二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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機動騎士ガンダムInceptor(インセプター)
日時: 2015/07/25 13:01
名前: Laevatain (ID: rZuUN0S4)
参照: http://laevatain1408.blog.fc2.com/

今までのガンダムシリーズ(主に一年戦争以降からの時代観)を踏襲して
作成したガンダムの二次創作になります。

作成者は妄想大好きなおじさんです。

こんなつたない小説ですが、お付き合いいただければと思います。

STORY
かつて、人類は母なる大地「地球」を方舟に生活していた。
だが、その過剰な人口はやがて「地球」を取り合い、争いを引き起こした。
そして宇宙に生活圏を拡大させてもなお、「地球」をめぐる争いは終わらなかった。
やがて「地球」は人類の手によって汚染され、醜くなっていった。
人類は相談し、「地球」を巣立ち、新たな新天地「火星」に生活圏を移す。
それから約2世紀。
銀河系第35宙域管轄コロニー「サイドアルファ」。
ここにコスモポリスとして従事する青年「アレス・ウィザール」
彼と1体のMSの出会いから、全ての歯車は動き出す。
絶望の運命を希望の未来へ変える歯車が・・・。

—人は、誰かを守るために、「騎士」となる—

用語
セカンド・ノア(第二の箱舟)
第二の地球。火星をテラフォーミングし、地球と同じ環境にした惑星である。

ロスト・ガイア(失われた楽園)
過去の地球。過去の大戦やMSによる戦争により、自然環境コントロールが乱れ、化石燃料は
潰え、汚染されて人類が住めなくなった地球。火星移住から2世紀後、大気は完全に無くなり、
かつての青く美しい星は黒ずんだ地表が見える無残な姿となった。


GU(ギャラクシーユニオンズ:銀河連合同盟)
銀河惑星間での統治が進み、各惑星の政府による政治・法律上におけるルールを確約させる
政治機関。とどのつまり現代の国際連合。
現在は革新派(自由な未来と悪質企業の根絶を訴える派閥)と穏健派(現在の企業紛争を
黙認する派。闇献金を受け取る悪質な議員が多い。)の争いが激化している。

企業
地球時代における国がつぶれてから、企業が力を持つようになり、もはや企業が惑星政府と
同じ権力を持つようになった。それにより、圧政や重労働なども問題になり、
GUが企業の暴走を抑えようと奔走している。しかし、反発する企業も少なくは無い。
現在は各企業間における未統治惑星の資源獲得戦争や紛争が後を絶えない。
そのため、軍備拡大を急ぐ企業が増えつつあり、各企業がGU軍へ宣戦するのではと危惧されている。
そしてそれは、30年前の第一次企業戦争により現実のものとなった。

コスモポリス
GU管理下の宇宙警察機構。

オーディン
GU軍第01強襲攻撃部隊。
革新派の傘下軍であり、自由を目指し戦う軍。市民からはヒーロー扱いされている。
母艦はたった1隻だが、その実力は計り知れない。
母艦は強襲戦闘艦「バハムートゼロ」

プロジェクト ライト&ダークネス(光と闇の機兵計画)
「第二次企業戦争」において、アライアンズに対抗すべく計画されたGU軍極秘新型MS開発プロジェクト。
ライトサイドとダークネスサイドのコンセプトから成り立つ。
ライトサイド セイントガンダム
ダークネスサイド ナイトメアガンダム
この二機のMSを基盤に、アライアンズ撃破のきっかけを生み出そうとしていた。
このプロジェクトの進行部隊はオーディンである。

企業戦争グリードウォー
企業がGUに反発し、起きた戦争。
第1次企業戦争では、全企業が一斉に武装蜂起し、GU軍との全面戦争となった。
GU軍が市民の安全と自由を主張し、企業側が利益の優先、そのための人命の犠牲は必要経費だという反論。
もちろん企業の横暴を市民が許すはずが無い。各企業の従業員は一斉にボイコットしたため企業側の戦力補給がストップ。
企業は窮地に立たされる。
そして企業は、禁断の大量破壊毒物兵器による非人道的な虐殺を敢行。サイドクスィーとサイドツェーラを毒殺し、壊滅させた。
この悪行により世論は大激怒。GU軍はこの後押しもあり、ついに企業側を屈服させる。企業側も降伏を宣言。
これにより、18年間に続く第1次企業戦争は終幕した。
それから10年後、ちりばめられた解体企業を収束させて、新たに3つの大企業が設立される。
その企業達が軍事同盟と産業通商同盟を締結。組織名をアライアンズとする。
アライアンズは、約2年前にGU軍に向かい「復讐のときは来たれり!」と宣戦を布告。
こうして、第2次企業戦争の火蓋が切って落とされたのだった。

