二次創作小説(映像)※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

機動騎士ガンダムInceptor(インセプター)
日時: 2015/07/25 13:01
名前: Laevatain (ID: rZuUN0S4)
参照: http://laevatain1408.blog.fc2.com/

今までのガンダムシリーズ(主に一年戦争以降からの時代観)を踏襲して
作成したガンダムの二次創作になります。

作成者は妄想大好きなおじさんです。

こんなつたない小説ですが、お付き合いいただければと思います。

STORY
かつて、人類は母なる大地「地球」を方舟に生活していた。
だが、その過剰な人口はやがて「地球」を取り合い、争いを引き起こした。
そして宇宙に生活圏を拡大させてもなお、「地球」をめぐる争いは終わらなかった。
やがて「地球」は人類の手によって汚染され、醜くなっていった。
人類は相談し、「地球」を巣立ち、新たな新天地「火星」に生活圏を移す。
それから約2世紀。
銀河系第35宙域管轄コロニー「サイドアルファ」。
ここにコスモポリスとして従事する青年「アレス・ウィザール」
彼と1体のMSの出会いから、全ての歯車は動き出す。
絶望の運命を希望の未来へ変える歯車が・・・。

—人は、誰かを守るために、「騎士」となる—

用語
セカンド・ノア(第二の箱舟)
第二の地球。火星をテラフォーミングし、地球と同じ環境にした惑星である。

ロスト・ガイア(失われた楽園)
過去の地球。過去の大戦やMSによる戦争により、自然環境コントロールが乱れ、化石燃料は
潰え、汚染されて人類が住めなくなった地球。火星移住から2世紀後、大気は完全に無くなり、
かつての青く美しい星は黒ずんだ地表が見える無残な姿となった。


GU(ギャラクシーユニオンズ:銀河連合同盟)
銀河惑星間での統治が進み、各惑星の政府による政治・法律上におけるルールを確約させる
政治機関。とどのつまり現代の国際連合。
現在は革新派(自由な未来と悪質企業の根絶を訴える派閥)と穏健派(現在の企業紛争を
黙認する派。闇献金を受け取る悪質な議員が多い。)の争いが激化している。

企業
地球時代における国がつぶれてから、企業が力を持つようになり、もはや企業が惑星政府と
同じ権力を持つようになった。それにより、圧政や重労働なども問題になり、
GUが企業の暴走を抑えようと奔走している。しかし、反発する企業も少なくは無い。
現在は各企業間における未統治惑星の資源獲得戦争や紛争が後を絶えない。
そのため、軍備拡大を急ぐ企業が増えつつあり、各企業がGU軍へ宣戦するのではと危惧されている。
そしてそれは、30年前の第一次企業戦争により現実のものとなった。

コスモポリス
GU管理下の宇宙警察機構。

オーディン
GU軍第01強襲攻撃部隊。
革新派の傘下軍であり、自由を目指し戦う軍。市民からはヒーロー扱いされている。
母艦はたった1隻だが、その実力は計り知れない。
母艦は強襲戦闘艦「バハムートゼロ」

プロジェクト ライト&ダークネス(光と闇の機兵計画)
「第二次企業戦争」において、アライアンズに対抗すべく計画されたGU軍極秘新型MS開発プロジェクト。
ライトサイドとダークネスサイドのコンセプトから成り立つ。
ライトサイド セイントガンダム
ダークネスサイド ナイトメアガンダム
この二機のMSを基盤に、アライアンズ撃破のきっかけを生み出そうとしていた。
このプロジェクトの進行部隊はオーディンである。

企業戦争グリードウォー
企業がGUに反発し、起きた戦争。
第1次企業戦争では、全企業が一斉に武装蜂起し、GU軍との全面戦争となった。
GU軍が市民の安全と自由を主張し、企業側が利益の優先、そのための人命の犠牲は必要経費だという反論。
もちろん企業の横暴を市民が許すはずが無い。各企業の従業員は一斉にボイコットしたため企業側の戦力補給がストップ。
企業は窮地に立たされる。
そして企業は、禁断の大量破壊毒物兵器による非人道的な虐殺を敢行。サイドクスィーとサイドツェーラを毒殺し、壊滅させた。
この悪行により世論は大激怒。GU軍はこの後押しもあり、ついに企業側を屈服させる。企業側も降伏を宣言。
これにより、18年間に続く第1次企業戦争は終幕した。
それから10年後、ちりばめられた解体企業を収束させて、新たに3つの大企業が設立される。
その企業達が軍事同盟と産業通商同盟を締結。組織名をアライアンズとする。
アライアンズは、約2年前にGU軍に向かい「復讐のときは来たれり!」と宣戦を布告。
こうして、第2次企業戦争の火蓋が切って落とされたのだった。

