二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター)
- 日時: 2015/07/25 13:01
- 名前: Laevatain (ID: rZuUN0S4)
- 参照: http://laevatain1408.blog.fc2.com/
今までのガンダムシリーズ(主に一年戦争以降からの時代観)を踏襲して
作成したガンダムの二次創作になります。
作成者は妄想大好きなおじさんです。
こんなつたない小説ですが、お付き合いいただければと思います。
STORY
かつて、人類は母なる大地「地球」を方舟に生活していた。
だが、その過剰な人口はやがて「地球」を取り合い、争いを引き起こした。
そして宇宙に生活圏を拡大させてもなお、「地球」をめぐる争いは終わらなかった。
やがて「地球」は人類の手によって汚染され、醜くなっていった。
人類は相談し、「地球」を巣立ち、新たな新天地「火星」に生活圏を移す。
それから約2世紀。
銀河系第35宙域管轄コロニー「サイドアルファ」。
ここにコスモポリスとして従事する青年「アレス・ウィザール」
彼と1体のMSの出会いから、全ての歯車は動き出す。
絶望の運命を希望の未来へ変える歯車が・・・。
—人は、誰かを守るために、「騎士」となる—
用語
セカンド・ノア(第二の箱舟)
第二の地球。火星をテラフォーミングし、地球と同じ環境にした惑星である。
ロスト・ガイア(失われた楽園)
過去の地球。過去の大戦やMSによる戦争により、自然環境コントロールが乱れ、化石燃料は
潰え、汚染されて人類が住めなくなった地球。火星移住から2世紀後、大気は完全に無くなり、
かつての青く美しい星は黒ずんだ地表が見える無残な姿となった。
GU(ギャラクシーユニオンズ:銀河連合同盟)
銀河惑星間での統治が進み、各惑星の政府による政治・法律上におけるルールを確約させる
政治機関。とどのつまり現代の国際連合。
現在は革新派(自由な未来と悪質企業の根絶を訴える派閥)と穏健派(現在の企業紛争を
黙認する派。闇献金を受け取る悪質な議員が多い。)の争いが激化している。
企業
地球時代における国がつぶれてから、企業が力を持つようになり、もはや企業が惑星政府と
同じ権力を持つようになった。それにより、圧政や重労働なども問題になり、
GUが企業の暴走を抑えようと奔走している。しかし、反発する企業も少なくは無い。
現在は各企業間における未統治惑星の資源獲得戦争や紛争が後を絶えない。
そのため、軍備拡大を急ぐ企業が増えつつあり、各企業がGU軍へ宣戦するのではと危惧されている。
そしてそれは、30年前の第一次企業戦争により現実のものとなった。
コスモポリス
GU管理下の宇宙警察機構。
オーディン
GU軍第01強襲攻撃部隊。
革新派の傘下軍であり、自由を目指し戦う軍。市民からはヒーロー扱いされている。
母艦はたった1隻だが、その実力は計り知れない。
母艦は強襲戦闘艦「バハムートゼロ」
プロジェクト ライト&ダークネス(光と闇の機兵計画)
「第二次企業戦争」において、アライアンズに対抗すべく計画されたGU軍極秘新型MS開発プロジェクト。
ライトサイドとダークネスサイドのコンセプトから成り立つ。
ライトサイド セイントガンダム
ダークネスサイド ナイトメアガンダム
この二機のMSを基盤に、アライアンズ撃破のきっかけを生み出そうとしていた。
このプロジェクトの進行部隊はオーディンである。
企業戦争
企業がGUに反発し、起きた戦争。
第1次企業戦争では、全企業が一斉に武装蜂起し、GU軍との全面戦争となった。
GU軍が市民の安全と自由を主張し、企業側が利益の優先、そのための人命の犠牲は必要経費だという反論。
もちろん企業の横暴を市民が許すはずが無い。各企業の従業員は一斉にボイコットしたため企業側の戦力補給がストップ。
企業は窮地に立たされる。
そして企業は、禁断の大量破壊毒物兵器による非人道的な虐殺を敢行。サイドクスィーとサイドツェーラを毒殺し、壊滅させた。
この悪行により世論は大激怒。GU軍はこの後押しもあり、ついに企業側を屈服させる。企業側も降伏を宣言。
これにより、18年間に続く第1次企業戦争は終幕した。
それから10年後、ちりばめられた解体企業を収束させて、新たに3つの大企業が設立される。
その企業達が軍事同盟と産業通商同盟を締結。組織名をアライアンズとする。
アライアンズは、約2年前にGU軍に向かい「復讐のときは来たれり!」と宣戦を布告。
こうして、第2次企業戦争の火蓋が切って落とされたのだった。
モビルスーツ
宇宙開発時代と呼ばれる「宇宙世紀」時代において勃発した、
「一年戦争」と呼ばれる戦争により生まれた人型戦闘兵器。
宇宙の微細粒子により、レーダーなどの無視界戦闘が不可能となった本戦争にて、
有視界戦闘の基盤を確立させた兵器でもある。
特に後述する「ガンダム」と、当時戦争を繰り広げた「ジオン公国」は、
歴史の教科書にその名を刻まれる程、
人類とモビルスーツの歴史を学ぶ上では欠かせない存在。
