複雑・ファジー小説
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- OUTLAW 【6ヶ月ぶりの更新ですっ!!ごめんなさいっ】
- 日時: 2014/05/07 00:17
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
ちわちわー、Cheshireって書いてチェシャって読みますww
んーと、誤字脱字、文が変ということがあった際は、スルーせずに言ってください、お願いします。
あと、更新が不定期です。まぁ、暇なんで、多分早いとは思いますが、遅くなるかもです。すいません
あとあと、もうお話自体が下手だと思いますが、どうぞ飽きないで読んでください。
コメント、アドバイス、イラスト、その他もろもろ大歓迎ですwwというか、ください。ください。大事なことなので2回言いました。
OUTLAW
<プロローグ>
>>1
<ハジマリ>
>>18 >>25 >>30 >>33 >>38 >>40 >>41 >>43 >>44 >>49 >>50 >>51 >>56 >>57
<JUNE>
>>86 >>87 >>88 >>90 >>93 >>94 >>95 >>99 >>100 >>101 >>111 >>116 >>121 >>125 >>128 >>131 >>134 >>138 >>139 >>140 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>152 >>159 >>160 >>163 >>166 >>169 >>170 >>171 >>172 >>190 >>194 >>197 >>198 >>199 >>200 >>204 >>219 >>221 >>222 >>227 >>228 >>231 >>232 >>237 >>240 >>248 >>253 >>257 >>258 >>261 >>263 >>266 >>267 >>269
<番外編1>
>>72 >>76 >>77 >>78
<番外編2>
>>79 >>82
<サブストーリー>
サブストーリーは、チェシャではなくキャラクターをくださった皆様方がそれぞれのキャラクターを主として、書いてくださったお話です
葉隠空悟編 >>201 >>202 >>211 007さん作
阿九根理人編 >>217 ルル♪さん作
社井狛編 >>179 ルゥさん作
黒宮綾編 >>187 朝比奈ミオさん作
<登場人物>
矢吹真夜、篠原梨緒 >>21
高嶺真 >>39
葉隠空悟 007さんより >>5
杵島灯 金平糖さんより >>3
阿九根理人 ルル♪さんより >>6
社井狛 ルゥさんより >>19
璃月那羅 雷羅さんより >>22
榊切 橘椿さんより >>11
黒宮綾 澪さんより >>64
天内小夜 ブルーさんより >>10
皐 ミケ猫さんより >>8
- Re: OUTLAW 【番外編START☆】 ( No.78 )
- 日時: 2013/04/03 22:26
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
***
そのとき、その場には酷く優しい歌が響いた。
酷く残酷で、それ故に優しく、天使が歌っているとも悪魔が歌っているとも言えるような。
誰も聞いたことがないような、誰より綺麗な澄んだ透明な声で奏でられたその旋律は、その場に居合わせた人々の足を強制的に止めさせた。
老若男女問わず、全ての人を魅了するその歌を歌うのが、1人の残酷過ぎる過去を持つ哀れな少女だとは誰も思いもしない。
どんな歌だったか、と聞かれたら、声をそろえてこう答える。
“綺麗すぎて、よく分からない”。
***
歌が聞こえた。
随分遠くのようで、かろうじて聞こえる程度だったけど凄く綺麗な音だった。
吸い寄せられるように俺は足を動かした。
俺はこの声を知ってる。毎日聞いている声だ。
でも、あいつのこんな声、聞いたことがない。
切なくて悲しくて、どこか雪を連想させる旋律なのに、その中に春のような暖かさが隠れている。
テレビに出ているどの歌手にも劣らない。
まるで天使が歌ってくれるような子守唄のような。
とにかく俺は声を頼りに歩く。今までずっと探していた人物のところへ。
序所に大きくなる歌声に俺は鼓動が早くなるのを感じる。
すると突如として人だかりにぶつかった。通常の道のはずなのに、そこには何かを取り囲むようにして人が集まっている。
俺はどうにかして人の群れを掻き分け、最前列へと辿りついた。じめじめとした気候な上の重労働なので、結構汗が鬱陶しい。
そしてそこにいたのは、思ったとおりの人物だった。
見知らぬ女の子が床ということも気にせずにうずくまって大声をあげ泣いている。彼女はその女の子に寄り添うように床にぺたりと座りながら、聖母のような優しい表情で音を連ねていた。
見慣れている。なのに、今のこいつは、
俺の知らない姿。
いつもの自由奔放な我儘な少女には見えない。
お前は、誰?