モビルスーツ
宇宙開発時代と呼ばれる「宇宙世紀」時代において勃発した、
「一年戦争」と呼ばれる戦争により生まれた人型戦闘兵器。
宇宙の微細粒子により、レーダーなどの無視界戦闘が不可能となった本戦争にて、
有視界戦闘の基盤を確立させた兵器でもある。
特に後述する「ガンダム」と、当時戦争を繰り広げた「ジオン公国」は、
歴史の教科書にその名を刻まれる程、
人類とモビルスーツの歴史を学ぶ上では欠かせない存在。
その後、様々な企業においてモビルスーツは建設用・土木作業用・宇宙開発用などが開発され、
あらゆる分野で人類の開発を支えてきた産業機械となり、今日の宇宙経済の基盤を固めている機械となった。
個人で所有するものも珍しくなく、モビルスーツは「兵器」としてではなく「ありふれたもの」として、
人々に浸透している。

ガンダム
「一年戦争」と呼ばれる、モビルスーツ最古の戦争において、
地球連邦軍が開発した高性能モビルスーツ。
さまざまな派生機種が存在する、由緒ある機体。
現在ではガンダムの特徴的なVアンテナとフェイス、G-ロンダクトプログラム
テクノロジー社が販売するGUNDAM OSを搭載した登録商標商品として流通しているモビルスーツを指す。
ガンダムは主に、フロンティアワークショップ社が
生産、販売を行っている主力商品として認知されている。
独占商品ではなく、さまざまな機種が他企業からも
進出しているが、ガンダム単体の性能では
フロンティア社の右に出るものはいない。
そのため、他企業はガンダムを上回る製品の開発に
奔走するケースが後を絶たない。
ちなみに、ガンダムは大衆の間では最も馴染み深く、
モビルスーツの象徴とも呼べる機体である。

ジェネレータ技術
ムーンレィス(∀ガンダム時代)戦乱後に始まった、宇宙開拓時代の中で新たに見つけた鉱物。
そこには、未知のエネルギーが詰まっているものだった。
その鉱物の名は「エーテライウム」。
このエーテライウムから抽出したエネルギーを「エーテネルゲンエネルギー」と呼ぶ。
エーテネルゲンエネルギーは、簡単な電気変換回路により電力へと変換される。
しかしその発電規模が、既存の化石燃料のおよそ3000倍〜5000倍に相当するものであった。
これにより化石燃料・原子力により起動されていた各機械のジェネレータは淘汰され、
エーテネルゲンエネルギー式のジェネレータ「エリクシル式ジェネレータ」へと移行される。
また、エーテネルゲンは人体への影響がほぼ無く、安全に使えるものとしての評価もあり、
瞬く間に時代はエーテネルゲンエネルギー循環型社会へと変貌する。
エーテライウムにはもうひとつ特徴があった。それは「精錬」に伴う「エネルギー付与」。
エーテライウムは加工のしやすさも売りであり、鉄などの金属の添加物にエーテライウムを数%含ませて精錬させると、
精錬された金属にエーテネルゲンエネルギーを帯びた状態で精錬することが出来るのだ。
これもあり、たやすくなおかつ大量にエネルギーの元を生産できるとして、化石燃料の枯渇に伴う人類の衰退の心配は完璧に無くなり
人類は安心して宇宙開発を行うことが出来るという現在の社会形態が確立したのである。

※この作品におけるビームサーベルは、ビームの噴出によって刃が形成されるものではない。
ビーム出力の上昇によって、ビーム噴出を維持することが
テクノロジー上不可能になったからである。
この作品でのビームサーベルは、折りたたみ式アンテナのように、
伸縮可能な棒状の兵装の表面からビームが噴出し
形成されるものである。
ビームサーベルにも耐久性があり、出力の低いビームサーベルは、
鍔迫り合いの際に負けて破損する可能性もある。

なお、このガンダムはジャンプ漫画の根源である
「努力・友情・勝利」をモチーフにしております。
何卒ご容赦ください。

ツイッターやってます。ご意見ご感想はこちらまで。
要望なども受け付けております。
上のURLからどうぞ。

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28



Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.56 )
日時: 2013/04/29 10:27
名前: Laevatain (ID: VHURwkNj)

