複雑・ファジー小説
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- OUTLAW 【6ヶ月ぶりの更新ですっ!!ごめんなさいっ】
- 日時: 2014/05/07 00:17
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
ちわちわー、Cheshireって書いてチェシャって読みますww
んーと、誤字脱字、文が変ということがあった際は、スルーせずに言ってください、お願いします。
あと、更新が不定期です。まぁ、暇なんで、多分早いとは思いますが、遅くなるかもです。すいません
あとあと、もうお話自体が下手だと思いますが、どうぞ飽きないで読んでください。
コメント、アドバイス、イラスト、その他もろもろ大歓迎ですwwというか、ください。ください。大事なことなので2回言いました。
OUTLAW
<プロローグ>
>>1
<ハジマリ>
>>18 >>25 >>30 >>33 >>38 >>40 >>41 >>43 >>44 >>49 >>50 >>51 >>56 >>57
<JUNE>
>>86 >>87 >>88 >>90 >>93 >>94 >>95 >>99 >>100 >>101 >>111 >>116 >>121 >>125 >>128 >>131 >>134 >>138 >>139 >>140 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>152 >>159 >>160 >>163 >>166 >>169 >>170 >>171 >>172 >>190 >>194 >>197 >>198 >>199 >>200 >>204 >>219 >>221 >>222 >>227 >>228 >>231 >>232 >>237 >>240 >>248 >>253 >>257 >>258 >>261 >>263 >>266 >>267 >>269
<番外編1>
>>72 >>76 >>77 >>78
<番外編2>
>>79 >>82
<サブストーリー>
サブストーリーは、チェシャではなくキャラクターをくださった皆様方がそれぞれのキャラクターを主として、書いてくださったお話です
葉隠空悟編 >>201 >>202 >>211 007さん作
阿九根理人編 >>217 ルル♪さん作
社井狛編 >>179 ルゥさん作
黒宮綾編 >>187 朝比奈ミオさん作
<登場人物>
矢吹真夜、篠原梨緒 >>21
高嶺真 >>39
葉隠空悟 007さんより >>5
杵島灯 金平糖さんより >>3
阿九根理人 ルル♪さんより >>6
社井狛 ルゥさんより >>19
璃月那羅 雷羅さんより >>22
榊切 橘椿さんより >>11
黒宮綾 澪さんより >>64
天内小夜 ブルーさんより >>10
皐 ミケ猫さんより >>8
- Re: OUTLAW 【参照3000ありがとうございますっ!!】 ( No.263 )
- 日時: 2013/10/22 23:59
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
ありがとうございますですw
いやー・・・その事件を終結させるのに手こずってまして・・・。
いろいろ繋げさせてまとめていくのが、文才能力皆無のチェシャには難しくて・・・。
こう、事件の動機、とか、被害者たちのその後・・・とか。
実はこの事件は、この先の話しの中で再度出る予定でして。というか、ある登場人物たちをメインとした回を作るためのきっかけみたいなものでして。
それがこんなに長ったらしくなっちゃって・・・もう、死にます。ごめんなさい。
これからについては、アウトロウメンバーの人間関係、また、それぞれが抱える過去と関連したものを取り上げていく予定です。
上手くできるかはわかりませんが、暖かく見守ってくれると幸いです。生暖かい目は・・・ご遠慮いただけると助かります。
だからもう少し、この生徒行方不明事件にお付き合いくださいませませ。
ってことで少し更新いたします。
「・・・・・・・那羅、ちゃん・・・?・・・、泣かないで、ください・・・。僕は、大丈夫・・・です、から・・・」
小さく狛くんの声も聞こえてくる。那羅ちゃんを落ち着かせようとそんなことを言っているものの、あまりその言葉に効果はない。途切れ途切れの掠れた声が今までの状況を物語っていた。
那羅ちゃんの叫び声を聞いて、影たちが蠢く。意識がある人もいるみたいだ。
「あいたかった!なら、こまにぃに、あいたかったの!!ずっとずっと、こまにぃがいなくて、なら、ならっ・・・」
必死に求め、そしてそれを受け止める。体が動かない狛くんは、それでも自分を抱きしめてくる那羅ちゃんに、身を寄せて安堵していた。
どうやら手足を縛られているようなので、那羅ちゃんが急いでその縄を解いていた。
拘束されていることに怒りを覚えながら、俺は他の人たちの救出に向かった。
奥へ行けば行くほど、この部屋の空気がおかしくなる。
相変わらずの絵は無数に散らばっていた。無駄に多い気持ち悪い絵に、ついつい吐き気を覚える。
・・・?
