二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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ポケモンバトルM・EVO【サン・ムーン編突入!】
日時: 2016/12/23 03:17
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

『読者の皆様へ』

どうも、初めましての方は初めまして、タクです。今回のこの小説は、所謂対戦実況小説といったところでしょうか。
現在、他の小説の進みがなかなか良い感じになっているため、この小説の連載を決意しました。
タイトルはM(メガ)・EVO(エヴォ)、その名の通りメガシンカをテーマにした作品になると思います。また、第六世代で追加要素のあったポケモンに視点を当てていきたい所です。
また、今回のサン・ムーン発売に合わせて、第七世代を舞台にした対戦も描いていく予定です。

そして、この小説は種族値、努力値、個体値とった3値やHABCDSVなどの記号や、略称なんかが出てくる、所謂「廃人仕様」となっております。
一応、初心者の方にも配慮したような表現を極力心がけたいですが、あらかじめこういったことを知っている前提で読んでほしいと思います。

また、この作品と舞台は違いますが世界観を共有している、モノクロさん著『BOHパ対戦記録譚』があります。そちらの方も、よろしければご覧下さい。


ちなみに、作者のフレンドコードも載せておきます。XYにおけるフレンドサファリのタイプはノーマルで、ヒメグマ、ドゴーム、ラッキーが出ます。

フレコ:2809−9638−8089


※注意※
・本作品はバトルビデオを元にして作られたノンフィクションと一部フィクションです。
・そして、ストーリー中心です。小説という以上、当然ではありますが。
・ポケモンの擬人化あります。つーか、それらのポケモン中心です。
・分かりづらいかもしれない設定多々。
・選出画面があったり無かったり。
・イラストは後々用意するかもしれませんが、クオリティは期待しない方が良いです。
・メタ発言? んなもん日常茶飯事。
・にわか発言&下手糞プレイ? んなもん日常茶飯事。
・対戦相手の名前は改変して使用します。
・対戦相手への誹謗中傷はおやめください、メガボーマンダのスカイスキン捨て身タックルとシャンデラの眼鏡大文字が襲い掛かります。
・BGM置いてるけど、ポケモンじゃないかもしれない。



 また、作者は対戦・交換などは大歓迎です。フレコは自分の雑談スレ『タクのノベルス・ポケモン図書館』に置いています。バトルビデオをこの小説に使わせていただくかもしれません。

以上のことを守ってうちのポケモン達の活躍を生暖かい目で見守ってやってください。


目次

第一部:エリア開放編


プロローグ
>>01

パート1:謎の敵・静炎邸
>>02 >>03 >>04 >>05 >>06 >>07 >>10 >>11

パート2:遮断された箱庭・氷海水域
>>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>19 >>20

パート3:湖の決闘・中部緑域
>>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>32

パート4:忍の街・群雲街域
>>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38 >>39 >>40 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47

パート5:この風が泣いている・天獄峡域
>>48 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63

パート6:雷電霹靂・雷電械域
>>75 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>92

パート7:暴龍警報・頂龍山域

#1:絶望の淵へ
>>103 >>104 >>105 >>106
#2:反撃の狼煙
>>107 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>115
#3:龍の守護者
>>116 >>117 >>118 >>119 >>120
#4:最後の守護級
>>121 >>126 >>127 >>129 >>131 >>134 >>135 >>136


パート8:仲間達が待つ場所へ
>>137


第二部:新世代編

パート1:セントラル・フィールドへ
>>138 >>139 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>150 >>151 >>152 >>153 >>154

パート2:留学生は突然に……


登場携帯獣紹介
>>70

用語解説
>>71


番外編:始末屋の日常と非日常

パート1:前々前作でラスボス役やっててもキツい奴はキツいので以下略
>>95 >>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32



パート1:セントラル・フィールドへ(3) ( No.142 )
日時: 2015/05/16 09:55
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 セントラル・フィールド:地下闘技場。それは一言で言えば騒乱に包まれた場所であった。都市から少し外れた場所にある此処には荒くれ者が集うことで悪評が高い。 
 また、限られたものしか入ることができず、今回ボマー一行は裏社会にもある程度精通しているボマーのおかげで、何とか入場できたのだった。
 此処で開催されるトーナメントには、裏ルートから仕入れられた商品が出され、優勝すれば時に多くの富を手にすることもできる。
 会場の周りには、バーだとかロビーだとかはあるが、いずれも強面フェイスの強者が集っており。
 この場所に唯一馴染めているというか、中にいても違和感無いのは、ボマーのみであった。

「くそったれ、ルカ姉の奴どこ探しても全然みつかんねぇじゃねえか」
「あの人しょっちゅうフラフラしているからね。しかも、よ。この闘技場、地下にあるだけあってかなり広いわよ。此処に入り浸っているのは確からしいけど」
「きゃー、怖いヨ! ボマー、守ってー!」
「うっとおしいから抱き着くんじゃねぇ!!」

 しかし、である。
 問題はこの雑踏と広大な闘技場からルカをどうやって探せば良いのか。

「ボマーさん、ボマーさんっ」

 ムゥが駆け寄ってくる。少し周りが怖いのもあるのだろうか。

「あ? 大丈夫だ。心配すんな、俺達が居る」

 ---------そのボマーさんも懸念の一部じゃないというわけではないのですが……。
 とはいえ、彼はケジメはちゃんと付ける。今は安心して良いだろう。いつもセクハラの対象にされるとはいっても。
 
