二次創作小説(映像)※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

機動騎士ガンダムInceptor(インセプター)
日時: 2015/07/25 13:01
名前: Laevatain (ID: rZuUN0S4)
参照: http://laevatain1408.blog.fc2.com/

今までのガンダムシリーズ(主に一年戦争以降からの時代観)を踏襲して
作成したガンダムの二次創作になります。

作成者は妄想大好きなおじさんです。

こんなつたない小説ですが、お付き合いいただければと思います。

STORY
かつて、人類は母なる大地「地球」を方舟に生活していた。
だが、その過剰な人口はやがて「地球」を取り合い、争いを引き起こした。
そして宇宙に生活圏を拡大させてもなお、「地球」をめぐる争いは終わらなかった。
やがて「地球」は人類の手によって汚染され、醜くなっていった。
人類は相談し、「地球」を巣立ち、新たな新天地「火星」に生活圏を移す。
それから約2世紀。
銀河系第35宙域管轄コロニー「サイドアルファ」。
ここにコスモポリスとして従事する青年「アレス・ウィザール」
彼と1体のMSの出会いから、全ての歯車は動き出す。
絶望の運命を希望の未来へ変える歯車が・・・。

—人は、誰かを守るために、「騎士」となる—

用語
セカンド・ノア(第二の箱舟)
第二の地球。火星をテラフォーミングし、地球と同じ環境にした惑星である。

ロスト・ガイア(失われた楽園)
過去の地球。過去の大戦やMSによる戦争により、自然環境コントロールが乱れ、化石燃料は
潰え、汚染されて人類が住めなくなった地球。火星移住から2世紀後、大気は完全に無くなり、
かつての青く美しい星は黒ずんだ地表が見える無残な姿となった。


GU(ギャラクシーユニオンズ:銀河連合同盟)
銀河惑星間での統治が進み、各惑星の政府による政治・法律上におけるルールを確約させる
政治機関。とどのつまり現代の国際連合。
現在は革新派(自由な未来と悪質企業の根絶を訴える派閥)と穏健派(現在の企業紛争を
黙認する派。闇献金を受け取る悪質な議員が多い。)の争いが激化している。

企業
地球時代における国がつぶれてから、企業が力を持つようになり、もはや企業が惑星政府と
同じ権力を持つようになった。それにより、圧政や重労働なども問題になり、
GUが企業の暴走を抑えようと奔走している。しかし、反発する企業も少なくは無い。
現在は各企業間における未統治惑星の資源獲得戦争や紛争が後を絶えない。
そのため、軍備拡大を急ぐ企業が増えつつあり、各企業がGU軍へ宣戦するのではと危惧されている。
そしてそれは、30年前の第一次企業戦争により現実のものとなった。

コスモポリス
GU管理下の宇宙警察機構。

オーディン
GU軍第01強襲攻撃部隊。
革新派の傘下軍であり、自由を目指し戦う軍。市民からはヒーロー扱いされている。
母艦はたった1隻だが、その実力は計り知れない。
母艦は強襲戦闘艦「バハムートゼロ」

プロジェクト ライト&ダークネス(光と闇の機兵計画)
「第二次企業戦争」において、アライアンズに対抗すべく計画されたGU軍極秘新型MS開発プロジェクト。
ライトサイドとダークネスサイドのコンセプトから成り立つ。
ライトサイド セイントガンダム
ダークネスサイド ナイトメアガンダム
この二機のMSを基盤に、アライアンズ撃破のきっかけを生み出そうとしていた。
このプロジェクトの進行部隊はオーディンである。

企業戦争グリードウォー
企業がGUに反発し、起きた戦争。
第1次企業戦争では、全企業が一斉に武装蜂起し、GU軍との全面戦争となった。
GU軍が市民の安全と自由を主張し、企業側が利益の優先、そのための人命の犠牲は必要経費だという反論。
もちろん企業の横暴を市民が許すはずが無い。各企業の従業員は一斉にボイコットしたため企業側の戦力補給がストップ。
企業は窮地に立たされる。
そして企業は、禁断の大量破壊毒物兵器による非人道的な虐殺を敢行。サイドクスィーとサイドツェーラを毒殺し、壊滅させた。
この悪行により世論は大激怒。GU軍はこの後押しもあり、ついに企業側を屈服させる。企業側も降伏を宣言。
これにより、18年間に続く第1次企業戦争は終幕した。
それから10年後、ちりばめられた解体企業を収束させて、新たに3つの大企業が設立される。
その企業達が軍事同盟と産業通商同盟を締結。組織名をアライアンズとする。
アライアンズは、約2年前にGU軍に向かい「復讐のときは来たれり!」と宣戦を布告。
こうして、第2次企業戦争の火蓋が切って落とされたのだった。

モビルスーツ
宇宙開発時代と呼ばれる「宇宙世紀」時代において勃発した、
「一年戦争」と呼ばれる戦争により生まれた人型戦闘兵器。
宇宙の微細粒子により、レーダーなどの無視界戦闘が不可能となった本戦争にて、
有視界戦闘の基盤を確立させた兵器でもある。
特に後述する「ガンダム」と、当時戦争を繰り広げた「ジオン公国」は、
歴史の教科書にその名を刻まれる程、
人類とモビルスーツの歴史を学ぶ上では欠かせない存在。
その後、様々な企業においてモビルスーツは建設用・土木作業用・宇宙開発用などが開発され、
あらゆる分野で人類の開発を支えてきた産業機械となり、今日の宇宙経済の基盤を固めている機械となった。
個人で所有するものも珍しくなく、モビルスーツは「兵器」としてではなく「ありふれたもの」として、
人々に浸透している。

ガンダム
「一年戦争」と呼ばれる、モビルスーツ最古の戦争において、
地球連邦軍が開発した高性能モビルスーツ。
さまざまな派生機種が存在する、由緒ある機体。
現在ではガンダムの特徴的なVアンテナとフェイス、G-ロンダクトプログラム
テクノロジー社が販売するGUNDAM OSを搭載した登録商標商品として流通しているモビルスーツを指す。
ガンダムは主に、フロンティアワークショップ社が
生産、販売を行っている主力商品として認知されている。
独占商品ではなく、さまざまな機種が他企業からも
進出しているが、ガンダム単体の性能では
フロンティア社の右に出るものはいない。
そのため、他企業はガンダムを上回る製品の開発に
奔走するケースが後を絶たない。
ちなみに、ガンダムは大衆の間では最も馴染み深く、
モビルスーツの象徴とも呼べる機体である。

