ダーク・ファンタジー小説
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- 人食い病(ゾンビもの)
- 日時: 2016/09/13 14:25
- 名前: 斎藤メロン (ID: k7pNoPCO)
はじめまして、メロンです。
ゾンビもの投稿します。グロ描写などがあるので、苦手な方はご遠慮くださいね。
あ、ちなみに作品に登場する地域、団体名等はすべてフィクションであり、現実に存在しません!
——————プロローグ——————
北海道某所。大晦日の前々日私たちは実家で年を越そうとある町に向かっていた。
周りを山々に囲まれた町の名前は「布浸町」(ふしみちょう)。人口2万人、高齢者はその20%を占めている錆びれた町である。
夫の実家である布浸に行く旅路、彼女は不機嫌だった。
都会生まれの彼女にとって田舎へ向かうことは苦痛でしかなかったのだ。
そしてもうひとつ…。
彼女は何か嫌な予感をしていた。
彼女の名前は小田真由美(おだまゆみ)。本作の主人公である。
>>1
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.153 )
- 日時: 2016/03/20 01:59
- 名前: 斉藤メロン (ID: AdHCgzqg)
ショウマはしばらく考えて、
「それって結構危険じゃない?しかも、奴等が銃だけの音で集まってくるかな?」
ショウマは疑問を色々と投げ掛ける。
「もちろん、色々とリスクはある。失敗するかもしれない。でも、私はやらなきゃならないの。」
ショウマの疑問はまだぬぐえていない顔をしている。
その時、マルが小さな声でつぶやく。
「消防署のサイレン。」
ショウマと真由美が同時にマルを見る。
「消防署のサイレンを使えば確実にやつらはそこに集まる。家のすぐ斜め迎えに消防署がある。ここから約100メートルくらい。」
「そ、そうだよ!おねえさん!それなら奴等も確実に集められる。」
「確かに…それなら行けるかもしれないわね。」
「サイレンの制御盤はどこにあるか分からないけど、どこかにスイッチがあるはず。」
真由美は息を飲む。
「よし、わかったわ。サイレンの制御盤を探せばいいのね。」
真由美はトランシーバーに連絡する。
「作戦変更、消防署のサイレンを鳴らすわ。」
そのあと真由美はショウマに「いい、私がサイレンを鳴らしたらすぐにこの家まで走る。家の前まで来たら扉は開けっぱなしにして急いで二階の窓から屋上に。隣の屋根に繋がってる板がかかってるからそれをつたって隣の家に移りなさい。わかったわね。」
ショウマは黙ってうなづいた。
真由美がマルを見つめる。彼は無気力に三角座りをしている。
「いい?ショウマくん。マルくんを守りなさい。必ず、一人で逃げたらダメよ。それと…私が消防署から出てこなかったり、途中で襲われたら迷わず5建先まで行ってバスに乗せてもらいなさい。」
「わかった。一人では逃げないよ。」
「あなたならできるわ。…さて、いきますか。」
そういうと真由美は一回に降りて行く。
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.155 )
- 日時: 2016/04/12 18:23
- 名前: 斉藤メロン (ID: LLmHEHg2)
一階に降りた。
今は雑然としており、やつらの呻き声と風の音が外から漏れていた。
板で打ち付けられた窓から外のようすを伺う。
