二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- ポケモンバトルM・EVO【サン・ムーン編突入!】
- 日時: 2016/12/23 03:17
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
『読者の皆様へ』
どうも、初めましての方は初めまして、タクです。今回のこの小説は、所謂対戦実況小説といったところでしょうか。
現在、他の小説の進みがなかなか良い感じになっているため、この小説の連載を決意しました。
タイトルはM(メガ)・EVO(エヴォ)、その名の通りメガシンカをテーマにした作品になると思います。また、第六世代で追加要素のあったポケモンに視点を当てていきたい所です。
また、今回のサン・ムーン発売に合わせて、第七世代を舞台にした対戦も描いていく予定です。
そして、この小説は種族値、努力値、個体値とった3値やHABCDSVなどの記号や、略称なんかが出てくる、所謂「廃人仕様」となっております。
一応、初心者の方にも配慮したような表現を極力心がけたいですが、あらかじめこういったことを知っている前提で読んでほしいと思います。
また、この作品と舞台は違いますが世界観を共有している、モノクロさん著『BOHパ対戦記録譚』があります。そちらの方も、よろしければご覧下さい。
ちなみに、作者のフレンドコードも載せておきます。XYにおけるフレンドサファリのタイプはノーマルで、ヒメグマ、ドゴーム、ラッキーが出ます。
フレコ:2809−9638−8089
※注意※
・本作品はバトルビデオを元にして作られたノンフィクションと一部フィクションです。
・そして、ストーリー中心です。小説という以上、当然ではありますが。
・ポケモンの擬人化あります。つーか、それらのポケモン中心です。
・分かりづらいかもしれない設定多々。
・選出画面があったり無かったり。
・イラストは後々用意するかもしれませんが、クオリティは期待しない方が良いです。
・メタ発言? んなもん日常茶飯事。
・にわか発言&下手糞プレイ? んなもん日常茶飯事。
・対戦相手の名前は改変して使用します。
・対戦相手への誹謗中傷はおやめください、メガボーマンダのスカイスキン捨て身タックルとシャンデラの眼鏡大文字が襲い掛かります。
・BGM置いてるけど、ポケモンじゃないかもしれない。
また、作者は対戦・交換などは大歓迎です。フレコは自分の雑談スレ『タクのノベルス・ポケモン図書館』に置いています。バトルビデオをこの小説に使わせていただくかもしれません。
以上のことを守ってうちのポケモン達の活躍を生暖かい目で見守ってやってください。
目次
第一部:エリア開放編
プロローグ
>>01
パート1:謎の敵・静炎邸
>>02 >>03 >>04 >>05 >>06 >>07 >>10 >>11
パート2:遮断された箱庭・氷海水域
>>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>19 >>20
パート3:湖の決闘・中部緑域
>>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>32
パート4:忍の街・群雲街域
>>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38 >>39 >>40 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47
パート5:この風が泣いている・天獄峡域
>>48 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63
パート6:雷電霹靂・雷電械域
>>75 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>92
パート7:暴龍警報・頂龍山域
#1:絶望の淵へ
>>103 >>104 >>105 >>106
#2:反撃の狼煙
>>107 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>115
#3:龍の守護者
>>116 >>117 >>118 >>119 >>120
#4:最後の守護級
>>121 >>126 >>127 >>129 >>131 >>134 >>135 >>136
パート8:仲間達が待つ場所へ
>>137
第二部:新世代編
パート1:セントラル・フィールドへ
>>138 >>139 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>150 >>151 >>152 >>153 >>154
パート2:留学生は突然に……
登場携帯獣紹介
>>70
用語解説
>>71
番外編:始末屋の日常と非日常
パート1:前々前作でラスボス役やっててもキツい奴はキツいので以下略
>>95 >>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32
- パート5:この風が泣いている(3) ( No.52 )
- 日時: 2015/03/09 18:13
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
-----------あっくん……!!
