二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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ポケモンバトルM・EVO【サン・ムーン編突入!】
日時: 2016/12/23 03:17
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

『読者の皆様へ』

どうも、初めましての方は初めまして、タクです。今回のこの小説は、所謂対戦実況小説といったところでしょうか。
現在、他の小説の進みがなかなか良い感じになっているため、この小説の連載を決意しました。
タイトルはM(メガ)・EVO(エヴォ)、その名の通りメガシンカをテーマにした作品になると思います。また、第六世代で追加要素のあったポケモンに視点を当てていきたい所です。
また、今回のサン・ムーン発売に合わせて、第七世代を舞台にした対戦も描いていく予定です。

そして、この小説は種族値、努力値、個体値とった3値やHABCDSVなどの記号や、略称なんかが出てくる、所謂「廃人仕様」となっております。
一応、初心者の方にも配慮したような表現を極力心がけたいですが、あらかじめこういったことを知っている前提で読んでほしいと思います。

また、この作品と舞台は違いますが世界観を共有している、モノクロさん著『BOHパ対戦記録譚』があります。そちらの方も、よろしければご覧下さい。


ちなみに、作者のフレンドコードも載せておきます。XYにおけるフレンドサファリのタイプはノーマルで、ヒメグマ、ドゴーム、ラッキーが出ます。

フレコ:2809−9638−8089


※注意※
・本作品はバトルビデオを元にして作られたノンフィクションと一部フィクションです。
・そして、ストーリー中心です。小説という以上、当然ではありますが。
・ポケモンの擬人化あります。つーか、それらのポケモン中心です。
・分かりづらいかもしれない設定多々。
・選出画面があったり無かったり。
・イラストは後々用意するかもしれませんが、クオリティは期待しない方が良いです。
・メタ発言? んなもん日常茶飯事。
・にわか発言&下手糞プレイ? んなもん日常茶飯事。
・対戦相手の名前は改変して使用します。
・対戦相手への誹謗中傷はおやめください、メガボーマンダのスカイスキン捨て身タックルとシャンデラの眼鏡大文字が襲い掛かります。
・BGM置いてるけど、ポケモンじゃないかもしれない。



 また、作者は対戦・交換などは大歓迎です。フレコは自分の雑談スレ『タクのノベルス・ポケモン図書館』に置いています。バトルビデオをこの小説に使わせていただくかもしれません。

以上のことを守ってうちのポケモン達の活躍を生暖かい目で見守ってやってください。


目次

第一部:エリア開放編


プロローグ
>>01

パート1:謎の敵・静炎邸
>>02 >>03 >>04 >>05 >>06 >>07 >>10 >>11

パート2:遮断された箱庭・氷海水域
>>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>19 >>20

パート3:湖の決闘・中部緑域
>>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>32

パート4:忍の街・群雲街域
>>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38 >>39 >>40 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47

パート5:この風が泣いている・天獄峡域
>>48 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63

パート6:雷電霹靂・雷電械域
>>75 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>92

パート7:暴龍警報・頂龍山域

#1:絶望の淵へ
>>103 >>104 >>105 >>106
#2:反撃の狼煙
>>107 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>115
#3:龍の守護者
>>116 >>117 >>118 >>119 >>120
#4:最後の守護級
>>121 >>126 >>127 >>129 >>131 >>134 >>135 >>136


パート8:仲間達が待つ場所へ
>>137


第二部:新世代編

パート1:セントラル・フィールドへ
>>138 >>139 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>150 >>151 >>152 >>153 >>154

パート2:留学生は突然に……


登場携帯獣紹介
>>70

用語解説
>>71


番外編:始末屋の日常と非日常

パート1:前々前作でラスボス役やっててもキツい奴はキツいので以下略
>>95 >>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32



パート6:雷電霹靂(3) ( No.77 )
日時: 2015/03/26 09:45
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「旋、お前、どうしたんだ!!」

 必死で呼びかけたけど、全然俺の声を聞く耳を持った様子は無かった。
 そして奴からは、メガシンカに似た波動のエネルギーが感じられた。

「くそっ、こうなったら------------」


 ***


「……はぁ、はぁ、はぁ」

 何とか、ボロボロになった俺は奴を力づくで止めることに成功した。あいつは当然病院に運ばれ、俺も治療を受けた。
 事態をマスターに報告した俺だったが、とにかく旋のことが心配だった。
 どうしてこんなことになったのかは、ラッキー達に聞いた。

「短期間で強くなり、体の中に眠っていたメガシンカの因子が目覚めたのでしょう」
「メガシンカの因子……?」
「ポケモンによりますけどね。力を抑え切れない未熟な者に多いようです」

 奴は暴走したんだ。メガシンカの因子を抑え切れずに。
 マスターが奴を育てた理由もようやく分かった。
 メガストーン、ピジョットナイトの存在が明らかになり、それの捜索を進めていたからなんだ。