第二十四話 蠢く闇—禁じられた悪魔の技術— 中部

ガウェート=アウァリーティアの死。瞬く間にアライアンズと穏健派勢力にこの速報は伝わる—

興業惑星「ウォルプタス」にて。
スポーツジムのトレーニングルームだろうか。
チェストプレスにて、上半身のトレーニングをしている男が居た。
ガウェートにも引けを取らない筋肉に引き締まった20代後半と思われるであろう男性の肉体が、裸の上半身から伺える。
しかし、首元で肌の色と貼りが変わっており、首から上は70歳前後の男性に見える。
首元にには継ぎ目にも似た境目があり、歪な肉体であるイメージを持つ。
「失礼します。先ほど、ガウェート議員の搭乗する戦艦「マンモン」の反応信号が消滅しました。
加えて、アトロファウネラ・ゲウゾの信号も消滅。ガウェート議員が死亡したものと思われます。」
秘書とも思える若い男性が、男に話しかける。
「…ガウェートが死んだか。あやつめ、ワシが手を差し伸べてやったのに…全く。
詰めが甘いからこうなるのだ、うつけめ。まあ、仕方が無いといってしまえばそれで終わりだ。
…報告はそれだけか?ならば、下がれ。トレーニングの邪魔だ。」
「…了解いたしました、アザック議員。」
そういうと、若い男は立ち去った。

「ふ…ぅ…。さて、こんなもんか。」
アザックと呼ばれた男、アザック=ルクスリアがシャワーを浴び、トレーニング終了後にサービスで提供される
ジャージに着替えてリフレッシュホールへ出た。
そこに、同じくしてリフレッシュホールに入ってきたスレンダーな20代前半の女性を見かける。
アザックの眼が、狩人の眼に変わる。

—この女の全てを食べてしまいたい—

今にも暴発しそうな「色欲ルクスリア」を抑えながら、彼は彼女を口説き始める。
そして、その口説きの中に彼は懐に忍ばせた札束をちらちらと女性に見せる。
女性は最初は警戒をしていたが、その札束を見た瞬間に警戒を解く。

数時間後、彼らはホテルに居た。
その一室で、嬌声が夜の闇に響いていた。
闇は色欲を隠し、事実を見えなくする。
まるで罪を受け入れるかのように、覆い隠す。

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.57 )
日時: 2013/05/01 09:52
名前: Laevatain (ID: VHURwkNj)

第二十四話 蠢く闇—禁じられた悪魔の技術— 後部


—同惑星内、イモータル研究所「アンブローシア」にて—

「ガウェート議員が亡くなられましたか…残念です。」
秘書からの話を受けて、少し肩を落とした痩せた男。
彼は体育座りのような体勢でソファーに座り込み、右手にコーヒーカップ、左手には受け皿を持っている。
「わかりました。もう下がって結構ですよ。」
「了解しました、ロバート議員。」
秘書は、自分の仕事へ戻っていった。
そして、ロバートと呼ばれた男はコーヒーを口に含む。
「はぁ…かったるいなぁ。秘書に指示するのも面倒だ。これだから人間との付き合いは嫌いだ。
僕の気持ちを満たしてくれるのは…何時だって機械だ。」
そういうと、彼は自分のノートパソコンを開く。
そこには、彼自身がプログラミングした女性人格のAIばかりのファイルがずらりと並んだフォルダがあり、
なおかつ二次元アニメキャラ少女のアイコン、壁紙、さらには3Dグラフィックまでとかなり手が込んでいる感がある。
[お帰りなさいませ、ご主人様☆]
[今日は、何をしてくれるの?べっ別に…楽しみになんかしてないんだからね!]
ノートパソコンから、起動していた女性人格AIが次々と喋りだす。
「ふふふ、君達はいつも可愛いなぁ…。今日は僕の可愛いAIたちが、いよいよ竜狩り前段階の準備をするんだ。
まるで大作アクションゲームみたいな感じでさ…MS用の自律AI…僕の可愛い娘達が、協力プレイで竜討伐するんだよ。」
ロバートは、恍惚の表情で機械の中にある彼女達を見つめる。

彼の名はロバート=アケーディア。
穏健派貴族院第3議長である。
【毒蟲女帝の8君主ブラックウィドウズ・モナーク】の中では
最年少の31歳で、電子工学・OS工学・AI技術の権威にも匹敵する天才である。
しかしその天才は、歪な方向へと進んでしまったようだ。

