二次創作小説(紙ほか)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

FAIRYTAILの小説書きましょう♪ふぉー!
日時: 2017/05/12 06:28
名前: 妖音ミユ(音願) (ID: MGNiK3vE)

うも!こんにちは〜(*`・ω・´*)ノ
妖音です!

3のスレがロックかけられてしまったらしく、書けないので、燐さんと相談し「4」をつくることにしました。

さて、このスレの説明でもしますか!
このスレは基本リレー小説を書いています。
まあ、たまにこのバカが番外編とか書きますがww

あ、感想よろしくおねがいします!ヨロ(`・ω・´)スク!
では、お願いします!!ヽ(*´∀`)ノ

あと、ここが設立するまで、アニメのほうでやっていたので、そちらの方も後で載せます。

Re: 【見てくださ】FAIRYTAILの小説書きましょう♪ふぉー! ( No.150 )
日時: 2016/11/27 23:15
名前: 燐 (ID: PZX6sAnA)

カノside

メグちゃんは一体どうしてしまったのだろうか。
叫び起きた彼女にゆっくりと近づくものの、メグちゃんは何かに怯えるようにしてただ後ずさるだけ。焦点の合わない彼女のそんな姿を見て僕は怖くなった。
何が怖いのかと聞かれれば何も答えられない。でも人が段々と壊れていく様子を見れば誰でも怖くなるだろう、という不確かな根拠。
つい先程言っていたグミちゃんの“壊れる”とはこのことなんだろう。


メグミ「やだ、やだやだ!!助けて、ひーくん…お姉ちゃん…ママ、パパ……」


目を抑え蹲って泣きながらメグちゃんは助けを乞うた。
でも僕もリオちゃんもどうすることも出来ないまま時間が過ぎていく。いつもなら何も考えなくてもあることないこと口から言葉が零れていくのに、こういう時に限って何もできないポンコツだということを思い知った。

顔を覆う手の隙間からグランベリーのように紅く光る目を見て僕ははっとする。
出来るだろうか。いや、そんなこと考えないでやれることはやろう。


カノ「…リオちゃん、いいことを思いついたんだけど、賭けてみる?」


リオちゃんは少し思案してそうだね、と呟いた。


リオ「今足踏みしてても仕方がないし、お願いするよカノ」

カノ「りょーかい。僕かメグちゃんがぶっ倒れたときはよろしく頼んだよ?」


任せておけ、リオちゃんの心強いその言葉に僕は安心した。

いつだったか、マリーのおばあちゃんにあたる薊さんの日記を見た日まで記憶を遡る。
僕らが持つ蛇の能力は全部で11個。
目を隠す、目を盗む、目を欺く、目を合わせる、目を覚ます、目を奪う、目に焼き付ける、目を凝らす、目を醒ます、目をかける、そして、目が冴える。
僕はかけると冴えるは見たことがないから能力を使ったことがなかったんだ。でも今ならいける気がする。
冴えるは僕の力じゃどうにもならないと思うけど、姉ちゃんの能力ならばやれる。

大丈夫、僕は独りじゃない、と何度か自分に言い聞かせるように心の中で呟いて、目に神経を集中させる。
かける能力は、相手に思いを伝える。そして、思っていることを伝えてもらう。謂わば記憶又は感情の共有、感覚リンクと言ったところだろう。
でもさすがに記憶の全部分を共有するとなると、僕の頭は破裂してしまうだろう。これは冗談でもないし、比喩表現でもない。物理的にではないが頭がパンクして僕は確実に死ぬと思う。
まぁそんなことで僕は死なないのだけれど。起きることができない、という後遺症付きではあるが。


カノ「……目をかける……」


今僕が欲しい情報は彼女の口から出てきた者達の人物像。メグちゃんの両親か、はたまた姉かひーくんか。
誰でもいい。彼女を安心させられる人物の情報を僕にくれ。

ゆっくりとしたペースで尚且つ大量の記憶を僕は流し目で見ていく。じっくり見ていては僕が持たない。


<ひーくん!>


幼い彼女が無邪気に笑うその姿を、僕は見落とさなかった。
幸運なことにその空間にはメグちゃんとひーくんという男しかおらず、必然的にこの人がひーくんだという結論に至った。
赤色の髪に紫色の眼鏡、そしてばってん型のピンが特徴的な人だった。僕の第一印象としては、派手な好青年だ。

