二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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機動騎士ガンダムInceptor(インセプター)
日時: 2015/07/25 13:01
名前: Laevatain (ID: rZuUN0S4)
参照: http://laevatain1408.blog.fc2.com/

今までのガンダムシリーズ(主に一年戦争以降からの時代観)を踏襲して
作成したガンダムの二次創作になります。

作成者は妄想大好きなおじさんです。

こんなつたない小説ですが、お付き合いいただければと思います。

STORY
かつて、人類は母なる大地「地球」を方舟に生活していた。
だが、その過剰な人口はやがて「地球」を取り合い、争いを引き起こした。
そして宇宙に生活圏を拡大させてもなお、「地球」をめぐる争いは終わらなかった。
やがて「地球」は人類の手によって汚染され、醜くなっていった。
人類は相談し、「地球」を巣立ち、新たな新天地「火星」に生活圏を移す。
それから約2世紀。
銀河系第35宙域管轄コロニー「サイドアルファ」。
ここにコスモポリスとして従事する青年「アレス・ウィザール」
彼と1体のMSの出会いから、全ての歯車は動き出す。
絶望の運命を希望の未来へ変える歯車が・・・。

—人は、誰かを守るために、「騎士」となる—

用語
セカンド・ノア(第二の箱舟)
第二の地球。火星をテラフォーミングし、地球と同じ環境にした惑星である。

ロスト・ガイア(失われた楽園)
過去の地球。過去の大戦やMSによる戦争により、自然環境コントロールが乱れ、化石燃料は
潰え、汚染されて人類が住めなくなった地球。火星移住から2世紀後、大気は完全に無くなり、
かつての青く美しい星は黒ずんだ地表が見える無残な姿となった。


GU(ギャラクシーユニオンズ:銀河連合同盟)
銀河惑星間での統治が進み、各惑星の政府による政治・法律上におけるルールを確約させる
政治機関。とどのつまり現代の国際連合。
現在は革新派(自由な未来と悪質企業の根絶を訴える派閥)と穏健派(現在の企業紛争を
黙認する派。闇献金を受け取る悪質な議員が多い。)の争いが激化している。

企業
地球時代における国がつぶれてから、企業が力を持つようになり、もはや企業が惑星政府と
同じ権力を持つようになった。それにより、圧政や重労働なども問題になり、
GUが企業の暴走を抑えようと奔走している。しかし、反発する企業も少なくは無い。
現在は各企業間における未統治惑星の資源獲得戦争や紛争が後を絶えない。
そのため、軍備拡大を急ぐ企業が増えつつあり、各企業がGU軍へ宣戦するのではと危惧されている。
そしてそれは、30年前の第一次企業戦争により現実のものとなった。

コスモポリス
GU管理下の宇宙警察機構。

オーディン
GU軍第01強襲攻撃部隊。
革新派の傘下軍であり、自由を目指し戦う軍。市民からはヒーロー扱いされている。
母艦はたった1隻だが、その実力は計り知れない。
母艦は強襲戦闘艦「バハムートゼロ」

プロジェクト ライト&ダークネス(光と闇の機兵計画)
「第二次企業戦争」において、アライアンズに対抗すべく計画されたGU軍極秘新型MS開発プロジェクト。
ライトサイドとダークネスサイドのコンセプトから成り立つ。
ライトサイド セイントガンダム
ダークネスサイド ナイトメアガンダム
この二機のMSを基盤に、アライアンズ撃破のきっかけを生み出そうとしていた。
このプロジェクトの進行部隊はオーディンである。

企業戦争グリードウォー
企業がGUに反発し、起きた戦争。
第1次企業戦争では、全企業が一斉に武装蜂起し、GU軍との全面戦争となった。
GU軍が市民の安全と自由を主張し、企業側が利益の優先、そのための人命の犠牲は必要経費だという反論。
もちろん企業の横暴を市民が許すはずが無い。各企業の従業員は一斉にボイコットしたため企業側の戦力補給がストップ。
企業は窮地に立たされる。
そして企業は、禁断の大量破壊毒物兵器による非人道的な虐殺を敢行。サイドクスィーとサイドツェーラを毒殺し、壊滅させた。
この悪行により世論は大激怒。GU軍はこの後押しもあり、ついに企業側を屈服させる。企業側も降伏を宣言。
これにより、18年間に続く第1次企業戦争は終幕した。
それから10年後、ちりばめられた解体企業を収束させて、新たに3つの大企業が設立される。
その企業達が軍事同盟と産業通商同盟を締結。組織名をアライアンズとする。
アライアンズは、約2年前にGU軍に向かい「復讐のときは来たれり!」と宣戦を布告。
こうして、第2次企業戦争の火蓋が切って落とされたのだった。

