二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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  ドラゴンクエストⅨ_永遠の記憶を、空に捧ぐ。【移転完了】
日時: 2013/04/04 01:11
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: b43c/R/8)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=24342

※ (紙ほか)での更新は終了いたしました。
  (映像)で、『  永遠の記憶を、空に捧ぐ。__ドラゴンクエストⅨ』として更新を続けておりますので
  上記参照よりお越しくださいませ。




【 目次 】      >>512
【 重要なお知らせ 】 >>707




 漆千音です。元Chessです。祝・改名一周年((詳しくは >>496



 これは『ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人』の小説バージョンです。
バージョンですが現在おりじなるわーるど全開です。
ゲーム内で腑に落ちなかった点を自分なりに修正しているうちにややこしくなって
結果ゲーム以上に腑に落ちない点が出てきているかもしれず——小説書きの才能ください←

 過去に間違えて「まもりぶと」って書いちゃって「守り太」とかに変換された守られたくねぇ的な
考えをしたのは後世まで残してやろう。((黙


裏話      >>574
裏話そのに   >>601




【 ヒストリー 】

  2010
8/30 更新開始
9/30 参照100突破に喜ぶ
11/15 十露盤さん(当時MILKターボさん)、初コメありがとうございます((←
11/16 参照200突破に万歳する
12/7 参照300突破にガッツポーズする
12/13 ようやく返信100突破に浮かれる
12/14 『  ドラゴンクエスト_Original_ 漆黒の姫騎士』更新開始

  2011
1/23 パソコン変更、一時的にトリップ変更
1/27 参照600突破に調子に乗る
3/24 参照1000突破に踊る
3/25 返信300突破・サイドストーリー【 聖騎士 】
5/23 トリップを元に戻す
5/25 調子に乗って『小説図書館』に登録する
12/8 改名 chess→漆千音

 2012
2/10 返信500突破・サイドストーリー【 夢 】
8/11 teximaさん初コメありがとうです((←
8/30 小説大会2012夏・二次小説銀賞・サイドストーリー【 記憶 】
9/26 フレアさん初コメありがとうなのです((←
9/29 参照10000突破に転がって喜びを表現する
9/30 呪文一覧編集
10/1 目次編集。これで字数を500くらい減らしたぜ
    サイドストーリー【 僧侶 】
    時間についての説明をアップ >>639
10/7 スペース&ドットが再び全角で表示されるようになったぜ!! いえい←
10/8 サブサブタイトル変更。字数制限の影響でサブタイトルは省きましたorz
10/30 >>3 メイン登場人物に編集しました。ネタバレはなし。
   &過去の自分の超絶関係ない話を削除。返信数にずれが生じていますがあしからず。
11/4 >>676 『未世界』の説明を掲載。
11/7 四人の超綿密設定掲載。初3000字越え。
12/8 漆千音&十露盤さんのお父上HPB。改名してから一周年。
   「・・・」→「…」に変更。未だ時々間違える。
12/9 レヴェリーさん初コメありがたや((←
12/16 重要なお知らせ掲載。詳しくは >>707 へ。

 2013
1/14 移転開始ー。ようやく編集終わった。
1/24 >>727 ⅩⅤ章登場人物紹介チェルスのみ編集。
1/25 >>590 ようやくサイストⅢの編集。マイレナの代わりにアーヴェイを関わらせてみた。
4/3  (映像)への移転終了! 今後の更新はあちらになります。(お知らせ参照)




 今までありがとうございました!
 今後もよろしくお願いいたします。

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Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.488 )
日時: 2012/08/10 13:22
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: FDRArTRL)