気持ち悪いとは思っていながらも、俺は1つの疑問を抱きその絵を見比べる。
あの狂った絵に描かれている女の子。そのモデルとなっていたのは・・・
被害者たちだ。
女の子の顔を、俺が見間違えるわけがない。
これは美羽ちゃんの絵だし、こっちは渡辺香織ちゃんだ。あ、あれは黒宮綾さん・・・かな。
とにかく、顔つきも体つきも・・・絵に関われているパーツ全て、被害者たちの一部だった。
ただ、パーツが揃っていない。1人の少女をモデルとするのなら、その少女の絵が出来上がるはず。
けれど、この絵たちは文字通り不恰好で、未完成で、狂っている。
絵の中の少女を構成しているパーツが、揃っていないのだ。
それぞれの子から、必要なパーツだけを選んで絵に記し、無理矢理に繋げたような・・・。
とにかくちぐはぐの絵だ。
無数の絵に視線を写していたとき、
・・・ぞくり、と。
背筋が一瞬にして凍る。
・・・、何かに、見られている・・・?
そんな疑問を抱いた。
誰かが、こちらを見ている。監視するように、食い入るように、妬むように、恨むように、押しつぶされそうなほどの負の感情を、こちらに向けてくる。
誰かいるのか?被害者意外の、俺たちから見えないところに。
そう思って、俺は部屋の中を見渡した。そろそろ暗さにも慣れてきて、目が見えるようになってきた。
那羅ちゃんと狛くんがお互いを認め合っている間に、俺はその視線の主を捜した。
周囲をぐるりと見渡したとき。
視界の中に、不可解なものが入り込んできた。
あれは、・・・足?
・・・え?
自分の目を疑いながら、それが足だということを再度確認する。そして少し急ぎ足で、その足があるところまで突き進む。
被害者の女の子たちを通り過ぎてしまうのは少し気が引けたけど、その足があるのは部屋の一番奥。ベッドのそのまた向こうにある机の上。
近づくと、その足にはそれなりの高さがあり、布が被っていることが分かった。
俺は何かを焦るように、その布に手をかける。
本当は、体中を触るなという命令が駆け回っていた。
これは見てはいけないものだと、脳が必死に叫んでいた。
けれど、止めることができなかった。
その時俺は、冷静な判断ができないほどに。
・・・焦って、いたから。
ばさ、と布が擦れる音がする。
途端に足から先が姿を現す。
心臓がどくん、と大きく鳴ったのが分かった。
これもまた、女の子だった。ただし今回は、二次元ではなく三次元。絵画ではなく、
彫刻だった。変に滑らかで使っている素質が陶だということはすぐに分かる。
やはりその少女もまた、ちぐはぐで。
未完成の、いや、作品的にではなく肉体的に未完成の、少女だった。
無機質な白すぎる肌と、作り物の表情は、どこか儚げで狂おしい。
今までのどの絵画より、度を越えていた。
体の内部までもが見えていて所々赤く、血も垣間見えている。その血もまた妙にリアルで、・・・本物を使っているのではないかと疑うほどだった。
その禍々しさに、俺はついつい後ろへよろけてしまう。それくらい、おぞましい姿だった。
この部屋の中にある全ての絵と、この人形1体が、熊谷信之の異常さを物語っていた。
正常者のやることではない。
・・・こんな、女の子を拉致して、体の部位の全てを描写し、無茶苦茶につなげ合わせるなんて。そして、そうして作った女の子を元に、こんな人形を作り出すなんて。
俺には、あいつのしたいことがよく分からなかった。
だけど、異常だということは充分に分かった。
そしてそれと同時に、いち早く被害者たちをこの場から遠ざけないといけないということも自覚する。
人形の無感情の目に見つめられ、ついつい体が小刻みな震えを覚える。どうにかその震えを押さえ、俺は振り返って被害者たちを見た。
被害者たちは、4人ともベッドの上にいる。狛くんを除いて意識があると思われるのは2人。ベッドの隅に1人と、狛くんの近くにいる何故か俺を睨みつけているように見える子が一人。格好があれだし、不審感を抱かれても仕方ないかな。怖がられなければいいけど・・・。
残ったもう1人の子は、ベッドの中央で寝かされていた。体格が一際小さく、タイミングからも考えて昨日拉致された1年生の天月小夜ちゃんだろうか。