その後、様々な企業においてモビルスーツは建設用・土木作業用・宇宙開発用などが開発され、
あらゆる分野で人類の開発を支えてきた産業機械となり、今日の宇宙経済の基盤を固めている機械となった。
個人で所有するものも珍しくなく、モビルスーツは「兵器」としてではなく「ありふれたもの」として、
人々に浸透している。
ガンダム
「一年戦争」と呼ばれる、モビルスーツ最古の戦争において、
地球連邦軍が開発した高性能モビルスーツ。
さまざまな派生機種が存在する、由緒ある機体。
現在ではガンダムの特徴的なVアンテナとフェイス、G-ロンダクトプログラム
テクノロジー社が販売するGUNDAM OSを搭載した登録商標商品として流通しているモビルスーツを指す。
ガンダムは主に、フロンティアワークショップ社が
生産、販売を行っている主力商品として認知されている。
独占商品ではなく、さまざまな機種が他企業からも
進出しているが、ガンダム単体の性能では
フロンティア社の右に出るものはいない。
そのため、他企業はガンダムを上回る製品の開発に
奔走するケースが後を絶たない。
ちなみに、ガンダムは大衆の間では最も馴染み深く、
モビルスーツの象徴とも呼べる機体である。
ジェネレータ技術
ムーンレィス(∀ガンダム時代)戦乱後に始まった、宇宙開拓時代の中で新たに見つけた鉱物。
そこには、未知のエネルギーが詰まっているものだった。
その鉱物の名は「エーテライウム」。
このエーテライウムから抽出したエネルギーを「エーテネルゲンエネルギー」と呼ぶ。
エーテネルゲンエネルギーは、簡単な電気変換回路により電力へと変換される。
しかしその発電規模が、既存の化石燃料のおよそ3000倍〜5000倍に相当するものであった。
これにより化石燃料・原子力により起動されていた各機械のジェネレータは淘汰され、
エーテネルゲンエネルギー式のジェネレータ「エリクシル式ジェネレータ」へと移行される。
また、エーテネルゲンは人体への影響がほぼ無く、安全に使えるものとしての評価もあり、
瞬く間に時代はエーテネルゲンエネルギー循環型社会へと変貌する。
エーテライウムにはもうひとつ特徴があった。それは「精錬」に伴う「エネルギー付与」。
エーテライウムは加工のしやすさも売りであり、鉄などの金属の添加物にエーテライウムを数%含ませて精錬させると、
精錬された金属にエーテネルゲンエネルギーを帯びた状態で精錬することが出来るのだ。
これもあり、たやすくなおかつ大量にエネルギーの元を生産できるとして、化石燃料の枯渇に伴う人類の衰退の心配は完璧に無くなり
人類は安心して宇宙開発を行うことが出来るという現在の社会形態が確立したのである。
※この作品におけるビームサーベルは、ビームの噴出によって刃が形成されるものではない。
ビーム出力の上昇によって、ビーム噴出を維持することが
テクノロジー上不可能になったからである。
この作品でのビームサーベルは、折りたたみ式アンテナのように、
伸縮可能な棒状の兵装の表面からビームが噴出し
形成されるものである。
ビームサーベルにも耐久性があり、出力の低いビームサーベルは、
鍔迫り合いの際に負けて破損する可能性もある。
なお、このガンダムはジャンプ漫画の根源である
「努力・友情・勝利」をモチーフにしております。
何卒ご容赦ください。
ツイッターやってます。ご意見ご感想はこちらまで。
要望なども受け付けております。
上のURLからどうぞ。
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- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.16 )
- 日時: 2013/03/03 22:43
- 名前: Laevatain (ID: 2xWGAyvP)
第八話 岩林の攻防戦—紡がれる戦友との絆— 後部
戦闘終了から3時間後。
アレスたちは作戦成功と言う形となり、MSは全て帰投した。
「よく帰ってきてくれた!ご苦労さん!」
ザックが、MSチームに握手を交わす。
握手を交わした後、チームは整列し、敬礼を行う。
「帰投致しました、艦長!」
アレスが形式での帰投挨拶を述べる。
「いや…軍の上司として、幹部としてではなく、俺の気持ちを言わせてくれ。
…よく生き延びてくれた!」
ザックは満面の笑みで、彼らを迎え入れた。
他のデッキメンバーも、拍手と歓声で彼らを賞賛した。
「よくやったな!お前ら本当に新兵かよ!?」
「ご苦労さん!大変だったな!」
「お疲れ様!怪我は無い?ゆっくり休んでね!」
まるで、バハムートクルーは全員家族のような繋がりを持った温かさであった。
この心地よい高揚感と安堵感に、アレス達は目を閉じ、深々と一礼をした。
そして、人の絆を強く、強く噛み締めた。
破壊されたMSパーツは回収され、修復されることとなった。
帰投後のメンテナンスドッグ内にてトーマスが張り切り声を上げている。
「いやあ、ワクワクしちまったよ!あいつら俺のチューンドMSを使いこなしやがった!
まだまだ甘い部分はあるが、それでもああいう戦いはこう血がフツフツと煮えたぎるねぇ!
