複雑・ファジー小説

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OUTLAW 【6ヶ月ぶりの更新ですっ!!ごめんなさいっ】
日時: 2014/05/07 00:17
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

ちわちわー、Cheshireって書いてチェシャって読みますww

んーと、誤字脱字、文が変ということがあった際は、スルーせずに言ってください、お願いします。

あと、更新が不定期です。まぁ、暇なんで、多分早いとは思いますが、遅くなるかもです。すいません

あとあと、もうお話自体が下手だと思いますが、どうぞ飽きないで読んでください。

コメント、アドバイス、イラスト、その他もろもろ大歓迎ですwwというか、ください。ください。大事なことなので2回言いました。



OUTLAW


<プロローグ>

>>1

<ハジマリ>

>>18 >>25 >>30 >>33 >>38 >>40 >>41 >>43 >>44 >>49 >>50 >>51 >>56 >>57

<JUNE>

>>86 >>87 >>88 >>90 >>93 >>94 >>95 >>99 >>100 >>101 >>111 >>116 >>121 >>125 >>128 >>131 >>134 >>138 >>139 >>140 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>152 >>159 >>160 >>163 >>166 >>169 >>170 >>171 >>172 >>190 >>194 >>197 >>198 >>199 >>200 >>204 >>219 >>221 >>222 >>227 >>228 >>231 >>232 >>237 >>240 >>248 >>253 >>257 >>258 >>261 >>263 >>266 >>267 >>269

<番外編1>

>>72 >>76 >>77 >>78

<番外編2>

>>79 >>82

<サブストーリー>

サブストーリーは、チェシャではなくキャラクターをくださった皆様方がそれぞれのキャラクターを主として、書いてくださったお話です

葉隠空悟編 >>201 >>202 >>211 007さん作

阿九根理人編 >>217  ルル♪さん作

社井狛編 >>179  ルゥさん作

黒宮綾編 >>187  朝比奈ミオさん作


<登場人物>

矢吹真夜、篠原梨緒 >>21

高嶺真 >>39

葉隠空悟 007さんより >>5

杵島灯 金平糖さんより >>3  

阿九根理人 ルル♪さんより >>6

社井狛 ルゥさんより >>19

璃月那羅 雷羅さんより >>22

榊切 橘椿さんより >>11

黒宮綾 澪さんより >>64

天内小夜 ブルーさんより >>10

皐 ミケ猫さんより >>8



Re: OUTLAW 【第2部 START☆】 ( No.93 )
日時: 2013/03/22 20:08
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

 おとなしい性格のために友達は居らず、母がこんなだから親戚にも頼れず、売春で貰ったお金は食費やライフライン関係の支払いだけで精一杯な渡辺香織には、家を追い出されたらどこにも行く当てがない。

 食事だけでなく寝床までホテルで取らなくてはならなくなってしまうのだ。そのためには、売春の金額を上げなければならなくなる。それはつまり身を売るレベルが上がるということだ。