「そうじゃなくてっ! ルカさんってどんな人なんですか?」
「ああ」

 思い出したように彼は言った。そういえば、まだ彼女について話していないことも多々あったことを思い出す。
 ガメリオは「やーな予感しかしやせんがねィ」と既に呆れた顔をしていたが。

「一言で言うなら、バトルマニアだ。いや、一種のマゾかアレは。より強い敵と戦うためなら、手段を選ばん。しかもガブリ姉以外に負けた話が無いっつーのが一番ヤバいポイントだ」
「相当、強いんですね……」
「”血涙のルカ”の異名は伊達じゃねえってな」

 血涙のルカ。その異名は、彼女が一度暴れれば血の雨が降ること。そして、返り血で濡れた彼女の顔が血の涙を流しているように見えることから付けられたのだった。
 
「ルカはとっても怖い人デース。何というか、いつも何かを欲しているような、そんな瞳をしていマース。一言で言うなら、貪欲デース」
「そうね。そして、その欲しているものは強者の返り血」
「悪いが、俺は死んでも仲間にしたくないね、あの人だけはよ」

 珍しく、ボマーが仲間にすることを拒んでいる。
 ふーん、と今まで素っ気無さ全開だったガメリオが、突然悪戯を思いついたような笑みを浮かべた。



「じゃあ、尚更仲間にする必要がありますねィ」


 ボマーの顔が青ざめる。

「おい、ふざけんじゃねぇ! 俺はごめん---------」

 と言い掛けたそのときだった。誰かの肩が、自分の肩にぶつかった。


 ***


「おい、そこのゴツい人」

 数分前。
 癖毛と斑点コートの男は、巨体のレスラーのような風貌(そして鼻にはドリルが付いている)の男に問いかけた。
 「んあ?」と男はギロリ、とこちらを睨むも突っかかってくるわけでもないようだったので、質問を彼は続けた。

「ちょいと人を探しているんだが」
「人だァ? 誰だ? 俺らでも分かる奴なんだろぉーなぁぁぁん?」
「そこそこ有名なはずだ、居場所を教えてほしい」

 一呼吸置くと、コートの男は言った。



「”血涙のルカ”、のな」



 一瞬、ハンバーガーを手に持っていた相手のドリル男の動きが止まった。
 そして、さあああーっ、と顔色が青ざめていく。
 直後。



「WRYYYYYYYYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」



 奇声を上げて、そのままドタドタ、と走り去ってしまった。
 その光景を見ながら、「あちゃー」とコートの男は大して残念でも無さそうな声を上げていたが、後ろにいた仲間の男女が駆け寄ってくるのを見るや、そっちに目を留めた。
 数は2人。1人はスレンダーでワンピースのような服装を着用した女。もう1人は陽気そうな大柄の背丈に合わない青いジャケットを羽織った大柄の男だった。「どうだった、ライ?」と女の方が問うてくるも、うんざりした様子でライと呼ばれた男は答えた。

「どうだった? じゃねえよ、今のを見たろ。叫んで女子トイレに逃げちまったよ、あいつ」

 さっきのドリル男が走っていった方向を指差す。ドリル男に同情したのか、大柄の男は心配そうに、「気の毒ですねぇ……脅して聞き出したんじゃないですかぁ?」と言うも、

「黙れキモい。誰がそんなことするか。俺の方が下手したら脅されそうな体格差だったぞ。それが”血涙のルカ”の話をすこーし持ち出しただけで、これだ」
「女子トイレに慌てて入るって、尋常じゃない勢いの動揺っぷりね……」
「つーか? そういうお前達はどうだったんだ?」
「何の成果も得られませんでしたよぉ……」
「ちったぁ、役に立ちやがれ!! 俺だって、必死こいて色々聞き込みに回ってんだからよ!!」
「仕方ないでしょ。”血涙のルカ”は唯でさえ広いこの地下闘技場……いや、それを中心とした地下街をうろうろしているって話だから」

 はぁ、と辟易した彼は話を変える。

「そんでもって、ガキ共も心配だな。連れてきたのは良いが……」
「レンとユキが居るから大丈夫でしょ、その辺は」
「ちっ、あの筋肉女に任せるのだけは、やっぱり気に入らねぇ……」
「あら。レンがいないと門前払いされそうになってたのにね」
「それはそうだが、それとこれとでは話が別だ!」
「何だかんだで、互いにもっと素直になれば良いんですがねぇ」

 大柄の男が、間延びしたような口調で言うが、それに対して「黙れ、きめぇんだよ、とっとと続けるぞ」と苦言をこぼし、コートの男は次の聞き込みに向かう。



「行くぞ、ラグナロク! ココロ! こうなったら何が何でも、あの筋肉女より先に”血涙のルカ”の居場所を見つけるんだ!」


 彼はココロとラグナロクを連れ、他に情報を知っているものは居ないか、探し始める。
 しかし、一向に有力な情報は見つからない。どうする、このままでは時間の無駄である----------


「っと、すまん」


 ふと、自分の肩が誰かの肩にぶつかったことに、彼は気付き咄嗟に謝った。
 「ああ」と相手の男は曖昧に返す。
 次の瞬間、互いの表情は凍りついた。別に互いの態度が気に食わなかったとかそうではないのである。
 コートの男は、目の前のサングラスを掛けたジャージの男に果てしない敵意に似たような感覚を覚えた、それだけだ。

「おい、お前。久々じゃねーか」

 フランクな挨拶は唯の社交辞令である。
 有り余る闘争心を剥き出しにし、彼は相手の男を睨んだ。
 そして、今に至る。


 ***


 ぶつかってきた男に敵意を覚えたのは、ボマーも同様であった。
 目の前の斑点コートの男。あからさまに見覚えがある。というか、これまで幾度も技を交えた相手だった。
 もう、仲間の止める声など聞こえない。