こんなMSのキズだろうが損傷だろうが、生きて帰ってくれりゃ嬉しいもんよ!
さあ、あいつらが戦えるように直さなきゃな!オラァ、モタモタすんなお前ら!」
バハムートゼロ内・軍食堂にて。
「一仕事お疲れ様!さあ、腹いっぱい食べとくれ!
軍人だろうがオペレーターだろうが体が資本さね!腹が減っては戦は出来ぬ!
腹いっぱい食って戦いに備えるんだよあんた達!さあ召し上がれ!」
元気のいい声は、給仕係のふくよかな熟女、アップリア=ゴーセンバーグである。
「おーし!Bランチ出来上がりだ!」
奥の厨房で料理しているのは彼女の夫である、デミグトリ=ゴーセンバーグ。
この夫婦の料理は軍内でも随一と評判である。
「ふう…やっとナイトメアにも慣れて来たかなぁ。」
サンドイッチセットを頼み、BLTサンドをかじりながら一息のアレス。
「AIでサポートしているとはいえ、基本はマニュアルだからなぁ。」
球体状態で話しかけるエウリスハロ。
「でも…それでもアレだけの活躍ができる3人が羨ましいよ。」
アレスが率直な感想を述べる。
「バッカ言うなアレス!お前のナイトメアがいたから俺達のチームワークが成り立ったんだろうが!
お前を含め、俺達はチームなんだぜ!?」
から揚げ定食のご飯を頬張りながらカールが話す。
「カール…口に物なくなってから話そうよ…」
ダグラスが、カレーを口にする寸前でカールに突っ込む。
「それでも、アシュレイとカロラスの機転があってこその勝利だと思うなぁ。
それを僕達が上手く生かせたことによるものじゃないかな?」
ダグラスが冷静に解説する。
「そ、そんなそんなそんな!僕はただ当たり前のことを思いついただけだよ!」
ラーメンを持ってきた直後のアシュレイが、首を大きく横に振りながら
恥ずかしいのか顔を赤らめて全力で否定する。
褒められるのに慣れていないのだろう。
「恥ずかしがるダーリン可愛い(はぁと)謙遜しなくてもいいのよ?」
キャスタが、アシュレイの横でパンケーキセットとチーズプリンを持ってアシュレイの横に座る。
「そうだよアシュレイ!僕と君の奇策により勝利したのだよ!自信を持ち給え!
ということでカールからの報酬としてこのから揚げを頂きます!」
カールの横からひょいと出たカロラスが、カールのから揚げ定食からから揚げを奪い取る。
「あああああああああ!カロラスてめぇ!戦いの疲れを癒してくれる俺の大事なから揚げを奪い取りやがったなぁ!?」
カールも反撃で、カロラスのエビピラフからエビを数個抜き取る。
「ああああああああああああああ!カールひどいよぉ!」
「げっへっへ!反撃じゃ!」
勝ち誇った表情のカール。顔を真っ赤にするカロラス。
「うがああああああ!」
カロラスがカールに飛び掛り、大乱闘となる。
「ちょっと!二人とも落ち着いてよ!喧嘩しないの!」
ジェーンが仲裁に入る。
まるで3時間前に死闘を繰り広げていたとは思えない光景である。
「彼ら…良くなじめてますね。」
外れにて、サフィアとザックが話している。
「ああ。良い事だよ。バハムートの艦長として、彼らを違和感無く、そして安心して
迎えることが出来る。これからは家族も同然だからな。
この繋がりを…俺は大事にしていきたい。」
戦いの中で紡がれる、バハムートゼロという守護龍の中で働く人々の絆。
この絆は、やがて歪なる闇を切り裂く至高にして究極の剣となるであろう。
それを知るは、この物語を見ているあなたたちだけ——
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.17 )
- 日時: 2013/03/06 23:25
- 名前: Laevatain (ID: 2xWGAyvP)
第九話 邂逅—枯れた果実に眠る少女— 前部
ここがどこだかわからない。
工場のようなエリアで、不気味に改造を続ける男がいた。
「クククククククク、死神を殺せば私は昇進しにがみをころせばわたしはしょうしん
シニガミヲコロセバワタシハショウシン…クヒヒ…ヒャハハハハハハハハ!」
この男、先ほどの戦いで敗走した主任であった。
「主任!応答せよ!定時集会に欠席の理由を伺いたい!主任!
