二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- ポケモンバトルM・EVO【サン・ムーン編突入!】
- 日時: 2016/12/23 03:17
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
『読者の皆様へ』
どうも、初めましての方は初めまして、タクです。今回のこの小説は、所謂対戦実況小説といったところでしょうか。
現在、他の小説の進みがなかなか良い感じになっているため、この小説の連載を決意しました。
タイトルはM(メガ)・EVO(エヴォ)、その名の通りメガシンカをテーマにした作品になると思います。また、第六世代で追加要素のあったポケモンに視点を当てていきたい所です。
また、今回のサン・ムーン発売に合わせて、第七世代を舞台にした対戦も描いていく予定です。
そして、この小説は種族値、努力値、個体値とった3値やHABCDSVなどの記号や、略称なんかが出てくる、所謂「廃人仕様」となっております。
一応、初心者の方にも配慮したような表現を極力心がけたいですが、あらかじめこういったことを知っている前提で読んでほしいと思います。
また、この作品と舞台は違いますが世界観を共有している、モノクロさん著『BOHパ対戦記録譚』があります。そちらの方も、よろしければご覧下さい。
ちなみに、作者のフレンドコードも載せておきます。XYにおけるフレンドサファリのタイプはノーマルで、ヒメグマ、ドゴーム、ラッキーが出ます。
フレコ:2809−9638−8089
※注意※
・本作品はバトルビデオを元にして作られたノンフィクションと一部フィクションです。
・そして、ストーリー中心です。小説という以上、当然ではありますが。
・ポケモンの擬人化あります。つーか、それらのポケモン中心です。
・分かりづらいかもしれない設定多々。
・選出画面があったり無かったり。
・イラストは後々用意するかもしれませんが、クオリティは期待しない方が良いです。
・メタ発言? んなもん日常茶飯事。
・にわか発言&下手糞プレイ? んなもん日常茶飯事。
・対戦相手の名前は改変して使用します。
・対戦相手への誹謗中傷はおやめください、メガボーマンダのスカイスキン捨て身タックルとシャンデラの眼鏡大文字が襲い掛かります。
・BGM置いてるけど、ポケモンじゃないかもしれない。
また、作者は対戦・交換などは大歓迎です。フレコは自分の雑談スレ『タクのノベルス・ポケモン図書館』に置いています。バトルビデオをこの小説に使わせていただくかもしれません。
以上のことを守ってうちのポケモン達の活躍を生暖かい目で見守ってやってください。
目次
第一部:エリア開放編
プロローグ
>>01
パート1:謎の敵・静炎邸
>>02 >>03 >>04 >>05 >>06 >>07 >>10 >>11
パート2:遮断された箱庭・氷海水域
>>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>19 >>20
パート3:湖の決闘・中部緑域
>>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>32
パート4:忍の街・群雲街域
>>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38 >>39 >>40 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47
パート5:この風が泣いている・天獄峡域
>>48 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63
パート6:雷電霹靂・雷電械域
>>75 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>92
パート7:暴龍警報・頂龍山域
#1:絶望の淵へ
>>103 >>104 >>105 >>106
#2:反撃の狼煙
>>107 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>115
#3:龍の守護者
>>116 >>117 >>118 >>119 >>120
#4:最後の守護級
>>121 >>126 >>127 >>129 >>131 >>134 >>135 >>136