モビルスーツ
宇宙開発時代と呼ばれる「宇宙世紀」時代において勃発した、
「一年戦争」と呼ばれる戦争により生まれた人型戦闘兵器。
宇宙の微細粒子により、レーダーなどの無視界戦闘が不可能となった本戦争にて、
有視界戦闘の基盤を確立させた兵器でもある。
特に後述する「ガンダム」と、当時戦争を繰り広げた「ジオン公国」は、
歴史の教科書にその名を刻まれる程、
人類とモビルスーツの歴史を学ぶ上では欠かせない存在。
その後、様々な企業においてモビルスーツは建設用・土木作業用・宇宙開発用などが開発され、
あらゆる分野で人類の開発を支えてきた産業機械となり、今日の宇宙経済の基盤を固めている機械となった。
個人で所有するものも珍しくなく、モビルスーツは「兵器」としてではなく「ありふれたもの」として、
人々に浸透している。

ガンダム
「一年戦争」と呼ばれる、モビルスーツ最古の戦争において、
地球連邦軍が開発した高性能モビルスーツ。
さまざまな派生機種が存在する、由緒ある機体。
現在ではガンダムの特徴的なVアンテナとフェイス、G-ロンダクトプログラム
テクノロジー社が販売するGUNDAM OSを搭載した登録商標商品として流通しているモビルスーツを指す。
ガンダムは主に、フロンティアワークショップ社が
生産、販売を行っている主力商品として認知されている。
独占商品ではなく、さまざまな機種が他企業からも
進出しているが、ガンダム単体の性能では
フロンティア社の右に出るものはいない。
そのため、他企業はガンダムを上回る製品の開発に
奔走するケースが後を絶たない。
ちなみに、ガンダムは大衆の間では最も馴染み深く、
モビルスーツの象徴とも呼べる機体である。

ジェネレータ技術
ムーンレィス(∀ガンダム時代)戦乱後に始まった、宇宙開拓時代の中で新たに見つけた鉱物。
そこには、未知のエネルギーが詰まっているものだった。
その鉱物の名は「エーテライウム」。
このエーテライウムから抽出したエネルギーを「エーテネルゲンエネルギー」と呼ぶ。
エーテネルゲンエネルギーは、簡単な電気変換回路により電力へと変換される。
しかしその発電規模が、既存の化石燃料のおよそ3000倍〜5000倍に相当するものであった。
これにより化石燃料・原子力により起動されていた各機械のジェネレータは淘汰され、
エーテネルゲンエネルギー式のジェネレータ「エリクシル式ジェネレータ」へと移行される。
また、エーテネルゲンは人体への影響がほぼ無く、安全に使えるものとしての評価もあり、
瞬く間に時代はエーテネルゲンエネルギー循環型社会へと変貌する。
エーテライウムにはもうひとつ特徴があった。それは「精錬」に伴う「エネルギー付与」。
エーテライウムは加工のしやすさも売りであり、鉄などの金属の添加物にエーテライウムを数%含ませて精錬させると、
精錬された金属にエーテネルゲンエネルギーを帯びた状態で精錬することが出来るのだ。
これもあり、たやすくなおかつ大量にエネルギーの元を生産できるとして、化石燃料の枯渇に伴う人類の衰退の心配は完璧に無くなり
人類は安心して宇宙開発を行うことが出来るという現在の社会形態が確立したのである。

※この作品におけるビームサーベルは、ビームの噴出によって刃が形成されるものではない。
ビーム出力の上昇によって、ビーム噴出を維持することが
テクノロジー上不可能になったからである。
この作品でのビームサーベルは、折りたたみ式アンテナのように、
伸縮可能な棒状の兵装の表面からビームが噴出し
形成されるものである。
ビームサーベルにも耐久性があり、出力の低いビームサーベルは、
鍔迫り合いの際に負けて破損する可能性もある。

なお、このガンダムはジャンプ漫画の根源である
「努力・友情・勝利」をモチーフにしております。
何卒ご容赦ください。

ツイッターやってます。ご意見ご感想はこちらまで。
要望なども受け付けております。
上のURLからどうぞ。

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Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.81 )
日時: 2013/08/15 16:15
名前: Laevatain (ID: nYLbaC1V)

第31話 陰謀〜迫る負の感情、迷いの死神〜 後部

砂漠と海洋エリアが惑星の大部分の面積を占める【サハール・クファール】。
日中の気温はおおよそ平均35℃〜40℃をマークする過酷な環境である。
湿度は無いものの、圧倒的な灼熱地帯となる。

