二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター)
- 日時: 2015/07/25 13:01
- 名前: Laevatain (ID: rZuUN0S4)
- 参照: http://laevatain1408.blog.fc2.com/
今までのガンダムシリーズ(主に一年戦争以降からの時代観)を踏襲して
作成したガンダムの二次創作になります。
作成者は妄想大好きなおじさんです。
こんなつたない小説ですが、お付き合いいただければと思います。
STORY
かつて、人類は母なる大地「地球」を方舟に生活していた。
だが、その過剰な人口はやがて「地球」を取り合い、争いを引き起こした。
そして宇宙に生活圏を拡大させてもなお、「地球」をめぐる争いは終わらなかった。
やがて「地球」は人類の手によって汚染され、醜くなっていった。
人類は相談し、「地球」を巣立ち、新たな新天地「火星」に生活圏を移す。
それから約2世紀。
銀河系第35宙域管轄コロニー「サイドアルファ」。
ここにコスモポリスとして従事する青年「アレス・ウィザール」
彼と1体のMSの出会いから、全ての歯車は動き出す。
絶望の運命を希望の未来へ変える歯車が・・・。
—人は、誰かを守るために、「騎士」となる—
用語
セカンド・ノア(第二の箱舟)
第二の地球。火星をテラフォーミングし、地球と同じ環境にした惑星である。
ロスト・ガイア(失われた楽園)
過去の地球。過去の大戦やMSによる戦争により、自然環境コントロールが乱れ、化石燃料は
潰え、汚染されて人類が住めなくなった地球。火星移住から2世紀後、大気は完全に無くなり、
かつての青く美しい星は黒ずんだ地表が見える無残な姿となった。
GU(ギャラクシーユニオンズ:銀河連合同盟)
銀河惑星間での統治が進み、各惑星の政府による政治・法律上におけるルールを確約させる
政治機関。とどのつまり現代の国際連合。
現在は革新派(自由な未来と悪質企業の根絶を訴える派閥)と穏健派(現在の企業紛争を
黙認する派。闇献金を受け取る悪質な議員が多い。)の争いが激化している。
企業
地球時代における国がつぶれてから、企業が力を持つようになり、もはや企業が惑星政府と
同じ権力を持つようになった。それにより、圧政や重労働なども問題になり、
GUが企業の暴走を抑えようと奔走している。しかし、反発する企業も少なくは無い。
現在は各企業間における未統治惑星の資源獲得戦争や紛争が後を絶えない。
そのため、軍備拡大を急ぐ企業が増えつつあり、各企業がGU軍へ宣戦するのではと危惧されている。
そしてそれは、30年前の第一次企業戦争により現実のものとなった。
コスモポリス
GU管理下の宇宙警察機構。
オーディン
GU軍第01強襲攻撃部隊。
革新派の傘下軍であり、自由を目指し戦う軍。市民からはヒーロー扱いされている。
母艦はたった1隻だが、その実力は計り知れない。
母艦は強襲戦闘艦「バハムートゼロ」
プロジェクト ライト&ダークネス(光と闇の機兵計画)
「第二次企業戦争」において、アライアンズに対抗すべく計画されたGU軍極秘新型MS開発プロジェクト。
ライトサイドとダークネスサイドのコンセプトから成り立つ。
ライトサイド セイントガンダム
ダークネスサイド ナイトメアガンダム
この二機のMSを基盤に、アライアンズ撃破のきっかけを生み出そうとしていた。
このプロジェクトの進行部隊はオーディンである。
企業戦争
企業がGUに反発し、起きた戦争。
第1次企業戦争では、全企業が一斉に武装蜂起し、GU軍との全面戦争となった。
GU軍が市民の安全と自由を主張し、企業側が利益の優先、そのための人命の犠牲は必要経費だという反論。
もちろん企業の横暴を市民が許すはずが無い。各企業の従業員は一斉にボイコットしたため企業側の戦力補給がストップ。
企業は窮地に立たされる。
そして企業は、禁断の大量破壊毒物兵器による非人道的な虐殺を敢行。サイドクスィーとサイドツェーラを毒殺し、壊滅させた。
この悪行により世論は大激怒。GU軍はこの後押しもあり、ついに企業側を屈服させる。企業側も降伏を宣言。
これにより、18年間に続く第1次企業戦争は終幕した。
それから10年後、ちりばめられた解体企業を収束させて、新たに3つの大企業が設立される。
その企業達が軍事同盟と産業通商同盟を締結。組織名をアライアンズとする。
アライアンズは、約2年前にGU軍に向かい「復讐のときは来たれり!」と宣戦を布告。
こうして、第2次企業戦争の火蓋が切って落とされたのだった。
モビルスーツ
宇宙開発時代と呼ばれる「宇宙世紀」時代において勃発した、
「一年戦争」と呼ばれる戦争により生まれた人型戦闘兵器。
宇宙の微細粒子により、レーダーなどの無視界戦闘が不可能となった本戦争にて、
有視界戦闘の基盤を確立させた兵器でもある。
特に後述する「ガンダム」と、当時戦争を繰り広げた「ジオン公国」は、
歴史の教科書にその名を刻まれる程、
人類とモビルスーツの歴史を学ぶ上では欠かせない存在。