今俺の目の前にいるのは、誰?
知らない。俺はこんなの知らない。
妙な感覚だった。近くにいるのに遠いような。見えない壁に阻まれているかのような。
焦ると同時に苛立ちを覚えた。
自分の知らないあいつがいることが許せない。
あいつの全てを俺だけが知っていたい。そんな独占欲に駆られてしまう。
何分経ったかは分からない。もしかしたら数分かもしれないし、数十分かもしれない。時間さえ感じられない空間だった。そんな時間が経って、あいつの歌は止まった。
気付けば女の子も随分と泣き止んでいて、疲れたのかボーっとしている。あいつは今まで自分の周りにこんな人だかりができているなんて知らなかったようだ。決して目立ちたがり屋ではないあいつは少し困っているように見える。
そのとき、人だかりの中から1人の女性が飛び出してきて、あいつの傍にいた女の子へと駆け寄った。女の子も女性を見てぱっと明るい表情になって、倒れるくらいの力で飛びついていた。
状況を察するに、あの子は母親とはぐれていたのだろう。そうすると、あいつは迷子の手助けをしたことになる。
あいつなりに、親切を頑張ったんだろうとは思うが、あの方向音痴を知っていると逆に母親から遠ざけていたのではないかと不安になる。
女の子が母親と会えたのを見て、あいつは心底安心したような表情になった。他者から見れば、無表情に違いないが。
そのとき、俺と同様にことを理解した人々が、あいつに拍手を送った。
あの女の子は母親がいないことが寂しくて泣いたのだろうか?まぁ、理由は分からないが、泣いている女の子を彼女があやしていたのは確かなことだ。しかも、母親まで見つかったのだから、申し分ない。
拍手にどう応えていいのか分からず・・・というより、あれは俺が思うに人見知りの分類だ。こんな大勢の人の目に触れるなんて慣れていないのだろう。フードをより深く被り、俯いてしまった。だが、ぎりぎりのところで周囲を見渡せる絶妙な角度のようで、きょろきょろと視線を泳がしている。
その視線が俺の方向へと向いたとき、ぴくりと反応した彼女は俺のほうへと歩いてきた。俺の存在を認識したらしい。
遠いと思ったら、すぐに近くなる。
・・・それでいい。
まだ会ってから日数もそんなに経っていないんだ。知らないこいつがいて当然だ。
だからこれから知っていけばいい。俺の知らないこいつを。俺しか知らないこいつを。
独占して何が悪い。誰にも文句は言わせねぇ。
「真夜、見つけた」
「探してたのは俺だっつーの」
「私ここにいたくないわ」
「奇遇だな、俺もだ」
「早く帰る」
こんだけ我儘言わせてるんだ、少しくらい俺にだって我儘言わせろ。
いつの間にか拍手も小さくなり、一足も減ってきている。今がチャン
スだ。
そう思って、俺が歩き出したとき後ろで高い声が響く。
「おねえちゃん、ばいばい!!」
言葉から相手が先ほどの女の子だということが分かる。
振り返った彼女は女の子に微笑み、踵を返した。
周りの人々が口々にこいつを評価してる。だが、どうせこいつは気にも留めていないのだろう。だから、絶対自分の音楽の才能にも気付いていない。
どうして今までこいつの周りにいた奴らは、声をかけてやらなかったんだろうか。疑問だ。
または、人前で歌ったのが、今回が初めて・・・?いや、そんなはずない。学校の音楽で歌わせられるはずだ。
「ねぇ、真夜」
デパートの出口をくぐったとき、梨緒が後ろから話しかけてきた。フードを被って一層見えない表情が、俯いているせいかもっと見えない。
微妙に梨緒の顔を覗き込みながら、俺は「ん?」と聞き返す。
多少間を開けて躊躇いながらも、梨緒は俺を見上げて訴えてきた。
いつもの無表情な白い顔が、そのときだけ少し赤に染まっていて。
「・・・手」
たった1文字を言いながら、右手を俺へと向けてくる。
こいつはいつも言葉が足りない。その代わりに行動で自分の意思を伝える。
今回ばかりは少し考えてしまったが、すぐに趣旨を理解した俺はさすがに視線を逸らした。
俺は今まで周りと馴れ合うようなことはしなかった。当然、恋人というものも作ったことがない。