揺らめく砂漠の砂が入り混じった【メガラ・ジャンナ】都市にある
アスファルトに覆われた開けたエリア。
中型宇宙戦艦の着陸エリアである。

地平線を見渡すと陽炎しか見えないこのエリアに、一隻の中型戦艦が降り立とうとしていた。

【バーバリアンズ】地上・海上部隊《アンタレス》所属母艦【アルデュイナ】である。

甲高く空気を切り裂くような音と砂の入り混じった風を巻き起こし、【アルデュイナ】が着陸する。

迎えるのは、先ほどまでアリシアの傍にいたナージフ=ロンメル。

艦から降りてきたのは、3人の男。

その中には、ジャミロと呼ばれる神官の姿も居た。

「お久しぶりです、老師。」

ジャミロが、ロンメルに話しかける。

「ジャミロ=カエディー…どういうことだ。
貴様が、奴らとアライアンズ・穏健派と密接に絡んでいるという情報を私に教えたのを忘れたのか?」

ロンメルは、先ほどの曇った表情から変わっていない。

「まぁまぁ待ちたまえロンメルよ。」

ジャミロの後方にいた老人が口を開く。

「ズィヤーダ=ムクタヤーン老師…!」

どうやら、このズィヤーダはロンメルよりも高い位の人間のようだ。

「ジャミロはあくまで《可能性》の話をしただけじゃよ。
それをさもお前のせいで間違えた、赤っ恥をかいたと非難するのは主の安直な行動と思考が原因ではないかね?」

「そ、それは…!」

ロンメルは口を閉ざした。

「まあ、主の気持ちもわからんでもない。
ワシらは【ジオンの栄光をもう一度】と言うことが第一であるからのぅ。
ザビ家に振り回され、宇宙世紀時代から淘汰され続けたワシら旧ジオン公国軍・ネオジオンの子孫の苦しみは
ワシらでしか理解できんよ。
【イメカ・マルーハ】も所詮は拠り所に過ぎん。」

ズィヤーダは冷めた眼をしている。
まるで自らが信仰している宗教を信じていないかのよう。
というか、どうやら彼には宗教は踏み台にしか捕らえていないような雰囲気だ。

「ろ、老師!それはあまりにも女神とアリシア様に失礼では…!」

困惑のロンメル。

「お前も気づいているんだろう?」

ジャミロ・ズィヤーダの傍にいたもう一人の男が口を開く。

ロンメルと同年代ぐらいの男だろうか?

「あの娘が我々の組織【亡国の英霊】にカダリール教の信者を引き連れ、
我々と統合しようと持ちかけた際、俺達は疑問を持ったはずだ。
俺達がやりたいのは【政府への復讐】であって、【人類の平和】には関与しないと。」

「アンドレアス=グラーフ…!お前はそれでいいのか!
我々の復讐を達成し、その後の人類の未来には!子供達には!何が残せるというんだ!
確かに私はアリシア様から先ほどの失態で叱責を受けた!
しかし、その際に生じた憤りは、自らの憎しみに対しての憤りだ!子供達、これからの時代を生きる人々を
私たちの復讐に付き合わせる必要はないし、巻き込んではならないはずだ!
カダリール教と出会うことで、私たちはアリシア様と私たちは出会え、センチュリオンズという兄弟も出来た!
お前達の意見は、兄弟すらも裏切るというのか!」

ロンメルが激昂する。

「それが甘いというのだロンメル!
この腐った社会形態を作った現在のG.U.政府の体たらく振りを見てみろ!
アライアンズを始めとした悪徳企業が跋扈し、未統治惑星には未だに奴隷制度により
虐げられる人々がいるのだ!この惑星だけじゃない!
宇宙には、様々な環境と状況で苦しめられている人が居る!
今の政治ではダメなのだよ!何一つ救えやしない!
ではどうすれば良いか!?
簡単なことだ!より良い【指導者・支配者】が、人類を導けば良いのだ!
そして、その役職には俺達がなるんだ!俺達が、同じ過ちをしなければいい!
優れた人類が、愚かな人間達を【粛清】する社会形態を確立する!
そうすれば、争いは起こらない!平和な未来が誕生する!
兄弟は、そのための踏み台にしかならない!わかっているはずだ!
このまま行けば兄弟と争わなければならないということを!
ならば、彼らには未来を守るために敢えて《アライアンズ・穏健派》との戦いで散って貰った方が、
無益な争いと裏切りの血に濡れた剣を俺達が持たずに済む!」

「…!」

アンドレアス=グラーフのこの言葉により、ロンメルの表情が変わる。
話しても無駄だという表情にも見える。

「すこし…部屋で休むとする。失礼する。」

そういうと、踵を返しロンメルは基地内へと戻っていった。

「おやおや…やりすぎでは?」

若干、ジャミロがあきれた顔だ。

「まあ、こういっておけば、我々の本当の目的に気づくはずだ。
奴がこちらに転べば、あとは後ろ盾でどうにでもなる。」

鼻で笑いながら、アンドレアスが答える。

「ケツの青い若造が。アンドレアスのほうがまだ現実を見抜く才能がある。
理想論では解決できん。我々が、ジオンが、また【支配者】になればいい。
後ろ盾も、リベリタス社も、兄弟も、結局は踏み台なのだ。
現に、ワシらの部下は血に飢えている。支配者になりたいと願う血にな。」