暗闇に響く声。
その声でようやく目が覚めた。見れば、そこにはチャモの姿があった。
また、レイドもぱんっぱんに膨れた腹を上に向けて、寝ている。特性・呼び水で水を吸いすぎたのだろう。
「あっくん! 大丈夫!?」
ああ、良かった。
彼女は無事だ。濡れてはいたが。
そして、そろそろ原型の姿でいるのは疲れてきたので、アクアは擬人化体に姿を変えた。
「結局、濡れちゃったけど……1人で流されるよりは良かったし」
「ちょっと待ってください、ここは一体何処なんですか!?」
見たところ、洞窟か何かの類のようだった。見れば、川が洞窟内にも流れてきている。
「でも、あっくんがあたしを抱きしめて浮いてくれたから、溺れないですんだんだよ!」
と、言った途端に彼女の頬が真っ赤に染め上がった。顔を手で覆う。
冷たい手で、アクアは彼女には触れたくはなかったが、額に手の甲を当てた。
とても、熱い。
さらに、彼女の顔も真っ赤になっている。
「風邪引いたんじゃないですか、チャモさん」
「な、何言ってんの! あたしは平気だって!」
「バカ言わないで下さい。かのフレイさんも、そう言って無理に無理を重ねた結果、ぶっ倒れたことがあるんですから」
「ち、違うよぉ……あっくんの所為だよ……」
え、とアクアは一瞬頭がフリーズした。
「それって一体どういう------------」
「そこに居たか」
声が響いた。
洞窟の入り口の方から、暴風が吹きぬける。
見れば、先ほどの少年が風を巻き起こしているのが分かった。
「散々梃子摺らせやがって……もう此処までだ」
「まだ追って来ていたんですか」
怒りを含めて、アクアは言い返す。しかし、余程この地に足を踏み入れられたことが気に食わないのか、少年の方も表情が怒りで歪んでいた。
ゴーグルを上げて、怒りの眼差しをギラ付かせる。
「この峡域は立ち入り禁止だ……余所者はなッ!!」
ピキピキ、と彼の皮が剥げていく。そして、次々に身の回りの物がデータ変換されていき、分子レベルで彼の身体が”元に戻った”。
即ち、原型としての姿になったのだ。
「このポケモンは……ピジョット!?」
鳥ポケモン・ピジョット。種族値はお世辞にも高いとは言えないが、このポケモンは確か---------
「メガシンカを得ていたはず……!!」
「ご名答!! しかし、貴様らなどメガシンカを使うまでも無しッ!! よし、分かった……この方向かッ!!」
巻き上がる暴風。
それが、一気に自分達の方に襲い掛かる。
しかし、アクアも負けてはいない。原型に再び変身し、更にメガシンカでより肉体を屈強にして、襲い掛かる暴風を受け止め、受け流した。
「生憎、此処は僕の仲間がいるんだ。勝手に暴風を巻き上げられちゃ困るんですよぉ!!」
「あっくん! 頼んだよ!」
「分かってます!!」
チャモはどの道、疲労とタイプ相性で不利。
此処は自分が戦うしかない。
「メガラグラージ……か。やはり、お前が影の携帯獣だったか」
「言いがかりだ! 僕らはマスターのポケモンです!!」
「……キモい癖に、ほざくな山椒魚!!」
再び暴風が巻き上げようと、羽根を羽ばたかせようとするピジョット。
しかし、一気に飛び上がり、その翼をアクアが掴む。
「捕まえましたよ」
「貴様ァァァ!!」
だが、元祖鳥ポケモンの筋力は伊達じゃなかった。羽を羽ばたかせる、その動作だけでアクアを振り落とす。
「ラグラージは自分が御三家最強だと奢り高ぶっているが、残念ながら、そういう奴ほど自分より種族値で格下の奴に負ける世の中だ」
「奢り高ぶってる……? 未だにメガシンカしていないアンタの方が奢り高ぶってるじゃあ無いですかぁ……! その首のメガストーンは飾りですかぁ!」
「残念ながら」
瞬!! とピジョットは、アクアと間合いを詰めた。
そして、囁くように言う。
「貴様らの前では、こんな石・ただの飾りだ」
強烈な嘴による一撃が、アクアの左肩に炸裂した。
「痛ッ!! でも------------」
刹那、同時にアクアの右腕が唸りを上げてピジョットを捉える。
---------冷凍パンチで、こんな奴……!!