だから、意識をして異性と手を繋ぐという行動は取ったことなどないわけで。
少し・・・いや、かなり恥ずかしいのだが・・・。
でも、どこかで嬉しがってる自分がいて・・・・・・・・。
「・・・ったく」
頭では駄目だと思っていながらも、心は理性を保てない。
梨緒の手は、びっくりするくらい冷たかったのだが、今の気候には丁度よかった。
けれど数歩歩いた頃に、梨緒が手を握る力を強くしたとき、俺の体温は何度か上がった。
「?・・・真夜、何だか手が熱いわ」
「・・・誰のせいだよ」
「聞こえない」
それでいい。
今は、これが続けばいい。
そう思った。
この手を離すわけにはいかない。
「何でもねぇよ」
はい、番外編PART1、終了です!できるだけ短くしたつもりなのですが・・・どうでしょう?こんな感じで大丈夫でしょうか?
ペースあげなきゃ本編がやばい・・・!
とか馬鹿な自分に焦ってるチェシャです
次回からは、那羅の風邪のつもりです、お楽しみにw
- Re: OUTLAW 【番外編START☆】 ( No.79 )
- 日時: 2013/04/04 00:19
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
<番外編PART2 那羅の風邪>
「那羅ちゃん、大丈夫ですか・・・?」
こまにぃが心配してくれた。
でも、ならは今声が出ない。
頭が痛い。体が熱い。ぼーっとする。
昨日の水遊びがだめだったのかな。こまにぃに止められたときに、素直にやめればよかった。
いわゆる風邪というものを引いたならは、お部屋のベッドに寝かされていてすぐ隣にはこまにぃが付き添ってくれてる。今日はみんなでおでかけのはずだったのに、ならのせいでこまにぃはお留守番係りになっちゃった。
こまにぃに謝ったら、優しく撫でて気にしないでくださいって言ってくれた。
すぐに分かることだけど、こまにぃは優しい。凄く優しい。怖いほど優しい。
綺麗な金色の髪に、みんなとは違う青い目。確か、こまにぃのお母さんが大層綺麗な外人だったらしくて、こまにぃはその容姿を遺伝子から受け継いでいた。
最初見たときは、女の子だと思った。ならは男の子が嫌いだったから、何の疑いもなく近づいていたけど、知ったときはちょっと戸惑った。
でも、もうその頃にはこまにぃのすべすべした白い肌が大好きになってて、今更離れることなんてできなかった。
こまにぃもそんなならのわがままを快く受け入れてくれて、今まで通り接してくれている。
今みたいによく迷惑かけてるけど、こまにぃはすぐにならのことを考えてくれる。
ならは、こまにぃのことが大好きだ。
今、ならの熱は38、7度らしくて、心配性のこまにぃは額のタオルを冷たくしてくれたり、汗を拭いてくれたりって、凄く気にかけてくれる。
もう午前の11時。朝の7時から看病してくれてるから、もう4時間になる。お薬がなくて買い物に行ってたときもあったし、ならが寝てるときもあったけど、こまにぃは本を読んだりして暇を潰しながらずっとならの傍にいてくれていた。
「何かあったら言ってくださいね」
そう言って微笑んでくれたこまにぃは、ならの絡まった髪をなでてくれた。
なでられるのは好き。特に相手がこまにぃならもっと好き。
昔、本当にならが小さい頃、こまにぃみたいな白くて細い手で誰かがならをなでてくれた。
誰だかはよく覚えていないけど、でも、その感触は覚えてる。ふわふわしてて、優しくて、・・・なのにどこか切なくて。
「・・・こまにぃ」
「はい、何ですか?」
呼んですぐに応えてくれたこまにぃのほうを見つめながら、ならは口を開いた。
「なにか、おはなしして」
喉の痛みであまり声は出なかったけど、こまにぃは聞き取れたみたい。
「お話、ですか?」
ならは前から、こまにぃのお話が好きだった。
面白いのも楽しいのも悲しいのも切ないのも全部、こまにぃがしてくれるお話は興味がある。
多分ならは人より本が好き。ひまさえあれば、ならは本を開いている。学校の図書室や町の図書館の本を全冊読破するのなんて、1週間ほど放置してくれればいくらでもできた。
