二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター)
- 日時: 2015/07/25 13:01
- 名前: Laevatain (ID: rZuUN0S4)
- 参照: http://laevatain1408.blog.fc2.com/
今までのガンダムシリーズ(主に一年戦争以降からの時代観)を踏襲して
作成したガンダムの二次創作になります。
作成者は妄想大好きなおじさんです。
こんなつたない小説ですが、お付き合いいただければと思います。
STORY
かつて、人類は母なる大地「地球」を方舟に生活していた。
だが、その過剰な人口はやがて「地球」を取り合い、争いを引き起こした。
そして宇宙に生活圏を拡大させてもなお、「地球」をめぐる争いは終わらなかった。
やがて「地球」は人類の手によって汚染され、醜くなっていった。
人類は相談し、「地球」を巣立ち、新たな新天地「火星」に生活圏を移す。
それから約2世紀。
銀河系第35宙域管轄コロニー「サイドアルファ」。
ここにコスモポリスとして従事する青年「アレス・ウィザール」
彼と1体のMSの出会いから、全ての歯車は動き出す。
絶望の運命を希望の未来へ変える歯車が・・・。
—人は、誰かを守るために、「騎士」となる—
用語
セカンド・ノア(第二の箱舟)
第二の地球。火星をテラフォーミングし、地球と同じ環境にした惑星である。
ロスト・ガイア(失われた楽園)
過去の地球。過去の大戦やMSによる戦争により、自然環境コントロールが乱れ、化石燃料は
潰え、汚染されて人類が住めなくなった地球。火星移住から2世紀後、大気は完全に無くなり、
かつての青く美しい星は黒ずんだ地表が見える無残な姿となった。
GU(ギャラクシーユニオンズ:銀河連合同盟)
銀河惑星間での統治が進み、各惑星の政府による政治・法律上におけるルールを確約させる
政治機関。とどのつまり現代の国際連合。
現在は革新派(自由な未来と悪質企業の根絶を訴える派閥)と穏健派(現在の企業紛争を
黙認する派。闇献金を受け取る悪質な議員が多い。)の争いが激化している。
企業
地球時代における国がつぶれてから、企業が力を持つようになり、もはや企業が惑星政府と
同じ権力を持つようになった。それにより、圧政や重労働なども問題になり、
GUが企業の暴走を抑えようと奔走している。しかし、反発する企業も少なくは無い。
現在は各企業間における未統治惑星の資源獲得戦争や紛争が後を絶えない。
そのため、軍備拡大を急ぐ企業が増えつつあり、各企業がGU軍へ宣戦するのではと危惧されている。
そしてそれは、30年前の第一次企業戦争により現実のものとなった。
コスモポリス
GU管理下の宇宙警察機構。
オーディン
GU軍第01強襲攻撃部隊。
革新派の傘下軍であり、自由を目指し戦う軍。市民からはヒーロー扱いされている。
母艦はたった1隻だが、その実力は計り知れない。
母艦は強襲戦闘艦「バハムートゼロ」
プロジェクト ライト&ダークネス(光と闇の機兵計画)
「第二次企業戦争」において、アライアンズに対抗すべく計画されたGU軍極秘新型MS開発プロジェクト。
ライトサイドとダークネスサイドのコンセプトから成り立つ。
ライトサイド セイントガンダム
ダークネスサイド ナイトメアガンダム
この二機のMSを基盤に、アライアンズ撃破のきっかけを生み出そうとしていた。
このプロジェクトの進行部隊はオーディンである。
企業戦争
企業がGUに反発し、起きた戦争。
第1次企業戦争では、全企業が一斉に武装蜂起し、GU軍との全面戦争となった。
GU軍が市民の安全と自由を主張し、企業側が利益の優先、そのための人命の犠牲は必要経費だという反論。
もちろん企業の横暴を市民が許すはずが無い。各企業の従業員は一斉にボイコットしたため企業側の戦力補給がストップ。
企業は窮地に立たされる。
そして企業は、禁断の大量破壊毒物兵器による非人道的な虐殺を敢行。サイドクスィーとサイドツェーラを毒殺し、壊滅させた。
この悪行により世論は大激怒。GU軍はこの後押しもあり、ついに企業側を屈服させる。企業側も降伏を宣言。
これにより、18年間に続く第1次企業戦争は終幕した。
それから10年後、ちりばめられた解体企業を収束させて、新たに3つの大企業が設立される。
その企業達が軍事同盟と産業通商同盟を締結。組織名をアライアンズとする。
アライアンズは、約2年前にGU軍に向かい「復讐のときは来たれり!」と宣戦を布告。
こうして、第2次企業戦争の火蓋が切って落とされたのだった。
モビルスーツ
宇宙開発時代と呼ばれる「宇宙世紀」時代において勃発した、
「一年戦争」と呼ばれる戦争により生まれた人型戦闘兵器。
宇宙の微細粒子により、レーダーなどの無視界戦闘が不可能となった本戦争にて、
有視界戦闘の基盤を確立させた兵器でもある。
特に後述する「ガンダム」と、当時戦争を繰り広げた「ジオン公国」は、
歴史の教科書にその名を刻まれる程、
人類とモビルスーツの歴史を学ぶ上では欠かせない存在。
その後、様々な企業においてモビルスーツは建設用・土木作業用・宇宙開発用などが開発され、