思い切り、腕を振り下ろす。
しかし、拳は空振り、相手の姿はもう見えない。
「こっちだ、このノロマめ!! 暴風をあれだけ食らったんだ。好い加減、混乱して自滅する頃合だぞッ!!」
ピジョットはアクアの後ろに回りこみ、嘴を叩き込もうとする。確かに、もう頭はくらくら、目の前の光景すらブレて見えてくる。
だが、そのときだった。
ピジョットは背中に激痛を感じる。冷たい感覚と共に彼は背後を見た。
そこには、バシャーモの姿があった。
「あんたは1対1の勝負と途中から勘違いしていたみたいだけど、あんたはあたし達に吹っかけて来たんだよね? だから、あたしが攻撃しても問題ないよね!」
そして、彼女の声でアクアは意識を取り戻す。
---------結局、また助けられてしまいましたか。
「……全く、僕に任せるんじゃなかったんですか」
「だ、だって……仕方ないよ!」
「まあ、良いでしょう。散々邪魔してくれたんだ。水の中に落としてくれた報復はきっちり返さなければ」
ピキピキ、と凍っていく翼と背中に戸惑いを隠せないピジョット。
めざめるパワー・氷だ。それも、命の珠を常時装備しているチャモの。
「い、嫌だ……氷だけは、嫌だ……!!」
怯えさえ見せるピジョット。先ほどまでの威勢が嘘のようだ。威力に関わらず、弱点の氷技を食らったということが問題のようだった。
好都合だ。
アクアは、最大火力の技を、目の前の動けないクソヤローに叩き込むことができるのだから。
「まずは、1発!!」
渾身の冷凍パンチを胴に叩き込む。
「うがっ、-----------バカな----------!!」
「ふんぬうううううううううううう!!」
そして、すぐさま予備動作で------------
「食らえ-----------アクアテールっ!!」
斬!! と、彼の激流を纏った尾は、見事に目の前のピジョットの身体を切り裂いたのだった------------
- パート5:この風が泣いている(4) ( No.53 )
- 日時: 2015/03/22 00:04
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「がっ、はっ……」
呻き声を上げたピジョット。そのまま壁に叩き付けられて、気を失ったように倒れてしまった。
アクアが叫ぶ。
「急いで下さい、チャモさん、レイドさん! 川を上って逃げましょう!」
「そっか、メガシンカしてる今なら、あんな激流は」
「余裕です! レイドさんもこっちに!」
ぶっ倒れていたレイドは、訳が分からないままチャモに引きずられて、アクアの背中に一緒に乗せられる。
「うっぷ、何事!?」
「逃げるよ、れーくん!」
「本当なら、再起不能になるまでやられた分を返しておきたかったですが、マスターのポケモンである以上は、これ以上の手出しはできません」
「怖いよ、あっくん!?」
「冗談です。が、次に奴が追ってきたら、今度こそ容赦なく叩きのめします!」
言ったアクアは、そのまま腕に力をこめて水を掻き分けて、だんだん深くなってくる川を泳ぎだした------------
息も絶え絶えに、その一部始終を見届けたピジョットは、一旦擬人化体に戻ると、壁に寄りかかった。そして、連絡機らしきものをデータ変換で呼び出すと、それに口を近づけて、呟くように声を絞り出した。
「----------侵入者です。奴等は三途の川を上っている。挟み撃ちにしましょう……!!」
***
雷鳴が轟く天獄峡域。その川の流れはどんどん強くなる。
名は、三途の川。志半ばで敗れた鳥ポケモンのデータの残骸が沈んでいるらしい。
幸い、水タイプである自分用に開発したレーダーマップは防水加工していた上に、無くさないように首からブラ下げていたため、無事だった。
これさえあれば、今自分がどのルートを渡っているのかが分かる。
それを見ながら、アクアは激流を泳いでいく。
「まさか、この川を通ることになるとは」