「ちょっと、ボマー! どうしたのよ! ……げっ、あの人は」
「旦那! 旦那! いきなり喧嘩ふっかけるなんて、らしくねぇですぜィ!? ……あー、確かにこれはやばい人と出くわしちまいやしたねィ」
「ボマーさん! 落ち着いてください! ……誰ですか、あの人」
「オーマイガー、大変ネ……」

 自分とは別の管轄のプレイヤーの管理下にある携帯獣。
 名はもちろん、知っている。
 それを呼んだ。


「----------しばらくだなぁ、”雷切”ィ。丁度てめーを俺様の捨て身タックルで、ぶっ飛ばしたかったところだぜ」


 雷切(ライキリ)。それが、コートの男の名前だった。
 見た目はボマーよりも年上だからか、大人びている。目のふちには自らの原型を暗示しているのか、赤い隈取が施されていた。

「それはこっちの台詞だ、ボマー。俺のめざめるパワー(氷)でまた氷像になるのがご希望ならば、今此処でやってやっても良いんだが」
「氷像? はん、相変わらずはったりだけは一丁前じゃねーか。誇り高いホウエンドラゴンの名前が泣くぜ。ま、もっともてめーはメガシンカ”しねえのか”、はたまた”できねえのか”は知らねぇが、一回も俺らにそれを見せたことはねーよな? つまり、ドラゴンの成り損ないって訳だなぁ?」
「馬鹿らしい。そうやって環境の頂点で胡坐をかいた結果が、レーティングのランキングに出てるのがよ、まだ分からんもんかねぇ? お前の傲慢さには辟易していたところだ、うんざりだ、氷像にすんのも惜しい」
「本当てめぇ、何で俺をいちいちイラ付かせる言葉しか、吐かねーんだろうなぁっ!!」
「それはこっちの台詞だぜっ!!」


 次の瞬間、ボマーはいきなり目の前の男に突撃をかませた。
 一方の雷切も、拳の内側に凍てつくエネルギーを溜め、至近距離で解き放った-----------

パート1:セントラル・フィールドへ(4) ( No.143 )
日時: 2015/05/17 14:06
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ドカンッ!!


 大きな爆発音が響き、ぶつかり合った2人は弾かれたように後退した。

「へっ、相変わらずよわっちぃ」
「生ぬりーな。この程度かよ」

 ぶるぶる、と恐れに身を震わせたムゥは思わずフレイに抱きつき、問うた。

「あ、あの人って……」
「雷切。そして奴のトレーナーは、うちのマスターの同業者だったはずよ」
「マスターは同じサイトで知り合った彼と、仲が良かったのは確かネ。相手がこっちをどう捉えてるかは知ったこっちゃないケド。その代わり、互いのエースと参謀は相当仲が悪いネ」
「そいつが何故此処に? 奴は噂によれば、バトル・オブ・ホウエンが終わって以来、自分のボックスに戻れなくなったとは聞きましたがねィ」

 雷切と直接手合わせしたことがあるのは、今のところこの中ではボマーのみだ。彼のことをもっと知っているのは、アクアだとかレイドだとか、そういう面々である。要するに、BOHに参加したことがある面子だ。

「そして、トレーナーの名はモノクロ。マスターが一番交流の深い人物でしょうね。しかも、執筆の腕、ポケモンバトルの腕、どれを取っても恐らくうちのマスターより上」
「それもそのはずでさァ。あの方はこのサイトで、『ポケットモンスターBW 混濁の使者』という作品で2年前、金賞を取っていまさァ」
「さらに、『デュエル・マスターズ Mythology』はかなりの人気ね」
「雑談掲示板『DM第壱談話室』のスレ主でもあるネ」
「さっきから3人ともすっごい説明口調なのです……」
『気にするな』

 そのほか、色々お世話になっています。作品の雰囲気としては、しっかりとした世界観、そして重厚なストーリー、多彩なキャラクターがリアルに動いており、いずれの小説もドラマティックな展開がされています。また、正義・悪というよりも、さらに深く人間性を問うた作品になっており、前述の受賞暦もあってカキコではかなりレベルの高い作品と自分は思っています。
 さて問題は、目の前の雷切がこの作品と世界観が同じ”BOHパ対戦記録譚”の主人公であることだ。
 
「とうとうこっちのスレにまで足伸ばして来やがったか、テロリストめ。面貸せ、この野郎!! メンバー諸被りなんだよ、ラグラージ、バシャーモ、そしてユレイドルに至ってはこっちの変体触手のほぼ丸パクリの型じゃねーか!! ふざけんなよ、てめーらぶっ潰してカキコで最も有名な対戦小説がM・EVOだということを証明してやる!」
「ちょ、ボマー! あんた作者が乗り移ってる!」
「はっ、何言ってるのか分かんねーな、脳筋バカマンダ。大体、そっちのヒロインのフレイ? だっけ? 前にうちの主人野郎が書いてた作品のキャラから名前取ったみてーだがな、パクリストはそっちなんじゃねぇか? ああん? あの主人野郎の肩を持つつもりなんざ皆無だが、そもそもラグラージとかバシャーモが居る時点で、そっちがパクリだろうが! 俺らが先なんだよ、俺らが先! しかも、度々こっちの小説をネタにしやがって、覚悟はできてんだろーな!」