あらゆる分野で人類の開発を支えてきた産業機械となり、今日の宇宙経済の基盤を固めている機械となった。
個人で所有するものも珍しくなく、モビルスーツは「兵器」としてではなく「ありふれたもの」として、
人々に浸透している。
ガンダム
「一年戦争」と呼ばれる、モビルスーツ最古の戦争において、
地球連邦軍が開発した高性能モビルスーツ。
さまざまな派生機種が存在する、由緒ある機体。
現在ではガンダムの特徴的なVアンテナとフェイス、G-ロンダクトプログラム
テクノロジー社が販売するGUNDAM OSを搭載した登録商標商品として流通しているモビルスーツを指す。
ガンダムは主に、フロンティアワークショップ社が
生産、販売を行っている主力商品として認知されている。
独占商品ではなく、さまざまな機種が他企業からも
進出しているが、ガンダム単体の性能では
フロンティア社の右に出るものはいない。
そのため、他企業はガンダムを上回る製品の開発に
奔走するケースが後を絶たない。
ちなみに、ガンダムは大衆の間では最も馴染み深く、
モビルスーツの象徴とも呼べる機体である。
ジェネレータ技術
ムーンレィス(∀ガンダム時代)戦乱後に始まった、宇宙開拓時代の中で新たに見つけた鉱物。
そこには、未知のエネルギーが詰まっているものだった。
その鉱物の名は「エーテライウム」。
このエーテライウムから抽出したエネルギーを「エーテネルゲンエネルギー」と呼ぶ。
エーテネルゲンエネルギーは、簡単な電気変換回路により電力へと変換される。
しかしその発電規模が、既存の化石燃料のおよそ3000倍〜5000倍に相当するものであった。
これにより化石燃料・原子力により起動されていた各機械のジェネレータは淘汰され、
エーテネルゲンエネルギー式のジェネレータ「エリクシル式ジェネレータ」へと移行される。
また、エーテネルゲンは人体への影響がほぼ無く、安全に使えるものとしての評価もあり、
瞬く間に時代はエーテネルゲンエネルギー循環型社会へと変貌する。
エーテライウムにはもうひとつ特徴があった。それは「精錬」に伴う「エネルギー付与」。
エーテライウムは加工のしやすさも売りであり、鉄などの金属の添加物にエーテライウムを数%含ませて精錬させると、
精錬された金属にエーテネルゲンエネルギーを帯びた状態で精錬することが出来るのだ。
これもあり、たやすくなおかつ大量にエネルギーの元を生産できるとして、化石燃料の枯渇に伴う人類の衰退の心配は完璧に無くなり
人類は安心して宇宙開発を行うことが出来るという現在の社会形態が確立したのである。
※この作品におけるビームサーベルは、ビームの噴出によって刃が形成されるものではない。
ビーム出力の上昇によって、ビーム噴出を維持することが
テクノロジー上不可能になったからである。
この作品でのビームサーベルは、折りたたみ式アンテナのように、
伸縮可能な棒状の兵装の表面からビームが噴出し
形成されるものである。
ビームサーベルにも耐久性があり、出力の低いビームサーベルは、
鍔迫り合いの際に負けて破損する可能性もある。
なお、このガンダムはジャンプ漫画の根源である
「努力・友情・勝利」をモチーフにしております。
何卒ご容赦ください。
ツイッターやってます。ご意見ご感想はこちらまで。
要望なども受け付けております。
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- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.51 )
- 日時: 2013/04/13 10:07
- 名前: Laevatain (ID: VHURwkNj)
第二十二話 強欲—満たされぬ渇き 満たされぬ欲望— 後部
—暗い闇の中、見えた一筋の光—
平民出身の男は、死んだはずだった。
が、彼は再び光を目にする。
そこは、医務室のようだった。
咄嗟に起き上がるが、体中に痛みが走る。
「まだ起きてはなりませんわ!もう少し、お休みくださいませ?」
物腰柔らかな少女が、平民出身の男のそばに居た。
医務室には、見慣れた顔が多数あった。
自分の竜騎士軍に在籍していた、家族たちであった。
ほぼ全員居る。
キズが癒えて数日経過。
医務室に一人の男と3人の少女達、そして紅いハロが1機入ってくる。
「貴方は、デューク=ストレインさんだね?」
男が、話しかける。
「ああ、自己紹介がまだだったな。俺はカイサク=タイガ(日本名:大河海索・たいがかいさく)。
極東亜日星出身の元G.U.の特殊兵だよ。ヨロシクな。」
平民出身の男:デュークはカイサクの自己紹介だけで、この男が生き抜いてきた
激動の人生を垣間見た気がした。
「わかるよ。あんたも…穏健派のクズに裏切られたんだろう。
俺も…そうだった。」
カイサクの眼に哀愁が伝う。そして紅いハロを見つめては、悲しい表情になっていく。
「このままじゃダメだ。穏健派と一部の企業が権力と金を誇示する歪な時代になっちまう。
人間社会が、壊れちまう!人の希望も、想いも、夢も、愛も全部金と権力で全て奪い去られちまう!