「想定外だったみたいだね」
「おっかねぇ場所だな……とっとと泳いじまえよ」
この川は、山から落ちない限りは辿り着けない。周りは断崖絶壁だからだ。しかし、この川を登り切れば、そこがコンピューターのあるポイントだと示されていた。
だが、あれで済んだとは思えない。
嫌な予感がする。というか、目の前に浮かぶ人影が2つ。
アクアはぴたり、とそこで泳ぐのをやめて止まった。
「誰ですかぁ、そこにいるのは!」
宙に浮く2つの影の姿がはっきりとした。ポケモンの擬人化体だ。
1人は、白いスーツに身を包んだ青年。
1人は、鋼鉄の鎧に身を包んだ女。
それを認めたアクアは聞き返すのを待つまでもなく、思い出す。
「待ってください、あれって確か……」
何度か、バトルボックスでも見かけた者達だった。
そして、マスターが強力な飛行タイプと認めたポケモン。
「ここ、天獄峡域で好き勝手にしてもらうのは、あまり好い気はしないな」
「……排除」
2人の姿は、原型の姿へと変換されていく。
それぞれ、男がずんぐりとした白い羽毛に包まれたポケモンに。
女が鋼の身体で構成された鳥のポケモンに成った。
「トゲキッスのシェムハザさんじゃあ無いですか……!」
「エアームドの雲斬(クモキリ)さん……こんなところで会うなんて!」
強力なポケモン故、マスターも愛用していた飛行ポケモンだ。
名前もしっかり、覚えていた。
そして何よりも、明らかにこちらに対して敵意を剥き出しにしているところか。
「---------これで、3対3だ」
そして、声が後ろからした。
バッサリ胸を切られてはいたが、さっきのピジョットだ。
「俺は、嘘は絶対付かない。付いたことがない。言ったことは全て実行する、有言実行を掲げてきた。そして、宣言する。貴様らは排除する、とな!」
「君が梃子摺る程の相手だ。丁度相手も3人。ですが、私が加わって負けた戦いはありません。今こそ、賊に神の天罰が下るときです」
「……成敗」
トゲキッスのシェムハザと、エアームドの雲斬はアクア達を囲むと、一気に攻撃態勢に入る。
どうやら、交渉の余地など与えてくれはしないらしい。
-----------どういうことだ? さっきから思ってはいましたが、皆僕たちにあからさまに敵意を向いている!
「ほうら、怯め!」
「……突貫」
エアスラッシュと、ドリル嘴が迫る。
動こうとするアクアだが、2人が立った。これ以上、彼に負担を掛けさせまいということか。
「あたし達が迎え撃つよ!」
「しゃーね、やってやるか」
足場になりそうな、岩に飛び移ったチャモは大の字の炎を一気に雲斬へ放ち、一方のレイドはミラーコートで放たれた空気の刃を跳ね返そうとするが---------
「……成敗」
まともに炎を浴びたにも関わらず、雲斬はチャモに突貫した。嘴が胸に突き刺さり、痛みのあまり彼女は絶叫をあげる。
「チャモさん!!」
「い、痛いよぉ……! あっくん……」
同時にレイドも空気の刃を跳ね返そうとするが----------
「あ、あれ……!?」
怯んで動けない。
「神の粛清の時間です」
そして、シェムハザが波動の力を一気に込めた弾を放った。
つまり、波動弾。
抜群攻撃をまともに食らったレイドの身体は損傷し、ぶっ倒れてしまった。
特性:天の恵みでエアスラッシュの怯み効果発生率は6割。レイドが怯んだのは、彼に自覚が足りなかった訳ではない。
トゲキッスの恐ろしさは、苦手な相手でもエアスラッシュだけで強引に突破できる可能性にあるのだ。
「--------そ、そんな、皆さん……!」
--------流石、マスターに使われていたポケモンというだけはある。シェムハザさんは、エアスラッシュ+天の恵みで怯ませまくり、ヒートロトムを何度も倒したという伝説を持ちますし、雲斬さんは鋼の身体でどんな物理攻撃も受け止めてしまっています。何故だ? 何故此処まで僕らに襲い掛かってくるんでしょうか……!?