死神撃破の件はどうなっている!主任!」
通信機から、主任を呼ぶ通信の声が聞こえるが、彼は全く無視している。
「ククククククククク…昇進…殺戮…金…権力…ヒャハハハハハハハハ!」
もはや精神が崩壊しているようだ。
その後も彼は、薄暗い工場エリアにて、改造を続けていた。
ムーンレィス時代から初期のテラ・フォーミング成功事例として生活圏を得ている
ロスト・ガイア衛星「クレセント・ムーン」。
この衛星に構えられているG.U.軍管轄新規MS研究所として、スフィンMS研究所が発足した。
機材不足に悩まされていたこの研究所は、兼ねてから極秘MSの片割れである
「セイントガンダム」を格納・保管しているエリアとして内密にされていた。
今回のバハムートゼロ凱旋により、本格的にMS研究所として立ち上がることになる。
機材を搬出し、研究員を送り出す傍ら、極秘MSの入ったコンテナを搬入する。
しかし、このコンテナにも厳重な生体プロテクトがかかっていた。
現在、このコンテナを開封できる人間は、G.U.軍には在籍していないらしい。
DNA配列が一致しないのだという。
「アレス、先程の戦いで、敵のMSから【一年戦争】という単語を聞いたんだったな?」
ザックが、バハムートゼロ内のデッキドックでアレスに尋ねる。
「はい、しかし俺は学生時代に習った歴史レベルでしか知らないですね。」
「俺も文献や図書館程度の知識しかないが、人類の歴史において初めて
MSを駆使した戦争であり、ガンダムが生まれた戦争であると記憶している。
しっかし、その古い時代からMS技術を転用し、己が私利私欲のために使うとは…。
先人の教訓である【戦争は悲劇】を全く理解していないのがわかるな。」
ザックが珍しく憤慨している。
「全く嘆かわしい。これでは俺達は旧時代の偉人達に顔向けが出来ないじゃないか。
結局、何時の時代も戦争だってな…。」
「仰るとおりです。俺も同意ですね。」
アレスも、ザックの意見に非常に共感している。
第一、アレスも人の為に戦うことを重要視しているのだから。
そんな二人に、連絡が入る。
「すみません、お話中失礼します。」
スフィン研究所の研究員のようだ。
「最近発見したのですが、【イモータル】計画の廃棄された研究所がこの近辺にあるサイドアンゲルス内にあるそうです。
イモータル第一研究所、通称ネクタールです。」
「くっ…あの忌々しい悪魔染みた計画の研究所か…。で、何か気にかかることでも?」
ザックが険しい顔をしながら続きを尋ねる。
「どうやら、そこに生体反応があるそうで…真偽を確認できていないのが現状です。」
生体反応としたら、人が居るかも知れない。
人命救助は、オーディンの第一義務である。
「わかった。ネクタールを尋ねることにしよう。」
イモータル。
GU軍裏の顔である強化人間により構成された非正規軍。人道的な理由で非正規になっている。
構成員の大半がMS適正を高めた結果、精神障害を引き起こしている。科学者もマッドサイエンティスト。
幼少時から戦闘訓練と感情削減の実験を行われているため、精神障害を持つ結果になった。
アライアンズ撃破の為に穏健派が推し進めた裏の計画で、未だにG.U.の中でも深い悔恨を持つ。
強化人間は通称アンリミテッド(人を捨てた者達)と呼ばれる。ちなみに蔑称であり、差別用語である。
イモータルの説明を一通り受けながら、アレスたちバハムートクルーはサイドアンゲルスに向かう。
今回敵機の確認はされていないため、ヒューマンワークとなる。
サイドアンゲルスの廃棄された研究所に到着し、小型偵察艇「モスキート」にてネクタール付近に着陸。
アレス・ジェーン・カールの三人が、ネクタールを探索することとなった。
万が一の武装として、アレスとカールがハンドガン「リブラMk-3オートマチック」に
9.8mmメノライト弾頭を5マガジン装備しての出撃となる。
研究所の中は薄暗く、ペンライトで照らしながらあたりを見回す。
「こういうエリアって、なんか幽霊出てきそうだなぁ…。」
カールが、ボソっと話す。
「あのなぁ…子供じゃないんだからさぁ…。」
アレスは呆れている。
「そそそそそうよ!幽霊なんていいいいるわけないじゃない!」
ジェーンは真に受けているのか、すこしびくびくしている。
「ジェーン、真に受けちゃダメ。」
アレスがジェーンを引き戻そうとする。
地下1階エリアにて、突き当たりに遭遇する。
そこには扉があったが、開きそうにない。
近くには、コンソールがあったが、電源が死んでいるため画面は暗転している。
「さて、ここでこれか。」
アレスは、背負っていたランドセルから、小型ジェネレータを取り出す。
その後、コンソールの電源プラグを剥き出しにし、接続する。
「そいっ!」
ジェネレータが鈍く起動した音を立てる。
コンソールに電源が行き渡り、画面が起動する。
同時に照明電源も復活し、照明が付く。
あたりには銃撃痕と血痕が散らばっていた。
「ここで銃撃戦でもあったのか?」
アレスがつぶやく。
「さあ?どうだろうなぁ?」
カールが肩の抜けた発言で返す。それもそうである。
ここで何が起きたかは、誰もわからないのだから。
どうやらコンソールがエラーを起こしたようで、システム復活と同時に扉が開いた。
中には、アクアスリープポッド(液体仮死睡眠装置)が何機も設置されていた。
栄養補給水にて体外から栄養を補給し、脳と臓器を
仮死状態にすることで永続的な睡眠を行うことができる装置である。
「ここは…被験者の実験エリアか…嫌な感じだな。」
アレスが不快感をあらわにする。
「こんなところで頭が狂うぐらいまで戦闘訓練されるなんて…
同じ人間なのに…被験者をオモチャにする科学者の気が知れないわね。」
ジェーンも同意のようだ。
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.18 )
- 日時: 2013/03/05 23:08
- 名前: Laevatain (ID: 2xWGAyvP)
第九話 邂逅—枯れた果実に眠る少女— 後部
その最奥部に、まだ可動を続けているアクアスリープポッドを発見する。
中には少女が入っていて、スリープ用のレオタードスーツをまとっている。
栄養補給水に満たされた檻の中で、未だ仮死状態で眠り続けている。
「…こ、これが生体反応の正体か…!しかし…少女とは…ね…。」
アレスが驚きを隠せない。
「ああ…未だに回収されてないのか…クソッ、胸糞悪ぃなぁ!
