二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター)
- 日時: 2015/07/25 13:01
- 名前: Laevatain (ID: rZuUN0S4)
- 参照: http://laevatain1408.blog.fc2.com/
今までのガンダムシリーズ(主に一年戦争以降からの時代観)を踏襲して
作成したガンダムの二次創作になります。
作成者は妄想大好きなおじさんです。
こんなつたない小説ですが、お付き合いいただければと思います。
STORY
かつて、人類は母なる大地「地球」を方舟に生活していた。
だが、その過剰な人口はやがて「地球」を取り合い、争いを引き起こした。
そして宇宙に生活圏を拡大させてもなお、「地球」をめぐる争いは終わらなかった。
やがて「地球」は人類の手によって汚染され、醜くなっていった。
人類は相談し、「地球」を巣立ち、新たな新天地「火星」に生活圏を移す。
それから約2世紀。
銀河系第35宙域管轄コロニー「サイドアルファ」。
ここにコスモポリスとして従事する青年「アレス・ウィザール」
彼と1体のMSの出会いから、全ての歯車は動き出す。
絶望の運命を希望の未来へ変える歯車が・・・。
—人は、誰かを守るために、「騎士」となる—
用語
セカンド・ノア(第二の箱舟)
第二の地球。火星をテラフォーミングし、地球と同じ環境にした惑星である。
ロスト・ガイア(失われた楽園)
過去の地球。過去の大戦やMSによる戦争により、自然環境コントロールが乱れ、化石燃料は
潰え、汚染されて人類が住めなくなった地球。火星移住から2世紀後、大気は完全に無くなり、
かつての青く美しい星は黒ずんだ地表が見える無残な姿となった。
GU(ギャラクシーユニオンズ:銀河連合同盟)
銀河惑星間での統治が進み、各惑星の政府による政治・法律上におけるルールを確約させる
政治機関。とどのつまり現代の国際連合。
現在は革新派(自由な未来と悪質企業の根絶を訴える派閥)と穏健派(現在の企業紛争を
黙認する派。闇献金を受け取る悪質な議員が多い。)の争いが激化している。
企業
地球時代における国がつぶれてから、企業が力を持つようになり、もはや企業が惑星政府と
同じ権力を持つようになった。それにより、圧政や重労働なども問題になり、
GUが企業の暴走を抑えようと奔走している。しかし、反発する企業も少なくは無い。
現在は各企業間における未統治惑星の資源獲得戦争や紛争が後を絶えない。
そのため、軍備拡大を急ぐ企業が増えつつあり、各企業がGU軍へ宣戦するのではと危惧されている。
そしてそれは、30年前の第一次企業戦争により現実のものとなった。
コスモポリス
GU管理下の宇宙警察機構。
オーディン
GU軍第01強襲攻撃部隊。
革新派の傘下軍であり、自由を目指し戦う軍。市民からはヒーロー扱いされている。
母艦はたった1隻だが、その実力は計り知れない。
母艦は強襲戦闘艦「バハムートゼロ」
プロジェクト ライト&ダークネス(光と闇の機兵計画)
「第二次企業戦争」において、アライアンズに対抗すべく計画されたGU軍極秘新型MS開発プロジェクト。
ライトサイドとダークネスサイドのコンセプトから成り立つ。
ライトサイド セイントガンダム
ダークネスサイド ナイトメアガンダム
この二機のMSを基盤に、アライアンズ撃破のきっかけを生み出そうとしていた。
このプロジェクトの進行部隊はオーディンである。
企業戦争
企業がGUに反発し、起きた戦争。
第1次企業戦争では、全企業が一斉に武装蜂起し、GU軍との全面戦争となった。
GU軍が市民の安全と自由を主張し、企業側が利益の優先、そのための人命の犠牲は必要経費だという反論。
もちろん企業の横暴を市民が許すはずが無い。各企業の従業員は一斉にボイコットしたため企業側の戦力補給がストップ。
企業は窮地に立たされる。
そして企業は、禁断の大量破壊毒物兵器による非人道的な虐殺を敢行。サイドクスィーとサイドツェーラを毒殺し、壊滅させた。
この悪行により世論は大激怒。GU軍はこの後押しもあり、ついに企業側を屈服させる。企業側も降伏を宣言。
これにより、18年間に続く第1次企業戦争は終幕した。
それから10年後、ちりばめられた解体企業を収束させて、新たに3つの大企業が設立される。
その企業達が軍事同盟と産業通商同盟を締結。組織名をアライアンズとする。
アライアンズは、約2年前にGU軍に向かい「復讐のときは来たれり!」と宣戦を布告。
こうして、第2次企業戦争の火蓋が切って落とされたのだった。
モビルスーツ
宇宙開発時代と呼ばれる「宇宙世紀」時代において勃発した、
「一年戦争」と呼ばれる戦争により生まれた人型戦闘兵器。
宇宙の微細粒子により、レーダーなどの無視界戦闘が不可能となった本戦争にて、
有視界戦闘の基盤を確立させた兵器でもある。
特に後述する「ガンダム」と、当時戦争を繰り広げた「ジオン公国」は、
歴史の教科書にその名を刻まれる程、
人類とモビルスーツの歴史を学ぶ上では欠かせない存在。
その後、様々な企業においてモビルスーツは建設用・土木作業用・宇宙開発用などが開発され、
あらゆる分野で人類の開発を支えてきた産業機械となり、今日の宇宙経済の基盤を固めている機械となった。
個人で所有するものも珍しくなく、モビルスーツは「兵器」としてではなく「ありふれたもの」として、
人々に浸透している。
ガンダム
「一年戦争」と呼ばれる、モビルスーツ最古の戦争において、
地球連邦軍が開発した高性能モビルスーツ。
さまざまな派生機種が存在する、由緒ある機体。
現在ではガンダムの特徴的なVアンテナとフェイス、G-ロンダクトプログラム
テクノロジー社が販売するGUNDAM OSを搭載した登録商標商品として流通しているモビルスーツを指す。
ガンダムは主に、フロンティアワークショップ社が
生産、販売を行っている主力商品として認知されている。