ジェネレータ技術
ムーンレィス(∀ガンダム時代)戦乱後に始まった、宇宙開拓時代の中で新たに見つけた鉱物。
そこには、未知のエネルギーが詰まっているものだった。
その鉱物の名は「エーテライウム」。
このエーテライウムから抽出したエネルギーを「エーテネルゲンエネルギー」と呼ぶ。
エーテネルゲンエネルギーは、簡単な電気変換回路により電力へと変換される。
しかしその発電規模が、既存の化石燃料のおよそ3000倍〜5000倍に相当するものであった。
これにより化石燃料・原子力により起動されていた各機械のジェネレータは淘汰され、
エーテネルゲンエネルギー式のジェネレータ「エリクシル式ジェネレータ」へと移行される。
また、エーテネルゲンは人体への影響がほぼ無く、安全に使えるものとしての評価もあり、
瞬く間に時代はエーテネルゲンエネルギー循環型社会へと変貌する。
エーテライウムにはもうひとつ特徴があった。それは「精錬」に伴う「エネルギー付与」。
エーテライウムは加工のしやすさも売りであり、鉄などの金属の添加物にエーテライウムを数%含ませて精錬させると、
精錬された金属にエーテネルゲンエネルギーを帯びた状態で精錬することが出来るのだ。
これもあり、たやすくなおかつ大量にエネルギーの元を生産できるとして、化石燃料の枯渇に伴う人類の衰退の心配は完璧に無くなり
人類は安心して宇宙開発を行うことが出来るという現在の社会形態が確立したのである。

※この作品におけるビームサーベルは、ビームの噴出によって刃が形成されるものではない。
ビーム出力の上昇によって、ビーム噴出を維持することが
テクノロジー上不可能になったからである。
この作品でのビームサーベルは、折りたたみ式アンテナのように、
伸縮可能な棒状の兵装の表面からビームが噴出し
形成されるものである。
ビームサーベルにも耐久性があり、出力の低いビームサーベルは、
鍔迫り合いの際に負けて破損する可能性もある。

なお、このガンダムはジャンプ漫画の根源である
「努力・友情・勝利」をモチーフにしております。
何卒ご容赦ください。

ツイッターやってます。ご意見ご感想はこちらまで。
要望なども受け付けております。
上のURLからどうぞ。

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28



Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.86 )
日時: 2013/09/12 22:37
名前: laevatain (ID: nYLbaC1V)


第三十二話 堕落〜虚ウ髑髏ガ彷徨ウノハ何処〜 後部

ナイトメアの前に現れたのは、紫の道化師

アーガイグであった。

「クククククククククク。久しぶりだな死神を駆る若者よ。
今日はお仲間はいないのかな?ククククククククク。」

不気味な嘲笑。

「今日は、ちょっとみんなボイコットしててな…俺が仕方なく、さ。」

「残念だなぁ。私の友人達を紹介しようと思っていたのだが。」

「生憎だが、その必要はない!」

ナイトメアが、アーガイグに切りかかる。

その瞬間。

まず、目の前に炎が巻き起こる。
炎は憎しみを映し、うねりを上げて温度を上昇させる。

炎の中から現れたのは、灼熱の紅きガンダム。

インフェルノガンダム。

「燃やし尽くすぜぇぇぇ!俺の憎しみの炎を味わえ!」

インフェルノガンダムは、手に持っていたアックスを振り下ろす。
ナイトメアは、攻撃体勢の姿勢のせいで、ブラット・ペインの刃で受け止めざるを得なくなる。

激しい金属音と火花。

「クククククククク!燃えろォォォォォォォ!」

肩部に搭載された火炎放射器「サラマンダーブレイズ」から、灼熱の炎が迸る。
炎はブラッド・ペインの刃に当たり、見る見るうちに刃は赤熱していく。

「はあああああああああ!」

赤熱していた刃に、アックスの一押しを加える。

ブラッド・ペインの刃は、なすすべなく切り落とされた。

「なに!?」

驚きを隠せないアレス。

次に右から感じるのは、冷厳なる冷気。
全てを拒絶するかのような氷。

氷が砕かれ、現れたのは冷厳の蒼きガンダム

ネーヴェガンダム。

「全て…凍てつきなさい!」

瞬間、バックパックに搭載されていた氷結ビーム兵器「エンリール」から、青白いビームが放たれる。

ビームは、ナイトメアの足をなぞるが、効果はない。

「!?な、なんだこれは!?」

アレスが一瞬戸惑う。

「かまうことはねぇ!目の前の紅いガンダムに集中しろ!」

次の瞬間、ナイトメアの足元から強烈な冷気が発生する。
ナイトメア内部のコンソールから、脚部の異常低温の警報が鳴り響く。

「な、なんだってんだ!?」

アレスが目にしたのは、氷漬けの脚部。

もちろん、脚部を動かすことはできない。

「あ、足が!」

油断したナイトメアを再びエンリールの氷結ビームが襲う。

次は両腕にビームが当たる。

「し、しまった!このままじゃ!?」

次の瞬間、マニュピレータに異常低温警報。
もちろん、両腕は氷漬けとなり、四肢を封じられた形のナイトメア。

「くそっ!」

次にナイトメアを襲うのは、雷撃。
落雷が、ナイトメアに降りかかり、電撃による衝撃がコクピットを揺らす。

「ぐああああああああ!」

雷鳴轟く閃光。
雷鳴の中に現れたのは、黄色のガンダム。

ヴォルテークスガンダム。

「アタシの怒りで、死神を葬ってやるよぉ!」

ヴォルテークスガンダムの背後に携えていた巨大な対艦剣が振り下ろされる。
対艦剣からは、エネルギーがまるで棘の様に現れ、そこから電気らしきエネルギーの火花が見えている。