 数秒の沈黙の後、マルヴィナが、神妙この上ない顔つきでシェナの肩を叩いた。
「・・・前から何度も言っているし、」
「うん」
「前から何回も思っていたんだが、」
「うん」
「シェナ、・・・・・・・・・・・・・・・・あんたいったい何者?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」黙ってから、シェナは何とも微妙な笑顔をつくった。
「うーん・・・今回は、“賢者”かな?」
 意外とまともな答えが返ってきたので、マルヴィナは頓狂な声を上げてから手を放す。
「結構有名なひとなのよ。たしか、本名はマイレナ・ローリアス・ナイン。初めは、彼女は僧侶だったの。
とある有名な世界に認められる団の一員だったみたい。で、治療の魔力を十分に身に着けて、しばらくして賢者となって——
最終的に、史上最強とまで言われる呪文を手懐けた、賢者の中の賢者よ」
 恐ろしくさらりと説明してしまったシェナに、やっぱ何モンだこいつ、という半眼を送るふたり。
「そんな顔しないでよ。賢者の中じゃ常識でもあるんだから。・・・ほら、多分、称号なら、
この世界の冒険者も知っているかもよ?」
「そなのか?」
「ちなみに?」
 マルヴィナ、キルガと言い、シェナはえーと、と呟いてから、言った。

「確か——“賢人猊下”」

 過剰に反応したのは、マルヴィナだった。
「賢人猊下!?」
 あぁ、やっぱり知ってる? ——と言いかけて、表情が驚愕以外の何かを秘めていることに気付き、言葉に詰まる。
「・・・どうしたの?」
「だ、ダーマ神殿で、聞いたことがある。ほら、名前知らないけれど、武闘家の人がいたろ。
彼に、聞いたんだ・・・伝説とまで言われた、その女戦士の名前」
「伝説・・・」キルガが言う。「なんだかその言葉も生ぬるく聞こえるほど凄そうだな、そのマイレナって人は」
「そうね。まず、究極呪文を覚えるまでが大変だわ。・・・究極呪文マダンテは、太古の昔の大賢者が編み出した
聖とも邪ともつかない魔法。でも、その前に、二つの魔法を取得しなければならないの」

 一つは、聖——空爆呪文系統最大の魔法、 極爆破呪文_イオグランデ_ 。
 もう一つは、邪——闇呪文系統最大の魔法、 絶闇呪文_ドルマドン_ 。
 有能な賢者となると、ある日突然、とんでもない高熱を出すらしい。それが、その二つの内、
どちらかを身に着ける合図——自分の中に闇が多ければ、取得するのは絶闇呪文。光ならば、極爆破呪文。
「呪文で自分の評価がされるってことか・・・恐ろしいな」
「そうね。でも、もう一つの魔法を取得するにはどうすればいいのか、それはあまり知られていないの。
そもそも、一つを身に付けられても、二つ目は無理だ、って人が多いしね」
 何で? と問い返す。シェナはだって、と肩をすくめた。
「自分が光の存在だ・・・って証明してもらったとしたら、大抵、もう一つの呪文を覚えるために
邪悪になろうとする人なんて、そうそういないでしょ? 逆に、闇だって証明されたら・・・
まぁ、大抵は、落ち込んで、そのまま引きずってっちゃうでしょうし」
「あー・・・」マルヴィナは曖昧に答えた。
「まぁ、後者は、人間にはありがちだな。・・・シェナはまだ覚えないのか?」
 カルバドの地で、シェナはその二つの一歩手前の呪文を取得した。
となると、これはそろそろだという合図ではないのかと、キルガはそう言っているのだ。
 だが、シェナは「まだまだ!」とどこか笑って言った。
「あんなのとはレベルが違いすぎるわよ。このうちのどっちかを覚えるだけでも大変なんだし、
まだ私じゃ無理ね。・・・それに」
 一度切って——シェナは、少しだけ表情を暗くして、呟いた。

「・・・できれば、今のままがいいわ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・?」
 マルヴィナとキルガは、顔を見合わせた。シェナのその一言に、何か言い表せない辛さを感じたので。



(そうか・・・てことは、マイレナは、“霊”なのか——)
 賢人猊下——まさか、その名をここで聞くとは思わなかった。
そして、あれ? とつい呟く。
賢人猊下——その名を聴いて、思い浮かべられるもう一つの名——


 ——“蒼穹嚆矢”。


 もう一人の、女戦士。







 彼女は、一体——・・・?