 いや、マジですいませんでした。

「見苦しいわよ、ライ! それくらいでやめなさいって!」
「あたしの名前、パクリだったの……知らなかったわ」
「やべぇ、フレイのお嬢がブルーになってやすぜィ!!」

 とうとうキレたか、作者の意思が憑依したと思われる両作品の主人公。
 馬鹿だがめっさ強いボマーと、色々足りないところはあるが参謀としての腕は確かの雷切。 
 色々正反対の2人が並んだ時点でお察しであった。

「久々にキレちまったよ……ちょっと”話”しようぜ」
「そうだな。終わるころには氷像が綺麗に出来上がっ-----------」


【???のブレイズキック! 効果は抜群だ!】


「えぶしっ!!」


 突如、後頭部に強い衝撃と熱が襲い掛かった。
 

【雷切は倒れた!!】


 雷切、たまらずダウン。その後ろでポキポキ指を鳴らしているのは、背の高い白髪の中性的な人物であった。

「すまない、こいつが迷惑を掛けたな」
「いえ、大丈夫です。こちらこそ馬鹿が迷惑を掛けました。ムゥちゃん」
「は、はいっ!」
「うおおおおおおおお、何だか知らんがラッキーだ、ぶっ飛べ雷切ィィィーッ!!」


【ムゥの氷柱針! 効果は抜群だ!】


「たわらばっ!!」


【ボマーは倒れた】


 どさぁぁぁ、とボマーは床へスライディング。
 見れば彼は殴りかかる寸前で串刺しになっていた。
 ムゥがやったのである。いや、正確に言えばフレイがやらせたと言うべきか。
 先ほどの人物が前に進み出る。

「私の名はグレン。見苦しいところを見せたな、すまない」

 グレンと名乗った人物は、後ろの2人に目をやった。
 1人は陰気そうなフードを目深に被った少年、もう1人は髪をポニーテールに結った快活そうな少女であった。

「雷切……自業自得」
「あわわ、雷切さん大丈夫かな、トンベリ君」

 トンベリと呼ばれた少年はぼそぼそと、「……ちーちゃん……こいつ、無駄にしぶといからすぐにまた起き上がる……」と地味に酷いことを言った。

「ふふ、おちびちゃん達。もっと早く起き上がらせる方法を教えてあげよーか?」

 ぞくり、と寒気がする2人。見ればいつからそこに居たのか、白い髪に、肩口を切り落とした白い簡素な着物を着こんだ女性が立っていた。

「雪姫……」
「見てなよー、えいっ!」


 少女と言うにはどこか浮世離れした雰囲気の女性・雪姫は、雷切目掛けて冷気を纏った白い光線を指から---------


「ストップ、ストォォォーップ!!」


 ---------放つ前に雷切はぎりぎりのところで起き上がったのだった。

「殺す気かてめぇ!!」
「おや? 雷切君の特性は危険予知じゃないでしょ? まだ寝てなきゃ」
「永遠の眠りに付くところだったわ!!」
「大丈夫! 今回は特別にCS極振り火力補正+拘り眼鏡付きだよ!」
「死ぬ!! 俺死ぬ!! 唯でさえ紙耐久なのに死ぬ!!」

 悪びれた様子も見せずに、悪戯っ子のようにぺろり、と雪姫は舌を出したのだった。
 
「やっぱり、そいつらも居たか」

 と、同じく起き上がったボマー。雷切の周りにいる仲間を見回す。ようやく頭も冷えたらしかった。そして頭からはびゅーびゅー噴水のごとく血が吹き出ていた。
 ボマーが言った”そいつら”とは、先ほど知ったばかりのグレン以外の5人だった。

「トンベリ、ラグナロク、ココロ、雪姫、そしてちーちゃん……BOHのエキシビションマッチ以来か。グレンって奴は新入りか?」
「いや違う。単に今日は彼らを案内していただけだ」
「そうか。……ケッ」

 ボマーはドラゴンにめっぽう強いこの面子を毛嫌いしていた。そして、タイプでは有利なはずなのに様々な戦法で、こちらへ勝ち筋を突きつけてくる雷切も例外ではなく。

「何であれ、だ。決着はトーナメントで付けようぜ」
「トーナメントだぁ?」

 ボマーは訝しげに問い返した。

「ああ、そうだ。俺らは”血涙のルカ”の情報を追ってるんだがな、全く収穫なしだ。そんなわけで、偵察がてら此処のトーナメントに出ることにしたのさ」
「お前らも、ルカ姉を? しかも偵察だァ? 何のだ」
「わざわざお前には教えるわけがないだろ。つーわけでだ。今日の二時からそれは開催される。逃げたって思われたくねーんなら、それに出な」

 にやり、とボマーは不敵な笑みで返した。

「上等だ。俺らとあたる前に負けねぇよう頑張るこったな。よし、俺らが勝ったらてめぇらのスレを乗っ取る、良いな?」
「ちょ、ボマー!? 何言ってんのあんた」
「うるせーな、奴らは目下のタンコブだ。俺らの人気を妨げる、な」
「良いぜ、分かった。この戦い、俺達の誇り(スレ)を賭けた戦いってことで良いだろう」
「楽しい楽しいフレ戦だと思った? ざーんねん! 互いの命賭けたとんでも試合でした!」
「ユキ、そんなに気楽に言ってる場合じゃ……」
「……いきなり、超展開……」
「すれ? 何のこと?」
「ちーちゃんは何も知らない純粋なままで居てくださいよぉ」
「私はもう知らん……」

