二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- ポケモンバトルM・EVO【サン・ムーン編突入!】
- 日時: 2016/12/23 03:17
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
『読者の皆様へ』
どうも、初めましての方は初めまして、タクです。今回のこの小説は、所謂対戦実況小説といったところでしょうか。
現在、他の小説の進みがなかなか良い感じになっているため、この小説の連載を決意しました。
タイトルはM(メガ)・EVO(エヴォ)、その名の通りメガシンカをテーマにした作品になると思います。また、第六世代で追加要素のあったポケモンに視点を当てていきたい所です。
また、今回のサン・ムーン発売に合わせて、第七世代を舞台にした対戦も描いていく予定です。
そして、この小説は種族値、努力値、個体値とった3値やHABCDSVなどの記号や、略称なんかが出てくる、所謂「廃人仕様」となっております。
一応、初心者の方にも配慮したような表現を極力心がけたいですが、あらかじめこういったことを知っている前提で読んでほしいと思います。
また、この作品と舞台は違いますが世界観を共有している、モノクロさん著『BOHパ対戦記録譚』があります。そちらの方も、よろしければご覧下さい。
ちなみに、作者のフレンドコードも載せておきます。XYにおけるフレンドサファリのタイプはノーマルで、ヒメグマ、ドゴーム、ラッキーが出ます。
フレコ:2809−9638−8089
※注意※
・本作品はバトルビデオを元にして作られたノンフィクションと一部フィクションです。
・そして、ストーリー中心です。小説という以上、当然ではありますが。
・ポケモンの擬人化あります。つーか、それらのポケモン中心です。
・分かりづらいかもしれない設定多々。
・選出画面があったり無かったり。
・イラストは後々用意するかもしれませんが、クオリティは期待しない方が良いです。
・メタ発言? んなもん日常茶飯事。
・にわか発言&下手糞プレイ? んなもん日常茶飯事。
・対戦相手の名前は改変して使用します。
・対戦相手への誹謗中傷はおやめください、メガボーマンダのスカイスキン捨て身タックルとシャンデラの眼鏡大文字が襲い掛かります。
・BGM置いてるけど、ポケモンじゃないかもしれない。
また、作者は対戦・交換などは大歓迎です。フレコは自分の雑談スレ『タクのノベルス・ポケモン図書館』に置いています。バトルビデオをこの小説に使わせていただくかもしれません。
以上のことを守ってうちのポケモン達の活躍を生暖かい目で見守ってやってください。
目次
第一部:エリア開放編
プロローグ
>>01
パート1:謎の敵・静炎邸
>>02 >>03 >>04 >>05 >>06 >>07 >>10 >>11
パート2:遮断された箱庭・氷海水域
>>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>19 >>20
パート3:湖の決闘・中部緑域
>>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>32
パート4:忍の街・群雲街域
>>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38 >>39 >>40 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47
パート5:この風が泣いている・天獄峡域
>>48 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63
パート6:雷電霹靂・雷電械域
>>75 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>92
パート7:暴龍警報・頂龍山域
#1:絶望の淵へ
>>103 >>104 >>105 >>106
#2:反撃の狼煙
>>107 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>115
#3:龍の守護者