モビルスーツ
宇宙開発時代と呼ばれる「宇宙世紀」時代において勃発した、
「一年戦争」と呼ばれる戦争により生まれた人型戦闘兵器。
宇宙の微細粒子により、レーダーなどの無視界戦闘が不可能となった本戦争にて、
有視界戦闘の基盤を確立させた兵器でもある。
特に後述する「ガンダム」と、当時戦争を繰り広げた「ジオン公国」は、
歴史の教科書にその名を刻まれる程、
人類とモビルスーツの歴史を学ぶ上では欠かせない存在。
その後、様々な企業においてモビルスーツは建設用・土木作業用・宇宙開発用などが開発され、
あらゆる分野で人類の開発を支えてきた産業機械となり、今日の宇宙経済の基盤を固めている機械となった。
個人で所有するものも珍しくなく、モビルスーツは「兵器」としてではなく「ありふれたもの」として、
人々に浸透している。

ガンダム
「一年戦争」と呼ばれる、モビルスーツ最古の戦争において、
地球連邦軍が開発した高性能モビルスーツ。
さまざまな派生機種が存在する、由緒ある機体。
現在ではガンダムの特徴的なVアンテナとフェイス、G-ロンダクトプログラム
テクノロジー社が販売するGUNDAM OSを搭載した登録商標商品として流通しているモビルスーツを指す。
ガンダムは主に、フロンティアワークショップ社が
生産、販売を行っている主力商品として認知されている。
独占商品ではなく、さまざまな機種が他企業からも
進出しているが、ガンダム単体の性能では
フロンティア社の右に出るものはいない。
そのため、他企業はガンダムを上回る製品の開発に
奔走するケースが後を絶たない。
ちなみに、ガンダムは大衆の間では最も馴染み深く、
モビルスーツの象徴とも呼べる機体である。

ジェネレータ技術
ムーンレィス(∀ガンダム時代)戦乱後に始まった、宇宙開拓時代の中で新たに見つけた鉱物。
そこには、未知のエネルギーが詰まっているものだった。
その鉱物の名は「エーテライウム」。
このエーテライウムから抽出したエネルギーを「エーテネルゲンエネルギー」と呼ぶ。
エーテネルゲンエネルギーは、簡単な電気変換回路により電力へと変換される。
しかしその発電規模が、既存の化石燃料のおよそ3000倍〜5000倍に相当するものであった。
これにより化石燃料・原子力により起動されていた各機械のジェネレータは淘汰され、
エーテネルゲンエネルギー式のジェネレータ「エリクシル式ジェネレータ」へと移行される。
また、エーテネルゲンは人体への影響がほぼ無く、安全に使えるものとしての評価もあり、
瞬く間に時代はエーテネルゲンエネルギー循環型社会へと変貌する。
エーテライウムにはもうひとつ特徴があった。それは「精錬」に伴う「エネルギー付与」。
エーテライウムは加工のしやすさも売りであり、鉄などの金属の添加物にエーテライウムを数%含ませて精錬させると、
精錬された金属にエーテネルゲンエネルギーを帯びた状態で精錬することが出来るのだ。
これもあり、たやすくなおかつ大量にエネルギーの元を生産できるとして、化石燃料の枯渇に伴う人類の衰退の心配は完璧に無くなり
人類は安心して宇宙開発を行うことが出来るという現在の社会形態が確立したのである。

※この作品におけるビームサーベルは、ビームの噴出によって刃が形成されるものではない。
ビーム出力の上昇によって、ビーム噴出を維持することが
テクノロジー上不可能になったからである。
この作品でのビームサーベルは、折りたたみ式アンテナのように、
伸縮可能な棒状の兵装の表面からビームが噴出し
形成されるものである。
ビームサーベルにも耐久性があり、出力の低いビームサーベルは、
鍔迫り合いの際に負けて破損する可能性もある。

なお、このガンダムはジャンプ漫画の根源である
「努力・友情・勝利」をモチーフにしております。
何卒ご容赦ください。

ツイッターやってます。ご意見ご感想はこちらまで。
要望なども受け付けております。
上のURLからどうぞ。

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Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.46 )
日時: 2013/07/06 19:52
名前: Laevatain (ID: VHURwkNj)

第二十一話 ガンダムセージ—マルス、出撃す— 前部

—オーディンが、アウェイキニング・アンリミテッドの先行部隊を撃破してからおよそ3日目の宙域—

産業惑星「メタリカ」を離れ、航行モードは安定している。
バハムートゼロのレーダーには、敵の反応は無い。
モニターは明滅を繰り返し、それを確認し続けるオペレーター。
ジェーンである。
「異常なし…ふう。」
椅子から軽い伸びをする。
肩こりにも似た感覚を感じる。長時間モニターを注視し続けたせいか。
「コーヒーでも作ろうかしら…。」
休憩を兼ねて、椅子から立ちあがろうとする。
そこへ、一人の少女がコーヒーを持ってジェーンに渡す。
「はい、ジェーンおねえちゃん。コーヒーだよ。」
双子の姉妹、サイコツインズの妹、ミーニャであった。
「ああ、ミーニャちゃん。ありがとうね。」
ジェーンが、ミーニャの頭を撫でる。
ミーニャは頬を赤らめる。
そして、微笑ながらジェーンとの談笑を楽しんでいった。