独占商品ではなく、さまざまな機種が他企業からも
進出しているが、ガンダム単体の性能では
フロンティア社の右に出るものはいない。
そのため、他企業はガンダムを上回る製品の開発に
奔走するケースが後を絶たない。
ちなみに、ガンダムは大衆の間では最も馴染み深く、
モビルスーツの象徴とも呼べる機体である。
ジェネレータ技術
ムーンレィス(∀ガンダム時代)戦乱後に始まった、宇宙開拓時代の中で新たに見つけた鉱物。
そこには、未知のエネルギーが詰まっているものだった。
その鉱物の名は「エーテライウム」。
このエーテライウムから抽出したエネルギーを「エーテネルゲンエネルギー」と呼ぶ。
エーテネルゲンエネルギーは、簡単な電気変換回路により電力へと変換される。
しかしその発電規模が、既存の化石燃料のおよそ3000倍〜5000倍に相当するものであった。
これにより化石燃料・原子力により起動されていた各機械のジェネレータは淘汰され、
エーテネルゲンエネルギー式のジェネレータ「エリクシル式ジェネレータ」へと移行される。
また、エーテネルゲンは人体への影響がほぼ無く、安全に使えるものとしての評価もあり、
瞬く間に時代はエーテネルゲンエネルギー循環型社会へと変貌する。
エーテライウムにはもうひとつ特徴があった。それは「精錬」に伴う「エネルギー付与」。
エーテライウムは加工のしやすさも売りであり、鉄などの金属の添加物にエーテライウムを数%含ませて精錬させると、
精錬された金属にエーテネルゲンエネルギーを帯びた状態で精錬することが出来るのだ。
これもあり、たやすくなおかつ大量にエネルギーの元を生産できるとして、化石燃料の枯渇に伴う人類の衰退の心配は完璧に無くなり
人類は安心して宇宙開発を行うことが出来るという現在の社会形態が確立したのである。
※この作品におけるビームサーベルは、ビームの噴出によって刃が形成されるものではない。
ビーム出力の上昇によって、ビーム噴出を維持することが
テクノロジー上不可能になったからである。
この作品でのビームサーベルは、折りたたみ式アンテナのように、
伸縮可能な棒状の兵装の表面からビームが噴出し
形成されるものである。
ビームサーベルにも耐久性があり、出力の低いビームサーベルは、
鍔迫り合いの際に負けて破損する可能性もある。
なお、このガンダムはジャンプ漫画の根源である
「努力・友情・勝利」をモチーフにしております。
何卒ご容赦ください。
ツイッターやってます。ご意見ご感想はこちらまで。
要望なども受け付けております。
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- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.106 )
- 日時: 2014/02/11 00:59
- 名前: laevatain (ID: KCnf7FEj)
第三十六話 マスターピース〜理想の平和像、絆を繋げる始まりの欠片〜 中部4
一方のジェーン。
彼女は、普段着を吟味していた。
「うーん、こないだあの服は捨てちゃったし…。
なんかこう、しっくりとくるものが無いわね。
バシっと決めて、【アフロディーズ】のライブに備えなくちゃ…!」
ジェーンは、自分のタブレットデバイスから、電子ライブチケットの当選通知を再度確認する。
倍率3000倍とも呼ばれる、宇宙きっての人気アイドルグループ【アフロディーズ】のライブチケット争奪戦。
エンティニアにて行われる、最も人気の高いギャラクシーツアーファイナルステージライブの
チケットを、見事抽選にて勝ち取ることに成功したのだ。
「ふふふふふ!これを生きがいにして、また頑張るのよ!
リシャール、見ててね!私、しぶとくタフに生き抜くわ!」
亡き恋人に再度生き抜く誓いをひっそりと行い、彼女は来るべき舞台にふさわしい衣服を探していたのだった。
そこへ、近くにサングラスとニット帽をかぶった少女が、ジェーンの近くにやってくる。
少女も、衣服を探しにきたのだろうか?
少女はこそこそしながら、衣服を探していく。
その柄は、地味なものばかりだ。
「あまりに目立つとバレるから、地味子で行かないと…(ブツブツ)」
地味な服装を求める少女。
あからさまに怪しい。
「さぁて、お会計にいこうかなぁ。」
ジェーンが振り向き、買い物かごを動かす。
その瞬間、
「きゃっ!?」
先ほどのサングラスの少女に当たってしまった。
少女は転倒し、サングラスが外れてしまう。
「ああ!ごめんなさい!大丈夫!?」
慌てて少女を起こし、体の無事を確認する。
「いいえ、大丈夫です。ご迷惑をおかけしました…。」
ジェーンがここで気付く。
—この少女の顔と声に覚えがある。
確か、この少女は…まさか!?—
ジェーンが、少女に耳打ちをする。
「貴女…もしかして、【リオラ=オニハス】さん…!?」
少女の顔が真っ赤になり、ジェーンの手を引っ張る。
「…!ちょっと、こっちへ!」
「わわわわわ!なになになにぃ〜!?」
…たどり着いたのは、女子トイレ。
「ど、どうしたの!?」
わけもわからず連れて来られ、困惑気味のジェーン。
「…やっぱり、バレちゃったか…!
すみません、あまり騒がないで頂けますか!?
あまり…その…目立つのが苦手なんです…。」
ジェーンは、ライブ中の彼女とオフ時の彼女では、かなり違ったイメージであると感じた。
何故なら、【リオラ=オニハス】は、アフロディーズの中でもムードメーカー的な役割を果たす
どちらかというとセクシー路線で売り込んでいる少女メンバーであったからだ。
若干のSっ気と、ツンデレらしいその性格から、男性層のファンが他のメンバーと比べて圧倒的に多い。
しかし実態は、意外と恥ずかしがり屋の少女だったのだから、ジェーンとしては驚きだ。
「ふむ…そこはわかったわ。
でも、意外ね…。貴女は確か、セクシー路線のメンバーのはずじゃ…?」
「わわわわわわ!やめてください!