>>116 >>117 >>118 >>119 >>120
#4:最後の守護級
>>121 >>126 >>127 >>129 >>131 >>134 >>135 >>136
パート8:仲間達が待つ場所へ
>>137
第二部:新世代編
パート1:セントラル・フィールドへ
>>138 >>139 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>150 >>151 >>152 >>153 >>154
パート2:留学生は突然に……
登場携帯獣紹介
>>70
用語解説
>>71
番外編:始末屋の日常と非日常
パート1:前々前作でラスボス役やっててもキツい奴はキツいので以下略
>>95 >>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32
- パート1:セントラル・フィールドへ(7) ( No.147 )
- 日時: 2016/07/15 02:36
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
【フレイの大文字!!】
——さて。通常のヤミラミならば、この一撃を耐える事は出来ない。
HBヤミラミに対して、シャンデラの大文字は余りにも強烈すぎる。その致死率、100%。まず耐えない。
「焼き切れなさいっ!!」
チャカッ、と着火音が響き、炎が大の字に広がる。
そして、一気にトンベリ目がけて燃え広がった——
「うちのパーティはシャンデラが激重だ。というか、元がちーちゃんやクレセリアの対策で投入されたのがあのシャンデラの小娘だからな。なんべんもやられてるから分かってる」
しかし。
「……舐めんな」
しかし。それはトンベリがHBヤミラミであればの話である——
「嘘、でしょ——!?」
フレイは呻くように言った。
最大出力だった。手を抜いたわけではない。
しかし。
いつもならば倒れているはずのヤミラミは——自らの仮想敵はしっかりと地に足を付け、立っていた。
『——トンベリ残りHP:27%』
「逆に言えば、あの嬢ちゃんさえ殺っちまえば、俺達の優勢に一歩近づくって訳よ」
次の瞬間、鋼の塊がトンベリに収束していく。焦りを隠せないのはボマー達であった。耐えられた。我がパーティ特殊の最大火力の攻撃が耐え切られたのだ。
「や、やべえ!! 耐え切られちまった!?」
「でも、ヤミラミなら有効打は無いはずですよ!?」
「いや、あるぜぃムゥのお嬢——!! ヤミラミには、一撃必殺の最終兵器がある——!!」
そして——光を一気に反射した。
「受けたダメージ——物理か特殊か関係なく、全て跳ね返す——メタルバースト……多分、すっごい痛い」
食らったダメージの1.5倍を与えるカウンター技、メタルバースト。後手に回らなければ発動しない、というカウンターやミラコには無い弱点こそあるが、元々素早さが無いに等しいヤミラミには関係ない。
——し、しまった——特殊受け!? 物理が受けきれないから割り切って——!?
今更狼狽しても遅かった。
光の嵐が、一気に襲い掛かった——
「落ちろ」
ズゥゥゥゥウン……
刹那。光の嵐は遮られた。
突如現れた”影”によって。砂煙が舞い、会場が見えなくなった。
しかし。そこに現れたのは——携帯獣ではない異形のモノであった。
「何だ!? 乱入か!?」
そんな声を皮切りにして、どよめきが観客席から上がる。
しかし。
既にそこには6つの影が立っていた。
1つは人型、残りは不定形な携帯獣型の影だ。
その存在の正体を知っているボマーは、不快そうに声を漏らした。
「影の——携帯獣!?」
しかし、影の携帯獣がまさかこのセントラル・フィールドに現れるとは思いもしなかった。
呆然、と突っ立っているフレイの手を引き、ボマーは叫ぶ。
「オイ雷切!! 聞こえてるか!! テメェはガキ連れてさっさと逃げろ!!」
「ああ!? 何言ってやがるテメェ——」
「こいつは只の乱入者じゃねえ、影の——」
次の瞬間。
人型は表情1つ変えぬまま辺りに黒い塊を撒き散らし始める。
それがやばいものと本能で直感したのか、雷切も頷くとまだ放心状態のトンベリを抱えて、引き下がる。
「成程な、只のポケモンじゃねえってのは分かったぜ」
「ちょっと、ライ!? どうするのよ!?」