「風の声が聞こえてきた……よし、分かった。消え失せろ、賊徒めっ!!」
殺意に満ちたピジョットの翼が勢いよく羽ばたかされる。
そして、轟!! と唸りを上げた暴風が、アクア達に襲い掛かった------------
- パート5:この風が泣いている(5) ( No.54 )
- 日時: 2015/03/08 15:13
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
ピジョットというポケモンは、優れた胸筋と羽を持つポケモンだ。加速していけばマッハ2で空を飛べるし、羽ばたけば追い風が吹く。
何よりも----------全力で羽ばたいたその時、木はしなり、波は荒れる程の暴風が巻き起こるのである。
それを察したかのように、シェムハザと雲斬は下がる。
「……まったく、血の気の多い人だ」
「……退避」
チャモとレイドは、その場から離れていく2人を前に、疑問を覚えたがようやく理由が分かった。
暴風は、先ほどのものとは比べ物にならないほど、ピジョットを軸に巻き起こり始めたのだ。
水を巻き上げて渦を作り、アクア達に牙を剥いた。
「僕が盾になります!! 皆さん、後ろに!!」
「で、でも----------!!」
「早く!!」
すぐさま、アクアが庇うようにチャモとレイドを岩壁に押しやり、背中で暴風を受けた。が、
「ぐああああ!!」
彼の叫びと共に、身体が浮き上がった。
そして、そのままアクアを巻き込んで風は上昇していく。
それだけではない。
ざくり、とアクアは自分の身体が何かに切り裂かれていく感覚を覚えた。
「これは----------!?」
---------旋風の中心で巻き上げられる砂や小石……!! それが物凄い勢いで飛び回って、僕の身体を切り刻んでいっているわけですか!! 単純で子供っぽいトリックかもしれないが、かなり痛い!!
分かりやすくいえば、風の日に車に飛んでくる小石である。車についた傷は、車体が直進しているのもあって、まるで切れたような傷になるのだ。
それだけではない。飛んでくる石の中には、鋭利なものもあり、下手をすれば本当に身体を切断されてしまいそうだ。
と、思ったそのときだった。
風が止んだ。
考える前に、アクアの身体は空中で一瞬静止したかと思えば、落下していく。
アクアは下を見た。
自分の背中めがけて、ピジョットが嘴を向けて急上昇してくるのだ。
どうなるのかは、すぐに分かった。
「モズの早贄(はやにえ)という言葉を知っているか? モズという現実世界の生き物は、獲物を何かに突き刺してから食べるらしいなぁ? それとは少し違うが、お前を俺の嘴で串刺しにしてやるんだよッ!! いや、そのまま貫く!!」
アクアの身体は既にずたずた。
最早、身体に力は入らない。
だが。
「こんなところで、くたばったら、ボマー先輩に笑われてしまう……!!」
ぎゅっ、と大きな拳に力が入った。
「僕がやられたら、チャモさんもレイドさんもやられてしまう……!!」
歯を食いしばって、全身の力を解放した。
そして、閃いた。
「----------下から上昇するのと、上から下へ叩きつけるのと……どちらが強くて尚且つ力がいらないと思いますかねぇ?」
次の瞬間、アクアは尻尾の周りに激流を纏わせ、思い切り、振り下ろした。
嘴による突貫と、アクアテール+落下の勢い。どちらが勝つかは目に見えていた。
「つ、貫けぇぇぇぇぇ!!」
バキィッ、と音が鳴った。嘴こそ折れなかったが、激流を纏った尾は野球のボールを打ち返すように、ピジョットの身体を打ち払った。
ピジョットの身体は、それこそバットで打たれたボールのようにひしゃげて、岩壁に向かって一直線に飛んでいったのだった。
ただし、飛ぶのに羽は要らなかったが。
アクアテールの勢いで川に自分の身体が落ちたものの、メガシンカしていたため、先ほど橋から落とされたときよりも、衝撃に耐えることができるようになっていた。