私、恥ずかしいんですよそういうイメージ持たれてるからぁ!
実際はそんなんじゃないのに…。」
「あれ?貴女って、そういえばメガネかけてないの?」
ジェーンは気付く。
ライブDVDなどでのリオラは、メガネをかけていた。
しかし、裸眼でもジェーンは見えているようだ。
「ああ、あれって伊達眼鏡なんですよ〜。
みんなが、眼鏡かけたほうがかっこよくてセクシーだって…。」
「へー!そういうエピソードがあったのね。
これは面白い裏話を聞いたわ…。」
二人が話し合う女子トイレに、奇遇にも
エリュシアとアカネ。
「あ、ジェーンさん!?ここにいたんですか〜!」
「エリュシア?もう、心は大丈夫なの?
アレスの一件から、元気が無かったけれど…?」
「はい、おかげ様で。
あと、アレスは生きている。確証が持てました!」
「それって…貴女のアウェイカー能力で?」
「ええ、正確には、アウェイカー同士の共鳴意識によるテレパシーみたいなものですね。」
エリュシアの元気な姿を確認し、胸を撫で下ろすジェーン。
彼女なりに心配だったようだ。
「って…えええええええええええ!?
エリュシア、彼女…!アフロディーズのアカネ=ナツメじゃない!?
どうやって知り合ったのよ!?」
「ええまあ…。とりあえず、リリアさんっていう女性から、紹介を受けた形…なのかな?」
「リリア…まさか!?あの天才的手腕の女性実業家【リリア=スピカ】!?
数々の事業にて成功を収めている、今ワイドショーで注目されている女性カリスマ実業家よ!?
…ああ!そういえば!アイドル事務所の悪徳経営者を追い出して、アフロディーズを含む
アイドルの卵たちを守ったっていう話もあったわね!そういうことだったのね!」
全ての合点が一致したようで、納得した表情のジェーン。
「初めましてっ☆ジェーンさん!
改めて、アカネ=ナツメですっ!☆」
深々(ふかぶか)とお辞儀をするアカネ。
「い、いいのよ!私はジェーン!ジェーン=アイオライトよ!よろしくね!
…なんていう日かしら!まさかトップアイドル二人と出会えるなんて!」
感激の境地にいるジェーン。
「あ、リオラちゃん!どうしたの?そんなオドオドしちゃって〜。」
「だ、だって一般の人に私の正体バレて…!恥ずかしいったらありゃしない!」
赤面状態のリオラ。
「大丈夫大丈夫。はい、伊達眼鏡〜!」
アカネが、伊達眼鏡をリオラにかける。
その後、リオラの赤面がとまった。
「さぁて…、エリュシアさんとジェーンさんね。改めて、よろしくお願いします。
えっと、アカネ。確認するわね?19:30にリリアさんとメンバー全員で会食する。
その際に、バハムートゼロの主要女性メンバーを集めて、顔合わせする。
こういうスケジュールだったかしらね?」
「うんうん〜。そうだよ!
んで、エリュシアさんが、もうみんなにメールしたって!」
「了解したわ。
さあ、ジェーンさん、エリュシアさん。時間はまだあるわ。
ちょっと買い物しましょ!さっきの買い物もまだだし、
今度は【こっちの私用】の服も買わなきゃ!
確か下に、セクシー路線のかわいい服を扱うブティックがあったわね。
アカネ、いくわよ!」
「おっけ〜だよ〜!」
リオラの豹変っぷりに、呆けるエリュシアとジェーン。
「リオラちゃんは、眼鏡をかけると元の性格に戻るの〜!
元の性格はこうやってキビキビしてて、みんなの面倒見が見れるすごくしっかりした子なんだよ!」
「性格がある行動や物事で変わるとは聞いたことあるけれど、まさかこれほどまでとはね…。」
「わ、私もびっくりですよ、ジェーンさん…。」
女性陣も余暇中に、新しい絆の糸に導かれてゆく。
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.107 )
- 日時: 2014/02/11 10:13
- 名前: laevatain (ID: KCnf7FEj)
第三十六話 マスターピース〜理想の平和像、絆を繋げる始まりの欠片〜 後部
—時刻は19:55。バハムートMSチーム男性陣は?—
試合も終盤、最終ラウンドにて会場内の熱気は最高潮に達していた。
序盤を押し切っていた挑戦者:ブロッケン=グーニーであったが、
中盤から自身の動きのクセと、肉体的構造による弱点を看破される形でポイントを失う。
5ラウンドによるライフゲージ争奪形式の試合。
ライフゲージとは、格闘ゲームにおけるライフバーのようなものである。
ライフゲージの仕組みとして、
選手の体内に入っている身体管理ナノマシンから信号を受信。
血圧・呼吸の状態、意識の具合、各種関節・筋肉・骨格の疲労具合をナノマシンがリアルタイムに発信。
それをライフゲージソフトウェアにて数値・バーグラフにて管理するのだ。
これにより、観客からもどちらが優勢または劣勢かを具体的に理解することができる。
前半2ラウンドはラウスの動きを研究したブロッケンが的確なガードからの反撃を繰り返し、
タイムアップによるライフゲージ判定時にライフゲージ優位となり、ポイントを取得。
しかし、後半2ラウンド、ブロッケンの動きと癖を看破したラウス。
攻撃をかわしながら打撃を繰り返し、相手の隙をついては強烈な連続攻撃にてダウンを奪った。
そして迎えた最終ラウンド。
お互いに慎重に動いていたが、時間切れ1分前を機に、ブロッケンが猛攻体勢に入る。
ブロッケンがラウスの腕をつかみ、そのまま向かい側の床に投げつける。
「くたばれチャンピオン!!!」
しかしブロッケンは、自分も宙に浮かされた感覚を覚える。
遠心力を応用したラウスの空中投げだ。
ラウスの足が着地し、そのまま筋力と惰性でブロッケンを放り投げる。
体重の重いブロッケンは、ラウスの肉体を軸に、大きなモーメントによる力に巻き込まれてしまう。
ラウスの堅牢な足腰の筋肉により、ブロッケンの巨体からの投げを受けとめ、そのまま投げ返したのだ。
「んごぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁ!?」
リングフェンスネットに放り投げられ、反動でラウスの方向に吹き飛ばされる。
ラウスは構え、ブロッケンを捉える。
「な!?まさか!?」
ラウスが悪戯に微笑い、構えの動作から、ブロッケンの巨体を回転させながら上空へ投げ飛ばす。
地獄車輪と呼ばれる、格闘ゲームにありそうな投げ技である。
宙に飛ばされるブロッケン。
ブロッケンの落下開始時、飛び上がるラウス。
ラウスは自分の背中に、仰向けになったブロッケンを背負い、胴と腰に腕を掛け、そのまま落下する。
落下と同時に、ブロッケンの背骨と背筋に決定的なダメージを与え、ブロッケンがダウンする。
「ああああああああっとおおおおおおおおおおおおおお!