 元々身体の付き合いに対して積極的ではない渡辺香織にとって、今以上の行為は苦難だった。できれば避けたいものだ。

 ならば、成績を上げる他手段はない。

 でも、家での時間は家事全般で失われ、夜は身体を売りに行き、寝不足のために授業は集中できず全く頭に入らない・・・その悪循環は抜け出せなかった。

 こうなったら、どんな手を使ってでも成績を上げないと。

 だから・・・。

 そうして行ったのが、カンニングだったのだ。

 朝のバスの中で話す会話じゃないことは百も承知だ。何でこんな暑苦しい人混みの中で人のヘビーな過去を聞かされなければならないのか、あまりよく分からない。

「ちょっと、優。その話は私、知らないわよ」

「だろうな、言ってねぇもん」

「何で私に言わないのよ」

「ごめん、タイミングがなくてさ」

「全く。今後一切私に隠し事しないで」

「ん」

 どんな会話だ、と思いつつ双子はこういうもんなのか、と勝手に解釈する。

 渡辺香織について、アウトロウがどれくらい情報を掴んでいるのかは分からない。ただ、今姫路から聞いた情報は、知ってて損はないはずだ。

 そう思うと、こいつらと引き合わせてくれたあの痴漢のおっさんに感謝する。

「次は、多岐谷駅。多岐谷駅でございます。お降りの方は———」

 機械的なアナウンスで、現実に引き戻される。目的地の多岐谷駅だ。多分、空悟と梨緒も降りる準備をしているはずだ。

「よかったら一緒に行かない?」

「悪ぃ、俺待ち合わせあんだ」

「あら、そうなの?残念だわ」

 誘ってきた姫路の誘いを断り、俺は荷物を持ち直した。

「2学年のクラスは全部で7クラス。ちなみに私たちは3組よ。一緒だといいわね」

 開いたドアをくぐる寸前に、女のほうの姫路が俺へと振り返りそう告げた。

 確かにこいつらとの話は、楽しいと言ったら不謹慎かもしれないけど楽しかった。アウトロウにいても、全然違和感はないだろう。

 多分、俺みたいな奴に偏見がないからだ。大抵の奴は俺を怖がって避ける。だが稀に、俺のことを普通の人間と変わらずに接してくれる奴らがいる。アウトロウは悪く言ってしまうが変人の集まりなので逆に俺は浮かなくて済んでいるのであいつらは別だ。それ以外は姫路たちやあいつみたいな希少価値のある優しい奴らだ。まぁ、姫路たちが優しいかどうかは断言できないけど。

 そういえば、俺も含め梨緒や理人、社井は何組なのだろう。

 それも確認するため、俺はとりあえず待ち合わせ場所である改札口に向かった。

 近づいていくと、もう既に梨緒と空悟がそこにいた。2人のほうが近いところにいたらしい。

「悪ぃ、遅れた」

 後ろから声をかけると、驚いたように空悟が振り返り、「何か久しぶりだな」と苦笑した。

 梨緒は俺の存在に気付くと、すぐに横に駆け寄って、袖を掴んだ。何だろう、と不審に思っていると、空悟がくすりと笑いを零す。

「何だよ」

「だってさ、お前といない間のしの、ずっと真夜の話してるんだ。よっぽど寂しかったんだろうな」

 ・・・寂しかった?

 たった数分の電車の中、一緒にいないだけで?

 俺は姫路たちのおかげで退屈を紛らわせることができたけど、梨緒たちがどういった場所にいたのか分からないのでもしかしたら退屈していたのかもしれない。

 今考えると、俺もあの場に姫路たちがいなかったら、退屈すぎて、梨緒のことばかり考えていたかもしれない。現実、空のほうの姫路を優のほうの姫路が庇っているのを見て、梨緒のことを思った。

 俺に迫りながら見上げる梨緒は、ふてくされるように頬を膨らましていた。

 怒られているというこの状況の中だが、そんな梨緒を可愛いと思ってしまった。別に、マゾヒストな訳ではないが、こんなことされたら誰だってそう思う。

 たった数分一緒にいないだけで、こんなにふてくされるなんて可愛い以外に何て言えばいいんだ?