「七支刀の威力、教えてやるよ!」

剣閃が見えない。刹那の一瞬。

氷漬けになっていたナイトメアの四肢を瞬時に切り裂き、ナイトメアは達磨状態となる。

「な、なん…だって!?」

絶望はまだ続く。

ナイトメアの胴体の背後から、巨大な鉄球が襲い掛かり、押しつぶさんばかりの衝撃がアレスたちを絶命に追い込もうとする。

「うああああああああああああああああああ!」

背後に現れたのは、嘆きの大地を象徴するかのような翠色のガンダム。

フォンドゥムガンダム。

「僕たちの悲しみを受けるがいい、死神!」

その後、巨大鉄球による矢継ぎ早の打撃がナイトメアの堅牢なゼウスメタル装甲を紙くずのようにへこませていく。

「俺は…死…ぬのか!?」

一瞬だけ、アレスはアウェイカーを開眼する。

その目の前に映ったのは、もはや人間ではなかった。

憎しみの炎の竜。

冷厳なる氷の魔女。

怒りの雷の野獣。

無慈悲なる大地の悪魔。

死神は、この怪物たちに食われたのである。

「あ…!ああああああああ…!」

目に映る怪物から放たれる負の感情をモロに受けてしまうアレス。

震えが止まらない。

怖い。怖い。怖い。

「クククククククク。さあて、青年よ。私から君へ【試練】を与えよう。
彼らを倒せるかな?この【フィアーテイマーズ】の四天王【エレメンタルガンダムズ】を!
まずは私からの餞別だ。これを生き残れなければ、それまでだと言うことだ。
それでは、健闘を祈る。」

アーガイグのビームライフルから放たれるは残酷な道化師の嘲笑。

死神の胸を無数に貫き、あざ笑う。

—回ル、回ル、狂々ト。

絶望ノ風車ハ、狂々ト。

凶気ト殺意、悪意ト憎シミ。

負ノ感情ニ、身ヲ委ネ。

人ガ生ミ出シタ悪魔ノ子。

彼ラガ見ル夢ハ何?—

アレスは、朦朧とする意識の中、自分の非力・弱さを嘆いた。

エウリスがアレスに呼びかけながら、ナイトメアは落下していく。

「アレス!アレス!しっかりしやがれ!アレスーーーーーー!」

—死神、砂漠の大海に伏せ、その役目を終える…—

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.87 )
日時: 2013/10/06 09:36
名前: laevatain (ID: u7NWpt/V)


第三十三話 答〜青年、追憶の海から何を思い、見出すのか〜 前部

—虚ろ往く死神、人から出でりし悪魔によりその魂を喰われにけり—

アライアンズの隠し札であった、G.U.政府穏健派により手に入れた強化人間「目覚めし生けるアウェイキニングアンリミテッド」。
この強化人間兵による精鋭部隊計画の一環として感情を研ぎ澄まされた人間によるMSパイロットの育成計画があった。

それが「恐るべき魔獣使いの子たち計画プロジェクト・フィアーテイマーズ」であった。

その中から選抜された4人の少年少女は、専用のガンダムを駆り、人類に負の感情と恐怖と死を与える存在となるべく、
感情を削られ、負の感情を増幅させられ、ひたすらに破壊・破滅・殺戮・絶望などを与えるために、その殺意を研ぎ澄ませていった。

そして、その感情は、迷える死神を食らうほどに強くなっていた。

4機のエレメンタルガンダムにより、大破したナイトメアガンダム。
落下するエリアは海であり、ナイトメアの腕・足から順に、胴体部も海に沈んでいく。

アーガイグからのビームライフルは、幸いコクピットにダメージを与えていなかった。
アレスは、辛うじて一命を取り留めてはいた。
しかし、戦いの衝撃と、フィアーテイマーズの少年少女から感じてしまった負の感情に当てられたのか、
アレスは気を失っていた。

「クソ!アレス!アレス!しっかりしやがれ!
やべえ!海水がコクピットに入ってきやがる!」

沈む速度が上がると同時に、コクピットの胴体に軋みが生じる。
水圧により、機体のもろい部分から凹んでいく。
そして、その隙間から水が入ってきてしまっているのだ。

「まずは、俺がシャットダウンしないように非常電源に切り替えるか!」

エウリスが非常電源に切り替え、何とか電源エリアの破損に伴う自身のシャットダウンは免れた。
しかし、ナイトメアには、AI自律モードが無い為にエウリス単体でナイトメアを動かすことはできない。

「このままじゃ…!アレス…!」

軽く諦めかけたエウリス。

その中

ナイトメアの胴体部に衝撃が走る。
水圧で凹んだ衝撃とはまた違う感覚であった。

「うぉ!?な、何だ!?」

ナイトメアの胴体の背後には、大きな魚のような影があった。
そしてそれは大きく口を開き、ナイトメアの胴体を吸い込んでいく。

「うぉぉぉぉぉぉぉ!?」

ナイトメアの胴体を飲み込んだ大きな魚。
その後、その影はゆっくりと泳ぎを再開し、海底を回遊していく。

一方、バハムートゼロのオーディン部隊は—

前方から、ギャン部隊がオーディンの撃滅に当たるため、接近しつつあった。
数は200。
バハムートのMS部隊は、セイントガンダムを除くすべてのガンダムが連戦による破損にてメンテナンス状態である。
出撃可能な機体はセイントガンダムだけになっていた。

「艦長!私が足止めします!そのうちに…!」

エリュシアが出撃しようとした時、

「ダメだ!君だけは出撃してはならない!
アレスが心配な気持ちはわかる!あいつを探したいのもあるんだろう!?
だが、今は一人だけでも多くこのエリアを突破しなければならない!
アレスは…!俺がなんと言おうと振り切って行くつもりだったのだろう。
だから行かせた!あいつなら、必ず生きて戻ってくる気がしてるしな…!
だけれど、そんなあいつから【エリュシアを頼みます】って伝言をもらってるんだ!
だから…!君だけは行かせられない!」

ザック、アレスから託された言葉と思いを伝える。

「そ、そんな…アレス…!?」

エリュシアは、真実を告げられてその場に座り込んでしまった。
もう戻らないかもしれない大切な人。
エリュシアの瞳から、涙が零れ落ちる。

「エリュシア、しっかり…!
これは、みんな聞いていたことなの。
アレスは…守らせてくれって…!
彼の気持ちを無駄にしないために、私たちは生きなきゃいけないのよ!」