周りに奴等が居ないことを確認すると、真由美は胸をぎゅっと握りしめる。
一呼吸置くと、真由美は一気の扉から飛び出した。
全速力で、消防署だけを、その一点だけを見つめがむしゃらに走った。
横目で微かに奴等の姿が見える。
「私を見ている…!」
真由美は走りながらゾッとした。
しかし、今はなりふり構っていられない。
今は一点のことだけに集中する事だけを考え、消防署に走った。
消防署の壁に触れると、すぐに後ろを振り返る。
奴等の気配はなく、姿も見えない。
気のせいだったか…。そう思うと、真由美は息を整え、すぐに入れる場所を探した。
走っている途中で、消防車が納車されている大きめなシャッターが全て空いていたが、あれはダメだ。
奴等がそこから侵入いる可能性が高い。鉢合わせになれば、まず助かる見込みはない。
違うルートはないか、辺りを見回す。
すぐ脇に目をやると、ある一室のガラスが割られている。
奴等が入ったのか、補強もされていないところを見ると、早くに奴等に襲撃されたか、放棄したかのどちらかだろう。
どちらにせよ、用心に越した事はない。
真由美はゆっくりと、しかし、足早に割れた窓に近づく。
喫煙室だろうか、特になにもない個室のど真ん中に灰皿が二つ置いてあるだけの部屋だった。
喫煙室の扉は半開きになっており、奥には事務所のような開けたフロアがある。
真由美はガラスで手を傷つけないように、喫煙室にまず入った。
銃を構え、ゆっくりと扉に近づく。
真由美の場所からは奴等の姿は見えない。
しかし、微かだか奴等の気配はある…。
事務所にゆっくりと入ると、横の男子トイレに気配を感じた。
ドアの下から微かに光が漏れており、一瞬何かが、通りすぎた。
怪物がいる…!
死臭、そして微弱だが聞こえる奴等の漏らす声。すぐにトイレの中にいるのがやつらだとわかった。
何度体験しても慣れない、奴等と遭遇した時の緊張と恐怖が真由美を襲った。
呼吸が早くなっている。それに真由美自身も気付き、静かにゆっくりと呼吸することを意識した。
まだ、奴にはバレていない。今やることは、サイレンを鳴らすこと。
トイレから視界を外し、事務所内を探索する。
「何処かに絶対あるはず…。操作盤、操作盤。」
事務所の壁に何か取りつけてある。
近づいて見てみるとサイレン制御盤と書いてある。
「あった!」
真由美はすぐに制御盤を開き、手当たり次第にすべてのボタンを押した。
一気に赤いベルが音を鳴らせ、サイレンも響き渡る。
「成功した。」
真由美はすぐにもと来た道を引き返した。
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.156 )
- 日時: 2016/04/23 05:27
- 名前: 斉藤メロン (ID: LLmHEHg2)
真由美は喫煙室の窓から戻ろうと扉を開ける。
その奥には喫煙室の窓から入り込んで来ようとする奴等が二体いた。
顔にひどく傷のおった女性と、そのすぐ後から腹から腸がこぼれ落ちている男性の成れの果て。
真由美は奴等と目があってしまった。
奴等が真由美の存在を認識し、歓喜とも怒りとも取れる雄叫びが上げる。
それとほぼ同時に真由美は喫煙室の扉を勢いよく閉める。
「やばい。やっぱり尾行られていたんだ。」
すぐに扉を叩く音が聞こえる。
この調子だと、すぐに扉は破られてしまうだろう。
違うルートを必死に模索する、真由美に更なる試練が待ち受ける。
トイレの中にいた怪物もベルの音に触発されてトイレから飛び出してくる。