頼む!貴方の力を貸して欲しい!
俺の後ろに居る彼女達も、俺の部下達も、奴らの忌わしき実験により生まれてしまった。
脱走を手引きしてくれた企業の援助もあって、逃げることが出来たんだ。
このままじゃ…ダメなんだ…!」
カイサク、必死の嘆願。
眼には、彼らの想い・苦しみ・悲しみがこみ上げ、デュークの左手に零れ落ちる。
「…俺は、自由を、愛を守るために軍人の道を選んだ。
お前の望む軍は、それを目指してくれるのか?
敗残兵に、また愛を守る戦いをさせてくれるのか?」
デュークは、覚悟を決意した瞳でカイサクに問いかける。
「…ああ!もちろんだ!
いや、軍じゃない。軍では規律と権力に左右される。
だから…俺達は…義賊になるんだ!
兄弟姉妹となり、互いを守る契りを交わすんだ!」
この瞬間、デュークの表情に驚きが入る。
—兄弟か、フッ。悪くない…!—
「ああ、兄弟か…いいな!
お前がリーダーとなってくれ、兄者!
俺は、お前の剣になろうぞ!」
「俺たちもついていくぜ、兄貴!」
「穏健派に仇なす自由の義賊、良い響きだなぁ!」
起き上がった元竜騎士軍の兵士から、新たなる力と意志を誇示するかのような叫び。
「ありがとう、デュークさん!」
カイサクがデュークの大きく強い手を握る。
「デュークで良いぞ、タイガー。」
カイサクがきょとんとする。
「タイガー?」
「カイサク=タイガだからタイガーだ。いい名だろう?」
カイサク、閃いた顔。
「よおし!今日から俺達は宇宙蛮族「センチュリオンズ」!
俺の名前は「オーランド=タイガー」だ!」
時は戻り、現在。
デュークは、過去を振り返りながら、眼前のMS部隊の攻撃を躱す。
ビームセイバー「ティソーナ」は、兄弟の契りを守るため、
緑色の一閃を繰り出す。
閃光が駆け巡り、30機のMSの群れを、ライザードが突き抜ける。
瞬間、次々と爆発するMSの群れ。
—復讐の竜騎士 今ここに 自らの汚名の返上 そして輝く未来への希望を 掴み取らん!—
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.52 )
- 日時: 2013/04/23 08:23
- 名前: Laevatain (ID: C5nAn.ic)
第二十三話 強欲の末路—蝶と言う名の蛾、太陽に届かず— 前部
宙域の中、迸る光と炎。
爆風と閃光が、暗黒の海を照らし出す。
儚く散る人命。まるで宇宙に輝く恒星の様。
己が誇りまたは欲望の牙を剥き出しにし、互いの首を刎ねるまで終わらない獣の死闘。
—戦争とは、理性ある人類という生き物を獣に変える—
竜騎士のような無骨なMS。ライザード。それを駆るは歴戦の勇者:デューク=ストレイン。
彼は、表情をひとつ変えずにスラスターペダルを踏み込む。
そして、眼球に映るモニターやセンサー、メーター計器類の情報を逐一把握、分析、記憶。
状況を割り出し、行動に移すまでの刹那。最早反射に等しい速度。
的確に敵MSの動きを把握しきった上で、彼はアームハンドルのグリップトリガーを引き抜く。
その瞬間、ライザードが右手に携えていた連射弾頭型ナパームバズーカランチャー「エクリクス」から
爆炎と共に弾頭が放たれ、宙域を駆け抜けながら暗黒の空間を光で切り裂く。
弾頭は途中で拡散し、爆炎が複数のノーディック・バル・ゲルググに命中する。
爆炎に飲まれたMSの軍勢は、着弾エリアからの焼夷熱撃による装甲低下を起こす。
彼らのコクピットコンソールからは、温度上昇異常のエラーを出し続け、
ラジエータの起動音がコクピット内に鈍く伝わり、ランプが点灯する。
しかし、焼夷熱撃によるダメージは、各機動部、関節部を的確に響いており、
それぞれのMSは本来の性能通りの運動性能を発揮できていない。
そこへ、竜騎士ライザードは緑色の一閃を次々に繰り出し、
地獄の炎に苦しむ欲望の権化達を次々に冥府へ送り込んでいく。
切り裂かれ、爆炎に包まれる穏健派のMS軍勢。
魂が現世から冥府の女王へ。そして彼らが犯して来た罪の重みにより彼女が彼らを導くのは地獄。断罪の瞬間。
デュークは、左眼の眼帯の奥に抱えていた傷が疼き、復讐の達成を実感していく。
「…?光が止んだ?どういう事だ?」
先ほどまで、狙撃部隊から狙撃を受け続けていたブラッドドラゴン・クルセイダーズ。
その狙撃部隊からの射撃が、ほぼ無くなり掛けていたのだ。
被弾したMSは総計で8機。大破無し。中破8機。死傷者無し。
通常の戦争ならば、奇跡に近い数字である。
「…通常ならこんな軽い被害で済む筈がない。アマゾネスか?」
デュークは、居なくなっていたヘル・アマゾネス部隊が狙撃部隊を撃破したのか。
そう考えていた。
しかし、彼もキャトレイの獣型MA「シャ・ノワール」及び、パンタールの獣型MA「ケット・シー」での速度では
あの狙撃部隊の射撃には間に合わないだろうと推測はしていた。
—別の何かか?援軍?—
穏健派のMSを捌きながら、思いあぐねる。
その中、ライザードのコンソールに通信が入る。
「ューク…デューク!聞こえてるかい!?」
ナルキス=ヴァーミリオンからであった。
「ナルキス?どうした?」
「現在、敵の狙撃部隊を約50%撃破したよ!あと、オーディンの連中が私達に
手を貸してくれるって言ってるんだ!私達も了承した!
