二次創作小説(紙ほか)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- FAIRYTAILの小説書きましょう♪ふぉー!
- 日時: 2017/05/12 06:28
- 名前: 妖音ミユ(音願) (ID: MGNiK3vE)
うも!こんにちは〜(*`・ω・´*)ノ
妖音です!
3のスレがロックかけられてしまったらしく、書けないので、燐さんと相談し「4」をつくることにしました。
さて、このスレの説明でもしますか!
このスレは基本リレー小説を書いています。
まあ、たまにこのバカが番外編とか書きますがww
あ、感想よろしくおねがいします!ヨロ(`・ω・´)スク!
では、お願いします!!ヽ(*´∀`)ノ
あと、ここが設立するまで、アニメのほうでやっていたので、そちらの方も後で載せます。
- Re: FAIRYTAILの小説書きましょう♪ふぉー! ( No.190 )
- 日時: 2017/06/15 23:43
- 名前: 燐 (ID: PZX6sAnA)
Noside
暫くじっとりとした嫌な空気の中で睨み合いながら、どちらが先に動くかを見定めていたところで、メグミのすぐ後ろで芯のある少しくぐもった声が聞こえた。
メグミは自身のの反射神経を信じて咄嗟に左横__右横にはカノがいた__に飛び退くと、そのコンマ数秒後に地面が凍りつくのをメグミとカノは息を呑みながら見ていた。
グレイ「氷欠泉!」
グレイの足元からメグミの立っていた地点を通過して、その先に立つノアールの元まで一直線に間欠泉のような氷が吹き出す。
氷がグレイの元からノアールのところに到達するのは恐らく一瞬だろう。ノアールを足止めしてくれれば幾分かは戦いやすくなるのではと、警戒を怠らないメグミは頭の片隅でちらりとそう思った。けれどメグミの頭の大部分を占めているのは、避けられるという推測だった。そう思うのはカノも同じであった。
氷のロードを目で追うと、丁度ノアールがひょいと一歩を踏み出してグレイの初手を避けたところであった。
グレイはチッと舌打ちをするが、大して気にもとめていないようで次の攻撃を繰り出そうと手のひらの上に拳を置く。躱されることはきっと想定済みだったのだろう。
先手必勝。戦いの中では基本中の基本だが、それは避けられることが多い。寧ろ9割は躱されると断言しても良い。
はっとしたメグミは自分も負けていられないと、体制を低くする。地面に穴が開くくらいぐっと踏みしめて、そして走る。走って、きゅっと靴を鳴らして大きく跳躍した。到底一般人には出来ないであろうこの大跳躍は、きっと彼女が竜と同化してきているからなのだろう。
メグミ「音竜の鉤爪!」
ノアールの頭目掛けて踵落としをするが、これもまたノアールはひらりと躱して見せた。
避けられたとわかってはいても重力には逆らえず、メグミの足は地面へとめり込んだ。この少しのタイムラグが戦いの中でどれだけ不都合であるかわかっているからこそ、メグミはしまったと顔を顰めた。
周りの音を拾えるよう聴覚を最大まで研ぎ澄ます。音の竜に育てられたメグミにとってそれは容易いことだった。
ぱーーー、と鳴り響く笛の音に自然と体が強ばった。とその瞬間、メグミの背中に思い切り激痛が走ったかと思うと体が宙に浮いて、顔面から地面へ落ちていった。ズザザザザと地面を転がって、壁にぶつかることで漸く止まることができた。
メグミ「ぐっ、ゲホッ…が、けふっ」
内蔵が端の方へ追いやられる感覚が気持ち悪くて息を思い切り吸い込むと、噎せたような咳が出た。頭がちかちかと頭痛を及ぼし、キーンと耳鳴りがする。蹴り上げられた背骨はひどく痛むし、まともに受け身をとられなかったせいか打ち付けた体が鈍く痛みを送っていた。
カノ「っ…!主演劇場『青髭』よりヴィランズ【青髭】。主演、鹿野修哉」
メグミに駆け寄りたい気持ちをぐっと抑えて、今自分がしなければいけないことをカノは考えた。
ノアールに気付かれないように小さな声で詠唱して、言い切る前にフライングでポケットから銃を取り出し、照準を合わせるや否や引き金を引いた。
ノアール「うん、遅いね」
一発目は避けられたが、こちらにはこちらで数がある。カノは引き続きトリガーを引いて、数にものを言わせる戦法に出るが、これも一切効果はなし。
何かがおかしい。そうは思うが何がおかしいのかさえわかっていない。
ノアール「惜しいよ、君達は実に惜しい。これだけの実力がありながら選択を間違えるとは」
ノアールは顔色ひとつ、息さえ乱れていなかった。
彼はにっこりと笑うと、また笛の音を響かせた。グレイ、メグミ、カノは3人とも身構え、次にくる攻撃に備えた。
ノアールの影からふらりと現れたのは、大柄な1人の男だった。
カノ「…ひっ…ぁ…」
その男の顔に、カノは見覚えがあった。この男を見るときはいつだって理由は同じだった。つまり、今回も。
感覚リンク、そう呟く男の顔が思い出された。
- Re: FAIRYTAILの小説書きましょう♪ふぉー! ( No.191 )
- 日時: 2017/06/16 21:46
- 名前: ほたる (ID: I/bOiKKq)
メグミside
まずい、まずいまずいまずい…ッッ!!