20分後、ロバートの居る室内へノックの音。
「失礼します、煌重工業の人間工学課と、AI技術開発研究課の課長殿、引き続きCiv社のMS開発生産課の課長殿がお見えです。」
先ほどの秘書のようだ。
「わかりました、どうぞ。」
ロバートは、少し気だるそうだ。
「失礼しますよ、ロバート議員。」
3人の男が入ってきた。

まずは、社交辞令の名刺交換。
ロバートの受け取った名刺には、こう書かれていた。

煌重工業株式会社
人間工学課 課長 アキトシ=マイハマ(舞浜明敏)
及び
AI技術開発研究課 課長 ユウスケ=マツザカ(松坂悠祐)

シヴィライゼーションコーポレーション
MS開発生産課 マクシム=トルバトール

「では、今後開発予定の【自律AI搭載無人MS】と【MV(モビルボーグ)】の調整会合を開きます。」
切り出すのはマクシム=トルバトール。
「してロバート議員、貴方のAIを採用したいのですが、いかがでしょうか?」
続いてマクシムの質問。
「ええ、大丈夫ですよ。僕のAI調整は80%完了しています。
もう少し思考ルーチンを煮詰め、戦闘判断プログラムの柔軟性試験と環境適応シーケンス試験の
回数を重ねれば、恐らく実戦投入できるAIになると思います。」
ロバートは、PCとプロジェクターを接続させた画面をスクリーンに映し、
投影されたグラフ、図、表をスライドさせながら説明をしていく。
「では、完成したAIは私のほうへ御願いいたします。私が量産化できるAIハードボックスと
MS制御プログラムとのAI連結を確立させ、簡略化できるようにします。」
ユウスケが、AI完成後の対応を述べる。
「して、【MV(モビルボーグ)】の進捗は?」
マクシムがアキトシに尋ねる。
「現在は、戦没者の肉体を集めている。そこから脳髄と神経系を抜き取ることになる。
それをバイオボーグ(電子培養骨格)にオミットし、MSへと搭載する。
すると、死んだ精神は、MSに生まれ変わったかのようにMSの手足を動かせるようになる。
つまり、人間がMSに成り代わることが可能である。操作の誤差も発生しない、人件費も削減できる。
これが【MV(モビルボーグ)】。サイボーグとMSの融合体だ。」
アキトシがMVに関しての説明をする。
「では、AI自律MSはAIが確立され次第、生産しましょう。
すでにPMC(民間軍事企業)数社との契約も取れています。
初期生産台数はおおよそ3000機と見て間違いは無いでしょう。
収益は約12000ユニバースの黒字と見ています。」
総合的な意見をまとめ、マクシムが自分達の現状と今後の予想を述べる。

…このように、悪魔染みた技術の会合を、延々と2時間かけて行っていた。

一方、アウェイカー養育室。

アクアスリープポッドに眠る、4人の少年少女。
彼らの眠るポッドのプレートには

「フィアーテイマーズ」

と書かれていた。

室内にて監視を続ける研究員達。
そこに、仮面の男グラニットが入ってきた。
「現在の段階を聞きたい。」
「はっ。現在、VRプログラムを65%クリア。調整は良好です。」
研究員が、少年少女のVRカリキュラム進捗を報告する。
「そうか。ではそろそろだな。【エレメンタルガンダム】の調整にも着手しろ。
あと、先手で【エレメントジェネレータ】のテストもしたい。
そうだな…我が社の新型【ケイゼル・ケンプファー】に、エレメントジェネレータを搭載する。
兵装を炎と氷にしよう。ジェネレータの最終調整に入れ。確認が取れ次第、生産ラインに報告。
ケイゼル・ケンプファーの生産にそのまま着手する。ぬかるなよ。」
「はっ。」
そういうと、グラニットは養育室を後にした。

グラニットが次に向かったのは人間工学室。
人間工学室のドアが自動で開く。

中は薄暗く、数機のポッドらしき機械があった。
その中で苦しむ男の姿…

ハイエナのギャレス。ギャレス=アードヴォルフであった。

グラニットがポッドのプログラムを停止させる。
ポッドのシャッターが開き、中からギャレスが崩れ落ちる。
「…っ!ハァ…ハァ…ハァ…ハァ!」
苦しむギャレス。
「ギャレス、一度休むか。30分後に再開しよう。」
何一つ表情を変えないグラニット。
「は…はいよ…旦那…。」
ギャレスは、いよいよ引き返せない領域まで来てしまった
そういう表情になっている。