ったく、オーディンの連中、物好きな上にお人好しだねぇ…!」
「オーディン…ザックか!あいつ…要らぬ節介を…フッ。」
ため息混じりに零れたデュークの微笑み。
まさかかつての部下に助けられるとな。
そう言わんばかりの表情だった。
「ザックの奴…!全く、優しいというか、甘いというか!」
「あの頃から、アイツは変わってないなぁ…!」
ライザードに、2機のドラーケルが駆けつける。
片方は銀、片方は金のカラーリングが施されていた。
ちなみに、ドラーケルのオリジナルカラーは緑である。
グリーンドラゴン階級というブラッドドラゴン・クルセイダーズの部隊階級が存在するためである。
「グントー!ヴォーノ!どうした!?」
デュークが、2機のMSに話しかける。
「部下達から、隊長の援護に回ってくれと嘆願されたんで来たんですよ!」
褐色の肌を持つ黒人の男。顔の左目付近を中心に、タトゥーをあしらっている。
彼がヴォーノ=ロドリゲスである。
彼が乗るドラーケルは、金色のカラーリングであった。
「それに、ザックが自分の部下を削ってまで俺達を立ててくれているんだ!
俺達で、汚名を着せたあのクズ野郎をぶちのめしましょう!」
白人の雰囲気の男。しかし、眼をクーデター中に潰されたようだ。
彼の眼は、バイザーのような機械が取り付いている。
彼の名はグントー=ポー。
彼のドラーケルは、銀色のカラーリングである。
デュークの微笑みが消え、戦闘する表情に戻る。
「ああ、そうだな。俺達の剣にザックの魂も込めて!
我らが汚名、今ここで返上せん!
グントー、ヴォーノ、俺に続け!」
「「はっ!」」
—3人の竜騎士、戦場を切り裂く—
戦闘開始から20分前後経過。
300も構えられていた穏健派のMS部隊は、残すところあと20とまで減っていた。
これを機に、ブラッドドラゴン・クルセイダーズの戦い方が変わる。
アタックスタンス・リーダーブレイク(攻撃方針・敵旗兵撃破)。
敵の母艦に集中攻撃をかけていく竜騎士の軍勢。
さらに、母艦「ザッハーク」と「アリアンロッド」の援護砲撃もあり
瞬く間に護衛のガルーダ級巡洋艦「ヒッポグリフ」2隻は宇宙の塵と消えていった。
そして、攻撃目標はいよいよ「マンモン」へと向けられる。
「マンモン」も迎撃システム、艦載砲撃と応戦するものの、
歴戦の勇者達には、戦艦なぞ宇宙を飛ぶ棺桶のようなものである。
逃げ場も無い上、MSのような小型で小回りの効く兵器に貼り付かれると振りほどくのも困難である。
そして、そのまま重要動力機関を破壊され、撃沈していく運命にある。
「マンモン」も、例外ではなかった。
次々に張り付いていく竜騎士のMS。
動力部を破壊され、各所に爆風が舞う。
敵のMSも妨害にかかるが、ドラーケル部隊は雑魚に斃されるような甘い部隊ではない。
きっちりと反撃され、20機前後の残存MS部隊は、全滅した。
その後、「マンモン」の爆風ペースが徐々に速くなる。
「マンモン」の艦内では警報と振動が鳴り響き、クルーは慌てふためいている。
罵声と怒号と奇声が鳴り響き、我先にへと脱出ポッドへ避難するクルー。
人間の強欲さが露になり、同じ仲間なのに、終いには殺しあう始末。
やがてポッド前で銃撃戦となり、血しぶきと叫び声を交し合う。
—そんな醜い争いをしても、結局死ぬのには変わりは無い—
その醜い争いの中に、ガウェート=アウァリーティアの姿は無かった。
彼は、薄暗い何かの中で、鋭い眼光を漲らせていた。
「ちっ!狙撃部隊は感づかれたか…まあ良い。想定の範囲内と言ってしまえばその通り。
私自らが、奴らに引導を渡してくれるわ!ククククク…!
この「マンモン」は、私の奥の手の隠れ蓑!見せてくれるわ、私の最後の足掻きを!