こんな娘すら戦争の道具にしようとするゴミ連中がよぉ!」
カールも怒りを覚えたようだ。
「とりあえず、彼女を助けましょう。アレス、艦長に報告しましょ?」
「そうだね。まずは連絡を入れよう。」
「こちら、アレス=ウィザール伍長。ネクタール内部にて、アクアスリープポッドにて仮死状態の少女を発見。
これより保護しますが、よろしいでしょうか?」
「もちろんだ。その娘を保護して、こちらで面倒を見よう。」
問題の無いザックからの返事。当然の回答である。
「エウリス、彼女のポッドを機能停止させて、彼女を解放させよう。コンソール操作を頼む。」
「オーケー。任せとけ!」
エウリスハロがランドセルから飛び出し、ポッドコンソールへワイヤーケーブルを接続させる。
コンソールが起動から解除へ、そして被験者復活へのガイダンス手順を踏む。
栄養補給水が排水され、彼女の呼吸器官と心臓を復活させる。
問題なくシステムは起動され、彼女は息を吹き返す。
「よし。ジェーン、彼女を受け止めてほしい。」
「わかったわ。任せて。」
「あれ?アレス、お前が受け止めれば?」
カールがしれっと発言。
「お前なぁ、俺が受け止めたらいろいろ問題だろうが…。」
一応、男と女であるが故、アレスは正論で返す。
いよいよポッドの機能が全停止し、ガラスゲートが開く。
彼女が崩れ落ちるが、ジェーンが抱きかかえる。
研究所を後にする直前に、アレスは彼女のポッドに金属のプレートを見つける。
金属のプレートには、こう書かれていた。
「私の愛する娘、エリュシア」
アレスは、この文字を彼女の母親が書いたのだろうかと思いを錯綜させたが、
情報が少なすぎるこの状況で、無為な詮索はやめたほうがいいと判断した。
こうして、ネクタールから少女を一人保護する形で、研究所を後にすることとなった。
宙域にさしかかり、船の振動も安定してきた。
救出された少女は、バハムートゼロへ収容後にライフセイバー班に身体精密検査を行うことになった。
高性能人体解析装置でのヘルススキャンを行い、体内・体外に大きな外傷も病気も無いことが判明し、
アレス達は安堵した。
が、問題は彼女を安静にするベッドが無かったことだった。
「えっ!?ジェーンの部屋はダメなのですか!?」
アレスが戸惑う。
「私の部屋は、サフィアさんと一緒の相部屋だからダメなのよ。」
もちろん、カールとダグラスは相部屋である。
「それじゃメディカルルームのベッドは!?」
「メディカルルームは緊急用であって、問題ない人間を長時間
置いておくわけにも行かないよ。
従って、アレス。君と相部屋になる予定だったロン・イシューリー軍曹のベッドを借用し、
彼女をそこに寝かせて欲しいんだ。」
アレスは軽く赤面しながら、しぶしぶ了解する。
「一応セパレートカーテンがあるから、気になるならそれを使うといい。」
「わ、わかりました…。」
少女を寝かせるジェーン。
カール・ダグラスも様子見で同伴してきた。
「んじゃ俺らは戻るから…アレス、頑張れよ!」
カールが親指を立てて、アレスに意味深なエールを送る。
ダグラスは顔を赤らめてもじもじしている。
「お前…俺をどうしたいんだよ。」
最早アレスは呆れ返っている。
カール・ダグラスが部屋を離れた1分後、ジェーンも離れることになった。
「それじゃ、彼女をよろしくね。
それと…変な気起こしちゃダメよ?」
「あのなぁ!俺がそんな人間に見えますか!?
見えたなら謝りますよ!ゴメンナサイ!」
もうどうにでもなれのアレス。
「ったく…なんなんだよ…。俺がそこまで欲求不満に見えたかよ…?」
不満げのアレス。
しかし、彼女の寝顔を見ながらふと考える。
(彼女は、どういう経緯であの場所で眠っていたのだろう?
あとあのプレート…。彼女も、意味があってあの場所で眠っていた?
全ては、噛み合う運命の歯車のように、彼女もその歯車だった?
母親は、彼女を守ろうとしたのか?父親はどうしたんだ?)