サーニャは、ダグラス・カロラス・マルスとボードゲームをしてるようだ。
遠くから、ダグラスの悲鳴が聞こえる。
恐らく、ダグラスが敗北したのだろう。

ザックは、ドックを見渡しながら満足げの表情だ。
「艦長、どうしたんですか?」
アレスが、彼の表情を見て尋ねる。
「ああ、あの子達がこの艦に慣れてくれて、つい父親のような感覚になってしまってな。」
「ああ、なるほどですね…わかります、その気持ち。」
アレスも納得の感情であった。
「最近は人が死ぬことが多くて、心労で潰れ掛けてたよ。
だが…あの子達を救うことが出来てよかった。
ジェイクやノルンに携わったクルー達へのせめてもの弔いとして、
彼女達を闇から救えたことは、俺達にとってかなり大きいものになるだろう。
ジェイクたちは、彼女達を生かしてくれるよう、俺達に力をくれたんだ。
…俺は、そう信じたい。」
ザックが、ため息混じりに話す。
そして、救うことが出来た2つの小さな命を見つめていた。

サイコツインズ…オーディンを苦しめた忌わしき実験の申し子達は、
敵であるはずのオーディンによって救われたのだ。
ダグラスが彼女達の闇を打ち払い、以後はダグラスに懐く様になった彼女達。
徐々に心の氷を溶かしていくうちに、感情が豊かになったようだ。
特に、アップリアとデミグトリ夫婦の料理がお気に入りな様で、
昼食と夕食時のデザートは彼女達の参入により、激戦区と化している。
しかし、その状況を楽しんでいるのがバハムートクルーである。
最初にデザートを口にした彼女達の「おいしい…。」とつぶやいて頬を染めた瞬間、
食堂全体に歓喜の渦を起こすクルー達の姿すらあったのだから。

主にミーシャとサーシャの面倒を見ているのはダグラスとエリュシア。
そこへ年齢の近いカロラス、マルス、キャスタも入るような形になっている。

サフィアは、彼女達のおめかしにお熱のようだ。
秘蔵していたキャスタ用のおめかしセット(キャスタは嫌がって使っていない)を
フル活用し、彼女達にメイクアップとドレスアップをしては興奮している。
「キャーー!かわいいわぁ!やっぱりあなた達はゴシックロリータが似合うわね!
キャスタには不評だったけれど、あなた達はどうかしら?」
サフィアが、期待の眼差しで姉妹の回答を求める。
ミーニャとサーニャは、自分達の外見を見てしっくり来るものを感じたようだ。
「「素敵だわ。ありがとう、サフィアさん。」」
この瞬間、サフィアの顔が一気に赤らめる。
「もー!なんて可愛いのあなた達!」
サフィアが、姉妹を抱きしめる。

そんな形で、バハムートゼロに溶け込める形となった彼女達。

アレスは、そんな中を複雑な心境で見つめている。
現在、彼の心の闇は拭えておらず、自分の答えはまだ見出せない。
そこへ、ミーニャとサーニャが近づく。
「どうしたんだい?」
アレスが尋ねる。
「アレスさん、少しだけ近づいても良い?」
ミーニャの要望。アレスはもちろん了承する。
「ああ、構わないよ。」
そこへサーニャが、
「アレスさんの心、少し見たいの。ちょっとごめんね。」
と一言。
二人は、アレスに抱きつく形で近づく。

彼女達に見えるのは、アレスの心を具現化したようなビジョン。
暗くうねる闇。
彼の迷いを示しているのだろうか。
その奥から明滅するように感じるのは、

光。

まぶしい光。

温かくも感じる。

—まるで、未来を照らし出すような—

「何か見えたかい?ぜひ聞きたいな。」
アレスが尋ねる。
「アレスさん、悩み事があるのかな?」
まずはサーニャ。
「ああ…ちょっと、自分の中にもやもやしたものがあってね。」
アレスが少し戸惑う。
見抜かれたのだ。自分の迷いを。闇を。
ミーニャのフォローが入る。
「大丈夫。きっと答えは見つかるわ。だって、アレスさんの心には…」

そして二人はこの言葉を口にする。

「「まぶしくて、温かい、光が見えたから。」」

穏健派第05攻撃部隊【マンモン】を率いる母艦「マンモン」。
その護衛艦として、ガルーダ級巡洋艦「ヒッポグリフ」が3隻追従する。

「議長!バハムートを捕らえました!前方から向かってきます!」
メタリカから距離を少し置いた形で待機し、バハムートゼロの出方を伺っていたようだ。
「よぉし!全軍出撃!あの忌々しい竜を叩きおとせぇ!」
ガウェート=アウァリーティアが、全軍に出撃命令を掛ける。

瞬間、1隻のヒッポグリフが何処からともなく降り注いだミサイルとマシンガン、そしてビームの雨を受ける。
ヒッポグリフはなす術なく撃沈していく。
「!?何事だ!」
突然の事態に、動揺するガウェート。