ここでラウスの十八番!
【メテオドライブ・バックブリーカー】が炸裂したあああああああああああああ!
ブロッケン、その巨体ではダメージがでかすぎる!
ライフゲージ10%ォォォォ!
そして…そのままグロッキーか!?立ち上がれない!」
技のイメージとしては、上空から極まったアルゼンチン式バックブリーカーである。
190cmの巨体を、上空からのバックブリーカーで極められてしまっては、肉体的な反動も大きい。
完全に意識が朦朧としてしまったブロッケン。
レフェリーが、カウントを取り始める。
「テン!ナイン!エイト!セブン!シックス!」
ブロッケンは、ピクリとも動かない。
ここで、観客もカウントのコールに呼応して声を上げる。
「ファイブ!
フォー!
スリー!
ツー!
ワン!」
—ゼロ!—
試合終了のゴングが鳴り響き、勝敗が決定した!
「試合終了ぉぉぉぉぉぉぉ!
熱い!熱過ぎる試合だったぁぁぁぁぁ!
しかし、我等が王者ラウスは王座を守りきったぁ!
相手に対する敬意を忘れないそのリスペクト精神!
そして、俺を乗り越えて来いと言わんばかりの実力!
今夜、またしても伝説が塗り替えられることは無かった!
だが、我々の心には、生きた伝説が残っている。
そう、この男こそ、生ける伝説なのだああああああああああ!」
実況の熱い幕引きトークの中、叫び続けるカール。
「うおおおおおおおおおおお!
マジで熱かったぜええええええええ!」
しかし、ここで我に返るカール。
「ん?待てよ!?
ということは、マルスの叔父って…!?」
「ええ、ラウス=コロッセウスは、僕の叔父です。」
「マジかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
カールのみならず、ダグラス、アシュレイも同時に驚いていた。
そこへ、マルスが懐からタブレットデバイスを取り出した。
メールを受信したようだ。
「あ、皆さん。ラウス叔父さんのマネージャーさんからの伝言です。
今日は話す時間が無いから、明日全員顔合わせしよう、とのことでした。」
「明日…?あれ?明日って、マスターピースの代表との打ち合わせじゃなかったか?」
疑問に感じるカール。
スケジュールが合わないのではないかと思っているのだから、当然の思考である。
「まぁまぁ、明日になればわかりますよ。」
含みのある笑みを浮かべたマルス。
どうやら、明日に全てがわかるらしい。
—各陣営、それぞれの絆の糸に導かれ、夜が明けた—
バハムートクルーの主要メンバー(ザック、MSチーム、サフィア、ジェーン、カロラス、キャスタ、トーマス
その他バハムートの各種担当スタッフリーダー)は、通された
高級ホテル「ジェイナスグループ・ロイヤルホテル」の大会食会場へと集まっていた。
女性陣が妙につやつやしている。
それに気がついたカールは、ジェーンに話を聞く。
「お前ら、どうしたんだよ?そんなご機嫌で?」
「昨日いろいろあったのよ。
にしても、昨日のレストラン、おいしかったなぁ…。」
どうやら、昨日リリアに招待されたレストランの料理が格別に美味しかったようだ。
「…地味に羨ましいぜ…。
俺らなんかポップコーンとホットドッグとコーラだったもんなぁ…。」
ジト目で悔しがるカール。
やがて、大会食会場のステージに、3人の男女が入ってくる。
見覚えがある顔ぶれ。
「な!?まさか!?」
「マジかよ!?」
ジェーンとカールは驚きを隠せない。
その他メンバーも、動揺しているようだ。
ザック・トーマス・マルスを除いては。
「バハムートゼロクルーの皆様、ようこそエンティニアへ。
私は、フロンティアワークショップ代表取締役を勤めている【ジーニアス=ツァイス】。」
「紳士淑女の皆様、御機嫌よう。
私は、多目的株式会社《グッドスタッフ・コミュニケーションズ》代表【リリア=スピカ】。」
「よう、あんたたち!よくきたな!