「くそっ、俺は……教え子が苦しんでいたのに、結局力づくで止めることしかできなかった」

 病室で苦しんでいるあいつの顔を見ながら、俺はただただ語散ってばかりだった。
 恨んだ。自分の無力さを。
 

 ***


 次の日の朝。ベッドで寝ていたはずの旋の姿は無かった。そして、1枚の手紙だけが残されていたんだ。


『師匠へ
自分はもう、師匠に教えを請う資格はありません。今までありがとうございました。そして、本当に申し訳ありませんでした。自分は旅に出ます。さようなら』


 すぐにあいつを探した。でも、中央区域には、もうあいつは居なかったんだ-----------


 ***

「俺は戻ってくるように、何度も言ったが、あいつは結局帰ってこなかった。直接天獄峡域にも行ったが、門前払いだ」
「……そんな、ことが……」
「旋は悪くねえんだ。俺はあいつのことが心配なんだよ。あそこまで俺を慕ってくれた後輩は、お前らとあいつくらいだから」

 ボマーの顔はいつになく沈んでいた。

「今、旋さんに掛け合っても仕方がないと、僕は思います。また時間を置きましょう。彼自体、協力を惜しみたいわけでは無いようでしたし」
「そーだよ!」
「ま、人違いはあったにせよ、あいつは良いやつだと思うし」
「それに、ボマー先輩に非は無いと思いますから」

 それを聞いて、安心したのかボマーは安堵したように微笑んだ。

「ま、後輩がこう言ってるんだし、大丈夫よ」
「そうです。旋さんとはじっくり向き合っていけば良いと思うのです」
「同感でさァ。真っ直ぐな奴は嫌いじゃねェぜィ」

 もう、誰もボマーに対して疑念は抱いていないようだった。
 彼は腕を組むと、言った。

「ともかく旋の件は時間を置いて、もう一回俺に任せて欲しい。良いか?」

 やはり、本人が直接掛け合った方が良いだろうという本人の意見だった。
 こうして、旋の件については完全に解決の方向性が決まったのである。
 
「さて、明日はどうしますか。僕は此処に残って、あるものを解析しようと思っているのですが」
「と言うと?」

 アクアは、手にキューブ状の物体を掴んで見せた。

「敵のコンピューターを鹵獲し、圧縮したんです。これの解析も進めたいので」
「じゃあ、お前以外の6人で行くと」
「いえ、それだけじゃありません。向こうで仲間になるポケモンのスペースも考えれば、5人が妥当かと」
「理由は」
「万が一のために、こちらに最低限の戦力を残しておきたいからです。つまり、チャモさん」

 え!? と今まで少しぼーっとしていたチャモが、アクアの方を向く。

「少し、僕に付き合ってくれませんか、明日は」
「つ、つ、つ、付き合うって……わ、分かった」

 挙動不審な彼女に今度はアクアが疑念を抱いた。

「風邪ですか」

 そう、的外れな質問をついついしてしまう。

「違うもん!」

 何故か、言葉がしどろもどろになっている上に、頬に紅が乗っている彼女に白い視線を送りながら、アクアは説明を続ける。
 明日は残りのエリアのどちらに行くのか、ということの取り決め、そしてパーティの最終確認だった。
 その結果。

「明日のパーティは、俺、フレイ、ムゥ、ガメリオ、そしてレイドの5人だな」
「はい、これでOKでしょ-----------」

 と、次の瞬間だった。厨房の方向から、お盆に盛られた料理を手に、火の粉達がやってきたのだった。
 すかさずボマーは、フレイの方を見る。

「お前、こいつらに料理任せてたのかよ」
「ちょっと不安だけどね」
「さっき聞いたわ、それ」

 「ぴーぴー」と鳴き声を上げながら、火の粉達は料理を華麗な手さばきでテーブルに置いていく。
 流石、しっかりもののフレイの分身というだけはあるだろう。
 ただし、1つ問題を上げるとすれば、だ。

「……これ、俺らは食えるのか」

 オムライスのライスは唐辛子の赤で染まっており、スパゲッティナポリタンと思いきや、実はタバスコで真っ赤に染まったカルボナーラだという。
 スープに至っては、煮え立ったマグマのような何かだった。
 
「ごめんなさい、やはり本体のあたしが辛党だから、あたしの好みのとおりに料理を---------」

 辛党のレベルを通り越して、食品への冒涜すら感じるレベルである。
 チャモだけが、にこにこしながら「あ、おいしー♪」と食べていたが、全員は手を付ける気すら起きなかったのだった。

「……いや、俺は食うぞ!」
「やめてください、先輩! 冒険の度を越しすぎです!」
「うおおお、気合を入れて、ちぇりおおおお!!」
 
 結局、その後。ボマーの顔は真っ赤に腫れ上がり、そして彼自身も気絶。
 後でフレイが普通の料理をちゃんと人数分作ったのだった。
激辛料理の方は、チャモが全て平らげてしまった。格闘タイプの癖して脂肪が胸に乗っているのは、無駄に大食いだからであろう、と全員は確信したのだった。
 そのため、フレイが用意したのはチャモ以外の6人分だった。