ジェーンが、エリュシアを抱きかかえて、デッキドックの椅子へ運ぶ。

瞬間、船体に衝撃が走る。

いよいよ、ギャン部隊からの攻撃が始まったのだ。

ギャン・テンプルコマンド標準装備であるバックパック搭載200mm実弾砲「トロンペッテ」。
遠距離砲撃に優れた武装であったため、この武装からによる衝撃が傷だらけの竜王を狙う。

爆風のエリアを駆け抜けるバハムートゼロ。

しかし、背後からエレメンタルガンダムの4機が接近する。

「な、何だあいつらは!?」

ザックも知らない機体。

どうやら、この計画は穏健派の中でも相当機密性の高い計画だったようだ。

「ヒャッハアアアアアアアアアアアア!一番槍は俺だぁ!」

インフェルノガンダムが、バハムートゼロへ肉薄しようとした矢先、

上空からの剣撃が振り下ろされ、インフェルノガンダムがビームアックス「アメン・ラー」にて受け止める。

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.88 )
日時: 2013/10/08 00:09
名前: laevatain (ID: u7NWpt/V)

第三十三話 答〜青年、追憶の海から何を思い、見出すのか〜 中部

現れたのは、

宇宙蛮族「センチュリオンズ」所属、男性部隊【ブラッドドラゴン・クルセイダーズ】指揮官MS、ライザード。

デューク・ストレインであった。

「ん?こいつは…!?」

デュークも身に覚えがない機体。

「デューク!そいつらは俺たちが受けた強化人間プロジェクトの発展系企画により生まれた機体だ!
中身は強化人間!機体もそいつら用にチューンドされている!気をつけろ!」

「そうか、情報すまん!助かるぞ、我が兄タイガーよ!」

デュークの機体技能はベテランの域に到達しているため、いくら最新鋭の試作機体だろうがそれによる
アドバンテージをも軽く消し去ってしまう。
しかし、歴戦の勇者であるデュークは油断せず、戦っているMSの特性・主体武器・戦闘スタイルを分析するため、
牽制攻撃にシフトし、相手の情報を引き出した上で有利な戦闘に持ち込もうとする。

「グントー!ヴォーノ!俺に続け!奴等の戦闘スタイルを割り出す!」
「「はっ!!」」

ブラッドドラゴン・クルセイダーズのサブリーダーである、

竜牙ドラゴニック・ファング】ヴォーノ・ロドリゲス。
竜眼ドラゴニック・アイズ】グントー・ポー。

そして【竜覇将ドラゴニック・コンカラー】デューク・ストレイン。

彼らの前では、特殊兵装にて身を固めたガンダムでも赤子同然である。

合流してきたネーヴェ・ヴォルテークス・フォンドゥムの各種ガンダムも、インフェルノに続き応戦する。

「私の冷気に凍えるがいいわ!」

ネーヴェが、アイスウィップ「コールドチェーン」を展開。
グントーが駆る銀のドラーケルに襲い掛かる。
ウィップから迸る冷気を、グントーのバイザーは見逃さなかった。

バイザーに映し出されるのはネーヴェが取り出したウィップより放たれる冷気。
それが想定上の解析として考えられる状態と成分、また、その推定温度などが現れる。
それを読み取り、グントーはネーヴェガンダムの特性を把握する。

(なるほど、あいつのガンダムは氷属性…全ての攻撃に、氷結の恐れがある。
ならば、機体熱を上げて氷を溶かしていくのがまずは対策になるか。
推定温度は-150℃。ならば…表面温度は80℃以上が望ましい。
ビームスキン展開で表面温度は90℃前後。問題は無いな。)

ネーヴェがウィップで、銀色のドラーケルに打撃攻撃を浴びせる。
しかし、ビームスキンによる表面のビームコーティングにより、打撃攻撃によるダメージは微々たるものであった。
さらに追加効果の氷結でさえ、表面温度の上昇によりその特性を上手く引き出せない。

「な…なぜ凍らないの!?」

「思慮が甘いぜ、お嬢さん。」

一方、フォンドゥムガンダムが、破壊鉄球「ユグドラシル」にて金のドラーケルを狙う。
金のドラーケルは、鉄球をモロに食らってしまう。
衝撃音が、辺りに木霊する。

「僕の嘆きにより、潰れろぉ!」

しかし

金のドラーケルはびくともしていない。

ヴォーノのドラーケルの装甲は、ゼウスメタルと耐衝撃性に優れたバルダー合金の混合金属。
オリハニウム合金であった。
ちなみに、この二種の金属は加工精度と加工難度が非常に高いため、コストも高い。
MS1体分の金属量だと、おおよそに考えて2000ソル(日本円にて約3000億円)である。

攻撃を受ける寸前に、オーバードクロックを発動していた金のドラーケル。

「それだけか?ならばこちらからいくぞおおおおおお!」

ユグドラシルをつかみ、繋がれたワイヤーを振り回してく。
ジャイアントスイングのように、フォンドゥムガンダムをぶん回す。

「はあああああああああああああ!舐めるなぁ!」

振り回し、放り投げる。

空に飛ばされたフォンドゥム。受身を行い体勢を立て直す。
が、その瞬間に、ドラーケルは接近していた。

「遅い!」

「な!?僕の嘆きが効かないのか!?」

接近し、ヒートラージブレード「カッツバルケル」による斬撃格闘。
シールドで防ぐフォンドゥム。姿勢が悪く、反撃ができない。

その頃、ライザードはインフェルノ・ヴォルテークスの二体のガンダムを、相手取っていた。

ビームアックス「アメン・ラー」と、サンダービームブレード「七支刀」による斬撃を
まるで子供を相手にしてるかのように捌き、見切り、切り返す。

ライザードが携えるは二本の折れぬ誇り、ツインビームスレイヤーセイバー「ティソーナ」である。
合体、分離しつ斬閃を受け止め、受け流し、斬り付ける。

斬撃を捌くと同時に発生する火花と金属音が心地よい緊張感を生み出す。
デュークは、自分のペースを快調に刻み続けていた。

「フフフフフ。その程度か?子供たちよ。」

「な!?あたしの怒りが、何故奴を切り裂けない!」
「俺の憎しみに燃え尽きない奴がいるなんて!?」

さらに、バハムート前方に位置取っていたギャン部隊。
これも、精鋭を率いた「ヘル・アマゾネス」部隊により、迎撃されようとしていた。

「さあ、この間の借りを返すよ!ウィオラ、カリディア、アタシに続きな!」

「わかったわ、ウィオラ姉さん!
さあ、ぶっ潰してやるわ!かかってきなさい!」

「フフフ、楽しみましょうね、お姉様達。
では、カリディア=ヴァーミリオン。僭越ながら皆様のお相手をさせていただきますわ。
是非とも、私のテクニックにて満足なさってくださいね。ウフフフフフ。」

