二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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機動騎士ガンダムInceptor(インセプター)
日時: 2015/07/25 13:01
名前: Laevatain (ID: rZuUN0S4)
参照: http://laevatain1408.blog.fc2.com/

今までのガンダムシリーズ(主に一年戦争以降からの時代観)を踏襲して
作成したガンダムの二次創作になります。

作成者は妄想大好きなおじさんです。

こんなつたない小説ですが、お付き合いいただければと思います。

STORY
かつて、人類は母なる大地「地球」を方舟に生活していた。
だが、その過剰な人口はやがて「地球」を取り合い、争いを引き起こした。
そして宇宙に生活圏を拡大させてもなお、「地球」をめぐる争いは終わらなかった。
やがて「地球」は人類の手によって汚染され、醜くなっていった。
人類は相談し、「地球」を巣立ち、新たな新天地「火星」に生活圏を移す。
それから約2世紀。
銀河系第35宙域管轄コロニー「サイドアルファ」。
ここにコスモポリスとして従事する青年「アレス・ウィザール」
彼と1体のMSの出会いから、全ての歯車は動き出す。
絶望の運命を希望の未来へ変える歯車が・・・。

—人は、誰かを守るために、「騎士」となる—

用語
セカンド・ノア(第二の箱舟)
第二の地球。火星をテラフォーミングし、地球と同じ環境にした惑星である。

ロスト・ガイア(失われた楽園)
過去の地球。過去の大戦やMSによる戦争により、自然環境コントロールが乱れ、化石燃料は
潰え、汚染されて人類が住めなくなった地球。火星移住から2世紀後、大気は完全に無くなり、
かつての青く美しい星は黒ずんだ地表が見える無残な姿となった。


GU(ギャラクシーユニオンズ:銀河連合同盟)
銀河惑星間での統治が進み、各惑星の政府による政治・法律上におけるルールを確約させる
政治機関。とどのつまり現代の国際連合。
現在は革新派(自由な未来と悪質企業の根絶を訴える派閥)と穏健派(現在の企業紛争を
黙認する派。闇献金を受け取る悪質な議員が多い。)の争いが激化している。

企業
地球時代における国がつぶれてから、企業が力を持つようになり、もはや企業が惑星政府と
同じ権力を持つようになった。それにより、圧政や重労働なども問題になり、
GUが企業の暴走を抑えようと奔走している。しかし、反発する企業も少なくは無い。
現在は各企業間における未統治惑星の資源獲得戦争や紛争が後を絶えない。
そのため、軍備拡大を急ぐ企業が増えつつあり、各企業がGU軍へ宣戦するのではと危惧されている。
そしてそれは、30年前の第一次企業戦争により現実のものとなった。

コスモポリス
GU管理下の宇宙警察機構。

オーディン
GU軍第01強襲攻撃部隊。
革新派の傘下軍であり、自由を目指し戦う軍。市民からはヒーロー扱いされている。
母艦はたった1隻だが、その実力は計り知れない。
母艦は強襲戦闘艦「バハムートゼロ」

プロジェクト ライト&ダークネス(光と闇の機兵計画)
「第二次企業戦争」において、アライアンズに対抗すべく計画されたGU軍極秘新型MS開発プロジェクト。
ライトサイドとダークネスサイドのコンセプトから成り立つ。
ライトサイド セイントガンダム
ダークネスサイド ナイトメアガンダム
この二機のMSを基盤に、アライアンズ撃破のきっかけを生み出そうとしていた。
このプロジェクトの進行部隊はオーディンである。

企業戦争グリードウォー
企業がGUに反発し、起きた戦争。
第1次企業戦争では、全企業が一斉に武装蜂起し、GU軍との全面戦争となった。
GU軍が市民の安全と自由を主張し、企業側が利益の優先、そのための人命の犠牲は必要経費だという反論。
もちろん企業の横暴を市民が許すはずが無い。各企業の従業員は一斉にボイコットしたため企業側の戦力補給がストップ。
企業は窮地に立たされる。
そして企業は、禁断の大量破壊毒物兵器による非人道的な虐殺を敢行。サイドクスィーとサイドツェーラを毒殺し、壊滅させた。
この悪行により世論は大激怒。GU軍はこの後押しもあり、ついに企業側を屈服させる。企業側も降伏を宣言。
これにより、18年間に続く第1次企業戦争は終幕した。
それから10年後、ちりばめられた解体企業を収束させて、新たに3つの大企業が設立される。
その企業達が軍事同盟と産業通商同盟を締結。組織名をアライアンズとする。
アライアンズは、約2年前にGU軍に向かい「復讐のときは来たれり!」と宣戦を布告。
こうして、第2次企業戦争の火蓋が切って落とされたのだった。

モビルスーツ
宇宙開発時代と呼ばれる「宇宙世紀」時代において勃発した、
「一年戦争」と呼ばれる戦争により生まれた人型戦闘兵器。
宇宙の微細粒子により、レーダーなどの無視界戦闘が不可能となった本戦争にて、
有視界戦闘の基盤を確立させた兵器でもある。
特に後述する「ガンダム」と、当時戦争を繰り広げた「ジオン公国」は、
歴史の教科書にその名を刻まれる程、
人類とモビルスーツの歴史を学ぶ上では欠かせない存在。
その後、様々な企業においてモビルスーツは建設用・土木作業用・宇宙開発用などが開発され、
あらゆる分野で人類の開発を支えてきた産業機械となり、今日の宇宙経済の基盤を固めている機械となった。
個人で所有するものも珍しくなく、モビルスーツは「兵器」としてではなく「ありふれたもの」として、
人々に浸透している。