その後、様々な企業においてモビルスーツは建設用・土木作業用・宇宙開発用などが開発され、
あらゆる分野で人類の開発を支えてきた産業機械となり、今日の宇宙経済の基盤を固めている機械となった。
個人で所有するものも珍しくなく、モビルスーツは「兵器」としてではなく「ありふれたもの」として、
人々に浸透している。
ガンダム
「一年戦争」と呼ばれる、モビルスーツ最古の戦争において、
地球連邦軍が開発した高性能モビルスーツ。
さまざまな派生機種が存在する、由緒ある機体。
現在ではガンダムの特徴的なVアンテナとフェイス、G-ロンダクトプログラム
テクノロジー社が販売するGUNDAM OSを搭載した登録商標商品として流通しているモビルスーツを指す。
ガンダムは主に、フロンティアワークショップ社が
生産、販売を行っている主力商品として認知されている。
独占商品ではなく、さまざまな機種が他企業からも
進出しているが、ガンダム単体の性能では
フロンティア社の右に出るものはいない。
そのため、他企業はガンダムを上回る製品の開発に
奔走するケースが後を絶たない。
ちなみに、ガンダムは大衆の間では最も馴染み深く、
モビルスーツの象徴とも呼べる機体である。
ジェネレータ技術
ムーンレィス(∀ガンダム時代)戦乱後に始まった、宇宙開拓時代の中で新たに見つけた鉱物。
そこには、未知のエネルギーが詰まっているものだった。
その鉱物の名は「エーテライウム」。
このエーテライウムから抽出したエネルギーを「エーテネルゲンエネルギー」と呼ぶ。
エーテネルゲンエネルギーは、簡単な電気変換回路により電力へと変換される。
しかしその発電規模が、既存の化石燃料のおよそ3000倍〜5000倍に相当するものであった。
これにより化石燃料・原子力により起動されていた各機械のジェネレータは淘汰され、
エーテネルゲンエネルギー式のジェネレータ「エリクシル式ジェネレータ」へと移行される。
また、エーテネルゲンは人体への影響がほぼ無く、安全に使えるものとしての評価もあり、
瞬く間に時代はエーテネルゲンエネルギー循環型社会へと変貌する。
エーテライウムにはもうひとつ特徴があった。それは「精錬」に伴う「エネルギー付与」。
エーテライウムは加工のしやすさも売りであり、鉄などの金属の添加物にエーテライウムを数%含ませて精錬させると、
精錬された金属にエーテネルゲンエネルギーを帯びた状態で精錬することが出来るのだ。
これもあり、たやすくなおかつ大量にエネルギーの元を生産できるとして、化石燃料の枯渇に伴う人類の衰退の心配は完璧に無くなり
人類は安心して宇宙開発を行うことが出来るという現在の社会形態が確立したのである。
※この作品におけるビームサーベルは、ビームの噴出によって刃が形成されるものではない。
ビーム出力の上昇によって、ビーム噴出を維持することが
テクノロジー上不可能になったからである。
この作品でのビームサーベルは、折りたたみ式アンテナのように、
伸縮可能な棒状の兵装の表面からビームが噴出し
形成されるものである。
ビームサーベルにも耐久性があり、出力の低いビームサーベルは、
鍔迫り合いの際に負けて破損する可能性もある。
なお、このガンダムはジャンプ漫画の根源である
「努力・友情・勝利」をモチーフにしております。
何卒ご容赦ください。
ツイッターやってます。ご意見ご感想はこちらまで。
要望なども受け付けております。
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- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.126 )
- 日時: 2015/01/07 22:57
- 名前: laevatain (ID: Jg8CXhDq)
第三十九話 侵略〜希望を刈取りし欲望、人々を喰らわんとす〜
—カウントダウン:8—
暗闇の海。
静寂佇む銀河の海。
その海を進む艦一隻。
中型巡洋戦艦【セファロタス】。
リベリタス社社長【ゴードン=オブライエン】が所有するプライベート艦と位置づけの戦艦である。
その周辺を駆け巡る光が、帯を纏いながら縦横無尽に動く。
静寂に響くブースト音を発しながら、1機のモビルスーツが駆けている。
旋回、バック宙、隕石を足場にしての三角跳びなど、様々な運動を行いながら
まるで準備運動をしているかのように、軽やかに動き回る。
暗闇の中、紅く見えるその機体。
中に乗るのは、アレス=ウィザール。
どうやら、この機体のコクピットは旧型の【コントロールパネル制御式】のようだ。
タッチパネルは前方のメインコンソールのみとなり、残りは旧式のデバイスやモジュールなどのようだ。
アレスはペダルを踏み込む。同時に、機体の速度が速まり、加速していく。
速度が上がる度、アレスはシートに押し付けられるのと同時、体に感じる重力を感じている。
しかし、その感覚はアレスにとって悪く感じるものではない。
一種の高揚感すら感じる。心地良いのだ。
グリップを握る手が、一層強まる。
ブーストアクセルのペダルの足先に、力がこもる。
(俺は…強くなれたかな?ハッタリか?