その足掻きで、私は全てを真の意味で手に入れるのだ!」
揺れる艦内の中で、ガウェートは静かに時を待っていた。
やがて艦の全てを爆風が包む。
脱出ポッドもその爆風に呑まれ、残らずクルーが死んでいく。
「マンモン」は、撃沈し、宇宙の瓦礫と化した。
「やりましたね、隊長!」
「これで、我が隊は報われました!」
安堵のグントーとヴォーノ。
「…安心するのはまだ早い様だぞ。あの爆風から何か気配を感じる…!」
デュークは、まだ気を緩めていない。
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.53 )
- 日時: 2013/07/06 19:55
- 名前: Laevatain (ID: VHURwkNj)
第二十三話 強欲の末路—蝶と言う名の蛾、太陽に届かず— 中部
爆炎から出てくるのは
巨大な影。
やがて露になるのは
巨大な
蝶。
MSの3〜4倍の大きさがあるであろう蝶型のMA。
8枚の翅がうねりながら、宇宙の空を飛び回る。
その翅一枚一枚に、まるで目玉のようなレーザービットが取り付いている。
絶えず眼球のように動き回るレーザービット。
やがて蝶は、胴体をうねらせ、竜騎士の前に立ちふさがる。
そして、機械音の甲高い声を上げ、まるで怪物のように咆哮する。
—化け物が!—
この場に居る誰もが、そう思ったことだろう。
ガウェート=アウァリーティアを除いては。
「ハハハハハハハハハハ!さあ、暴れるときが来た!
私は蝶になる!貴様を殺してなぁ、デューク!
ゾンビごときに私は斃せん!覚悟しろぉ!」
KRM-0088-BTFY-AVA アトロファネウラ・ゲウゾ
蝶型MA
翼眼搭載ビーム砲ビットユニット「ダヌィーロ」
尾部サンダーワイヤー「ハルキゲニア」
口腔部内臓ビームキャノン「ザヴェリューハ」
ビームバリアシェル搭載
穏健派第5攻撃部隊「マンモン」隊長兼議長「ガウェート=アウァリーティア」が操縦するMA。
蝶型のモチーフは、旧友であるデュークを貶めることにより、芋虫以下の自分が蝶のように羽ばたくイメージだという。
悪趣味な概観を持つMAである。
うねり狂うように動くアトロファネウラ・ゲウゾ。
翅をはためかせ、不気味な眼光を放ちながら、竜騎士部隊を睥睨する。
次の瞬間、翅のレーザービット「ダヌィーロ」が分離。
8機のレーザービットは、多角フォーメーションを形成し、光の線を描き始める。
不規則に、不規則に、暗黒の空間というキャンバスに描かれる光。
—しかし、その光は破滅を呼ぶ—
光の網を避ける竜騎士部隊。
光が巨大な隕石を包む。そして隕石は溶けてなくなっていた。
艦載のビーム砲台に匹敵する出力である。MSは防御すら許されない威力であった。
「下がれお前達!グントー、ヴォーノは俺に続け!少数で奴を叩く!」
デュークは、被害を抑えるために、母艦と残りの部隊に撤退命令を下す。
「貰ったぁ!」
その隙を突き、尾部サンダーワイヤー「ハルキゲニア」が牙を剥く。
無数の触手がライザード・ドラーケル2機を絡めとる。
「ぐっ!しまった!」
「あっけないなぁデューク!これで終わりにしてやる!苦しみながら死ねぇ!」
ワイヤーから、高圧電流が流し込まれる。
もろに高圧電流を受けるライザード・ドラーケル。
耐電流・電圧に優れている2機だが、長時間流し込まれるとそう長く持つものではない。
コクピット内のコンソールとセンサー、メーター計器が悲鳴をあげる。
さらに、金属部から少なからずの電流が人体へ流れてくる。
電気ショックにも似た衝撃が、彼らを襲う。
「ぐああああああああああああああああ!くそぉ!」
電撃に苦しむ竜騎士。
しかし、ライザード・ドラーケルの体から、青白い光が吹き零れる。
オーバーロードクロックを発動したのだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!グントー!ヴォーノ!俺に続けぇ!」
「「はっ!」」
電撃を諸共せず、3機のMSはワイヤーを引っ張りあげる。
アトロファネウラ・ゲウゾは、まるでジャイアントスイングを受けているかのように
ワイヤーを引っ張っている3機のMSを軸とし、振り回される。
「なんだとおおおおおおおお!?なんだこの…力は!」
ワイヤーの限界張力が来たようだ。
ワイヤーが引きちぎれ、アトロファネウラ・ゲウゾは放り出される。
「ぐっ、なんという規格外の出力だ!まさかこのMAを放り投げるとな…!