パート8:仲間達が待つ場所へ
>>137
第二部:新世代編
パート1:セントラル・フィールドへ
>>138 >>139 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>150 >>151 >>152 >>153 >>154
パート2:留学生は突然に……
登場携帯獣紹介
>>70
用語解説
>>71
番外編:始末屋の日常と非日常
パート1:前々前作でラスボス役やっててもキツい奴はキツいので以下略
>>95 >>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32
- パート7:暴龍警報(5) ( No.107 )
- 日時: 2015/04/08 00:25
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
気付けば、アクアはベッドの上に寝ていた。
とても悪い夢を見た気がする。
チャモの首が跳ね飛ばされて、そこから先は-----------覚えていない。
「あ、あはは、夢でしたか、夢」
しかし、おかしい。
まず、この部屋は明らかに自室ではない。
病室、だ。
暗くて最初は分からなかったが。
見れば、そこには少女の姿があった。
思わず、名を呼んだ。
「チャモさん!!」
「……」
少女は少し悲しそうな顔をした。
「……ごめんなさい、アクアさん」
ようやく、少女の顔が分かった。ムゥだ。
どうやら、間違えていたらしい。
----------普通ならば、ありえないのだが。普通ならば。
「はあ、何だムゥさんでしたか。で? 何で僕は病室に寝かされて----------」
「それは--------」
泣きそうな顔で、彼女は曖昧に答えた。
まるで、答えを出し渋っているような。
アクアの表情は、今のところ至って普通だった。今のところ。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、それで? チャモさんはどこに----------」
「アクア」
反対の方からも声がした。
ガメリオだ。
「目の前で見ていたおめーが、一番分かっているはずだぜィ」
「はは、目の前----------」
夢じゃない。
それは、アクアが一番知っているはずだった。
いや、認めたくなかった。
あんなことが、目の前で起きるだなんて----------
「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!」
絶叫した。
今まで、逃避していたものに”追いつかれた”というところか。
頭を抱え、身体が異常に震えている。
過呼吸気味になっており、発狂しかけているのは誰が見ても分かっていた。
「すまねぇ、アクア。でも、現実を見てくれ!!」
「夢だったら!! 夢だったら良かったのに!! 僕は、僕はチャモさんの前で何にもできなかった!!」
嘆き、嘆き、嘆き。
ただ、それだけが襲い掛かる。
「目の前で、爆ぜたんだ----------僕の目の前で-----------」
データ生命体は頭を失っても、バックアップデータによって再度復活することができる。
だが、しかし。
電脳医学にも精通していたアクアにだからこそ、知っていた。
そのバックアップデータは、素の人格面だけをコピーしたもの。
立ち振る舞い、性格、行動は確かに彼女そのものかもしれない。
だが、しかし。
「----------それでも、”僕らを知っている”チャモさんはもう、戻ってこない----------」
記憶は本人の違和感のないように操作された仮初のものになる。
即ち、アクア達のことは全て忘れてしまうということになる。
だから、1つだけ言える事があった。
----------アクア達を知っている、アクア達の知っている、彼女はもうこの世にはいない、ということ。
「何で、止められなかったんだ!! 僕があのとき止められていれば!!」
後悔の念が巻き上がる。
「僕は相棒を死なせてしまった!!」
「お前の所為じゃねェ。お前の所為じゃねェ」
「死ぬなら、僕が死ねば良かったんだ!! 僕が、僕が身代わりになれたら、良かったのに!!」
シーツに顔をうずめて、泣き続ける彼を、誰も止める術はなかった。
自責の念だけが募っていった。
***
廊下で、2人は暗い気持ちで沈んでいた。
「しばらく1人にしてくれ、か。変な気を起こさなければ良いがねィ」