ま、いまさらどっちでもいいや…。
不思議と、落ち着いている。
怖いものがなくなった気がするんだ。
人の命。
それは儚く、脆く、かげがえのないもの。
今までは奪うことを、躊躇っていた。
…【覚悟】が、足りなかったんだ。
【人を殺す】という【責任】から、逃げていたんだ。俺は。
もやもやしてたけれど、今ははっきりとわかるんだ。
【人は、何かしらの闇を背負って生きている。】
過去に後ろめたい思い、つらい出来事、悲しい出来事、トラウマ。
そういったものを、背負って、生きているんだ。
だけれど、それは俺だけじゃないんだ。
みんな、そうやって、生きている。そうやって生きてきたんだ。
みんな、【自分の命を人生という壮大なギャンブルのBET(賭け金)として、賭けているんだ。】
そのことを忘れ、ただただ現状を嘆き、逃げてきた。
だけれど、俺自身が、【その舞台に立たなきゃいけなかったんだ。】
対等に、向き合わなきゃいけなかったんだ。
今は、命を奪うことが怖くない。
後ろめたさはある。
だけれど、俺は決めたんだ。
【殺した人々の無念を、この戦争の終結を持って果たす。】
【殺された人々の悲しみを、この戦争を引き起こした奴にぶつけてやる】ってね。
俺は、【俺を信じてくれる人のために、
俺を愛して信頼してくれる人のために、
俺が俺であるために、】戦うんだ。
この時代と。この現実と。俺自身の闇と…!
やっと、やっと、前を向けるんだ…。
堂々と!前を向いて!)
—戦える!!!!—
モビルスーツと戦艦はアステロイドベルトへと突入する。
突如、戦艦から何かが発射された。
瞬間、無数の隕石から、1機ずつのパラボラアンテナのような物体が現れ、アレスが乗るモビルスーツを向いた。
アンテナの中心部からエネルギーが蓄積され、それは光の矢を持ってモビルスーツに放たれる。
戦艦から放たれたのは、即席型のレーザー砲台機であった。
隕石に着地した砲台は、ブースト制御で隕石を操り、レーザー砲台として敵機体を狙うのだ。
アレスはこれを予想していたかのように躱す。
無数に降り注ぐレーザーの雨を、隕石を盾にし、紙一重で避け、ブーストで躱す。
回避行動が、まるで優雅に舞う銀盤の男性選手であるかのように、
光の雨を駆け巡り、回避する。
アレスが深呼吸する。
ゆっくり息を吸い、吐き出す。
眼を閉じ、何かタイミングを見計らっているかのようだ。
(よし。)
次の瞬間、アレスは眼を見開いた。
その眼に宿す赤は紅く紅く炎のように揺らめき燃え立つ決意と信念のよう。
瞬間、モビルスーツの脚部に取り付けてあったライフルユニット二挺を取り出す。
それをまるで、西部劇のガンマンのようにくるくると手を使い回転させて、構える。
対象は、先ほどのレーザー砲台だ。
光の雨をかいくぐりながら、まるで左右に眼があるかの如く。
アレスは上下左右に点在するレーザー砲台を次々に破壊していく。
西部劇のガンマン顔負けのガンテクニック。
無数の弾幕を避けつつ、まるで映画のヒーローのような動きで、
モビルスーツが放つビームは、正確無比にレーザー砲台を捕らえ、滅していく。
おおよそ5分ぐらいだろうか。
無数に点在していたレーザー砲台は、1機も残ることなく消滅していた—
—セファロタスに帰還していたアレス。
どうやら、先ほどのモビルスーツの試運転だったようだ。
「アレス君、どうだね、【戦士】の具合は?」
大きなスパナを持ち、何かの部品のメンテナンスをしているゴードン。
作業に夢中で、アレスの顔を見ずに話しかける。
「大丈夫です。ブースト数値、ジェネレータの問題、OSの初期設定、
各種駆動オイルの熱ダレ(潤滑オイル温度の上昇に伴い潤滑性能が失われ、危険な状態で運転していること)などの
発生は、特にありませんでした。」
アレスも、満足気な表情だ。
確かな実感を、あの試運転で得られたのだろう。
「ゴードンさん、その部品は?」
アレス、ゴードンが今手がけている部品について疑問を持ったようだ。
何か、戦闘機の一部にも見える。
コクピットだろうか?
にしては操縦席が無い。
「ふふふふふーん!これはまだ秘密なんだが、君のチームメイトに面白い人物がいてね。
そのチームのプレゼントとして、君のとは別に、モビルスーツを3機用立てたのさ。
これは、そのひとつのパーツだよー。ふふふふーん♪」
自慢げに話すゴードン。
まるで少年のような性格の老人である。
—ゴードンの話どおり、アレスの新型モビルスーツとは別に、
ガレージカタパルトには、3機のモビルスーツがあった。
2機は同一機種のようだ。
「君のチームメイトのお嬢さんと、ポッチャリ君にも、素敵なプレゼントを分けてあげるのさ!」
「まるで、サンタクロースみたいですね…。」
「季節的にはまだ早いだろうが、そろそろクリスマスだろう?