一筋縄ではいかんか!流石ゾンビということか!」
ガウェートが悪態をつきながら、慌てて姿勢を立て直す。
が、眼前に映るは竜騎士の影。
ライザードが、手に握る緑の刃を振り下ろす。
放たれる一閃。しかし、アトロファネウラ・ゲウゾはビームバリアシェルを展開。
ビームの膜によりエネルギー衝突を起こすティソーナ。
結局出力不足により、ティソーナの斬撃は弾かれてしまう。
「ちっ!まあ、そう易々とはいかんとは思ってはいたがな。」
いくら相手がどんな馬鹿であれ、この程度の反撃では斃せない、デュークはわかりきっていた結果に納得。
「そうそう上手く行くものか馬鹿め!」
ガウェートの額からは冷や汗が止まらない。
一見優勢に見えるデューク達。
しかし、一瞬デュークが気づく。
—翅についていた、ビームビットが無い—
予想できた結末。その一瞬。
瓦礫や隕石の物陰から、またもや光の線が描かれる。
それと同時に、もう一度尾部サンダーワイヤー「ハルキゲニア」が竜騎士達に襲い掛かる。
「ワンパターンだな…いや?何かあるか?」
デュークのかすかな予感。
光の網を潜り抜け、向かい来る触手をライザードはバズーカ、
ドラーケルはビームアサルトライフル「ネーブラ・ウェントゥス」にて応戦。
触手の群れを的確に排除していく。
戦いを重ねていくなか、ガウェートは、勝算すら怪しいものとなってきた。
その中で抱く感情— 何故奴はいつも自分より光り輝いているのか— 何故奴はこんなにも眩しいのか—
「…何故だ何故だ何故だ!何故お前はいつもぉ!私よりも光り輝いている!?何故私よりも先に進む!?
その光が欲しい!お前の光が欲しい!お前を殺せば、それが手に入るんだ!」
—自らを蝶と偽った蛾は、光を求めて天を彷徨い、太陽を追い続ける。
自らの身をその光と炎で焼かれるとも知らずに—
ガウェートは静かに口腔部内臓ビームキャノン「ザヴェリューハ」のエネルギーを充填していた。
狩人のように、敵の砲撃を躱しながら、静かに時を待つ。
バハムートゼロ、いよいよ戦闘エリアへ進行。
「索敵行きます!」
サフィアが二度目の索敵。念には念を。
レーダーには中規模の大きな機影に立ち向かう3つのMS信号。
射程外から狙っていたヅダ狙撃部隊は、残すところ1つのエリアに絞られた。
ここでザックはガンダムチームへ通信を入れる。
「こちらバハムート!状況は!?」
アレスが応答。
「こちらアレス!狙撃部隊は壊滅状態です!
いやぁ…今、センチュリオンズの女性部隊と共闘してるんですが、もはや無類の強さですよ…!」
現場では、パンタール・キャトレイを駆るヘル・アマゾネス部隊は、素早いスピードにて
狙撃部隊の射撃をいとも簡単にすり抜ける。
そして死角外からの刃。
ヅダは胴体を切り裂かれ、二つに分かれる。分かれた二つの影が光を放つ。
ガンダムチームも奮戦し、いよいよ最後の二機と迫った。
サフィアからの緊急報告。
「敵中型機影、高密度エネルギーを捕捉!ビームチャージをしている!?」
敵の中型機影が主砲チャージの可能性があることを知らせる。
「!まさか!?エネルギーの出力は!?」
「およそ200C(シャリエ)!大型戦艦のビーム砲出力に相当します!」
光学科学者アドルフ=シャリエが新たに打ち出した【シャリエの光学兵器学論】。
これにより、地球時代のビーム出力を測っていたW(ワット)単位は淘汰された。
換算式では、1GW(ギガワット)≒1C(シャリエ)である。
大型戦艦のビーム出力はおおよそ150〜200Cである。参考数値として。
もちろん、このビーム出力で放たれるビームはMSなぞ軽く飲み込み、跡形も無く消してしまう。
砲撃による援護も出来るはずだったザッハークとアリアンロッドは、
デュークの後退命令により、戦闘エリアを離れていた。
現在は、狙撃部隊と交戦中のアマゾネス部隊と合流するエリアまで来ている。
—間に合わない—
ザック、決断す。
「バハムート、敵交戦エリアへ!竜騎士を、中将を援護したい!
私情を挟んで申し訳ない!だが…俺はあの人を見殺しには出来ない!」
ザック、土下座のような姿勢でクルーへの嘆願。
「わかってましたよ艦長!」
「だって艦長、優しいですものね!恩師への敬愛、当然の感情です!」
クルーも笑顔の了解。
「「艦長さん、大丈夫。この艦の感情が伝わってくるの。
艦長さんの思いを果たしてあげたいって。ね?」」
ザックの肩に触れるミーニャとサーニャ。
「…ありがとう…!ありがとう…!」
ザックの感謝。眼は、様々な思いで滲んでいた。
「艦長…俺、行きますね!」
全てを聞いていたアレス。
狙撃部隊の交戦エリアから離れていく。
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.54 )
- 日時: 2013/04/23 08:21
- 名前: Laevatain (ID: C5nAn.ic)
第二十三話 強欲の末路—蝶と言う名の蛾、太陽に届かず— 後部
一方、戦闘エリア。
触手を破壊しつくし、残るはビームビットだけ。
そのビームビットも的確な隙を突いては破壊し、残りは3機。
しかし、機械仕掛けの蝶、その口から放つは虚無。
いよいよ充填が完了し、照準を合わせ終える。
ビームビットの射撃により、一点のエリアに集中するライザードとドラーケル2機。
瞬間。
蝶の口腔部から放たれるは、破滅の光。
「これでお終いだ!死ねええええええええええええええええええええええ!」
ガウェート、勝ち誇った表情。
「皆さん、下に逃げてください!バハムートの主砲も来ます!」
アレスから、ドラーケルとライザードに通信が入る。
「お前は、アレス!?」
「話は後です!」
瞬間、青白い光をまとったナイトメアが、バリアントマントの出力を最大にした状態で
ドラーケルとライザードに体当たりをかける形で抱え、ビームの射程範囲内へ逃げようとする。
反対の方向から、バハムートゼロの主砲「アトミック・フレア・ノヴァ」が火を噴く。
二つのビームが衝突するその刹那。
衝突エリアを避けるギリギリのエリアに、4機のMS機影。
すさまじいほどのエネルギー衝突により、4機のMSコクピットに振動が伝う。
メーター機の異常エラーが吠え続ける。
ナイトメアのバリアントマントは、ビームの衝突エネルギーを受け続けているが
いよいよ持って許容エネルギー過多となり、ナイトメアとの接続部が大破。
ナイトメアからマントが引きちぎられる。
マントはビーム衝突エリアに引き込まれ、そのまま跡形も無く消滅した。
「ぐっ!ナイトメア、バリアントマント兵装大破・消滅だ!