本は世界だ。ならは本を読むことで、いろいろな世界を、いろいろな人の思考を、見ることができる。
その間は、本当の世界のことは忘れてられるから。
現実逃避と罵られても、構わない。そんなのもうとっくに分かってる。
でも、やめる気はないし、そもそもいけないことだとも思わない。
ならが興味を引いたのは、今までずっと本だった。けど、こまにぃの話は、ならの知らないものばっかりで、本と同じような感動があった。
だからこまにぃの話は好き。
聞いてて、落ち着く。
「うん。いまはねたくないの」
午前中はずっと寝てた。今から寝ちゃったら、夜に寝れなくなって夜中にこまにぃを起こす羽目になってしまう。
こういうときは、こまにぃのお話がいちばん。
「んー・・・そうですね・・・」
ならは前からこうやってこまにぃにお話をせがむから、こまにぃはいつも話題に探すのに必死だった。いっぱい本を読んでるならが知らないような話しを探すのは、難しいってこないだ言ってた気がする。
今アウトロウにはならとこまにぃと、あかりちゃんしかいない。しんとさかきさんはお仕事に行って、他のみんなはどこかに遊びに行っちゃった。
風邪を引いたならは当然お留守番で、こまにぃは付き添いとして残ってくれた。あかりちゃんは元々みんなと遊びに行く気がなかったらしい。あかりちゃんはならより浮いてる存在だって、こまにぃが小さく教えてくれた。
「那羅ちゃんは、スノードロップという花を知ってますか?」
「うん。しろいはなだよ」
国語辞典にも植物図鑑にも載ってる植物。ヒガンバナ科ガランサス属、別名は待雪草。自然の森とかに咲いてるから、実際に見たことはない。
白い色と雫の形の小さな可愛らしい花を咲かすのは2月〜3月の冬の終わり頃。桜より早く、冬の終わりを教えてくれる花だと認識している。
「じゃあ、スノードロップ伝説、は、知っていますか?」
「でんせつ?」
問い返したことによって、ならが知らないと判断したらしいこまにぃは話題が決まってほっとしたようだ。事実、ならは「スノードロップ伝説」を知らない。
「スノードロップにはいろいろ伝説があるんですけどね、その中でも僕が一番好きなのは“天地創造神話”です」
天地創造神話とは、人類・地球・生命及び宇宙の起源を説明した物語のこと。科学的調査、形而上学的思索、宗教的思念といったあらゆる出発点から始まっており、それぞれの考え方のばらつきはかなり大きい(Wikipedia参照)。
それが、スノードロップみたいな小さな花と、何の関係があるのかさっぱり分からない。
「昔、世界が生まれたばかりのとき、冷たい雪は神様に嫌われていて色をもらえなかったんです。それでも、透明だった雪は神様に『私にも色をください』と頼みました。神様はそんな雪に意地悪を言って『ならば色をたくさん持っている花に色を貰いなさい』と命じたのです。冷たい雪が周りから嫌われているのは一目瞭然だったんですけどね」
可哀相だと、思った。
昔の神様は何でそんなに意地悪だったんだろう。・・・今もかもしれないけれど。
「神様の予想通り、嫌われ者の雪に色を分けてくれる花はいませんでした。雪が諦めかけたそのとき、『私の白い色でいいのなら』と声をかけてきた花がいて、その花こそがスノードロップです。雪は色を貰えたことに喜び、スノードロップに寄り添うようになった。他の草花の上には降り積もる雪でも、スノードロップの上にだけは降り積もらないようになったんです」
ただ、スノードロップの花が小さくて雪が積もらないだけだと思っていたけれど、そんなロマンチックな話があったとは夢にも思わなかった。
「やさしいね」
心からそう思った。
周りから嫌われていた雪に手を差し伸べたスノードロップは一体どんな気持ちだったんだろう。やっと自分を認めてもらった雪は、どんな気持ちだったんだろう。
やっぱりこまにぃの話には一瞬で入れる。傍観者にしかなれない自分に腹がたつ。
更新遅れて申し訳ございませんでした!!