ゴードンサンタから、いい子たちへのプレゼントじゃ!」
談笑を交えながら、大鯨は、宇宙の海を漂う。
目的地は、仲間の待つ希望の星—
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.127 )
- 日時: 2015/01/18 22:50
- 名前: laevatain (ID: Jg8CXhDq)
第三十九話 侵略〜希望を刈取りし欲望、人々を喰らわんとす〜
—カウントダウン:7—
閉塞された空間に、おびただしい量の住宅施設が並ぶ。
ここは、エンティニア地下B3層、避難エリア。
ここの存在は、エンティニアに住む星民と、
フロンティア社の重役の中でも限定された人物以外明かされていない。
敵にその存在を知られてはいけないためである。
ここに、多くの人々が列を作り並んでいる。
人々は、整列された中を一定の速度で歩き、自分が数日住むであろうエリアへと案内されていく。
人々が口をそろえて、この言葉を口にする。
【避難訓練】。
彼らには、フロンティア社から開発されたこのエリアでの生活を知ってもらうため、
市民安全活動の一環として、避難訓練を行うという話を受け、この行動に至っていた。
しかし、裏向きは違うのだ。
市民を先導、案内する中、案内役を務めるスタッフ作業を行っているマールとジュピアの姿が。
「はぁぁぁぁ〜。ダルいわぁ…。」
溜息をつくジュピア。彼女とマールは軍服である。
オーディン部隊も、避難訓練のスタッフとして携わっていると、市民からの認識。
「まあ、市民の皆さんの案内だし、退屈っちゃ退屈よね…。
カールさん達、今頃メンテナンス最中かなぁー。」
マールも、カール達が気になっているようだ。
目線を右に落とし、小さな溜息を漏らす。
「ちょっといろいろ探検しようぜ!」
「待ってよぉーー!」
周辺で、子供があちこちを見て回ろうとはしゃいでいる。
しかし、これを止める各種スタッフ。
「こらこら!こっちは危ないから、近づいちゃダメだよ!」
男性職員が、子供たちを居住区外に敷き詰められた防護外壁の外に出ないように押し戻す。
無理も無い。
この居住区には、防護外壁の周辺にモビルスーツの生産ライン及び運搬用大型リフトなどの
工業用設備や、防衛用のガーディアンターレット(重装備固定砲台)、ミサイルターレット等を
含めた防御用武装施設が立ち並んでいるためであった。
もちろん、機械に巻き込まれたりすれば命の保障は無い。
そういった事故を避けるため、子供や多少の不満感を持った住人をなだめる形で
スタッフが専属配置されているのだ。
「これ…あと何時間で収容完了するのよぉ…。」
おびただしいエンティニア市民の列を見て、ジュピアが漏らす。
やるせない表情である。
「…えっとね、目算であと2時間強は掛かるって…。
今、やっと60%の人口が収容できたみたい…。」
「ウッソォ!?マジで…後2時間もなの…!?
はぁぁ…これ、意外としんどいのよ…?」
マールから情報を聞かされ、絶望するジュピア。
その1〜2分後、ザックがジュピアとマールに向かって小走りしてきた。
どうやら彼女たちを探していたらしい。
「ジュピア、マール。ご苦労さん。」
ザック、勤務中の部下を労う形での敬礼。
「「お疲れ様です、ザック艦長。」」
二人も、気持ちを戻し、敬礼にて返す。
「二人とも、済まないな。こんな雑用に駆り出してしまって。」
「いえいえ、これも仕事ですし…。ね、ジュピア?」
「え、ええ!そうですね、仕事ですものね!」
ジュピア、若干慌て気味。
自分の上司にだけは、本心を知られたくは無いものだ。
「今、バハムートゼロの補給班が仕事を終えて、こちらの補助をしてくれるそうだ。
君たちはバハムートゼロクルーの主力である、モビルスーツチームの一員である。
従って、君たちには、自身のモビルスーツをメンテナンスする義務がある。」
「「はい。」」
「よって、君たちに新しい任務を与える。
【カール達と合流し、自分達のモビルスーツのメンテナンスを行うように。】
以上だ。早速移動してくれ。」
ザック、二人にさりげなく気を遣ったのだ。
もともと、こういう仕事は雑務や補給担当の人間が選ばれるケースが多い。
しかし、バハムートゼロのダメージ補修に加え、今後激化する戦闘に対して
母艦であるバハムートゼロのバージョンアップが必要と考えた彼らは、
バハムートゼロの改良に向けて、日夜改造を行っているのだ。
このため、人員が不足している現在において、ジュピアとマールが
表向きは避難訓練と題した住民の移動案内に携わっていたというわけだった。
もちろん、バハムートゼロのバージョンアップ計画は極秘中の極秘となっている。
こんなところで口に出せたものではない。
【何時、何処で、敵のスパイが聞いているかもしれないのだから。】
「あ…すみません!
任務の件、承りました!では、移動します!」
「くれぐれも、疲れてるからといって
【溜息を漏らしたり、愚痴を言うなよ?】」
「プッ…クスクス…。」
どうやら、ザックはジュピアの退屈振りを見ていたようだ。
ジュピアが赤面し、マールが堪えず噴き出してしまう。
「も、もう!ザック艦長ったら!意地悪なんだから!」
「ハッハッハ!それだけ元気なら大丈夫だな!」
ザック、若干も大人気ないジュピアへのからかい。
しかし、ユーモア溢れ、部下の労いを忘れない人間こそ、
周囲の人間や部下から最も慕われるものである。
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.128 )
- 日時: 2015/02/15 11:11
- 名前: laevatain (ID: Jg8CXhDq)
第三十九話 侵略〜希望を刈取りし欲望、人々を喰らわんとす〜
—カウントダウン:6—
—休憩中のカールたちに視点を戻そう。
「…でよ、お前も5年前よりかは明るくなったよなぁ。あの頃のお前といっちゃあ
すぐダメだ、僕には無理だって逃げてばっかでさ。
なんだ、あの双子姉妹救えた事で、少しは踏ん切りついたか?