 潮風が、その時だけ、冷たく感じた。

















           【 Ⅹ 偽者 】  ——完。

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.489 )
日時: 2011/12/03 10:38
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: EetYfsjv)

         【 ⅩⅠ 】   登場人物紹介。

 __マルヴィナ__
   人間界では20歳の元天使。
   『職』は魔法戦士から然闘士へ転職。称号は“天性の剣姫”。
   剣術において天才的であり、どんな剣でも瞬時に使いこなす。
   “記憶の先祖”を巡り戸惑いながらも旅を続ける。

 __キルガ__
   元天使でマルヴィナの幼なじみ。
   『職』はかなり素早い聖騎士_パラディン_、称号は“静寂の守手”。
   冷静で知識豊富でついでに容姿がいい。
   最近、自分の感情に関して悩みがち。

 __セリアス__
   元天使、マルヴィナの幼なじみ。
   『職』はバトルマスター、称号は“豪傑の正義”。
   記憶力[は]抜群。機械いじりが得意。
   人付き合いが割とうまい。寒いのが若干苦手。

 __シェナ__
   セントシュタインで出会った、銀髪と金色の眸を持つ娘。
   『職』は賢者、称号は“聖邪の司者”。
   ガナン帝国に捕まっていたという過去を持つ。
   魔法の腕前が格段に上がったため、『賢者』特有の最高位呪文を意識し始める。



 __サンディ__
   自称『謎のギャル』の超お派手な妖精(?)。
   やや強引な性格。人間には姿が見えない。
   マルヴィナのフードがお気に入り。

 __モザイオ__
   エルシオン学院の生徒。典型的な不良のリーダー。
   剣術の腕はとりあえず学校内で一番良いらしい。
   仲間の行方不明に対しても、楽観的な様子。

 __エルシオン学院長__
   名前は不明。ただ、学園長とだけ呼ばれる。
   若干お茶目なおじいちゃんで、マルヴィナ曰く「第二のオムイ様」。

 __キース__
   エルシオン学院生徒。ナスカの双子の兄もしくは弟。一言で、おちゃらけた少年。
   人付き合いがよく、わりと人気。

 __ナスカ__
   エルシオン学院生徒。キースの双子の姉もしくは妹。一言で、明るい少女。
   記憶系は苦手らしい。

 __ルィシア__
   モザイオと同じく、学院で剣術を学ぶ。長い黒髪を高い位置で結わえてある。
   常に無表情、無感情。構え方からして、おそらくモザイオ以上の剣の使い手なのだろうが・・・。

 __マイレナ__
   闇色の短髪、翠緑の眸、三百年前の伝説“賢人猊下”。
   有能な賢者だが、それらしさはかけらもなく、いろんな意味で謎というか不思議というか、
   ・・・いや、『意味不明』と表すのが一番当たっているような性格。
   遂に、マルヴィナの“記憶の先祖”についてを語る——。










         中編Ⅰ、最後の章。

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.490 )
日時: 2011/11/30 20:44
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: EetYfsjv)

    【 ⅩⅠ 】   予感


     1.


「・・・随分と楽しい答えだな」
 紅鎧の兵士は、そう言った。
「申し訳・・・ありません」兵士の前で、未だ[遊牧民の姿をした]男が頭を垂れた。
「今回の戦闘にて、奴は、剣を使用しなかったのです。ですから・・・分かりませぬ」
「言い訳など求めておらぬ」兵士は言う。
「・・・もう一度だけ、機会をやる。奴らを追い、そして、再び奴の剣の実力を確かめて来い。
・・・ただし、もう一度だということを、忘れるな」
「・・・・・・・・・・・御意」
 男は、顔を伏せ、言った——・・・。