ロンメルとこの3人の考えは、かなり深い溝が出来ているようだ。

—【サハール・クファール】惑星圏内の宙域—

「さて、今日はいよいよ本格的な挨拶といこうか…。」

中型戦闘戦艦アーリマンのデッキドックにて陣頭指揮をしているのは、
仮面の男、グラニット=ゴールドグリードである。

「グラニット殿!こっちは準備万端だ!
いつでも小僧共を出撃させられる!」

アーリマンに隣接していた大型戦闘強襲艦から、アーリマンへ通信が入る。
そこに映っていたのは、穏健派元老院第4議長 アザック=ルクスリアであった。

「アザック殿。【フィアーテイマーズ】の指示はお任せします。
それと、AI部隊の【ハートレス・テンプラーズ(心無き傀儡の騎士団)】は?」

グラニットの質問に、惑星デピドナ内のエリアから穏健派貴族院第3議長 ロバート=アケーディアが答える。

「彼女達のセッティングはほぼ90%の完成度をマークしています。
出撃には問題ありません。出していただいて結構です。
あと、機体の提供ありがとう御座います。
機体のベースとして【ギャン・テンプルナイト】及び【ギャン・テンプルコマンド】を選択しました。」

「了解いたしました、ロバート殿。
では、私は監督者として【アーガイグ】にて出撃。陣頭指揮を継続します。」

この通信から約30分後、アライアンズ・穏健派共同連盟軍艦隊よりMS部隊が次々と射出される。
確実に狙いはオーディン部隊とバハムートゼロであることは想像できよう。
そして、バーバリアンズの本拠地である本惑星を叩くことで、敵の戦力を削ぐ事が狙いか。

その状況を目撃したのは、センチュリオンズ一団。

「アニキ!レーダーに未確認戦艦とMS部隊多数!数にして200は下らねぇ!
しかも狙いは…!?兄弟の本拠地だ!やべぇ!やべぇよ!」

「クソっ!奴ら、兄弟に気づかれずに忍び寄ってきやがったか!
デューク!黒百合の妹達!ハニー!緊急出撃だ!兄弟を援護するぞ!」

—混迷深める戦場と陰謀、そして這い寄る悪意。オーディン部隊の運命は…!?—

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.82 )
日時: 2013/09/02 23:11
名前: Laevatain (ID: nYLbaC1V)


第三十二話 堕落〜虚ウ髑髏ガ彷徨ウノハ何処〜 前部

漆黒の宇宙に群がる無数の影。
中型の戦艦が八隻ほど見える。

そこから、無数の粒がまるで昆虫の大群のように、資源惑星「サハール・クファール」へ向けて飛び出してゆく。

その粒の正体はMS部隊。

戦艦とMSには、3つの腕が合わさった紋章が見える。企業軍事同盟「アライアンズ」のエンブレムである。

部隊を編成しているMSは中世の騎士にも似たMSであった。鎧甲冑のような堅牢なフォルム。
二種類の機体が存在しており、片方はビームレイピアを装備、もう片方は大型のランスを所持している。

AVS-15-SWα
ギャン・テンプルナイト(一般機)
白兵戦闘モビルスーツ

ルキュリス動力式高性能汎用ビームライフル
大型カイトシールド内臓グレネードランチャー
ビームレイピア「エストック」(テンプルナイト標準装備)
バックパック格納浮遊機雷「シーカーミーナ」(テンプルナイト標準装備)

AVS-15-SWγ
ギャン・テンプルコマンド(指揮官機)
白兵戦闘モビルスーツ

ルキュリス動力式高性能汎用ビームライフル
大型カイトシールド内臓グレネードランチャー
大型ビームハルバードランス「アルバーデ」(テンプルコマンド標準装備)
バックパック搭載200mm実弾砲「トロンペッテ」(テンプルコマンド標準装備)

腹部爆撃用ナパーム弾「ハイドボンブ改」(両バージョン共通装備)
クラスターボムのように途中で飛散し爆撃する兵装である。

「オールド・リニュー・モデル」のコンセプトとして挙げられたのは、格闘戦においてかなりの性能を秘めながら、
量産に恵まれなかった「ギャン」のリメイクである。
このギャンも、残存データからの原型パーツの構成から分析し、機体の格闘性能と機動性を損なうことなく
改修を加える段階から始まった。
本大戦においてアライアンズの軍備拡大に伴い、人件費削減のために製作された無人AI部隊のベースとなる本MSにて
編成されたのがアライアンズ白兵戦無人AIMS部隊「ハートレス・テンプラーズ(心無き傀儡の騎士団)」である。
これにより、軍用である本機の名称にテンプルと名を刻み、ナイトを一般AI機、コマンドを隊長AI機と変更。
ナイトは工作・撹乱に優れ、コマンドは迫撃、遠距離射撃とオールレンジに戦闘をこなす。
まるで地球時代の十字軍のような風格と威厳に満ちたMSとなった、ORMシリーズの傑作に近いMSとなる。


「オペレーター。ギャンの状態確認を。」

「はい、全機体のAIシステムは通常通り。正常な思考を保っております。戦闘には差し支えありません。」

「そうか。なら、このまま進撃させろ。【彼ら】から一芝居打てとの依頼だ。
情報からバーバリアンズがどうやらオーディンを匿っているとのこと。炙り出して無理矢理戦場へ引きずり出すぞ。」