ガンダム
「一年戦争」と呼ばれる、モビルスーツ最古の戦争において、
地球連邦軍が開発した高性能モビルスーツ。
さまざまな派生機種が存在する、由緒ある機体。
現在ではガンダムの特徴的なVアンテナとフェイス、G-ロンダクトプログラム
テクノロジー社が販売するGUNDAM OSを搭載した登録商標商品として流通しているモビルスーツを指す。
ガンダムは主に、フロンティアワークショップ社が
生産、販売を行っている主力商品として認知されている。
独占商品ではなく、さまざまな機種が他企業からも
進出しているが、ガンダム単体の性能では
フロンティア社の右に出るものはいない。
そのため、他企業はガンダムを上回る製品の開発に
奔走するケースが後を絶たない。
ちなみに、ガンダムは大衆の間では最も馴染み深く、
モビルスーツの象徴とも呼べる機体である。

ジェネレータ技術
ムーンレィス(∀ガンダム時代)戦乱後に始まった、宇宙開拓時代の中で新たに見つけた鉱物。
そこには、未知のエネルギーが詰まっているものだった。
その鉱物の名は「エーテライウム」。
このエーテライウムから抽出したエネルギーを「エーテネルゲンエネルギー」と呼ぶ。
エーテネルゲンエネルギーは、簡単な電気変換回路により電力へと変換される。
しかしその発電規模が、既存の化石燃料のおよそ3000倍〜5000倍に相当するものであった。
これにより化石燃料・原子力により起動されていた各機械のジェネレータは淘汰され、
エーテネルゲンエネルギー式のジェネレータ「エリクシル式ジェネレータ」へと移行される。
また、エーテネルゲンは人体への影響がほぼ無く、安全に使えるものとしての評価もあり、
瞬く間に時代はエーテネルゲンエネルギー循環型社会へと変貌する。
エーテライウムにはもうひとつ特徴があった。それは「精錬」に伴う「エネルギー付与」。
エーテライウムは加工のしやすさも売りであり、鉄などの金属の添加物にエーテライウムを数%含ませて精錬させると、
精錬された金属にエーテネルゲンエネルギーを帯びた状態で精錬することが出来るのだ。
これもあり、たやすくなおかつ大量にエネルギーの元を生産できるとして、化石燃料の枯渇に伴う人類の衰退の心配は完璧に無くなり
人類は安心して宇宙開発を行うことが出来るという現在の社会形態が確立したのである。

※この作品におけるビームサーベルは、ビームの噴出によって刃が形成されるものではない。
ビーム出力の上昇によって、ビーム噴出を維持することが
テクノロジー上不可能になったからである。
この作品でのビームサーベルは、折りたたみ式アンテナのように、
伸縮可能な棒状の兵装の表面からビームが噴出し
形成されるものである。
ビームサーベルにも耐久性があり、出力の低いビームサーベルは、
鍔迫り合いの際に負けて破損する可能性もある。

なお、このガンダムはジャンプ漫画の根源である
「努力・友情・勝利」をモチーフにしております。
何卒ご容赦ください。

ツイッターやってます。ご意見ご感想はこちらまで。
要望なども受け付けております。
上のURLからどうぞ。

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Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.96 )
日時: 2013/12/13 19:57
名前: laevatain (ID: wSPra7vb)

第三十五話 結集と対峙〜収束する線、紡がれる絆、灯される因果の石碑〜 前部3

「貫けえええええええええええええ!」

瞬間、ドリルが激しくドラーケルの装甲に接触し、火花を散らす。
ドラーケルは、サテュロスを捕まえ、まずは突進威力を殺す。

「な!?まさか受け止めるとは!馬鹿め、貫かれるがいい!」

「ふん、オリハニウム合金を舐めては困る!」

金のドラーケルから、青白い光が迸る。

オーバーロードクロック発動である。

「はあああああああああ!」

渾身の力を振り絞り、サテュロスを掴み上げ、思い切りぶん投げる。

「うわああああああああああ!?」

放り出されたサテュロス。

変形を解除し、MS形態となるフォンドゥムガンダム。

しかし、待ち構えていたのは

「さあて、耐え切れるかな!」

金のドラーケルがバックパックから展開したのは、
大型イオンレーザーキャノン「ノービリス」。

放り投げたフォンドゥムガンダムへ、ロックオンは完了済みであった。

「はっ!」

青白い光を銃口より発しながら、蒼雷が迸る。

「なに!?」

瞬間の追撃に、咄嗟にシールドを構える。



「ぐああああああああああああああ!」

シールドに着弾した蒼い塊は、雷撃と共にすさまじい衝撃波を伴い、
シールドの装甲を破壊しつくしていく。

やがて

鈍い破壊音と共に、シールドもろとも左腕が消し飛んだ。

「く…くそぉ!」

コンソールに両腕をたたきつけるラーイド=ホーズン。

「やはりこの程度か。」

肩透かしを食らった表情を見せるヴォーノ。

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.97 )
日時: 2014/01/05 07:52
名前: laevatain (ID: xSZ4hPRP)