側面から、2隻の中型戦闘強襲艦が出現した。

センチュリオンズ所属:男性部隊「ブラッドドラゴン・クルセイダーズ」母艦 「ザッハーク」。
同じく、女性部隊「ヘル・アマゾネス」母艦 「アリアンロッド」である。

展開するは、無数のMS。

ブラッドドラゴン・クルセイダーズ:一般戦闘兵用MSのドラーケル。
ヘル・アマゾネス:一般戦闘兵用MSのキャトレイ。

その先頭にて指揮を取るは

歴戦の勇者:デューク=ストレインが駆る、ライザード。

護衛という形で「ヘル・アマゾネス」の指揮を取るのは、
「真紅の百合三姉妹クリムゾンリリィシスターズ」が駆るパンタール3機であった。

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.47 )
日時: 2013/04/08 00:29
名前: Laevatain (ID: VHURwkNj)


第二十一話 ガンダムセージ—マルス、出撃す— 中部

「ジジジ…聞こえるかな?マンモンの諸君。久しぶりだな。デュークだ。」
全員が見覚えのある威厳ある顔に、動揺と焦りを隠せない。

—かつて、自分達が貶め、裏切り、追放した上官だったため—

「…亡霊め…!生き残っておったかくたばり損ないが…!」
ガウェートが歯軋りをする。

「久しぶりだな?ガウェート。さぞや議長になって、良いご身分だろうなぁ?
俺達を貶めたことにより、お前は晴れて議長の座を獲得したんだったな?
どうだ?その椅子から見える俺達は惨めに見えるか?
税金を貪り、私腹を肥やして手に入れた勝利の美酒は旨かったか?
人々を罵り、幸せを踏みにじり、さぞや王の気分だったんだろうな?」
皮肉をこめたデュークの発言。
対するガウェートは、震えが止まらない。

—自分が殺したはずの男が、復讐のために、地獄から蘇ったのだから—

「おのれゾンビ風情が!今度こそ貴様の息の根を止めてくれる!
バハムートを撃ち落す前に、先に貴様らから血祭りにあげてやる!」
動揺と焦りにより、冷や汗が止まらないガウェート。

「くっ!しかし…このエリアなら、私の秘蔵MAと隠し玉を有効活用できるな…。
総員、迎撃準備に当たれ!
ヅダ部隊、光学迷彩とジャミングシールドを持ち、各自方向へと四散!
狙撃ポイントに到着し、全軍の準備完了次第、奴らを蜂の巣にしてやれ!」
ガウェートには勝算があった。
ここは、瓦礫と隕石が散見できるエリアである。

—狙撃の隠れ蓑には、ぴったりだったのだ—

ヒッポグリフのMS発進ハッチが開く。
が、肝心のMS部隊の姿は見えない。
やがて、ハッチが閉じていく。

ブースター音は、かすかに聞こえる。
どうやら、ガウェートの切り札である狙撃部隊のようだ。
光学迷彩をしているため、姿がカモフラージュされ、見えないのであった。

マンモンからは、主力部隊であるベルグルフ、ゲルググ・ベリアルナイツ、
ノーディック、バルの複合部隊が次々と出現する。
その数、およそ300。

目算で、センチュリオンズのMS機数は大体50と見たところか。
圧倒的な物量の大差である。

しかし、センチュリオンズは数の暴力すら諸共しない。
全軍、一切の怯みも焦りも見せず、ただ眼前の宿敵を睥睨するのみ。
その眼光、まさに竜騎士の軍団。
恐れを知らない神々の竜騎士団。

ブラッドドラゴン・クルセイダーズ。

竜騎士の咆哮が、今まさに、木霊せんとしていた。

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.48 )
日時: 2013/04/19 00:37
名前: Laevatain (ID: 0.f9MyDB)

第二十一話 ガンダムセージ—マルス、出撃す— 中部

バハムートゼロのレーダーにも、マンモンと所属不明中型戦闘艦の座標が投影される。
「!?レーダーに反応あり!でも…敵穏健派戦艦部隊、こちらに気づいてないようです!」
ジェーンとサフィアの報告。
「どういうことだ?中型戦闘艦と交戦中か?
他の武装勢力に絡まれたのか…?」
疑問が募るザック。
「これは…敵のMS部隊があちこちに四散!中型戦闘艦を包囲し、何かしようとしてます!
熱源?これは…おそらく狙撃部隊が展開し、中型戦闘艦を集中攻撃しようとしてる!?」
ジェーンとサフィアの追加報告。
バハムートゼロのレーダーは高性能である。
高感度索敵センサーとアンチジャミングシステムにより、
ジャミングシールドの妨害干渉をも諸共せずに索敵が出来るのだ。
「ん!?」
ザックが、何かに気がついた。
「あの機体データ、識別番号を頼む!」
「了解!えっとね…識別番号WSD19854-VX!これ…こないだあった艦長の先輩の機体だよ!?」
カロラスは、先日決闘を申し込んだデュークが訪れた際に
識別番号をこっそりスキャンしていた。
それを頭で覚え、思い出したのだ。
「くっ!やっぱりか!奴ら、どうやらセンチュリオンズと交戦してる!
このまま無視でもいけるが…!」
ザックは迷っている。