消防隊員の制服を着た男性、生前彼はこの消防署に勤めていたのだろう。
がむしゃらに突進してくる消防隊員に真由美は銃口を向け、発砲する。
弾は、男性の肩に命中し、その反動で後ろによろめくが、絶命したわけではなかった。
すぐに立ち上がり、再び真由美に向かってこようとする。
真由美は仕留めること止め、消防内の階段に向かって走る。
後ろから奴等の向かってくる音がするが、真由美は振り返らなかった。
「必ず、出動用のポールがあるはず。」
二階にかけあがると、渡り廊下が長く続いていた。
廊下にはロッカーが並んでおり、向かえには一階の消防車格納庫に続くポールがある。
「あれだ!!」
真由美はそのポールに股がり、勢いよく下に降りる。
奴等も真由美を追って、ポールの穴に向かったが、捕まって降りる事が出来ず、そのまま落下するしかなかった。
真由美は無事に下に降り、そのまま開いた車庫から外に飛び出す。
前から来ている奴等とはまだ距離があり、真由美は背後を気にする余裕があった。
ポールから落下した奴等はまだ立ち上がろうしているところだった。中には足の骨を折り、骨がつき出ているものもいた。
あのようすなら捕まる事はない。真由美は家に向かって走る。
真由美はすぐに家に入ると、すでにマルとショウマの姿はなかった。
屋上から隣の建物に既に移っているのだろう。
真由美は二階にかけ上がる。
ほどなくして、奴等も室内になだれ込んできた。
一気に屋上にかけられた梯子を登ると、梯子を蹴飛ばし、二階に落とした。
蹴飛ばした後、下のようすを見るとすでに奴等は二階に埋め尽くされており、一様に真由美を見つめていた。
捕食者の目で真由美を見つめている。手を伸ばせば、届く距離で、すぐそばで。
その光景は、やはり何度見ても異様で、禍々しいものだった。きっと地獄かあるのならば、こんな感じなんだろう。
地獄の見学もそこそこに真由美はその場をあとにした。
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.157 )
- 日時: 2016/04/24 17:30
- 名前: 斉藤メロン (ID: LLmHEHg2)
隣の建物には既にショウマたちがいて、真由美を呼んでいる。
「おねえさんこっち!」
板はこちら側の建物にまだかかっていた。
真由美はできるだけ迅速に板をわたる。
渡りきると、ショウマが近づき「無事でよかった。おれも逃げなかった。」という。
「偉かったわね。」
真由美はショウマの頬を軽く叩くと、ショウマを通りすぎる。屋根の中心部には俯いているマルも立っていた。
「マル君も偉いわね。」
「……」
マルは相変わらず俯いてなにも言わなかった。
「おねえさん!奴等が。」
ショウマの声が聞こえ、身を翻すと二階から奴等が屋上に登ってきているのが見えた。
「くっ…!」
真由美はすぐに渡している板を取り上げ、後ろに続く建物に掛ける。
「マルくん!ショウマくん!先に行って。」
二人はすぐに隣にかけられた板を渡る。
ショウマ、マルの順番で橋を渡る。
高さこそあるが、下にいた奴等は消防署からの音に集まり、ほとんどが姿を消していた。
ショウマが無事に渡りきる、マルが板を這いながらそのあとに続いた。
「マルくん、ゆっくりね。」
真由美が怯えているマルを励ます。しかし、その言葉とは反して真由美は焦っていた。
もう既に背後の建物には奴等が何体も登っており、真由美たちを見つめながらうろうろと蠢いている。
もしかしたら、飛んでくるのではないか?
いや、でもそんな事はやつらに可能なのか?