「さあな。だけど、今此処で暴れるのは少し危険だ。何より観客も居る——!!」
逃げ惑う観衆。滅茶苦茶になっていくフィールド。
得体も知れない攻撃を放つ影の存在。
会場は混乱に包まれた——
「オイ、グレン」
「何だ」
「一時退避だ」
「斃さなくて良いのか」
「悔しいが、こっちはガキ2人抱えてるんだ。万が一巻き込まれたら危険だ。あれは普通のポケモンじゃねえ。何かあったら俺の首が飛ぶ」
「……分かった。会場の観客の誘導をしつつ、退避する」
珍しく意見が合致したのか、雷切とグレンはその場から一旦、他の観客に任せることを選ぶ。
戦えるとはいえ、ちーちゃんとトンベリはまだ幼い。
危険な敵と対峙させるわけにはいかなかった。
——さて。一方のボマー達であるが弾幕を撒き散らす敵を前にして、近づけないでいた。
他の携帯獣の影も技を撃ちはじめ、いよいよ物陰に隠れていなければしのげなくなるという事態に。
「おいフレイ、しっかりしろ!!」
「あ、ああ……うん、ごめん——でも、何あいつ——!? 何で影の携帯獣があんなところに」
「それよりどうするんですかぁ!? こっちももう持ちそうにないですよ!?」
涙目で叫ぶのはムゥである。じり、じり、とこちらに接近してくる。攻撃の苛烈さはこれまでの敵の比ではない。
「何ならこっちからウォーを仕掛けにいくデースか?」
「やめときな、モーターのお嬢。野郎の目には殺戮の二文字しか感じられねえ。しかも下手に此処で暴れて地下の闘技場が崩れたらどうする。あっしらデータのチリに埋もれて生き埋めだ」
確かにガメリオの言う通りであった。
此処が地下であることを忘れてはいけない。データ世界の地下とは、文字通りデータの層に穴を掘っているのと同じなので、崩れれば当然生き埋めになる。
そうなれば自分たちは死にはしないが動けなくなるだろう。現にあの敵は会場を破壊していっている。この場所ごと他のポケモンを潰すつもりだったのだろう。
最も、雷切達の迅速な救助のおかげで最悪の事態だけは避けることが出来そうであるが。
「クソッ、せめて——少しの間時間が止められれば——」
ギリッ、とボマーは歯を噛み締めた——その時であった。
「オイ、何処見て撃ってる。俺は此処だ」
俺、という一人称。
しかし。それはボマーのものではない。まして雷切のものでもない。
声は低いが女のモノだった。
「波動弾」
瞬きする間もなく、1発の弾が暴れる影達にぶち込まれた——
- パート1:セントラル・フィールドへ ( No.148 )
- 日時: 2016/07/20 17:41
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
「——あれは」
目を凝らした。
弾が降ってきた方向には——仁王立ちする人影。
しかしそれは自分たちと同じ存在、携帯獣だ。更に数発、波動弾が敵の姿を捉えていく。
「痛いだろう? それでしばらくは動けねえだろ。それじゃ駄目押し——行くか」
ひゅん、と地面を蹴ったそれは観客席から跳ぶ。
相当鍛えられていると思しき脚力だ。そして——至近距離で波動弾を数発、お見舞いした。
——ただし、敵ではなく天井に。
次の瞬間、さっきの手痛い一撃を食らって怯んでいた敵達は——ガラガラ、と何かが崩れ落ちる音と共に降って来た天上の機材の下敷きになったのだった。
次の瞬間——再び波動弾を数発放ち、瓦礫は爆散した。
しばらくして、煙が上がったが、完全に敵の姿は影も形も無くなっていたのだった。
「よし。いっちょあがり」
たっ、とボマー達の元に降り立った女は、息を切らせた様子も見せず、そのまま彼らを一瞥する。
余りにも圧倒的だった。攻撃が苛烈過ぎて接近できなかった程の影達を擬人化体の劣化した技だけで倒してみせた。
無双、の2文字が浮かび上がる。恐ろしい程の火力だった。
房のようになった括られた髪、短パンにタイツという動きやすい恰好。
毛皮のマフラーを首に巻いた彼女は——マスターに言われていた対象の特徴に当て嵌まる。
「ひっさしぶりじゃねえか、ボマー。随分と腑抜けたなオイ、この程度の連中に遅れを取るとは——」
ニヤリ、と傲慢不遜な笑みを浮かべた女はボマーの名を呼ぶ。
それを見て戦慄したのは、ボマーだけではない。モーターも、フレイも、ガメリオも真っ青になった。
戦えば血の雨が降り、瞳から流れ落ちるは狂気の血涙。
