんなことを言っていると、正義のヒーローのような台詞だが、決して俺はそういうつもりはない。
むしろ、今まで俺は人を傷つける側だった。俺が助けた奴なんて、生まれて16年の中で誰1人存在しない。
前にも言ったかもしれないが、結局俺はただここにいる口実が欲しいだけだ。アウトロウにいれば俺を必要としてくれる梨緒と一緒にいれる。アウトロウにいるためには周辺の問題を解決しなければならない。治安を維持しなければならない。だから。きっと。
それか、ただ「やらないといけないこと」が欲しいのかもしれない。もしあの時、梨緒に話しかけられなかったら俺はあのままあそこに立ち止まったまま雨に濡れていたことだろう。
どこにも行く当てがなく、することもなく、頼る人もいなく、何をしたらいいのか分からない。するべきことを全て放棄して逃げてきてしまった俺への見返りだ。
もしアウトロウから外されたら、あの家に住めなくなったら、梨緒に見捨てられたら、俺にはすることがなくなる。
そしてそのまま腐るように、俺はどんどん世界から見放されていく。
・・・そんなの嫌だ。それは避けたい。まだ俺にはそう思うことができた。
だから、周りから必要とされるために、今の俺にできることを、やるべきことを、やる。
周りのため、とか言っているけど、結局俺は自分のためにしか動けない奴だった。
自分が必要とされるために周りを利用している、卑怯者でしかないんだ。
そんなの分かってる、けど、やめることはできない。それが俺という人間だから。
とかって物思いにふけっていると、ふと視界に入った人物を見つけた。
咲き誇る花壇の中。黒髪のショートカットに水色のヘアピンを止めているおとなしそうな女の子。彼女の手に持つジョウロからは綺麗な曲線を描いて水が滴っている。
昨日急いでいる中で図書室で知り合った、確か・・・
「天内・・・・・小夜」
思っていたことがつい言葉に出てしまい、隣にいた梨緒が不審げにこちらを見る。自分の名前はよく聞こえるもので、すぐそこにいた天内自身にも聞こえてしまったらしい。
「あ、矢吹真夜さん。こんにちは、昨日ぶりです」
律儀にペコリと会釈しながら、天内は笑顔を浮かべた。
更新が1週間も遅れとに申し訳ございませんでした!
- Re: OUTLAW 【コメントその他もろもろ大歓迎っ!w】 ( No.171 )
- 日時: 2013/05/25 11:49
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
中庭の花壇の花に水・・・?何でそんなことやっているんだ?
そう思って訝しげに天内を見ていると、俺の疑問に気付いたらしく慌てた様子で天内がジョウロを両手で持ち俺に説明してくれた。
「あ、えっと、私、園芸部なんです」
「園芸部?」
「はい。中庭とかビオトロープとかにある植物を育てているんです」
アウトロウの奴らは全員部活等には入っていないから、高嶺高校で部活というものに俺はあまり親近感がない。が、別に高嶺高校に部活がないわけではない。
どちらかというと、高嶺高校の部活量は豊富らしい。俺はあまり知らないが、小数人数で多くの部活が存在していると聞いた。
天内の言うとおり、園芸部というものがあるのだろう。美化委員みたいな内容だが、天内らしいといえば天内らしい。
「まぁ、活動しているのは私だけなんですけどね。私がどうしても花を育てたくて、友達にお願いして無理矢理名前だけ借りてるんです」
え、それ、ずるくね?と言いたかったが、高嶺高校の部活にはそんなの日常茶判事っぽいし。
それに、この花たちを全部天内が育てているのだとしたら、それはかなり凄いことだ。
「花好きなんだ」
「はいっ!!とっても大好きですっ!」
俺の言葉に天内は興奮したように目をきらきらさせながら手を握り締めて身を乗り出してきた。
「花って可愛いじゃないですか。育てれば育てるほど、綺麗に咲いて私に応えてくれるんです。とっても素直で正直なんです!」
天内も大分素直で正直だよ、とつい言ってしまいそうになるほど、天内は純粋に見えた。
草花に囲まれた天内と、それを照らすいつもはうざったいだけの太陽の光がきらきら光ってそこだけ天国みたいに異次元に見えた。
梨緒とはまるで真逆の雰囲気だな・・・と思いつつ、俺はそうか、と言っておく。
