ダーク・ファンタジー小説
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- 人食い病(ゾンビもの)
- 日時: 2016/09/13 14:25
- 名前: 斎藤メロン (ID: k7pNoPCO)
はじめまして、メロンです。
ゾンビもの投稿します。グロ描写などがあるので、苦手な方はご遠慮くださいね。
あ、ちなみに作品に登場する地域、団体名等はすべてフィクションであり、現実に存在しません!
——————プロローグ——————
北海道某所。大晦日の前々日私たちは実家で年を越そうとある町に向かっていた。
周りを山々に囲まれた町の名前は「布浸町」(ふしみちょう)。人口2万人、高齢者はその20%を占めている錆びれた町である。
夫の実家である布浸に行く旅路、彼女は不機嫌だった。
都会生まれの彼女にとって田舎へ向かうことは苦痛でしかなかったのだ。
そしてもうひとつ…。
彼女は何か嫌な予感をしていた。
彼女の名前は小田真由美(おだまゆみ)。本作の主人公である。
>>1
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.159 )
- 日時: 2016/05/22 11:41
- 名前: 斉藤メロン (ID: LLmHEHg2)
真由美は福井の声に飛び出した。
しかし、差し伸べられた福井の手を掴むことは出来ず、真由美は二階の窓に激突。
そのまま窓を壊し、屋内に転がり込む。
真由美の体を室内の中央に置かれている学習机が受け止める。
そして、それとほぼ同時に奴等も真由美のすぐ横に転がり込んでいた。
床には鉄パイプが転がっている。
真由美はすぐにそれを掴み、起き上がろうとしている怪物の顎にそれをお見舞いする。
顎を砕かれた怪物はこの場に再び倒れる。
断末魔を上げる間もなく、真由美は奴等の頭を原型が留まらないくらい何度も叩いた。
福井達が屋上から二階に降りたときには、折れ曲がった鉄パイプと返り血の女性、そして頭部のグチャグチャな死体だけが残されていた。
「ごめんなさい…僕怖くて…。」
マルの声に放心状態のまま、何度も頷く。
福井が近づき、肩を叩く。
「お疲れさまです。よくやってくれた。…さぁゆっくりしてられない。すぐにバスに乗るんだ。手当てはバスの中でします。」
真由美は返り血を服で拭うと、鉄パイプを捨て先に降りた福井達の後を追う。
外に出ると、バスの入り口から速水が手招きをしている。
「おーい、早くしてくださーい。」
小走りでバスに乗り込むと速水に「すごい怪我ですね。」と言われる。
いままで気づかなかったが、そう言われた瞬間から身体中から痛みが沸き上がってきた。
全身腫れ物のようにどこに触れても痛い。
真由美は我慢しながらバスの真ん中の辺りの席に座る。
「それじゃあ、行きますよ。」
速水がバスを発車させる。
車で作ったバリケードを少々強引に突破し、消防署に群がる奴等の横をすり抜けた。
一段落…。
真由美は目をつぶり、頭を座席シートに押し付ける。
「彼らが、無線で話した男たちか。」
福井が話しかけてきた。バスの一番後ろに座るマルとショウマを指差している。
「そうよ。マルくんの両親はスキー場に向かったらしいわ。ショウマくんはスキー場から逃げてきたらしいの。」
「逃げてきた?もう奴等の手に落ちたということですか?」
「それがちがうみたいなのよ。」
真由美はショウマに聞いたことをそのまま福井に話した。
「そのあとショウマくんはマルくんの両親に保護されて、真実を確かめにマルくんの両親はスキー場に向かったと言うことみたい。」
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.160 )
- 日時: 2016/07/20 15:14
- 名前: 斉藤メロン (ID: Ku3ByRAK)
大方の話を聞いた福井が顎にてを当てる。
「まぁ、どのみちスキー場に向かうことは違わないようだな。」
「そう…。きっとそこに弘美はいる。」
真由美はバスの中からスキー場のある方向を見つめた。
「あの…あなたたち。」
話に割って入ってきたのは、先ほど福井と速水が命を救った女性だった。
「あなたは、話ぶりから小田さんの家に嫁いだ真由美さんで間違いないのよね?」
その女性は真由美にそう問いかける。
真由美は黙って頷いた。
「そう…。まず娘さんの事、同じ崇教者として謝罪するわ。申し訳なかったわね。」
「いえ、貴方が謝ることはないですよ。悪いのはこの件で娘を生け贄にしようとしている首謀者ですから。」
「その事なんだけれどね。あなたたちの推測どうり、言い伝えに則って理憫会は小田家の血筋を生け贄に捧げるはず。…でもなぜかしら。…何故、貴方の旦那さん小田弘樹さんのお父さん…ではなく、弘樹さんの愛娘である弘美さんが生け贄に選ばれたのでしょう…。」