【昔の傷】引きずってたんだろ?」
「まあね。でも、僕がここまでやれたのは、カールのおかげだよ。
カールだけじゃない。アレスやエリュシア、艦長を始めとしたバハムートクルーの皆。
新しく入ってきたジュピアさんにマールさん。マルス君。アリシアちゃん。
僕に関わった全ての人のおかげで、僕はやっとまともになれたんだって感じてるよ。」
「だから、お前は、元から、まともだったっつーの!ったく。
お、アシュレイとエイロックスが戻ってきたぞ。
おーい!俺たちの飲み物何買ってきたー?」
カールとダグラスの会話最中に、リフレッシュルームに戻ってきた
アシュレイとエイロックス。
「急かさないでよカール。はい。
ダグラスはこれ。」
カールがアシュレイから渡されたのは【スターダスト・ライムライト】という炭酸飲料。
ダグラスは【緑茶・不撓不屈(ふとうふくつ:強い意志でどんな困難にも挫けない様を表す四字熟語)】。
どちらも有名飲料メーカーから発売されている、ヒット商品である。
「お、レモンライムか。ちょーど欲しかったんだよな。」
「あ、このお茶、僕大好きだよ。」
飲料のチョイス、二人には好評だったようだ。
胸を撫で下ろすアシュレイ。
「失礼するわね。」
「お疲れ様です。」
アシュレイ合流時から少し遅れて、ジュピアたちも合流してきた。
「お疲れ。あっちはどうだったん?」
「星の住民全て収容するから、すごい長蛇の列だったわよ。
おかげで立ちっぱなしで足パンパン…。はぁ…。」
「ジュピア、そういう話してると、またザック艦長にからかわれるわよ?」
ジュピア、先刻のザックからのからかいを思い出し赤面。
「あっ!みんな、今のは内緒よ!?」
ジュピアを除く全員が笑い出した。
—それから30分が経過。
ミーティングルームには、カロラスやキャスタ、
トーマスといったバハムートメカニックの主要メンバーも入り混じっていた。
どうやら、【モビルスーツ操縦におけるコクピット部の種類】に関する雑談のようだ。
「…んでよ、俺のコクピット内のグリップ、最近調子が悪くてさあ。」
「てかカール、意味無い所でトリガースイッチカチカチしてない?
ちゃんとスイッチには【最大耐久回数限界数値(ゲームセンターのゲーム機に取り付けられているスイッチにもある、
スイッチの最大耐久回数。その回数を超えた場合動作保障が出来ない場合がある。一般家庭のスイッチも同様。)】
があるんだから、メンテナンスしっかりして、動かなかったり反応が鈍かったら交換しなきゃダメだよ。
モビルスーツの戦闘で、ボタンやスイッチのメンテナンス怠ってた為にシニマシターじゃ話にならないんだからさ。」
アシュレイ、カールにキツめの指摘。
それも当然である。モビルスーツは玩具やスポーツ用品では無いのだ。
彼らの乗っているモビルスーツは【戦争の道具】である。
命を預けて乗るそのモビルスーツは、彼らの武器であり、防具である。
そのメンテナンスを怠ったがために、命を落とす危険だってあるのだ。
「う…ぐ…それ言われると反論できねえ…。」
「当たり前だ!お前さん、死にたくは無いだろう!?」
「いてっ!」
トーマス、カールにげんこつを食らわす。
カール、げんこつされた後頭部をさすりながら涙目。
「俺だって戦場に出たときは、いつでも死を覚悟してたわい!
でもな、足の軽度の麻痺だけで済んでるんだ、命あっての物種。
死ななきゃ、足の麻痺なんざ安い安い!
お前さんも、俺みたいになりたかぁ無いだろう?」
「わ、わかったよじいさん。悪かった。
今、パーツ全部付け替えてくれるから、そのときにしっかりメンテナンスしておくよ。」
カール、事の重大さにやっと納得したようだ。
「それにしても、あんた達、よく【コントロールパネル制御式】で操縦できるわね。
私達じゃ、スイッチの配置覚えるのが無理っぽそうだし…。」
「あ、あんなにスイッチやレバーあったら私混乱しそうです…。」
ここでジュピアとマールが、カール・ダグラス・アシュレイが乗るガンダムの
コクピット形式である【コントロールパネル制御式】に関しての話題を取り上げる。
彼女たちは、複雑に入り混じったコンピュータパネルの配置やスイッチが乱立する
【コントロールパネル制御式】コクピットをうまく扱えないことを自負していた。
「確かに、あれは慣れが必要だよねえ。メンテナンスとかで覚えちゃえばいいんだけれどさ。」
「そうそう、一度覚えちゃえば、ボタンやスイッチの配置や配線図とかも自然と身につくし。」
カロラスとキャスタ、口をそろえて一度覚えればいいという回答。
「そこまで私、頭の容量多くないってーの…。」
薄目と少し青ざめた表情のジュピア。
「でも、慣れちゃえばそこまで苦にはならないかな。
【コントロールパネル制御式】コクピットは、一年戦争時代から続くモビルスーツの歴史の中で
伝統的ともいえるコクピット形式だからね。
惑星移動用の車両や航空機、さらには宇宙旅客機なんかもこのコクピット形式だし。
複雑に見える回路も、実は数個の配線ボックスから伸びてるものだよ。
モビルスーツのサービスマニュアルなんかも、配線図はちゃんと系統別に分けられてるんだ。
【コントロールグリップ】
【ブースト、ジャンプペダル】と【姿勢制御装置系統】
【コントロールデバイス】と【タッチパネル】
あたりが、配線別に分けられてて、そこの起動シーケンス制御装置も大体の機体は統一されているかな。
ちゃんと女性でも扱えるように、サービスマニュアルにガイダンスも書いてあるよ。
メーカー別で癖はあるけれどね。」
アシュレイ、趣味で自分のモビルスーツをいじっているためか、モビルスーツの構造に関しては博識であった。
カロラスとキャスタの回答に補足を加える。
「スイッチの役割は、各種機能の補助的な役割を果たすんだ。
腕の動きをパターン化してるなら、切り替えスイッチで変えてあげれば、別パターンの動かし方にもなる。