さすがはギルドマスター…やはり強い。
三人もいれば……と思っていたのだが、そう簡単には行かないようだ。
ワタシは先ほどのダメージでなかなか立ち上がれないでいる。
治癒のペースが追いつかないのだ。
しかしここは戦場…そんな流暢に回復などまってられない。
壁に手を付き、なんとか立ち上がる。
すると人間の体というものは不思議なもので、一度立ち上がってしまえば案外普通に動けるようだ。
メグミ「……ッッ!!」
直後、僅かだが時空が歪む音、つまりは魔法を使用する音が聞こえた。
とても微妙で僅かなもの…確証すらない。
だけど………ワタシはワタシの中の"竜"を信じるよッッ!!
メグミ「…ッ音の守り(ベール)ッッ!!」
地面に手をついて思い切りに力を入れるとそのまま飛ぶようにして、グレイさんと背中合わせの位置に着地する。
術式を展開し、受けた攻撃は思いのほか重く…淡い桃色の障壁は今にも割れてしまいそうだ。
……1発1発の威力が強すぎる…!!
グレイ「悪い、助かった。」
メグミ「…いえ……。」
グミに変わるか否か……
そんな思いがメグミの中を駆け巡る。
グミの方が"暗殺者時代"の戦闘経験が豊富で、戦闘への知識もある……。
しかしグミでは奥の手である"片目の蝶"が使えない。
両方や、その時々…なんてうまい話はない。
人格の入れ替わりは時間大量の魔力を有するのだ。
…あぁ!もうどうすれば!
ノアール「惜しいよ、君達は実に惜しい。これだけの実力がありながら選択を間違えるとは」
「間違えてなんかない!」すぐ様そう言いたい。
…けれど中途半端な治癒での無理な動きの反動か体がうまく機能してくれない。
ワタシはただ、彼のその憎たらしい笑顔を睨みつける事しかできなかった。
メグミ「ッッ!!」
彼は笛を構える。
この笛は良くないもの。そう先の襲撃でよく理解してる為、三人ともすぐ様身構える。
奏でられた音は思わず耳を塞ぎたくなるほど不快な音だ。
音の滅竜魔導士であるワタシが唯一たべられないもの。それ程までにこの音は不快だった。
今までこんなことなんて無かったのに……。
音の滅竜魔導士への対策なのか…将又ただの偶然か……
いや、もうそれはどうでもいい。
ただ……腹がたつんだ。
ギュッと掌に爪がくい込みそうなほどまで拳を握る。
こうでもしていないとワタシを保てなくて…今にも竜となって全部、全部…壊してしまいそうで……。
カノ「…ひっ…ぁ…」
カノさんの掠れた声に意識が戻される。
ノアールさんに視線を向けると、何やら大きな影が彼の後ろから姿を現していた。
よくみると大柄な男の人らしい。
初めはぼんやりとしていたシルエットが段々と明らかになっていくのを感じた。
その男の人は恐らくカノさんの知り合い。それもきっとトラウマ的な何か…。
明らかに、表情を見るまでもなく彼が怯えてるのが感じられる。
それでも、突然この場に現れたのだ。本人であるとは考えがたい。
普段のカノさんなら…気づけるはずだ。
彼がこれほどにまで怯える相手……。
早く彼の元へいかなくちゃ…!取り返しのつかないことになる……!!