それは彼女の二つ名となった——
「ルカ姉——久々だな」
その名を、呼んだ。
ムゥは顔を丸くする。
「この人が——ルカさん、ですか……!?」
「何だ何だァ? お前らずいぶんと俺を見てビビってんな。マスターの言った教えを忘れたのか? ”叩き潰せ、踏み躙れ、無双せよ”——」
「んなこたぁどうでも良い。酔っ払いのろくでなしのあんたにゃ言われたきゃねぇよ」
ちぇっ、と言った彼女はさっきまで敵が暴れていた方を一瞥すると「着いてきな」と駆け出す。
「おい、待て!! 今日はあんたに用が——」
「良いから着いて来い。そこで話は聞こう」
仕方があるまい。
随分と独断専行の過ぎる人物だと思うが、彼らはルカに着いて行くことにしたのだった。
***
——辿り着いた先は、闘技場のVIPルームであった。多くの戦績を重ねた猛者のみが得ることの出来る栄光の証。闘技場の中の豪華な個室だ。
警備員と思しき男に目くばせをすると、ルカは勿論、ボマー達も通された。
が、しかしそこは——
「うえっ、酒臭……」
思わずフレイがそう零す。
見れば、部屋の中には酒瓶が散乱しており、棚には多くのワインボトルや酒瓶が置かれている。
ソファに腰掛けると、ルカは更に1本、酒の瓶を開けた。
さっきの戦いぶりからは想像できない程、だらしない私生活を送っていることが分かる。
無くなることのない酒の宝庫に入り浸っているのだ。
「ま、見た事ねぇ嬢ちゃんが居るし、カクレオンの奴とは直接会ったことねぇから自己紹介すっか。知ってるとは思うが、俺はルカ」
ぐびっ、と酒瓶を飲み干すと、続けてどぎつい笑みを浮かべ、
「”血涙のルカ”、だなんて物騒な異名が付いてるが気にすんな」
「気にするわ、このおっさん女」
バッサリ、とそれを切り捨てる。
割とユーモアでは済まされないから困る。第四世代の破壊力SSはガブリだが、それと拮抗する程度の実力を持つのだから。
「此処が俺の部屋だが散らかっててわりーな」
「片付ける気もねぇのによく言ったもんだ、ちったぁ片付けろ」
「そうね。女子力の欠片も無い」
「うええ、臭いデース……」
口々にボロクソに言う面々。
しかし、これでも頼みごとをしにきたのだ。
ボマーは進み出る。
「……良いぜ、用件を言いな」
「……マスターからの命令だ」
マスターには何のかんの言って忠実なボマーは、敢えてその言い方を選んだ。
ルカもまた、マスターの教訓を守っている辺り、彼の命令には逆らえないからだ。
「影の携帯獣——さっきあんたが倒した奴らだが、そいつらが最近暴れている。俺達のボックスから脅威は去ったが、たった今セントラル・フィールドであるこっちに姿を現した辺り、まだ根元は絶ててねぇんだ」
「へーえ。さっきの奴らか。あれより強いのも居そうだな。ちったぁマシになりそうだ」
「だが」
とボマーは否定するように言った。
「俺としては、あんたには入ってほしくはねぇ。マスターには断られたと言っておく」
完全にルカがパーティに入るのを拒んでいるようだった。
「で、でもボマーさんっ、そんな言い方しなくても」
突き放すような、つっけんどんな言い方のボマーにムゥが窘めるように言った。
しかし。その顔を覗き込むと、明らかにボマーの様子がおかしいことに気付く。それだけではない。モーターやフレイも、だ。
3人とも、顔がいつにもまして真っ青になっているのだ。特にボマー。こんな彼はムゥもガメリオも始めて見た。
「どうなってるんすか、フレイのお嬢。モーターのお嬢。何かこの人に弱みでも握られているんですかい?」
「いや、そういうわけではないわ……でも、取り敢えずムゥちゃんは下げておいて」
「? あ、ハイ……分かりやした。ムゥのお嬢、こっちへ」
「え? え?」
ボックス内でも最強クラスで、しかもキャラが濃いボマー、フレイ、モーターの3人組。しかし、今はこの3人が完全に勢いが弱っている。
「……気を付けた方が良いわ。あの人は、酒癖がとっても悪いの」
「はぁ」
「……しかもそれだけじゃないから」
そんな中、ふぅー、と息を漏らすと紅くなった顔のままでルカは言った。
「俺ァ強い奴との戦いに飢えてる。それがやばけりゃやばいほど、燃えるってもんだ——なのによぉ、最近はよわっちぃ奴ばかり。あー、やってらんねぇ、飲まなきゃやってらんねぇ」
勝手にそんなことを言いだすと、ぐびぐび、と持っていた一升瓶を飲み干し始める。