僕はかける能力を解除し、変わりに欺く能力を発動させる。
初めてかける能力を使ったせいか目の奥がじんじんと熱を帯びていたが大して気にもとめなかった。所詮その場だけの痛み、すぐに治るだろうと。軽く頭を振ってソレを誤魔化した。
僕はメグちゃんの記憶にいた“ひーくん”に成りすます。一度咳払いをして喉の状況を確認する。…よし、問題ないね。
記憶にいたひーくんのように、僕はメグちゃんに優しい言葉をかける。


カノ「音竜愛、どうした?」


思っていたよりも落ち着いた声に、メグちゃんの顔がばっと上がる。かたかたと震える肩が徐々に正常を取り戻していった。


メグミ「…ひー、くん…?」

カノ「俺以外に誰がいるってんだよ。ほら音竜愛、笑顔、忘れてんぞ!」


そう言って、僕は記憶のまま少年の笑みを貼り付けた。





リオside

目を真っ赤に染まらせたカノは一度頭を振って溜息を漏らした。
そして次の瞬間にはカノはおらず、その代わりに見知らぬ少年がぽつりと座っていた。先ほどのカノと同じ、胡座をかいて。
その少年がメグミにとって信頼できる人で、カノが人の目を欺いてその人に成ったということはすぐに気がついた。
んっ、んんっ、と咳払いをしたカノは、元の世界のメグミの名を呼んだ。


カノ「音竜愛、どうしたんだ?」


私はその完成度の高さに思わず身震いした。メグミがひーくん、と呟いたことから彼はひーくんという人物だということが窺えた。
私はひーくんという人を知らない。それでも、カノが完璧にその人を演じ切っているという確信が持てた。


カノ「笑顔、忘れてんぞ!」


だって、カノはあんな笑い方をしないから。

Re: 【見てくださ】FAIRYTAILの小説書きましょう♪ふぉー! ( No.151 )
日時: 2016/11/28 08:16
名前: ほたる (ID: Lp.K.rHL)

Noside





メグミ「ひーくん…!ひーくん…ッッ!!」



目の前にひーくんがいる。
それだけでどれ程メグミにとって支えになるか…。
彼女達がもといた世界において彼女が誰よりも信頼していて大好きだった存在。
それは親友であったハクを超えるほど…。



メグミ「ひーくんはいつもねりぃの事を助けてくれるね…。」



ひーくんの姿をしたカノの胸元に抱きつく。


メグミ「ひーくんはいつもねりぃの事を置いてかないでくれる…。
ひーくんいつもねりぃに合わせてくれる。」



背中に腕を回すと『ひーくん』もメグミの頭をポンポン、と撫でる。



メグミ「いつだって守ってくれて…。」




『あぁ…そうだな。危なっかしくてほっとけねーよ。』


メグミ「ふふ…ごめんね…?」


恐らく彼しかみたことのないであろう、無邪気で子供らしい笑み。
昔も今もうまく甘えられなかった彼女の小さいな愛情表現だ。
人見知りで言葉にすることが不得手な彼女らしい伝え方だ。





目を閉じる。
信頼していたひーくん、氷雨の胸の中は誰よりも居心地がよいらしくすでに眠ってしまいそうだ。


メグミ「…ひーくん…大…好き…。」



そう…幸せそうな顔で眠りに落ちた。
先程とは変わり、規則正しい寝息が聞こえる。


『おやすみ…音竜愛…。』




【でもねママ…真っ赤なお月様もひーくんが消してくれたの。
ねりぃもう怖くないの。】





いつの間にか瞳の色は元に戻っていた。



メグミが寝たのを確認するとカノは能力を解いた。


リオ「うまく成功したみたいね。」


カノ「うん…でも…」


フッとカノの体から力が抜ける。
まるで糸が切れたようにフッ、と…。


リオ「…カノ!?」


リオはカノに近寄る。息があることを確認するとホッと息をつく。




リオ「ったく…二人もどうすればいいのよ…。」


Re: 【見てくださ】FAIRYTAILの小説書きましょう♪ふぉー! ( No.152 )
日時: 2016/12/14 22:38
名前: 燐 (ID: PZX6sAnA)