俺はGA-1格闘技、チャンピオンをやっている【ラウス=コロッセウス】っていうんだ!よろしくな!」
3人の男女が自己紹介を行い、ジーニアスが両手を広げる。
「我々は、反戦争・平和活動NGO《マスターピース》。
オーディン部隊、そしてG.U.革新派の皆様。
私たちは、平和のため、明日のため、未来のため、子供たちのために
【共に戦う戦友として、あなたたちを歓迎します。】」
かっこよく決めたジーニアス。
後ろから飛び出す緑と黒色のハロが一言。
声は女性の声だ。
「…数日前に、自慢のスーツにコーヒーこぼした男じゃが、気にするでないぞ。
この男、やるときにはやるから、安心するがいい。」
うなだれるジーニアス。
「【カエデ】…茶化すのはやめてくれ…。」
バハムートクルーから、各種メンバー、ラウス・リリアも、全員微笑を抑えられずにはいられなかった。
そして、突如後ろから、オーランド=タイガーとセンチュリオンズのリーダーメンバーも入ってくる。
「おーし、役者はそろったな!?
まずは現状分析と、これからの指標を決めていこうぜ!」
—マスターピース・センチュリオンズ・オーディン。
三つの運命の糸が絡まり合い、やがて大きなうねりを伴う。
宇宙を支配する広大な闇を打ち破るべく、着々と役者が揃いつつあった—
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.108 )
- 日時: 2014/04/24 08:14
- 名前: laevatain (ID: 8BUvyu0j)
第三十七話 過去・現在・未来〜少女の過去、戦士たちの現在、破滅の未来が響かせる足音〜 前部1
—足りねぇ…!足りねぇ…!足りねぇ!
血も!臓物も!憎しみも!悪意も!殺意も!
全てが中途半端…責任の擦り付け合い…!
こんなのが俺たち人類が望んだ未来か!?
【違う】!
こんなものは俺たちが望んだ未来じゃねぇ!
だから…変えてやる!
俺が、この屍に塗れた道を踏み越えてやろうじゃねぇか!
旦那となら、俺は世界を変えられる!
あの小僧を斃し、G.U.政府を斃し、企業を斃し!
【変革者】となるのは
【この俺だ】!!!—
朦朧とした、混濁した意識の中で、男は渇望する。
自身が全てを変える、その瞬間を。
その瞬間こそ、彼が最も満たされるものだと信じつつ。
何が正解かはわからない。
だが、目的があったほうが、人は努力を重ねるものである。
—日時は、バハムートゼロメンバーが、マスターピースと会う数日前。
ここは、惑星デピドナ内。
アライアンズ・G.U.穏健派派閥合同アンリミテッド研究所【アンブローシア】—
惑星デピドナは、銀河系惑星第17地区にあり、
惑星エンティニア及び、惑星サファール=クファールとは隣接する宙域に存在していた。
ここにあるアンリミテッド研究所に、静かなる邪悪な胎動が目覚めつつある。
しかし、その前に目覚めたのが、この男。
男は、水に満たされたポッドの中で、半ズボンのみのウォータースーツを身に着けている。
上半身は全裸。鍛えているのだろうか、逞しい筋肉が見て窺える。
男の頭部には、銀色の装置が埋め込まれている。
そして額には赤い宝石のようなものが取り付いており、時折不気味な紅い光を放つ。
アクアスリープポッドにて眠っていた男は、ポッド内の栄養水を排出された後、
自らの力でポッド床面に立ち止まり、呼吸用チューブを剥ぎ取った。
男が眼を開ける。
男の右眼は、まるで人工的に作られた黒い眼に赤い瞳があるような眼をしている。
時折鮮血の様に紅く光っては、機械のシャッターの様な開閉を繰り返している。
ギャレス=アードヴォルフである。
「…ククククククク。いい…気分だ…。」
男は微笑う。
狂気と狂喜と凶気を孕みながら。
「ギャ、ギャレス殿、お目覚めですか…?」
オドオドしながら、眼鏡の男性研究員が話しかける。
彼は、今までギャレスの生体管理していた。
「…あ?なんだテメェ…?」
ギャレスが、殺気を込めて研究員を向く。
「ひっ…!?ひぃぃぃぃぃぃ!」
ギャレスの研ぎ澄まされた狂気と殺意。
完全に研究員を恐怖に飲み込んだようだ。
彼の気配がオーラとなって具現化し、黒いベールを被ったドクロが、処刑者の鎌を携えて襲い掛かるような。
彼の方が、アレスよりも【死神】を語るにふさわしい。
そんな感覚がする。
「…ククククククク、テメェなんか殺したって何の得にもなりゃしねぇ…。
とりあえず、腹減ったな…メシだ。食堂に行くぞ…。」
ギャレスは、裸足のままおぼつかない足取りで、研究室を後にする。
—1時間後—
ギャレスは食堂にいた。
運ばれてきた料理を片っ端から食い尽くし、食い散らかしながら空腹を満たしていく。
「ガツガツ…ムグムグ…!くっそ、まだ頭に血が足りねぇ…!」
ギャレスの背後には、堆く(うずたかく)積まれた食器の山。
そこへ、金髪の男が入ってきた。
仮面を被ったその素顔は、誰にも理解することはできないだろう。
一部の人間を除いては。
「…ん?旦那か。どうしたんだ?」
ギャレスが、口に運ぼうとした牛丼の箸を止め、その男に気付く。
グラニット=ゴールドグリード。
「ああ、予定があいたので、君の様子を見に来たんだ。
どうだ?その装置、何か不具合は無いか?」
「…今のところは問題は無いな。感覚も良い…。
んで、見えるぜ…あんたの【感情の強さ】も…!」
ギャレスは震えている。
恐怖で、冷や汗が全身から伝い流れる。
自分が抱える殺意すらも喰いかねない。
グラニットの背後にいる、強大な【闇】を見たのだ。
—計り知れない、【闇】—
「そうか。なら、よかった。」
グラニットは振り返り、食堂を後にしようとした時、
「旦那ァ!…ちょっと【ウォームアップ】…してきていいか?