第三十五話 結集と対峙〜収束する線、紡がれる絆、灯される因果の石碑〜 前部4

最後は、【真紅の百合三姉妹:クリムゾンリリィシスターズ】と
【竜覇将:ドラゴニック・コンカラー】デューク=ストレインの戦闘状況。

真紅の百合をモチーフとしたエンブレムを刻んだ
可変MS「パンタール」。
同じく可変MSであるMS「キャトレイ」の派生機種で、
三姉妹の能力に合わせて、チューンドを施しているカスタム機でもある。
それに伴い、フォルムがキャトレイと酷似しながらも、少々異なる武装を搭載している。

ここで、二機の概要を説明しよう。

REV-08-CAT キャトレイ
獣型MA可変汎用戦闘型MS

ビームライフル「サルタートル」
エレクトロミサイルポッド「フェッセルン」
ビームクロー及び可変形態頭部ユニット搭載ビームファング「フェレス・ウングラ」
獣型MA「シャ・ノワール」

センチュリオンズ女性部隊「ヘル・アマゾネス」にて、一般戦闘女性兵が使用する量産型MS。
また、兼ねてから生産コストにより開発を敬遠していた
戦闘用可変MSコストダウン化計画の試作品として、
リベリタス社の開発により、フレーム設計を見直した。
そのため、一般戦闘用量産機並に生産コストは抑えつつ
多目的戦闘を行える汎用戦闘用MSとしてのスタイルを持った機体でもある。
可変機構である、獣型MAでの機動力は目を見張るものがある。
陸上を滑走することで地上のエネルギー消費を軽減。
宙域においても、アステロイド隕石を三角飛びなどを繰り返すことで
かなりのスピードを保ちながら消費エネルギーを軽減しつつ、敵機体を翻弄することができる。
ビームライフルは標準的。エネルギー消費を抑えているため、少々エネルギー容量が増えたぐらいだろうか。
ミサイルは感電型で、対象を感電させ動きを一時的に止める。
格闘攻撃のビーム出力は抑え目だが、連続攻撃が容易なので
接近された場合は、縦横無尽に襲い来る彼女たちが持つ爪と牙の餌食となるだろう。
猫のようにしなやかな動きを実現し、なおかつ狡猾に相手を仕留める。
戦場を駆ける女豹を思わせる、真紅の美しき襲撃者のMSである。

REV-09-PAT パンタール
獣型MA可変汎用戦闘型指揮官機カスタムメイドMS

ビームライフル「アウロラ」
プラズマキャノン「ラッジョ・ルーチェ」
ビームクロー及び可変形態頭部ユニット搭載ビームファング「ルファル」
獣型MA「ケット・シー」

センチュリオンズ女性部隊「ヘル・アマゾネス」のエースリーダーである
真紅の百合三姉妹クリムゾンリリィシスターズが駆るキャトレイのカスタムモデル。
キャトレイからの基礎フレーム構造の見直しを行い、運動性能の向上を図ると共に、
関節部を支えるショックアブゾーバーの摩擦抵抗を徹底的に軽減。
スラスターの推進力及び機体の軽量化も施されている。
機動力はキャトレイから比較すると1.5〜2倍の差である。
キャトレイよりもよりフレキシブルに稼動し、パイロットのイメージ通りの
運動性を確保することに成功した、チューンド機である。
武装性能も見直され、キャトレイと比較しても各種性能が向上している。
ビームライフル・ビームクローの出力が上がっている他、
新たに搭載されたプラズマキャノンの威力は、艦載の小型ビームキャノンに匹敵する。
その代わり、発射弾数とリチャージ秒数に難がある。
さらに、三姉妹のコンビネーション攻撃にあわせれば、機体性能は跳ね上がる。
戦場を駆ける百合。一度戦場で敵として出くわせば、命は無い。
綺麗な花には、棘がある。そんなイメージを持たせる可憐かつ強靭なMSである。

二種類の可憐なる真紅の女戦士たちは、獣の如きしなやかな動きと力強い攻撃を駆使し、
心無きMS「ギャン・テンプルナイト」及び、「ギャン・テンプルコマンド」を葬り去る。

そして、800強あったMSも、あと残すところ20機前後へと減少していった。

「後もう少し!きばんなよ、ウィオラ!カリディア!」

三姉妹の長女、ナルキス=ヴァーミリオンが、妹たちにラストスパートをかける様に、
また、自分自身を奮い立たせるために、声を張り上げた。

「わかってるわ、ナルキスお姉様!
やっぱり、生身の人間が乗っていないMSはたいしたこと無いわね。
でも、ここまでAI搭載MSの計画が進んでいるなんて…!
あたしたちの計画も、所詮はデータの切れ端だったのだろうけれど
着実に相手のアドバンテージとして生きているわけね。
癪だわ…こんな奴らにあたしたちが利用されるなんて!」