アクアはあの後、発狂し1人でオノノクスに突っ込んでいくのを、ムゥとガメリオとフレイの3人がかりで抑えたのだ。
仕方が無かったので、ガメリオが最後には気絶させた。
そして、チャモの胴をムゥに乗せ、そのまま命からがら此処まで逃げ込んだのである。
「無理も無いです」
「おい、それよかムゥ」
ガメリオは彼女の頭に、手をぽん、と置いた。
「我慢なんざ、しなくて良いんだ」
彼女の瞳に、雫が溜まっているのは、さっきから分かりきっていた。
それでも、彼女は1滴も零さなかった。
ガメリオには、それが堪えられなかった。
「わかってた……んですね」
最後まで、彼女は平静を保とうとした。
しかし、その場に崩れ落ち、手を顔で覆い、そのまま嗚咽をもらしはじめたのだった。
「……わりぃ、ムゥ。本当に、すまねェ。何もできねーのは俺の方じゃねーか」
己の無力さを思い知る。自分は、目の前にいる少女の涙を止ませることすらできない、ちっぽけな男だと罵った。
それで何がどうにかなるわけでもないことが、分かっていて。
***
「首から上は?」
「オノノクスに踏み潰されて消滅したわ」
「やっぱりダメ、か」
この病室のベッドに寝転がるは、ボマーだった。
腹に傷を負っており、動くと痛むらしい。
「つーか? 首から上が吹っ飛んでも、存在は消えないのね俺ら」
「私達はマスターからみれば、悪く言うと対戦のための道具よ。内部(こっち)のいざこざでデータが最悪消えることはないように、電脳医学は発達してる」
だが。
思い出や大切な人の記憶を蘇らせるには至ってはいない。
くっ、と怒りを食い殺し、ボマーは話題を変えた。
「そういえば、モーターの奴は?」
「雷電械域に送られたわ。数時間の改修で済む程度らしいけどね。プラズマ体だし」
彼女ならば大丈夫か、と少々ぞんざいな扱いではあるが、そう判断した。
元々が電影少女みたいな彼女は、切り刻まれても焼かれても平気だったはずだ。
「ああ、そうだ。アクアの方も、見に行ってやってくれ」
「でも」
「あいつはな。本当にチャモと仲が良かったんだ。今のあいつには、誰か人が着いていねーとダメなんだ」
「分かったわよ」
BOHの準備期間で何度も見た光景。
チャモがじゃれつき、邪険にしつつも満更でもない様子のアクア。
「何であれ、だ。あのチート野郎は絶対にブチのめす」
「それに、セブンスドラゴンを誰が復活させたのかも気になるわね」
「んなもん、分かりきってるだろ」
「……動揺しすぎて忘れていたわ」
影の携帯獣の守護級。
他に何も無ければ、彼らがやった以外に考えられない。
「ぜってーに許さねぇ」
ボマーの目には、悲しみだとかそういう色は無かった。
淡々とした怒りが込められていた。
いや、単に涙すら枯れ果てたのかもしれない。
***
「入るぜィ、触手野郎」
全身を包帯で包みながら、ナノマシンのシャワーを浴びているレイドに、ガメリオは話し掛けた。
「---------おめーはまだ知らないと思うが----------」
「チャモが死んだ、か?」
「ひょっとして起きてたのかィ、おめー」
軽く驚きながら、ガメリオは答えた。
「余りの痛みで飛び起きてな。惨事を見て、もう1回気が遠くなった」
冗談っぽい言い方だ。
しかし、目は全く笑っていない。
いつものような、間延びした口調も鳴りを潜めている。
「信じられねぇよ……あいつはドジで間抜けでうっかりやだったけどよお」
レイドの頬に涙が伝う。
「俺、まだ信じられねぇよ……」
***
「仲間が1人消えて涙を流す、か」
暗業に仲間は不可欠だ。
しかし、死んだときは自己責任。追悼なども一切しない。それが隠密機動の暗黙のルールだった。
仲間が死んだからといって、涙は流すことはしない。
「俺はおかしいのかねィ」
空を見上げ、ガメリオは呟いたのだった。
彼らを見ていると、それがおかしいように感じられてくる-----------
- Re: ポケモンバトルM・EVO【ポケモン対戦小説】 ( No.108 )
- 日時: 2015/04/08 13:57
- 名前: モノクロ ◆M6R0eWkIpk (ID: yIVvsUU5)
まだ始まったばかりですが、ぼっちの大学生活は暇なモノクロです。昼食が美味しいのは小さくない利点ですが。
というわけで、暇をもて余したのでコメントしています。不純な動機でごめんなさい。
見れば分かるように携帯からのコメントなのでいつもよりコンパクトですが、中身は雑です。すみません。