あんたの企画のMS…【ブレークイン(慣らし運転)】したいんだ。」
グラニットは少し考え、口を開く。
「…構わない。好きにしていい。
データを取ってもらえると、ありがたいな。
…【黒牙の戦闘傭兵】計画の主体は君だ、ギャレス。
私に決定権はない。好きにしてもらって大丈夫だが、バックアップはさせてもらいたい。」
ギャレスの表情が、狂気じみた笑みを浮かべる。
「サンキュー、旦那!ククククク、肩慣らしと行くか!」
手に持ったビールを飲み干し、ギャレスは叫んだ。
「おーし、暴れるぞォ!
【テイント・プリンシバル】起動準備急げェ!」
これを聞いた研究員が、慌しく動き始めた。
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.109 )
- 日時: 2014/03/11 20:44
- 名前: laevatain (ID: PwsOoYFR)
第三十七話 過去・現在・未来〜少女の過去、戦士たちの現在、破滅の未来が響かせる足音〜 前部2
—時間は移り、一時間後—
アンブローシア研究所内のMSドック。
ここには、数十人の研究員と作業員が、昼夜問わず作業を行っている。
研究員は、一般発売されているアライアンズ量産MSに特別な装置を装備させた特注機を用いて、
強化されたアンリミテッドMSパイロットの様々なMS操縦に関するデータを取得している。
コクピット・各種の特別な装置は、データ解析の際に得体の知れないケーブルを大量に接続され、
不気味な重低音めいた音を発する巨大なスーパーコンピューターと接続されているサーバーに情報を送信していく。
アンリミテッドの目の色に生気は無く、ただただ研究員に先導され、頭部に特殊な装置を取り付けられては
ベッドに横たわり、脳波、記憶、感情などの脳内データを解析されていく。
そして、彼らはまたアクアスリープポッドへ還り、いつ目覚めるかもわからない眠りにつく。
ここに、殺気を研ぎ澄ませた野獣が一匹、甲高い靴の音を鳴らしながら入ってくる。
MSパイロット用のバトルスーツに、コンバットバトルジャケットとズボン(陸上戦闘用のジャケットとズボン。
ハンドガンやグレネード、レーションを格納できるポケットがついたもの)を装着している。
頭部はヘッドギアを装備。
漆黒の野獣、ギャレス=アードヴォルフはヘッドギアの右側フレームにあるボタンを押す。
瞬間、ギャレスの顔面に保護用の特殊透明樹脂プレート製バイザーが展開される。
「お待ちしておりました、ギャレス殿。」
研究員が、ギャレスに近づきながら話しかける。
「…ん。どうだ、【テイント・プリンシバル】の進捗は。」
ギャレスが、自分の目の前にある機体を見上げながら、研究員に進捗を伺う。
見上げた機体。
それはガンダムヘッドでありながら、異質であった。
メインアーマーは青。フレームはオレンジ。
そして、何よりも無骨ながら、堅牢なフォルム。
ケイゼル・ケンプファーに似たような、ハリネズミのようなアーマー。
「どうぞ、こちらが資料になります。」
ギャレスが、研究員から手渡された資料に目を通す。
「ほう、【EXAM】システムの派生系…【EXTERM(エクスターム)】か。
なるほど、俺にぴったりのシステムだな…ククククククク。」
資料のページをめくっていく。
そこに、機体概要が記されていた。
ACK-XXX-UN-TPL-TX テイント・プリンシパル
脳波コントロール対応型強襲白兵戦闘用試作MS
両腕部内蔵型アームビームバルカン「カーリー」
エレメントジェネレータ【炎】対応型ビームブレード二本「イツァム・ナー&モト」
ビームユニットのチャンネル変更で、エレメントビームエッジを炎に変更可能。
ビームエッジが炎に変わった場合、斬撃時に爆炎が発生。対象を爆発と炎熱にて薙ぎ払う。
形状的には、イツァム・ナーが細身の長剣。モトが、短身の幅広剣となる。
※形状イメージ的には、
イツァム・ナー=バトルスピリッツブレイヴカード「炎月剣スカーレット・ムーン」に酷似。
モト=バトルスピリッツブレイヴカード「太陽剣カーディナル・サン」に酷似。
頭部バルダーメタル弾頭バルカン二門
非武装:EXAM(ニュータイプ殲滅用脳波コントロールシステム)
改造型脳波コントロールシステム「EXTERM」(エクスターム)
左肩内臓ハルモニウム軽銀チェーン内臓
特殊ファイバークロス式マントシールド「エスクード・ムレータ」
ギャレス=アードヴォルフを主体とした、MS操縦適正強化人間計画の集大成である
「黒牙の戦闘傭兵」の計画における最終段階として、
ギャレス専用機として開発されたMS。
ギャレスが事前まで操縦していたバル=エキスパートスタイルの蓄積データを解析し、
ギャレスが最も得意とする戦術に応じて、カスタマイズされたチューンドMSである。
全体的にフレームの構造が見直され、機動性・運動性・重量・耐衝撃性全てを考慮しなおした最新型のフレームを採用。
各稼動部のサスペンション、油圧シリンダなども、
アライアンズの技術力の粋を結集し作り上げた最高傑作品をふんだんに取り込んだ。
結果、昨今のMSとは比べ物にならないしなやかな挙動と、圧倒的な運動性能を獲得することに成功した。
武装も、吟味された中で最も適合する武装を搭載。
ギャレスの戦いぶりから、下手な手持ち型の射撃武器は武器変更時間を食ってしまうために不利となる。
これを解消すべく、射撃武器を内蔵型にすることで、射撃武器の変更時間をほぼ0とした。
ビームバルカンはジェネレータの出力を最大にした上で、弾幕を散らすことに特化した威力と
弾幕のバランスを調整した武装。
マント型のシールドは、奪取成功した「光と闇の機兵計画(プロジェクト ライトアンドダークネス)」の
ダークネスサイドデータに保存されていた、ナイトメアガンダムの機体構造データを活用。
アライアンズにて開発されていた特殊繊維ファイバークロスに、通電性とビーム適合性に優れた
ハルモニウム軽銀(アルミニウムのように軽い銀色の金属)のチェーンを内部に縫合して採用された。