ぞっ、とした顔でボマーとフレイ、そしてモーターは彼女を止めた。
「オイコラ!! 何勝手に自己完結して勝手に飲んでやがる!!」
「やめてください!! ちょっ、ああああ!! もう全部飲んでる!?」
「そんなに飲んだら身体に毒だヨ!?」
「うるせぇ!! これが飲まずにやってられるかってんだ、ヒック!! だからよぉ、なかなかおもしろそーな話じゃねえか……是非とも俺にも参加させてくれよ」
確かに酒乱ではある。しかし、さっきの戦いぶりを見たガメリオとしては、彼女をパーティに入れるのはそこまで悪い話ではないと思ったのだ。
しかし。
「もし、やらせてくれねーなら——ヒック」
ギロリ、とルカの視線がムゥを射抜く。
次の瞬間——彼女の身体は消えた。
「この子を貰う」
——そして次の瞬間、ルカの両手はムゥの両方のたわわなそれを背後から鷲掴みにしていたのである。
- パート1:セントラル・フィールドへ ( No.149 )
- 日時: 2016/07/26 19:20
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
気付くのは一瞬遅かった。
既に、ムゥはルカに捕らえられていた。
「およっ、可愛い顔してる割にはC……いや、これはD? 羨ましい程立派なものを持ってるじゃねえか」
「あ、あの、あのぅ、そこを触るのは……だめなのです、恥ずかしい……ひゃうっ!?」
「およっ、腰もくびれてるし……お前結構イイ身体じゃ——」
次の瞬間——電撃が降りかかる。
ムゥにそれは通用しないが、バチィッ!! という音と共に床が焦げた。
既に、そこにルカは居ない。
放ったのは——モーターだ。浮かび上がり、天上から必殺の電撃を放ったのだ。
避けられるのは分かっていたのだろう。
どうやら、この酔っ払い、これがいつもの事らしい。流石のモーターもかなり怒っているようだ。後でガメリオが知ったことだが、ガブリ同様最古参組ということもあり、彼女の行いに胃を痛めていたらしい。
「ルゥゥゥカァァァーッ?」
「おー、おー、モーター、落ち着けよ。これはスキンシップだ。至って健全な」
「毎度毎度リピートして言ってるネ!! それはスキンシップじゃなくて、同性へのセクシャルハラスメントデース!!」
「いいじゃねぇかよぉー」
その光景を呆れた表情で流し見ながら、ボマーはガメリオに語る。
「もう分かったか? あの酔っ払いはな、バイなんだ」
「バイって……バイセクシャルのバイですかい?」
「ああ。男でも女でもいける。特に酒が絡んだらアウトだ。以前、ガブリ姉とルカ姉はメガシンカ習得祝いに互いに酒を飲み交わした事があったらしいが——下戸のガブリ姉はすぐに酔い潰れ——気付いたら、顔を真っ赤にしたルカ姉に押し倒され服を脱がされかけていたらしい」
「え」
「そう。酒豪のルカ姉に対し、ガブリ姉は下戸だ。どうやらこっそり強い酒を飲まされたらしくな。危うくルカ姉に寝ている間に襲われるところだったらしい。この話を聞いたのは俺だけだが、ぶっちゃけ、この話をしていたガブリ姉の顔は怯えていた。すっげー怯えていた。どうやら、すぐに店を千鳥足で飛び出し、地面に穴掘って逃げたのは良いが、酔ってコントロールもまともに効かず、翌日どっかの工事現場で顔から穴出してるところを俺に拾われた」
「あ、拾ったの旦那だったんですかい」
「そうだ。いやー、”このことは秘密だからな!! もし誰かに言ったら逆鱗でぶっ飛ばしてやるぞ!? 良いな、ボマー!!”とか必死で叫んでた」
「今あっさりバラしてるじゃないのよ」
「いーのいーの、別に。あの人も可愛い一面があったんだなぁーって」
ガメリオは、ガブリのことをかなり気の強い武人肌と思っていたが、攻められると弱いタイプらしい。しかも酒を飲んだらヘタレる。
そしてルカもかなり問題のある人物らしく。彼女が左遷されたのは、ガブリが涙目で頼み込んだから、というのは言うまでもないだろう。これを知るのは本人とマスター、そしてボマーだけであるが。
「だが、もう分かったろうか? ルカ姉をパーティに入れるのは諦めろ、ガメリオ」
「は、はい……分かりやした」
「ムゥちゃん、大丈夫? 怖かったわね」
「ぐすん……怖かったです……」
「いっつもいっつも、ミーとガブリに迷惑ばっか掛けて、今日という今日はデリートネェーッ!!」