残存装甲も約40%!やべえぞアレス!」
エウリスが警告を鳴らす。
「わかってるよ!わかってるけれど、どうにかしなきゃだろう!?
一気に切り抜けるしかないんだ!」
なおも、加速を続けるナイトメア。
間一髪、MS大破を引き起こす前に、ナイトメアを含むMS4機はエネルギー衝突エリアからの脱出に成功。
アトミック・フレア・ノヴァは、ザヴェリューハのビームを飲み込み、そのまま押し切った。
「があああああああああああああ!?させるかああああああああ!」
アトロファネウラ・ゲウゾが寸前でビームバリアシェルを展開。
ビームが止み、ゆらりと現れる傷だらけの蝶。
アトロファネウラ・ゲウゾの尾部と翅が引きちぎられ、見るも無残な姿になった。
が、まだ怪物の息の根は止まっていない。
「まだだあああああああああ!まだ私は死んではいない!」
血だらけのガウェートが、ビームビットを操作しMS部隊を攻撃する。
ビームを発射する前に、中破したドラーケル二機とナイトメアが、格闘兵装にてビットを破壊。
「「隊長、今です!」」
グントーとヴォーノからの「行ってくれ!」のサイン。
「お前達、済まない!そしてアレス、礼を言うぞ!」
ライザードは残存装甲が50%を切っている。
だが、醜き化け物を斃すには、十分すぎるほどであった。
兵装を破壊しつくされ、うろたえるガウェート。
「くそおおおおおおおおおおおおおお!ならば、道連れ覚悟!私と共に死ねぇ!」
アトロファネウラ・ゲウゾは、ザヴェリューハを小規模エネルギー充填へと切り替え、ライザードの迎撃に入る。
しかし、主砲は基本的に乱発が出来ない。乱発するとジェネレータの過負荷により兵装大破する恐れがあるのだ。
しかも主砲は大型のジェネレータを内蔵している。大破すれば、MA諸共爆発により破壊される。
苦肉の策にして、道連れ覚悟。
「ガウェート、お前とはしっかりした道で一緒に歩みたかった。
だが、これもお互いが自分を信じ選択した上での結末!
互いに悔いの無い、最後の会話だ!」
デュークのライザード、ティソーナを構え、アトロファネウラ・ゲウゾの口腔部へ向かい、刃を立てる。
口腔部から光が放たれる寸前。
ティソーナは、アトロファネウラ・ゲウゾの口腔部から線を描くように一閃。
描かれた線を軸に、アトロファネウラ・ゲウゾは縦に二分割され、ずれていく。
砂嵐と雑音交じりで、ライザードに通信が入る。
「私は…お前に…なりたかった…!お前がいつしか…眩しく見えた…!
どんなものを金と権力で手に入れても、満たされない心…!
そうだ…お前に成り代われば…そう思った!