カノside

メグミ「…ひーくん…大…好き…」

カノ「おやすみ…音竜愛…」


すぅすぅとすっかり安心しきった寝息をたてながら眠りについたメグちゃんを見て、僕は能力を解いた。
意識はもう落ちてるはずなのに、僕の腰から離されるとこのないこの手をじっと見つめて思う。あぁ、計画は無事成功した。さて、これからどうしたものか、と。
今も僕の腕の中ですやすやと眠っている彼女の背中をトントンと一定のリズムで軽く叩いてもやもやとした感情を取っ払う。
そう、計画は成功した。なのに何故だろうか。

悔しいのだ。


カノ「…………馬鹿みたい…」


目の奥に潜む痛みをそっと押し殺して、神経を集中させなければ決して聞こえないような小さな声で呟いた。
そう、本当に馬鹿みたいだ。僕は子供か。こんな不毛な感情は捨てなければ。

彼女の目に映っていたのは僕じゃない。たったそれだけのことが、僕の心を乱す。
恋とはまたどこか違う、特別な感情が僕の中をぐるぐると回って、吐き出されることなく心の奥底に溜まっていく。ぽつりぽつり。ことこと。
残念ながら、僕はこの感情が何なのかを確かめる術を持っていない。だから、ただひたすらに溜まっていくこのキモチを見ているだけ。
でもわからないなら、ずっとわからないままでいいとも思っている。その心理はというと、今のまま緩やかな関係でいいという子供じみた考えなのだけれど。


リオ「うまく成功したみたいだね」


リオちゃんが心底ホッとしたように言うもんだから、僕も悩んでいたことが阿呆らしくなった。そうだ、今はこの状況を喜ぶべきだ。
特に大きな怪我をすることなく無事自分の体に戻れて、取り乱したメグちゃんも落ち着いた。うん、それでいいんだ。


カノ「うん。…でも…」


でも、これで本当によかったのかなぁ。
突然の目の痛みに驚いて、開いた口から零れるのは空気の音だけ。目の奥がぱちぱちと弾けて段々と視界が白く霞んでいく自分の目は一体どうしてしまったのだろうか。
能力を使ったからというのは容易に想像できる。が、まさかこんなにすぐ副作用がでると思わないじゃないか。実際いつもはもう少し後にくるし、こんなに視界が狭くなることはなかった。
…あれ。視界が、狭く…?あ、これやばいやつだ、なんて悟ったときにはもう遅くて。


はくはくと開閉していた口すらも動かなくなって、真っ暗になった視覚。

抱きつく君の甘い匂いがぼやけて嗅覚と味覚が失われた。

手足が冷たくなって指が震える。ぎゅっと両手を握ってみても感覚がなくて、触覚が奪われたのだと気付く。

ひとつひとつ徐々に失われていく感覚に恐怖を覚えたが、後悔はしていない。女の子を助けられたのだから良いではないか。最も、僕もお荷物となるんだけど。
全ての触覚が感じ取れなくなった僕は、座っている感覚すらなくなったのだからどうなっているのだろうか。やっぱり倒れているのかな。
唯一残っている聴覚で拾えたのはドッと何かが落ちたような音。それは恐らく僕が倒れた音。


リオ「…カノ!?」


僕の名前を呼ぶ声も段々と遠くなって、遂には何も聞こえなくなった。最後の砦である、聴覚が堕ちた。


君と僕が目を覚ましたらちゃんと話をしなくちゃね。

あの時のひーくんは僕だったんだ、なんて言ったら君は怒るだろうか。

それとも、笑って許してくれるのかな。




リオside

糸が途切れたように倒れ込んだカノの名前を呼ぶが、カノは目を閉じたまま反応を示さない。


リオ「……あんた達、一体何があったのよ…?」


2人は気づいていないようだけれど、明らかに2人の間には何かが築かれていた。それが何かは私にはわからないけど、確かに言えることがひとつ。
2人は今日ここで何かを見つけて、その何かに対応するための新しいものを見つけようとしている。その何かが一体何なのかがわからないからどうしようもないんだけど。
2人は変わろうとしている。より良い者になるために。


