ダーク・ファンタジー小説
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- 人食い病(ゾンビもの)
- 日時: 2016/09/13 14:25
- 名前: 斎藤メロン (ID: k7pNoPCO)
はじめまして、メロンです。
ゾンビもの投稿します。グロ描写などがあるので、苦手な方はご遠慮くださいね。
あ、ちなみに作品に登場する地域、団体名等はすべてフィクションであり、現実に存在しません!
——————プロローグ——————
北海道某所。大晦日の前々日私たちは実家で年を越そうとある町に向かっていた。
周りを山々に囲まれた町の名前は「布浸町」(ふしみちょう)。人口2万人、高齢者はその20%を占めている錆びれた町である。
夫の実家である布浸に行く旅路、彼女は不機嫌だった。
都会生まれの彼女にとって田舎へ向かうことは苦痛でしかなかったのだ。
そしてもうひとつ…。
彼女は何か嫌な予感をしていた。
彼女の名前は小田真由美(おだまゆみ)。本作の主人公である。
>>1
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.1 )
- 日時: 2012/10/05 10:07
- 名前: 斎藤メロン (ID: .lMBQHMC)
冬真っ只中、ラジオでは大きな吹雪がやってくると流れている。天気予報は当てにならないと思っていた彼女だったが、その考えを今日改めた。
視界ゼロの猛吹雪の中真由美の乗ったワゴン車は布浸町を目的地に進む。
「おい、怒ってるのか?」
夫の幸弘(ゆきひろ)が真由美にそう尋ねる。
「そんなことないわよ。私はこんな真夜中に猛吹雪の中、コンビニなんてものがない、自然豊かな町に向かい車を走らせてる今を結構気に入ってるわ。」
「説明どうも。…なぁ、機嫌直せよ。お袋たちは年に一回の孫にあえる機会を楽しみに待ってるんだぜ。我慢してくれよ。」
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.2 )
- 日時: 2012/03/29 22:43
- 名前: 斉藤メロン (ID: .lMBQHMC)
後部座席には、すやすやと眠っている愛娘、弘美がいる。
真由美は彼女の方を一瞬みるとため息をついて、幸弘に「わかってるわ。」と言った。
その後、車内に沈黙が続いた。たまらず幸弘はラジオを流す。
ラジオからは80年代にヒットしたであろうムーディ歌謡曲が虚しく流れるだけだった。
ふと、真由美は窓の外を見る。
吹雪でよく見えなかったが、微かに人影のようなものを通り過ぎたような気がした。
「ねぇ、今の見た?」ふと、真由美は質問する。
「え、何が?」
「ヒトがいた。」
真由美の言葉に、幸弘は苦笑する。
「ふふっ、いくらなんでもそれは盛りすぎだろ。」
「本当に見たのよ!あれは、ヒトだった。」
「ああ、それならさっき俺も隕石が落ちてくるのを見たよ。吹雪よく見えなかったけど。」
幸弘が笑いながらそう言うと、真由美は彼をにらんだ。
「ふざけないで。」
「先にふざけたのはそっちだろ!」
「私はふざけてない!」
二人はにらみ合うが、すぐに真由美が視線を反らす。
「わかったわよ。見間違いかも…。こんな吹雪だし。」
そういって、正面に顔を向ける。
「ちょ、ちょっと人よ!」
「え?」そういって、幸弘が前を向くと数メートル先に人が踞っているのが見えた。
すぐに幸弘は急ブレーキを踏む。
車はギリギリぶつかる手前で停車した。
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.3 )
- 日時: 2012/03/31 11:35
- 名前: 斉藤メロン (ID: KVjZMmLu)
体か前に押し出されるが、シートベルトが真由美を支える。
車に置いてあった芳香剤がドタドタと足元に落ちると同時に車は停車した。
しばらく二人は口を開けなかった。
目の前には人がやはり踞っている。
黒いコートを来た短髪の男性がライトに照らされてはっきりと見えた。
男は微かにだが、体を揺らせていた。
生きている。車は当たっていない。それを確信すると幸弘はやっと口を開く。
「あ、あぶなかったー。」
幸弘は冷や汗を拭う。
なぜこんなところに?しかも吹雪の中で。真由美の頭の中に色々疑問が浮かぶ
。
よく見ると、口から血を流している、地面にも血がしたたり落ちている。
それを見た瞬間、そんな疑問がどーでも良くなり、車から飛び出そうとする。
「おい、どこにいく!?」
幸弘が真由美の腕をつかむ。