中型戦闘母艦「アーリマン」のデッキドックにて陣頭指揮をしている仮面の男。
グラニット=ゴールドグリード。

「さて、私もアーガイグに乗り込むとしよう。指揮は私が取る。」

グラニットは銀色の仮面が輝かせながら、颯爽とMSドックへ向かおうとする。
その瞬間、別の母艦から通信が入った。

エアスクリーンに、初老の男が見える。
相変わらず男の首から下は20代の男性の肉体であり、歪で気持ちが悪い。

「これはアザック殿。今から私も向かいます。
彼ら、【フィアーテイマーズ】へは私の合流まで宙域にて待機するよう指示願います。」

「うむ、そなたが指揮してくれることは実に心強い。
必ず、憎きあの竜共を始末してくれるよう、心より願うぞ!」

グラニットは不適な笑みを浮かべ、MSドックへと足を運ぶ。

MSドックには、胸元を金色のエングレービングにてドレスアップした、紫のMSがあった。

グラニット専用多目的戦闘対応型高性能MS【アーガイグ】である。

「グラニット=ゴールドグリード、アーガイグ!出る!」

紫色の道化師は、悪神のはらわたより出づる。

戦艦が集うエリアを最速スピードで駆け巡る道化師、アーガイグ。
大型の特徴的な概観を持つ戦艦に向かって、青白い炎を迸らせながら飛翔する。

やがて、4機のガンダムが集うエリアにてアーガイグが合流する。

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.83 )
日時: 2013/09/02 23:17
名前: Laevatain (ID: nYLbaC1V)


第三十二話 堕落〜虚ウ髑髏ガ彷徨ウノハ何処〜 中部1


「ふむ。調整は良好のようだな…。」

グラニットは、4機のガンダムを見つめては呟く。

エレメンタルガンダムシリーズは、4色のガンダムから構成される。
4機のガンダムは、それぞれ武装が異なり、
エレメントジェネレータの属性選定による特殊戦闘を可能とする。

KRM-05-INF インフェルノガンダム

フレイムエネルギービームキャノン「アトミックレイ」
肩部二門高熱火炎放射器「サラマンダーブレイズ」
大型ビームブローバアックス「アメン・ラー」
バックパック下部搭載落下型ナパームボム「コロナ」

エレメンタルガンダムシリーズの「炎」を司るMS。フィアーテイマーズの紅いガンダム。
エレメントジェネレータにより、炎熱を精製する。
エレメント兵装であるアトミックレイは艦載ビーム砲台に匹敵し、単機で小型戦艦を安易に撃滅可能。
火炎放射器は高熱(約4500℃)により、MS装甲を溶解させる性能を持つ。
ただし、火炎放射器の連続稼働時間は長くは無い。
大型ブローバアックスは炎をまとい、着刃時に爆風と炎熱が敵機を焼き尽くす。
ナパームボムはバックパックから複数個投下され、数秒後強力な爆炎を形成する。
憎しみの炎により徹底的に相手を焼き尽くす。憎悪のMSである。

パイロットは赤色の髪を持つ少年、レオンティエン=ハース。

「燃やし尽くしてやる…!早く指示をくれ!」

憎しみの炎にたぎるその眼は、全てを焼き尽くすかのように。

KRM-06-NEV ネーヴェガンダム

アイスエネルギーアロー「テテュス」
液体窒素内臓弾頭ミサイル「ユトゥルナ」
アイスウィップ「コールドチェーン」
氷結発生ビーム兵器「エンリール」

エレメンタルガンダムの「氷」を司るMS。フィアーテイマーズの蒼いガンダム。
エレメントジェネレータにより、氷・氷結を発生させる。
アイスエネルギーアローは氷塊を精製し、それを弾丸として発射する。
エネルギー消費が少ないので、連射可能。
ユトゥルナは着弾時、液体窒素により敵機の運動性能を低下させることが可能。
アイスウィップは格闘攻撃ながら、凍結作用により相手の機動力を徐々に低下させることができる
氷結格闘による中距離攻撃を得意とする。
エンリールは地面に向けて発射。発射後はエレメンタルエネルギーにより、
大気中の水分を一気に凍結させて氷結エリアを形成。対象を氷漬けに出来る。
凍てついた氷が全てを止める、冷徹なるMSとなる。

パイロットは水色の髪を持つ少女、アンジェリーク=フローワ。

「全て…要らない…凍ればいい…!」

感情を凍らせたようなその瞳は、全てを氷結させ、崩壊させるかのように。

KRM-07-VOT ヴォルテークスガンダム

ビームスタンガン
サンダービームブレード「七支刀」
ワイヤー式サンダーチャクラム「ケラウノス」
ライトニングミサイルマイン「ヌエ」

エレメンタルガンダムの「雷」を司るMS。フィアーテイマーズの黄色いガンダム。
エレメントジェネレータにより、雷を発生させる。
全体的に格闘戦向けに作られた兵装であるが、中距離から自身のペースへ
運ぶことが出来る武装がそろっている。
七支刀は対艦剣であるため、その攻撃力は言わずもがな。
サンダーチャクラムはワイヤーにより有線コントロールが可能で、不規則な斬撃と雷撃を与える。
チャクラム収納状態はシールド状態になり、肩部に搭載されるので防御も可能。
ライトニングミサイルマインは対象の頭上に発射し、小規模の落雷を発生させる雷針を展開し、
真上からの回避困難な落雷を発生させ対象を感電、ダメージを与える。
怒りの雷が敵を貫く、憤怒するMSである。