リオ「…仕方ない。皆呼んで帰るか」


2人が起きたら洗い浚い吐いてもらわないとね、と呟いて扉を開けて皆を呼ぶ。どうしたどうしたと煩く騒ぎ立てるものだから、静かにしろ!!と一喝入れさしてもらった。

メグミの隠していること。洗い浚いって言っても、プライベートなことだからあんまり詳しくは聞けないけど、それで私達に何か手伝えるのなら詳しく話してほしい。
メグミは妹みたいで、でも意外にもしっかりしていて。私は彼女に何度も救われたから、今度は私が手を差し伸べる番だ。

カノは…多分話してはくれないだろうけど、私達が味方だということを知ってほしい。そして頼ってほしい。
さっきカノが倒れる直前、彼の目には何も映っていなかった。まるで何も見えていないように。それがなぜだか怖くて、少し声をかけるのに躊躇してしまった。


リオ「さ、皆帰ろ!!」


カノとメグミはナツとグレイの力仕事組に任せて、私達は綺麗に修復された屋敷を出て、これまた綺麗になった橋を渡って帰った。
光の入らなかった屋敷は太陽に照らされて輝いており、森には野生動物が沢山いた。
列車に乗りながら、あれが本当の屋敷の姿だったんだろうなと思った。あのティーという女性が屋敷を元の姿に戻してくれたのかな、なんて想像を膨らませながら。

Re: 【見てくださ】FAIRYTAILの小説書きましょう♪ふぉー! ( No.153 )
日時: 2016/12/18 06:35
名前: ほたる (ID: YhMlOecY)

メグミside



ツンっとくるような薬品の香り…


メグミ「ん…。」


ゆっくりと瞼を開くと見慣れない天井が目に入る。


メグミ「…いっ…!」


起き上がろうとベットに手をつくと突然目が痛みだしカクン、と再びそこに崩れ落ちてしまう。

しかし、どうやら目の痛みは一瞬だったようだ。
今度こそ上体を起こす。

並ぶ複数の白いベット、棚に並べられた複数の何やら怪しげな薬品、真っ白で清潔なカーテン。
恐らくここはFAIRY TAILの医務室なのだろう。


しかし自分は何故ここにいるのだろうか?
ゆっくり思い出そうとするとここ数時間分程であろうか?…丁度ティーさんと出会った後あたりの記憶がまるまる抜けていることに気がついた。

何故だか怖くなり口元を手で覆う。
何か怖いものを…悪いものを見ていたような…そんな気がしてならないのだ。


ここでワタシ1人でぐずぐずしてても仕方ないので一先ず、皆さんの元へ行くことにした。

ベットの近くに置かれていた靴に足を通すと靴がかなり傷んでいたことに気づく。

…あんなに走ったしね…。
お気に入りの靴だったけど仕方ないか…。

この靴は元の世界で買った…というまあ思い出深い品ではあるが消耗品故に仕方ない。
流石に今にも穴が開きそうな靴を履き続ける趣味はない。


キイィ…と音を立たせ、木製の扉を開ける。



ルーシィ「メグミ!目が覚めたのね!よかった〜!!」


メグミ「あ…はい!…ご迷惑おかけいたしました…。」


扉の先にはいつものギルドがあって…何故か安心した。


グレイ「様子を見に行ったらお前とカノが倒れてるんだもなー。」


メグミ「え…カノさんもですか…?」


驚いた。ワタシが倒れていたということにも驚きだが、カノさんも倒れていたなんて…。


リオ「ねぇ、メグミ…もしかして…覚えていない…?」


メグミ「え…?」


リオ「その様子じゃ覚えていないようね。」


何の事だとワタシが混乱しているとリオさんがワタシを皆さんから離れたところへ引っ張ってゆく。


リオ「多分メグミ暴走してた…"真っ赤な月"とか呟いて…。」


メグミ「真っ赤な…月…?」


赤い月なんて生まれてこの方見たことないし…。


リオ「まあ、いいや。何かあったら話して欲しい。」

メグミ「…は、はい…。」

Re: 【見てくださ】FAIRYTAILの小説書きましょう♪ふぉー! ( No.154 )
日時: 2016/12/24 23:30
名前: 燐 (ID: PZX6sAnA)