(俺は、いつでも物を盗むときは軽い気持ちだった。
人を殺すときも、社会に唾吐く時もだ。
だが…それのツケがきたのかね?もう、戻れないかもな…。
人体改造の被験者…まさかあの脳内の通信機器がそれの手始めだったとはな。してやられたぜ…。
…だが、俺にアウェイカーの開眼だって?面白ぇじゃねぇか!
旦那と共に、この腐った時代を、人間社会を、引っ繰り返してやるぜ!)

—闇は欲望、陰謀、罪を全て隠し、宇宙を包み込む—

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.58 )
日時: 2013/05/01 20:07
名前: Laevatain (ID: VHURwkNj)

第二十五話 ギャレス=アードヴォルフ—罪の意識とその代償、その先に待つモノ— 前部

—俺の名はギャレス。ギャレス=アードヴォルフ。年齢は…28だったかな?
職業は様々だ。スパイ・体の良い盗賊・MSパイロット・工作員…。
企業に雇われて、あらゆる妨害・偵察行為を主な生業としていたよ。

俺のガキの頃は、まず娼婦とクソ野郎の赤ん坊というところから始まる。
第68宙域管理地区コロニー「アーヘラ」が俺の故郷…になるのか?
俺にはそういう感情はないからな。
ここである日、喘いだ女の叫びから俺が生まれた。
俺の母親は、金が無かったから人工妊娠中絶をしなかったらしい。
そのまま俺を適当な闇病院で産み落とし、スラムのど真ん中に捨てた。

普通ならそのまま勝手に死ぬようなストーリーだろ?
だが、俺は死ななかったんだ。

当時、その宙域で幅を利かせていたスペースマフィア「リスティス」。
このメンバーに拾われた。
聞くところによると、ガキを集めて工作員にしちまおうというマフィアの方針だったそうだ。

12歳までは養育がてら、スリ・盗聴・暗殺を叩き込まれた。
特に暗殺と盗聴などの工作員任務系が得意だったな。
サイレンサー(消音機)なしでのハンドガン暗殺は、羽根枕を消音材にしたりと、
結構機転が利いたんだぜ、俺?

15歳から普通のハイスクールに通いながら、周りの人間と溶け込む訓練をされた。
ハイスクールでは気づかれないようにスリを重ね、自分のスキルを磨いていた。
当然、バレるケースも少なくなかった。
その場合大体呼び出されるが、本物の死を自分の手で作り出したことのない連中だ。
全員、その場で血祭りにあげてやったさ…ナイフでな。
その後死体を地中に埋め、消息不明と言う形で片付けた。
—中途半端に傷つけるぐらいなら、命まで奪え—
これが、俺が幼少時代からマフィアにより叩き込まれた精神だ。
だから、俺は手を抜かなかった。
血を引き抜き、一滴残らず啜り食らう。
そうして他のクラスメートを食い漁っていった。

得たものは金と自分が生き抜くためのスキル。
失ったものは信頼できる友達を作るきっかけと他人の命。
失うもののディスアドバンテージがあまりにも少ない。
だから俺はこの道を選んだ。望んで選んだ。俺の「正義」が信ずるままに。

20前後には、いっぱしの工作員となって、何時しかマフィアからも

「ハイエナのギャレス」

こう…呼ばれるようになった。決して悪い気はしなかった。
ハイエナか、俺にはぴったりかもな。そう、思ったんだ。
MS戦闘においてもハイエナっぷりを遺憾なく発揮し、
弱った相手を狡猾に仕留めるスタイルが定着したんだ。
これが、一番リスクが少なくリターンがでかい戦術なんでね。

しかし、25のときに俺の所属マフィア「リスティス」が壊滅した。
どうやら、アライアンズ管理下の惑星に手を出したらしい。
報復として、とんでもねぇ数のMS部隊とMA部隊が押し寄せ、成す術は無かったらしいな。

何百人も捕らえられ、ボスは奴らの意思に反したため、公開処刑された。
残りは何かしらの生体実験に使われたようだ。
俺は…工作員としての経歴と実績を買われ、アドバンスドインダストリー社へ鞍替えした。
長いものには巻かれろ。俺のモットーでね。

