コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- はじまりの物語 完結
- 日時: 2022/04/02 17:22
- 名前: 詩織 (ID: .DYzCgCx)
・〜・〜・〜・〜・〜・
赤い髪の少女は、不敵に笑った。
その瞳に諦めの色はない。
浮かぶのは、『希望』。きっと・・・彼も同じ瞳をしているはず。
今は顔の見えない少年を想った。
合わせた背中に感じる熱は‘信頼’と‘安心’を与えてくれる。
ぬくもりが伝わる。
君が、そこに居てくれる。
お互いそれだけで、強くなれる気がした。
『いくよ、シルファ?』
『了解、ラヴィン。』
囁くように交わされた会話を合図に、2人は地を蹴り飛び出した。
−−− 前だけを見つめて。
・〜・〜・〜・〜・〜・
はじめまして☆
小説を書くのは初挑戦(^^)
初心者なりに、まずは一話書ききること!・・を目標に頑張ります。
よろしければ、ぜひお付き合いくださいませ。
初めてで読みにくかったりするかもですが、
もし感想など頂けましたら、とってもうれしいです。
追加・・コメントいただいている作者さんのご紹介欄☆
☆せいやさん
言葉や文章がとても綺麗です。
表現が上手で、情景が浮かぶところが私は好きです。
☆ビタミンB2さん 「翼と自転車」
コメディ・ライトに書かれてます。軽快で、テンポが良くて、とっても読みやすいです。思わず笑っちゃうシーン多数。
☆あんずさん 「白銀の小鳥 From of the love」
素敵な短編集です。
優しく、でもその中にある強さが心に残る、暖かい文章です。
楽しい話から切ない話まで、表現が豊かで、そのメッセージにはいつも心を動かされます。
☆えみりあさん 複雑・ファジー「イノチノツバサ」
すごくかっこいい!丁寧な設定と文章で、感情移入して読んでしまいます。
☆星飯緋奈さん コメ・ライ「陰陽師ー紫鶴」
まず設定がすごい。私は設定だけでもかなりワクワクでした。
歴史もので、平安時代の雰囲気がびっくりするほど上手です。
☆てるてる522さん コメディ・ライト
たくさん執筆してらして、更新も早いので、すごいなぁと思ってます。
「〜Dolce〜Tarantella」は、読みやすく、可愛いお話です。
☆湯桁のろまさん コメディ・ライト
どれも空気感とか季節感とか、描写がすごく丁寧で素敵です。
私はストーリーも気になりますが、その文章を読むだけでも味があってとても楽しいです。
☆風花 彩花さん コメディ・ライト
とっても可愛らしいお話です。たくさん仲間がでてきて楽しそう。どうなっていくのかドキドキです。
☆いろはうたさん
とにかく文章力がすごいです。和も洋も、物語が本格的で惹きつけられます。表情や景色や温度が感じられる描写はさすがだなぁと思います。
☆ゴマ猫さん
短編も長編も素敵です。『雨と野良猫』はキャラクター達の会話の面白さもストーリーが読みやすいところも読んでいて楽しいです。
《 はじまりの物語 》
登場人物
ラヴィン・ドール・・ラズベリー色の赤毛の少女。好奇心旺盛な16歳。考えるより行動派。明るく素直、割と単純。今回の主人公。
シルファ・ライドネル・・銀色の髪の少年。魔法使いの名門ライドネル家の末弟、17歳。魔法の修行中。悩めるお年頃。
ジェイド・ドール・・ラヴィンの叔父。王都に店をもつ貿易商で、昔は兄であるラヴィンの父と世界中旅した冒険家。姪っ子ラブ。
アレン・・ジェイドの相棒。灰色の髪と瞳。性格、生い立ちは正反対だがジェイドのよき親友。
ラパス・・金髪、碧眼。体育会系の青年。元・王宮騎士団。ジェイドに憧れ護衛の仕事に転身。
ジェン・・漆黒の髪の青年。お兄さんというか「お母さん」。
研究には寝食忘れるタイプだが、それ以外は割とのんびり。
マリー・・見た目は10歳?くらいの少女。綺麗な水色の髪。ジェンの妹ということになっているが、本当は・・?