脚部の動きも歩行から走行に変えるのも切り替えスイッチだよ。
まあ大まかに【コントロールパネル制御式】の利点を挙げると
・スイッチ・デバイスが旧式のもののため、整備性に優れる
・さまざまな工業・作業・戦闘用途に合わせやすく、汎用性が高い
・コクピット周辺機器が安価なため、機体コストが幾分か安い
欠点は
・スイッチの配置がやや複雑で、習熟に時間がかかる
・自分でメンテナンスできるのが強みのため、モビルスーツ整備技能がやや必要
ってとこだろうね。」
アシュレイからの、【コントロールパネル制御式】コクピットに関する説明が終わる。
ここからは、ジュピア・マールが乗るモビルスーツの話に変わる。
「ジュピアさんやマールさんは【タッチパネル制御式】コクピットだね。
全天周囲モニター、エアスクリーンウィンドウ、音声認識システムなど、様々な最新技術を投入された
次世代のコクピットだ。女性でも扱いやすいと評判で、最新のモビルスーツはこのコクピット制御方式だね。
【グリプス戦役】から普及し始めたこのコクピットは、宇宙世紀時代とリギルドセンチュリー時代では主流だったんだ。
でも、整備性の難しさや、パーツがどうしても高感度センサーなんかが要るんで、割高になりやすい、
それに伴い機体コストがかさむということで、徐々に数を減らしながら、現在のコクピット二種類という方式に落ち着いた。
大まかな【タッチパネル制御式】の利点は
・複雑な機構を必要とせず、【ユニットコントロールスティック】とエアスクリーンウィンドウにて
大部分の制御や戦闘が可能になる
・女性でも使いやすい機構の上、音声認識システム、システムリカバリーなどで不測の事態も回避しやすい
・直感的な操作が可能。人を選ばない。
・全周囲が見渡せるので、視覚的アドバンテージが大きい
欠点は
・センサーが不具合などを起こした場合、位置調整などの初期メンテナンスが必要
・センサーが精密部品のため、機体ダメージがセンサー破損につながる恐れがある
・パーツが高価で、維持が大変
・生産時に機体コストがかさむ
あたりかな。
それぞれに長所や短所があるけれど、それぞれに合うコクピットでいいんじゃないかな。
あとは、しっかり自分のモビルスーツのメンテナンスを怠らないこと!
これに尽きるだろうね。」
アシュレイのモビルスーツコクピット講座が終わる。
「そうね、私たちも【知らなかったじゃ済まされない事態】に直面するかもしれないものね。」
「ああ、自分の命を預ける相棒だからな。しっかり知っておかないとな。」
ジュピアとカール、アシュレイからの話を受け、自分の武器である
モビルスーツに関しての知識意欲が高まったようだ。
「皆さん、モビルスーツのパーツ交換が終わりました!
各自チェックをお願いします!」
リフレッシュルームの作業エリア側から入ってきた作業員が、バハムートモビルスーツチームメンバーに
モビルスーツのメンテナンス完了を伝えた。
「んじゃ、取り掛かりますか!」
全員、通信用インカムを取り付けて、メンテナンス作業開始。
アシュレイ・トーマス・キャスタ・カロラスの補助の元、
戦士たちは、戦う鎧、その相棒たちを知り、学び、深めていく。
—未曾有の強敵に、打ち勝つために…!
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.129 )
- 日時: 2015/04/11 21:37
- 名前: Laevatain (ID: Jg8CXhDq)
第三十九話 侵略〜希望を刈取りし欲望、人々を喰らわんとす〜
—カウントダウン:5—
—フロンティアワークショップ地下工場都市「デ・レ・マシニカ」にて—
モビルスーツのメンテナンス作業から約1時間経過。
各バハムートモビルスーツチームメンバーは、マシンセットアップの最終段階作業に差し掛かっていた。
「カール、キャリブレーション(計器補正)スイッチ押して。」
「ほいほいっと。」
カールが、ガンダムフェンサーのコクピット正面モニター下部にあるメンテナンスコンパネより、
キャリブレーションスイッチのオンオフを切り替える。
ガンダムフェンサーのコンソール画面に表示される各数値がゼロバランスを行い、
計器類の0点・原点に戻し、基準点を設定する。
さらに、外部からカロラスがガンダムソルジャーの真正面からメンテナンス用コンピュータより
確認用の計器信号を発生させる。
設定された量・大きさの信号を擬似的に発生させ、ガンダムソルジャーの計器類に
誤差が無いかを確認する作業である。
現代工業用語で言うところの「校正」という作業に当たるだろうか。
結果、ガンダムフェンサーは設定された数値と同等の数値を認識・表示した。
従って、ガンダムフェンサーの計器類は問題ないものとして判断された。
「ガンダムフェンサー異常なーし!」
「オッケー!」
コクピットハッチを空けて、カロラスとカールがサムズアップで合図を送る。
さらに、ガンダムフェンサーのコクピット後部にあるトイレエリア。
吐瀉物が機体振動でシェイクされ、とんでもない状態になっていたが
フロンティア社スタッフの懸命な清掃作業により、汚れひとつ無い
ピカピカの状態になっていた。流石スタッフである。
この調子で、他のモビルスーツもメンテナンスが完了していたが
苦戦しているメンバーもいた。
ジュピアである。
「ええと、これがこうで…これが…こうで…。」
うわ言の様に、確認するようにスイッチ関連を確認するが、
目線と手先がおぼつかない。
完全に機械関係が苦手な様子が、見ていて理解することができるだろう。
スイッチといっても、目の前にあるコンソールがメインスイッチの役割を果たす。
タッチパネルでメニューを選択し、決定する。
「ジュピアさーん!キャリブレーション確認するよー!