- Re: FAIRYTAILの小説書きましょう♪ふぉー! ( No.192 )
- 日時: 2017/07/12 08:00
- 名前: 燐 (ID: lh1rIb.b)
NOside
思わず口から飛び出てしまった悲鳴を抑えるために両手で蓋をした。
落ち着け、落ち着けと必死になって右手はまだ口を押さえたまま、左の手でズボンの裾をぐっと握る。シワになるだなんて一切考えずに。まぁ既に上下ともに砂埃に塗れているわけだが。
更に1回、2回、3回と笛を鳴らして、今度はカノも見たことのない男が数人、笛の音につられて呼び出された。彼はその男達がきちんと“機能”しているかどうかを確認して、満足したのかフフンと鼻を鳴らした。
ノアール「私は少し他のメンバーを見てくるとするよ。それまでこの子達と遊んでおいてくれ!」
心底楽しそうな明るいその声はやけに響き、この広場を突き抜けた。
言うが早いかノアールは帽子を押さえてくるっと1回その場を回る。そしてその顔がもう一度カノの視界に映ろうとする頃には、彼はもういなかった。忽然と、その姿を消したのだ。
はっとして、とりあえずこの男の元から離れようと分厚い本を取り出したカノは躍起になって叫ぶように英雄〈ヒーロー〉の名を呼んだ。
カノ「主演劇場『ピーターパン』よりヒーロー(英雄)【ピーターパン】!主演、鹿野修哉!!」
ピーターパンのトレードマークの羽根のついた緑色の帽子を軽く右手で抑えて軽く地面を蹴ると、ぶわっと風がカノの周りを踊った。彼の足は数センチ程宙に浮いており、その下を小さな石が転がる。
カラカラと木の葉が舞い上がって、空中で再度足を蹴り上げるとその体は、並び作られた家と同じ程の高さまで浮き上がっていた。
カノ「グレイ、メグちゃん、その男の体に触れないでね!」
一度冷静になれば見えてくるものは多い。
あの男は感覚リンクを使うとき、必ずカノの体に触れていたのを覚えていた。要はあの男に触れなければいいのだ。
メグミ「わ、かりました!」
グレイ「…おいカノ!後で説明しろよ!?つーかそもそもあいつはどこ行ったんだよ!」
メグミとグレイはいきなりの指示に驚いたものの、素直にその指示を受け入れて一旦男達から距離をとるよう後ろへ飛び退いた。
後で説明しろと、カノがこの件に関わってることを意識しての発言にさすがだと素直に感心した。
カノが関わっていると知って尚、カノの言うことを信じてくれる。言い方を変えれば、カノはいつだってこの2人を騙して裏切ることができるのだ。
グレイ「で?俺らはどうしたはいいんだ!?」
カノ「一定の距離を取りながら攻撃して!とりあえず上までッ、ぐぁう!?」
2人に指示を出す途中で3人の男のうちの1人がカノの背中を蹴り飛ばし、2人がそれに気づいてその男を目で捉えたときにはカノは2人の近くの壁に叩きつけられていた。
誰にも見えなかったのだ。男の動きが早すぎて。
グレイ「…なるほど、それがお前の魔法か」
メグミ「グレイさん!?何をそんなのんびりと分析してるんですか!?」
グレイ「あぁ、カノなら大丈夫だろ。ちゃっかり受け身とってたしな」
あわあわと慌ただしくなるメグミを窘めつつ、グレイはカノに聞こえるように嫌味をたっぷりと含んで言い放った。
そう言われるとそんなような気がしてきたとメグミは少し前まで記憶を遡る。男の動きが早すぎて男にばかり目を向けていたが、そういえばカノはというと蹴り飛ばされたあと体の向きを変えて壁に当たる部分を最小限に抑えようとしていたのを思い出した。それもどこか笑みを浮かべながら。
カノ「えー、僕受け身すらとっちゃいけないの?」
グレイ「いーや、やられたフリが上手いですねっていう嫌味だよ」
カノ「普通にひどくない!?え、それぐらいよくない!?」
ぱらぱらと崩れ落ちる壁の元でグレイと話すその姿には特にこれといった目立った外傷もなく、強いて言うなら彼のぴょこぴょこと跳ねた髪の毛が砂埃に塗れているくらいだった。
カノ「あいつね、動きは早いけど攻撃は軽いから大丈夫だよ。とりあえず動きを封じればあいつは倒せる。問題は__、いや、やっぱ何でもない」
問題はあの男だと、続く言葉を切る。
できることであればこのまま一生関わりたくなかった人物なのだ。
カノはもう一度ふわりと飛んで、小さめのガトリングガンをポケットから取り出した。
ポケットから出てくるはずのないサイズと物に一瞬驚いた2人だったが、そう言えばそうだったとすぐに前を見据えた。
カノ「とりあえずあいつには触れないように、他の2人をまず潰そう」
- Re: FAIRYTAILの小説書きましょう♪ふぉー! ( No.193 )
- 日時: 2017/07/16 17:24
- 名前: ほたる (ID: qc1RdKQl)
メグミside
メグミ「………いッ!!」
体全体に痛みが走る。
上手く分散することの出来なかった痛みがワタシの体を襲う。
受け身の取り方なんて…教えてもらったことないし……………。
…なんて言い訳じみてるなと、思わず苦笑してしまう。
どうして他の人みたいにうまくできないんだろう…。
臨機応変になれないんだろう…。
そう、ネガティブになってしまうのはワタシの悪い癖だ。
____________________
カノ「とりあえずあいつには触れないように、他の2人をまず潰そう」
グレイ「あぁ。」
メグミ「了解です!」
その声を合図に全員が動き出す。
"あいつ"から距離を取りつつもいつでも攻撃が入れられる位置に移動する。
敵のうち2人はスピードタイプで攻撃は軽め……。
でも、スピードなら…ワタシも負けないはず…!