狛くんを除く残りの3人の女の子たちは、手足を縛れた上に目と口を布か何かで覆われていた。男と女の差だったのだろうか。でもこれで、あの人形を見たときに後ろから悲鳴が上がらなかった訳が分かった。
俺はその被害者たちの中で、ベッドの隅でうずくまり必死に体を震わせている女の子を見た。視界が遮られている彼女たちからすれば、知らない少女の叫び声と不気味な物音が聞こえてるに過ぎないのだから怖がっても仕方がない。
その子に近づき、俺は怖がられないようにゆっくりと目と口を覆う布に手をかけた。びくり、と大きく震える彼女に、複雑な思いを覚える。
彼女と目が合う。
「・・・・・・・・・・・、り・・・ひと、くん・・・?」
小さな声で、名前を呼ばれた。
今にも泣き出しそうな、そんな表情で。
「美羽ちゃん、かな?」
今回の第三被害者。如月美羽ちゃん。
- Re: OUTLAW 【参照3000ありがとうございますっ!!】 ( No.264 )
- 日時: 2013/10/23 19:39
- 名前: 金平糖 ◆abwIid9M2w (ID: HKLnqVHP)
どうもお久しぶりです金平糖です。
帰宅したら更新されててめちゃくちゃテンション上がりました。
熊谷先生の異常性がこれでもかと明らかになりましたね。
熊谷先生はこのままだったら本物の肉で肉の塊の像を作るようになると思うのは私だけでしょうか?
今回のストーリーは熊谷先生があくまで絵と彫像に止めている点がミソな気がします。
花壇を荒らすような、美しいものに接する心が他と明らかに違う、もしかしたら美しいの概念が他と違うかもしれない男が、少女自体には手を出している様子はない。
それは彼に自制心が働いていたのか、はたまた純粋に自分の中の理想を美術という形で追い求めただけなのか……
なんかゴチャゴチャしてしまいましたね、ごめんなさいorz
- OUTLAW 【参照3000ありがとうございますっ!!】 ( No.265 )
- 日時: 2013/10/23 23:39
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
コメントありがとうございます!
そんなにいろいろ考えてくださり、本当に本当に嬉しい限りでございますです、ありがとです!w
馬鹿なチェシャはそこまで考えてなかったというか、そういう捕らえ方もあるのかとか、とにかく感動してます!!
参考にさせていただきます!勝手に参考にさせていただくです!
チェシャの馬鹿さ加減に呆れないで下さると幸いでございます・・・!
ありがとうございました^^w
- OUTLAW 【参照3000ありがとうございますっ!!】 ( No.266 )
- 日時: 2013/10/27 11:17
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
事件前から面識があったせいか、俺のことを声で分かってくれたらしく彼女はバッと勢いよく体をこちらに寄せてくる。
泣きはらした赤い目と、極度の緊張からの青ざめた顔色を見て、俺は熊谷への怒りを募らせた。
「っ・・・理、人くんっ、本当、本当に、本当!?」
「本当本当。助けに来たよ、大丈夫?どこか痛いところとかない?」
彼女が安心したように顔を綻ばせ、俺の中に少しの余裕が生まれる。
大丈夫、と呟いた美羽ちゃんを見た後足を縛る縄を解き、すぐに後ろに回って手のほうも解いてあげた。
監禁されている間、何をされていたのか・・・聞きたくないが聞かねばならない。でも、それは後ででいい。
まずは、この狂った状況から抜け出すことが最優先だ。
公園に向かう間にでも、4人から順番に聞けばいい。
「り、理人くん、熊谷先生は・・・・?」
どうやら被害者たちは、自身に危害を与えた人物を認識しているらしい。
「熊谷先生なら、外で俺の友達が取り押さえてるよ。今のうちにここから逃げよう。みんなも心配してるから」
「うんっ・・・」
今にも泣きそうな表情で、美羽ちゃんは強く頷いた。
狛くんもどうやら俺と同じことを考えてくれたらしく、立ち上がろうと必死になっていた。そんな狛くんを、那羅ちゃんが必死に支えようとしている。