「お腹いっぱいだよぉ……」
「食いすぎだ、コイツは」
 
 ***


 帰り道。
 チャモとアクアは一緒に歩いていた。

「今日は色々ありすぎて、頭がパンクしそうだったかな」
「明日は少し、休めそうです。いつもよりは。でも、コンピューターの解析もしなければいけませんし」
「……ありがとね。今日は一杯助けて貰って」
「僕だって貴方のことは言えませんよ」

 かああ、とチャモの顔は少し赤く染まった。
 今日の冒険は、彼女の力なしでは突破できなかったところがあるのも事実だ。
 旋との戦いを手早く終わらせられたのも彼女のおかげだ。
 しかし、彼女は負い目を感じていた。

「あたし、邪魔になってないかな。こんなに助けて貰ってばかりで……」

 ぴたり、とアクアは足を止めた。それにあわせてか、チャモも止まる。

「……誰が邪魔なもんですか」
「でも……」
「貴方は確かにうっかりやでドジで、間が抜けていて……でも、誰よりも貴方は明るいじゃないですか。貴方がいなければ、僕の瞳に光が差すことは無かったでしょう」

 照れているのか、そこで彼女は押し黙ってしまった。

「ありがと」

 そして小さく、呟いたのだった。
 照れながら、はにかみながらも、彼女の口から放たれた言葉に、アクアの胸が高鳴った。

「……じゃあ、あたしはこの辺で。また、明日ね」
「ええ、これで」

 アパートの階段を上っていく彼女に手を振り、アクアはそのまま自分の家に向かっていた-------------

(やばいやばいやばい! 幾ら励ますためとはいえ、今の台詞は少し臭かったか……? どうしたんだろ、僕は……)

 ----------高鳴る鼓動を抑えて。

パート6:雷電霹靂(4) ( No.78 )
日時: 2015/03/27 00:20
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

「……あんたって、本当教え子や後輩には恵まれているわよね」
「そうか?」

 アクア達を見送った後、静炎邸には新たに居候することになったレイド、ガメリオを加え、ボマー、ムゥ、フレイの計5人が残ったのだった。
 ただし、ムゥは今この場には居なかったが。
 さて、フレイの質問についてだが、彼としては本当に分からなかった。
 確かに恵まれているといえば、そうなのかもしれない。
 アクアもなんだかんだで自分に着いてきてくれた。
 旋も無茶苦茶な特訓に根を上げず、覚醒した。

「あんた、結構人を引っ張るのには向いてるかも」
「ほっとけ。引っ張りたくて引っ張ってるんじゃねぇ」

 だいたい、こんな馬鹿に着いてくるのも馬鹿ってやつだ、と自虐した彼は、今度はガメリオとレイドの方を向いた。

「お前らも此処に住むのかよ」
「向こうからこっちに来るのも骨だしよー」
「仕方ないでさァ」

 ふーむ、とボマーは納得したように頷いた。
 妥当といえば妥当ではあろう。
 そして、最後にフレイに聞いた。

「そーいや、ムゥはどこに行った」
「大浴場よ。疲れたらしいわ」

 擬人化体の際は、完全に体の構造は人間と同じになる。水も苦手意識を持つだけで平気だ。
 よって、風呂程度ならばOKという水弱点ポケモンも多い。
 そうでないならば、炎ポケモンの場合は原型の姿で炎を浴びるのが風呂の代わりになるのだという。

「ほーう」

 がたり、と立ち上がったボマーは言った。

「おいレイド。そんじゃあ、ムゥを労いに。いや、あの二丁の凶器を拝みにいくとするか」
「そりゃ良いな、ボマー!」


【フレイの破壊光線!】

【急所に当たった!】

【ボマーとレイドは倒れた!】


 右手から放たれた破壊光線(レーザーガン)により、ボロボロにボマーとレイドは焦がされたのだった。

 
 ***


 次の日だった。
 ボマー達の行き先は、既に決まっていた。
 それは、コンビナート連なるボックス内の情報システムの核、雷電械域だ。
 そして、今朝のことである。

「---------先輩方、昨日から少しコンピューターの解析を進めていたのですが、どうも上手くいかないんです。有用そうなソフトや役立ちそうなものがあれば、借りてきてくれませんか」

 と、アクアが言っていたのである。
 しかし、この要求は余りにもアバウト過ぎるのでは無かろうか。

「んな都合の良いモンあるわけがねえっつーの」
「でも此処、雷電械域ならあるかもよ」
「ムゥ、お前はどう思う」
「ふんっ、えっちなボマーさんのことなんか知らないのです」
「完全に怒ってる……レイドはどう思う?」
「特殊ポケモンの♀がいれば、OK」
「ブレねぇな、お前も」