***
岩壁に叩き付けられたピジョットは擬人化体に戻っており、息絶えたかのように首をもたれていた。
シェムハザと雲斬が飛んで様子を見に行く。
「さっきのを見て、分かったことがあります。彼らは影の携帯獣じゃあ、ありません」
「だがっ……奴はラグラージの種族だったぞ……!! 擬人化体も奴に似ているどころか、瓜二つ……! 間違いない……!!」
息も絶え絶えに言うピジョットの少年は、キッ、とシェムハザをにらみ付けた。
しかし。
「……目」
雲斬が呟いた。
「……目が、違う」
「それに、仲間を庇うような先ほどの行動。守護級は幾らでも仲間を量産できるのに、庇う必要はないでしょう」
「そんな……俺は一体、誰と戦っていたんだ」
うなだれるピジョット。自分の行いを悔やむようだった。
「中央区域のアクアと申します」
擬人化体に戻ったアクア達が駆け寄った。
「僕らは、このエリアにあるロックコンピューターを破壊しに来たんです。同時に、このエリアに巣食う守護級の撃破も兼ねていますが----------」
***
人通りの事情を話したアクア達は、すぐさま謝罪された。
シェムハザが、言った。
「すまなかった。我々も実は2日前、この先に居る守護級の討伐に向かいました。しかし、奴は防御結界の障壁で我々の行方を阻んでしまったのです」
そして---------と彼は続けた。
「守護級の姿は、貴方と瓜二つでした。種族はラグラージ、しかも性格も貴方に似て理知的だったのです」
驚いた。流石に。
しかし、これはボマーのときと似ている。
このボックスにいるポケモンの恨みや負の感情も吸収して、影は更に具現化していくのか。
「それであたし達が襲ってきたと思って、攻撃したんだ」
「全く、とんだ迷惑だぜ! とっとと守護級を、ぶっ倒してやろーぜ、アクア!」
「……」
アクアは黙りこくっていた。レイドがぐいぐい、と彼の袖を引っ張って呼びかけて、ようやく気づいたようだった。
「もしかしたら、その守護級は僕の恨みが混ざって、僕の姿を形成したのかもしれません」
「どういうことだ?」
ピジョットはシェムハザに抱えられて、呟くように問うた。
簡単です、とアクアは言った。
「僕らラグラージ族は、いずれも自分の外見に悩みを抱いている人が多いですから。特に僕は、思い上がるつもりこそありませんが、少し顔が整っていたという理由でいじめられていましたから」
「そっか、あっくん相当悩んでいたもんね」
ラグラージは、外見で相当好みの分かれる種族だ。原型の顔付きは大抵、擬人化体にも反映される。
かっこかわいいという人も居れば、気持ち悪いと言って嫌悪する人もいる。
だが、アクアは例外だった。幼少期から擬人化体が容姿端整で綺麗だったのだ。故に同属からはボロクソ言われることがあった。いじめを受け続けていた。マスターの厳選で、ボックス内のミズゴロウはアクアしかいなくなった。それでもアクアは、人前に出ることを避け、1人になることが多くなった。ラグラージに進化してからは、より酷くなった。
チャモと出会うまでは。
「いずれにせよ、そのラグラージを倒し、コンピューターを破壊しないと」
アクアは決意のこもった眼差しで答える。
そして、飛行ポケモンの2人も同意するように、
「我々も同行しよう」
「……賛成」
と答えたのだった。
「貴方は、どうするんですか?」
シェムハザの問いに、ピジョットは力を振り絞るように言った。
「元は俺の責任だからな。すまなかった」
「もう良いんですよ。こんな時世だ、誰だって疑心暗鬼になるときはあります」
「俺も協力しよう。良いか?」
アクアの答えは決まりきっていた。
「勿論です。よろしくお願いしますね」
「ピジョットの旋(ツムジ)だ。よろしく頼む」
2人の手が、固く繋がれた。
此処に今、協定が結ばれたのである。
***
------------アレモ要リマセン、コレモ要リマセン……全部、消エテクダサイ……!