真紅の百合三姉妹クリムゾンリリィシスターズの号令と共に、
緋き女戦士たちが、心無き傀儡の騎士団ハートレス・テンプラーズを葬り去っていく。

バハムートゼロに通信が入る。
センチュリオンズリーダー、オーランド=タイガーである。

「お前ら!無事だったか!」

「オーランド様!こちらは大丈夫です!」

アリシアが、通信に答える。

「ありゃ!?アリシアお嬢さん!?
いったいどういうことだ!?亡国の英霊のみなさんはどうしたんです!?」

状況が飲めないタイガー。

「オーランド殿!ここは危ない!奴らの戦闘エリアから脱出してお話しよう!」

ザックからの提案。

「すまねえ!そうしてもらえると助かるぜ、ザック殿!」

タイガーも、ザックからの提案を了承した。

「タイガー!ここは俺たちに任せて、先に行け!
ザック!後で会おう!ここでこの間の借りを返しておくぞ!」

「そういうことだよ、タイガー!ここはアタシらが引き受けたよ!」

各部隊のリーダーも、バハムートを援護するそうだ。

「おし!任せたぜ!さあ、バハムートゼロ!俺たちについてきてくれ!」

センチュリオンズ母艦・ギルガメッシュの先導の元、バハムートゼロは宙域へ離脱する。

—20分前

宙域には、ギャン部隊がまだ展開していた。

オーディン部隊の撃滅のためであった。

そこに殴り込みをかけたのは、紅いMSの軍団であった。

総数で100機前後。

その中で、1機だけ紫色の機体があった。

「さあて、アニキの邪魔をするふざけた企業の犬と腐った政治家のゴミを、俺達がお掃除しなくちゃな!
いくぜ野郎共!オーディンとアニキの助太刀だぁ!」

—おおおおおおおお!—

威勢のいい掛け声と共に、パラリラパラリラと古き時代の暴走族を髣髴とさせるような音を発しながら、
紅いMS部隊は、ギャン部隊を蹴散らしていく。

REV-01-JAJA ジャジャ・ヴァンディット
白兵戦用MS
ビームライフルソード「ラアド」2挺
バックパック搭載ビームブーメラン二枚「ファラス・アルナビ」

リベリタス・レベリオ社の技術サルベージにより復元された旧時代のMS「R・ジャジャ」。
低コストに仕上げ、なおかつ格闘白兵戦に磨きをかけたMSである。
リベリタス・レベリオ社の独自技術である「FWS(フリー・ウェポンズ・システム)」を
いち早く採用した機体でもある。
ビームライフルである主武装は、砲身がグリップに対し真っ直ぐにモード変更でき、
砲身にあるビーム噴霧口からビームエリアを形成。ビームの刃を持ったビームソードが出来上がるのだ。
もちろん、ビームライフルからのジェネレータを使用しているので
出力は据え置き。並みのビームサーベルなら一方的に叩き折ることが可能。
バックパックのブーメランは、中距離での有効性が立証されている武器。
なお、反政府テロリスト「センチュリオンズ」の汎用量産機としてかなりの数が量産されている。
荒くれにふさわしいフォルムに「ヴァンディット」の名により、ならず者MSの代名詞となった。

そして、20分後。

ジャジャ部隊と合流したギルガメッシュとバハムートゼロ。

「アニキーーーー!奴らをギャフンといわせたぜ!」
「アニキの凱旋だぁぁぁ!おめぇらぁ、アニキの護衛をしろぉ!」

ジャジャ部隊はまるで子供のようにはしゃいでいる。

「おーし!お疲れさんだったな!シルビス、サンキュー!
おし、俺もカルハリアスで母艦とバハムートゼロの護衛に回るぜ!」

紫のジャジャが、ガッツポーズをしながら飛び上がる。

「イヤッホゥ!アニキからお褒めの言葉だぁ!」

「やったなリーダー!さすがアニキの舎弟の鏡!」
「俺もリーダーに負けねぇぜ!」

とにかく騒ぐジャジャ部隊。

「な、なんだ…やけにひょうきんな奴らだな。」

ザックは肩の力が抜けたようだ。

「あ、あまり元気なのもね…。
ふう、なんだか可笑しいわね。フフフフフ。」

我慢の限界からか、サフィアから笑みが零れる。

最終的には、みんな笑っていた。

「そうそう、ザック殿!笑顔は大切だぜ!
さあ、落ち着いたらこれまでの経緯をよろしく頼むぜ!」

ギルガメッシュとバハムートゼロは、全速力でサハール=クファール宙域を離脱する。

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.89 )
日時: 2013/10/07 23:54
名前: laevatain (ID: u7NWpt/V)

第三十三話 答〜青年、追憶の海から何を思い、見出すのか〜 後部

—聞こえるは、波の音。
打ち付ける水飛沫。

ここは、何処だ?
俺は…どうなった?

あいつらにやられて…

心が重くなって…

俺…何のために戦ってるんだ?