《 目次 》
序章 とおく聴こえるはじまりのおと >>000
第一章 赤毛の少女、王都へ行く >>001-002
第二章 ジェイド・ドールと噂の古城 >>003-007
第三章 シルファ・ライドネル、いつもの朝 >>008 >>013
第四章 出会いは冬の空の下 >>016-019 >>021-022
第五章 友達 >>024-025 >>027-028 >>030-031
第六章 動き出す歯車 〜ジェンとマリーの研究室〜>>033-035
動き出す歯車 〜ライドネル邸〜 >>036-037
第7章 石碑の謎解き 〜読めない魔法文字〜 >>039 >>040 >>041 >>042 >>045
第8章 夢 >>046-048
夢〜冬の終わり、帰り道。〜 >>049-050
第9章 真夜中の訪問者 >>051-055
第10章 旅支度 >>059-061 >>062-064
第11章 女神の守る村 〜エイベリーの石碑〜 >>065-067 >>068-069 >>070-071
第12章 『魔女の棲む山』〜入口、発見!〜>>074 〜森の中の急襲〜 >>075 >>076
〜女神エルスの子守唄〜 >>077 >>080 >>081 〜密会〜 >>082
目次Ⅱ >>141
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・
序章 とおく聴こえるはじまりのおと
優しい風に、彼女の赤い髪が踊る。
季節は冬も終わりに近づく頃。
凍てつく寒さがほんの少しだけ緩み、窓から差し込む日差しは、微かに柔らかさを増した。
まだまだ春は遠かったが、町には厳しい冬からゆっくりと、季節の移り変わりを予感させる風が吹いている。
雲ひとつないその日は、青い空がどこまでも高かった。
太陽の光が、その透けるような赤い髪の上に降り注ぐ。
肩まである美しい赤毛をひとつに括り、旅支度を終えた彼女は家の前に立っていた。
「じゃあ皆・・、いってくるね。」
見送る人々を振り返る。
家族、友人・・とりわけ心配そうな顔でこちらを見つめている親友に、彼女は言った。
「だーいじょうぶだって、フリア。向こうにいけば、ジェイドおじさんの仕事仲間のひとたちがいるし、店の支店だってたくさんあるんだしさ。おじさんを見つけて、事情を確認したらすぐに戻ってくるから。」
親友には安心して待っていてほしいから、笑顔で語りかける。
「ほんとに?ほんとにすぐ帰ってくるのよ。無茶しちゃダメよ。」
フリアと呼ばれた少女は、腰まである薄茶色の髪を揺らし、赤毛の少女の右手をぎゅっと握る。紫色の瞳が、目の前の親友を映す。
「ラヴィン・・」
そっとつぶやく。
ラヴィンと呼ばれた彼女・・赤い髪の少女、ラヴィン・ドールは、そんな親友・フリアを愛しげに見つめた。
「ほんとだって。うん、無茶なことなんてしないよ。
そんな大げさなモンじゃないってー。ちょっとしたおつかいなんだからさ。すぐ帰ってくるよ。」
空いたほうの左手をひらひらと振り、へらっと笑った。
「そしたらさ、またいつもの丘でお茶しよう。向こうの街にはめずらしいお菓子があるよ。おみやげいっぱい買ってくるからさ。・・そのころには、ユリアンの花もきっと綺麗だよ。」
にかっと歯を見せて笑う。
ユリアンは、この地方の春に咲く美しい紫色の花で、二人がよく過ごす丘には毎年春になると満開に咲くのだ。
「だから、安心して待ってて。フリアとお茶するの、楽しみにしてるから、私。」
フリアの手を両手でそっと握り返しながら、ラヴィンは優しく言った。
そして手を離すと、よっこらしょ、と荷物を肩にかける。
「じゃあね・・。いってくる!」
気をつけていけよー、連絡よこすんだよ、早く戻ってこいよ、
皆の声を後ろに
軽く手を振りながら、彼女は歩きだした。
彼女は、彼女の目的のために旅立った。
まだ少し肌寒く、春が待ち遠しい季節の、ある晴れた朝のことだった。
これから起こることも、出会う人も・・・
少女はまだ何も知らない。
でも、今は、足取り軽く踏み出した一歩。
・・それは、とおく聴こえるはじまりのおと。
微かなそれに、少年はまだ気付かない。
ため息をつき、空を見上げる。
そんな彼の髪を風が揺らす。
風に運ばれ、出会うは人と人のものがたり。