—このまますれば、自分の恩師が、敵の毒牙によって、殺されかねない—

後ろから、背中をぽんと叩かれるザック。
マルスだった。

「ザックさん。行きましょう。同じ敵なら、共闘しましょう!」

「…ああ、すまない。総員、センチュリオンズ戦力を援護!
気づかれないように、敵狙撃部隊を撃破してくれ!」
ザックの出動命令。

アレスは、迷っている。
まだ、闇は拭えない。

ミーシャとサーシャが、アレスへのアドバイスをする。
「「大丈夫。貴方は、絶対に闇に飲まれない。
だから、行ってあげて?
ほら、エリュシアお姉ちゃんが、待ってるよ?」」

振り向けば、エリュシアが、アレスを心配そうに見つめている。

—乗り越えよう、この闇を—

「エリュシア、ごめん。心配掛けて。
アレス=ウィザール、出撃します!」
アレスは、エウリスハロと共に、MSドックへ駆けて行く。

今回は、マルスも一緒だ。
「さあて、お待たせしましたっ☆
僕のMSをお見せしますよぉ!
では、「ガンダムセージ」出撃します!」

ガンダムセージ。
ガンダムソルジャーのカスタムモデルであるが、一般発売されているものではない。
マルスとそのメカニックが改造を施した、唯一無二のMSである。
背中には、折りたたまれたビームライフルを携えていた。

一方、交戦エリア。

—竜騎士の咆哮、木霊せん—

先手は穏健派。
MS部隊が一斉に射撃を行い、敵を殲滅せんとする。
しかし、2機の強襲艦はビームバリアを展開。
射撃を無力化する。

ベルグルフ、ゲルググ・ベリアルナイツ15機が、
デュークのライザードに向かい、格闘武器を構え襲い掛かる。

しかし、護衛のドラーケル3機が眼にもとまらぬ速さで
ヒートラージブレイド「カッツバルケル」をバックパックから抜き取る。

そして描く複数の閃光。

まるで流水の如く動くドラーケルを、並みの兵士が読めるはずもない。
動きに対応しきれず、15機のMSは、ドラーケルに曲線を描かれる。

次の瞬間、描かれた線に沿って、MSが分解、大破した。

なおも続く頭上からのビームライフルの弾雨。
ステップブースターにより、難なく回避するライザード。

その中で、右手でライザードの左手にあるラウンドシールドを回す。
ラウンドシールドは、回転を加速させつつ外周の縁を緑色に発光させていく。
左右に揺らめきながら、左手のスナップを利かせて
ライザードが、ラウンドシールドを投擲する。
ラウンドシールドは、まるでフリスビーのように飛翔する。

回転するラウンドシールドと激突したベルグルフ。
緑色に発光した縁で、切り刻まれながら火花を散らしていく。
やがて、ベルグルフの胴は切り離され、爆散した。

ライザードは、ラウンドシールドに繋がれているワイヤーを左へ引き寄せる。
回転し続けるラウンドシールドは、左へ加速していく。
延長線上に存在する穏健派のMSは、次々に切り刻まれ爆発していく。

ラウンドシールドワイヤーソー「フォス・キクロス」
ラウンドシールドの縁からビームを噴霧させ、そこから回転を加えて相手に投擲する兵装。
投擲された回転ビームの刃は、対象を切り刻みながらワイヤーにてコントロールが可能。
ヨーヨーのような武器である。

獅子奮迅の活躍を見せる、センチュリオンズ軍勢。

しかし、その活躍に水を差すように放たれた閃光。

ライザードへ、光が迸る。
「隊長、危ない!」
ドラーケルの一機が、ライザードをかばう。
閃光は、シールドに着弾。
そのまま照射され続け、シールドもろとも左腕が融解した。

その後も次々に、光の雨がセンチュリオンズに降り注ぐ。
光の矢は散開していたドラーケルの数機に着弾し、被弾していく。
被弾の規模はたいしたことはないが、脚、腕、どこかがひとつが破損していく。

「た、隊長!射程エリア外から狙撃を受けています!」
「!やはりガウェート…罠を仕掛けていたか!
すまないな、助かったぞ。」
デュークは、かばった部下に労いの言葉を掛けつつ、
被弾したドラーケルを擁護する形でライザードを前進させる。
「被弾した機体は速やかに撤退せよ!
被弾していない機体は、被弾機体のフォローに回れ!」
動揺を見せず、的確な指示を出すデューク。
歴戦の勇者。この状況もなれた様子であった。

「ちっ!誰だい!?人の誇りを取り戻す戦いに茶々を入れるのは!
ウィオラ!カリディア!あんた達!敵を探すよ!」
ヘル・アマゾネス部隊のMS、キャトレイとパンタールは
獣型MAへと変形し、あたりを捜索し始める。

しかし、ジャミングシールド+光学迷彩の二重の隠密兵装に加え、
このエリアでは、瓦礫と隕石が散見される。
何処に敵がいるか、レーダーは頼りにならない上、肉眼でも見極めるのは困難であった。
「くっそぉ!何処にいるんだ卑怯者め!アタイたちの前に出なさいよぉ!」
ウィオラ=ヴァーミリオンが悪態をつく。
「このままでは…間に合いません!」
焦りを隠せないカリディア=ヴァーミリオン。
三姉妹はうすうす感づいていた。