「さっむぅぅううぅぅ!!」
 それから、幾日か過ぎた今日。
 キルガ除く三人と、今回はついてきたサンディは、揃って悲鳴を上げた。
「うぅ・・・ぐしっ。サンディ、船で待っへへ良いっつったはろ?」
 寒すぎて上手く閉じない唇をどうにか動かし(若干言えていないが)マルヴィナはそう言ったが。
「何ソレ。アタシを追いだそーったってそーはいかないんだからネ」
「ひやそうじゃなくて・・・ひぃぃっ寒いっっ」
 エルシオンへ向かう道、エルマニオン海岸——気温がかなり低く、雨が凍るほどだという話を聞いていた。
まさかそんなことが・・・と半信半疑で来たらこれである。素直に信じればよかったと誰もが後悔する。
 マルヴィナは袖なしのうえ、ワンピース風の旅装なので、腕と腿が寒く、セリアスは左右非対称のこれまた袖なし、
シェナとサンディは露出度が高いために至る所が寒い。
もっとも寒さ慣れしているキルガはというと、普段まくり上げている長袖を元に戻せば良いだけなので、
肌が直に寒さに触れることがない。当然ほかの四者からとてつもないジト目で睨まれたが、
どうしようもないのでとりあえず無視した。
「い、いいい、一回、休まない? ちょうどあそこに、いいものがあるし」
 シェナが指したのは、雪で作られた小さな洞穴のようなものである。
「雪の家・・・? いやかえって寒いだろ」
「雪が当たらないよりましよきっと」
 言うなり、まだ首を傾げるセリアスを置いて、すたたたた、とペンギン歩きで洞穴によるシェナ。速い。
「うー・・・」すとん、とそこに(ご丁寧にも)ある同じ雪で作られた椅子に座り、一息。
「これが噂に聞くカマクラってやつね」
「それ、誰の言葉?」
「噂」
 マルヴィナが次いでやってきて、シェナが答える。セリアスも結局来て、思ったより暖かいことに感嘆の声を上げる。
キルガは最後に来て、一番入口に近い位置に座った。
「しばらく雪がおさまるまで待とうか」キルガは笑ってそう言った。
「おー寒。グビアナが恋しいなマッタク。・・・おいキルガ、お前一番暖かいんだろ。もうちょい外に」
「横暴な。僕だって寒くないわけじゃない」
「文句言うなー」
「言っているのはセリアスだと思うのは僕だけか?」
「はいはーい。わたしも思うぞー」
「私もキルガに賛成ー」
「ちょ!? 俺の味方なし!?」
「サンディに味方してもらえ」
「断る!」
「ブッ飛ばす!!」
「いきなりハモるな」
「サンディ、不可能なこと言わない」
 などと和やかに(?)話している間に、ようやく雪もおさまってくる。
それぞれの方法で手や腕を温めたおかげか、ようやく動けるようになってきた。

「・・・大分、やんだな」
「そうね」
「そろそろ行くか?」
「まぁ・・・こんな地では野宿はしたくないしな。早めに行っ」マルヴィナの話途中、いきなりかまくら襲撃。
どかどすぐしゃっと、かまくらを思いっきり壊そうとする音がする。
「・・・あれ? これってまずい?」セリアス、
「まずい」シェナ、
「ちょ! コレ崩れるんじゃね? 逃げた方がイイ系?」サンディ、
「いい系」マルヴィナ、
「つかマジで崩れるっ」再びサンディ、
「魔物かっ」最後にキルガが立ち上がった。
 派手な音を立てて、遂にかまくら崩壊。中にいた人間はおそらくつぶされただろう——と思っていた魔物たちは、
「・・・・・・・っのやろぉぉっ!」いきなり体勢を低くして雪を払い現れたセリアスにビクッとする。
「お休みタイムに邪魔をしてくれるなんて、いい度胸してんじゃない・・・!」
 黒い妖気を漂わせながら、シェナ。一番怖い。
 キルガだけはとりあえず沈黙を守っておく。
戸惑い気味だった魔物・・・の群れは、だがその瞬間、人には発せ得ない雄叫びを上げ、突っかかってくる。
仕方ないなぁ、と、[それぞれは]武器を構え、敵をまっすぐに睨んだ。

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.491 )
日時: 2011/12/01 22:49
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: EetYfsjv)