と、前置きが長いのはいつも通りでコメしますが、ここで番外が挟みましたね。以前にフレ戦しましたが、相性補完ができていてサイクル戦に強いサザングロスマリルリの並びは強力ですね。グロスの単体性能がネックですが。
内容に触れますと……あぁ、グレンさんが仕事をかっさらっちゃいましたか。面子はドラゴンキラーなのに、選出は肝心の妖精と氷の方々はいなかったですけど。
そして次は……そっちにもスパコンが出てきましたか。しかもなかなかにうざ……執事要素皆無ですね。名ばかりと言うか、スパコンの執事なんてイメージすら湧きません。
しかし、襷サザンなんて初めて見ました……いつかレートで遭遇した襷ギルガルドを思い出します。
サザンはそこそこ耐久もありますし、苦手な相手にはめっきり勝てないような性能だと個人的には思いますが、実際はどうなんでしょうね。サザンは拘り率が高いので、スカーフ偽装とかはできそうですが。ちなみにモノクロは拘らないサザンなら、HCチョッキサザンとかを使ってた時期がありました。耐久はなかなかなんですが、遅くて微妙でした。
それにしても、ドーラが言う影のような存在と、さいごの言葉のみのやり取り……ただの番外では終わらないなにかがありそうですね、これは。
そんなモノクロ個人の考察はさておき、本編に戻りますが、いよいよ最後の領域に突入ですね。
しかし、出発時の茶番は、ボマーとアクアの連携は、ガメリオの珍しい一場面はなんだったんだと言いたくなるような凄惨さですね……これについては先日も言ったので割愛しますが、あまりに急激な変化だと思いました。
それについては述べたいこともあるのですが、個人的なことも含みますし、何より打ちにくい携帯(いまだガラケーという旧時代の遺物)なので、今は黙っておきます。
とにかく現時点で気がかりなのは、チャモの今後の立ち位置と、セブンスドラゴンとやらをどう狩るのか、ですね。
さらに言えば、山域を解放した先はどうなるのか……
正直この辺は憶測しかできないので、次回以降を待つとしますか。
ではでは。
- Re: ポケモンバトルM・EVO【ポケモン対戦小説】 ( No.109 )
- 日時: 2015/04/08 20:27
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
モノクロさん
どうも、ありがとうございます。
始末屋は、グレンのようなフリーターよりもさらに踏み込んで裏社会に精通した連中ですね。やってることは賞金稼ぎのようなものです。ただし、グレンの名は彼らの間でもかなり知られていますが。
こちらのスパコンも擬人化体はありません。ただし、喋ります。しかもあんまし役に立ちません。何コイツ。
襷サザンは電磁波撒くこともできるので、なかなか器用でしたよ。自覚があれば。
あ、あの言葉のみのやりとりですか。少しの間上げていたんですけどね、微妙だったのですぐ消しました。
ただ、今後起こることは大体あのとおり----------かもしれません。
さて、ボマー組の方ですが、茶番などと呼べる代物ではなくなってるよーな。いや、茶番とか無くて、最初ッからストーリーメインなのは上に書いていたんですけどね。
チャモの件は勿論のこと、現時点で無敵の強さを誇る化物を彼らがどう倒すかについては必見です。
そして、全てのエリアを開放したその先は、でも大体お察しの通りかと思います。
……変化というよりは、衝撃でしょうか。ストーリーの安定感をブチ壊したかった、といえば分かりやすいでしょう。
とりま、チャモの件については後々自分のスレにでも書き込んでおいてください、それでは。
それでは、また。
- パート7:暴龍警報(6) ( No.110 )
- 日時: 2015/04/11 21:47
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
「----------入るわよ」
彼が1人になりたいと言っていたのは、廊下で目が腫れぼったくなっていたムゥに聞いた。
そして、「ち、違います、泣いてなんか……」と当の彼女は言っていた。仲間になった当時より、精神的に強くなったのは分かるが、大泣きしたのが諸分かりだった。
さて、問題は、アクアに何と言葉を掛ければ良いのか、ということだ。
「何で、あたしが……」
とは言ったものの、今のところ使い物になりそうなのが自分くらいなのが、その理由であることは重々分かっていた。