 しかし、人のことはぶっちゃけ言えないのである。
 
「で、ボマーはどう思うのよ」
「胸のでかい♀ポケモンが居ればOK」
「アンタもか!!」

 何故ならば、こいつも変態だからである。

「男が変態で何が悪い!」
「そーだそーだ!」
「常識人を増やして、このパーティ」
「仕方が無いですぜィ」

 さて、しばらく進んだところに工場があった。ぱっと見、かなり大きいがそれもそのはず、この工場はこのエリアの殆どの面積を占める程広いのである。
 中では様々なシステムが組み立てられているが、今は特に影の携帯獣に対抗するためのものを作っているという話だった。

「レーダーによれば、この工場の中にコンピューターがあるらしいですぜィ、皆さん。気ィ引き締めて行きましょうや」
「そーだな。こっからは真面目モードだ。中に敵が居たら、即潰す。それだけだぜ」
「全く、最初っからそうして欲しかったわ」
「頼むから、ボマーさんのような敵だけは出てこないで欲しいです……」
「特殊型の♀ポケはいるかね、うへへ」
「あんたら……少しは纏まりを持ってくだせィ」

 呆れた様子でガメリオは呟いたのだった。

 
 ***


「此処には一応、俺の知り合いも居る。BOHの時に戦った戦友だ」
「レアコイルのジルル……だったっけ」
「ああ。進化前のポケモンにも関わらず、スカーフを持てば130族抜きも可能な強いやつだ」

 レアコイルの火力は元・最終進化ポケモンだっただけあり、そこそこ保障されている。
 さらに頑丈による耐久、スカーフによる素早さで小回りこそ利かないが、パーティで重い敵を仮想敵に定め、投入したのだった。

「最初はジバコイルのバルルが入っていたんだが、フレ戦の帰りにトラックに跳ねられて爆発四散、修復作業に入ったからジルルにすることにした」
「トラックって……」

 それはともかく、である。
 中の工場には、沢山のコイルが居た。物資を運んだり、ベルトコンベヤから流れてくるものに流れ作業の要領で何かを取り付けたり、などである。
 何気にコイル系統のポケモンは、3匹共対戦でも使えるスペックの持ち主だったりする。
 コイルはレベル1無限戦法、レアコイルはスカーフ輝石でジバコにできないことをやり、ジバコイルは単純な高火力アタッカーとして使われる。レベル1コイルの実用性がどれほどのものかはさておき。
 工場自体は普通に作動しているようだった。
 すると、奥のほうから男女がやってきた。
 作業服に金髪で、容姿の似た男女---------即ち兄妹か姉弟のそれだった。
 ボマーとフレイはレートパでも何度か見知った仲の2人だった。
 声を掛けようとしたところ、向こうから言葉を発した。

「ライボルト族のボルルだ」
「同じく、デインです」

 社交辞令のつもりか、会ったことの無いメンバーに自己紹介をする。

「此処に何の用だ、ボマー君」

 女、ボルルはいつになく、強気な口調で言った。男勝り、という言葉が似合う。
 現に、2人ともボマー一行を歓迎する様子ではなかった。

「悪いが、今この工場は非常事態なんだ。帰ってくれ」
「非常事態だァ? の割にはコイル共はいつも通り働いてるじゃねえか」
「働いている、ではないのです」

 弟と思われる男、デインが進み出た。

「正確に言えば、働かされている、が正解でしょうか」
「んなもん一緒だわ、どっちも」
「あっし達ゃ急いでるんだ、時間が惜しい。邪魔すんなら、あんたらでも容赦なく潰すぜィ、ライボルト」
「あわわ、喧嘩腰は良くないですよぅ」
「同感だ、てめぇらこちとら急いでるんだよ」

 ムゥが既に飛び掛りそうな2人を抑えようとするが、引きずられてしまう。

「全く、血の気の多い連中だ。このコイル達は、我々の意思に反して”強制的”に働かされ続けているのだよ」

 呆れたように言ったボルルは、コイル達の方に指を指して言った。


「この工場は既に乗っ取られたんだよ! 無機物ポケモンは、やつらの傀儡と化した!!」

 
 ***


-----------全テ、私ノ思イ通リ……ソシテ、マイ・アドミラルノ思イ通リ-----------!!