「あ、そうだ」
と、天内は何かを閃いたかのようにぱっと表情を明るくさせると、体の向きを変えて花壇へと向かった。
突然どうしたんだろうと思って様子を伺っていると、花壇から綺麗に咲いている色とりどりの花を5,6本摘んでいた。せっかく咲いているのに摘んでしまっていいのだろうか。少し心配になったものの、この花を育てているのは天内自身なわけだし本人ならいいかと思い直した。
さすが女の子、というか園芸部、というか、生け花のように綺麗に角度や長さを調整し、小さな花束のようなものを作り出す。色とりどりの花が、より一層可憐に見えた。
どうするのだろう?と思っていると、天内がとことこと俺のほうへ近寄ってきて今作ったばかりの花束を差し出してきた。周りの天内への心配と疑惑の視線が痛い。
「これ、せっかくなので差し上げます」
笑って見せた天内を、拒否できるわけもなく俺はつい受け取ってしまった。あまり花とかと関わったことはないけど、綺麗だとは思うのであまり悪い気はしない。
少し恥ずかしい気もしたが、そこは天内に失礼だろう。せっかくなのだ、もらっておこう。
「ありがとな」
えへへ、と笑う天内が本当に純粋に見えて、何だか遠くにいる気がした。
「あ、そういえば」
と再び天内は何かを思い出したかのように表情を変える。次々に表情が変わって見てて飽きない子だな、と思った。
天内が制服のポケットから取り出したのは1枚のカードだ。
・・・あぁ。
「昨日、明日の昼休みって普通に行ったんですけど、私明日は当番じゃなくて。なので、いつどこで会うのか分からないので、持ち歩いていたんです」
うん、ごめん。すっかりその約束忘れてた。
なんて言えるはずもなく、俺はとりあえずそのカードを受け取っておく。あとで財布にでも入れておこう。どうせ使わないだろうけど、だからといって捨ててしまうのは天内に悪い。
と、そのときに後ろから服を引っ張られた。後ろにいる奴なんか見なくても分かるのでとりあえず、小声でどうした?と聞く。そういえばさっきから全然話してなかったな、と思いつつまたふてくされてないように祈る。
「あれ」
梨緒は俺の予想に反して、突然花壇のほうを人差し指で差した。天内もそのことに気付いたようで、梨緒の手が指し示す先を見る。
そこにいたのは1人の先生だった。ワイシャツにズボンという至って普通の格好の中年のおっさんだ。
誰だかはあまり関係はない。気になるのは、そいつがしている行為だ。
立ち止まっているものの、足元がベンチのところにいる生徒たちから死角の位置にあるのであまり見えない。が、しきりに足を前後上下に動かしているようだ。まるで何かを蹴っているかのように。
俯いていて顔は見えないし、そもそも学校の教師を把握していない俺はあいつが誰だかは分からない。そして何で梨緒があいつを気にしたのかも分からない。
が、それを見てすぐに動いたのは天内だった。呆然と立ち尽くす俺の目の前で、先ほど「とことこ」と表現した歩き方とはまるで正反対の「すたすた」というどこか冷たさを感じる歩き方で、真っ直ぐそいつの元へと向かっていく。
「あいつがどうかしたのか?」
未だに俺の服を掴む梨緒のほうへ振り向きながらそう尋ねると、梨緒はまだ半分しか食べ終わっていないパンを一口かじってから口を開く。
「あそこにあるのは、ここの花壇と同じ花が植えられているプランター」
「何してんだよ、そこから離れろっ!!!」
梨緒の返答と、天内の罵声が重なる。
驚いて天内のほうに視線を向けたのは俺だけではなかった。周辺にいた人たちがみんな驚いたように天内のほうを見つめている。
さっき花束をくれた優しい女の子とはまるで思えないように、天内は豹変していた。何というか、アウトロウのメンバーのスイッチが入ったときのようだ。
ここからでは見えないが、梨緒が言うにあの教師の足元にはプランターが置いてあるという。ギリギリあそこも中庭の守備範囲だ。もしかしたら園芸部もとい天内のものだったのかもしれない。だとしたら、あの教師は花を蹴散らしていたということだ。教師という職業柄、ストレスが溜まるのだろう。
確かにあそこは生徒から見えづらいだろう。反対側から見れば丸見えかもしれないが、生憎反対側には通路がない。あの場が見えるとしたら精々校舎の窓から中庭を見渡したときくらいだろう。天内がそこまで気を遣ったのか、それともただ単に自身の趣味なのかは分かりかねる。