「悪かったよ」

 人の流れに逆らえなかった俺と、故意的にふらついていなくなる梨緒では、少し違うとは思うが、今のこいつにそんな正論通じない。

 こいつにとってはどんな理由でさえ、俺が自分から離れたということ自体が駄目らしい。

「何で笑ってるの?」
 そりゃ笑いたくもなる。というか、もう堪えきれない。

 口角を上げようとする思考を、止めることができないんだ。

 空悟はまたやってるよ、と言った目で俺らを見ている。通勤通学のすれ違っていく人たちが適当に俺たちを見ては視線を外していく。

 どうでもいい。今はお前しか見えていない。

「・・・いや、可愛いなって思って」

 素直にそう告げた。心の底からそう思った。

 可愛くて、つい抱きしめたくなってしまうほど、愛しい。

 全く、俺はどうしようもない馬鹿だ。

 可愛い、と言われ、梨緒がどう思ったかは知らないけど、すぐにそっぽを向いた辺り顔は赤くなったのだろう。彼女は照れてるところをすぐに隠そうとする。

「ほらほら、お2人さん。もう学校行きますよ」

 と、見かねた空悟が促し、俺らは渋々歩き出す。

 多岐谷駅から高嶺高校はかなり近い。ホームを出て、5分も掛からないうちに着くはずだ。

「そういやさ、俺って何組なの?」

「私と同じクラス」

 間髪入れずに答えてくれたのは梨緒だった。まぁ、元々空悟は3年生で学年自体が違うのだが。

 梨緒と同じクラスということに、普通に喜んだ自分がいた。

 だけど、もしかしたらこんな時期外れの転校生を入れさせられる程だ。高嶺の奴が面白半分に同じクラスにしてくれたのかもしれない。

 あいつの言いなりになるのは癪だが、梨緒と同じクラスなのだとしたら感謝しないといけない。

「マジで?理人と社井は?」

「理人は確か7組だったな。社井は1組だから、真夜とは違うクラスだよ」

 やっぱりそこまでは揃えないか。まぁ、確かにそこまで一緒だったら怖いしな・・・。

「ちなみに何組?」

「3組よ」

 ありげな展開だ、と自分でも思う。3組なら、姫路たちと一緒だ。

 何だかあの双子と梨緒が知り合いだなんて、ちょっと変な気分だった。

「了解、ありがとな」

 ここで俺は、姫路たちから聞いた渡辺香織についての話を言おうか迷った。

 でも、彼女の抱える問題は決して軽くない。むしろ、人より重いはずだ。それを容易に話してしまうのは、2人には悪いが少々気が引けた。

 今度アウトロウで事件についての話題が出たときに、言えばいいか。人の背負ってるものは、他人が触れていいものではない。

「そういや俺、職員室寄ってくから、お前先教室行ってろよ?」

「駄目」

「え?」

 何故か答えたのは空悟だった。











Re: OUTLAW 【第2部 START☆】 ( No.94 )
日時: 2013/03/27 07:55
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

 これでも俺は一応転校生だ。朝は担任と一緒に行くから、梨緒と一緒にいるわけにはいかない。

「高嶺高校の構造が難しいことは言っただろう?学年ごとに校舎が違うって」

「あぁ」

 高嶺高校は私立なのでそれなりに私有地が広いことは予想していた。

 だが、説明してもらった高嶺高校の構造上、その予想を上回る広さになった。

 学年ごとに校舎が違い、特別教室・・・美術室や理科室、家庭科室等、また職員室、保健室、放送室などが各校舎ごとにあるという、まるで学校が3つあるような感覚で、高嶺高校は成り立っている。校庭は共用だが、その広さは普通の学校の校庭の1、5倍はあると聞いた。3つの校舎は渡り廊下で繋がっているらしい。

 そんな学校を創った高嶺の親族は、どんだけ金を持ってたんだ。というか、そもそも何をしている人なんだ。まぁ、どうでもいいけど。

「しのは教室までの道が分からなくて3年の俺の教室まで迷い込んできたんだぞ」

「・・・は?」

 校舎は、学年ごとに違う。

 梨緒は2年生で、空悟は3年生。当然、校舎も違う。

 なのに、教室を求めて梨緒が辿りついたのが、空悟のクラス・・・?

「ついでに言っとくけど、梨緒は全学年に顔が知られてるぞ。迷子ちゃんってな」

 迷子ちゃん、って・・・どんだけこいつは方向音痴なんだ・・・。

「だから、学校内でもどこでも、絶対しのをどっかに1人で行かせちゃ駄目だよ。帰ってこないからね」

「分かった」

 何も考えずに承諾する。そりゃ、校内を彷徨って違う校舎まで行くなら顔が知れ渡るのは当然だ。

「ほら、ここが高嶺高校だ」

 気付けば俺は、高嶺高校へ到着していた。

 もう、予想をしていた通りの広さ。今更驚くことは何もない。

 高嶺高校は最近出来たばかりなので、かなり綺麗だ。白い制服がよく映える。

 俺みたいな奴には場違いなとこだが、規定なのだから仕方がない。

 学校には見えないこの建物が、俺が通う高校になるのかと思うと、少し気が引ける。

「真夜」

 校門の前でつい立ち止まってしまった俺の隣で、梨緒が口を開く。


「高嶺高校へ、ようこそ」


 俺の新たな高校生活が、今始まった。

***

「やっぱり同じクラスになったわね、嬉しいわ」

「まぁ、まさかあの迷子と知り合いだとは思わなかったけど」

 俺が担任の先生と梨緒に案内された教室には、やはり姫路空と姫路優がいて挨拶際にアイコンタクトを取った。

 職員室に行った俺が最初に言われた言葉は、歓迎の言葉や自己紹介の言葉でもなく「篠原さんを知っているのかい?」だった。教師側としても梨緒の迷子のことについては問題になっているらしい。じゃあ、これからもよろしくね、という言葉は多分梨緒から目を離すなということだろう。転校生に問題児を任せるとはどうなんだ、と思ったが別に怒ることでもないので得に何も言わなかった。

 クラスメイトたちの反応は俺の思った通りだった。俺の服装や雰囲気に怯える奴らが大抵だったが、悪い奴らではないようだ。挨拶で俺がその類の不良ではないと理解してくれたらしく、話しかける程度はしてくれるようだ。友達に発展してくれる奴がどれだけいるかは知らないけれど。