力強い勝気な性格の次女、ウィオラ=ヴァーミリオン。

穏健派主導によるMS操作適正強化実験のため、
実験生活を送っていた三姉妹たちから
少なからずのデータを採集していたことを知っていた彼女は、
穏健派が計画していた【無人MS化計画】の実験結果を目の当たりにした。

自分が、人類を【冷厳な支配】を実行する計画の片棒を担がされたことに対し、
憤りを露にしている。そんな表情を浮かべる。

「ナルキスお姉様、承知いたしましたわ。
フフフフフ、ご満足いただけたかしら?騎士団の皆様型?
…ふう、心の無い相手は、あまり【愉しく】無いですわねぇ。
今度は、血の通った殿方との熱い【駆け引き】を愉しみたいものですわ。
…ああ、あの迸る肉体と強靭な精神を持つ殿方を、
私の手で弄びたいですわぁ…フフフフフ。」

イメージを想像させ、恍惚に満ちた表情を見せるのは
上品で気品さを漂わせながら、妖艶に満ちた雰囲気を醸し出す女性の
三女、カリディア=ヴァーミリオン。

ブラッドドラゴン・クルセイダーズリーダー
【竜覇将:ドラゴニック・コンカラー】デューク=ストレインも、
二機のエレメンタルガンダムを相手に、ラストスパート気味であった。

もちろん、デュークの機体 ライザードにダメージはほとんど無い。

相手のエレメンタルガンダムは、かなり損傷が酷い。

各部の装甲は所々で引き剥がされ、肉眼でショートが垣間見える。
間接部からは、時折稼動時に甲高い金属の引き摺る音が聞こえ、痛々しい。

「ふむ、よく耐えたな。【授業】は、これで終いにしようか。」

デュークの表情は、まったく崩れてはいない。

「ちくしょう…ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう!
うわあああああああああああああああああああああああああ!」

コンソールを叩き付けてうなだれるのは、
インフェルノガンダムパイロット、レオンティエン=ハース。

「くっ…アタシの怒りでは、奴らを倒すことはできないのか!」

拳を握り締めて絶望を味わうのは
ヴォルテークスガンダムパイロット、アリーナ=グニェーフ。

「さて…ん?」

デュークが上空から来る【甲高い気配】に気がついた。

お分かりいただけるだろうか?
ブラウン管テレビがついたときに感じる甲高い起動音のような感覚を。

それが、高速で接近しつつある。

空を裂き、雲を貫き、近づくモノ。

それは4つ。

モノは、4機のエレメンタルガンダムにシールドを展開する。

同時刻、止めを刺そうとした金銀のドラーケルは、シールドに攻撃を阻まれた。

「ぐおっ!?なんだ!?
一度離れて、バイザー解析だな…!」

「な!?こいつの武装じゃないな?
まさか…奴か!?」

グントーとヴォーノが、一度離れて様子を見る。

モノはシールドを解除し

穴を金銀のドラーケルに向ける。

次第に、穴からエネルギーの光が見え始めてきた。

「…ビーム出力エネルギー確認!
想定出力…50C(シャリエ)!?
【シャリエの光学理論より:1GW(ギガワット)≒1C(シャリエ)】
まずい!ヴォーノ、離れろ!」

グントーの通信による指示。

「な!?MSの搭載火力じゃねぇぞ!?
マジかよ!やべえな、俺の装甲じゃ尚更だ!」

穴から発射される紫の閃光。

間一髪で、金銀のドラーケルたちは躱す。

瞬間、着弾できなかったビームが炸裂し、爆発を起こす。

衝撃が、エリア内のMSに響き渡る。

「バッカ野郎!こんな規格外の兵器積みやがって!」

「奴らの技術力…侮っていた!くっ!」

金銀のドラーケルに駆けつけるは、デュークのライザード。

「二人とも、無事か!?」

「問題ありません、隊長!」

「こちらも機体に異常無しです!ご無事でしたか!」

グントーとヴォーノは、現在の異常有無報告と状況の確認。
戦闘において、自身の状況を伝えることは、何よりも重要であるためだ。

やがて下の空から浮上するのは

道化師。

または闇天使ともいえるだろうか?

飛来したモノをバックパックユニットで受け止め、まるで翼のように展開させる。

紫のMS

アーガイグであった。

「ごきげんよう、英霊達よ。
この子達は殺されるわけにはいかない。私は彼らの【保護者】だからな。
世間から非難された英雄は、子供にすら手にかけるのかね?
非人道的な行為はやめたまえよ。クククククククククククククク!」

狂った嘲笑わらい声が、戦場に響く。

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.98 )
日時: 2013/12/31 00:11
名前: laevatain (ID: xSZ4hPRP)