やっと立てたというところで、狛くんは自分の足元にいる女の子を見た。彼女はどうやら口は覆われていないらしく、目だけ見えない状態のようだ。
彼女は四方八方から響く物音に体を強張らせていた。声を出せばいいものの、口は堅く閉ざされている。
その様子に気付いた狛くんは、どうやら彼女の目を覆う布を取ろうとしていた。けれど、狛くんは今那羅ちゃんから手を離したらすぐに倒れてしまいそうなほどふらふらで・・・。
見ていられなくて、俺は美羽ちゃんの手を引きながら狛くんたちに近づいた。
「大丈夫、任せて」
「阿九根さん・・・」
久しぶりの狛くんの声に今更ながらも安心する。
一旦美羽ちゃんから手を離して、俺は足元にいる女の子に手を伸ばした。
だが、その瞬間。
彼女は俺の手から逃れた。
え、と間の抜けた声が俺の口から漏れる。
目が塞がれていても、気配は物音などから察することができる。もしくは声の位置からも分かったのかもしれない。彼女は縛られた体で身をよじって、確実に俺を避けた。
どうして?そう思ったのは狛くんや美羽ちゃんも一緒だったらしい。
「・・・・誰」
冷たく響いた鋭い声。
それが、彼女から発せられたものと気付くまで数秒かかってしまった。
美羽ちゃんと小夜ちゃん、そして狛くんがとりあえず俺の視界に入っている。黒宮さんは、・・・とりあえず後にしよう。
となると、彼女は第二被害者の渡辺香織ちゃんだろうか。
おとなしい性格と聞いていたためか、彼女の冷たさに少しだけ驚いてしまう。
もしかすると、得体の知れない俺に怯えているのかもしれない。今起きている美羽ちゃんと狛くんは俺の知り合いだから声で分かってくれるけど・・・。
それに、彼女が渡辺香織ちゃんだとすると、この中で一番ここにいる時間が長い。このことも、関係しているのかもしれない。
「僕は阿九根理人、君と同じ高嶺高校の2年だよ」
「・・・、阿九根さん・・・」
名前を聞いたことあるのか、香織ちゃんは少しだけピクリと反応してくれる。
「そう。ここは危ないから、早く安全な場所に行こ、ね?」
できるだけ優しく話しかける。
香織ちゃんは、しばしの間そのまま動かなかった。何かを考えているみたいだけど、残念ながら全く分からない。
女の子を怖がらせてしまうのは不本意だけど、できれば早めにここから抜け出したい。
さっきから、美羽ちゃんが周りを見ておどおどしているのが分かる。
泣きそうな声が後ろから小さく度々聞こえてきている。
夥しいほど不気味な絵は、元々気が弱い美羽ちゃんには刺激が強すぎるんだ。
でも、だからといって、無理矢理連れ出すのも気が引ける。
そうこうしているうちに、香織ちゃんが口を開く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、行かない」
でも、聞こえた言葉は予想とかけ離れていたものだった。
「え・・・」
俺だけでなく、狛くんや美羽ちゃんの声も聞こえる。那羅ちゃんは、狛くんにしがみつきながら、ただ彼女を凝視しているだけ。
行か、ない?
何で・・・。
そう思ったときに、香織ちゃんの体が小刻みに震えていることに気が付いた。
真夜くんに聞いた彼女についての情報を思い返してみる。
・・・、彼女は確か生活費を稼ぐために体を・・・。
そこまで思い出して、俺は自分でも顔をしかめたことが分かった。あまり気持ちのいいものではない。
となると、彼女が助けを拒む、というのも不覚ながら納得がいく。
ここにいれば、何もしないで済む。嫌なことをしなくていい。
だったら、こちらにいたほうが彼女としては安心できるはずだ。
納得はできるものの、それを認めるわけにはいかない。
だからといって、彼女を一人ここに置いていくわけにもいかないのだ。結局熊谷は榊さんが警察に届けてくれるはずだから、彼女も警察の手に保護されるのが免れない結末だ。だが、そうなるとこちらとしてもいろいろ不都合があるし、何より彼女がしてきたこともあまり公にしていいものではない。
こうなったら、無理矢理にでも担いで外に行くしかない?天内小夜ちゃんもいるけど、女の子2人くらいなら余裕で行ける。
でも、そんなことしていいのか?