 丁度よく俺の席は一番後ろの窓側になった。夏になっていくと日差しが少々気になるがカーテンを閉めてしまえば風通しがいい最適な席だ。

 梨緒は「迷子ちゃん」というよく分からない権力を使って、俺の隣の席を確保した。クラスメイトも担任も、梨緒のそんな勝手な行動を何事も言わずに見過ごした。それほど梨緒には手を焼いているのだろう。

「やっぱり、って何だよ」

「女の勘ね」

 授業は俺がいたところより遅れていたため・・・多分丁寧にやっているのだろう・・・授業はほとんど集中せずにいれた。姫路たちと話す俺を見て、最初梨緒は戸惑っていたが朝電車で会ったことだけ告げたらすぐに納得してくれた。

 前から思っていたことだが、梨緒はあまり物事に対して深追いはしないらしい。まぁ、確かに野朗の痴漢とか同級生の売春とか話されても、梨緒が対応に困るだろう。

 それより俺はこのクラスになってちょっと気になったことがあった。

 俺が今までいた高校では、双子や従兄弟と言った親族はクラスが別々だったはずだ。なのに、姫路たちは同じクラスである。私立高校となると、やっぱり規則が違うのだろうか。

 だが、昼休みまでいてこのクラスでのこいつらの立場がよく分かった。

 彼女たちは姫路グループの子息だ。それでいて容姿端麗ときた。クラスメイトが身を引かないわけがなかったのだ。

 それはクラスメイトだけに限らず、先生たちもらしい。高嶺高校の理事に関わっている高嶺の親族は、姫路と親交があるらしく多少の費用も姫路から出してもらっているらしい。つまり、姫路は高嶺と同様に言葉1つでこの学校を操れるということだ。

 姫路たちはかなり仲がいいし、違うクラスなんて許さないだろう。入学時にそれを教師に告げていれば、無条件で2人は同じクラスになる。

 全く・・・金持ちというものは。

「すみません、矢吹真夜さんはいらっしゃいますか?」

 と、クラスのドアに、かなり目立つ金髪の奴が現れた。すぐに社井だということが分かる。

 黒髪の日本人の中での1人だけの金髪はかなり目立つ。ついこの間知ったことだが、社井はやはりハーフらしい。

 転校生をいきなり呼び出すなんてとクラスメイトたちは少し動揺していたが、とりあえずということで俺のほうを見て手招きしてくれる。

 俺は話していた姫路たちと梨緒に悪いと言いながら、社井がいるほうへ歩いていった。

「なに?」

「空悟さんから回ってきた情報です。阿九根さんに回してください」

 学校での連絡事項は3年から1年へ連絡網のように回されて伝わる。

 アウトロウとしての情報はどういう経緯かは知らないが、3年生の空悟に渡り2年1組の社井から順番に俺、理人へと回る。それから理人が灯へと伝える。璃月に関しては学年問わず社井が担当しているらしい。

「率直に言います。3年生で1人また行方不明者が出ました」

「何だと?」

 行方不明者が増えた。今度は3年生。

「如月美羽・・・水泳部エースの生徒です」

 そういえば俺、行方不明1人目の生徒の名前を知らないな・・・後で聞いておこう。

「彼女は・・・えっと、夜遊びが酷かったらしいです。毎晩違う男の人を連れ込んでたみたいで・・・成績も悪かったみたいですし・・・何か被害者の統一性がないんですよね。渡辺香織は成績優秀でしたし」

 ・・・アウトロウにはまだ、渡辺香織のカンニング情報は流れていないようだ。もしかしたら時間の問題かもしれないが。それでも、その理由までは行き着かないかもしれない。


















更新が遅れてしまって本当に申し訳なく思います、ごめんなさい

下書きのほうが全然追いつかなくてですね・・・^^;w


でも、そろそろ未登場の皐ちゃんと天内小夜ちゃんと黒宮綾ちゃんが入りそうですっ!