那羅の風邪は少し難しくて・・・ちょっと次回また遅れるかもです
- Re: OUTLAW 【番外編START☆】 ( No.80 )
- 日時: 2013/03/14 01:10
- 名前: 雷羅 (ID: SyV4.Cvk)
那羅ちゃん中心のお話を書いてくださって、ありがとうございます!
読み終えた時は、「おおぉ」となっていました。
那羅ちゃんのこまにぃが大好きという気持ちがもの凄く伝わってきました!
こんな兄妹がいたら素敵だな〜と。
「こまにぃ」と那羅が呼ぶのも大分ツボにはまって…。お気に入りです。
もう本当にありがとうございます!
嬉しい限りで…。
今、那羅ちゃんの絵を描いていて、迷惑ではなかったら持ってこさせて頂こうと思っています。駄作ですがね…。
そんなこんなで、更新頑張ってください。
また来ます!
- Re: OUTLAW 【番外編START☆】 ( No.81 )
- 日時: 2013/03/14 18:47
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
お褒め頂き光栄です!!ありがとうございますwww
那羅ちゃんの絵ですか!?もちろん拝見させていただきたいです!!
全然迷惑なんかじゃないので、むしろお願いしますwww
楽しみにするので、楽しみにしててください^^www
- Re: OUTLAW 【番外編START☆】 ( No.82 )
- 日時: 2013/04/04 00:24
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
こまにぃの話す物語の中に自分が入れたら、どんなにいいのに、といつも思う。
「はい、僕もそう思いますよ。でも、この話にはもう少し続きがあるんです」
どこか寂しげな表情をするこまにぃに少しだけ違和感を覚えた。
でも、お話の最中で口を挟むのはあまり好きじゃない。まだ話が終わってないんだとしたら、黙って聞くべきだ。
「もしもスノードロップが雪に声をかけなかったら、雪は悲しみのあまりこの世界から消え去っていたことでしょう。それは雪が嫌いな神様にとって、非常に都合のいいものでした。ですが、思わぬ邪魔が入り、それは覆されてしまった・・・。そこで神様は、また1つ試練を与えたのです。那羅ちゃん、スノードロップの開花時期はいつですか?」
「2がつから3がつ」
「つまり冬の終わり頃ですよね。冬の終わりになれば、当然雪は溶けてしまうでしょう。意味が分かりますか?」
活動時間が丁度入れ替わる、ということは同じ時を過ごせないことを表す。
雪は優しくしてくれたスノードロップに寄り添っていたいのに、それが許されない。
神様はどうしてそんなに酷いことをするんだろう。
「・・・やっぱり、かなしいね」
率直にそう思う。
それ以外にどう思えばいいというのだ。こんなに悲しいこと他にない。
「ならちゃんはそう思いますか?」
「ちがうの?」
「違うとは言いませんよ。ただ、僕は2人とも満足してるんじゃないかなと思うだけです」
満足?
これの一体どこが?