【設定】から【計器類確認】の項目に進んでー!
できたら合図ちょうだーい!」
ジュピアのガンダムソルジャー足元で、計器類を確認しながらキャスタが叫ぶ。
「あっ!わかったわ!ちょっと待ってて!」
ジュピアはタッチパネルで、【設定】項目をタッチする。
しかし、彼女が次の項目で設定したのは、【機体整備】項目であった。
【タッチパネル制御式】の【機体整備】項目は、自動で整備作業を行う。
ガンダムの各関節部の機械の冷却や作動を行う【潤滑油】の廃油から、
機械内部の金属の摩耗により起きる微細な金属ごみを綺麗にするため、
あえて新しい潤滑油を供給しては廃油する【フラッシング】と呼ばれる作業を行い、
新しい潤滑油を供給し、一定油量を得て供給作業を停止する。
その後、各部の関節系の動作確認や機体のシステムチェックを自動で行うのだ。
タッチパネルには
”整備作業を開始しますか?”
”【はい】 【いいえ】”
が表示される。
前の項目に戻るには、左上にある×ボタンを押し、戻らなければならない。
しかし、ジュピアはこの画面を迎えた瞬間困惑。
間違えて、【はい】を押してしまう。
—その結果—
ジュピアのガンダムソルジャーの整備作業が開始。
廃油作業が開始され、潤滑油の廃油作業が始まった。
しかし
廃油口は開いていないため、各関節部の機械の隙間から、
潤滑油が噴き出してきた。
潤滑油は油の粘度が高いため、水のように噴き出すわけではない。
まるで関節部から、怪我した部分から流れる血のように
オイルがにじみ出てくるのだ。
その姿は、ガンダムソルジャーが流血しているようにも見える。
「って!ジュピアさん何やってるの!?オイル出てるわよ!」
慌てるキャスタに駆け寄るトーマス。
その後、ようやくガンダムソルジャーの廃油作業が中断された。
が、ガンダムソルジャーはオイルまみれのままである。
「ごめんなさい…。」
平謝りのジュピア。
「…これは、一度【モビルスーツ・ウォッシャー】に通さないとダメね。
それが終わったら、アタシと一緒にやりましょ。」
【モビルスーツ・ウォッシャー】とは、モビルスーツ用の自動洗車機のようなものである。
回転するブラシや洗剤、高圧水などを用いてモビルスーツの装甲汚れを洗浄するのである。
キャスタは、一度モビルスーツを洗浄し、その後同伴で作業を行うという提案を持ち出した。
「まあ、仕方ないよなぁ。」
「機械苦手ならねぇ。」
ジュピアの意外な弱点が発覚した一幕であった。
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.130 )
- 日時: 2015/04/12 11:14
- 名前: Laevatain (ID: Jg8CXhDq)
第三十九話 侵略〜希望を刈取りし欲望、人々を喰らわんとす〜
—カウントダウン:4—
—フロンティアワークス本社・社長室にて—
「—以上が大まかな説明になります。
ご清聴、ありがとうございました。」
煌重工業株式会社
人間工学課 課長 アキトシ=マイハマ(舞浜明敏)
AI技術開発研究課 課長 ユウスケ=マツザカ(松坂悠祐)
シヴィライゼーションコーポレーション
社長 ワーナー=ガルシア
アライアンズ【懇談会】メンバーの重鎮達による、新技術の提案や
それに伴う事業拡大や新しい事業案内を主としたプレゼンテーションが終わる。
基本的な内容としては
・【自律AI搭載無人モビルスーツ】の実用化
・【MV(モビルボーグ)】の開発成功と生産化に向けて。
(MV:モビルボーグ
サイボーグとモビルスーツの融合体として、アライアンズが開発している新兵器。
人間の死体から脳髄と神経系を抜き取り、それをバイオボーグ(電子培養骨格)にオミット。
バイオボーグをモビルスーツへと搭載することで製作される。
バイオボーグに取り込まれたことにより死んだ精神は、
モビルスーツに生まれ変わったかのように機体の手足を動かせるようになる。
つまり、人間がモビルスーツに成り代わることが可能である。
メリットとしては
・操作の誤差も発生しない
・訓練すれば、熟練のモビルスーツパイロットが乗るエース機ですら撃破可能の圏内になる。
・人件費も削減できる
といった内容である。)
・上記二つの兵器を取り入れた人造兵器生産計画と、PMC(民間軍事企業)事業の開始。
あらゆる戦争や紛争に、金を得て介入し、戦争をコントロールする。
得た金はさらに企業が進化するための踏み台となる。
その踏み台として、PMC企業数社をTOBにて買収。子会社化に成功したという報告。
本人たちは、友好的買収による子会社化とジーニアスには伝えた。
(TOB[take-over bid]:株式公開買い付け。
M&A[mergers and acquisitions(企業の合併と買収)]に関する用語。
目的の銘柄の 「株式」 を取得するために、その買付内容を 「公開(宣言)」 し、
証券取引所を仲介しないで不特定多数の株主から 「買い付ける」行為のこと。
指定された日時に市場価格よりも上乗せされた価格で、企業の株式を買占めるため、