パート6:雷電霹靂(5) ( No.79 )
日時: 2015/03/27 18:52
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

「……うーん……これは……」
「はい、お茶」
「……ありがとうございます」

 此処は、アクアの家。その地下室にある作業室だった。パソコンが3台も置かれており、コードがあちこちに繋がれてあり、足を引っ掛けそうな部屋である。
 彼自体綺麗好きではあるのだが、この部屋は仕方ないと思っているらしい。

「しかし、すいません。貴方も手伝わせてしまって」
「良いよ。それに、もしも中央区域が危なくなったら、ということも考えてるんでしょ」
「……実は、少し違うんです」

 実は、これは半分建前だったりした。別に中央区域に強いポケモンは、まだまだ居る。
 ファイアローのコママも例外ではない。
 アクアはネタばらしと言わんばかりに続ける。

「雑用係が欲しかった、それだけですよ」
「もうっ!」

 というのも実は建前で。
 -----------言える訳無いでしょ、ただ貴方と居たかっただなんて。

「……そんなことのために、あたしを呼んだの?」
「いや、申し訳ない。やはりこういうのは、逆に信用できる人に任せたくて」
「あたしのこと、信用してるの? うっかりしたりとか、ドジしたらどうしよう、とか思ってない?」

 不安げな表情で、チャモは言った。

「……そのときは、そのときです。確かに1人で作業するときは落ち着くんですけど、同時に少し不安ですから。それより、誰かが居た方が良い」
「あたし、足を引っ張るかもだよ?」
「心配なく。……それとも嫌でしたか?」

 ううん、と彼女は首を横に振った。


「あたし、あっくんと一緒に居れるだけで最近、すっごい幸せだもん」


 え、と予想外の反応にアクアが今度は困ったような顔をしてしまった。
 彼女の言葉の意味を詮索してしまう。
 

「……か、からかってるんですか? ほ、ほら、今度はそこの工具を取ってください!」
「はいはい。ふふっ」
「何がおかしいんですか、もう」
「さっきのお返し。あっくん、あんなこと言うんだもん」
「はいはい、悪かったですよ……」

 申し訳無さそうに、または困ったように彼は言った。
 実際、彼女の無自覚なのか自覚のあるのか分からないアプローチには毎度毎度ドキドキさせられる。
 向こうが自分に気があるのか、そうじゃないのか、変に詮索してしまう。

「じゃあさ今度2人でパフェ食べに行こうよ!」
「結局食い気ですね……。この戦いが終わったらそれも良いかもしれませんが」
「最近、2人っきりになることも少なかったし」
「恋人じゃあるまいし、そんなこと気にする必要は無いと思いますが」

 素っ気無く返した彼は、再びパソコンに向かって敵のコンピューターのデータを洗い出した。

「……ほんとに、恋人同士だったらどうする? なーんて」

 アクアに聞こえないように、彼女はそう呟いたのだった。
 彼を見守りながら。


 ***


「……おい、コラどーゆー意味だ」
「今言ったままの意味だ。この工場の管理システムは殆どやられてしまっている、此処に現れた守護級の所為でな」

 守護級。やはり、既に敵の毒牙はこの工場にも伸びていたとは。

「生産ラインの停止を図ろうとしたが、無理だった」
「さらに、敵の守護級もおそろしい攻撃力の持ち主で立ち向かったものはいずれも返り討ちにされています」
「それだけではない。コイル達を直接止めようとも思ったが、電磁バリアであれ以上は近づけなくなっている。普通のポケモンは阻まれ、電気ポケモンも体内の電気を狂わされて、頭痛、吐き気を催し、最悪再起不能に陥る」

 なるほど、確かにコイル達のいるベルトコンベアに近づこうとしたが、後1mほどのところで、バチッと見えない何かに弾かれた。
 これが所謂電磁バリアという奴であろう。
 また、コイル達が作らされているのは、どうやらいずれも下級の携帯獣のようだった。
 さらなる改造を加えているらしい。それらは今こそ起動はしていないが、いつ動き出すか分からないという。
 つまり、この工場は兵士量産工場になっているのだった。

「ふーむ。なるほど。よし、分かった。となれば、あんたらのところから誰かを連れて行けば良いんだな。これでパーティ6匹だから丁度良い」
「おい、こんなこと言ってるよ姉さん、どうするんだよ」
「私だって嫌に決まっておろう、この間ボコボコに負かされたばかりなのに。しかも、まだ仕事もあるというのに」
「もう良い、てめぇらには頼まねぇ!!」
「うるさい、貴様にやるものは1つもない、帰れ!」
「というか、何であんたらあたし達に対して、そんなに疎外的なのよ」

 フレイが突っ込む。
 ライボルト姉弟は口をそろえて言った。


『このボマーは、いっつも此処にくるなり、「おーい、頼むぜ。今日の俺の活躍をもっとクリアに映せるよーなテレビは作れないのか?」と押しかけてくるからだぁぁぁぁ!!』


 3秒後。脳筋トカゲの公開処刑が決まり、執行された。


 ***

「さ、行くわよ」
「はい、ずいまぜんでしだ……」

 フレイの金縛り、かーらーのめざパ氷集中砲火で、ボマーのHPはマッハで消費されていた。
 ライボルト2名にはしっかり謝ったのだった。

「しかし、まずいな。ジルルもバルルもこの分だと強制的に働かされ続けているってことか」
「全て連中の思い通りに操られているわね。人形という言葉が似合うわ」
「気に入らねェ、奴隷じゃねェですかィ」
「かわいそうなのです……」
「奴隷……うん、そういうプレイも良いかも」
「体内の水全部抜くわよ、触手野郎」