—次の一斉射撃まで間に合わない—

しかし、ナルキス=ヴァーミリオンが、暗闇の中に光る閃光の筋を見つけた。
獣型MA「ケット・シー」は、ブーストを全開にして
光り輝く光の線を追いかける。

一方—

ライザードの動きが止まったときを狙って、
狙いを定めるは白銀の弓矢—

「クククク、貰った!」

AVS-10-EMSP ヅダ・ティーハ デ リーテ

「オールド・リニュー・モデル」はコストが高めで高性能というコンセプトが強い中、
量産コストを抑えた機種の需要がユーザーからあがっていたため、産業用のネフィリムをベースに、
ヅダの残存データを踏まえて改修した機種。
ヅダの高出力ジェネレータと高推進力ブースターの代償として致命的とされていた空中分解は、
基礎材質の向上と時代技術の発達により完全に解消。
軽量化に軽量化を重ねたボディの重量は通常のMSの約半分。
装甲に難はあるものの、遠距離狙撃MSとして立ち回ることにより、被ダメージを軽減するとともに
ヅダの持ち味である高機動によるヒット&アウェイ戦術を実現させることに成功した。
さらに索敵機としての機能も搭載し、レドームセンサーを装備。
高性能レーダーとも相まって、偵察・諜報機体としての価値を高めた。
主力のスナイパーライフルは高出力のビームを照射し続けることが出来、纏まった損害を与えられる。
狙撃手にふさわしいMSである。

ヅダの主力武器である、ロングレンジレーザーライフル「フレッシデルーミエ」が、ライザードを狙う。

—あばよ、一昔前の英雄さん。今は、金と権力が支配する時代。
おっさんの役目は終わったんだ。亡霊はあの世に還んな!—

トリガーを引く、その刹那。

閃光、一筋。

ヅダに命中。

ヅダは、胸部の動力部を貫かれ、爆破した。

「ダメですよ?そうやってコソコソ隠れて卑怯なことをしては。
ちゃんと、正々堂々と戦いましょうね!」

マルスのMS、ガンダムセージの攻撃であった。
折りたたまれたビームライフルは展開され、スナイパーライフルと化していた。

—誇りを守るための戦い。そこに割って入ったオーディン部隊。乱戦、さらに混迷を深める—

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.49 )
日時: 2013/04/13 07:18
名前: Laevatain (ID: VHURwkNj)

第二十二話 強欲アウァリーティア—満たされぬ渇き 満たされぬ欲望— 前部

センチュリオンズ:ブラッドドラゴン・クルセイダーズの誇りを取り戻す戦い。
そこに水を差すように差し込む閃光の雨。

白銀の狙撃手、ヅダ=ティーハデリーテ。
闇から狙うその弓は、竜騎士の誇りを奪おうとしていた。

その瞬間、走る炎の矢。
ヅダは胸部に矢を受け、崩れていく。

炎を放ったのは、マルスのMS「ガンダムセージ」。
砲身から折りたたまれていたビームライフルは展開され、スナイパーライフルと化していた。

ヅダを撃破した直後、背後から忍び寄るMSの影。
ガンダムセージへ、3機のヅダが襲い掛かる。

この動きを把握したマルス。
「僕のMSは、遠距離狙撃だけじゃないですよ!
僕の一番嫌いなこと!ふんぞり返って指示しかせず、高みの見物を決め込むことです!」
直後、ビームライフルがまた折りたたまれる。
ビームライフルの長い砲身に相当する部分がトリガー部へ接続される。
折りたたまれた2つの穴から、小さなエネルギー発射口が伸びる。

ヅダの1機が、ビームハンドアックス「アッシュ」を両手に構え、二刀流斧による斬撃を繰り出す。
ダッシュしながら横に、縦に軌道を描くビームアックス。
マルスは、MSの操縦グリップを滑らかに動かし、ペダルをリズミカルに踏む。
その挙動に合わせてMSが流れるように動き、斬撃を流水のように躱す。
ヅダの動きが止まった瞬間。
セージは折りたたまれたビームライフルのトリガーを引く。
通常のビームライフルと比較すると弱い出力のビームが、2つの発射口から連射される。
ビームの雨がヅダに降り注ぎ、装甲に穴を開けていく。
穴だらけになったヅダは、力なくモノアイの輝きを失い、やがて爆発した。

後衛のヅダが、バックパック内臓のミサイルポッドより、ミサイルを上部に発射する。
ミサイルはセージの頭上にて爆発。
爆発した際に飛散した炸薬の火が当たりに散らばり、セージを狙う。
セージは火の雨を縫うように回避。避けた炸薬の火が瓦礫に当たり、爆発する。
爆炎からヅダが接近。ビームアックスを手に持ちセージをなぎ払おうとする。
カウンターとして、セージが左手のグレネードランチャーを発射。
咄嗟にヅダは左手を前に出し、シールドを構える。グレネードが着弾し、すさまじい冷気が発生する。
気がつくと、被弾したシールドを含む左腕は、凍結し動かない。
「な、なんだこれは!?」
MS戦闘で、冷気が発生する現象の経験は無いヅダパイロット。
コクピット内のコンソールから、左腕の温度下限異常エラーが吠え出す。
動かない左腕。