「血を流してる!怪我人かも!」そういうと幸弘の手を振りほどき真由美が車から降りる。
「おい!待てって!」
「パパー、どーしたの?」
弘美がタイミング悪く起きてきたらしい。
「ここに居なさい。」
それだけ言うと、幸弘も車から降りる。
「パパ?」
外はかなりの吹雪で、雪の粒が顔に当たる度に瞬きをする。
いくと真由美は男の前に立ち止まっている。
すぐに真由美に近づき「下がれ。」と幸弘の体の後ろにやる。
「なんだか様子が変よ。返答はないし、うなってるだけ。長時間吹雪の中に居て凍傷になってるわ。早く町に連れていかないと。」
「下がってろ。」
幸弘は男に近ずき、背中をさすりながら声をかける。
「大丈夫か?あんた凍傷に掛かってるようだがもう大丈夫。俺の車で今から病院に運ぶから。町までは目と鼻の先だからすぐだから安心しろ。立てるか?ん?」
後ろでその様子を見ていた真由美は男の姿に疑問を持っていた。
こんな吹雪の中、手袋も帽子も被っていない。
ふと、周りに耳を傾けると、吹雪の音に紛れて動物のうめき声のようなものがそこら中から聞こえる。
「おい、真由美!車の扉を開けてくれ!この人乗せるぞ。」
「わかった。」
急いで真由美は車に向かい、後部座席の扉を開ける。
扉を開けると目の前には愛娘の弘美がいた。
「ママどーしたの?」
「こっちにおいで。」
真由美は弘美を抱えると助手席の扉を開け「ここでおとなしくしてて」と言う。
幸弘は男を担ぐとゆっくりと車に近づいてくる。その様子を真由美はずっと見ていた。
すると、男の首が微かに動き、真由美と男は眼があった。
深い黒目に充血した眼球。真由美はその瞬間、恐怖に借られた。
男の目は人のそれとは違うように見えた。
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.4 )
- 日時: 2012/04/14 17:10
- 名前: 斉藤メロン (ID: YNBvTGT8)
「幸弘!」
何故か真由美は叫んでいた。
自分でも理由は分からないが、そうしなければいけない気がした。
「えっ?」
幸弘が真由美を見上げる。それと同時に担いだ男は幸弘にぐりんと顔の向きを代えた。
真由美は悪寒を覚え、幸弘の元へ走る。
悪い予感は的中した。
男は幸弘の耳に噛みついた。
「ぎゃああー。」
幸弘の断末魔が吹雪の中に響き渡る。幸弘はその場に崩れ落ちた。
とっさに真由美は男を掴み引き剥がそうとするが、びくともしない。
「この!」
真由美は男の顔の部分に回り込むと、男の顔を蹴りあげた。
蹴りあげた時の感触が足に残る。初めて人を蹴ったのだ。
蹴りあげられた男は、痛がる事もなく幸弘の耳に噛みついて離れない。
真由美は何度も蹴り入れるが、その度に幸弘の耳から肉がちぎれる音がし、叫ぶ。
真由美は車の中にバールがあった事を思い出した。
すぐに車に戻り、荷台を開ける。
荷台に無造作に置かれているバールを手に取り、また幸弘の所へ戻る。
走るいきおいでバールを振りかざし、思い切り顔にぶつけた。
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.5 )
- 日時: 2012/04/14 20:29
- 名前: 斉藤メロン (ID: 9yNBfouf)
見事バールは男の顔にクリーンヒットし、幸弘から離れる。
「ぐわぁぁ。」
崩れ落ちた幸弘をすぐさま抱える。耳もとを押さえる幸弘の手の隙間から血が流れ落ちる。
幸弘を抱える真由美はふと男を見る。男は不運にも車の方向に倒れたのだ。
いく手には口にちぎれた耳を抱える男がすでに立ち上がり、こちらを睨んでいた。鼻は潰れ、片眼は飛び出している。
男の目は真っ直ぐにこちらを睨み、今にも襲い掛かってくる様だった。
真由美は死すら覚悟した。
しかし、その瞬間車が開く音がし、弘美が車から降りてきた。
「ねーどうしたの?」
その瞬間、真由美の全身が熱くなり、一瞬で汗が流れる感覚にかられる。
男は弘美の声に気付き、振り向こうとする。
このままでは弘美が!
「逃げて!」真由美は全力で弘美にそう言う。
しかし、弘美は状況を飲み込めず立ち止まったままだった。
男は体を弘美に向け、威嚇の咆哮をあげる。
もうだめだ。そう真由美が思った瞬間、抱えられていた幸弘が飛び出す。
幸弘は男に体当たりすると、その場に一緒に倒れた。
幸弘はもがく男を必死に押さえる。
「真由美!早く行け!車だせ!」
「幸弘!」
「早く!俺はなんとかなる!弘美を連れて逃げろ!」
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