 最後にグレンが呆れたように言ったのだった。
 何であれ、である。こうしてボマー、雷切両チームは此処で今日開催されるトーナメントで決闘をすることになったのだった。

「……しっかしやべーな」

 ボマーの視界にもう1つ入ったのは。
 
「じゃ、行こう、トンベリ君っ!」
「……待って、ちーちゃん」

 快活そうな、ちーちゃんというポニーテールの少女であった。


「--------やっぱり、あいつとの激突は避けられねえか」

パート1:セントラル・フィールドへ(5) ( No.144 )
日時: 2015/05/18 07:48
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***


「エントリー完了だな」

 受付で登録を済ませ、ボマーは呟いた。今回は5体編成ではあるが、まあ大丈夫ではあろう。
 型はいつもと同じ。特筆することもない。

「久々だぜ。今度こそぶっ潰してやらぁ」
「あ、あの、ボマーさん……」

 おそるおそるムゥが近づいて、聞いてくる。

「何でこんなに、雷切さん達と仲が悪いのですか?」
「んあ? んなもん簡単だ。あの糞野郎は、俺様の目下のたんこぶだからだ-----------」

 ボマーとポケモントレーナー:モノクロのポケモン達との因縁は切って切れるものではなかった。
 もともと、ボマーはXY時代に度々フレ戦で猛威を振るうメガフシギバナを倒すためにスパコン執事と一緒に育成されたのだ。
 戦歴はメンバーの中では一番長い。
 以来、何体ものポケモンと戦ってきたが、そのたびに倒し倒されを繰り返してきたのである。
 何せ、モノクロに積みアタッカーの恐ろしさを思い知らせたのも、このボマーだったのだ。

「ぶっちゃけると、その前にもヤバいのは幾らでも居た。だが、あの雷切はさらにヤバかった」
「あんたとは真逆に頭が非常に切れる上に、その戦略で何度も負けているからね」

 力のボマー。頭脳の雷切。まさに正反対の関係であった。

「--------それだけなら良いんだが、もう1つヤバいのが向こうのパーティにはいるんだ。マスターは今のところ、確実にそいつを駆逐できる方法を見つけられていねぇ」
「え?」

 ムゥが驚いたように口を開いた。

「確かにそうです。雷切って人は参謀だけど、向こうのエースって……?」
「私は何度も戦ったことがあるから知ってるわよ」
「ああ、とんでもなく厄介だ。下手したら俺以上の火力を持っているかもしれねえ」
「相手の種族ですがねィ、あんた知ってるんでしょ」

 ああ、とボマーは言った。

「とりあえず、全員説明しておくとするか」

 いつになく解説をやるつもりらしいが、読者の方のためにも此処は無理してやるしかないだろう。

「まず、ジュカインの雷切。火力・耐久・共に貧弱で速さがとりえだ。しかし、それでもメガ前の種族値は俺の種族値の完全劣化だ。Sは120でメガした俺と同速だしな。火力面を総合した場合、メガ後でも俺に劣る」
「酷い言い様ね」
「次に、サーナイトのココロ。スカーフを巻かれたら厄介だな。それだけじゃねえ、サーナイトは壁張り、起点作成、何でも出来る」
「うちの面子には此処まで器用なのは居ませんねィ」
「そしてヤミラミのトンベリ。俺が向かえば怖い相手ではないが、メタルバーストにだけは注意するか。それに自己再生、鬼火、挑発とうざったい技を覚える」
「襷メタバだと死ねますね、完全に」
「そんでもってラグラージのラグナロク。キモい方のラグラージだ」
「やることはアクアと変わりないみたいネ」
「そしてユキメノコの雪姫。道連れ、電磁波、拘りトリックで確実に噛み跡を残していくぞ。こいつを無傷で倒せるかが鍵だ」
「火力は貧弱とはいえ、あんたと私は弱点突かれたら終わりね。110族でかなり速いし。あんた準速だと抜けないわよ。……しかもこの人……”あいつ”の娘なんでしょ?」

 フレイの顔が一気に曇った。”あいつ”。自分が倒れることになった元凶ともいえる顔面野郎のことである。 
 「気にすんな」とボマーは彼女の肩を叩いてやったものの、やはり彼女のトラウマはそうそう簡単には払拭できないか。


「最後に--------------クチートのちーちゃんだ」


 全員は押し黙った。
 何度も拳を交えているフレイとモーターの顔も青ざめた。

「……クチートってクチートって、この面子でまともに相手できるんですかィ? あっしは防御低いから100%死ねますぜィ?」
「私でも威嚇入れられてメガされたら地震で倒せないんですよ!」

 さっきのポニーテールの少女、ちーちゃん。確かに、あの濃い面子の中ではあまり目立ってはいなかった。
 しかし、対戦では最も存在感を放つポケモンだ。

「一応、奴のHPを70%くらいまで削れば、後は俺かムゥの地震でどうにかなる」
「あたしの場合、不意打ち読み身代わりをすれば勝てるけど、今までに何度もその戦法は使ってるから、択ゲーになるわ。レートのクチートなら、カモにできるんだけど……」
「私もドロポン2発で倒せると思いマース!」

 しかし、いずれも退かれたりすると厳しいところだ。
 だから、確実な対処方が見つからないのである。
 それはメガクチートがアホみたいな火力と耐久を有しているからであるが、それはまた後ほど。