 敵は計五匹いた。
これは手っ取り早く全体攻撃しかけた方がいいな、とシェナは思った。
シェナは呪文体制をつくり、それによって防御の疎かになった彼女を狙う魔物を阻むべくキルガは敵の動きに集中。
片っ端から攻撃を仕掛けるセリアスに下がるように言い、シェナは 爆発呪文_イオラ_ を唱える。
雪が派手に飛び散る。敵の内三匹が倒れる。が、その中の一匹はまだ、動けるようだった。
「うー・・・寒」
 雪がやんだだけましなものの、やはりまだ肌に当たる風が冷たい。
とりあえず残る魔物をキルガとセリアスに任せ、のんびりと傍観するシェナであった。
休み場所を崩壊されたキレ具合から会心の冴えを見せたセリアスの攻撃に、魔物はそう経たぬうちに全滅。
「おっしゃ、温まった」
 ふん、と満足げに息を吐くのであった。
「あー・・・そっか。そう考えてみれば。私も動けばよかった」
「まぁ、そろそろだろうし、早めに行って休もう」
 苦笑して、キルガ。そーね、と楽観的にシェナはこたえ、三人は歩き出す。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・[三人]?」
 が、三歩歩いて、キルガ。
「ん? ・・・あれ、マルヴィナは?」
「え? ・・・あ、そういえば」
 よくよく考えてみれば、さっきの戦闘の時すでにいなかったような気がする。
「またステルスじゃない?」
「いやそれだったらまた俺を脅かす悪趣味なことをやってきそうだが・・・
・・・ほらやっぱりいない」
 いたら即座に「誰がそんなことやったんだ!?」と反応してくるだろうと思ったセリアスは、
あたりを見回して—— 一点に、目を止める。
 つられて、キルガとシェナも。
視線の先は——崩壊したかまくらの雪の山。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 三人、顔を見合わせる。
「まさか・・・」
「いや、まさか・・・」
「まさかね・・・」
 が、いきなりもぞもぞそこの雪が動き出す。聞き慣れた不満の声も聞こえてくる。
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
 数秒の間をおいてから、あわてて三人は雪の山に走った。







「つくづく、わたしってこんな目にあってばかりだと思わないか・・・!?」
 マルヴィナがガタガタ震えながら思いっきり不機嫌に言う。さすがに肌の冷たさが尋常ではなかったので
キルガは羽織っていたベストをマルヴィナに貸した。
「いや本当ゴメン。マルヴィナのことだから、まさかあの襲撃から抜け出せないなんてことはないかなーって」
「・・・・抜け出せなかったぞ」
「って言われましても」
 ねぇ? とシェナに同意を求められても、答えを濁すしかない男二人。
「あ、で、サンディちゃん無事?」
「あぁ・・・おーいサンディ・・・いないか。さすがにあいつは逃げたよね」
 マルヴィナはフードを確認して、溜め息を吐く。その中にも雪がぎっしりだた。
 マルヴィナ除く三人が再び顔を見合わせ、首を傾げるその横で、マルヴィナはフードをひっくり返し、雪を押し出した。
が、そこに雪以外のものも落ちてくる。きょとん、とするマルヴィナと、予感が当たったとばかりに
微妙な顔のまま固まる残り三人。
それは、ガチガチに固まった、褐色で、派手な姿の、小さな——



「あぁぁぁサンディっっっ!!」



 やっぱり、と言わんばかりの三人。
「・・・凍っているな」キルガ、
「生きてるー?」シェナ、
「イヤ死にゃしないだろ」セリアス。
「・・・・・・・・・・急ごうか。サンディのためにも」
 若干足取り早く、四人はエルシオンを目指す。

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.492 )
日時: 2011/12/03 15:05
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: EetYfsjv)

 幸いにして、エルシオンには夕方になる前に到着した。
「う————・・・あ、何か意外とあったかいな」
 腕をさすりながらマルヴィナは言った。

 エルシオンに入るには許可が必要であった。生徒であれば学生証ならぬ学院生証、
商人だったらその名と誕生日などの行き過ぎない個人情報—世界商人登録票と一致するか確かめるのだそうだ—。
旅人は最も許可審査がやりにくい人種だが、ダーマ神殿に登録された旅人、即ち“称号”を持つものなら
そのやりにくさが無くなる。幸い、四人ともそれぞれの称号を持っているので、あまり待たされることなく
許可をもらったのだった。