「おっと危ねぇ」
がしゃぁぁぁん、と酒瓶の割れる音がする。
いい加減部屋の中で乱闘をするのも勘弁してほしい——そう思った矢先であった。
『緊急事態! 緊急事態! 正体不明のデータ生命体が再び闘技場に現れました! 場内に残っている方々は至急避難してください!!』
ぴたり、とそこで全員の動きは止まる。
「おい、どういうことだ……? 正体不明のデータ生命体って——」
「ボマー」
にやり、と口角を上げたのはルカだ。
悦びに満ちた表情をしていた。
「あれが影の携帯獣って奴なら——すっげー骨のある連中じゃねえか」
ぞくり、と全員は戦慄する。
「さて、行くとするか。テメーら」
「お、おい、行くって——」
「着いて来な。俺が奴らを叩きのめす」
***
VIPルームを出て、大通りを走り出す一同。
目指すは闘技場だ。
途中で警備のポケモンに止められそうになったが、ルカの顔を見るなりあっさり通された。
この闘技場で彼女の影響力はそれほどまでに大きいらしい。
「ッ!」
そこで一同は立ち止まる。
闘技場への扉をふさいでいるのは、3体の影の携帯獣だった。
しかもその一体は——
「ケケケケ——ケキャキャキャキャキャキャキャァァァーッ!! どんくさい、脳筋ドラゴンがさぁーっ、わざわざそっちから出てきてくれるなんてねぇ、都合が良いよォ……!!」
「チッ……コイツは……!」
道を塞いでいるのは、少女だった。
しかし。ポニーテールに結われた髪には牙が付いており、その目はまるで爬虫類のようだ。
自分の知っている少女のそれよりも、年齢は高めだが、それでも第一印象は幼い少女であった。
だがしかし。相手を絶対に狩るという凶悪な目付きをしている。
何よりも、その波動は邪悪な影のものだ。
「何だテメェら……! 影の携帯獣が何故此処に——!」
「ケキャキャキャキャキャキャァァァーッ! 美味しそうな、ポケモンさん……じゅるり……ヒヒヒヒヒ、ヒヒャハハハハハーッ!!」
「駄目だ話が通用しねえコイツ」
「美味しそう、美味しそうなドラゴン……味見、味見味見味見味見ィィィィイイイイイ!!」
カチ、カチ、とポニーテールがその本来の凶悪な大顎に化ける。
この特徴。間違いない。
「こいつの種族は——クチートか」
——さて。ボマーとクチートの因縁は切って切れるものではない。クレセリア同様、彼女を苦手とするボマーは、どうしてもクチートと相対すると腰が引けてしまう。
モノクロ氏の嫁はクチートのちーちゃんなので、度々じゃれつかれて殺された。そのため軽くトラウマだ。
しかし。
「なら話は早い! ルカ姉! 先に行っててくれ!」
「オッ、マジかよ」
「どうせ迂回路とかあるんだろ? 早く頼む! ムゥと、モーターの3人なら相性もいいし行けるだろ!」
「オッ、マジで」
「忘れんなよ? モーターはお目付役だ」
「ボマーの頭の切れ味が此処数日でめきめきと冴えているわね。まあ、奴らの好きにさせてたらヤバそうだし。多分、こいつがボスってわけじゃないでしょ」
「ガメリオ、フレイ。サポート頼むぜ」
「ちょっ、ボマーさん!?」
「わりぃムゥ! 最低限、火力の高いアタッカーは2人居た方が良い!」
「無慈悲なのです!」
「わ、ワタシがいるから大丈夫ネ……」
画して。
ルカとモーターは嫌がるムゥを連れて、そのまま迂回路を通って闘技場へ向かうことになった。
そして——ボマーと相対するのは永遠の宿敵・クチート。
「あの時の俺は、BOHの後の試合でじゃれつかれて死んだ——そっから俺は、またゼロから始めたんだ!」
「ヒヒャヒャヒャヒャヒャァァァーッ!! 美味しそう……食べる……皮をビリッ!! ビリビリッ!! って剥いで——一気に丸呑み——骨も肉も、全部噛み砕いて——想像するだけで、コーフンしちゃったぁ……」
愉悦に満ちた表情を浮かべるクチート。
しかし。
ボマーとフレイ、そしてガメリオは怯むことなくそれに立ち向かう。
自身の身体を原型へと解除した。
「教えてやる——狩られるのはテメェだ。久々の祭りの始まりだぜ!!」
- パート1:セントラル・フィールドへ ( No.150 )
- 日時: 2016/07/30 09:57
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
【影の携帯獣のクチートが勝負を仕掛けてきた!】