聞いたことも見たこともない赤い月という言葉がどこか引っかかる気がするのはどうしてだろう?
2人きりで話している内容が気になるのか、ナツさんがなんだなんだと口からぶわっと炎を出す。俺も混ぜろー!とのことだったけど、エルザさんの拳骨により動きが止まった。
空気を読んでくれたのかそれともただナツさんが煩かっただけかはわからないけど、とりあえずこちらにナツさんが来ることはなかった。


ナツ「そういやカノはどうしたんだ?」

メグミ「えっと…いなかったですよ?」


あれ?とはてなを飛ばす皆さん曰く、ワタシが寝ていた隣のベッドにカノさんも寝ていたらしい。あまりジロジロとは見ていないけど、特に人の気配はなかったし、カノさんらしき匂いは……いや、今思えば少しカノさんの匂いがしたような気がする。でもカノさんを、ましてや隣にいた人を見落とす、なんてことは無いに等しい。


ルーシィ「でも、誰もカノが出てきたとこ見てないよね?」

リオ「少なくとも私は見てないけど…」

グレイ「そういやポーリュシカのばあさんはどこ行ったんだ?」

エルザ「あぁ、確か資料を見てくると1時間ぐらい前に出ていったぞ。音が何とか言ってたな」


音。その言葉にどこか既視感を覚える。
最近、本当に最近そのことについて何かを感じていたはずなのに、どうしてかその何かを覚えてはいなかった。


アイリア「1度ベッドを見てみましょうよ。意外と見間違いだった、とかかも知れませんし」

リオ「…そうだね。ちょっと入ってみようか」


リオさんはそう言って、さっきワタシが開いた木製の扉を開いた。
皆してゾロゾロと部屋に入ると、またツンとした薬品の匂いと白を基調としたベッドやカーテンが目に入る。そしてワタシが寝ていたであろう少し人の形に窪んだベッドの横には、くるくるとした亜麻色の癖毛が特徴的な彼がいた。


カノ「う゛ぁあ…っ、あ、あ゛っ、ん…っんあぁあ…っ」

リオ「カノ!?」


カノさんは魘されているようで、額に脂汗を滲ませながら苦しそうにベッドの上で悶えていた。
皆が呆然として動けない中、ほぼ野生の勘だけで状況を呑み込んだナツさんがカノさんの頬をペチペチと叩いて声をかけ始めた。その行動で我に返ったワタシは、それでも怖くて動けなかった。
パシャリと撮った写真のような動かない記憶がフラッシュバックする。ワタシ達が訪れたあの館での、ワタシの記憶の一部。その静止画のような記憶が今のカノさんと被って怖くなってしまったのだ。


ナツ「おいカノ!起きろ、カノ!!」

カノ「ふっ、……が、あぁっ゛、うわあああ!!?」

メグミ「ふあああ!!?」

ナツ「うおおおおお!!?」


いきなり飛び起きたカノさんの顔を覗き込んでいたナツさんは上手く避けることが出来なかったらしく、ガチィンと盛大な音を鳴らしておでこをぶつけ合った。起きて早々額をしたたかに打ったカノさんは、またああああああ!!と額を押さえて叫んで、ベッドへと逆戻りしていた。

ワタシはとりあえずホッと一息ついて、このカオスな状況の打開策を探し出した。




カノside

『起きろ、グリムドール君』


ゆったりと放たれたその言葉に、僕は勢いよく目を開けた。


ノアール「やぁ、気分はどうだい?お茶を入れようか」


そう言ってどこからともなく現れた椅子に座り、程よく蒸らされ良い匂いのする紅茶をこれまたぱっと現れたティーカップに注いでいく男に、僕はげんなりする。
赤いリボンのついた黒いハットから覗く暗めの赤茶色の髪が、淀んだ空間に対してやけに映えているのが気に食わない。憎たらしいことこの上ないな。

この男の名はノアール。ある闇ギルドの一員で、俺の大嫌いな人物だ。
“俺”、というのも、この男は人の本質を見抜くのが得意でよく核心を突いた発言をするものだから、見透かされるのが嫌で自然と昔の自分に戻ってしまったのだ。というか、どうせこいつには全てお見通しなんだろうから“僕”のような性格より、いっそ“俺”のように全てをさらけ出してしまった方が楽なのだ。