自分が育てていた花を蹴散らしていたのだとしたら、人一倍花が好きな天内が許すはずがない。あんな風に怒るのも納得がいく。・・・まぁ、怖いけど。
いきなり怒鳴られた教師というのもかなり驚いているようだった。そりゃそうだろう。見つからないと思ってやっていたのにバレてしまったのだから。しかもあの様子だと、怒鳴ってきた生徒がここの花を育てている天内小夜だということも知っているようだ。妙に青ざめていて、変な汗を掻いている。
「せっかく綺麗に咲いてくれたのに、ふざけないでよ。何があったんだか知らないけどさ、それを花にぶつけていい理由にはなんないよね!?自分勝手も大概にして!」
うん、天内の言う通りだ。生徒が教師を怒るという変な状況にはなっているものの、それに対して怒れる教師はいないだろう。正当防衛だ。
怒られる側の教師は口をぱくぱくさせるだけで、何1つ喋らない。さすがに自分の状況の悪さは分かっているようで安心した。
- Re: OUTLAW 【コメントその他もろもろ大歓迎っ!w】 ( No.172 )
- 日時: 2013/05/26 14:42
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
「というか、あなた美術の先生でしょう?綺麗なものを追求する立場のあなたが、綺麗なものを破壊してどうするの?美術のセンス、本当にあるのかしら」
へぇ・・・担当は美術か。だったら俺はまだ授業を受けたことないんだから、知らなくて当然か。
離れたところにいる俺たちには全く聞こえなかったが、美術教師は天内にぼそぼそと何か言っているようだ。察するに多分まぁ、謝罪でもしているんだろう。もしくは言い訳か。
「・・・ふざけんなっ!つい、で花を傷つけていい理由にはならないっ」
時々天内のヒステリックな罵声も聞こえてくる。
このままだと埒が明かない。そう思い、俺は溜息をつきながら天内と美術教師のところへと足を運ぶ。
俺が知らないんだから、美術教師も当然俺を受け持ったことがないので(もしかしたら知ってるかもしれないけど)知らないだろう。突然現れた俺の姿に、教師は酷く驚いているようだった。
「天内、その辺にしといたら?こいつだってもうやんねぇだろ」
梨緒より背が低い天内の肩に手を置きながら、俺は宥めるように天内の顔を覗き込む。
予想通り、というか何というかだが、天内はふくれっ面をしていて、頬を膨らませた姿がリスのようで可愛らしかった。
「でもこの人。イラついてたから花にあたるなんて。私、許せない」
「まぁ、そうだろうけどさ。いろいろあんだろ、教師にだって。あんまり責めんなって」
むー、と唸る天内。とりあえず教師はもう何回も謝っているようなので、ひとまず安心した。
そのうち、天内に許された教師はそそくさとこの場から逃げていった。
無駄に注目を集めてしまったが、天内は全くそのことに気付いていなかったらしい。天内が振り返ると、周りの視線がすかさず四方八方へと向いて、さすがの天内も我に返ったようだ。
途端に天内の顔が赤くなり俯いてしまう。元々彼女はあまり目立つタイプではないのだろう。
「あ、あの、ごめんなさい。つい、私・・・」
確かに目立ったかもしれないけど、別に天内は悪いことはしていないはずだ。謝る必要はないだろう。
「いや別に?大丈夫」
俺はそう言ったものの、天内はやっぱり気が晴れないようだ。
やっとのことパンを食べ終わった梨緒は、ふぅ・・・と溜息をついている。何故疲労回復のための食料摂取で疲労しているのか、俺には理解できない。
「え、えっと、私もお昼食べないといけないので教室に戻りますね」
気まずくなった空気に耐え切れなくなったのか、天内が頭をぺこぺこと下げながら中庭から立ち去っていく。変に気にしてなければいいのだが、少し心配だ。
ベンチまで戻り、俺らも帰るかと梨緒に声を掛けると、梨緒は無言で立ち上がった。パンの包装紙を手渡されながら、自分のものと一緒にゴミ箱に投げ入れる。
「またあいつだよ」
「本当気持ち悪いよね」
「何がしたいんだかよく分かんないし」
「あの1年生可哀相・・・」
隣のベンチに座っていた女子生徒たちの会話が聞こえてきた。俺と梨緒はそのまま通り過ぎたが、彼女たちの会話はまだ続きそうだ。