パイロットは黄色の髪を持つ少女、アリーナ=グニェーフ。

「全部…ぶっ壊す!ぶっ潰す!」

感情に憤怒を宿すその瞳には、大地を抉る雷撃を想像させるかのように。

KRM-08-FUD フォンドゥムガンダム

大型キャノン砲「マキナ・テラ」
モーニングスターハンマー「ユグドラシル」
潜行+格闘攻撃用ドリル「スヴァリート」
地中潜行型ミサイル「ブラウニー」
遠隔地殻槍発生装置「グレイブヤード」

ドリルタンク型MA「サテュロス」

エレメンタルガンダムの「土」を司るMS。フィアーテイマーズの翠色のガンダム。
エレメントジェネレータにより、大地の岩石成分を結合させる能力を持つ。
マキナ・テラの弾頭はおおよそ300mmであり、直撃した場合ただではすまない。
さらに超硬バルダーメタル弾頭により、生半可な武装では弾頭を破壊することは出来ない。
ユグドラシルとスヴァリートにより、格闘戦の破壊力は十分すぎるほどである。
ブラウニーは真下に発射し地中を潜行。対象の真下から上昇し、ダメージを与える。
グレイブヤードはセンサーを発射し、停滞したエリアから磁力とジェネレータによる岩石、粘土を
地面から吸い上げてセンサーと結合。上空に発生した石の槍が、熱源センサーを用いて標的を貫く。
ドリルタンク型MAは地中潜行が可能で、地中からの奇襲に優れる。
宙域でも、アステロイド隕石を掘り進めることが出来るため、ほぼ死角は無い。
嘆きの大地が敵を押しつぶす、無慈悲のMSである。

パイロットは黄色の髪を持つ少年、ラーイド=ホーズン。

「この世界は悲しみや苦しみに満ちている…僕の手で、全てをゼロへ!」

全てに絶望したその瞳には、大地の嘆きを象徴するかのように鈍く、感情を映す。

「クククククク…さあて、死神へ挨拶に行こうか…。」

やがて5機のMSは、サハール・クファールへと飛び込んでいった。

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.84 )
日時: 2013/09/12 22:33
名前: laevatain (ID: nYLbaC1V)


第三十二話 堕落〜虚ウ髑髏ガ彷徨ウノハ何処〜 中部2

—砂塵舞う、サハール・クファール内バーバリアンズ支部基地にて—

「基地長!レーダーに未確認機が!」

「何!?すぐ機体の識別と解析を!総員、警戒態勢を…!」

基地長と索敵班が警戒を呼びかけるのも束の間。

「基地長!これは…アライアンズのMSです!しかも総数100以上!?」

索敵班の男性兵が声を震え上げながら敵の状況を述べる。

「な…ん…だと…!?奴等…まさか!?」

惑星内の各地の基地に、100機以上のMS部隊が押し寄せる。
バーバリアンズ基地内に配備されているMS機数はおよそ40機である。
まず、数の不利が伺える。

惑星内の地区基地を徹底的に叩くことが、アライアンズの目的であった。
そして、地区基地にはバーバリアンズのカダリール教信者による僧兵が構えていた。
旧時代の国家「ジオン公国」の末裔たちは、全てメガラ・ジャンナの中枢基地に集中していたのだ。

つまり、僧兵を叩き潰し、バーバリアンズの戦力を削減することが目的だったのだ。

各基地にて、バーバリアンズの保有するMSが、迎撃のため出撃する。
主なMSはガンダムソルジャーとガンダムコマンダー、グラドニムであった。

REV-05-GRD グラドニム
弾頭換装型多目的バズーカランチャー 「ギャングボーイVer2.0」
弾頭 通常弾 ホローポイント弾 ナパーム弾 連射弾頭(1発の威力は低め)
ビームバリアフィン「シャルナク・ククゥ」
バックパックミサイルポッド
汎用ビームサーベル