「ああ。奴はお前らに任せた」

 だが、とボマーは続ける。

「その前に何戦か戦わねぇといけないんだ。奴らに当たる前に負けることは許されねえ。気張っていくぞ、てめぇら!!」

 彼の気合の入りようは、いつも以上であった。

「そうですねィ。まずは目の前の敵に集中することですぜィ」
「あいつらと当たる前に負けたんじゃ、話にならないわ」
「怖いけど……やるしかないですね!」
「オーケィ! 張り切っていこー!」
「へっ、良い感じに纏まってきやがったぜ。向こうの前作の最終話で見せ場も無くコテンパンにやられたのはキッチリ返さねぇとな!!」

 詳しくは、バトル・オブ・ホウエン対戦記を参照。


「そんじゃ----------祭りの始まりだ!!」


 ***

「ぜぇぜぇ、はぁ、はぁ……」

 先ほどのドリル男は、女子トイレの中で息を切らしていた。
 ---------じょ、冗談じゃねえ!! ”血涙のルカ”だと!? あんな奴に二度と関わってやるもんか!!
 かつて、男は血涙のルカと戦い、一方的にぶちのめされた哀れなファイターの1人であった。仲間は全員病院送り、自分もどてっ腹に穴が開くという始末だった。

「おい、テメェ。野郎が何で此処に居るんだ? うっぷ」

 声が聞こえる。女のハスキーボイスだ。ついでに気持ち悪いようだった。飲みすぎてこうなったらしい。
 此処で男はようやく、此処が女子トイレであることに気付いた。
 しかし何故だ? 相手は便所の中にいるはず。ドア越しに自分がいることは分かっても、自分が男であることまでは分からないはずだ、と。


「おやぁ? お前”見覚え”があるなぁ? 前にあたしがぶっ殺したはずなんだけど。ああ、特性・ハードロックでギリギリ生きてたのか」


 ひっ、と悲鳴を小さく上げた男の記憶から恐怖がよみがえる。
 しまった。この女が、この女こそが-----------
 



「消し飛べ」



 --------”血涙のルカ”だ--------------!!
 ズドォォォォン、と爆音が響き、後には壁にめり込んだ男の姿があった---------

パート1:セントラル・フィールドへ(6) ( No.145 )
日時: 2015/07/04 10:49
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

【フレイの火炎放射! 効果は抜群だ! 相手のナットレイは倒れた!】

 
「ぎぃやああああ、炎はらめええええええええ!!」

 炎上した敵のナットレイが泣き叫びながら這いずり回るが、すぐに大人しくなった。
 4倍弱点の、えげつない火炎攻撃をナットレイに浴びせたのは、C145、特攻オバケ、我がボックス内に6匹しかいない破壊力SS(意:スーパースペシャル)ことシャンデラのフレイである。貼られていたナットレイの身代わりは、彼女の特性:すり抜けによって無効化され、貫通。そのまま焼き尽くした。
 トーナメント準決勝は、詰みの対面に持っていくことができたボマーチームの勝利であった。
 
「最近出番が少なくってねー……鬱憤が溜まってたのよ。あースッキリしたわ」
「何であれ、これで決勝進出だな」

 此処までダイジェストで通したが、ボマーチームは順調に勝ち進んでいたのだった。自分達よりもパーティメンバーが少ないチームもザラであり、やはり正規のパーティからあぶれたポケモン達の集いであるのだろう。とはいえ、それらに匹敵する実力を持つ連中が殆どであったが。
 そして、目下の危険チームである、チームモノクロ:BOHメンバーズも同じであった。


 ***


 決勝戦。それは3戦行い、先に2勝した方が勝ちというものだった。周りからはダークホース2チームへの野次が飛んでいる。
 そんな中、ホウエンドラゴンであるボマー、雷切両者は眼光を飛ばし合っていた。

「尻尾巻いて逃げなかったところは評価してやるぜ、空飛ぶ山椒魚。そのプラスチックみてーな羽は今すぐ使いモンにならねぇようにしてやるがな」
「やっぱポンコツスペックだぜテメェ。種族値がゴミなら、頭までゴミとはこのことだ、ハハハ。俺様の羽がプラスチックに見えるだぁ? いよいよ末期か、こりゃ」
「頭ん中にゴミ詰まってんのは、てめぇの方だろうが、脳筋山椒魚。てめぇなんざ、俺のめざ氷で十分だ」
「全身ゴミなのはてめぇだろうが、雑草トカゲ。てめぇなんざ、俺の捨て身タックルでぐっちゃぐちゃのミンチにしてやる」

 いや、罵詈雑言の飛ばしあいをしていた。

「ちょおおお!? あんた何陰湿な罵り合いしてんのよっ!! 試合は!?」
「ライ、落ち着きなさい! あんたらしくないわよ!」

 両ヒロインによって、何とかこの場は納めることができたのだった。

「不安だぜィ……血涙のルカどころじゃねーなこりゃ」


『これより、トーナメント決勝戦を開始する! 両チームは選出を決めろ! そして、力尽きるまで闘うのだ、はーはっははは、ガコン、あ、顎が……』


 物騒なアナウンスが掛かるが、いまいち締まらないのであった。

 ***


「とにかく! 落ち着きなさい、あんたは!」
「チッ、分かったよ」

 選出画面に移行する。
 そこで両チームのメンバーの種族名が、天井からぶら下げられた、三面モニターに表示されていく。


【モノクロ:BOHメンバーズ
・ジュカイン(雷切)   :♂[強襲] flag pokemon 
・サーナイト(ココロ)  :♀[万能]
・クチート (ちーちゃん):♀[万能]
・ヤミラミ (トンベリ) :♂[特務]
・ラグラージ(ラグナロク):♂[万能]
・ユキメノコ(雪姫)   :♀[特務]】