今のところ、ほぼ軽症・無傷で済んでいるのは自分とガメリオ、ムゥくらいなものであるし。
アクアもあの後、かなり暴れまくって怪我をしているのだ。
「アクア君?」
ベッドを見ると、びくり、と肩を振るわせる影。言うまでもなくアクアであった。
「……1人にしてください」
「そういう訳にも行かないわ」
パイプ椅子をベッドのすぐそこに立て、彼女はそこに座り、彼に話かけた。
電気を付けた。枕には涙の後が、くっきりまだ残っていた。
「何の為にあたし達が居ると思ってるのよ。辛い事は全部吐き出してしまえば、楽になるから」
しばらく黙っていた彼だったが、吐き出すように言った。
「最期に言っていたんです」
「え?」
「チャモさんが、”自分は足手纏い”って」
確かに、此処最近のバトルビデオを視ても、彼女の活躍は芳しいものではなかった。
いや、それどころか影の携帯獣との戦いでは、一度も敵を倒せていなかった。だが、そんなことを言えばレイドもなのだが。
「僕には、彼女が自分から死にに行ったかのようにさえ見えたんです!!」
「アクア君……」
「僕は、こんなに近くにいたのに、彼女が悩みを一度でも聞いたことがあったでしょうか、彼女をもっと理解しようとしたでしょうか。いや、できなかった!! その前に、チャモさんは------------」
消えてしまった。
「……居なくなったって実感が沸かないけど、やっと気付いたんです」
自嘲するような笑みを浮かべて、アクアは言った。
「僕は、チャモさんが好きだったんだ、って」
それが、もう戻ってこない彼女への、精一杯の告白だった。
見ていられなかった。だが、フレイは言葉をつむいだ。
「まだよ……チャモちゃんは死んでなんかいないわ。電脳医学も勉強していたあんたが一番分かってるはずよ!!」
驚いたような顔をアクアは向けた。
急き立てる様に、フレイは言う。
「チャモちゃんがあんたとの思い出を無くしたのなら!! あんたがまた新しく思い出を作れば良い!! 誰のことも覚えていないなら、また1から覚えさせれば良い!! 記憶が消えたって、記憶が消えたって、チャモちゃんはチャモちゃんじゃない!!」
ゴーストタイプである彼女だからこそ、分かっていた。
この世界の生命体の真の死の概念は、忘れられたときに、だと。
「でも、もう彼女は僕らの事を覚えていない!! 人格、行動、それはオリジナルと同じでも、バックアップは所詮、バックアップなんだ!!」
「信じてあげてよ!! 人格、行動がオリジナルと同じなら、また元のあの子に戻せるかもしれないんだよ!!」
それに、と彼女は続けた。
「データ生命体が本当に死ぬのは、大切な人に忘れ去られたときなのよ!! あんたがチャモちゃんのことを過去の人にしたら、あの子は本当の意味で死んじゃう!! あの子を助けられるのは、あの子の一番近くに居た、アクア君だけなんだから!!」
面食らったような表情を、彼は浮かべた。俯いて、何とか反論しようとしたが、何も言葉は出てこなかった。
だから、最後にヤケクソと言わんばかりに、
「……無茶言わないでください!!」
と叫ぶように言った。虚勢をはって、無理だ、と言いたくて。
とても、自分に出来るとは思えなかった。
「僕なんかが、僕なんかが---------------」
「ねえ、チャモちゃんのこと、好きなんでしょ」
「できるわけが----------」
「違うわ。あの子が帰ってきたときのために、何か真っ先にできるのは、あなただけ---------だから」
フレイは、彼を抱き寄せてから、言った。
「----------今は、思いっきり、泣いていい」
雫が零れた。塞き止められていたものが吐き出されるように、彼は泣き続けた。
「大丈夫。あたし達が、いるから。味方がいるから」
***
「どこに行くつもりだ」
病室の窓に脚を掛けて、そこから飛び出そうとする馬鹿に、女は声を掛けた。
「あー、見つかっちまったか」
「アホが。折角、言わんこっちゃない、この馬鹿マンダと言いにいってやろうと思っていたのに。今度は貴様が死にに行くのか」
「はっ、悪いが後輩が1人殺されてんだ。黙ってられるかってんだ」
馬鹿は女に向かってそう言った。
「つか? ガブリ姉こそ大丈夫なのかよ」
「私の心配は要らん。だが、問題は貴様であろう!! 何の対策も無しに、セブンスドラゴンに挑もうと思っているのか-----------ボマー」
はっ、と鼻で笑った彼は窓に掛けていた脚を下ろした。
「悪いが、病院で入院している様は主役には似合わないだろう?」