第三十五話 結集と対峙〜収束する線、紡がれる絆、灯される因果の石碑〜 前部5

仮面の下に浮かぶは

絶望か

狂気か

何人なんぴとたりとも、彼の真意を知るものはいないだろう。

悲劇を演出する最悪のプロデューサー

この言葉が、この男には似合う。

「「「グラニット=ゴールドグリード!!」」」

ブラッドドラゴン・クルセイダーズのリーダー格3人は、声を大にあげてその男の名を叫ぶ。

と、その瞬間

「「「「う、うわああああああああああああああああああああああ!」」」」

エレメンタルガンダムに乗る4人の少年少女が、頭を抱えて呻き始めた。

「…思ったより早かったな。【発作】だ。
彼らを引き上げさせろ。早急にだ。
モタモタすると作り上げた彼らの【人格】が壊れてしまう。」

グラニットが、通信にて指示を出す。
その数秒も経たないうちに、上空からバル・エキスパートスタイルが8機が飛来する。

「野郎!逃がすか!」

ヴォーノの金ドラーケルが、大型イオンレーザーキャノン「ノービリス」を構え、
発射体制に入ろうとする。



「やめろ!今やっても無駄だ…!
それに、周りを見てみろ。」

デュークに止められた。

「な、何故です隊長!?…まさか!?」

ふと見たアーガイグに、翼のユニットが存在しない。

それは

ドラーケル2機とライザード1機の周囲を
上下左右から包囲しているためだった。

しかも、いつでもエネルギービームが発射できるように
エネルギー充填を完了し終えた状態で待機していた。

「どうやら、選択権は無さそうだな。
ヴォーノ、今は無駄な行動だ。止めたほうがいい。」

冷静に状況を判断したグントー。

「ああ…わかったよ。」

金のドラーケルは、発射体勢を解除した。

「ククククククククク、物分りのいい紳士の皆さんで助かったよ。
私も【保護者】である以上、目の前で【息子や娘】たちが死なれては
気が気ではないのだよ…ククククククククククククク。」

狂気と醜悪。

最早、隣接する人間に悪影響が出てもおかしくないような

そんな邪気を孕んだグラニットの思考回路。

「デューク!無事かい!?
そこにいるのは…まさか!?」

通信より、ナルキス=ヴァーミリオンの声が発生した。

「ああ、【奴】だ。
…そうだ、もう引き上げて良いぞ。
タイガーと合流してくれ。
俺たちもそろそろ引き上げる。
相手が【譲歩】してくれたのでな。」

デュークが、ヘル・アマゾネスに対しての撤退と合流指示。

「…わかった。
なるべく早めに合流してくれよ!
ウィオラ、カリディア!引き上げるよ!」

アマゾネス部隊は、MSを集約させ、戦闘エリアから離れていく。

「隊長、俺たちはどうすれば?」

グントーが、デュークに対して指示を仰ぐ。

「お前たちも、ザッハークと共にタイガーに合流だ。
俺も後から向かう。が、やることがあるんだ。

【奴からは、何点か確認したいことがある。】」

「…わかりました。お気をつけて!」

「隊長、ご武運を!」

二人は、デュークの真意に気付いたようだ。

—確認事項。聞いた瞬間に何人たりとも命は無い
命がけの質問時間を設け、真実を確認する気なのだと—

金銀のドラーケルは、母艦ザッハークへ帰還し、タイガーの元へと合流するため
エンティニアに向けて発進した。

その後、同じくして、8機のバルがエレメンタルガンダムを回収し、
戦場を後にしていく。

「ふう。やっと二人きりになれたな。
さて、確認事項があるんだが、いいかな?
グラニット殿?」

デュークが、まず切り出す。

「生憎私は忙しい身なので、これにて失礼させてもらうことにしよう。
また、時間を頂いてお話をさせてもらうことに—」

グラニットが、アーガイグのスラスターを噴射させ、発進させようとした

その瞬間

「【オピニオン・パニッシュメント・ウォッチマンズ】」

デュークのこの単語。

これに反応したのか、先ほどまでの狂気染みた嘲笑み(えみ)は消えた。

「ふ。やはりな。
まさかかと思ってカマをかけたが、正解のようだ。

説明が長くなるから、まあ、ゆっくりしてくれ。

まず、疑問点として挙げられることは第一次企業戦争における【戦争の理由】だ。

とてもではないが、【生産活動の粛清】だけでは戦争を起こす決定的な要因にはならない。
何かしらな【確固たる理由】があってこそ、戦争を起こす意味があるというものだ。
そこで、俺はかねがねから戦争の書籍や文献、また企業から押収した資料を調べてみたところ、
企業側からまず、戦争の理由になりそうなモノを見つけた。

それは【生体兵器の開発】であると思われる。

おそらく俺の推測であるが、生体兵器の開発に着手していた企業
すなわち、アドバンスドインダストリー前身企業である
【キングスカンパニー】が、生体兵器の開発に意欲的だった。

んで、開発した中にこんなのがあったんだな。

【パラ—】。」

デュークの会話を遮ったグラニット。

その声は、悪意に満ちている、不気味かつ邪悪な雰囲気であった。

「デューク=ストレイン、改めて問おう。

貴様は【何処まで知っている】?」

「さあなぁ。貴殿の方がよく知っているんじゃないか?
なぜなら、【オピニオン・パニッシュメント・ウォッチマンズ】
これが貴殿であるという予想も俺は立てているんだが。」