冬の最中の春のように、未だ見ぬそれは何も見えず、何も聴こえず。
・・・けれど、確かにはじまっている。
とおい町の、小さな小さな はじまりの音・・
少年に届くのはもう少し先・・
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- Re: はじまりの物語 ( No.70 )
- 日時: 2016/06/18 21:48
- 名前: 詩織 (ID: rjNBQ1VC)
———その昔、わしらのご先祖様たちは、ここよりもっと西の地に住んでおったそうじゃ。
ところが、災害か、戦か・・何かの事情でもとの土地から離れ、新天地を求めて旅を続ける生活の中で、この土地を見つけたらしい。そうしてここに村を作り、移り住んだのじゃ———
そんな風に、ノエルの話は始まった。
「エルス様の神話や信仰がいつからあるのか、わしは知らん。とにかくここいらでは、生まれた時からエルス様のご加護のもとに暮らして居るのじゃよ。大地も、水も、人も・・、皆エルス様が守って下すっておる。」
そう言って、ノエルはとても神聖なものを見るような瞳で石碑を見つめた。
それは、慈愛に満ちた眼差しだった。
まるでそこに、美しい女神の御心が宿っているかのように。
「ご先祖様たちも、もともとエルス様を信仰していたらしい。この土地を見つけられたのも、エルス様による導きだという言い伝えじゃからな。」
「導きというと?」
ノートをとっていたシルファが顔を上げて聞いた。
「ご先祖様たちが土地を探していた頃の話じゃ。星も月も見えない真っ暗な闇夜のこと。森の漆黒の闇の中に、エルス様が現れたそうじゃ。」
「女神様が?」
ラヴィンが声を上げる。
ノエルは頷くと、話を続けた。
「淡い光が辺りを照らす中、その中心に、それはそれは美しい女神様の姿が浮かんでいるのをご先祖様たちは見ていたらしい。」
言い伝え通りの淡い金色の長い髪、宝石のような真紅の瞳をした女神エルスは、優しい微笑みを浮かべ手をひと振りした。
すると、光の輪が広がり、女神とその周りにあった石碑が燦然と輝きだす。
光は更に大きくなると、辺り一面を包み込み、流浪の民たちはあまりの眩しさに目を閉じた。
思わず意識が遠のくほどの光だったそうだ。
・・・気が付くと、光は消えていて、女神の姿もない。
そこにあったのは、静かな森と、元どおりの闇夜であった。
けれど翌日、再び森を探索した民たちは確信する。
あれは夢まぼろしなどではなく、女神による啓示だと。
なぜなら。
「女神と共に輝いていた石碑が、実際にあったからじゃ。それからご先祖様たちは、そこをエルス様ご降臨の土地として敬い、村を作り、エルス様に祈りを捧げながら静かに暮らしてきた。・・と、言うわけじゃな。古くからの言い伝えじゃ。」
白くふさふさとした柔らかそうなヒゲを撫でながら、ノエルは穏やかな声で締めくくった。
「こんなもんでどうじゃ、若いの。」
「・・あ、はいっ。ありがとうございます。」
黙ったままノエルの話に聞き入っていたシルファは、慌てて礼を言った。
「貴重なお話でした。面白かったです。」
頭を下げるシルファに、ノエルは満足そうに笑った。
しかし、急に思い出したように表情を曇らせる。
「お前たち、エルス様について調べとるとか言ったな。学者かなんかか。」
「あー、うーんと。まぁそんなものよ。研究者なの。」
ラヴィンが適当にごまかしつつ言うと、ノエルは真剣な顔で2人を見返した。
「なら、悪いことは言わん。どんな噂を聞いても、あの『魔女の棲む山』には行ってはいかんぞ。」
「魔女?」
「何それ?」
不思議そうに自分を見る少年と少女に、それまでとはうって変わった低く重い口調でノエルは告げた。
「これは村の誰でも知ってる話じゃ。そのうち誰かから聞くじゃろ。2人とも、後ろを向いてみろ。」
「?」
言われるままに2人が振り返る。
ノエルは2人の視線の先を指さした。
「あそこに山が見えるじゃろう。」
ノエルが指さしたのは、村から少し離れたところに見える山だ。
麓の辺は木が生い茂り、ここからではもちろんよく見えない。
「あの山が、どうかしたんですか?」
シルファが聞いた。
「これもまた、昔の話じゃがな。」
そう前置きして、ノエルは再び語った。