登場が遅れてしまって本当にごめんなさい!キャラ設定とかを考えながらどういった形で登場させたらいいかとかいろいろ考慮してたらつい遅れてしまう形になっちゃいました・・・


もうすぐ「まだ未登場」を消せると思うと気分が上がる思いですw



長編になりそうな勢いですが、飽きずに呆れずによろしくですww

Re: OUTLAW 【第2部 START☆】 ( No.95 )
日時: 2013/03/27 08:04
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

 姫路は口が堅いほうだろうし、俺も言いふらすつもりはない。しかも、姫路は理事長室の前でと言った。つまり、理事長たちでしか知りえないことということだ。なら、一般生徒に情報が流出する可能性は低い。

 行方不明者の1人目のことはよく知らない。もし、そいつも成績が悪い奴だったら、この行方不明事件の標的は成績が悪い奴ということになる。

 ということは、まずは1人目について調べる必要がありそうだ。

「分かった、理人に伝えとくよ」

「よろしくお願いします」

 別に1人目を調べるためには俺1人で充分だ。他の人の手を借りる必要もない。

 とりあえず連絡事項を回すのが先だ。今梨緒に言うとなると、姫路たちにも聞かれてしまう恐れがある。アウトロウの情報を流すのはまずいはずだ。

 社井は笑顔で頭を下げながら自分のクラスへと帰って行った。俺も理人の7組へと向かう。

 高嶺高校は1クラスの教室が馬鹿みたいに広い。1つの校舎ごとに学年クラスは1〜4組が3階、5〜7組が4階となっている。1階と2階は特別教室で埋まっているようだ。

 俺みたいな転校生が目立たないわけもなく、廊下を歩くと視線が痛い。

 普通にしたほうがいいかとはよく思うけど・・・でももうやめられねぇし・・・。

 階段を上がり7組の教室へと着く。

「阿九根理人、いる?」

「保健室だと思うけど」

「そか、ありがとな」

 知らない奴に適当に聞き、理人が教室にいないことを確認する。

 保健室って・・・あいつ怪我でもしたのか?

 2年生の校舎の保健室は美人の保険医がいることで有名らしい。フェミニストのあいつのことだ、もしかしたらそれ狙い・・・?

 不謹慎にそんなことを思いながら、俺は1階の保健室へと向かった。4階から1階へ降りるのは、酷く面倒だったが後の休み時間に行くより時間が長い昼休みに行ってしまったほうが効率的だ。しかも理人はこの後杵島に伝えなければならない。学年も違うのだから時間はたっぷりあったほうがいいはずだ。

 別に疲れたりなんかはしないのだが、本当に面倒だった。

 やっとのことで保健室へ着いて、一番最初に抱いたのが不信感。

 明らかにおかしい。何故、保健室がこんな女の声で満ち溢れているんだ?やけに猫撫で声で気持ち悪いし、絶対的に入りたくなかった。

 本当に理人がここにいるのか?少し見ていないようだったら即座に撤退しよう。

 俺は1つ深呼吸して、保健室のドアをがらっと開けた。

「理人くん、大丈夫〜?」

「うん、大丈夫だよ。ちょっとした掠り傷だから」

「本当?私たちに気を遣わなくていいのよ?」

「むしろ君たちにそんなに心配をかけてしまったことを残念に思うね」

「やだ、そんなの当たり前じゃない」

「そんなこと言ってくれるなんて、嬉しいな」

 ・・・話しているのは理人なのに、それに返事をする女は全員別人ってどういうことだ。

 椅子に座っている理人に群がる女たちは、どれも可愛かったが全体的に梨緒のほうが勝っているように思えた。

 入ってきた俺にも気付かないってどういうことだ、と思いつつ状況を見る。

 確かに理人は怪我をしているようだ。手の甲なんてどうやったら怪我できるんだか。

「あれ、真夜じゃないか。どうしたんだ?怪我でもした?」

「えー、理人くん、この子誰ー?」

「カッコいい、ていうか可愛い感じだね。理人とは違うタイプってゆーか」

「初めて見るー、かっわいいー。ねぇ、お名前はぁ?」

 おい、お前ら。さっきまで理人に夢中だったじゃねぇかよ。生憎俺は、お前らみたいなやつは好きじゃねぇんだ。

「今日入った転校生だよ」

「何で理人と知り合いなのぉ?」

「それは秘密」

「えー、ひどーい」

 うざってぇ、よくこいつ相手してられんな。

 非常に喋りたくないのだが・・・。

「こーら。怪我人以外は帰りなさいって言ったでしょう?」

 と、奥にあったカーテンから、1人の女性が現れた。

 美人って感じで、巻いてある黒髪が妙に色っぽいそこらの発情期の犬ならすぐにでも飛び掛かってしまいそうな危ない女だと思う。俺の好みではないが。

 雰囲気で生徒ではないことはすぐに分かったし、白衣を着ているからここの保険医だということも分かった。この人なら「2学年の校舎の保険医は美人だ」という噂も納得できる。