鞍替え直後から、俺は革新派のMS研究員として潜伏していた。
その際に、俺は改造を少し受けた。新しい通信技術のサンプルになってくれないかと言うものだった。
俺はそれを何の疑問もなく受け入れる。人体への影響は少ない、というものだった。
改造後はギリーMS研究所にてナイトメアの一件まで、革新派の情報を横流ししていたってワケだ。

っと、ここまでは自己紹介にも似た俺の今までのいきさつだ。

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.59 )
日時: 2013/05/01 10:07
名前: Laevatain (ID: VHURwkNj)

第二十五話 ギャレス=アードヴォルフ—罪の意識とその代償、その先に待つモノ— 中部

ナイトメアの一軒の後、アーリマンへ帰投した俺。

帰投してからすぐに、グラニットの旦那が俺の様子を聞きに来た。
「ご苦労だった、ギャレス。長期任務で疲れただろう、ゆっくり休むと良い。」
労いの言葉か…。マフィア時代では無かったな。新鮮だった。
「ああ、大丈夫ですよ。お気遣い感謝します。」
俺の謙遜は、たどたどしい。
「…そうだ。君につけた通信機器だが、あの後に何か違和感は無いか?
頭痛がするとか、吐き気がするとかだ。些細なことでも良い。問題は無いだろうか?」
旦那が、ふと思い出したような表情で俺に質問する。
…副作用を心配しているのか?しかし、今現段階では、俺に目立った副作用は無い。
「今のところは大丈夫ですよ。」
「そうか、ではゆっくり休んでくれ。何かあったら、私に連絡してくれ。」
そう言うと、旦那はミーティングルームへ歩いていった。

その後のやりとりで、あの主任から余裕の表情が消えた。
徐々に死の恐怖で精神がやられちまったんだろうな。
だが、俺は奴に対して何も特別な感情を抱くことは無かった。

—所詮この世は弱肉強食。強きものが生き残り、弱きものは淘汰され、死んでいく—

この摂理には、誰にも敵うことが出来ない。
奴はその摂理に精神から食われ、そして死んでいった。それが答えだ。
俺は、奴の詰めの甘さと精神の弱さを嘲笑っていたよ。

俺には、罪の意識は無い。
自分が間違っていると思ったことは無い。
こんな世間体だ、誰も俺を否定できやしないさ。
だが、代償もちゃんとあった。
それは「何が正しいのかわからなくなる」ことだ。
結局は相対悪。互いの利益の邪魔になるならば、
お互いを蔑み、罵り、殺し合う。
そして下らない争いを繰り返す人類の歴史。
結局、時代は進化しても人間の根本原理は変わらない。
そんな人間社会に呆れつつも、俺は生き抜くために自分の「正義」を再確認していた。

—弱肉強食の正義をな—

アーリマンから降りた俺は、このアンブローシアにて長期休養を取ることになった。
ココには、俺が退屈しないものが多数存在するためである。退屈は嫌いなんだ。
VR戦闘訓練シュミレータや、殺戮体感型オンラインゲームを機軸に、
俺は自分が腐らないように、日々自分の鍛錬を欠かさなかった。
んじゃ風俗やデリバリーガール呼べば良いじゃねぇかって話になるよな?
俺はそれでは満たされないんだ。じゃあお前には性欲は無いのか?って言われれば嘘になる。
ただ、俺は女性と交わり、子孫を残す気にはなれなかった。
自分のドス黒い遺伝子を受け継いだ子供…絶対に幸せになれやしない。
俺のような人生を送るのは、俺だけで十分だ。
そして娼婦とクソ野郎との間に生まれた俺には、性交渉に異常な嫌悪感を示すようになった。