が、後ろから3機目のヅダが、照準をセージに合わせ終えた。
「終わりだ!」
銀の弓から閃光迸る—

光が放たれた瞬間、真紅の影に切り裂かれる狙撃したヅダ。

ヅダは胴体が真っ二つに割れる。
直後、爆発。

閃光は、的確にセージを捉えている。
セージはまだ気づかない。

光の矢がセージを貫くその刹那、真紅の影がもう一つ。
セージに体当たりをする真紅の影。
セージと影は光の軌道から離れ、左腕の凍結したヅダに命中。
ヅダの腹部に光が走る。
風穴の開いたヅダは、炎を上げて散った。

切り裂いた影と体当たりした真紅の影は、獣型MA。
その後、MAは変形解除を行い、人型のMSへと形を変える。
センチュリオンズ所属女性部隊「ヘル・アマゾネス」の主力MS:キャトレイと
「真紅の百合三姉妹クリムゾン・リリィ・シスターズ」のカスタムMS:パンタールであった。

「あ、あなたは…「真紅の百合三姉妹クリムゾン・リリィ・シスターズ」!?」
マルスが驚く。
見覚えのある紅いMSが、いきなり現れたのだから。
「もう、危なっかしいったらありゃしないじゃないか!」
ナルキス=ヴァーミリオンであった。
「全く、オーディンの連中はお人好しが多いのかねぇ?
人の誇りを取り戻す戦いに横槍入れて…。
でも、今回の狙撃部隊は相手の反則技だ、援護感謝するよ。
そのままの引き続きで悪いが、あんた達に頼みがある。
あんな腐った権力の犬に、デュークを殺させるわけには行かないんだ。
あんた達の力を借りたい。この卑怯な手を潰して、あの人の誇りを取り戻させて欲しいんだ!」
意外にも、ナルキスからの譲歩。
「わかりました、僕からは問題ありませんよ!」
マルスも了承。

これにより、パンタールとキャトレイ全機及びガンダムチームに通信が入る。
センチュリオンズ・オーディンの期間限定の同盟が結ばれたのだ。
目標は、敵狙撃部隊の壊滅。
各機は、各所に散らばる狙撃部隊のMSを蹴散らしていく。

Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.50 )
日時: 2013/04/13 12:17
名前: Laevatain (ID: VHURwkNj)

第二十二話 強欲アウァリーティア—満たされぬ渇き 満たされぬ欲望— 中部

—何処から、間違ったのだろうか?
—何時から、擦れ違ったのだろうか?
—何故、同じ道を歩むはずが、その未来がズレたのだろうか?

過去を振り返っても、思いあぐねても、押し寄せるのは後悔だけ—

約30年前ほどだろうか。
G.U.軍に、二人の若き兵士が入隊した。
名門貴族出身の若者と、平民出身の若者。
どちらも、真っ直ぐな眼。
第一次企業戦争の開戦当初のこの時期、希望ある兵士の入隊は士気の高揚にも繋がる。
軍は、彼らを歓迎した。

その後、年と死線を越えていく若き兵士二人。

しかし、彼らの周りで不可解な事件が起きる。

彼らの同期もしくは後輩の兵士が所有していた金品や財布などが相次いで盗難されていたのだ。
後に証拠が見つかり、その導きにより犯人は見つかった。
犯人を除隊処分とし、その場は落着したかに見えた。

—が、平民出身の若き兵士の一人が気づく。
盗難された物と酷似する金品や財布が、彼のルームメイトである
自分の同期…つまり、貴族出身の若き兵士のもう一人の机の隙間から見えたのだ—

月日は流れ、彼らは尉官となる。
この階級になると、部下も付いて来る。
第一次企業戦争も終戦に差し掛かり、獅子奮迅の活躍を見せる平民出身の尉官。
そんな彼には、優秀な部下が集った。
ザック=ドラウロト、グントー=ポー、ヴォーノ=ロドリゲス。
この三人は、兼ねてから実績経験のある優秀な兵士だった。
彼は、この三人だけではなく、自分が抱える部下に、戦いとは何か、誇りとは何か、
これを教えるように自ら死線の最前線に飛び込んでいく。
彼の生き様に感銘し、共に戦う決意をした彼の部下。
何時しか、彼らは強い絆で結ばれるようになった。
MSは竜騎士のようなフォルムで、何時しか企業側からは
神々の軍隊として恐れられるようになった。

一方、貴族出身の尉官。
部下は活躍していた同期の尉官よりも数は多かった。
が、実戦経験は皆無。
自分は陣頭指揮のみで、作戦の遂行は殆どが部下であった。
もちろん、作戦がうまくいくはずもなく、ただただ無駄死に。
だが、結果はなんとか出していたため、彼もまた地位を上に登っていく。
また、部下の不祥事も多く、賭博・盗難・強姦などにより失脚する兵が多かった。