確かにそうである、小田家の血筋を生け贄にしなければならないなら、弘美ではなく、むしろ理憫会の現代表が選ばれるはずなのだ。
しかし、その問いに間髪いれずに福井が答える。
「それはおおよそ、見当がついている。というか、そうとしか考えられない。…おそらく理憫会代表、小田勝久はすでに死んでいるのだろう。」
「でも、それなら尚更おかしいわよ。それだと自分達の息子が次の生け贄に選ばれるはずよ。それを飛ばして孫にいくなんて…。」
「それはあれだろう。すでに小田弘樹も死んでいるから代替えが起こっただけだろう。真由美さんの愛娘をさらった過激派の二人組にもその事を話したと言っていたしな。」
「えぇ、知らなかったから…。」
真由美はあのときの事を思い出していた。
ただ、車を走らせて夫の故郷に向かっていたはずなのに…。最後の会話はたわいもないことでの喧嘩だった。
真由美は周りが見てとれるほど落ち込んでいた。
その時運転中の速水が話に加わる。
「確かにおかしいですね。小田家の息子さんは確か二人いましたよね?弘樹さんの兄上に当たる、小田晴彦って人が。確か、生まれつき片目に障害があって、眼帯をしているとか…。」
福井は再び、顎にてを当てる。
「貴方、理憫会の言い伝えにはこのような災害があったときの生け贄は血筋なら誰でもいいと記されているのか?」
聞かれた女性は、少し慌てて
「ええ、確かに必ず誰でなければならないという明確な記述はないわ。」
福井は次にショウマに問いかける。
「そこの少年。君がスキー場にいた時、理憫会を仕切っていた人間は眼帯をしていなかったか?」
突然の質問にショウマは少し戸惑ったが、少し考えて「うん、確かしていた。」と答える。
現代表の小田勝久が今回の災害で死亡、次の代表に長兄である、晴彦が着任し、自分の命かわいさに生け贄を自分の弟に押し付けた。
こんなところだろうと福井は語った。
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.161 )
- 日時: 2016/07/24 03:51
- 名前: 斉藤メロン (ID: y3VadgKj)
福井は続けて「そして、弟の死とともに次の標的がその血筋である孫に移った。」と言う。
その推理を聞いたその場の全員がおそらくそうだろうと頷いたが、マルだけは外の景色を眺めて、興味がない様子だった。
そんな話をしている間に、もうスキー場はすぐそこまで来ていた。
ショウマがマルに問いかける。
「見えてきたぞほら。」
指を指した方向には小高く佇むスキー場があった。
マルは、ショウマの指の先を見たが、特に興味がなさそうだった。
しかし、ふとマルが目線を下げると、そこに見たものに愕然としてこうつぶやいた。
「母さんだ。」
「え?お前なんて?」
マルは次の瞬間、会話をしていた、福井や真由美を押し分けて運転席まで素早く向かった。そして
「止めて!母さんがあそこにいる!」
速水にすごい剣幕で、マルは迫った。
マルの見ている方向には確かに女性が歩いていたが、その風貌は明らかにおかしかった。
誰がみても明らかだった。
マルの母親はすでに死んで甦った後だった。
「ダメだよ。お母さんすでに君の知ってるお母さんじゃなくなってる!このまま通りすぎるよ!」
速水は咄嗟の事に言葉を選ばすにそう言い放つ。
しかし、それがいけなかった。
逆上したマルは、バスのハンドルを握ると、勢いよく右に切った。
それと同時に、バスが右に傾き、道路のワキに止まっていた廃車に乗り上げ大きく横転する。
バスは、スキー場を目と鼻の先を目した所で、再び足踏み状態になったのである。
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.162 )
- 日時: 2016/07/27 21:57
- 名前: 斉藤メロン (ID: axyUFRPa)
横たわったバスの中で、真由美たちもまた倒れこんでいた。
それほど、時間がたたずにその中の全員が体を起こす。
体の痛みはそれほど無かったが、見ている視界が真横になっているため
すぐに動くことが出来なかった。
福井が一足早く動きだし、皆に声をかける。
「おい、早く出るぞ!奴等が集まってくる。」
そんな言葉に囃し立てられて、全員がバスの外に急いで出ると、外には既に
傷だらけで歩くマルの姿があった。
その先には、マルの母親がいた。否、もうあれはすでにマルの母親ではない。
至るところ食いちぎられたであろう傷跡、生気の感じられない瞳、そして口元には誰かの返り血であろう
レバーのような赤々とした血肉がこびりついている。
マルの母親はすでに奴等へと変貌していたのだ。
それでもマルは足早に母親の元に駆け寄る。
それと同時にマルの母親だったその怪物もまた歩みが早まった。
マルは「おかあさん!」と母親の胸に飛び込もうとしたその時。
マルはその怪物に拳で思い切り殴られた。
まるで人間の力ではなかった、その一撃でマルは真横に飛ばされ建物の壁に衝突して倒れこむ。