もし、ここで俺が助けたら、彼女は元の生活に逆戻りということになる。彼女にとって、そちらのほうが不幸になるのだろう。
ならば、俺は彼女を助けるどころか、傷つける結果になるのでは・・・?
そんなの駄目だ。女の子を傷つけるなんて、絶対にやってはならない行為だ。
彼女が傷つかずに済む方法・・・。
・・・、残念ながら、今の俺には全く思い浮かばない。
どうしよう。早くしないといけないのに。狛くんは那羅ちゃんに任せるとして、俺の受け持ちは美羽ちゃんと天内小夜ちゃんと、彼女、渡辺香織さん。
美羽ちゃんは意識があり動ける状態だからいいものの、小夜ちゃんはまず担がないといけない状況になる。その上で、無理矢理渡辺さんを連れて行くのは、流石に困難だ。
どうする。
そう思って、冷や汗を掻いたとき、ふと後ろから物音が聞こえた。
状況的に俺はビクリと反応し、咄嗟に振り返る。
「・・・、梨緒ちゃん?」
フードを被った女の子。天使に見えるほど綺麗な女の子。
そこにいたのは、篠原梨緒ちゃんの姿だった。・・・、そういえば、同じ保護班だった気がする。
こんな状況に関わらず、梨緒ちゃんは無表情。不気味な絵たちを一瞬ちらりと見たけど、すぐに視線を逸らしてしまった。これを見て何も思わないというのもどうかとは思うが・・・。
「真夜が、理人を手伝ってこいって」
場違いなその言葉に、俺はつい顔がほころぶのを感じた。
どんな状況でも、梨緒ちゃんの一番は真夜なんだ。
「ありがと。じゃあ、えっと・・・被害者たちを非難させたいんだけど・・・その」
被害者のうちの1人がここから出たくないなんて言えない。
- OUTLAW 【参照3000ありがとうございますっ!!】 ( No.267 )
- 日時: 2013/11/03 19:25
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
でも、梨緒ちゃんは俺らの状況をじっと見たあと、何も言わずに香織ちゃんのほうへ近づいた。俺の言葉がなくても、状況を察してくれたらしい。
相変わらず香織ちゃんの体は震えていた。新しい人が来たことに気付いたのだろうか。
そんな彼女に近づいても、さっきみたいにまた拒否されるだけ・・・。
とは思うものの、梨緒ちゃんとすれ違うときに気付く。
梨緒ちゃんは物音一つ立てていない。足音も、擦れるはずの紙の音も、何もしない。
これなら、彼女に近づいていることが知られないで済む。実際、梨緒ちゃんが隣に来ても、香織ちゃんは今までと何も変わらない様子だった。
そのまま梨緒ちゃんは震える香織ちゃんを数秒の間見つめたあと、ゆっくりと彼女の目を覆う布をするりと取った。
「あっ・・・」
途端に香織ちゃんは布を抑えようとするが、それは意味なく落ちていく。無意識に発してしまった声は、彼女の心境を物語っていた。
すぐに香織ちゃんは自分の布を取った手の方向に視線を向け、梨緒ちゃんを見つけた。
同じ学年だし、彼女は梨緒ちゃんを見たことがあるようだ。よく迷子になって学校のあらゆるところに出現する梨緒ちゃんを知らないわけがないのだが。
怯える香織ちゃんに躊躇なく梨緒ちゃんは手を伸ばす。
当然、それを拒否した香織ちゃんに、梨緒ちゃんの弾かれた手が宙に浮く。
その体勢で数秒止まってしまった梨緒ちゃんに、香織ちゃんは少しばかり不安そうな目を向ける。
相変わらず梨緒ちゃんは自由だ。
そしてもう、この部屋の中は梨緒ちゃんのペースだ。
梨緒ちゃんは、再び香織ちゃんに手を伸ばした。
けど、今度は先ほどとは違う向きだった。
さっきは香織ちゃんを掴もうとして掌を下にしている状態だった。
だけど今は、転んだ人を起き上がらせるときみたいな、掌を上に向けた状態だ。
そのまま動かない。香織ちゃんに手を差し伸べたまま、1mmも動かない。
ただ、梨緒ちゃんは。
香織ちゃんが手を取ってくれるのを、待っていた。
この行為に香織ちゃんは驚いたように目を見開き、梨緒ちゃんの手を凝視する。
戸惑うように視線を外し、 ・・・恐る恐る手を伸ばす。
手が触れ合った瞬間、梨緒ちゃんの手は、彼女の手を優しく包み込むように動いた