カノ「…いーや、残念だけどすこぶる気分が悪ィしゆっくり茶なんか飲んでる時間もねぇよ」

ノアール「だろうねぇ。なんせここは時空の歪みだからね!耐性がついていないキミには少し辛いかもしれないね」

カノ「んじゃあ場所を変えろよ場所を」

ノアール「やだよー」


お前ホント死ねよ、とどこか間延びした喋り方をするノアールに向かって言葉を零す。酷いじゃないか、と言われても腹が立つだけでそれ以上でもそれ以下でもない。


ノアール「そうそう、キミが誰かに起こされてしまうといろいろと厄介なことになるから、キミの体も別の狭間に隠させて貰ったよ。まぁ起きる時は元いた場所に返してあげるから安心して」


なんて衝撃発言。今俺半ば拉致られてる状況じゃね?五体満足で帰れるか少しばかり心配だ。
それにしても気持ち悪い場所だ。夜に成りきれていない夜のような、ぼやっとした紫色の背景。所々にある蛇のとぐろのようなぐるぐる回る円。それと、どこからか漂う腐敗した死の匂い。
言ってしまえば、死者の世界のような場所だ。と言っても、死者の世界になど行ったこともないし行きたくもないけれど。


カノ「で、ここはお得意の死者様の魔法?」


ニコニコと笑いながらそうだよと言った彼の笑顔は自然だった。僕のような貼り付けた笑みでもない、純粋な笑顔。
本当にこいつらのギルドは悪い事をしているという自覚がないから質が悪いのだ。自分の正義のためだけに正規の者達を蹴落とす、まさに弱肉強食。


ノアール「…そうそう、グリムドール君。キミにお願いがあるんだ、頼まれてくれるかい?」

カノ「……ったく、拒否権なんてねーくせによぉ。それとグリムドールって呼ぶのやめろ」


そしてこいつらは俺のことを“グリムドール”と呼ぶ。名前で呼ばれるのなんて断固拒否だが、この呼び方も好きではない。
俺の魔法はグリムノートと言って、童話上の主役や悪役、武器などを間借りすることができるもので、それをこいつらは童話に従順な人形のようだと笑ってグリムドールと呼ぶようになったのだ。


ノアール「あぁそうだったね。キミが今いるフェアリーテイルというギルドの情報が欲しくてねぇ」

カノ「はぁ?んなもん誰が言うかってんだよ」

ノアール「ふふーん。キミならそう言うと思ったよグリムドール君。だからねぇ、私はキミが起きる前に記憶を少し見させてもらったよ!」

カノ「事後かよクソ野郎!!」

ノアール「あとキミの呼び方も変えないよ」

カノ「…もうお前3回ぐらい死ねよ……」


ぐるぐると脳をフル回転して出た答えがそれだった。
最悪だ。起きる前に見られてたとは。でも幸いなことに、俺はフェアリーテイルに入ってからまだ日は浅い。だからいくら探究心が少しばかり強い俺でも、ギルドの重要な部分までは殆どと把握していない。

何がおかしいのか、ノアールは俺を見てクツクツと笑った。顔には出ていない俺の焦りを見ているのが楽しい?とんだ悪趣味だな。


ノアール「と、実は本題はここからなんだよグリムドール君。フェアリーテイルのギルドにコレを置いておいて欲しいんだ。そうだねぇ…ギルドの真ん中のラインの端っこにでも置いておいてくれ」

カノ「…ちなみに聞くけどこれは?」


渡されたのは薄い桃色に白い液体を垂らしたような不思議な模様をした丸いボールだった。ピンポン玉ぐらいの大きさのそれはゴムのように柔らかく、お祭りの出店にあるスーパーボールのようだ。


ノアール「私はね、フェアリーテイルを傘下に入れたいのだよ。強い魔導士もたくさんいるから私達も多少の深傷は負うだろう。でもせっかく強い魔導士を殺すのは勿体ない。だからあまり殺さずに平和にいきたいのだよ。そのために話し合いをしようと思ってだね」