 ああ、待て、とライボルトの2人が追いかけてくる。

「実はな、マスターが現在改修に出していた切札があるのだ」
「切札ァ?」
「そいつは、奴らの催眠電波を食らっていないから、コントロール下には無いはず」
「コイル達を操った催眠電波は、あくまでも催眠をするためのもの。今はコントロールするための電波が流されているんです」
「つまり、そいつの修理が終われば問題ねぇのか」
「いや、もう終わっている」

 ある部屋にボマー達は案内された。
 地下の研究室だ。
 そこには、5種類の家電がおかれていた。
 洗濯機、電子レンジ、芝刈り機、冷蔵庫、扇風機。

「……これが切札?」
「正確に言えば、これを動かすモーターが足りない」
「ふざけてんの?」

 苛立ちの声をフレイは上げた。
 ボルルを睨み付ける。
 しかし、臆した表情も見せず、彼女は続けた。

「違う。これを見て、何か思い出せないか?」
「……まさか、”あいつ”か」

 思い出したように、ボマーは言った。


「モーターの奴か」

パート6:雷電霹靂(6) ( No.80 )
日時: 2015/03/27 13:19
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「旦那、モーターって誰ですかィ」
「NNだ。そんでもって、そいつがバルルとトラックの事故を起こしたんだ」
「はぁ!?」
「そういえば、忘れていたわ……」

 ガメリオは、全く内容が掴めない。
 ボマーは続けた。
 
「フレ戦が終わった後のことだった。バルルが帰ろうと交差点に出たとたん、トラックに乗り移って運転していたモーターは、3Vだった所為かAIにボロが来て、運転をしくじって衝突。さらに乗せていた電子レンジがよく分からないけど爆発して、バルルも本能的に大爆発して、大惨事になった」
「入院してたから知らなかったけど、こんなことになってたのね」

 ジバコイルは一応、大爆発を覚えるのである。
 実用性は皆無。多分。

「全く分かりやせん」
「特攻、つまりブレインにVが入っていなかったからな、あいつ。だから、改修に出して、今度こそ5Vにするつもりだったんだ」

 そう、ボルルが付け加える。
 今まで3Vのまま対戦でバリバリ活躍していたのが不思議なくらいである。

「はっきり言って……不安だ。あいつを出すのは。しかし、一刻の猶予も無い。奴を連れていってくれ」

 ボルルが急かすように言った。どうやら、それを使うのは相当渋ったらしい。
 ボマーも心中を察したように、

「分かってる」

 と返した。

 
 ***

 
 研究室の奥には、何かが入っていると思われる機械が、ガタガタ音を立てていた。
 どうやら、敵の支配下でも、此処だけは正常に動いていたらしい。

「こいつとは何度もレートで戦った仲だ。ブレインこそ旧式ではあったが優秀だった。本来の名はリモーションコンピューターRT/CPU301番型って言って、パソコンなどに乗り移ることで機能する高性能コンピューターなんだ。さらに目の前の敵を確実に排除(リモーション)する優れもの。故に通称:モーターで通っている」
「それ、コンピューターじゃないですねィ、しかもこんな感じの展開どっかで見ましたぜィ。今のような説明、どっかで聞きましたぜィ」

 いや、マジですいませんでした。

「1つだけ言えるのは、どっかのポンコツスパコンとは違い、超優秀ということだ」
「さっきからそればっか。つーかそのポンコツスパコンって、あんたの同期の600族よね。というか、今明らかに失礼な発言したわよね」
「うるせぇ、ただしこいつはちょいと問題があってだな------------」
「そうね、問題ありだったわね」

 おーい、起きてるか、モーター---------とボマーがこんこん、と機械の蓋を開けたそのときだった。
 何かが飛び出した。
 それが、ボマーの顔にへばりつき、そのまま彼は後ろ向きに倒れる。


「ボマアアアア!! 会いたかったのデース!!」


 へばりついたのは、少女だった。
 ギザギザの歯に、アホ毛の立った黄色い髪、そして制服のようなブレザーを着ていた。 
 瞳には稲妻が走っており、電気タイプであることは間違いないようだ。

「離れろと言ってるだろ、この電子幽霊」
「むぅ〜、折角婚約相手のワタシがやってきたのに、それは無いと思いマース!」
「婚約ゥ!?」

 フレイ以外の全員の声が重なった。

「違う! 誤解!」
「ボマーさん……」
「ムゥ、やめろ! 違う!」
「教会立てやすかィ」
「違うと言っているだろう!!」
「触手プレイさせろー」
「黙ってろ、にゅるにゅる!!」
「にゅるにゅる!?」

 はぁ、と唯一メンバーの中で落ち着き払っているフレイが進み出た。

「モーター……あんた、好い加減にしなさいよ、毎度毎度……」
「んー? 久々なのに、フレイは冷たいデスネー。もしかして、フレイは妬いてるんデスかー?」
「妬いてなんかなーい!!」