ならの気持ちを分かってくれたらしく、こまにぃは微笑みながら補助説明をしてくれた。
「雪と花はどう足掻いても共存できません。雪が降るときに花が咲けばすぐに枯れてしまうし、花が咲くときに雪が降ったらすぐに溶けてしまう。一緒にいることで、相手を傷つけてしまうことになるとしたら、優しい2人はどうするでしょうか。・・・多分、自ら身を引き、相手と同じ場にいることを避けるでしょう。どんなに自分が相手と共にいたくても、相手にとってそのことが都合の悪いものなら優しい2人ならすぐに互いを避けます。2人にとって、互いの相手の幸せが最優先なのです。違う場でも、相手が幸せなのだとしたら、2人は幸せを感じるでしょう」
優しいこまにぃだからこそ分かる、他者の優しさ。
理解できないわけじゃないけれど、会いたい人に会えないなんていう状況は嫌だ。たとえそれで、自分が傷つき相手を傷つけることになってしまっても、きっとならは会いに行く。
そう考えてしまうのは、幼いのだろうか。
自分が最優先なのは、いけないことだろうか。
でも、昔、「あなたはそれでいいのよ」って、言ってくれた人がいたから。
今の自分を変えるつもりはない。
「でも、そう思うと神様は別に酷いことはしていないようですよ」
「え?」
「だってそうでしょう?神様がどうしようが、結局雪と花は共存できません。それを気付かせてくれたのは他でもない神様です。もしもその命令がなかったら、雪と花は何も知らないまま互いに相手を傷つけてしまうことになります」
言われてみればそうかもしれない。こまにぃの言うことは正しいのかもしれない。
なのに釈然としないのは、やっぱりならが幼稚だからかな?
「意見は人それぞれですよ。これは僕個人としての主張ですし、那羅ちゃんに強制するつもりもありません。無理に合わせようとしなくて大丈夫ですよ」
「むー・・・」
たった1歳しか違わないのに、こまにぃはならより随分大人だ。
何だか眠くなってきた。ずっと難しいことを考えていたからかな。
「眠くなってしまいましたか?そうですね、丁度時間ですしお粥を作っておきますね。冷めた頃に起こしますので、それまで寝ていては?」
「ん・・・」
すぐにならの変化に気付いてくれて、ありがたいと思う。
「こまにぃ・・・」
ぼーっとしてきて、思考が停止し始める。本格的に体が眠る準備を始めたようだ。
最後の最後にならが言うのは、相変わらずの我儘なのだけどきっとこまにぃなら受け入れてくれる。
その自信がある。
「ならがねるまで・・・おてて、ぎゅってしててほしいの・・・」
くす、とすぐに笑みを零して、その白い手でならの小さい手を握ってくれる。
・・・ほら、やっぱり。
こまにぃはこんなに優しい。
「分かりました。那羅ちゃんが寝るまで、ずっとこうしていますね」
ならの手を包み込んでくれたこまにぃの手は凄く暖かくて、ぽかぽかしてて、いとおしかった。
男の人なのに、女の人より触れ合える。不思議な特別な存在。
ずっとずっと、こまにぃの暖かさがだいすきなの。
気付けばならは、夢へと旅立っていた。
約束通り、こまにぃはずっとならの手を握ってくれてたことは、言うまでもない。
今回は少し短めになってしまいましたね・・・
ってなわけで少しご報告です
えっと、番外編は一応4つ作成するつもりだったので、馬鹿なチェシャはあまりに時間がかかってしまうため、一時休止させることにしました。
あ、那羅の風邪はもう少し続きます。残りの空悟と灯の喧嘩と個人の部屋は、また次の機会にやってみたいと思ってます
とりあえず本編を進めさせてもらって、できれば参照が1000越えしたら再度試みたいと思います。
自分で言ったことを全うできず、本当に申し訳ございません
まとめて言うと、番外編は今回の那羅の風邪で終わりで、残りはまたの機会にやることにし、これからは本編を進めますよということです
ごめんなさい、応援よろしくです
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