「その単語、それも歴史の闇から然るべき手法にて調べないとアシがつかないものだ。
貴様は…ここで消えてもらわねばならなくなった。

貴様は【知りすぎた】。」

グラニットの殺意が、形になって変わる。

翼型のビット「フティラ・カタフラクト」が分離、ライザードの上下左右に展開。

即座にビーム発射体勢になり、ビームが間髪入れずに放たれる。

「消えろ!」

閃光が迸り、ライザードを飲み込んだ。



のように見えた。

瞬間、グラニットが背後から殺気を感じる。

「!?」

間一髪、斬撃を躱すアーガイグ。

「おしい!もう少しか!」

デュークが舌打ちをする。

「貴様…!」

グラニットの表情に笑みは無い。

「ようやく本性を現したか、道化め。
いいだろう!相手をしてやろう!」

かくして、竜覇将 VS 道化師 の火蓋が切って落とされた。

—これが、アレスがエンティニアに向けて出発し、
サハール=クファールを抜けた同時刻に起こった出来事である—

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.99 )
日時: 2014/01/22 10:46
名前: laevatain (ID: XnbZDj7O)

第三十五話 結集と対峙〜収束する線、紡がれる絆、灯される因果の石碑〜 中部

—そして時を戻し、惑星エンティニアにて—

ショッピングモールにいるのは、バハムートクルー。

カール、ダグラス、アシュレイ、ジェーン、サフィア、カロラス、キャスタ
ミーニャ・サーニャ姉妹、マール、ジュピア、マルスであった。

彼らは軍服ではなく、私服である。

エンティニアは気象コントロールシステムにより、惑星内の四季がはっきりしている。
現在は夏を過ぎた秋の初め。気温は22℃ぐらいだろうか。

女性は肌寒いのだろうか、カーディガンや薄めの上着を羽織っている。

サフィアは半袖のマキシワンピに、薄手のカーディガン。
アクセサリも抑え目にナチュラルメイクと、大人の女性の風格だ。

マールは水色のブラウスにロングスカート。
眼鏡もまた、チャームポイントとして入る服装。

ミーニャ・サーニャは、サフィアからもらった
アンティークロリータファッションの夏服版に、長袖のレースカーディガンを羽織っている。
レースの柄は、現代で言うところのアイリッシュクロッシェレースである。

ジュピアは、ボディラインに自信があるのか、
オレンジのキャミソールと、スキニージーンズで凛としたスタイル。
半袖のチェック柄シャツの裾を胸元で結び、ワイルドな女性を演出する。

男性陣は暑がりなのか、袖なしのシャツとハーフジーンズ。

ダグラスはトップスにチェックの半袖シャツ。

カールは袖無しのタンクトップ。
シルバーアクセサリを胸元と指につけ、ストリートファッションのイメージ。
ロングヘアーの金髪に帽子をかぶるスタイル。
かつて、彼が不良だった頃のファッション。今でもそれを変える気はないらしい。
しかし、このスタイル・生き方でも自分の道を歩むことができる。そう体現するべく
彼は敢えてファッションや生き方を捻じ曲げることをしないそうだという。

マルスはダグラスに準じるが、
彼の私服はどことなくビジネスファッション風でもある。
ジーンズズボンではなく、生地がスーツ風なのだ。

そんな私服の彼らを含むバハムートクルーは、約1週間の余暇をもらった。

—解散前のザックの展開。

『まず、俺たちが確認することは3つ。

1つ、中将の安否確認だ。
俺たちの囮として戦っていた中将を安否確認するのがまず第一だ。

2つ、各エリアのレジスタンスとの連絡。
ここのところの連戦で、落ち着いて連絡と今後の予定が立てられていない。
さらに、居場所の特定を防ぐために宙域での連絡はできないようになっている。
レジスタンスとの連携が、今後この状況を打破できるきっかけになってくれるはずだ。

3つ、ここを根城としている反穏健派・世界平和活動NPO【マスターピース】との接触だ。
彼らはかねがね、革新派との太いパイプを確立してきた。
そして、理念の一致と新しい未来・平和のため、相互協力の協定を結んだんだ。
しかし、穏健派の裏切りと熾烈なアライアンズの妨害により、協力が難しくなっていた。
そこで、マルスが提案していたのは
【マスターピース本拠地:エンティニアに赴き、戦力の拡充と対策案の協議を行うこと】
だったんだ。

ちなみに、センチュリオンズリーダーのタイガー殿は確認事項となるべく我々とは無関係であると
相手にカモフラージュさせるため、別行動を取ると提案を受けた。

こちらもそれを了承し、準備が出来次第センチュリオンズとも歩調を合わせる予定だ。

以上が、わかっている内容である。

そのためには、最低1週間の期間が必要であり、諸君らにはそこで激戦の疲れを癒し、
今後来るであろう人類の希望を取り戻す戦いに向けて、英気を養ってもらいたい。

俺の言いたいことはわかるよな?

わかっているよな?