「いーじゃない、少しくらいー」

「駄目に決まってるでしょう。怪我したのは理人くんだけなんだから、付き添いのあなたたちはもう教室に戻りなさい。昼休みも終わるわよ?」

「けちー」

「和泉先生だけずるーい」

「でも、先生の言う通りだよ。俺も、俺のせいで君たちが怒られるなんて嫌だから・・・ね?」

 何だ、こいつ。フェミニストだとは思ってたけど・・・。

 いやだからと言って引いたりはしないけど、俺には絶対できねぇことだな・・・憧れたりなんかしねぇが。

「うーん・・・理人がそういうなら仕方ないかぁ・・・」

「教室で待ってるからねっ」

 と、最早聞きたくない言葉を口々に言いながら、女たちは保健室を出て行った。

「あなたも大変ね、毎日これじゃ疲れないの?」

「全然。女の子に優しくするのは当たり前ですから。それに和泉さんにこうして癒してもらってるしね」

「あなた変わったわね」

 さすが大人、とでも言うべきか、それとももう慣れているのか、理人の口車に乗らないのは大人の余裕だと思う。

 変わった、と言えるということは、理人は昔はこんな性格じゃなかったということか?・・・どんなだったんだろう。というか、何故それをここの保険医が知っているんだろう。

 和泉という保険医は、消毒液を持ちながら理人の隣へ座った。

 絵になる2人だな・・・と思いながら、その思考が危ないということを悟る。教師と生徒なんて、禁断の恋まっしぐらではないか。

「それで?そちらの転校生さんは、どうかしたの?」

 不意を突かれて話題が飛んできたことに、俺は内心ビックリしながら答える。

「いや・・・理人に用事があって」

「俺に?あぁ、そういうことか。じゃあ待たせてしまったね、悪いことをした」

「あら、駄目よ。まだ消毒終わってないんだから」

 立ち上がろうとする理人を、すかさず止める保険医。

 理人はすぐにアウトロウ関連だと分かったらしいが、傷の手当なら仕方が無い。昼休みはあと数分で終わるのだが・・・、まぁいいとしよう。

「全く。転んだ知らない女の子を庇って壁に掠るなんて。格好がつかないわよ?」

 つまりこいつは女を庇って怪我をしたのか。

 本当に典型的な王子様気質だ。知ってる奴ならともかく、知らない奴なんて。

 こいつはただ、女に極端に優しいだけなのかもな・・・。

「そんなのどうでもいいですよ。女の子が怪我しなくて済んだのなら」

「女遊びが酷いと後悔するわよ?女は怖い生き物なのだから」

「嫌になる程知ってますって」

 そりゃこんだけ女といれば分かるだろうな。

「転校生くん、お名前は?」

「あ、えと、矢吹真夜です」

「あら女の子みたいね」

「・・・よく言われます」

「可愛いわ」

「・・・よく言われます」

 くすくすと先生は笑いを殺す。

 何だか高嶺に似てるな・・・ムカつくとことか、妙に色っぽいとことか、ムカつくとことか。

「私は第二学年養護教員早乙女和泉よ、よろしくね。和泉先生って呼んでね」





























コメントくださいっ

Re: OUTLAW 【第2部 START☆】 ( No.96 )
日時: 2013/03/27 08:28
名前: 金平糖 ◆abwIid9M2w (ID: EfKicuSN)

理人wwwテラ理人wwwすいません、ちょっと理人が別の意味でツボにはまりましたwww
そして理人に対して冷静なツッコミと何気なく梨緒が一番可愛いと言ってのける真夜君には頭が下がります。

Re: OUTLAW 【第2部 START☆】 ( No.97 )
日時: 2013/03/27 10:19
名前: ルゥ (ID: 7SSNns1j)

おいおい理人さんよぉww
学校でウハウハとは一体どういう了見だい?www
そしてそんな状況を目の前で見つつも梨緒ちゃん一直線の真夜に腹筋崩壊ww
もうダメだww笑い過ぎて一瞬死の扉を見た気がするw

そっかぁ…狛はハーフかぁ
お母さん似かな?お父さん似かな?どっちなのか楽しみですww
綺麗な外人お母さんもいいけど、カッコいい外人お父さんもいい気が……

生徒行方不明事件やらキャラクターやら気になるものが一杯で楽しいです!!
体調に気を付けて、頑張って下さい!
くれぐれも、病気などにはかかりませぬよう!


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