だが、今はこれで良い…お前に殺される…これで…み…た…さ…れ……」
—デュークと言う名の太陽に憧れた蛾、ガウェート。
しかし、太陽はどんな時でも大きく、何処までも遠く、いつまでもこの胸を焦がし続ける—
ガウェートが最後に見たもの。
それは太陽。
「クククク…太陽か…何時までも私を見下ろし、卑下し続ける。
私は…お前にだけ…愛されたかった…。」
ずれた線の境目から、凄まじい爆風。
—まるで、太陽のような光を発しながら—
アトロファネウラ・ゲウゾ、大破。
ガウェート=アウァリーティア、死亡—
—太陽に届かなかった想い。歪な愛情。今、かつての旧友により、断罪され天に昇る。
ガウェート=アウァリーティア。彼の想いは、死して太陽に届いたのだろうか—
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.55 )
- 日時: 2015/04/01 19:38
- 名前: Laevatain (ID: Jg8CXhDq)
第二十四話 蠢く闇—禁じられた悪魔の技術— 前部
ガウェート=アウァリーティア、死亡。
これにより、メタリカ宙域攻防戦は幕を閉じた。
宙域には、アトロファウネラ・ゲウゾの残骸を見つめるMS、ライザードの姿。
そのコクピットモニターに映るかつての旧友の成れの果て。
デュークは、煙草の箱から一本煙草を抜き取り、火を入れる。
ゆっくりと深呼吸。煙を吸い込むときに少し上を向き、吐き出す際に下を向く。
眼を閉じ、彼は紫煙と過去と擦れ違った価値観を交錯させる。
—何処から、間違ったのだろうか。
今となっては、その答えを導くとは出来ない。真相を知るガウェートは、もうここにはいない。
そして又ひとつ、彼は英雄となり虐殺者の罪を被る。
そして、決意の十字架を背負い戦い続ける決意を煙の中で見出す。
それしか、自分には出来ないことを知っているから。
メタリカ宙域攻防戦終了から20分後、宙域にはバハムートゼロ・ザッハーク・アリアンロッドの姿があった。
MS部隊は全て帰投し、バハムートゼロの通信エアスクリーンには、デュークと真紅の百合三姉妹の姿が映る。
「ザック、お前は…変わってないな。昔のままだ。」
含み笑いを浮かべながら、デュークはザックの援軍に感謝する。
「ザック、元気してるか!?これからも無茶はするなよ!」
「お人好しも良いところだが、お前の甘さは時に命取りになる。
躊躇うなよ!いざって時は、己の信ずるままに迷わず行動するんだ!」
グントーとヴォーノが、同期にアドバイスをかける。
「グントー、ヴォーノ…ありがとう。これからも、中将を頼む。
そして中将、勝手な横槍、申し訳ありませんでした。」
ザックは、様々な思いを噛み締めながらエアスクリーンの戦友と恩師を見つめる。
「何故謝る?こっちは助けられたんだ。逆に感謝している、気にするな。あと、アレス。」
デュークが、アレスを呼び出す。
「…なんでしょうか?」
「先ほどの咄嗟の判断に、お前の迷いは一切無かった。あれが本来、お前が持つ才能であり、実力だ。
それにより人を救うことが出来るし、未来を変えることが出来るかも知れん。
まだ迷いが表情から伺えるが、その答えを見出したとき、お前は確実に俺を超えるだろう。
答えを…探すんだ。俺はザックも、お前も、そしてその絆たちを、失いたくは無い。
だからお前が守るんだ、アレス。仲間達と共に。」
デュークの決闘から、アレスにはデュークから認めて貰えていないと思っており、苦手な意識はあった。
しかし、この発言からデュークの経験談を含めた上で、アレスには才能が、力があると見抜いてくれたのだ。
自分にそんな力があるのか?と思いつつも、必ず答えは見つけなければならないとアレスは感じた。
ロンを含む新兵達、エインフェリアの隊員達、ビリーズ=ミリオン中尉、この戦争にて魂を賭して戦った英霊たちの鎮魂のためにも。
「あんた達、意外とやるじゃないか!見直したよ!また一緒に戦いたいものだね!」
デュークとの一連の会話の後、ナルキス=ヴァーミリオンが口を開く。賞賛の言葉だった。
「んー、アタシ達三姉妹には及ばないけれど、なかなかだったわよ?死神の護衛チームたち!」
続いて、ウィオラ=ヴァーミリオンの賞賛。
「フフフ。皆様方、素敵でしたわ。ご協力、有難う御座います。
特に、巨大な剣を持ったガンダムのお方、貴方の動きには私にも見習いたいものがありました。
フフフ…パイロット様も素敵な殿方。今度は、貴方のハートを私のパンタールで狙い撃ちしたいものですわね…。」
カリディア=ヴァーミリオンが、小悪魔のような笑みとウィンクをしながら
カールの乗るガンダムフェンサーへの賞賛と、カールへの含みのある発言。
「えっ!?ちょっ!おまっ!やめてくれって!」
カールがまんざらでもないような照れくさい表情で謙遜する。
…が、カールが次に感じたのは、背後からのおぞましい殺気だった。
「…カールさん?だめですよ…そんな女性の甘い罠にかかってしまっては…。
そうだ…悪い虫がつかないようにカールさんを私の部屋に繋ぎとめて、私だけの物に…フフフ…。」
背筋が凍るような殺気を放つのは、マーキュルス=レベッカ。マールであった。
眼の輝きは消え、彼女は内に秘めていた常軌を逸した愛情とも取れる欲望を呟く。
「あ…マールがヤンデレモードになっちゃった…。これで大体男が寄り付かなくなっちゃうのよね…。」
冷めた眼で淡々と述べるジュピア。彼女は、マールの癖を知っているようだ。
今にもカールに飛び掛らんとしていたマールを、エリュシア・サフィア・ジェーン・ミーニャ・サーニャが全力で抑える。
「エリュシア!首!首!首を上に向けて!」
サフィアが頭を持っているエリュシアに指示を出す。
その後、サフィアが薬液入りの布をマールにかぶせ、マールは気を失った。
「さて、俺達はこれで行く。改めてバハムートゼロよ、援軍感謝する!
そして、これは【貸し】だ。必ず返す。では、また合おう!」
この会話を最後に、ザッハークとアリアンロッドはバハムートゼロを離れる。
そして、宇宙の大海原へと消えていくのであった。
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