【タク:チーム・ボマー
・ボーマンダ(ボマー)  :♂[主砲] flag pokemon
・シャンデラ(フレイ)  :♀[駆逐]
・マンムー (ムゥ)   :♀[強襲]
・カクレオン(ガメリオ) :♂[装甲]
・Wロトム (モーター) :--[万能]】


「ちょい待ち、あの[強襲]だとかの表示は何だ」

 モニターの画面をタブレットごしに見ていたボマーが疑問の声をあげる。
 それに答えたのはガメリオであった。

「あれは、種族ごとのポケモンの戦闘スタイルでさァ。要するに、級種名、といったところですかねィ」

 要するに、初めて見たポケモンでもどのような闘い方をするのかを分かりやすくしたものだ。
 大方、主砲、駆逐、強襲、万能、装甲、特務の6つに分かれている。
 簡単に言えば、主砲がエースアタッカー、駆逐が受け・害悪潰し、強襲が中速、高速アタッカー、万能はそのままの意味、装甲は受けポケ、特務は起点作成・害悪ポケモンを表す。
 詳しいことは用語解説を参照。
 これらからパーティの総合的な攻撃力、防御力を大方見ることができる……いや、作者からすれば説明することができる、といったところだろう。
 ただし、ポケモンの種族値、特性、テンプレ型から独断で決めているのでアテにしすぎないように。

「これで、ポケモン達の”戦術レベル”の有利不利が判るってところネ」
「後、メガシンカポケモンはメガシンカすると”級種が変化する”ことがある上に、”2つの級種名を併せ持つ”ので注意が必要でさァ」
「ま、良いや。おいおいその辺は慣れるってことで。それよか、1戦目の選出を決めようぜ」 

 まず、確定なのは------------

「敵のクチート、ヤミラミ、ラグラージに対して有利なフレイのお嬢ですねィ」
「分かったわ。……一瞬で焼き尽くしてやるんだから」

 静かに押し殺したように答える彼女は、今回どうもいつにもまして殺る気に溢れているようにボマーには見えた。
 ---------無理もねぇか。あのユキメノコ……フレイを前にぶっ飛ばしたオニゴーリの娘だって話だからな。あのクリスマスの試合でぶっちゃけたオニゴーリは全治10ヶ月の重症で今も入院中だ。それこそ、フレイがこんなにも早く立ち直れたのは、ゴーストタイプの性質故だぜ、恐ろしい。

「そして、次はあっしですねィ。サーナイトの基本スタイルはやはりスカーフ。ボマーの旦那では絶対に勝てない」
「そりゃそうだ。特殊フェアリーなんざ、速さで勝ってる自信が無い限り相手に出来るかって」
「だから、あっしが受け、倒しますぜィ。ユキメノコも怖くありやせん」

 そして、最後は誰にするか、という話になった。

「此処であっしが思うに、向こうのパーティで脅威になっている、ジュカイン、クチート。何だかんだで相手にできるのはあんただけですぜィ、ムゥのお嬢」
「とにかく、受けだしを狙われないように立ち回らないと」
「受け出ししてきたところを狙い撃つのが得意なのも強襲型の強みですからねィ。頼みましたぜィ」
「はいっ!」

 これにより、選出が決まった。


選出
・フレイ
・ガメリオ
・ムゥ


 対戦が始まる。ボマーはバトルフィールドへ向かう3人へ叫んだ。


「お前ら、頼むぜ----------行ってこい!! 祭りの始まりだッ!!」

パート1:セントラル・フィールドへ(7) ( No.146 )
日時: 2015/12/19 19:11
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: S0f.hgkS)

【チーム・モノクロ BOHメンバーズが勝負を挑んできた!】

【行け、ガメリオ!】

 
 先発で飛び出したのは、ガメリオであった。相手の型にもよるが、先発は恐らくサーナイトのココロである、と踏んだのだ。
 しかし。ガメリオは残る2つの可能性も捨てることが出来なかった。
 -----------サーナイト以外でもう2つ、先発に来る可能性が高いポケモン。まずは、気持ち悪い方のラグラージのラグナロク。そして-----------



【BOHメンバーズはトンベリを繰り出した!】


 ------------相性は最悪ですねぃ……!!
 ヤミラミ。それは、ボックスでカフェ兼情報屋を営んでいるのが約一名程いるのはガメリオも知っていた。
 彼女の実力も知っている。
 故に。これから起こることが何となーく読めたのであった。

「まずいな、ありゃ」
「最悪ね」
「ガメリオさんは物理技か毒しかダメージソースをもちません……! でもでも、相手のヤミラミって-----------」
「物理技を封じる”鬼火”。変化技を封じる”挑発”。極めつけは、ダメージ回復ソースの”自己再生”はあると思った方が良いな」
「そんな! 完封されちゃうじゃないですか!」

 ヤミラミの特性は”悪戯心”。それは変化技の優先度を+1して出すことができるというもの。
 先回りして相手の行動を封じることに特化した特務型のヤミラミは、装甲型のガメリオにはかなり分の悪い相手と言えよう。

「だから、此処は読み合いだな。まず、此処で出しても失敗しない手は何だと思う?」
「出しても失敗しない手、ですか?」
「ああ。それは、”どくどく”だ。例えば、相手が挑発を打った場合はフレイに引けば良いし、鬼火を打ってきても、猛毒を盛るという最低限の仕事は出来る」

 -----------そうだ。しかも、相手は”裏にフレイさんがいる”という前提で進めているはずですぜぃ、ボマーの旦那。
 ガメリオは小声でボマーに言った。頷く彼は「そりゃ、毎度焼かれてっからな」と言った。
 一方のトンベリもボソボソ、と後ろの仲間に向けてか、何か言った。フードで目は隠されており、素顔ははっきりとは分からない。
 しかし、たった今。確かに原型へと”成った”。
 露になった気難しそうなその顔は、策謀家のそれだ。