「何か魔法的な力を感じるわ。・・・きっとその力が働いて、暖かくなっているんだと思う」
 シェナがそう呟いた。さすが魔術師、とセリアス。
「・・・広いな。この土地の七割くらいがその学院みたいだ」
 キルガがおおよそを見積もって言う。確かに、学院内ではないここでも、一般民の恰好の者より学生服を
装備しているものが多かった。
「やっぱ賢者だから、こーいう頭よさそうなところに居座ってんのかなぁ・・・」
「はい? ・・・何?」
「いやシェナじゃなくて。マイレナだよ」
「あぁ、そっちね」
 納得してから——別に示し合わせたわけでもなんでもないのに、四人は同時に足をピタリと止める。
そして、全員がほぼ同じ内容のことを思った。
 即ち——行き場所に困ったのである。
・・・どこに行くべきだろう? 今更ながらにそう考えた四人に——ちょうどまさにその時、声がかかった。











「・・・お待ちしておりましたぞ、探偵殿!!」











 ・・・と思えば、全然違う人を呼んでいたらしい。何だ、違うのか——と再び悩みだしたマルヴィナの手が、
いきなりがっしりと掴まれ、顔の前まで上げられ、ついでに上下に大きく振られた。
「えええ!?」
 いきなりのその行動について行けず、マルヴィナはされるがままぶんぶん降られる。
目が回りかけてきた辺りで、結局自分たちを呼んでいたらしいその目の前の初老の男性はマルヴィナを解放。
「いやいきなり失礼いたしました。
それにしても、名を呼ばれても簡単には反応せぬそのお姿、やり手の方とお見受けした!」
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」四人、沈黙。
「私がこの学院の長であります。この度は我々の依頼を受けていただき、感謝の言葉もありませぬ、探偵殿」
「た、たん・・・? いやちょ、わたしらはそ——ってぇ!!」
 必死に誤解を解こうと否定し始めたマルヴィナの足を、前置きなしでシェナが思い切り踏んづけた。
マルヴィナは本気で、足から頭にかけて電撃が走ったようにびりびり震えたように感じたりする。
 が、その妙な様子に気付かなかったはずがないのに、学院長は話を続ける。
「えぇ、分かっておりますとも。ですがご安心ください、あなた方の正体は、誰にも洩らしませぬゆえ。
では早速事件の話を——ですが立ち話もなんですから、どうぞこちらへ」






 そんなわけで、言われるままに学院内に案内される四人。
何かまたややこしいことになってきた、と頭を抱えそうなマルヴィナ、
事件あるところに女神の果実あり、ってゆーでしょ、とサンディ(ちなみにようやく溶けた)、
上手くいくといいけれどな、と苦笑するキルガ、
何か面白そーじゃん、と頭の後ろで手を組むセリアス、
こうなった方が動きやすいでしょ、と満足げな顔をするシェナ。
 一体何の集団だ、とすれ違った誰か一人は思っただろう。

「実はですね。昨年度の卒業試験が終わった翌日、若い生徒が一人行方不明となったのです。しかも、次いで半年前、
またしてもひとり・・・そして最近は、連続して行方知れずとなりました。皆が皆、若い生徒です。
・・・あぁ、ご存じかとは思いますが、この学校は十代から三十代まで、さまざまな年齢の生徒が通っております。
ですが、いずれも行方知れずとなったのは、十代の若者ばかりなのです」
「それって、夜逃げ・・・ってことはないか。ここの天候からして、夜は吹雪状態・・・そんな中で逃げるのは
自殺志望者か駆け落ちくらいね」
「シェナ・・・・・・」
 さらっと子供の教育に悪そうなことを言うシェナに、半眼を送ったのはセリアスであった。
「いや、でも、その通りなのです。そう、突然消えてしまった——と言うことなのです。——ですが、こうして
探偵の皆さんがやってきてくださったからには、事件は解決したも同然ですな!」
 イヤだから話聞けよ、・・・とはもうマルヴィナも言わなかった。
「それは分かりませんが・・・年若い彼らに聞き込みをしても、簡単に話してくれるでしょうか?」
「無理でしょうね。・・・学院長、私たちに潜入捜査させてくださらない?」
 シェナの発言に、学院長はもちろんと言わんばかりに頷く。残る三人は「潜入捜査ぁ!?」・・・と叫びかけて、
皆が同じようにその言葉を飲み込んだのだった。


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