そんなことをグルグル考えていく中、彼女の胸元からベッドの白いシーツへ
銀色に光るものが落ちていく。
「…ドッグタグ?なんだ?なんて書いてあるんだろう。」
すこし確認しようと、アレスは彼女に近づいていく。
(もう少し近づけば文字が見える…。)
彼女の顔面近くまで顔を近づけた。
しかし、その瞬間
彼女が起きてしまった。
いきなり彼女が起きて、状況を把握したのか一気に赤面するアレス。
「あ、あ、あ、あのこれは…えーっと…決してやましい気持ちではなく…!」
アレスがぼそぼそ弁明する。
少女も状況がやっと理解できたのか、徐々に赤面していく。
そして、アレスを突き飛ばした。
「キャアアアアアアアアアアア!」
アレスはものの見事に空中で1回転し、自分のベッドへ叩き付けられた。
「ごごごごごごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
連続で謝る少女。
「い、いや…大丈夫だよ。俺も驚かせてごめん…。」
逆さになりながら、アレスも謝る。
少女が目覚めたことにより、アレスはメインドッグに彼女を連れて行くことにした。
が、レオタードのままではまずい。
ジェーンに頼んで、女性用軍服を着させてもらうことにした。
「えっと、記憶は…あるかい?」
デッキドッグにて、アレスが尋ねる。
「あまり覚えてないです…。名前はエリュシアってことぐらいしか。」
少女の名前はエリュシアと呼ぶようだ。
実際、彼女のドッグタグにもエリュシアと記されていた。
枯れ果てた果実に眠っていた少女。
彼女が眠っていたその意味とは…?
そして、バハムートゼロに忍び寄る巨影が不気味な光を放っていた—
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.19 )
- 日時: 2013/04/05 23:21
- 名前: Laevatain (ID: VHURwkNj)
第十話 セイントガンダム—聖女、戦場に舞い降りて— 前部
イモータル第一研究所、通称ネクタールから救出した一人の少女。
名をエリュシアと呼ぶようだ。
アレスの質問の後、全員が一斉に質問をしようとする。
が、ザックの険しい表情とアイサインによりザックのメッセージを読み取ったアレスは
「ストーーーーーップ!」
と止めにかかった。
「…艦長、御願いします。」
アレスが、ザックに譲る。
「ふーっ。お前達、彼女を質問責めするのは簡単だが、それでは彼女が困惑してしまうだろう?
まずは、彼女からの質問に答えるのが礼儀であり、理にかなっているのではないか?
彼女は現在の状況を知り得ていない。我々が何者で、何を目的にしているのか、そういうことから
説明するべきだろう。」
ザックの説明に、全員は我に返ったような表情で納得した。
当然のように、彼女からの質問は数多くあった。
一つ一つ、エリュシアの質問に答えていくアレス達。
自分達の職、この戦艦、目的、人類の現在の状況などなど。
その中で、わだかまりを無くして行くエリュシア。
ちなみに、アレス・カール・ダグラス・ジェーン・アシュレイは
自分達に気を遣わなくていいと彼女に伝えた。
彼女もそれを了承したようだ。
いよいよ彼女からの質問が無くなり、一つ一つ慎重に質問していくアレス。
「覚えている範囲でいい、自己紹介を御願い出来るかな?」
「ええ、私はエリュシア…これしか思い出せないの。年齢は17ぐらいだと思う。」
若い年齢に驚きを隠せないメンバー。
アレスが落ち着くようになだめる。
「えっと、今まではあのポッドの中で…教育VRプログラムをやっていたの。
一通りの勉強をやってた…夢の中で。」
アクアスリープポッドには、VRプログラムをセットすることが出来る。
VRプログラムの種類を変えることにより、殺戮教育や通常の擬似生活教育、ひいては嗜好や趣味など、
さまざまな体験を、脳休止状態によるレム睡眠にも似た意識の中で体感できる。
さらには、肉体もそれに応じて筋肉が付くようにポッドの成長システムによりリアル肉体に反映されるのだ。
「その中の女の人の声がとても温かくて…安心してた。すごく。」
アレスがうなずきながら、彼女の話を聞いている。
「いざ目覚めてみると、いろいろ夢とは違ってて、最初は怖かった。でも、
この船で目覚められてよかったと思う。皆さん温かいし。
何より…彼が一番温かったから。」
エリュシアが、アレスを見つめる。
アレスは女性に見つめられるに慣れていないのか、頬を赤らめて目を逸らす。
「何でも、力になれることがあったら言ってね?私でよければ。」
ジェーンが、エリュシアの手を握る。
「俺達も力になるぜ。なぁみんな?先輩方?」
カールの問いかけに、全員が同意する。
その瞬間、船体が大きく振動する。
バハムートゼロの背後で、爆風が発生したようだ。
「敵襲か!全員、第一警戒態勢に入れ!」
ザックの号令と共に、全員が戦闘準備に入る。
「艦長、俺出ましょうか!?」
「ああ、周囲の巡回と警戒を頼む、アレス!」
「了解しました!」
アレスが、エウリスハロと共にナイトメアへ駆けて行く。
「アレス=ウィザール伍長、ナイトメア、出撃します!」
カタパルトから、死神が出撃する。
「すまねぇアレス!俺達のガンダムはまだ修理中で出撃できねぇんだ!」
カールの通信が入る。
「大丈夫さ、恐らくたいした敵じゃない…。」
アレスは楽観視していた。
しかし、背後からの巨影が姿を現すと、アレスは自分の言葉を撤回したくなった。
そこには、小型戦艦クラスのモビルアーマー(MA)がいたからだ。
戦艦のようなボディには、無数の砲撃兵器が取り付けられている。
船首にはゲルググ・ベリアルナイツの胴体がマウントされていた。
「ククククククク捕まえたぞ死神イイイイイイイ!」
搭乗しているのは、あの主任である。
ナイトメアより敗走後、自分の管轄するエリアにて、
中破したゲルググと自分の所有する戦艦をドッキング改造したのだ。
火器管制装置をゲルググのものと併用することにより、
無数の重火器をコントロールできるように改造するためであった。
「ククク、私の最後の足掻き「リゲルゼ・ヴァラク」だよ…!