真由美はそう問答するが、結局その答えは出ず。
一番不味い状況を想定するしかなかった。
マルがショウマの手に引かれて、やっと隣の建物に乗り移る。
そのあとも同じ要領で次々に建物から建物へ、屋根から屋根へと写っていく。
奴等は建物へ真由美たちが移り遠ざかって幾度に興奮したような声をあげるが、まだあの建物から動いていない様子だった。
次は最初の建物。福井と速水とで作戦をたてた建物だ。隣の建物には速水が待ち構えており「遅かったじゃないか」と言う。真由美はその声を聞いて安堵の笑みを浮かべる。
ショウマが渡りきり、今度はマルが渡る。
マルが板の中間地点に差し掛かったとき、ショウマが真由美の後方を指差した。
真由美が振り返ると奴等がぞろぞろと建物を飛び越え、近づいてきていた。
マルはその様子を見て明らかに動揺している様子だった。
「あぁぁ!いやだぁ!」
「落ち着けマル!まだカミツキは遠くにいる。ゆっくり渡るんだ。」
ショウマがなだめるが、マルは完全に怯えてきって釣り板の真ん中で動かなくなってしまった。
ショウマは決心する。
「福井さん。俺がマルを引っ張る。」
そういうとショウマは福井に抑えてもらいながら釣り板からマルに手を伸ばす。
「さぁ、マルもう少しだ。この手に捕まれ。」
「もう無理だよ!動けない!」
奴等は次々に飛び越え落ちなかった者が2体、もう隣の建物まで来ていた。
真由美はたまらず銃を構える。
「マルくん、勇気を出して。あなたならできるわ。」
「そうだ!もう少しだから…。さぁ手を。」
ショウマが言うと、マルはゆっくりと右手を伸ばす。
ショウマがマルの腕をつまむとほぼ同時に飛び写ろうとした奴等の一体を真由美が打ち落とす。
もう一体もすぐにでも飛びうつろうとしている様で真由美はすぐにそちらにも発砲するが…
銃は弾切れだった。引き金からはカチッカチッと間の抜けた音がする。
真由美は怪物を狙うのを止め、釣り板をわたろうと振り向く。
しかし、そこにはなんと釣り板が無くなっていた。
板は地面に落下し、雪の上に優しく着地した。
「ごめんおねえさん!マルを引っ張った時に誤って板を落としちゃった!!」
後ろでは奴等が飛び越えてきた着地音がする。
真由美は振り返らなくても分かった。
怪物がすぐ後ろにいることを…。
真由美に考えている暇は無かった。
「跳べ!!」
福井の声と同時に真由美は走りだし建物に向かってジャンプした。
- Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.158 )
- 日時: 2016/04/24 18:20
- 名前: 斉藤メロン (ID: LLmHEHg2)
奴等またはカミツキ…人間の成れの果て。奴等に知能はなく。有るのは人間に対する憎悪の念と食欲のみ。生きた人間を見つけるとその怪力と俊敏さで獲物を捕らえ捕食する。
奴等に噛みつかれた人間は激しい全身の痛み、高熱に襲われ、ほどなくして絶命。そののち奴等と同じ存在になる。奴等になったものは人間を襲い始める。
痛みを感じず、足は無くなるまで走り続け、腕は千切れるまで獲物を掴み、顎が吹き飛ぶまで人間を喰らう。
再起不能にさせるには脳を損傷させる事。それ以外な方法では殺せない。
腐敗や餓死により活動出来なくなるかについては今のところ不明。
脳組織の一部を除き、あらゆる器官が活動を停止しており、基本的欲求でのみ動く。
食欲はもちろんあるが、睡眠欲、性欲については不明。ただし、子孫を残すことは噛みつく事によって可能な為、必要としないのではないかと推測する。
眠ることはないが、一定の時間動かずに立ち尽くしている事が度々あり、ある種の非活動時間を設け無駄な労力を抑えていると考えられる。これは奴等にとっての睡眠ではないだろうか。
発生の原因…布浸町独特の風習である、カニバリズムに由来すると考えられる。脳組織内の異常たんぱく質を経口摂取することで体内に入り込んだ異常たんぱく質が何十年間と潜伏し、今回突然発症したものと推測する。
布浸町には、理憫会という宗教があり、町に住む人々のほとんどはそれに所属している。
理憫会の者には葬儀の最中、親族が弔いの為に故人の脳を摂取するという風習がある。
布浸村の伝説…その昔、村が大きな災害に襲われた。その時山から光指す天女が舞い降り、村人の髪の毛を何本か抜くと、それを息で吹き飛ばし災害を納めたという。その天女は村人に災害は再度起きたときの納め方と毎年年が変わるその夜にお供え物も伏見山に献上するように伝え、山に戻っていったという。それから布浸町では毎年大晦日の夜になると伏見山に上り、神社に身体の一部をお供えするという風習が出来た。
また、再度災害が起きたときは、神主および血縁関係となるものどちらかがその命をオオミノカミに献上することで災害が収まるとされている。
メモ
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