幼い頃から無駄に運動神経だけは良かった。
それに今は"竜"がワタシの中に宿っているのだ。
ワタシがスピードで勝てないのなら恐らく2人も勝てないだろう。
そう考えると尚更、負ける訳にはいかない。
グッと拳に力を入れるととある魔法の名を叫ぶ。
メグミ「……音楽魔法…ッ!
独奏曲ッ!!」
ワタシの周りに人間の嫌う独特の周波が流れ出す。
それは言わば、未成年の嫌うモスキートーンのような…そんな感じ。
ワタシの半径5m以内に近寄ったワタシが敵と判断した人物にのみ適用、忽ち音酔いの症状が現れ出す。
これで少しは動きが遅くなるといいんだけど……。
この魔法の制約である半径5m以内…に入るよう、敵の方へと足を進める。
すると走る緊迫した空気。
相手にも知能があるのか…すぐには攻撃してこないようだ。
が、後一歩でも歩みだしたら動き出しそうで……。
メグミ「…ッッ!!」
5m以内に…入った。
無事に魔法が発動でき、思わずほっと安堵の息が漏れる。
ここが戦場である事を忘れて………。
カノ「…ッ!メグちゃん!!」
グレイ「メグミ!」
刹那、2人がワタシを呼ぶ声と襲い来る痛みと浮遊感。
あれ……もしかしてワタシ…失敗しちゃった…?
メグミ「…ぁ……。」
___________________
銃声とひんやりとした空気…。
時折聞こえてくる苦痛な声。
ああ…ワタシが失敗してしまったせいでこんなにも戦況が悪化してしまったんだ………。
早く戦闘に戻らねばとヨロヨロと立ち上がるが、受け身を取れていなかったのが仇となったのか上手く体に力が入らない。
…本当に情けない………。
戦わなければ…でも今言っても足でまといにしかならない………。
…だからといって、この悲惨な光景を立ち止まって見ていられるほどできた人間ではない。
嗚呼…この時間すらも惜しいというのに…ッ!
中々まとまらない頭に苛立っていると、
ふと視界にピーターパンの力を借りたカノさんの姿が目に入る。
…刹那、ワタシの中で一つのアイディアが生まれる。
……………ネバーランドの住民達は大人になれない代わりに永遠に子供で入れる"時"を得た…………。
大人になることを"代償"に子供でいる時を手に入れた……。
…これは我ながらナイスアイディアではないかと口元が思わず緩む。
メグミ「…狂想曲………ッッ!!」
狂想曲…自由な形式で描かれたそれは……………
ワタシの体までもを自由へと導いてくれる。
たとえどんなに辛く苦しくても…全てが嘘かのように体が動くようになる麻薬のような魔法…。
メグミ「……音竜の……咆哮ッッ!!」
普段の1.5倍程威力が増されたブレス。
避けられたものの牽制にはなっただろう。
スピードも、威力も…先程までのワタシとはまるで違う………。
ただ………そんな…強化だけの都合の良い魔法なんて存在しない。
そう、これはインチキ。それも明らかに代償の要るインチキ。
通常の魔力回路だけではなく筋系、血管系、リンパ系、神経系までをも擬似的な魔術回路として、
......
意図的に誤認させている。
力を使えば使うほどそれらは摩耗して傷ついていく…。
その代償の代わりに使用者は限界を遥かに超えた力を手に入れる事が出来る…。
だからあまり長時間使ってしまうと、ワタシの体の方が先にガタが来てしまう……。
……だから…できるだけ短期決戦でいく…ッッ!!