さあ、私のプレゼントを受け取っておくれ!
死と言う名のプレゼントをなぁ!ヒャッハハハハハハハ!」
主任のこの言葉の後、無数の重火器から光と炎が迸る。
バルカン砲の弾雨を切り抜けると同時に、無数に向かうミサイルの群れ。
ブラッド・ペインにて切り払いながら回避。
しかし、爆風から無数の閃光が迫り、ナイトメアを飲み込まんとする。
回避・防御・攻撃とフル稼働するナイトメア。
しかし、防戦一方となり、反撃の余地がない。
敵の火力を把握するアレス。額に汗がにじみ出る。
—食らったら、そのまま持っていかれる。まず、命はない—
「クソッ!この威力にこの砲撃の雨じゃあ、反撃すら出来ない!」
「落ち着けアレス!何かチャンスはあるはずだ!」
焦るアレス。なだめるエウリス。
しかし、徐々に紙一重の防戦すら埋まろうとしていく。
「ここで、アイツがやられるのを見ているだけなのかよぉ!
俺達が出来ることはないのか!」
カールが、壁に八つ当たりする。
「落ち着いてカール!」
ダグラスがなだめようとする、が、ダグラスの胸倉をつかむカール。
「お前、それでもアイツの友達かよぉ!」
どうすることも出来ない状況に、歯を食いしばる船員達。
ここで方向転換して砲撃援護しようにも、
ナイトメアが射線上にいるため、巻き添えになってしまうためである。
火力加減を出来ない艦戦では、射線上に味方を配置しないのが定石である。
しかし、上下左右の旋回を行おうにも、圧倒的に時間が足りないのだ。
そうしている間に、ナイトメアが破壊される。
その時、エリュシアの脳裏にあるビジョンが映し出される。
若い女性が、彼女の前に居る。顔はぼやけて見えない。
女性は、彼女にこうつぶやいていた。
「私の代わりにセイントを…未来を繋いで欲しいの。私の大切なエリュシア…。
そして、貴女の大事な人を…恋人を…家族を…守るのよ…。」
女性は泣いていた。
何故泣いてるのかはわからない。
その後に銃声が鳴り響き、ビジョンは消えた。
「セ…セイント…セイントガンダム…!そうだ!私はアレに乗れる!」
エリュシアが叫ぶ。
「!本当なのか!」
ザックが反射で反応してしまう。
「はい!私しか…多分乗れません。そして…彼を…みんなを…守りたいんです!」
彼女の目は、決意に満ちている。
「わかった。彼女をドックに連れて行ってくれ!カタパルトの発射準備だ!」
ザックが、彼女の出撃を了解した。
コンテナの生体認証に手をかざすエリュシア。
生体認証、オールクリア。
開かずのコンテナは、いよいよその秘密のベールを脱ぐ。
コクピットに乗り込み、各部の電源を入れる。
生体認証と、認証キーの入力画面に差し掛かる。
「ここで…こうだったはず!動いて!セイントガンダム!」
彼女はコンソールに手をかざし、データメモリーエリアに、
胸元にぶら下げていたドッグタグを置く。
全ての認証が完了し、MSが本格起動する。
その瞬間、
「やっと会えたわね…エリュシア。さあ、貴女の大切なものを守る時よ!」
聞き覚えのある、柔らかく、温かい女性の声が響いた。
- Re: 機動騎士ガンダムInceptor(インセプター) ( No.20 )
- 日時: 2013/04/05 23:26
- 名前: Laevatain (ID: VHURwkNj)
第十話 セイントガンダム—聖女、戦場に舞い降りて— 後部
そろそろ限界のアレス。集中力が途切れてきた。
「ハァ…ハァ…ちくしょう!」
完全に動きが止まったナイトメア。
ブーストエネルギー、ビームキャノンエネルギー全てがリチャージとなる。
身動きが出来ない一瞬。
その瞬間を狙い、リゲルゼ・ヴァラクの銃口が狙う。
「もらったぞおおおおお死神イイイイイイイ!死ねええええええええ!」
その瞬間、リゲルゼ・ヴァラクの武装の約1/3が、一気に爆発し、使用不可となる。
「ぐはああああああああ!何事だぁ!」
うろたえる主任。
ナイトメアの後ろに佇んでいたMS。
純白のガンダム。
バックパックには、遠隔攻撃ユニットを6機構えているガンダムだった。
—セイントガンダム—
「ごめんなさい、アレス!遅れちゃって…!でも、大丈夫。
私、貴方やみんなを守れる!」
エリュシアがアレスに呼びかける。
「あ、ありがとう…!助かった!