「理人。この子は私が連れて行くわ」
無機質に発せられた梨緒ちゃんの言葉に、俺は従うしかない。
俺にはどうにもできなかった世界を嫌った女の子と手を繋ぐ梨緒ちゃんに、逆らえるわけがない。
とりあえず、俺はベッドに寝かされる小夜ちゃんを背中に抱えて美羽ちゃんの手を握って部屋から出た。そのあと、狛くんを連れて那羅ちゃんがついてくる。
そしてそのあとから、ゆっくりと香織ちゃんが梨緒ちゃんに引っ張られて歩き出した。
部屋から出る間、俺は改めて梨緒ちゃんの重要性について再確認していた。
***
熊谷信之は、放心状態だった。
被害者たちは、先ほど理人たちが全員連れて行った。1人、黒宮綾がいなかったが、何となくあいつはもうどうでもいい。何とかして逃げているのだろう。
そして、俺は熊谷に聞きたいことがあった。
「おい」
それは今回の事件の、動機。
「お前、何でこんなことしたんだよ」
大体の予想はついている。
だけど、こいつの口から聞かないと意味がない。
数秒間待った。もしかしたら数分だったのかもしれない。それくらい、短いとも長いとも言えるだけの時間を待った。
そうしてやっと、熊谷の口が開く。
「・・・私は」
腕は離しているものの、熊谷を監視していた空悟も視線をこちらに向けて話しを聞こうとしている。
悔しげに一度唇を噛み締めた熊谷は、意を決して俺の質問に答えた。
「・・・、娘を、取り戻したかったんだ」
娘。
熊谷の、娘。
何らかの事情で、まだ幼かった頃離れ離れになった娘。
それは、きっと、・・・皐。
「え?じゃあ何で、他の奴ら拉致ってんの?」
何となくいつもの明るい雰囲気に戻ってきた空悟が、そんなに怒りを感じさせない口調で熊谷に問い掛ける。
熊谷は小さく、だが長い溜息をついて、順を追って説明を始める。
「私はまだ娘が小さい頃に、娘を手放さなければならなくなった。そしてそのときに、娘にまた会うことを禁止された」
誰に、とはあえて聞かない。今それを聞いても、複雑になるだけ。
「だけど、私は諦めることができなかった。何年も経っても、あの子のことが忘れられなくて・・・ついに捜すことを決心した」
熊谷は表情も声色も、視線も変えないまま、淡々と。
「つい数年前のことだった。やっと私は娘の居場所に辿り着き・・・娘に、会いに行った。・・・・けれど、娘は私のことを分かってはくれなかった。いや、何年も会っていないし、1歳のときの記憶を当てにしていたわけじゃない。どうせそんなものだろう、と覚悟していた。ショックではあったけど、それについて娘を責める気はない」
悔しそうに唇を噛み締めたあと、熊谷はもう1度口を開く。
「それでも私は諦められなかった。私の娘を、どうして奪われてしまったのか、今だに理解できなくて。だけど、再び会いに行く勇気もなかった。だから私は、娘を絵に記そうと思った。けれど、娘を見たのは1度きりで、どう表現していいのか、分からなかった。何枚も、何枚も、娘を思ってたくさん絵を描いているうちに、・・・私は、自分がどんな絵を描いていたのか、分からなくなってしまった」
・・・何も、言えない。
「娘を思って描いた絵は、後から見ると自分でも吐きそうになるほどに、気持ちが悪くなるものばかりで・・・。私が見た娘はこんな気持ち悪くないのに、どうしても私は、娘を正常に描くことができなかったんだ。・・・そのうち気付いた。私は無意識のうちに娘への欲が絵に表れているのではないかと。娘と離れてしまった罪悪感と、それをさせた奴らへの恨みと、今まで一緒にいれなかった寂しさと、これからでもいいから一緒にいたいという欲望。他にもいろいろあるが、それらが全てが絵に出てしまっているのではないかと。私は娘に対してこんなことも思っていた」
熊谷は、初めて視線を床から天井へ向けた。その顔には、何の感情もなく・・・ただ、あるのは、絶望だけだった。
「・・・私と一緒にいないのなら、いっそのこと死んでくれれば諦められるのに、と」
意味不明な感じになってしまって、本当にごめんなさいっ・・・・。
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