【休養は、クルーの重要な任務の一つである。】だ。

では、逐一連絡を欠かさず行うことを遵守し、ゆっくり休んでくれ。解散!』—

ショッピングモール「ムーンライトガーデン」には、様々なファッションブランドの店が立ち並ぶ。

マネキンが今年流行の秋冬モデルの女性服やバッグを携え、物憂げな紫色のライトで照らし出される。

空の色は青紫。

時刻は夕刻。

街燈の色は赤みを帯びた白。

ショッピングモールの外部ライトは虹色を灯し、一秒一秒ごとにその表情と感情を変える。

そんな中、もやもやした気持ちを抱えていたマルスを除くバハムートのMSパイロットたち。

難しい表情をしながら悩む彼らを見て、サフィアが一声あげる。

「貴方達、もっと楽しみなさいよ!
今、難しいこと考えているでしょ…。」

パイロットメンバーは、はっと我に返る。

「…図星のようね。」

サフィアがため息をつく。

「さて、これ以上暗い気分にするなら…。
そうね、この近くにスイミングスポーツエリアがあるわね。
みんなの分の水着を私が用立てするから、そこで泳がすわよ?」

メンバーの表情が一気に変わる。

「なななななな!?サフィアさん冗談はやめてくださいよ!」

「ちょ!?マジ勘弁!」

「は、恥ずかしいからやめてください!
…でも、カールさんの水着姿…はうぅ…(うっとり)」

「マルス様になら見せてあげたいけれど…遠慮したいわ…!」

全員の慌てふためいた顔を見て、サフィアがにやり。

「なら、この休暇中、全力で楽しむこと!
変な表情したら、また水着で泳がせるわよ?
もちろん、私も泳ぐけれどね。」

この脅しがすごく効いたのか、ショッピングモールの衣服屋に全力で向かう女性陣。

取り残された男性陣。

「俺たちはどうする?」

カールが一言。

「そうだ、この近くに僕の知り合いの叔父が試合をやっているんです。
いきますか?どうせ挨拶に行く予定でしたし。」

マルスの提案。

「試合?」

ダグラスの質問。

「ギャラクシックアーツ-1です。通称GA-1グランプリ。
銀河総合格闘技ですね。」

「マジかよ!?俺GA-1好きなんだよ!
早いとこ見に行こうぜ!試合って何時だ!?」

カールが食いついた。

「えっと、叔父からの情報だとあと1時間半でしょうか。
今からだと会場へは40分前後で到着しますね。
サフィアさんへ連絡して、向かいましょう!」

ということで、男性陣はマルスの叔父へ会いに行くことになった。

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.100 )
日時: 2014/01/04 17:44
名前: laevatain (ID: xSZ4hPRP)

第三十五話 結集と対峙〜収束する線、紡がれる絆、灯される因果の石碑〜 後部

—バハムートゼロ内 エリュシアとアレスの共同部屋。

エリュシアが眠っている。

うつ伏せの体勢。

枕には、涙の後。

ベッドはアレスのベッドだった。

信じられない。

彼は命を落としたのか。

彼は、二度と戻ってこないのか。

そんな不安だけが、彼女を襲っていた。

そして、彼の匂いと温もりが残るベッドへ入り、そのまま眠りについたのだ—

—同刻内、戦艦「セファリウス」にて—

アレスは、誰もいないデッキドックにいた。

自分とゴードン、エリックが手がけた設計図の原型をもう一度眺める。

【戦士】のフォルム。

二度と、失わないように、そのフォルムを確認する。

まだ、名前は決まっていない。

「【戦士ストラティオテス】か…?」

とつぶやき、彼は設計図に少し追筆をした。

ふと、彼は近くにあった椅子に腰をかける。

眼を閉じるアレス。

そこで【覚悟】を行い、眼を開ける。

自分のオーラを確認する。

「よし、慣れてきた。あとは、ちゃんと戦闘に活かせられるかどうかだな。」

再び眼を閉じる。

心地よい睡魔が、彼を襲ってきた。

—アレスが見たのは、幼いころの自分。

自分は、召使いの立場でウィザール家と接していた。

「アレス、もういいよ。こっちへ来て私たちとお茶でもどうだい?」

やさしい養父の声が聞こえる。
アレスは、庭の手入れが終わったようだが、その誘いを断る。

「すみません、この後、入り口の掃除があります。
執事さんの指示の元、早速取り掛かりますので、残念ですが…。」

残念そうな養父の顔。

そこへ割り込むように、長兄ジヴォルが、アレスに向かって拳を振るう。

アレスはジヴォルの拳を受けて、倒れこむ。

「お前に発言権があるとでも思ったか!?口を開くな、汚らわしい!
誰のおかげでお前はここにいられると思っているんだ、人殺しめ!
お父様に話しかけられる立場だと思っているのか!恩知らずもいい加減にしろ!
追い出されたくなかったら、早く入り口の掃除をしろ!」

「…申し訳ありません。今取り掛かります。」

アレスはすぐに起き上がり、掃除用具を持って入り口に向かう。

「ジヴォル、お前はなんてことを!」

「お父様!お戯れも程々になさってください!
あのウジ虫のせいで、親戚中からの非難が多くなっています!
早いところ、私はあのゴミを由緒正しいウィザール家から追い出し、かつての栄光を!」

養父が頭を抱えながら座り込み、声を小さめにしてつぶやく。

「私に父のような冷徹な人間になれというのか?」

ジヴォルは、少し戸惑っている。

「わ、私はウィザール家の栄光と発展を思って!
祖父がどのような人物かは見ていないのでなんとも言えませんが、
叔父様や叔母様からはすばらしい人物だったと!」

「いや、それは私の父が他の親戚に対して多額の金を渡していたからだ。
しかもその金の出所はどこだと思う?
他の惑星に住む人々から巻き上げた税金だ!
つまり、彼らの命を搾り取ってこの忌まわしきウィザール家は成り立ってきた!
そこまで、親戚の連中から聞いたのか!?」