「女神エルス様の力を我が物にしようと、企んだ魔女がおったのじゃ。
たいそうな魔法の力の持ち主だったそうじゃが・・。エルス様の力には及ばず、力尽き、その魂はどこかの大地へと封じられたと聞く。」
「女神様が勝ったのね。」
「その封じられたとされる場所が、あの山だと言うことでしょうか。」
シルファの問いに、ノエルは頷く。
「ああ、そういう言い伝えじゃ。しかし魔女の念は凄まじく、封じられたあともその亡霊は辺りを彷徨い、その姿を見たものや声を聞いたものは呪い殺されると恐れられている。」
そこまでじっとノエルの話を聞いていたシルファだが...。
ハッ!と気づいて隣を振り返った。
「ラ、ラヴィン!?大丈夫?」
おそるおそる、顔を覗き込む。
「・・・・・」
引きつった表情のまま、完全に固まっている。
「ラヴィン、しっかり!大丈夫だって!僕もいるからっ。」
ゆさゆさと肩を揺すると
「・・え?あ、ああ。シルファ。そう、そうよね。うん、平気平気。」
明らかに平気には見えない顔で、ラヴィンが呟いた。
「なんじゃ小娘、幽霊が怖いのか?」
2人のやりとりを見ていたノエルが、笑い声を上げた。
「研究者とか言っとっても、やっぱり小娘は小娘じゃな。あのな、この村では昔から、言うことを聞かない悪ガキには、『こら、魔女の棲む山に置いてくるぞ』というんじゃよ。そうすりゃすぐ言うことを聞く。それだけ怖がられてる言い伝えということじゃな。わっはっは。」
「うわーなんてひどい村〜。」
快活に笑う老人に、ラヴィンは恨みがましい目をして呟いた。
ひとしきり笑ったあとで、落ち着きを取り戻したノエルは再び穏やかな声で語りかけた。
「昔話と言われればそれまで。じゃが、昔の人々がそんな風に語り継いだのにも、何か理由があるかもしれん。とにかくここらへんの者は、あの山には決して近づかん。」
「あの山には、人は住んでいるんですか?」
「いや、聞いたことはないな。何百年も前は鉱山として使われていたこともあったそうじゃが・・」
「昔の鉱山か・・。」
シルファは思案気に眉根を寄せる。
「いいか。あの山には興味本位で近づいてはいかん。何があるかわからんからな。」
念を押してくるノエルにシルファは頷いた。
・・心の中では違うことを考えていたが。
ラヴィンも大きく頷いた。何度も何度も。
・・心の中ではもちろん、絶対そんなとこ行くもんか。そう呟いているのが丸わかりな顔で。
- 女神の守る村 〜エイベリーの石碑〜 ( No.71 )
- 日時: 2015/09/20 19:19
- 名前: 詩織 (ID: z6zuk1Ot)
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・
「で?どうする気?シルファ。」
ラヴィンに尋ねられ、シルファはどう答えるか迷っていた。
親切な老人に別れを告げ、2人は村の外れまで来ていた。
もちろん、シルファの心は決まっている。
ノエルの話を聞いている時から、次の行き先は決まっていた。
けれど・・。
暫くの間、逡巡する。
そんなシルファの様子を見ていたラヴィンは、はぁ、と大きなため息をついて口を開いた。
「行きたいんでしょ、『魔女の棲む山』。分かりやすいよね、シルファって。」
仕方ないなぁ。
そう言ってシルファを見上げる。
シルファは「あー。」とか「うー。」とか、ごにょごにょ言っていたが、観念したように言った。
「うん。僕は一度自分の目で確かめに行こうと思うんだ。でも・・」
辺りの空を見回す。
すでに午後も昼より夕暮れに近い時間になりつつある。
ジェンとの約束は、守らなければ。
「今日はもうこの時間だから・・、どのみち近くまで行って外から見てみるくらいになると思う。今夜ジェンに相談して許可がもらえたら、明日もう一度探索に行こうと思ってるんだ。」
だから、とシルファはラヴィンを見た。
「ラヴィンは先に戻ってて。僕ひとりで大丈夫だから。」
ノエルの話を聞いた後の青ざめた顔を思い出し、探索は自分1人で行くつもりだった。
あんなに怖がっているラヴィンを連れて行くのは可哀想だと思ったから。
「様子を見たらすぐ帰るから。ラヴィンも気をつけて。」
それじゃあ、と村の外へと向かって歩き出す。
数歩進んだところで、きゅ、っと服が引っ張られた。