バリアントマントよりも耐久性、耐衝撃性、ビーム出力許容数値全てが向上しており、
照射型ビームの直撃にも耐えうる設計である。
こうして、アーガイグに並ぶ高性能格闘MSとしてこの宇宙に生まれ出でたこの機体。
機体色はギャレスのパーソナルカラーであるオレンジをベースとし、
群青色にてボディアーマー・ショルダーアーマー
レッグアーマーを塗装する形となった。
機体のモチーフは、一年戦争のEXAM搭載機「イフリートシリーズ」をベース。
ガンダムヘッドではあるが、【ガンダム=人類の可能性・希望】を彼自らが否定。
敢えてガンダムを否定するものとして
名前を「屍を食らい生き抜く主人公(テイント=プリンシバル:汚れた主役)」と名づけた。
「テイント・プリンシバル…俺の新しい相棒だ。」
資料から目を離し、群青色に塗られた蒼に、魅入られるギャレス。
「ギャレス殿、申し上げにくいのですが…現在テイント・プリンシバルは完成度【60%】となっておりまして…。」
ギャレスが研究員を睨む。
「【60%】…!?何が出来てねぇんだ!?」
「ひっ!え、ええと…まだ、補助武装の機体加速システムと、特殊射撃用兵装のコントロールシステムが
満足にデータ取得・解析・開発されていないため、搭載していないだけでして…。」
「なんだ、問題ねぇんじゃねぇか。
機体制御関連で問題が生じているのかと勘違いしたぜ。
…とりあえず、稼動できる準備しておけ。
あと、残りの【黒牙の戦闘傭兵】計画対象機体も出撃させんぞ。」
突然の全軍出撃に、焦る研究員。
「な!?いきなり出撃命令ですか!?
そもそも、どこに向かわれるおつもりで!?」
「あ…!?
わかってんだろ?お前…。G.U.軍革新派の居場所に決まってんだろ。
奴等の居所は把握している。すでに旦那がスパイを何人かそこに送っているからな。
娯楽惑星エンティニア。奴等、マスターピースと結託しやがった。
しかし、奴等がそこに行った事で攻めやすくはなっている。
旦那が近々、【火付け】を行う予定でな。そこで間髪入れずに俺が暴れるって算段よ。」
「は、はぁ…。」
拍子抜けした研究員。
その30分後、慌しく動き出す研究員と作業員。
【黒牙の戦闘傭兵】計画対象機体8機。
【コンティオ・シャドウ】8機。
そしてリーダーとして統率するは
【テイント・プリンシバル】。
全てを率いるは、中型戦闘強襲戦艦。
グリーンカラーに、4枚の大型ウィング。
まるで、邪竜のようなフォルム。
中型強襲戦艦「ティアマット」である。
「さあ、追い込み漁といこうかぁ!
ティアマット、エンティニアへ向かえ!【狩り】の時間だ!」
黒き野獣、血肉を求め、希望を毟り取らんとす。
【悪意】が、静かに、エンティニアの人々に襲い掛からんとしていた—
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.110 )
- 日時: 2014/04/16 21:19
- 名前: laevatain (ID: PwsOoYFR)
第三十七話 過去・現在・未来〜少女の過去、戦士たちの現在、破滅の未来が響かせる足音〜 中部1
—その頃、グラニットは?
グラニットは、アンブローシアにあるマネージャールームにある椅子に腰掛け、背もたれに
体重をかけながら考え事をしているようだった。
体重を動かすたびに、椅子の金属が金切り声を発する。
静穏保たれたこの空間では、それがより強く響く。
喉を潤すために用意されたウィスキーに浮かべられた氷がやがて溶け出し、
カランという音を立てて、液面に波紋を広げる。
グラスを取り、残っていたウィスキーを飲み干すグラニット。
グラニットは考えていた。
—私が…引く羽目になるとはな。
人類の「無限の可能性」。
【未来を、運命を変える力】が、目覚めようとしているのか?
否!
奴らは駆逐し、撃滅し、滅ぼさなければならない!
私は、そのために!
人類に【断罪】するために、生きているのだから!—
徐々に垣間見える、グラニットの本当の目的。
そもそも、なぜグラニットがここにいるのか。
デューク=ストレインとの一騎打ちはどうなったのか。
疑問に思ったのではないだろうか。
グラニットは思い返していた。
決着のつかなかったあの一騎打ちの結末を…。
—竜覇将 VS 道化師。
最強クラスのパイロット同士が戦う死闘開始から、約30分が経過しただろうか。
デュークの乗るライザードは、左足がもげている。
ところどころのダメージもひどく、かなり損傷がひどい。
一方のグラニットが乗るアーガイグ。
ダメージはそこまでない。といっていいほどの状態で、デュークが劣勢気味と取れてしまうだろう。
しかし、
いざアーガイグのパックパックを見ていると、酷く損傷したビットが4機。
ほぼ、稼動は不可能だと思われる。
グラニットは、歯がゆかった。
(私が、こんな滅び行く生命体に遅れを取るとは…!)
対してのデューク。非常に満足げである。
しかし、冷や汗も出ていた。
(ビットの無力化はできた。が、これはやばいなぁ。
この調子だと、俺の運もここまでのようかもな…。)
自分の死期を悟った感覚のデューク。
そろそろ死の女神から迎えが来てもおかしくは無い。
そう思っていたのだ。
「デューク=ストレイン…。ついでだ、貴様が死ぬ前に話を聞いておこう。
【何処まで知っている】?」
興味本位か、グラニットがデュークの持ちうる情報を知った上で始末しようとの算段のようだ。
「フフフ。まあ、いいか…。【答え合わせもしたいしな。】」
この発言の前にデュークはふと、コクピットのMSコントロールコンソールに特殊信号の受信をキャッチしているのを確認した。
どうやら、暗号化されており、アーガイグには受信されない信号であるようだ。
(またか…また死ねないのか…。どれだけ俺は運がいいんだか悪いんだか…仕方あるまい。)
デュークは、何かを察した表情。
「まあ、まずは前述した【生体兵器の開発】だ。
当時のG.U.が最も禁止していた兵器の開発、それが人類が手を出してはならない禁忌。
【生体兵器】なのは、貴殿も知っているよな?