梨緒と一緒に教室を目指す。そして俺は彼女たちの会話について考えていた。
状況から察するに「あいつ」というのはあの美術教師のことだろう。そうすると、「あの1年生」は天内か。
会話の雰囲気から、あの美術教師がこういったことを起こすのは今回が初めてではないらしい。いわゆる中年のおっさんって感じだったし、女子生徒の反感を買うのもおかしくはない。
まぁ、何というか・・・教師という仕事も大変なんだろうな、と思う。彼女たちのような噂も、彼のストレスの原因の1つだろうに。
肝心な名前を聞くのを忘れたが、あの先生は生徒行方不明事件には関係ないだろう。何せストレスで花壇を踏み荒らす様だ。心が弱いにも程がある。そのうち鬱病にでもかかりそうだけど、それで生徒に心配されるような先生でもないんだろう。それこそ可哀相に。
教師に感情移入できるほどできた人間ではない俺がどうこう言うつもりはないが、何となく私立高校に親近感が沸いた。公立だろうが私立だろうが、こういう嫌われるムカつく先生はいるんだと分かって、少しだけこの学校に馴染めるような気がする。あの先生には悪いけど。
「真夜」
「なに」
通りすがった奴にも聞こえないだろうというほど小さく短い会話をしていると、梨緒が俺の服の裾を引っ張ってくる。
仕方なく立ち止まり振り替えると、梨緒がフードの中から俺を見上げていた。
「何か、飲みたい」
・・・。
16歳だよな?同い年だよな?なんでこんな10歳くらい下の妹みたいなことになってんの?
確かに買ったのはパンだけで飲み物は買わなかったから、喉が渇く気持ちも分かるけど・・・。ならパン買うときに言えよ。もう昼休み終わるし、教室までついちまったし今更食堂まで戻るのなんて嫌だぞ、俺。
・・・というわけで。
「我慢し「やだ」
自分の思考回路の結果を口にしたら、言い終わる前に遮られた。どれだけ嫌なんだ。猫か。自由すぎるだろ。
「だーめ」
そういえば、梨緒の我儘を断ったのは今回が初めてな気がする。うわ、俺どんだけこいつを甘やかしてたんだろう。ちょっと自分で引いた。
逆を言えば、梨緒は初めて俺に自分の我儘を拒まれたわけで。明らかに不満げな表情を浮かべていた。
駄目だ。これに負けちゃいけない。
俺はそう決意して、体の向きを変えることなくそのまま歩き続けた。梨緒もふてくされながら(自分の迷子素質を自覚がないようだから)俺から離れるなという俺との約束を律儀に守っているのか、俺の後をついてくる。
ちょっとした罪悪感を抱きながら、厳しくするのも教育だと心に言い聞かせ、俺はようやく着いた教室へと入る。
「おかえり。随分遅かったじゃない」
席に向かえば必然的に姫路双子に近づくことになる。もう既に昼食を食べ終えた2人は何をするでもなくただ談笑していたようだ。金持ちの双子が何を話すのかは知らねぇけど。
「こいつ食べんの遅ぇんだよ」
「私は普通よ」
パン1個なんて最低でも10分で食べ終わるだろ、馬鹿か。
言っても仕方ないのでもうあえて突っ込まないけど、溜息をつくくらいは勘弁してほしい。
「ところで、あなた篠原さんに何かしたの?」
相変わらず不適な笑みを浮かべながら、姫路が俺に話しかけてくる。
何のことだか分からず、俺は首を傾げるほかできない。
すると、梨緒が姫路の腕を掴み必死に訴えた。
「何か飲みたい」
突然のことに対応しきれなかった姫路は少しの間固まったままだったが、内容を理解したらしくすぐに口を開く。
「保護者さんに頼めばいいじゃない」
・・・保護者?
誰だ、それ。学校に親がいるわけないだろうに。
あ、そういえばアウトロウの奴らって、家族とか親とか、どうしてるんだろう・・・俺はともかく。
「真夜、買ってくれなかった」
「は!?」
え、保護者って俺!?何それ、心外なんだけど!
姫路のからかいに便乗する梨緒を見て、意外とこいつってノリいいのか?と疑問を抱いた。
そして、まだ飲み物を欲しがっていたのか、と少し納得する。
「あら、女の子のお願いを叶えてあげないなんて、駄目じゃない」
「お前に怒られる筋合いはねぇよ。んなこと言うならテメェがあげろ」
「じゃあ篠原、俺の飲む?」
コメントください! 長ったらしくてごめんなさい!
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