「そ、そこまでは言ってませんでした…!」

後ろで親子の口論が聞こえる。

アレスは、執事のジェニクと合流し、入り口の掃除を始める。

「まずは見えるゴミや落ち葉からで良いからね。
その後、私と一緒に他のゴミを探して掃除しよう。
旦那様から、君には手厚く助けるようにと言われている。
そして、君の意思も知ってるつもりだ。
少しばかりでも、君の力になれたらと思う。
そして、君と旦那様でこの忌まわしいウィザール家の
血塗られた歴史を変えてほしいと思っているんだ。」

アレスとジェニクが掃除中、一組の母娘が来客に来た。

「おお、これはラクーン様。お久しぶりでございます。
旦那様へ御用ですかな?」

ラクーンと呼ばれた女性は、お辞儀をして応えた。

「ええ、私の研究が認められたのです。
そのご報告と、ウィザール家の皆様方に是非とも協力して頂きたいと存じまして
ご挨拶とお願いに参りました。」

「左様でございますか。それは喜ばしいことにございます。
早速、旦那様へご案内します。こちらへ。
アレス君、済まないが掃除の続きを頼むよ。
ラクーン様をご案内できたら、また一緒にやろう。」

「わかりました、ジェニクさん。
可能な限り、やっておきます。」

そう言って、ジェニクは女性を案内する。

「エリュシア、彼と一緒にいてあげて。」

「わかったわ、お母さん。」

エリュシアと呼ばれた少女は、アレスのそばで掃除を見ている。

じーっとアレスを見つめる少女。

「ふふふ。」

少女の笑い声に気がついたアレス。

「ん?どうしたの?」

「あなたのこころ、きれいだわ。
すごく、キラキラしている。
まるで【太陽】みたいね。」

「そ、そうなのかい?」

アレスが赤面する。

「ええ。そのほっぺのきず。
それもまた、あなたをかがやかせているのね。
あなたのような人間になりたいな。わたしも。」

「なれるよ。少なくても俺以下の人間なんていないさ。」

アレスは目を背け、掃除の続きをする。

「いいえ、あなたはまちがっている。
あなた以上の人間のほうがすくないわ。
だってあなたは、【きゅうせいしゅ】になれるんだもの。」

「救世主?」

「ええ、【きゅうせいしゅ】。
お母さんがよく使うことば。
そしてそれは、誰かを救うことができる人を指すの。」

こうして、アレスは自分の淡い記憶を眺めて気付く。

「エリュシア…!あのときの!」

当時 アレス 16歳
   エリュシア 9歳

真夏の中、セミの鳴き声と共に、揺らめく向日葵と一緒に見たエリュシアの笑顔。

次の瞬間、記憶の情景が泡のようにはじけ、光となって消えていく。

…やがて残ったのは、暗闇の中。
ベッドの上で涙しながら眠る、17歳のエリュシア。

「エリュシア、あの時から君は俺の記憶の中にいたのか。
だから、君から初めてじゃない気持ちが俺にはあったのか。

ごめんよ、気付けなくて。

必ず、俺は戻る。その時がくるまで、少し待っていてほしい。

【必ず、俺はバハムートに帰ってくる。新しい力と意志を持って】!」

決意と共に、夢の中で涙が伝う頬を拭うアレス。

—頬を撫でられる感覚、アレスの声—

バハムートゼロのベッドから
エリュシアが飛び起きる。

右頬には、涙を拭った後がある。

「夢…じゃない!
アレスは生きてる!生きているんだ!」

喜びと嬉しさに、自分の手を握り締めるエリュシア。

ふと、エリュシアは喉が渇いたことに気付く。

「コーヒーを買ってこようかな…。」

バハムートゼロ内にある自販機があるリフレッシュルーム。

エリュシアは自販機に小銭を投入し、ボタンを押す。

缶コーヒーが大きい音を立てて排出された。

コーヒーを取り出し、缶を開ける。

カシュッと乾いた音が、ルーム内に響く。

一口。

苦いながらも、甘い。

そんな中、一人の少女がリフレッシュルーム内に入ってきた。

軍服ではない。

煌びやかで華やかに見え、なおかつセクシーにもキュートにも取れるような
かわいらしい服装だった。

アイドルのような服装である。

「こんにちは!あなたが【エリュシア=ラクーン】さん?
…ふむふむ、素敵なレディだわ!リリアさんの眼に狂いは無いわね!
一期一会を大切にっ!
さて、他の人が来るまでお話をしたいんだけれど、いいかな?」

グイグイと引っ張られるエリュシア。
この少女は、かなりアクティブな性格のようだ。

「う、うん。いいよ。」

ちょっと困惑しながらも、エリュシアも少女との雑談に同意する。

「やったー!うれしいな!
ワタシ、アイドルグループ【アフロディーズ】やってるの!
【アカネ=ナツメ】って言うの!よろしくねっ☆」

—線は交差し、出会い・別れ・陰謀・悪意を紡ぎ、物語を表す。
そしてそれは、戦士の覚醒をも予兆させるのである—


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