「そうだな。よって、今から教える場所も、お前には似合わないとは思う」
「んあ? 何だ」
ガブリは一呼吸置いた後、まずは----------ボマーの腹を掴んだ。
ダイレクトで、傷口がぐにゃり、と歪み、今まで余裕そうな笑みを浮かべていた表情が引き攣る。
そして、次の瞬間どうなるかはお察し。
「ギエエアアアアア!!」
「まず、貴様が行くべきではない。残るメンバーに行かせるつもりだ。だから、しばらく休んでおけこの愚か者」
ガブリは、その隙に絶叫するボマーを横目に病室の窓に、南京錠を掛けておき、脱出ができないようにした。尚、この南京錠はクレッフィの鋼から作られているため、ドラゴン避けになる。ドラゴンのボマーが突破するのは不可能である。
「わ、分かったよ、ガブリ姉!!」
ひぃひぃ、と息を切らして痛みを訴えるボマー。
流石、教え子に対しても第四世代の破壊力SSの方は容赦ない。
「さて、一応お前にも伝えておくが、その場所とはずばり---------図書館だ」
- パート7:暴龍警報(7) ( No.111 )
- 日時: 2015/04/14 21:03
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
ほぼ、同時刻。
妖華園域フェアリー軍団-------------
「あ、ひぃ---------やめて---------」
ぐしゃっ
-----------全滅。
ぐしゃっ、ぐしゃっ、ぐしゃっ、どーん、どーん、どーん---------
物が潰れる音は、途中で地面を踏み鳴らす音に変わった。
目の前の敵を完全に滅したドラゴン----------カイリューは、自らの主であるドラゴンが自分を呼んでいることを察し、頂上へ向かった。
羽を羽ばたかせ、着いた先には自分と同じ能力を持つ5体の龍が、1人の男の前で頭(こうべ)を垂れていた。
キングドラ、ガブリアス、サザンドラ、オノノクス、ヌメルゴン。
遅れてやってきたカイリューも、目の前の男への忠誠を示すように、ひざまづき、同じように頭を下げる。
「流石の働きと言ったところだな。ククク」
目の前の男からも龍のオーラが溢れ出ていた。男の前にいる6体の龍は、ゾッとしたかのように肩を震わせる。
恐怖。
本能のままに暴れてきた彼らが、初めて恐怖を覚えた相手は、目の前にいる男だった。
彼らの間には、その瞬間、いがみ合いをする思考、共闘して目の前の相手を倒そうという思考も消えており、以降彼に従うようになったのだ。
絶対的支配の基本は、絶対的恐怖にある。
逆らおうという意思さえも潰す目の前の男の覇気に、選択肢など与えられるわけもない。
さて、6体を値踏みするように見た男は、呟く。
「良いだろう。お前達も俺達と同じ、”影”にしてやる」
男は再び、笑みを浮かべる。
狂気的なカリスマを放つ笑みだった。
そして、次の瞬間だった。
カイリュー、キングドラ、ガブリアス、サザンドラ、オノノクス、ヌメルゴンの身体から、黒い稲妻が迸る。
6体はたちまち、漆黒の龍となった。
「ハハハ!! これで貴様らは影の携帯獣となった! ”龍帝級(ドラゴンロード)”とでも名づけるか、ハハハハハ!!」
さて、と男は目の前の6体に命じる。
「中央区域を破壊しろ」
***
「図書館だァ?」
怪訝な顔でボマーはガブリに返した。
もう、大人しくベッドに寝転がっていたが。
「そうだ。中央区域の電脳図書館。セブンスドラゴンに関する書物は、そこにしかないらしい。それだけでなく、そこにあるコンピューターはあらゆるサーバーに接続できる」
「ああ、そうか」
言ったボマーは、がたり、と起き上がった。そして、ナチュラルな流れでベッドを降りた。
え、ちょ、おま、というガブリの言葉をガン無視しながら。
そして、病室の扉に手を掛ける。
「待て待て待て!! 行かさないぞ、お前は!!」
今にも病室から出て行こうとするボマーの肩を掴み、ガブリは無理矢理彼を押し戻そうとする。
「行かせろ、ガブリ姉!! 後輩がやられてんだ。俺にはこれ以上黙って奴らの好きにはさせられねえ!!」
「大馬鹿者が!! お前が何故わざわざ出向く必要がある!! お前を此処から出せば、図書館は愚か、セブンスドラゴンを倒しにいく、とまで言い出すかもしれんからな!!」
「うるせぇ!! んなもん、最初っから決めていた!! チャモを殺した奴を倒す方法があるなら、それは俺がこの眼で確かめてぇ。そして、すぐさまセブンスドラゴンをブチのめしに行く!!」