だけれど、女の子に守られちゃあ…男が泣くよなぁ、エウリス!?」
「おうよ!借りを返すぜ、アレス!」
戦う意思と余裕を取り戻したアレス。
死神と聖女が、ついに揃ったのだ。
ナイトメアとセイントは、まるで光の速さのように駆け巡り、
リゲルゼ・ヴァラクの武装を次々に破壊していく。
「エリュシア、その武装は一体!?」
アレスが、バルカン砲を破壊しながら質問する。
「私みたいな特殊な人間が放つ脳波を使ってコントロールする遠隔武器なの。
「アウェイカー」のみが使える武装…旧時代では「サイコミュ」とか「ファンネル」などと
呼ばれた技術の応用みたい。その代わり、すごい疲れるけれど…ね。」
10門はあるであろう大型ビーム砲の群れを、遠隔武器で破壊しながら
エリュシアが応える。
「何故だ?なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだナゼダナゼダナゼダ…
何故勝てないんだあああああああああああああああああああ!
こんな偽善者になぜ勝てないなぜカテナイナゼカテナイ…!」
絶望の中、さらに精神を侵食される主任。
そんな中、紫のMSが戦場に現れた。
アーガイグと呼ばれるMSである。
「こんなところで何故油を売っている?主任?いや…何処の誰かさんだっけか?」
仮面の男、グラニットは冷ややかだ。
「ゼネラル…マネージャー…!」
主任が我に返る。
「君のおかげでゲルググの生産コンセプトが固まったよ。
喜び給え、君の努力により我が社は新しい製品を生産することが出来た。
受注販売機数もなかなかのものだ。これで我が社はより潤沢な企業へと進化できるだろう。
が…どうしたものかな?
私としたことが、どこかから君の死神抹殺失敗の度重なるミスが【懇談会】の方々に
伝わってしまったようだ。
【懇談会】の方々は大層ご立腹なご様子で、私に君の【永久免職処分】を
伝えよと仰られてしまったのだよ。」
主任の顔が凍る。
「が、今君が眼前の死神と敵の新しい極秘MSを撃破できた場合には、
この私が全身全霊を持ち、君の職場復帰と昇進を強く御願いしてみよう。
どうだ?よい取引だろう?」
主任の顔に、余裕はない。
もう、生き残るためには、ナイトメアとセイントを破壊するしかないのだ。
主任の精神崩壊には、アライアンズの徹底した実力主義が背景にあった。
成績不振の社員には、「永久免職処分」と言う最も重い措置が取られる。
これを受けたものは、限りないプレッシャーに苛まれることになるからだ。
—永久免職、それは、この世からの免職を意味する—
「死ねええええええええ!」
自爆覚悟で、リゲルゼ・ヴァラクが最後の主砲にエネルギーを溜めながら突貫する。
「アレス、エリュシア、下がってくれ!
ここは俺達に任せてくれ!」
ザックの通信が入る。
後ろを確認すると、バハムートゼロが方向転換していた。
リゲルゼ・ヴァラクを正面に捕らえている。
「主砲発射準備!急げ!主砲発射シーケンス開始!」
ザックの号令と共に、主砲が展開し、チャージが始まる。
「エネルギーコンデンサ、チャージ120%!熱交換器温度上昇、冷却速度異常なし!対ショックアブゾーバー展開完了!
セーフティロック解除!照準システム異常なし!対象、敵MA捕捉!ロック完了!発射準備完了!」
全ての主砲準備が整った。
「アトミック・フレア・ノヴァ発射!いっけえええええええ!」
カロラスが、照準トリガーを引く。
超高密度エネルギーのビームが、守護龍の口から放たれる。
同時に、リゲルゼ・ヴァラクの主砲も発射された。
両者のエネルギーが衝突し、拮抗する…はずだった。
圧倒的に出力の大きいアトミック・フレア・ノヴァは、リゲルゼ・ヴァラクの主砲を飲み込み、
そのままリゲルゼ・ヴァラクを包み込んだ。
「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
閃光と爆炎に飲まれ…リゲルゼ・ヴァラクは、跡形もなく消え去った。
戦闘が終了し、ナイトメアとセイントが帰還した。
仲間達の手厚い歓迎に、心を通わすアレスとエリュシア。
守護龍の絆は、また一段と深くなったのだ。
グラニットが、誰かと話している。
「あー、私だ。主任は死んだよ。殉職だ。
そうだ、彼の家族が居るだろう。第16棟の305号室だ。
彼の家族に彼の訃報を伝え、殉職金を出しておいてくれ。
そしたら彼らには移転を勧め、どこかゆっくりした場所で暮らすようにしておいてくれ。ああ。またな。」
翌日、アライアンズ管轄下のショッピングモール。
大きなスクリーンで、ニュースが報道されていた。
「昨日、第16棟の305号室にて、家族3人が一酸化炭素中毒により、全員死亡していたことを当局警察部隊が発見いたしました。
室内には練炭が入っており、無理心中をしたものとして、警察部隊は自殺として調べております。」
捏造報道である。
実際には、彼らの室内にある空調通気溝から、一酸化炭素を流れ込ませたのだ。
アライアンズは「実力」を持って、彼らを「天国」へと移転させたのである。
企業は、社会は、全てを食いつぶす怪物として、なお君臨し続ける。
…弱者を食い散らかし、その跡を残して。
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