『タク
カクレオン(ガメリオ):装甲
HP:167/167』

『モノクロ
ヤミラミ(トンベリ):特務
HP:100%』

「……成る程、執念深そうな……面倒そうな面しているねィ」
「オレは……やることは……やる……お前を……封じる」
「悪くない……いや、むしろ好きだねィ。そういう奴は」
「……お前、煩い……黙れ」

 うっとおしそうな表情でトンベリは言った。
 そしてそのまま----------
 ----------安定手は挑発------------しかも裏にはシャンデラがいる……!!
 哀しいかな。その思考は、今まで何度も彼女に焼かれたことがあるからか。
 だが、身代わりが封じられた場合、フレイの選択肢はかなり狭くなる。
 そう。
 後続の”彼女”のためにも、奴を封じねば------------!!

「補助技は使わせ-----------」

 しかし。次の瞬間だった。
 ぞっ、と後ろから危険な気配を感じる。


「----------いつから俺が毒を盛ると錯覚していた?」


【ガメリオの影打ち!!】


 ザクリ、ガメリオの爪がトンベリを切り裂く。
 しかし。そこは流石耐久型。彼程度の攻撃などは恐れるに足りない。
 だが、問題はそこではない。
 雷切達からすれば、彼の次の行動が分からなくなってしまったのだ。

「えほっ、バカな……!」
「残念ながら、この俺にはお見通しだ。ま、経験の差だぜィ。俺の闇は、お前の闇なんかよりも、ずっと深く、ずっと濃い------------!!」


『トンベリ残りHP:95%』


 -----------補助技を打ってこなかった? 裏にシャンデラが居ないのか? それとも、アタッカー型だから、こいつを突っ張らせるしかないのか? 
 

【トンベリの挑発! ガメリオは挑発されてしまった!】


 これで補助技を使ってくるという選択肢は潰したものの、雷切側からすれば次の行動が分からない。 
 一方のボマー側は、これで一気に安定行動が増えたことになる。

「……やることは……やらないと……!!」

 トンベリが有利に試合を進めるには、目の前の敵に致命的なダメージ……即ち、攻撃力低下による機能停止をさせてしまえば良いのは言うまでもない。

「……ボマーの旦那」

 一方、小さい声でガメリオはボマーに囁いた。
 こくり、と彼も頷く。

「嗚呼。それで行くか」


 次の瞬間。今度は青い炎がガメリオ目掛けて飛んでいく。トンベリが鬼火の体勢に入ったのだ。
 しかし。相手が行動したということは、ボマー達も行動を決めたということ。
 そう。ガメリオの取った行動は-----------


「そんじゃ、一旦オサラバするぜィ」


『戻れ! ガメリオ!』


 ----------”交換”であった。
 そして、交換によって現れたのは-----------


「あたしの出番ね。全部燃やしてあげるわ」


『頼んだぞ! フレイ!』


 フレイだ。
 ----------……しまった。……さっきまでの行動、全部ブラフ……!?
 ----------悪いな。ブラフにブラフを重ねる、それが戦いの常套句だぜ!! 俺様の頭は悪いが、こいつの頭は舐めて貰っちゃ困るってもんよ! リーダー=参謀のそっちに対し、こっちはリーダー=エース。ならば参謀は誰か。答えは簡単!!
 ----------ボマーの頭はすこぶる悪いはず--------なら、あのカクレオンが参謀----------! そしてオレ達はまんまとハメられた-----------!
 ----------成る程。ちったぁやるようになったわけか、ボマー共も。良い参謀を手に入れたじゃねえか。


【トンベリの鬼火! しかし、フレイには効果が無かった!】

 
 炎タイプのフレイには、鬼火は通用しない。
 まさに、無償光臨となった。

 
『タク
シャンデラ(フレイ):駆逐
HP:135/135』


 
「まずい……」
「今更後悔しても遅いわ。あたしの火力の高さ。あんたも知ってるはず。あんたらのところの”攻めの要”も、”守りの要”も、あたしの前では燃えカス同然……つまり、あたしの火力は最強よ!! 焼き尽くしてやるわ!!」

 何時になく、自信満々な態度をとる彼女。
 ----------何だ? 今日のフレイ、やたら張り切ってるっつーか-------!!
 HP特化ヤミラミ程度ならば、フレイは火炎放射で焼き尽くせる自信がある。
 しかし。特防に努力値を多少裂かれていた場合。あるいは特防特化だった場合。
 反射技・メタルバーストを持つヤミラミにこのまま突っ込むのは、かなり危険といえよう。

「-----------おい、大丈夫なんだろうな!」
「-----------平気よ。こいつの後ろにも多分居ると思うけど-----------そいつごとき、”あたし1人”で焼き尽くせる範疇だわ」
「それがお前の悪いところだ、調子に乗りすぎだぞ!!」
「うるさいわね!! あんたにだきゃ、言われたかないわよ!!」

 強い口調で言い返したフレイは、どこか強がっているように見えた。
 まるで、いつもの彼女とはどこか違うように見えた。

「……冷静にやってくれると良いんだが」

 
『タク
シャンデラ(フレイ):駆逐
HP:135/135』


 -------------今のオレは、特防に努力値を割いている……耐えられる。”必殺の”一撃を決められる……。
   



 ***



 ——オオオオオ……!!


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