—こんなクソ遺伝子、俺の代だけで終わらせてやる。
だが、タダでは死なねぇ。この世を引っ繰り返してから死んでやる—

このアンブローシアは元々穏健派の施設だ。
重要な会議などもここで行われていた。
MS開発研究局もここにあったので、技術の粋がここに集約される形となったようだ。

まず見かけたのは、ここの元責任者であるアザック議員だった。
好色家と聞いている。ココに来るまでにどうやら何人か女を食ってきたようだ。
「ほう…君がギャレス君か…。なかなかいい体つきをしている。どうだ?最近は、お盛んかな?」
アザックのおっさんが、腰を振りながら俺に話しかけてくる。
…セクハラエロ親父が。俺はその手のネタが大嫌いなんだよ。
「俺は自分を磨くのがモットーなんですよ。死にたくないので。」
俺は、手に持っていたコーヒーを口に運びながらこう答えた。
俺の答えに、アザックのおっさんは残念そうな顔をしていた。
「そうか…君のような逞しい肉体には、さぞ女性が寄ってくるのだろうなと羨ましくてな。
君の年齢ならテクニックも豊富だろうし、女性を悦ばせるのは得意だろうと思ったんだ。
まあ、君がその手の方向に興味が無いなら仕方が無い。君の分までワシが愉しむとしよう…ハッハッハ。」
そう言うと、おっさんは俺に興味を失ったのか、そそくさと立ち去った。
胸糞悪いぜ。人の気も知らないで…。

—生産者になるぐらいなら、破壊者になって死んでやる—

次に見かけたのは、ガウェート議員だった。
奴は自分が設計したアトロファウ…なんだったけかな。長くて覚えられねぇ。
蝶型のMAの最終調整のために、ここを訪れたようだ。
その際に擦れ違い、奴は俺を見つめてはこう呟きやがった。
「ふん…金の亡者風情が。」
まるで見下したような眼で俺を卑下し、そのまま会議室へ入っていった。
蔑まれるのは職業柄慣れているから、問題はなかったな。
その後、ガウェート議員は死亡したそうだ。同期に未練タラタラだったらしい。
未練なんてものは自分の足を致命的に引っ張る。
命取りになるため、真っ先に切り捨てなければいけない感情。
そんなものを抱えているのがまず間違い。
奴の死亡は明確な未練をどうするべきかという問題を不正解した事による、案の定の結果だった。

んで、今居るのはロバート議員だったか。
筋金入りのオタクじゃねぇかアイツ…。ノートパソコン覗いたが、気味悪いなアレは。
二次元で自分の都合の良い人格キャラクター作成してどーすんだって感じだよ。
戦う相手はリアル。つまり三次元の血の通った人間だぞ?舐めてんのかコイツ。
コイツも長生きしないなと言うのが俺の予想だ。自分の策に溺れて死ぬ、そんな末路になりそうだ。

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.60 )
日時: 2013/07/07 08:27
名前: Laevatain (ID: VHURwkNj)

第二十五話 ギャレス=アードヴォルフ—罪の意識とその代償、その先に待つモノ— 後部


そんな中、一週間前だったか。

俺はいつものように、VRトレーニングとMSシュミレータの混合訓練に明け暮れていたところだ。
一通りカリキュラムが終わり、俺はリフレッシュルームへ入る。
中は綺麗に整列されており、目の前には自販機、テーブル、ゆったり出来るソファー
なんとシャワールームまである豪華仕様だ。まるで高級ホテルのようだな。
自販機には酒も売っている。しかも高級酒のビンや缶まである。
まずは汗を熱いシャワーで流し、体と心を整える。
次にルーム内に冷房をつける。設定温度は25℃。
この惑星では、現在俺の居るエリアは夏の気候だ。外気温は夜でも30℃を越える熱帯夜になる。
次に自販機に100ルナ硬貨を4枚投入。選ぶのは「リフレッシュスプラッシュ」と呼ばれる銘柄のビール。俺のイチオシ。
煙草に火をつけ、そっと紫煙をくゆらせながらかっ込む一杯。たまらなく旨い。
そしてアルコールを空きっ腹にぶち込みながら、俺は煙を立たせて自分の「正義」を再確認する。

—生き残りたくば、勝ち続けろ。全てにだ—

「ああ。勝ち続けるさ。俺は世間を引っくり返す程にデカくなる。絶対にだ。」
…誰に言ってるんだろうな、俺。空言をつぶやいては、ビールと煙草を交互に繰り返す。

そうしたありきたりな日常の夜。グラニットの旦那がリフレッシュルームへ入って来た。
「おお、ギャレス。久しぶりだな。調子はどうだ?」
久々の他人との会話。
「あー、ボチボチですよ、旦那。」
体の良い返し。他に喋るネタは無かった。
「そうか。…そうだ。君に見せたいものがあるんだ。近々、私と君だけの秘密を作りたい。
また、スケジュールをあけて説明する。その日だけはなるべく予定を空けておいてもらえないか?」
…また、任務か?今度は何処に行くんだろうな?
「わかりました。空けておきますよ、旦那。」
「ありがとう。では、体には気をつけてな。お休み。」
そういうと、旦那はルームから出て行った。
…時刻はAM1:48か。もう…寝るか。
そして俺は自室に戻り、床に就くことにした。