 ふよよ、と浮いたまま、フレイに挑発するモーターと呼ばれた彼女。
 口調は、エセ外国人のそれであり、明るさと同時に、胡散臭さを感じる。
 
「……ひょっとして、モーターって……」
「見てのとおり、擬人化体の容姿で分かると思うが、ロトムだ。人格データは♀」
「しかも、何でこんな……」

 ボマーLOVEという奴である。
 提督LOVEならぬ。

「簡単デース! あれは雨の日デシタ……ボマーさんは、ゴミ捨て場に捨てられていたワタシを拾って、マスターのところに連れて帰ってくれたのデース!」
「ベッタベタだな、おい!! それで、こうなったってわけですかィ!?」
「その後、AIを強化したワタシは、擬人化体もラブのパワーでゲットしたんデース!」
「……うっとおしいことこの上ないんだ、ガメリオ。今時の少女漫画にもねぇと思う、こんなシチュ」

 ふよよ、と再びフレイに詰め寄り、小声でモーターは囁いた。

「でもでもー、フレイも前より、ボマーへのラブが深まってるように感じマース」
「ちょっ、んなわけないでしょうが!」
「フレイももっと素直にならなきゃ、ダメダメなのデース! ワタシを見習ったらどうデスカー?」
「……あんたって奴は……全部お見通しなのね……って、馬鹿! さっさと、こっち向きなさい!」

 
 ***


 モーターが手をかざすと、5種類の家電は一瞬で手のひらサイズのキューブに変わった。
 それを腰のベルトに付けた彼女(と弁机上呼ぶことにする)はボマー達に、興味津々そうな顔をして、向き直った。

「それでそれで、今日は何しに来たのデース?」
「悪い奴をやっつけに来た」
「ワオ! ヒーローごっこデスネー?」
「ちげーよ、アホ。この戦いはごっこなんかじゃねえ」
「……分かってマース」

 急に沈んだ顔を彼女は見せた。


「コイル達が悲鳴を上げているのが聞こえマース。とても、苦しいって」

 
 どうやら、愚問を問うたのはこちらのようだった。
 そりゃ分かるよな、とボマーは呟いた。むしろ、今までの態度が辛い感情を押し隠すためのものだったようにも見える。

「……早く、助けないと」
「ああ。そのために、俺らはお前を復活させた」
「勿論デース! ワタシも久々に戦いマース!」

 こうして、モーターは戦線に加わることになったのだった。

「ボマー? この戦いが終わったら、ワタシと結婚するネー!」
「しねぇよ!! 余計なフラグも立てるんじゃねぇ!!」

 いや、不安だ。正直言って。ボルルが開放するのを渋ったのも分かる気がした。

パート6:雷電霹靂(7) ( No.81 )
日時: 2015/03/27 15:39
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 工場、最深部。守護級が巣食っているのは、このエリアだという。
 そもそも、しばらくは使われていなかったエリアだったようで、守護級の反応を追い、初めてここを知ったものさえ居たと言う。
 あのライボルト姉弟も例外ではなく。

「……つーか、離れろ!! ふざけてんじゃねえぞ、テメェ!!」

 さっきから、ボマーの腕からくっついて離れないモーター。

「ハイハイ、分かってマース! うふふ」
「畜生、この電子幽霊……真面目にやれっつのーの、真面目に!」
「良いんデスかー、そんなこと言って。意地悪言うなら、ビリビリさせちゃうネー!」

 どんなにボマーに邪険に扱われても、彼女はめげる様子は無い。にこにこ、と無邪気な笑顔を絶やさない。
 
「これがマスターの最古参メンバーの1人だから泣けてくるわ」
「最初はただの従順なコンピューターだったんだが……」
「んー? 今もワタシは従順デース?」
「何でこのパーティにはアクの強い方しか居ないんでしょうか……常識人は居ないんですか」

 ムゥが呆れたように言うと、

「ちょっと待ちなさい、あたしはまともよ」
「あっしもまともでさァ」

 と、割とまともな2人が憤慨し、

「そーだそーだ、俺だってまともだ」
「俺だって、触手プレイヤーであることを除けば常識人だぞー」
「ワタシもデース!」

 どう考えてもアクが強いとしか思えない3人が憤慨した。

「このチームのカオスの原因は、明らかにあんたらでしょうがぁぁぁ!!」

 
 ***


 重々しい扉があったが、即・突破。
 改めて、ボマーの捨て身タックルは強力であることを、全員は思い知ったのだった。

「さっすがネ、ワイルドで最高デース!」
「……何だかなァ」

 部屋は暗く、どこに何があるのか、全く分からないという状況だった。
 が、ボマーが先陣切って踏み込んで行く。そのときだった。
 何か、冷たいものが頬を通り過ぎて行った感覚を覚えた。
 ぷつん、と何かが切れる。
 そして、雫が流れた。
 赤い、赤い雫が。
 