戦う理由が…見つからない…。

虚しいだけ、つらいだけ、苦しいだけ。

戦いたくない…

薄暗い海の波打ち際で、青年は絶望に打ちひしがれていた—

目を開ける。

そこは、薄暗い、洞窟のようなエリアだった。

「お、起きたかい?青年よ。」

そこには、白髪に、立派な白い髭を蓄えた老人がいた。

「あ、貴方は?…そうだ!ナイトメア!っつっう!」

アレスは状況を把握し、勢いよく起き上がろうとする。
が、激痛が走り、体が思い通りに動かない。

「これこれ!まだ動いてはいかん!
かなりの重症だったんじゃ。無理は禁物だよ。」

アレスの体には、包帯が巻かれていた。
応急処置が施された感じである。しかし、完治はしていない。

「ちゃんとした医療施設や設備がないから、まともな治療はできなかった。
だが、お前さんの運の強さもあって、どうやらまだ死神からのお迎えはなかったようだね。
…そうだ。お前さんに会いたい奴がいるそうだ。ホレッ。」

老人が放り投げた黒と白の球体。

エウリスハロだった。

エウリスハロは空中で起動開始し、アレスに近づく。

「アレス…!アレス!
こんの…!大馬鹿野郎!どんだけ心配したと…思ってるんだ…!」

エウリスの声が言葉になっていない。
本当にAIの癖に、人間臭い部分がある人格だ。

「彼のおかげで、お前さんは一命を取り留めたんだ。感謝することだね。」

老人の一つ一つの言葉が、アレスには含む意味を持っていることを感じていた。

—まだ、俺は死ぬべき時ではない?—

「失礼ですが…ここは何処でしょう?
そして…貴方は…何者ですか?」

アレス、恐る恐るの質問。

「ふむ…なあに、私はこのとおり、ジャンク屋のジジイだよ。
ここは私の隠れ家にしてジャンク屋のガレージさ。
洞窟から森へと続くこのエリアは、磁場も強くて余計な奴らには見つからない。
私はここで、日々の現実から逃げて、思考と空想に思いを馳せるんだ。
…どうすれば、人類の歴史から争いがなくなるか、とね。」

老人は、天を仰ぐようなモーションで自身の考えを空に浮かべる。

「ああ…今夜はすごくよい星空だ。ほら、見てごらん。
そして目を閉じるんだ。そうすれば、お前さんの答えも、見つかるかもしれない。」

時刻は、夜になっていた。

空には、満点の星空。

サファール=クファールは、月に似た衛星が4つ存在する。
月の光が、優しく洞窟を照らし出す。

アレスは目を閉じた。

眠かったわけではない。

柔らかく、物憂げな月の光に導かれるように、力を抜いて、目を閉じたくなったのだ。

—アレスはまた、薄暗い海岸にいた。

そこに、月の光が差し込む。

光から見えたのは

自分の恐怖、悲しさ、苦しさに逃げようとする自分。

「これ…今の俺?」

自分自身を見せ付けられ、困惑するアレス。

「もう嫌だ!誰も傷つけたくない!誰も殺したくない!放っておいてくれ!」

失うことを恐れ、叫ぶアレスの心の闇の人物。

そこにアレスの心へ、声が語りかけてくる。

—迷いがある中で俺に勝てるとでも思うな!自分の中で、その答えを見つけることだな。
いつか…その迷いが自分の足を引っ張ることになる。せいぜい足元をすくわれぬようにな—

—綺麗事と殺戮は水と油…。結局交わらず、互いに否定しあうからこそ矛盾を感じる!
互いに否定しあうから実力を出せず、疑問を感じ、そして争い合い死んで行く!
心の奥にある闇に身を任せ、全てを引っくり返さなきゃなぁ!
青年よ、お前には…【意志】が!【覚悟】が!足りないんだよ!—

心の中で引っかかっていた言葉。

そして、光の中で見るもの。

犠牲になっていった人たち。

ロン=イシューリー。

エインフェリアの人々。

両親。

祖父。

養夫婦。

そして、心の支えになっている人たち。

同期のガンダムチームメンバー。

マルス。

バハムートクルー。

ザック。

そして…

最後に微笑むのは

エリュシア。

—アレス。

全員の幻が、アレスの頬を撫でては消えていく。

—大事なのは、自分の信じるものを貫くことだよ。
君には、その強さがある。私たちはそれを守りたくて
君を養子に入れた。苦しいときは、私たちを是非とも頼って欲しい—

—そうよ?人は一人では生きて行けないわ。
困ったら助けて貰うのは当然だし、困っている人が居れば助けてあげるのも当然なのよ?
だから、あなたを助けたのも当然なの。
私たち?私たちは、もう助けてもらったもの。
あなたを見て、私たちは【勇気】を貰ったから—

—お前も、大事なものを守りたいなら軍人になるといい。
守る力は、何処までも人を強くするんだ。私も、それで強くなれた—

駆け巡るは様々な大切な人たちからの言葉。

—大丈夫。私も存在が消えるのは怖い。でも、大丈夫。あなたが、いるから—

優しく、そして力強いエリュシアの声。

アレスの頬に、熱き眼から零れ落ちるは、感謝の感情。

「ああ…俺は、今までたくさんの人たちに支えられてきたんだ。
だから…全部守らなきゃいけない。守らないといけない…!いや、違う…!
…守りたい!守るんだ!守り抜いてみせる!」

熱き眼から迸る感情を拭い、アレスは、泣きながら絶望するもう一人の自分の胸倉をつかむ。

「お前は俺だ!だから…お前の弱さは俺の弱さだ!
だけれど、お前を受け入れる!お前を受け入れて、俺は強くなる!
力じゃない!心で!俺は、全てを受け入れ、全てを守り抜く!
だから、泣くのはやめろ!逃げるのはやめろ!全てを受け入れろ!
罪も!罰も!今まで失ったものも!今だに残る大事なものも!
抱えて!生き抜いて!戦い続ける!


—俺は逃げない!今、俺は誓う!【全てを守り抜く】!—

アレスが見出した答。

守るという

【覚悟】

【意志】

胸倉をつかんだもう一人の自分が光りだした。

アレスは直感する。

—俺達が、ひとつになる時だ!—

二人のアレスが、輝きながら一人になっていく。

この出来事、アレスが瞳を閉じた5分の間。

眼を開くアレス。

自分の体から見える、緋いオーラ。

そして、老人から見える白いオーラ。

見える景色が、全て違って見えたような気がした。

—アウェイカーの開眼方法、やっとわかったよ、エリュシア。
そう、【覚悟】と【意志】がキーになってるんだ!—

「フフフフフ。やっと答を見つけたようだな、青年よ。
お前さんなら、きっと見つけ出せると思っていたさ。」

老人が、微笑みながらアレスの迷いが無くなった事を指摘する。

「…貴方のおかげです、ご老人。」

「フフフ、私は、ただ背中を押しただけに過ぎん。」

「貴方は、一体何者なのでしょうか?」

「すこし、昔話をしようか。
かつて、G.U.軍には、メカニックが二人いた。
そのメカニックは、やがてチーフになるほどであった。
しかし、その二人にも、岐路が訪れたんだ。
一方は希望満ち溢れた未来を目指す道。
一方は、欲望に塗れた血と絶望の道。
道は、一人分しか幅がない。
一人の男は、希望の道を選んだ。
そしてもう一人の男は、欲望の道をあきらめた。
新しい道を、自分で作ろうとしたんだ。
そして、男はその道をずっと作り続けている。」