横を見ると、隣に並んで歩くラヴィン。
片方の手で、シルファの上着の裾をきゅっと握り締めて。
「ラヴィン?先に帰ってって・・」
「私も行く。」
前を向いたまま、ラヴィンは言った。
「でも、怖いんじゃ・・」
「怖いけど!亡霊なんて死んでも会いたくないけどっ!」
本気で嫌そうに言い、でも、と続ける。
「何があるかわかんないって、ノエルさん言ってたし。シルファ1人じゃ心配だもん。私は大丈夫。何かあったら、シルファ、助けてくれるんでしょう?」
ちらりとシルファを見上げた。
シルファは驚いて。
そして、微笑んだ。
「うん。」
そんなシルファを見て、ラヴィンも笑顔を浮かべる。
歩きながら、シルファの手が、服を掴んでいるラヴィンの手を取る。
小さなラヴィンの手を、シルファの大きな手がきゅっと握った。
それだけで、ラヴィンはとても安心できた。
そうして2人は、ノエルの指さした山に向かって、村の外へと伸びる道を並んで歩きだした。
- Re: はじまりの物語 ( No.72 )
- 日時: 2015/09/19 23:11
- 名前: えみりあ (ID: TeOl6ZPi)
こんにちは〜(*^^*)
先日は私の小説に遊びに来てくださって、ありがとうございます!
詩織さんの小説、読ませていただきましたよ〜。全体的に、やわらかくて、温かい感じのする文章ですね。和やかな情景が頭に浮かんで、ほんわかしました。それでいてストーリー構成がしっかり考え込まれているので、とても読みやすかったです。
満足にちゃんとした感想も言えず、申し訳ないです……更新大変ですが、お互いに頑張りましょう!
- Re: はじまりの物語 ( No.73 )
- 日時: 2015/09/22 19:53
- 名前: 詩織 (ID: sbAJLKKg)
>えみりあさん
コメントありがとうございます!
感想はとにかく嬉しいですよ〜(^^)
ほんわかした空気感、感じて貰えたならすごく嬉しいな!
読んでくれてありがとうございます。
ここからはストーリーも本筋へ進んでいきまして、ほんわかの中にもっとドキドキ感を出せたらいいな〜と思っています。
お互い頑張りながら楽しみましょうねー。
えみりあさんのお話も、続き楽しみにしてますからね。
- 第12章 『魔女の棲む山』 〜入口、発見〜 ( No.74 )
- 日時: 2015/09/24 21:11
- 名前: 詩織 (ID: z6zuk1Ot)
第12章 『魔女の棲む山』〜入口、発見〜
そこにあったのは、暗い、洞窟のような入口だった。
木々の生い茂る森を抜け、山のふもとまでやって来た2人はしばらく辺りを探索し、その『入口』を発見した。
木々の伸ばした蔓に遮られ、ぱっと見には気づかないような場所だったが、そこはラヴィンの経験値がものを言い、案外楽に見つけることができたのだ。
『入口』は、ラヴィンの背丈くらいの高さだから、シルファが入るには少しかがまないといけなさそうだ。
横幅は割と大きく、2人でも充分行けそうに見える。
「洞窟・・かな?」
真っ暗で見えないその先を覗き込むように、呟くラヴィン。
表面に手を置くと、ごつごつした岩肌が触れた。
「いや、これはノエルさんの言ってた・・」
同じく入口の先に続く暗闇を見つめながら、シルファが言った。
「昔の坑道かな?ほら、昔は鉱山だったって。この辺りが採掘場だったのかな。」
そう言うと、ふっと息を吐き何か小さく呟いた。
「えっ!?」
ラヴィンが驚いた声を上げる。
突然、暗闇だった洞窟内に、ポッと明かりが灯った。
と思ったら、明かりはポン、ポンと分裂し、ひとつがふたつ、ふたつがよっつ。
まるで街灯のように、洞窟の中をほんのりと照らした。
唖然として見ているラヴィンに、シルファが声をかける。
「光の魔法。一定時間内ならこうして明るくできるよ。」
そう言いながら、一歩、内部へと足を踏み入れる。
「やっぱり・・。これ、ずっと奥まで続いてるよ。中はどうなってるんだろう。」
入口から奥を覗くと、洞窟のように見えたそれは、ところどころ木材のようなもので補強されていた。
やはり自然の洞窟ではなく、人工的に造られた坑道の跡のようだ。
朽ちかけた木材の様子から、流れた年月が伺える。