株式トレーダーからすれば株式を手放すチャンスであり、買い取る企業からすれば
その会社を手に入れる絶好のチャンスである。
さらに、値段も提示しているため買収の予想金額を立てやすく、
株が予定数に達しなかった場合、TOBを中止するということも可能である。
これにより発生するのが
・相手の会社を乗っ取る「買収」
・子会社と経営共同する「合併」
である。
基礎情報として、買い手企業は買収対象企業の株式を
過半数(50%)所持していると買収対象企業の経営権を
得ることとなり、実質その企業を手に入れることが出来る。
基本は経営難に陥った企業に手を差し伸べる形で企業株を買い上げ、
大企業グループの傘下で経営を維持することが多い。
これが【友好的買収】と呼ばれ、世間的からも良いイメージで認知されるケースである。
また、後述の【敵対的買収】を仕掛けられた会社の経営陣が、
自分たちを追い出すおそれのある買収者よりも、
別の友好的な会社に自分たちに有利な条件で買収してもらいたいと望む場合もある。
そのような友好的な会社となる買収相手を、経済用語でホワイトナイト(白馬の騎士)と言う。
友好的買収とは反対に、企業などの買収目的で一方的にTOBを使って、
経営権を得ようと株式の大量保有を目指す場合は【敵対的買収】となる。
もちろん、今回の買収は敵対的買収にあたる。
アライアンズの圧倒的な資産を前にホワイトナイトとなる企業は現れず、そのまま買収が通ってしまった。
被害にあったPMC各社は、子会社化を防ぐために講義した
が、その後アライアンズの手痛い報復を受け、止むを得ず屈服したという。
PMC企業の一つであった、株式会社オーダーオブフリーダムも、この一連の流れの被害者。)
・以上の提案をした上で、フロンティアワークショップ社のアライアンズ参入の提案。
参入を認めた場合、特別優遇をしたいとのこと。
であった。
が
もちろん、慈善活動や人類の未来のために、私財を惜しまないフロンティア社の
社長ジーニアス=ツァイスが、こんな無茶苦茶かつ乱暴で慈善の欠片も見えない
傍若無人な事業活動に良い顔をするわけがなかった。
ジーニアスの顔が険しくなる。
「さて、ジーニアス社長。
【我等と共に、企業が人類を導く未来を歩んでは下さいませんか?】」
シヴィライゼーション社(以下Civ社)社長
ワーナー=ガルシアが、ジーニアスに問いかける。
【アライアンズ参入の返事】を、ジーニアスに求めているのだ。
しかし、ジーニアスにはガルシアの台詞がこう聞こえてきた。
【私たちと共に、人類を支配し、金を撒き上げ豊かな生活をしようではありませんか?】
と。
ガルシア一つ一つの台詞が、偽善染みているとジーニアスは感じていた。
ジーニアスには、ガルシアの言葉と同時に、ガルシアの吐く息の音、吸う息の音、
心臓の鼓動、脈音などが聞こえていた。
そういった混濁した意識の中で真実が、人の裏が、本音が、聞こえてくるのだ。
—【アウェイカー能力】だろうか?
一瞬の沈黙。
長く感じる一秒。
重くのしかかる1分。
ジーニアスが口を開く。
【決意】と、曲げぬ【意志】を持ち、剣に変えて欲望を切り裂いた。
「…この未来は、果たして人類が本当に幸せになれるのでしょうか?
我々が戦争をコントロールする?それで経済活動をする?
得た金を還元せず、自分たちのために使う?
…【無いですね。】
【有難い話でしたが、謹んでお断りさせていただきます】。
あなた方が提案したその内容には、【人を幸せにするという意志が無い】。」
ジーニアスのこの一言の反撃。
ガルシアの表情が、営業笑顔から徐々に本心の素顔に変わっていく。
【笑顔の仮面】が、音を立ててひび割れていく。
「そうですか…いやぁ残念だ。
【このアライアンズ参入が、あなた方が生き残る唯一の手段だと丁寧に説明したというのに…】。
ジーニアス社長、今、貴方が置かれている状況が理解できていますか?
【我々は、先ほど説明した全ての戦力を保有しているのですよ?】
つまり
【我々は、その戦力の矛先を何時でもこの美しい惑星に向けることができるのですよ?】
よくお考えいただきたい。
その上で、【もう一度、貴方の屈託の無いご意見を伺うことにしましょう。】
では、本日はこれにて失礼させていただきます。
【よい返事を、期待しますよ?ジーニアス社長。】」
そうガルシアが釘を刺し、設備を片付け、社長室を後にした。
その社長室を去る間際に、ガルシアが一言。
「そういえば…ジーニアス社長。この社長室…いえ、この会社、この惑星。
【臭いますね!臭い!腐った汚水が満ちた下水道を逃げ回るドブネズミの臭いがします!
ちゃんと、衛生環境に気を配ってますか?
まさか…穏健派から逃げ回っている犯罪者というドブネズミ、匿ってませんか?
まあ、それは後日伺う事にしましょう!
次の訪問時は、私の連れが持つ荷物が重くて大変になりそうですな!】」
こうして、静かなる戦闘は幕を閉じた—
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