そして3日後。
事前に受けたメールに返信した俺は、グラニットの旦那と共にアンブローシアの地下に居た。
ここには、研究員も誰も居ない。
重役以上のトップシークレットだそうだ。
「ギャレス…君は、人間の悪意、つまり人間の欲望や絶望に飽き飽きしてはいないか?」
旦那…?いつもと様子が違う。まるで、自分の意志が無いような…。
「ああ、飽きてますねぶっちゃけ。どいつもこいつも自分のことばかり。
信念すらない盗賊風情って言われますがね、手前ぇらの方が信念ねぇっつーのって言うんすかね?」
旦那には嘘をつけない自分に、俺はココで気づいた。
…旦那。なんであんたは、俺の心の隙間を知ってるんだ?

そしてようやくたどり着いたのは、薄暗い生体研究室のようだった。
不気味なコンソールから物憂げに放り投げられた緑色の光と、
時折聞こえる水から発する気泡のような音が、さらに気味悪い印象を与える。
床面には漏れ出した水が張り詰められ、歩くたびに水のピチャピチャした音が乾いた研究室内に響く。

「ギャレス。君の心の闇、隙間は、私が一番知っている。
だから、私だけには隠し事をしなくていいんだ。
私は、君が満たされる方法を知っているからな。」
明らかに、旦那の様子が違う…だが、なんだ?この感じは。
なんで俺は旦那に逆らえないんだ?
なんで俺は旦那の声がしっかり聞こえているんだ?
…魅入られている?俺が?
「ギャレス、怖がらなくて良い。この奥にあるモノは…君の望む【世間を、そして全てを引っ繰り返すモノ】だ。」

旦那が、奥にある薄暗い光の中にうっすらと見える生体ポッドを指差す。

そいつは…思い出すと今でも恐ろしく感じる、まるで化け物のような【モノ】だった。
時折脈動しては静止し、その中で満たされた水に気泡が発生し、ゴポゴポ音を出しては蠢いている。

「ギャレス…君に教えよう…この名は…」

パラ…

旦那がその名を呼ぶその瞬間。

ゴポッ。

グキョッ。

ギロッ。

得体の知れない【モノ】が、俺を睨んだ。
明らかに目のような器官が現れ、それが開いて俺を見つめた。
その瞬間、おぞましい寒気と気持ち悪さに苛まれた。

…こ、これはなんだ!?化け物…!?怪物…!こ、これを人間が創ったというのか!?

最初は、コイツに恐怖しか抱かなかった。
コイツに殺されるんじゃないかって思ったよ。

「…だ。これで、私と君でこの下らない時代を引っ繰り返そうじゃないか…。」
旦那は、満面の笑みで俺を迎え入れてくれる。
この瞬間、俺の恐怖は消えた。
…薄気味悪いが、コイツから放つ未知の【悪意】、全てを変えるかも知れない力を、
無意識のうちに俺は感じていたのかもしれない。
これが、俺の力になるなら。俺が望む、全てを壊し、全てを作り変えられるなら。
俺は、自分を試したくなった。
「す…すげえ!これなら…このクソみたいな時代をぶち壊せる…!」
「そうか!私の意志が伝わって嬉しいよ。
そこで、君に御願いがあるんだ…。君に取り付けた通信機器を使い、
君のアウェイカーとしての資質を開眼することが出来る。
それには…君に特殊なトレーニングが必要だ。
危険も伴う…やってくれるか?」
旦那の言葉は、もはや麻薬のように俺を支配していた。
「…いいっすよ。俺は、自分を試したい!」

そして現在、ある程度のトレーニングを受けて俺は今、自分の愛機であるバル・エキスパートスタイルに居る。
ロバート議員のプロトタイプAIシステムを連れたテスト型バル8機と、
アライアンズ社員が搭乗する次期生産試作MS【ケイゼル・ケンプファー】4機が俺の僚機となる。
目標は、可能であれば敵MS部隊の壊滅と敵母艦の撃墜。
しかし、今回はデータ取得の方がメインのため、無理せず引き上げろとのことだ。
さてさて、死神と守護竜王の面々よ…この俺と旦那の【悪意】を退けられるか?
楽しみだ…生と死の間から、新しいものを見出すのは!—


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28



この掲示板は過去ログ化されています。