- パート5:この風が泣いている(6) ( No.55 )
- 日時: 2015/03/08 18:36
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
三途の川、上流。先ほどの戦闘の傷だが、彼らの持っていた回復薬で何とか癒えた。
さて、辿り着いたのは良いが、成る程防御壁らしきものが張られていた。そこから先は進めなくなっていた。
「どーすんの、あっくん」
「……同じだ」
「何が?」
「同じなんですよ。僕もバリケードを作るなら、同じ方法で作ります。データの塵を集め、それを固めているというものですが、1枚壁ではなく、何枚もの壁を張り合わせてより屈強にしてあるんでしょう」
やはり、この先に居ると思われる守護級。アクアは、自分に似ているものを感じた。
「この壁……コンピューターを守りたいだとか、そういう意思ではなく、単純に外部の者を遠ざけるために作られたんじゃないでしょうか」
「あっくん……」
チャモは、まるで以前のアクアを見ているような気分になった。アクアも同じだった。
「ですが、やるしかありません。力技では壊せないので、何とか壁を構築するプログラムにウイルスを送り込んで、破壊するしかないでしょう。ただし、すぐにこいつは再生してしまうので、とっとと入る必要がありますが」
アクアは、タブレット(当然、防水加工済み)の画面を開き、コードを幾つも繋いで画面に噛付くように操作を始めた。
ウイルスとか色々ヤバいことやらかそうとしているが、別に悪いことに使うわけじゃあるまいので良いだろう(ウイルス作成は犯罪です)
改めて、この少年が悪人じゃなくて良かった、とチャモとレイド含む全員は胸を撫で下ろしたのだった。
「……あれ? 何か聞こえてこない?」
「川の方を登ってくる音ですね」
どれ、と下流の方を覗いたシェムハザは戦慄した。
「下級です!! サメハダーが数体!!」
叫んだシェムハザ。見れば、軽く6体程の凶暴ポケモン・サメハダーが群れを成して襲い掛かってくる。
しかも、いずれも黒い影に身を包んでいる。
間違いない。影の携帯獣の下級だろう。
「畜生!! 後もう少しなのに……!!」
「仕方がありません! 雑魚は私達が食い止めます!」
「……駆逐」
雲斬とシェムハザが飛び出していく。
旋も後に続こうとするが---------
「待ちなさい。君はアクア君達と一緒に居るんだ!」
「し、しかし……!」
「我々の中でメガシンカが使えるのは、君とアクア君しかいない。しかも、アクア君は先ほどの戦いで、もうメガシンカするエネルギーは残っていないはずだ。それに、壁の解除は一瞬の間。君も一緒に連れて行く訳にはいかない!」
くっ、と言葉を失う旋。自分の所為、だと。
「雑魚は私達に任せなさい!! 君は、アクア君の力になってやるんだ!!」
「----------分かった、シェムハザさん。雲斬さん」
今、悔いている暇は無い。
今、自分に出来ることをしなければ!
「やりました!! バリケードのプログラムを破壊しましたよ!!」
アクアの声が聞こえた。壁がバラバラに崩れ落ちる。
そして、チャモとレイドが奥へと進んでいく。
アクアもタブレットを手に、走っていく。
「早く!! 旋さん!!」
----------師匠。俺でも誰かの力になれるのなら。
そして、旋もその先へ向かったのだった。
それを見送ったシェムハザは呟いた。
「彼は成長したよ。あの男の下でどれだけ扱かれたかは知らないが」
「……男?」
「滅茶苦茶で破天荒だが、芯は人一倍通っている龍の男だ」
さて、とサメハダーの群れを見てシェムハザは笑みを浮かべた。
「神の名に誓って、奴らを滅さねばならないようだ……!」
「……御意」
***
壁の先は別世界のようだった。
瘴気に包まれた空間が奥には広がっていた。
そこには、子供のおもちゃのようなものが転がっていた。ぬいぐるみ、ブリキの車、ボール……。
「まるで、子供が1人で遊ぶための部屋だな」
「閉塞感漂ってんなー、オイ」
「不気味……」
それぞれがそれぞれの感想を思い思いに言う。
「ねえ、アレ見てよ!」
部屋の隅に、うずくまっている少年が居た。
「……居なく……なってください。どーせ、僕は誰からも必要とされていないんだ……!!」
今、アクアはその声が自分の口から出たものと思ってしまった。
現に、3人とも自分のほうを向いた。
しかし、それが少年の発した言葉だと分かったようだった。
「アクアに……似てる、だってぇ!?」
「声まで……此処までとは思いませんでした」
「……1人にさせてください……!!」
ぐるり、と向き直った少年の姿は、ヘッドフォンをしていないアクアそのものだった。