駄目元で聞いてみたがどうやら今は機嫌が良いらしい。すらすらとよく言葉の零れる口だなと思いながら、俺はそれで?と聞き返した。


ノアール「それは魔法を無効化するラクリマさ。私はともあれ、霄漢ショウカンはすぐに手が出てしまうからね」


話し合いをするために、と言った彼は表情を少し緩ませた。ノアールの真意が読めない。だからと言って、こいつは嘘を吐かない。


カノ「…………はぁ、わあったよ。置けばいいんだろ置けば」

ノアール「やー、さすが話が早くて助かるよ!…っと、そろそろ時間だよグリムドール君」


時間、と言われてもイマイチぴんとこないのだが。俺は早く終わらせてほしいが特に時間を指定した覚えはない。
俺が不思議そうな顔をしていたのかクスッと1度笑って、しーっと人差し指を口に当てた。すると、聞き覚えのある声が聞こえ始めた。


〈でも、誰もカノが出てきたとこ見てないよね?〉

〈少なくとも私は見てないけど…〉

ノアール「キミのお迎えがきたらしい。そろそろ夢から覚めないとね。…そうだ、ひとついいことを教えてあげよう」


そんな声を聞いて椅子から立ち上がり、今では見慣れた金色の笛を取り出したノアールは音を奏でて男の霊を召喚した。
ナメクジが背中を這ったような、ぞわりとした嫌な感覚にぶるっと震える。この男は見覚えがある。いや、見覚えがあるなんてもんじゃない。何も見ないで紙に顔を描けるくらいには、俺はこの男を知っている。
この男を見るときはいつだって理由は同じなんだ。男の手が俺の震えた目を覆い隠して真っ暗闇になると、急激に怖くなった。怖い、あの言葉を聞くのが。怖い。
感覚リンク、男がそうぽつりと呟いた。


カノ「っああ゛ぁ!!、っはぁ゛、」

ノアール「キミの仲間がまた逃亡劇を繰り返したそうだ。今度は15人!驚いたかい?いやぁ、ようやく頭を使った行動に出たようで私は少し嬉しいよ」


脳の中心がビリリッと震えてからすぐに体の彼方此方が異常をきたした。
骨の折れる音、内蔵が潰れる感覚、焼印を押された熱。そのひとつひとつがこの身に降り注ぐ。


ノアール「全員で一斉に逃げ出して、誰か一人でも外に出て助けを呼ぶ作戦だったらしい。まぁ、全員捕まえたしたっぷりとお仕置きはしたけどね。あぁ、心配はいらない。死ぬ直前に治癒魔法をかけてるから誰も死んじゃいない」


私は約束は守る主義なんでね、と何がおかしいのかまたクツクツと笑う彼に、最早怒りはない。ただただ、憎い。


カノ「うぁ、ん、あァ゛、…は、ァあ゛、あ」

ノアール「…そろそろくるかな。じゃあまた会おうグリムドール君!次に会える日を楽しみにしているよ!」


最後にもう一度ガツンと衝撃がくると世界が暗転し、それからすぐに目の前の光へと走り出した。


.

.


カノ「ふっ、……が、あぁっ゛、うわあああ!!?」


飛び起きてすぐの額への衝撃に、俺はまた地へと沈み込んだ。…地面じゃない、この感触は……ベッドかな?
横で俺と同じように額を押さえながら悶えているナツを見て、部屋をぐるりと見回して皆と1度ずつ目が合って、やっとここがフェアリーテイルだということに気がついた。

腕の骨が7回ばらばらに曲がり、頭蓋骨が2度欠け、鼻の骨が4回砕け、肋骨が11本折れた。足の骨に至っては18回折れた。逃げたのは15人なのに。
泣きたい。怖い。やっぱり俺1人じゃギルドマスターなんて荷が重すぎる。全てさらけ出してしまいたい。でも、そうすると皆殺されてしまう。
ぐっと本音を押しとどめて、我慢して、汗でぴったりとひっついた服なんて気にせずに。


カノ「えっと……おはよう?何で皆集まってんの?てか…おでこ痛い……」


パーカーのポケットに入っている薄桃色のボールだけが、あれは現実だと教えていた。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。