解説
ホバー移動メインをコンセプトに、砂塵環境に適応したMS。
旧時代のMS「ドム」の技術をバーバリアンズより持ちかけられた
リベリタス社が開発した砂塵系環境戦闘対応型MSである。
排塵構造を見直すことで、脚部の軽量化を計り、より少ない推進力でスピードを出すことが出来る。
さらには宇宙空間での推進力や宙域戦闘能力も既存MSに遅れを取らず、
アステロイド要塞などの環境では、排塵構造が相まってより有利な環境下で戦えるのだ。
このMS兵装の最大の特徴である、弾頭換装型ランチャー。
マガジンを換装するだけで、装備している武器を変更することなく多彩な戦術を取ることができる。
ビームバリアフィンは、前方にビーム攻撃を緩和するエネルギーフィールドを展開。
前方からのビーム兵器のダメージを緩和する。しかし、完全には防げず、高出力のビームには耐えられない。
高機動高火力を安易に実現し、なお汎用性が高いこのMSは、熟練兵や新兵の訓練など、あらゆる
場面で愛用できるモデルになっている。

ガンダムソルジャーとコマンダー、グラドニム、基地内の迎撃システムから瞬時に火が吹く。
爆発に巻き込まれる無人AIのギャン部隊。

「基地長!迎撃により敵残存MS部隊数残り50%!乗り切れそうです!」

「そうか!各地でも敵の急襲があったそうだが、武力はそうでもないようだな!」

安堵していた基地長とバーバリアンズ兵。

しかし

その安堵は

絶望に変わる。

敵の部隊の第二波である。

「あ…あ…!敵増援確認…!?」

「何!?数は!?」

「総数…200体!?しかも、まだ後続の増援部隊がいるようです…!」

「な…いつの間にそんな軍事力を…!?」

異常なまでの敵の増援には、理由があった。
サハール・クファールの宙域には、後続の艦隊が交互に繰り返しながらギャン部隊を射出していたのだ。

「おーし、引き上げだお前ら!こんだけ突っ込んでおけば大丈夫だろう!
総数で2000強のギャン部隊だ!ロバート!これだけあれば運動データの蓄積も楽だろう!?」

強化人間兵部隊の強襲用戦艦「ヴェルゲントリクス」内のデッキドッグにて。
穏健派元老院第4議長 アザック=ルクスリアが、エアスクリーンに話しかける。

「ええ、ありがとうございますアザック議長。
これで僕の近衛兵のデータへの反映も出来ます。ご協力感謝します。」

エアスクリーンに投影されていたのは、穏健派貴族院第3議長 ロバート=アケーディアであった。

今後のMS用AI開発のために、数は力、ということで、大量のギャン部隊を送り込んでいたのだ。

もちろん、200機とその後ろにいる部隊をたかが50機のMSと支部基地の迎撃システムが止められるはずもない。
やがて、撃ちもらしたMS部隊が、近場にいるガンダムソルジャーやコマンダー、グラドニムに襲い掛かる。

「くそぉ!食らえ!」

僧兵たちは戦闘慣れしているので、敵のギャンを迎撃できているかのようには見えた。
しかし、十字砲火クロスファイアは、そうそう避けられるものではない。

不意を突かれ、次々にビームライフルによる射撃により胸部を撃ち抜かれるバーバリアンズMS部隊。

「ぐあああああああああああ!」

「よくも仲間を!血も涙もない金の亡者め!」

ガンダムコマンダーがビームサーベルとシールドを構え、ギャンの群れを切り裂いていく。
その中に感じる違和感。

—MSから、人の気配がしない。
機械のような動き、パターン化された思考…—

「こ、こいつら…!?無人MS!?機械が俺たちを殺しにかかっているのか!?」

僧兵に、戸惑いと恐怖が喉元に絡みつく。
その恐怖に駆られた一瞬。

貫く鈍い音。

背後から、ギャン・テンプルコマンドのビームハルバードランス「アルバーデ」が
ガンダムコマンダーの腹部を貫いていた。

「しまった!」

そのまま体勢を崩されるガンダムコマンダー。
その瞬間、群がるギャン。

—まるで、血に飢えたゾンビの騎士が、生存者を食い荒らすかのように—

「ちくしょおおおおおおおおおおおお!」

一斉に格闘武器を胸部に突き刺されるガンダムコマンダー。
もちろん、コクピットが胸部にあるため、パイロットの僧兵は絶命した。

やがて、数の暴力では戦況を覆すことかなわず。
300前後のギャン部隊により、次々に支部基地が壊滅していく。

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.85 )
日時: 2013/09/12 22:35
名前: laevatain (ID: nYLbaC1V)


第三十二話 堕落〜虚ウ髑髏ガ彷徨ウノハ何処〜 中部3

この大事態は、メガラ・ジャンナの本拠地へすぐに伝えられる。

まず立ち上がったのは、ナージフ=ロンメル。

「この大部隊!?まさか…やはり奴等、我々を壊滅させる目的で…!?」

疑心暗鬼が拭えない表情のロンメル。

「しまった!アリシア様が危ない!」

ロンメルは、アリシアの元へ急ぐ。

やがて響き渡る緊急警報。
その中にて、先ほど待たされたルーム内にて待機しているバハムートクルー達。

「支部基地が、俺たちを付けて来たアライアンズの襲撃を受けている…!
早くここを離れて、バーバリアンズに妙な誤解と迷惑をかける前に目的地に着かなければ…!」

焦るザック。

「ちょっと乱暴ですが、ハッチをこじ開けて逃げるというのは?」

クルーからの提案。

「うーむ、それも考えたが、やはりそれでいくしかないか。
仕方ない、仇で返して申し訳ないが、彼らに迷惑はかけられん!」

全員の意見が一致しようとしていたその瞬間。

ドアが開く。

入ってきたのは、アリシアと、侍女だった。

「アリシア殿…。」

ザックがつぶやく。

まさか聞かれていたか?
疑われるのではないか?