話の途中に、近くの森からヘリの音が聞こえてきた。

足音が数人分聞こえる。

「ふむ、迎えが来てしまったか。
青年よ。私と共にくるかい?」

老人からの提案。

「え、ええ。自分もこのままではいられないので。」

アレスは戸惑っていた。

今、バハムートゼロはどうなっているのか。
みんなは無事なのか。

全てがわからない。

肝心のナイトメアガンダムも大破してしまった。

と、考えていると、老人の後ろに、ビニールシートにかぶった大きなものが見える。

「心配しなさんな。お前さんの相棒も、お前さんの復活を喜んでおるぞ。」

老人は、ビニールシートをはがす。

そこにあったもの。

ナイトメアガンダムのパーツだった。

「綺麗に切り裂かれていただけだ。ほぼ完品だから、転用可能だぞ!」

老人が、満面の笑みでアレスに話す。

そこへ、スーツ姿の男と護衛の兵士が洞窟へ入ってきた。

「やっと探しましたよ…ゴードン社長!
全く…そうやって、いきなり隠れガレージに行くのやめてもらえませんか!?
こっちは重要なプロジェクトがあるっていうのに…!」

「ギャンギャン抜かすなやエリック。私がいなくてもプロジェクトぐらい進むだろうに。」

「そういうわけにもいきません!ほら!行きますよ!
ん?彼が、話していた【アレス=ウィザール兵長】ですか?」

「そうだ。彼のガンダムを少しアレンジさせてもらうから、同伴させる。
ということだ。さあ来たまえ、アレス君。」

「な、何で俺の名前を!?」

「その軍服とドックタグで把握した。
そして、軍服の腕章からオーディン所属だということもわかったよ。
…あいつは元気かねぇ。トーマスは。」

「えっ!?まさか…貴方は!?」

ここで、アレスはトーマスの言葉を思い出す。

—俺の友人で、俺と同等ぐらいかねぇ?そんな腕を持ったすげえメカニックがいたんだ。
そいつは、俺とは対照的で汎用戦闘MSのカスタマイズに優れていた。
その才能と、冷静沈着な意見と奇抜なアイディアを持っていた。流石の俺も舌を巻く程だ。
仲も良く、良いライバルだったんだが…G.U.派閥分断の際に、あいつは穏健派に行っちまってな。
穏健派の元で働くのはまっぴらだ!って軍を出て行ったよ。今、何処で何してるんかねぇ…?—

「さあて、行くか青年よ。
リベリタス・レベリオ・エンタープライズ 代表取締役 ゴードン=オブライエン!
お前さんのガンダム【ナイトメアガンダム】のリファイン依頼を引き受けたぞ!
…あっと、今回の代金はG.U.軍からバッチリいただくから、そのつもりでな。(ニヤリ)」

—迷いを断ち切ったアレス。まるで死神から昇華し、祝福された魂のよう。
アレス、真の意味でのアウェイカーを開眼し、希望を掴み取る…!

ここから、青年は真の【騎士】への道を、今、歩みだす!—

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.90 )
日時: 2015/04/01 20:59
名前: laevatain (ID: Jg8CXhDq)

第三十四話 娯楽産業惑星エンティニア〜繁栄の歴史と、人々の営み〜 前部

—何時から、重くのしかかっていたのだろう。

「命」を意味も無く、奪い合うことに。

その理由が独りよがりな「責任転嫁」であることとも気付かずに。
その理由が奪った命の重圧に絶えられず、「逃げ出した」ことに気付きながらも、
見て見ぬフリをしていたことに。

しかし、これからはそうはいかない。

「守る」という「覚悟」を決めたのだから。

俺の手が血に濡れようとも、死後どんなに苦しい罰が俺を待っていようとも…

俺は逃げない。逃げるわけには行かない。逃げたくない。

向き合おう。俺の「罪」と「責任」に。

向き合おう。同じ「覚悟」をした仲間たちと。

向き合おう。かけがえの無い「大切な人」とその「想い」に—

アレスが決断した「覚悟」。
それは、彼自身を大きく成長させるものだった。

—いかなる時代の戦争においても、「勝者」と「敗者」が存在する。
「勝者」は勝つ・生き残る・成功する・そしてその報酬を得るというメリットと共に
「敗者」の誇り・生きる意味はおろか、場合によっては命すら奪う「罪」を背負うデメリットがある。

しかし、「勝者」は忘れがちである。
「敗者」の覚悟と意志を奪った責任を負うことに。
勝利に酔いしれて、敗北を忘れようとしていることに「勝者」は気付かない。

そして、多くの場合、「敗者」には何も残らない。

「敗者」の立場を考え、苦しみ、それが枷になっていたアレスの心情。
それを踏み越える「覚悟」こそ、彼の最大のリミッターであった。

「敗者」の立場を考え、それを受け継ぎ、「罪」を背負いつつも歩みを止めない。
恐らく、こうなった場合、ヒトはどこまでも強くなれるだろう。

本当に強い者とは、弱者を慈しむ感情があってこそのものだから。

これらの「心の枷」を乗り越えた今、彼の成長限界を止めるものは無くなった。
迷える「死神」が、迷いを断ち切り、新たに「戦士」としての魂を得たのだ—

「さあて、動くかアレス君。私についてきなさい。
エリック!ナイトメアガンダムのパーツをトラックごと私のふねへ動かしてくれ!」

リベリタス・レベリオ・エンタープライズ 代表取締役 ゴードン=オブライエンが
同社CFO(Chief Financial Officer:財務担当役員)のエリック=バーキンソンに指示を出す。

「そーやって、合流してから僕をコキ使うのやめてくれません!?
まったく、プロジェクト会議すっぽかしながらもこうやってワガママなんだから…ぶつぶつ。」

エリックは不満ながらも、ナイトメアガンダムのパーツが乗せられたトレーラーテーブルを牽引する
大型トラクターモービルを動かし始めた。

エンジンが稼動し、各部が振動をあげながら稼動する。
エアサスペンションがエアを入れ始め、空気圧力不足により、トレーラー付属のコンプレッサーが稼動する。
コンプレッサーの甲高い稼動音とエンジンの音が、洞窟内に反響する。