しかし、目玉は今までの守護級同様黒くなっており、異形のモノであることを再確認させた。
そして、空間が収束し、少年の姿が変わっていく。
新たに5つの影が現れた。
「---------排除……します」
4人は、臨戦態勢に入る。
呟いた少年の姿は----------ラグラージになっていた。
「どんな理由があろうが、僕の姿でそれ以上好き勝手して貰うと困るんですよ。全力で貴方を倒し、コンピューターを破壊する!! それだけです!!」
- パート5:この風が泣いている(7) ( No.56 )
- 日時: 2015/03/10 20:37
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
選出画面に移行する。相手の影が具現化し、ポケモンの姿となった。子供部屋のようだったこの場所も、霧のかかったバトルフィールドに変わる。
「しかし、僕はメガシンカして闘うのは無理ですね。旋さんに着いてきて貰って良かったです」
「俺で良ければ、幾らでも力になろう」
「選出画面を見ようよ!」
ラグラージ
クレッフィ
オオスバメ
マリルリ
ジャローダ
クリムガン
クリムガンといえば、下克上。って、そうではなく。色々反応に困る面子だった。
例えば、マリルリジャローダラグラージまでは良い。
が、問題は残りの3体だった。
「クレッフィって、クレッフィって……いばみがクソゲーされる予感しかしません」
そうだ。作者はクレッフィが憎い。こっちは、”害悪なんか使わず”に、”正々堂々”とポケモンバトルをしているのに、それを邪魔してくる。マジ許さん。
「いや、でもこないだマスター、どくまもグライを嬉々とした表情で使ってたよーな」
「XY時代はクレッフィメタモンにスカーフキッスでレートをテロしまくっていましたからね」
「ムラっけオニゴーリも使っていたね。ガッサもかな」
「汚いな、流石マスター汚い」
「輝石ポリ2にラッキーも使ってたよね」
い、いや、違うのである。別にこれは、上からテロ(悪戯心・スカーフキッス)が好きとかそういうのではない。
確かにスカーフキッスのエアスラだけでガブリアス滅ぼしたり、挙句の果てにはヒートロトム倒したこともあったけども。
クレッフィメタモンで相手のガルーラをカモにするのが楽しかった時代もあるけれども。
「追い討ちかければ、マスターってラムみがシャンデラのフレイ先輩のおかげで、クレッフィなんか敵じゃなかったはずです」
黙れ。人が折角、綺麗なトレーナーを演じようとしていたのに。
あっ、違う。読者の皆様、これはそういうことではない。
「マスターは害悪戦法をフレ戦でも平然とした表情で使うからね」
「トゲキッスは許されるとか言ってましたが、これはもう無期懲役レベルのテロ行為ですからね」
「シェムハザさんは、何体ものトップメタを滅ぼしてきたのだろうか」
「アローハッサム以外は全員が役割対象になりえるので」
「耐久型もスカトリで殺せるんだっけ……」
それはともかく、である。まずはクレッフィの対処方法を考えねばなるまい。
「まず、僕は確定ですね。先発を旋さんに行って暴れて貰います」
選出確定
旋:ピジョット
「了解だ。今回の相手には、飛行技が割りと刺さっている」
頷いた彼は、闘争心を見せた。
「そして、クレッフィが来たら僕が出て電磁波を起点に無償光臨します」
「出て行きますって……今回のあっくんの型(スタイル)は?」
「HBぶっぱの図太い物理受けですが、何か?」
「それ、いばみがクレッフィ倒せるのか」
いばみがクレッフィはHDベースが主なのだ。
しかし、今回のアクアの技はなみのり、大地の力、カウンター、吠える。
仮想的を明確に定めた物理受け型である。
いばみがクソゲーになったら、押し切れるか心配だ。
「何で、物理受け?」
「レイドさんと僕の相性補完は良好なので。それに、この構築では起点作成をする意義が薄いです」
何か、反応に困る第二弾、第三弾のオオスバメ、クリムガンもアクアで対処ができるのである。選出しない手は無かった。
選出確定
旋:ピジョット
アクア:ラグラージ
そうなると、彼に相性補完を合わせていくことになる。
「最後にジャローダ対策でレイドさんお願いします」
選出確定
旋:ピジョット
アクア:ラグラージ
レイド:ユレイドル
「ちぇっ、あたしは出番なしかー」
「まあ、次回辺り出番がありますよ」
選出が決まった。後はもう、闘うだけだ。
「それでは行きましょうか。僕の偽者を倒しますよ!!」
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