—実際に不祥事を行っていたのは、その尉官だったのだが—

やがて終戦。
この時期、二人に岐路が訪れる。

元老院議長ゾディアック=マイルフィックより、貴族院の議員にならないかというスカウト。
G.U.議会が思想の対立で派閥分断を起こしたため、その議席の確保と
数による派閥の優勢を維持するためであった。
これに、貴族出身の尉官は喜んで手を挙げる。

が、平民出身の尉官がこのスカウトを蹴った。
「私には、部下が居ます。その部下は、家族です。
私は、家族を裏切ることは出来ません。」
こう述べ、断りを入れたという。

貴族の息子として生れ落ち、政治家となった新兵。
かたや、平民の息子として生れ落ち、軍人となった新兵。
こうして道は違え、二人の新兵は議員と軍人という別の道を歩みだした。

議員になってからは、先輩議員について回る貴族出身の男。
汚職・企業との根回し・企業の内情を逆手に取ったインサイダー取引
賄賂・接待・談合・天下り…
嫌と言うほどの闇を掻い潜った。
その中で浴びる美酒、金の雨、欲しいもの、女…
何年も何年も欲望を見続けていた貴族出身の男。
しかし、ここで今まで伏せていた彼の根幹が、露になる。

—足りない。これでは足りない。
金が欲しい、車が欲しい、女が欲しい、力が欲しい
人とは違うものが欲しい、唯一の物が欲しい—

平民出身の男は、誇りと家族、そして人の未来を守るため、軍人であり続けた。
その姿、そして彼が率いた軍は、秩序と正義と自由を守る竜騎士の軍団として
人々から賞賛を与えられることになる。
革新派議会からも、その栄誉ある行動に感服し、彼を中将の位にまで昇格させた。
まさに、将軍ジェネラルと呼べるまでの威厳と慈愛に満ちた人物となったのだ。

この時期から、新規軍の編成プロジェクトが発足。
このスタッフとして、ザック=ドラウロトが抜擢される。
ザックは軍を離れる形となったが、自分の恩師との関係は大事にしていた。

一方、議員を歩んだ男は、マスコミからのスキャンダルに苦しむ。
その中で脚光を浴びる平民出身の同期の男。英雄と呼ばれるまでになった男。

—この男が持つ「自分には無い何か」が欲しい—

議員を歩んだ男は、「強欲アウァリーティア」に、支配された。

ある時を境に、竜騎士の軍に所属するMSの数機が、とあるNPOに対して
執拗に攻撃をするようになった。
MSの機影もマスコミに確認され、事態は泥沼化していく。

—これが、議員になった男が仕組んだ罠—

竜騎士が攻撃していた団体は、慈善ボランティア活動を行っていたNPOであった。
竜騎士の軍から攻撃を行っていたMSは、議員の男が用意したレプリカ。
犯行後、彼はMSの出撃データをコピーし、
軍のメカニックの目を盗んでは、出撃データに追加し改竄していた。
慈善ボランティアNPOに無差別に攻撃をしたとして、英雄と呼ばれた軍は
血も涙もないただの権力の犬として、世間から非難を浴びることになる。
また同時期に、とある議員のスキャンダルを捏造し、その中将に罪をなすりつけた。
これにより世論は完全に彼らを冷めた眼で見つめるようになった。
G.U.穏健派は、彼の地位と称号の剥奪を命じたが、部下が濡れ衣だと反発。

その後、予想が出来ていたようにクーデターが発生。
軍や議会の在り方に疑問を抱いた兵士がこぞって集い、
人民のために在るべき軍や議会の理想像を取り戻すためであった。
クーデターを引き起こし、自由を求める反乱軍のリーダーとなったのは平民出身の男。
一方、軍の大半を自分の財力にて使役することに成功した議員の男。
彼がクーデター鎮圧部隊の全権を担うことになった。
内戦は2年にまで及ぶ。
当時、新規量産開発されたMS:ノーディックが配備された穏健派鎮圧部隊が有利となり、
時代遅れであった竜騎士のMS:ドラクロムは、性能の差を露呈することになる。
ジリジリと戦力を減らす反乱軍。
また、捏造報道により反乱軍への資本・軍事援助を拒む企業が後を絶たなかった。
結局圧倒的な軍事力を財力により確保出来た議会側が優勢となり、
数の暴力を経て、竜騎士軍団を壊滅させる。

「くっ!お前は…何時から変わってしまったんだ!?
お前の真っ直ぐな瞳は…何処に行ってしまったんだ!?」
警報とエラー鳴り響く中破したMSコクピット内にて、叫ぶ平民出身の男。
「変わった?いいや…わかったんだよ…やっとな。
私の本当に欲しいもの…お前の地位・人望・才能その他全てだってな…!
私はお前に成り代わる!お前を殺してなぁ!」
巨大戦艦の中で、淡々と欲望を述べる貴族出身の男。
直後、平民出身の男が乗るMSは、光の雨を受け大破。爆発した。

これにより、パイロットは死亡扱いとなり、クーデターは鎮圧した。

穏健派軍を率いていた議員の男は、ついにその功績により議長の座を得ることになった—


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