【生体兵器】は一概にはどんなものかというと、
1.ウィルスなどの生物・化学・薬物兵器に分類されるもの。毒ガスなんかもこれにあたる。
2.既存の動植物などの生体をベースにして造られた兵器。
3.まったくの新しい軍事転用のための生物の創造。
(本来1は生物、化学、薬物兵器と別のカテゴリに属するが、
この作品の世界観では生体兵器の一部として扱うことを断っておきます。)
これは貴殿も知ってるよな?
今回該当するのは3番目の項目だ。
押収した資料から、【パラサクティア】なる生体兵器の開発が行われていたという情報を得た。」
この瞬間から、グラニットの表情が険しくなる。
「んで、こいつを軸にMSの大部隊を編成しようとしていた計画があったそうだ。
その数、およそ100万の超大軍だ。
MSにこの兵器を埋め込むことで、MSの制御を安易にコントロールしようとしていた計画のようだった。
しかし、これを察知したG.U.が、これを阻止。
その後、計画の漏洩を懸念した当時の企業連合【トライアンフ】が、その計画を実行しようと宣戦布告した。
つまり、武力による人類の実効支配を目論んだ戦争だったと認識している。
【トライアンフ】は知っているよな?
【キングスカンパニー】【アーロゲントインク】【雅重化学工業】
この3社が結成した軍事同盟組織だ。
これが、今俺がある程度知っている情報ってところだ。
ちなみに、【オピニオン・パニッシュメント・ウォッチマンズ】の詳細は不明だ。
こちらもあまり情報を得ることができなかったからな。
俺は企業側が実効支配した後の計画段階の名称か、企業側重役の重要組織か何かって見ているんだが…。」
グラニットは、思考を錯綜させる。
(ふむ。どうやらその言葉の【本当の意味】を、奴は知らないようだ。ならば好都合。
…真実を知られる前に…消す!)
「んで、実際調べてみたらこの【パラサクティア】だけでなく、実は多くの生体兵器の開発に
【トライアンフ】は着手していたようだ。
毒ガス兵器、細菌兵器、生命体をMSに搭載し、再生能力を持たせた不死身のMSなどなど。
実際、サイドクスィーとサイドツェーラには毒ガスが実戦投入され、
汚染レベルSSクラスの毒物による大虐殺にて、
その生体兵器自体の危険度を知らしめたのも事実だ。
ちなみに、終戦後に現地で調査の為、【トライアンフ】の廃棄研究施設に向かった
若手のG.U.軍兵たちは、現場と戻った母艦で大量に嘔吐したそうだ。
施設からは、得体の知れない臓物や生物、そして細菌やら毒ガスやらが押収された。
部下の話だと、あまりにも人離れし過ぎて、精神がおかしくなりそうだったらしい。
まあ、そんなもん見せられたら誰だって気分を害するわな。
特に【キングスカンパニー】の熱の入れようは半端ではなかった。
この研究開発費用に、おおよそ1千万ユニバース(日本円にして約1500兆円)という大金が投じられたそうだ。
いやぁ、流石の俺も首をかしげたねぇ。ここまで狂っているとよ。
さて…大まかに俺が知っていることを言ってみたが、どうだいグラニット殿?
合っているかな?」
不敵な笑みを浮かべ、デュークはグラニットに問いかける。
「ふむ、大方正解だ。貴様の調べた内容は、私たちアライアンズ結成前に持ち得ていた情報と
ほぼ適合する。流石は元G.U.軍将校。手際の良さと、膨大な知識量には感服したよ。
だが、【ここまでだ】。
前にも言ったはずだ。
【貴様は知り過ぎた。ここで消えてもらおう】。」
アーガイグがビームライフルを構え、突撃する。
「やっぱりな!クソッタレめ!」
回避行動をとろうとするライザードだが、脚部破損のため、機体のスピードとバランスがうまく取れないため、
十分な回避動作が得られない。
間一髪のところで躱すが、そこを予見され、ビームライフルによる射撃がライザードを襲う。
着弾するが、一発ではあまりダメージが無い。
ライザードの装甲は、耐ビーム性に優れたオリハニウム派生合金【ルクス・オリハドロン】である。
ビームライフル程度の光学兵器の直撃をも、ある程度受け止めることができる。
それを知った上でのアーガイグ。ビームライフルの連射で、着実にライザードの装甲にダメージを与えていく。
やがて、ライザードの左腕装甲が脆くなっていくことに注意していたグラニット。
ビームライフル二丁を変形、合体させ、そこからひとつの剣のような武器が出来上がる。
ビームライフル二挺合体型ビームスレイヤーソード「ブルトガング」である。
砲撃の手を休めたかに見えたアーガイグ。
しかし、アーガイグがバックパックから展開したのは、
肩部フレイムエレメントジェネレータ搭載炎熱弾頭リニアキャノン2門「ライプニッツ」。
炎熱砲撃と斬撃。
二つの閃光が、ライザードを襲う。
ライザードは全ての攻撃を紙一重で躱すが、攻撃により装甲を火花が走り、満身創痍を感じさせる。
(もう少し引き付けて…合図だな。)
デュークは、様子を伺っているようだ。
その一瞬をつき、アーガイグが接近。
ブルトガングの一閃が、ライザードの左腕を捕らえた。
鈍く金属が破壊される音と共に、ライザードの左腕が落とされる。
「おっと、しくじったか…!」
焦りの表情を見せるデューク。
…か?
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