しかし、それでも母親はその拳を止めることなく、倒れたマルに何度も何度も拳を振るった。
遠くからでも、マルの顔が変形していくのが分かる。
そして、マルも動かなくなった頃合いをみて、その怪物はマルの首筋にゆっくりと歯を立てた。
それを皮切りに周囲にぽつりぽつりといた奴らも集まってきて、次第にマルの姿が奴らの体で見えなくなった。
その他の者たちはその光景を目の当たりにして、絶句する。
真由美は特にその光景に戦慄した。
もしも、私が奴らと同じになったら………。
真由美は自分が弘美を襲う姿を今の光景に照らし合わせていたのだ。
今まで、真由美は自分が奴等と同じ存在になるなど考えた事はなかった。
しかし、やつらになってしまったら…私もマルの母親と同じように弘美を襲うのだろうか…。
想像しただけで恐怖で背筋が凍った。
「気をとられているうちに行くぞ。」
小声でそう言ったのは、福井だった。
福井は真由美の肩を叩き、親指でスキー場を指差した。
静かに向かうぞの意味。
真由美は小さくうなずき、すぐに気を取り直して、その場を後にする。
バスと言う鋼鉄の要塞を無くした5人は、体を屈めながら小走りでスキー場に向かう。
バスからある程度離れた所で福井が「スキー場までは後少しだ。注意しながら進むぞ。私と速水が先頭に立つ。三人は後ろや横から奴等が来ないか見張っていてください。」と言った。
五人が進むそこは、もう建物などほとんどない山道だった。
町の中よりも格段に奴らの数は少ないが、油断はできない。
それぞれは周囲に注意を向けながら、雪の積もった道路を進む。
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.163 )
- 日時: 2016/08/30 11:48
- 名前: 斉藤メロン (ID: L3izesA2)
バスから離れ、遠くを見渡せる平雪地帯に入った。
やつらが回りにいる様子はない。
福井は「一応警戒しながら進むぞ。」と言い放つ。
とりあえずひと安心。
しかし、不安なことはそれだけではない。
除雪のされていない足場は進めば進むほど足に毛玉のように絡まっていく。
まるで一歩踏み入れる度に誰かに足を引っ張られるような、
そんな感覚に一行は襲われていた。
ショウマは先程の光景が信じられないのか、受け入れていないのか、あっという間の出来事に
目を大きくしながらも無表情に道を進む。
彼だけじゃない、その場にいる全員が心身ともに疲弊していた。
真由美の脳裏にもさきほどの光景が焼き付いて離れなかった。
そこへ、女性が真由美の横にならんで歩幅を合わせてきた。
真由美もそれに気づき女性の方を向く。
女性は息を切らしながらも真由美に笑顔を見せた。
名前が思い出せない。
真由美が第一声に困っていると、女性の方から話しかけてくる。
「神田よ。神田裕子。自己紹介してなかったわよね。大丈夫?」
そう聞かれた真由美はありきたりに返した。
「あなたの娘さんは弘美ちゃんだったわね。どんな子なの?貴方に似てるのかしら?」
真由美はふいに微笑しながらも「いえ、性格も顔も父親にですよ。」と返した。
それを神田は「そう」と微笑みながら聞いている。
「生まれたときは、難産で分娩室に入ってからも数時間も出てこなかったんです。でも、あの子が生まれて、初めて抱いたとき。この子は私が死んでも守らなきゃって思ったんです。でも…。」
マルが母親に殺された光景を見て、不安になった。とは、言えなかった。
言ってしまえば、弘美を守れなかったときの言い訳になる。それが許せなかった。
真由美はぎゅっと拳を握り、眉をしかめた。
すると、今まで黙って話を聞いていた神田がそっと、真由美の拳に手を当てる。
「女はね。強い生き物なのよ。じゃなきゃ、子供なんて生めないし、育てられないわ。…貴方もそう、とっても強いひとだわね。だから、諦めちゃダメ。死んでも守るんでしょ?だったら死ぬ前から諦めちゃダメよ。どんなことが起きても、どんなものを見ても、諦めないで信じるの。きっとその思いは弘美ちゃんにも届くわ。」
神田はまるで真由美の気持ちを全て察しているようだった。
そして、真由美が一番元気のもらえる言葉をかけているようにも感じた。
現に、真由美は確かに彼女の言葉に励まされたのである。
真由美は神田に「ありがとう。神田さん」と言う。
「いいのよ。それと私の事は、裕子でいいわ。…さて、あなたは元気になったみたいだし、ショウマくんとも話さなきゃね。」
そういうと神田はショウマの元にかけよっていく。
それを横目でみていた福井が、ゆっくりと真由美に近づき耳打ちする。
「どうしました?なにか言われたのか?」
「いいえ、ただ、励まされたの。私バカみたい…勝手に悪い人だと思っていたんだから。」
真由美は「それとね…。」と言い、福井にある言葉を呟いた。
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