「分からない!! 何故、お前が無茶をする必要があるのかも!!」
「うるせえって、言ってんだろ!!」
ガブリの手を逆に掴み返し、詰め寄るようにボマーは言い返した。
「俺はぜってーに許さねえ。仲間を4人も、俺の目の前で傷つけたあいつが!! 特に、チャモの記憶はもう戻らねぇし、アクアの心の傷も一生癒えねえだろう!! 言ってただろ、ガブリ姉!! ドラゴンタイプは正義の種族だって!! ドラゴンは強さと誇りの象徴だって!! そのドラゴンの姿と名を騙る連中を、俺はこれ以上、野放しにはでき------------」
そこで、言葉は途切れた。
パシン、と音高い平手打ちと共に。
しばらく、彼は呆然としていた。
小さい頃。いつも、悪いことをした後には、彼女の平手打ちが浴びせられ、「大馬鹿者!!」と怒鳴られるのが決まりだった。
だが、今回は違った。
「私が心配しているのも知らずに!!」
彼女は、彼を咎める言葉ではなく、自分の心情を叫ぶ言葉を発したのだ。
ガブリは、体勢が崩れたボマーの胸倉を掴み、病室の角に追い詰め、捲くし立てるように続けた。
彼女の顔は、怒りだけではなく、悲しさも綯い交ぜだった。
「ガバイトの頃から、お前を見てきた!! タツベイだったお前が成長するのが楽しみだった!! 腐っていたお前が、バトル・オブ・ホウエンでエースを張るようになるまでに成長したのを見て、私は本当に嬉しかった!! なのに!! お前は今度こそ、死にに行くつもりか!? 後輩の二の舞を踏むつもりなのか!?」
だが、ボマーはその程度では怯まなかった。
自分のやろうとしていることが、例え咎められたとしても、正しいと信じているからだ。
己の力を信じているからだ。
「安心しろ。ガブリ姉。仲間を連れて、だなんて馬鹿なことは言わねえ。俺は1人でドラゴンの頂点に立つ」
そこまで聞いて、半ば諦めたかのように、ガブリは彼の胸倉から手を離した。そして、そのまま何も言わずに、病室から出ようとする。
そして、去り際にボマーへ向かって言った。
「お前をぶった所為で傷が痛んでしまった。私は今から少し休む。間違っても!! その間に病室を抜け出そうだなんて考えるなよ。フレイ達を連れて図書館に行って、セブンスドラゴンを倒そうだなんて考えるなよ。絶対だ!!」
翻訳。
今のうちに病室を抜け出して、フレイ達を連れて図書館に行き、セブンスドラゴンを倒せ-----------ということであろう。
あー、分かったよ、と適当に返す。
そのまま、自分の病室へ彼女は戻って行った。
それを見届けて、ボマーは廊下に出る。幸い、見回りの看護婦は居ない。
ただし、フレイはそこに居たが。
「どうしたの、あんた」
「行くぞ、フレイ」
「ちょっと待ちなさい。その身体でどこに行く気」
「----------頼む。ガメリオとムゥも一緒だ」
いつになく真剣な表情の彼に気おされ、フレイは溜息をついた。
この男に、昔から規則だのルールだのは通用しなかったのを思い出したのだ。最近は少し丸くなっていただけで。
「で、本当どうしたのよ」
フレイは言った。
「ガブリさん、さっきすれ違ったけど--------------泣いてたわよ」
喉が詰まるような衝撃だった。
罪悪感が一気に押し寄せてくる。
しかし、それでもだ。彼の思いは変わらなかった。
-----------すまねえ、ガブリ姉。俺は最低の教え子だ。俺は世界一の馬鹿だ。
「ガブリ姉? 食あたりでも起こしたんじゃねーか?」
-----------命を賭しても、
「それよか」
-----------貫かねえといけねえもんが、あるんだ。
「行くぞ、電脳図書館に」
***
「ボマー、強くなったな。私の平手打ちで泣かなくなるとは」
古き日の思い出が蘇る。
-----------この大馬鹿者!! 何で、こんな悪戯をした!!
-----------うわーん、悪かったよ、ガブリ姉!!
-----------謝るなら、私じゃなくて、あいつに謝って来い!!
「行き先をチラ付かせれば、こうなるのは最初から分かっていた。合格だ」
とはいえ、先ほどの剣幕で放った台詞は半分演技ではなかった。
彼女の本心も、少なからず含まれていた。
彼がいきたくないと言うなら、それでも良かった。
だが、それは余りにもボマーらしくなさすぎる。
「----------私はもう少し-----------休むとするよ」
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