その中で、ゴードンは自分の右腕につけていた腕時計のスイッチを押した。

腕時計のスイッチに呼応して、ふねの一部と思わしき鉄の塊が、洞窟に繋がる海から飛沫をあげて浮上する。
どうやら、この洞窟は「海蝕洞(かいしょくどう:波浪による侵食で海食崖に形成された洞窟)」
であったようだ。

月明かりで照らされた海からの光が、鈍色にびいろの装甲を照らす。

艦の大きさ的には、中型の宇宙戦艦に匹敵する大きさのようだ。
大体70mほどの巨体が、仄暗いながらも蒼を映し出す海の底から現れたのだ。

「これ…さっきの巨大な魚みたいな奴の正体か!」

エウリスハロが声を上げる。

エウリスが、ナイトメアの胴体を回収される前にみた巨大な魚影。
どうやらこの艦のことらしい。

「うむ。お主達を回収したのは、私の戦艦「セファリウス」だよ。
結構古いデザインだが、未だに一線級の最新戦艦と互角に張り合えるぞ。
もちろん迎撃システムは私が手がけたオリジナルのものだ。そこらのMSでは捕まえられんよ。ホッホッホ。」

ゴードンは、豊かに蓄えた白い髭をいじりながら、自慢げに話す。
まるで子供のような好奇心旺盛な瞳で、自分の作品を自慢するかのように。

「ゴードンさん、いろいろとありがとうございます。
おかげで、俺はまた戦う【理由】と【覚悟】が出来ました。」

アレスは、ゴードンに礼を言いながら頭を下げる。

「はて?私は何もしていないさ。
強いて言うなら、君の肩を押してあげただけだよ。お礼を言われることをしたわけじゃない。」

ゴードンの返答。謙遜のようにも見える。

しかし、彼の考えは異なるものだったようだ。

「そうだな、君がまだ戦いから離れてはならない気がしてね。
ホレ、今エリックがナイトメアガンダムのパーツを運んでいる中で見えるあの棒があるだろう?」

ゴードンは、トラクタによって運ばれているナイトメアガンダムのパーツから
見えている長くて細い棒を指差した。

ナイトメアガンダムの象徴武装である大型ヒートシックル「ブラッド・ペイン」のロッド部であった。

「材質はフェンドリン強化合金だな?熱による若干の形状変化はあるものの、芯までは曲がっていない。
さすがフェンドリンということなのだろうが…これは君の心を表しているのではないかと思ってな。」

「俺の心ですか?」

「さよう。【折れぬ魂】、【曲げたくない想い】が、あの棒から感じ取れた。
そしてナイトメアガンダムのパーツ一つ一つから、私に呼びかけるんだよ。

【まだ戦いたい!自分は、まだ役目を終えていない!戦わせてくれ!】とな。」

「…!!!」

アレスは、ゴードンの洞察力と人間としての器の大きさに驚愕していた。

(確かに、この人の着眼点は的確かつ鋭いものがある。
トーマスさんの言ったとおりだ。凄いメカニックだと言うのも頷ける…!

確かに、俺はナイトメアで戦ってたときに、
ずっとあの鎌に曲げたくない意志を乗せて戦ってきた。

しかし、ブレた俺の覚悟から、俺の迷いを見抜かれていたんだ。
だからこそ、ずっと受けた指摘や投げかけられた言葉に引っかかるものを感じていたんだ。

デュークさんと、あの黄色いバルのパイロットに…!)

アレスは両手を握り締める。

心に引っかかっていたもの。
自分を縛っていたもの。
それを今、払拭できた。

決意を新たにした自分がやるべきこと。

その意志を見せるときが来たのだ、と。

30分後、ナイトメアガンダムのパーツとヘリを収容した戦艦「セファリウス」。
アレスたちも乗り込み、動き出すようだ。

「さあて、ちょっと御呼ばれされたようだし、【エンティニア】に向かうかね〜。」

「最初からエンティニアにいてくださいよ社長!どうしてそうやって放浪するんですか!」

「やかましいのうエリック。嫁に逃げられるぞ。」

ぐぬぬと言うエリックの表情をみて楽しそうなゴードン。

「カミさんは今関係ないでしょう!?話の引き合いに出さないで…」

「あと、私は【社長】ではない。【代表取締役】だ。会社の方針を決めるのは私だが、作り上げるのは皆だ。
私はその舵取りしか出来ん。私のワガママで皆を困らせてはならん。
社長とは、全部自分のワガママで決めてしまう横暴な役職だと思っている。
私はそれが嫌いなのだよ。だから、社長というのはやめてほしいなぁ。
たとえやっていることが同じだろうと、私は社員一人一人が大事だ。
お前もその一人なんだよ、エリックよ。
だから、私は皆に決めてほしくて会議を敢えて参加しなかったということに…。」

「それ、サボリの理由になりませんよね?」

ジト眼のエリック。

「やかましいのうエリック。娘に愛想つかされるぞ。
そろそろ反抗期じゃないのか?13歳だっけ?」

「14歳です!反抗期になってません!
だからそうやって話し逸らすのやめてっていつも…。」

ゴードンは耳を両手の人差し指で塞ぎ、声を上げる。

「アーアー、キコエナイナァー!ナンノコトカナー!」

エリックの矢継ぎ早の言葉を振り切って、メインコンソールへと向かうゴードン。
エリックはどうやら折れたようだ。呆れて両手を挙げている。

「さあて、オートクルーズモードON!目的地:娯楽産業惑星エンティニア!
発進といこうかの!しっかりつかまっとれ諸君!」

鈍色の巨体が、海を滑りながら広く開けた海原へ進む。

メインスラスターが展開し、戦艦「セファリウス」が飛沫を上げながら海から離れていく。

飛行モードへと推移したセファリウスは、速度を上げてサファール・クファールの海を後にする。
護衛として、武装兵士が乗った小型戦闘艇「レッサーワイバーン」がセファリウスをカバーする形で飛翔。

こうして、アレスたちはエンティニアに向かうことになった。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28



この掲示板は過去ログ化されています。