そんな不安が、クルーに過ぎる。

アリシアは、表情を崩さず、口を開く。

「お願いします。私を匿って頂けませんか!?
脱出の手筈は整えています!私達をふねへ乗せてください!」

突然の提案に、驚きの声を隠せない。

「わ、わかりましたが、何故ですか…!?」

「説明している暇が無さそうなので、窮地を脱したらお話します!」

「私も、アリシア様のお世話のため、同伴させていただきます。
侍女の【クレア=オルスフェーン】と申します。よろしくお願いいたします。」

アリシアの脱出の手引きに助けられ、オーディン部隊は駆け足でバハムートへ向かう。

「全員、発信準備にかかれ!速攻でこの場を離脱し、敵の目を俺達に向けさせるぞ!」

「了解!」

全員の合図と共に、発進シーケンスが開始される。

「メインジェネレータ起動!システムグリーン!サブジェネレータ起動!
サブジェネレータ1.2.3.4.5起動確認!正常稼動!オールグリーン!」

「冷却系配水管稼動!異常なし!電子ブースター制御システム異常なし!」

「圧力、推進力問題なし!武装システム問題なし!」

「システムメインOS起動!プログラムエラーなし!発進準備完了!」

全員のシーケンス作業が完了し、起動前確認が完了した。

「おし!バハムートゼロ、発進!」

ハッチが開き、発進しようとした瞬間、

エアスクリーンに無線による通信が割り込まれた。

映し出されたのは、ナージフ=ロンメル。

「どういうことだ貴様ら!そこにいるのは…アリシア様!?
貴様ら、アリシア様をどうする気だ!まさか、アライアンズに引き渡す気ではないだろうな!?」

疑心暗鬼で食ってかかるロンメル。

「ち、違いますロンメル殿!これには、事情がありまして…!」

ザックの弁明にも、聞く耳を持たないようだ。

「これの何処を信用しろと言うのだ!
もう我慢ならん!ハッチを閉じろ!兵を向かわせる!ここで貴様らの息の根を…!」

「やめなさい!」

ロンメルの暴走を止めたのは、アリシアの一喝だった。

「いい加減にしてください!私は、私の意志でここにいるのです!
あなた方がジオンの再興、すなわち人類の選民主義を考えていることはよくわかりました!」

アリシアが激昂する。

これには、ロンメルも口を挟めない。

「選民主義を行うのならば、私達とは相容れることはできません!
支部基地にて亡くなられた私を慕ってくれた人々のためにも!私は私の成すべき事をします!」

アリシアの眼からは、溢れ出でる悲しみが。
それは頬を伝い、悲しみと寂しさをクルーに感じさせた。

その瞬間、血の気が引いたような表情のロンメル。

手が震えている。

「な…そんな…アリシア様…!私達を…見捨てるというのか!?」

「…すみません。…さようなら…。」

ハッチは閉じず、そのままバハムートゼロは発進していった。

やがて、遠く見えなくなるバーバリアンズ本拠基地。

上空4000m付近で、大気圏突入体勢となる。

「ここまでくれば、あとは俺達に引き付けられてこっちへ部隊がくるはずだ。
メンテナンスが不十分ではあるが、MS部隊は発進準備をしたほうが…」

ザックの提案の瞬間。

「艦長!上空から未確認機影5機を確認しました!
1機は…あの紫のMSです!残り4機の識別番号取得不可能!」

「くっ!よりによってあの道化師クラウンか!
全速力で退避!今の俺達では奴等には勝てない!」

「艦長!俺が出ます!
俺が時間を稼ぎますので、そのうちに退避を!」

アレスが時間稼ぎを申し出る。

「ぐ…すまない、アレス!」

ザックが申し訳なさそうにアレスを見つめ、囮役の承諾を提案する。

「アレス!私も…!」

エリュシアも囮役を引き受けようとするが、他のメンバーに止められた。

「エリュシア!いつもそうやってアレスと一緒に行くのはやめよう!
アレスだけのほうがうまくいく場合もある!」

とめた理由は二つ。

エリュシアとアレスの共倒れの可能性。

残存戦力の温存。

この二つであった。

「アレス…、気合入れてかかるぞ!」

「ああ、いくぞエウリス!」

「アレス=ウィザール、ナイトメア、出撃します!」

カタパルトから放たれたナイトメア。

「おおおおおおおおおおおおおお!」

エウリスの呼応に応じたのか、眼光が輝きだすナイトメア。

しかし、気合十分の彼らを待ち受けていたのは、壮絶な結末だった。


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