少しかがんだ姿勢のまま、シルファはそっと目を閉じた。
ゆっくりと深呼吸をすると、意識を集中させる。
しばらくの間そうしていて。
「———魔法の気配は特に感じないな。」
言いながら、静かに目を開けた。
そして、まだぽけーっと魔法の明かりに魅入っているラヴィンが返事をしないことに気がついて、苦笑しながら振り返る。
「魔法、見慣れてないもんね。」
コクコク、と頷くラヴィン。
光の魔法は1度だけ、シルファに見せてもらったことがある。
シルファが何か唱えて手を振ると、何もない空間に赤や黄色やピンクの色とりどりの光りがシャワーのように降り注ぎ、美しい模様を描いてクルクルと回転しながら、再び空中に溶けて消えていった。
その時、魔法を生まれて初めて目にしたラヴィンは大層感激して、大きな歓声を上げたのだった。
あの感動と興奮は今も忘れない。
「だって、うちの町に魔法使いなんていなかったし。
旅をしてても、滅多に会ったことなかったしさ。
初めて魔法使いの友達が出来たけど、用もないのにやたらと見せてってせがむのは、なんだか気が引けたんだもの。ほんとは何回だって見たいけど。」
ラヴィンの言葉に、シルファは笑った。
「なんだ、言ってくれたらいつでも見せたのに。でもこれだけ明るかったら、怖いのも少しは平気になるかな?」
シルファのはにかむような言葉に、ラヴィンの顔に一気に笑みが浮かんだ。
「うん!すごいすごい!何回見てもすごいよ!きれーい!!」
瞳をキラキラさせながら、ぴょんぴょんと飛び跳ねるような仕草をして見せる。
初歩の初歩である簡単な光魔法だったのだが、ここまで感動されるとなんだかこそばゆい。
シルファは照れたように頭を掻いた。
「あ!ねぇ、せっかくだからあの奥の光のところまで行ってみようよ!」
照れるシルファを置いたまま、ラヴィンはさくさくと坑道を歩き始める。
「あ、待ってラヴィン、僕も行くって。」
シルファは慌てて追いかける。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・
「うわー。まだまだ続いてるねぇ。」
「ホントだ。もし坑道なら、きっと奥まで続いてるだろうな。」
ラヴィンの後ろから、少し屈んだシルファが顔を覗かせる。
魔法の明かりに照らされたところまでやってきた2人は、そこから更に奥を覗き込んでいた。
光りが届かない先は、相変わらず真っ暗で、こころなし空気がひんやりとしている。
照らされた場所が明るい分、その先の暗闇がなんだか不気味に映った。
音もない、静かな闇だけが延々と続いている。
「・・どうする?」
後ろのシルファを斜めに見上げながら、ラヴィンが聞いた。
「うーん。とりあえず、今日はここまでかな。」
村の外れからここまでやって来て、探索しながらこの入口を見つけた時点で、もう夕暮れ時刻が近づきつつあった。
「ジェンたちが心配するといけないし・・。この先はまた明日にしよう。本格的な探索なら、もう少し準備もいるし。」
「うん。そだね。」
ラヴィンも同意し、2人は来た道を戻って外へでる。
日暮れまでの時間を気にしながら、足早にその場を後にした。
が、結局。
2人はジェンとの約束である日暮れ前までに、村に帰ることはできなかったのである。
なぜなら・・。
「・・シルファ。」
「うん。」
森の中を歩きながら、前を向いたままの姿勢を崩さず。
小さく呼んだラヴィンに、シルファは短く答えた。
同じく、視線は前方に向けたまま。
——— 先ほどから感じる気配。
姿は見えないが、2人を取り囲むように、後方からついて来ている。
(1、2、3・・4・・5、6、7・・)
「8人?」
「・・さすがラヴィン。」
動きは変えないまま、ふっと笑う気配。
「どうする?こっちが気づいてることはバレてないと思うけど。」
「このまま村に連れてくわけにもいかないしな。この辺でやっちゃおう。」
「りょーかいっ。」
ラヴィンの返事を合図に、2人は足を止めると素早く振り返った。
瞬間的に構えの姿勢を取る。
自分たちを囲む気配に合わせ、やや背中合わせになった。
「僕たちに何か用ですか。」
低く抑えた声に、茂みががさりと音を立てた。
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