- Re: FAIRYTAILの小説書きましょう♪ふぉー! ( No.194 )
- 日時: 2017/08/20 22:46
- 名前: 燐 (ID: PZX6sAnA)
NOside
薄い桜色の暴風がカノの横を通り過ぎると、背後から強烈な風が彼を襲い、後ろの方で家がガラガラと崩れ落ち続ける音だけがその耳に残った。
爆風の最中、思わず目を瞑って若干前屈みになっていると、足元にはいくつかの小さくなってしまった家の欠片がカラコロと転がりながら姿を現す。
恐らく敵はこの攻撃を避けたのだろうけど、もし自分がメグミの敵だったとして、今の攻撃を喰らっていたらと思うとゾッとした。カノは自分がこの攻撃を避けれるなんてそんなこと思わないし、当たってしまったら体がバラバラに引き千切られるなんてことも容易に想像できた。
見たところメグミの息は今の1発の攻撃で大分上がっており、今使っている魔法が切り札だということが大方予想できる。切り札、つまりはオーバーワーク。体力の消耗や持続性の無さ、果てには命の危険が代償として付き纏う、謂わば奥義。
今が然るべき時だと、彼女は身体の奥底に眠る力を引き出し、いつもの倍ほどの威力を発揮した。
本当に女というものは末恐ろしく、それ以上に頼りになるとカノは今世紀で何度目かの女の強さを目の当たりにした。怖くなって一瞬でも逃げ出してしまいたいと思った自分が恥ずかしく思えた。
メグミ「カノさん、グレイさん、この魔法はあまり長くは持ちません。…だから、」
グレイ「早いとこケリをつける、か」
メグミ「っ、そうです!頑張りましょう!!」
グレイは一旦敵から身を引き、少し乱れた呼吸を整えながら勢いよく上の服を脱ぎ捨てた。湧き上がる闘争心を抑えつつ、冷静に辺りを見回すと心底面倒くさそうに呟く。
グレイ「ま、そう簡単にくたばってくれるかは知らねぇけどな」
カノ「その時は原型がとどまらないくらいにぶっ潰すだけだけどね」
グレイ「だな」
最近カノは昔の自分がよく出てくるように感じていた。特に戦闘中だとかは、何だか楽しくなってきて段々と口調も荒々しくなっていくことが多い。今だってぶっ潰すなんて、言ってしまってから気づいた。
これは言動だけに限らず、思想にまで影響を及ぼしている。戦闘の回を重ねるごとに暴れたいという欲が膨れ上がっていく自分の中の猛獣を宥めるのに随分と苦労したのは記憶に新しい。
今までは見て見ぬ振りをしていたけれどどうやら今日は駄目らしい。だって、今いる場所は現実とは異なる異空間で、家が壊れようが道路が抉れようが地面に穴が開こうが現実には一切関係がない。瓦礫の下敷きになってしまうような一般人もいない。つまりは暴れ放題なのだ。
それを今のメグミのリミッターを外した姿によってやっと理解したのだ。
何にも気兼ねなく暴れられると思うと、自然に口の端が上がっていく。ついつい笑い出しそうになるのを抑えて、開いた口から笑い声が漏れでないように言葉で蓋をした。
カノ「『三銃士』よりフレーズ(名言)【One for all All for one】!」
白い本のページに3人の騎士が浮かび上がり青色に輝くと、カノ、グレイ、メグミの3人も同時に輝き出す。
3人の体にそれなりの魔力が戻り、お風呂上がりのように身体がホカホカと温かい。空気中や水、土などに潜んでいる精霊になる前の小さな小さな微精霊たちに力を分けてもらい、魔力と攻撃力がUPするのがこの魔法。
ひとりはみんなのために。みんなはひとりのために。皆が力を貸してくれる魔法の呪文。
メグミ「音竜の鉤爪!」
颯爽と2人の間を駆け抜けていったメグミに負けじと黒髪の青年は氷の檻を作った。檻の中には感覚リンクを使う男が1人。
男は辺りをぐるっと一周見回して出られないと思ったのか、大人しくぼうっとほうけている。
カノ「『かちかち山』よりアイテム【石】」
手のひらに現れた2つの石をカチカチと鳴らして両手に炎を纏う。
さあこれで舞台は整った。
桜色の竜に青色の氷、そして赤色の石。
あとは反撃のみ。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40