「-------------ッ!!」


 直後、鉄拳で目の前に現れた何かを吹っ飛ばす。
 奥へ突き飛ばされたそれは、転ぶ様子は見せず、アクロバティックな動きで引き下がる。

「んっん〜、流石と言ったところか。私の太刀を避けるとは、俊敏だよボマー君」

 声にはノイズが掛かっていた。
 同時に、部屋の明かりがつく。古い、メインサーバールームの中央に、どろどろしたものに包まれたコンピューターがあった。
 そして、目の前には2本の大太刀を、それぞれの腕で振るう男の姿があった。赤い武士の服に身を包んだ大柄の男だった。
 周囲には、邪悪な瘴気放つ空間が牙を剥き出しにして開いている。
 同時に、ボマーの頬には切り傷が開いていた。その部分が電子分解(データ生命体が損傷を負うと、その部分を修復しようとナノマシンが集まっていく現象)を起こしている。
 もう少しで上顎と下顎が切り離されるところだった。

「……大丈夫!?」
「けっ、こんくれぇ何ともねぇ!!」

 吐き捨てるように言った彼は、目の前の敵を睨み付けた。

「暗闇で闇討ちとは、随分とまぁ姑息な手段を使うモンだな」
「今のは余興だよ、ボマー君。マイ・アドミラル(私の司令官)は任務を完遂しろと言ったが、遊んではいけないとは言わなかったからね」
「舐めんじゃねぇぞ、クソッタレが。すぐさま消し飛ばしてやる----------」

 と、彼が言いかけたそのときだ。
 すっ、と何かが自分の傍を通り過ぎて行ったのを感じた。


「らああああああああああああ!!」


 ビリビリ、と電撃を至近距離で放ち、影の男に食らわせるモーター。
 その姿、鬼神の如き。

「あぎいいいいい!?」

 全員は唖然としていた。
 これが現環境トップメタの力か、と。

 ***

「雷電械域と言えば、ですねモーターさんという方がいるんですよ」

 アクアはコンピューターの解析を進めながら、チャモに話しかけた。

「はっきり言って、かなりふざけた方ですが」
「強いの?」
「-----------強いなんてもんじゃありません」

 アクアは目を伏せた。

「現環境トップメタの一角にして、新たな技をORASで会得、さらに今まで幾つもの敵をレートで滅ぼしてきました」
「ええ!?」
「あるときは、メガサナのムンフォを耐えて10万ボルトで撃破、ファイアローを残さず殲滅、さらにAI補正で命中不安技も100発100中の凶悪性能の持ち主ですから、恐ろしいことこの上ないんですよ」
「やばくない!?」
「……一番恐ろしいのは-----------病んだレベルに到達したボマーさんへの恋愛感情でしょうか」


 ***


「ガァァァァァーッデム!! ボマーに傷を付けることは、ワタシが許さないのデース! 例え、火の中水の中草の中氷の中ブラックホールの中、例え世界をオーバーヒートで焼き尽くしても、ハイドロポンプで沈めても、リーフストームでビルが倒壊させまくっても、吹雪で氷付けにしても、エアスラッシュでバラバラ死体にしてでも、仇なす奴は遺伝子レベルで消滅させマース!!」
「落ち着け、モーター!!」
「離して下サーイ!!」

 ボマーが必死で押さえつける。このままでは暴走してしまうだろう。AIが本当の意味でオーバーヒートを起こしたらヤバいのである。
 こんなときにヒートロトムにしてはいけない。

「お、お、おのれぇ……出て来い貴様ら!!」

 そうこうしている間に、男の背後に、5つの影が現れた。
 マニューラ、エーフィ、ランドロス、ライコウ、リザードンの5匹。
 そして、男は周囲の空間を巻き込み、携帯獣の姿となった。
 赤き鋼鉄の鎧に包まれた甲殻虫のポケモン、弾丸の拳の持ち主、ハッサムだった。

「私は全てのハッサムの恨みから生まれたのだ!!」
「はぁ? ハッサムはどっちかと言うと恵まれてるでしょ」

 やーやーやってるモーターを横目にフレイが問いかけた。

「あれは去年の映画だった! 予告ではいかにも劇中でメガシンカしてメガアブソルと戦う感じだったのに!! 実際はOPでちょこっと出ただけだという酷い扱い!! 全米のハッサムがないた、この事実! どう晴らしてくれようか!」
「確かに去年の映画、予告詐欺酷かったもんなー」
「面白かったのは事実だけど」

 また、これか、と全員は呆れた。
 映画ネタまでぶっこんでくるとは誰が思おうか。本編が面白かったので、何の問題は無いと思いたい。

「覚悟しろ、貴様らの眉間をブチ抜いてくれる! あ、いや切り刻んでやる!!」
「どっちだよ」


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