【いけ! フレイ!】
初手。
取り敢えず、脚の遅いポケモンを起点に出来るフレイが進み出る。
彼女の型はいつも通りの火炎放射、シャドボ、エナボ、身代わりで持ち物はラム。
正直、これが一番強いのだから仕方がない。
ある時は交代読みで出て来たバンギにエナボをブチ当てた後に、電磁波を起点に身代わりを張って、エナボでごり押しして追い詰め、交代したスイクンもエナボでごり押し、そのまま相手を降参に追い込んだ程度には強い。
その火力、C145。彼女のネックウォーマーにもそうプリントされてある。
彼女に一貫を作った時点で相手は負ける。そう思わせるほどだ。
しかし。
【相手の影はヌメルゴンを繰り出した!】
「ごめん、パス」
——シャンデラとは非常に得意不得意が分かれるポケモンである。
確かにBDも90あり、並み大抵の不一致弱点程度では落ちない。
が、しかし。
現れたのは600族最強の特防値150を誇り、不一致の特殊弱点では一撃で落とすのはほぼ不可能に近いヌメルゴンだ。
体力もギルガルドより高いため、実質特殊耐久はギルガルドのシールドフォルムを上回る。H4振りだけでH244ギルガルドと同じ耐久値を持つことからも圧巻の特殊耐久がお分かりだろうか。
火力は他の600族より低いが、その耐性故に特殊技で落とすのは至難の業だ。
特にシャンデラにはヌメルゴンへの有効打がない。一致等倍で落とす前にこちらが落とされてしまう。
「ヌメルゴンは特殊型が多い——! 此処はガメリオ、あんたに託すわ!」
「了解でさァ! 今回の俺はいつものチョッキアタッカー型! ヌメルゴンの技くらい、受けきれますぜぃ!」
「恐らく撃ってくるのは龍技か……まあガメリオならいけるだろ」
特殊防御が高いのは我がパーティのガメリオも同じであった。
特に変化技と引き換えに圧巻の特殊耐久を与える突撃チョッキを装備した今のガメリオならば特殊アタッカーを受けきることは難しい事ではない。
ヌメルゴンは特防は化物のように高いが物理耐久はそこまで高くないので、ガメリオの変幻自在で一致技となった物理技で攻め落とすことも難しくはないだろう。
ボマーはこの時、そう思っていた。
そう、この時だけは——
【もどれ、フレイ!】
【任せた、ガメリオ!】
「よし、俺の参上ですぜぃ!! さあ、流星群だろうが龍波だろうがなんでも来やがれってんだ——」
そう言い、構えるガメリオ。
虚ろな目をした、相手のヌメルゴンは技の構えに映る。
鈍重な動きではあるが、その火力は決して高くは無い。
受け止めることは容易い——
【ヌメルゴンの逆鱗!】
——物理技でさえ無ければ。
「え、ちょ、おま——」
次の瞬間、怒りのままにヌメルゴンがガメリオの身体を弾き飛ばす。
ヌメルゴンの物理火力は特殊のそれよりも低い。
しかし。カクレオンもヌメルゴン同様防御の種族値が低いのだ。
そのまま地面にめり込んでしまう。
「ガ、ガメリオー!?」
「ちょっ、まともに食らったけど大丈夫なのアレ!? カクレオンって防御種族値70しかないわよね!?」
「偶然だな。ヌメルゴンも70だ。カクレオンは120で特防種族値はこっちのが低いけど——ってオイ、大丈夫か!?」
と、叫んだ途端に影が飛び出す。
どうやら何とか逃げ出せたらしい。
辛うじて彼は立っていた。
『ガメリオ残り:52/167』
「あ痛つつつつつ……まさかの物理型ヌメルゴンかよ……こりゃ受けるのは無理ですねい、旦那ァ」
「クソッ、物理型ヌメルゴンのことがすっかり抜け落ちてた……仕方ねえ、死に出しで俺が行く。出来るだけ削ってくれ」
「りょ、了解でさぁ……」
ぐったりとしていたガメリオだったが、何とか持ち直す。
再び暴れ出すヌメルゴン。しかし——
「先制技なら俺だって持ってるぜぃ!! 食らいなッ!!」
【ガメリオの不意打ち!】
【特性:変幻自在で悪タイプになった!】
——その俊敏な動きでヌメルゴンの視界から消えたガメリオは、そのまま爪による一撃を背後から食らわせる。
鈍重な体重の従うままに、地面へ倒れ込むヌメルゴン。
流石に一撃で倒す事は出来なかったが——
『ヌメルゴン残り体力20%』
「何だ? ヤケに柔らけえな」
「まあ、物理耐久は低いけど——」
【急所にあたった!!】
「お、おお……流石だぜガメリオ!!」
妙に高かったダメージは急所のおかげだったのだ。
何であれ、これでヌメルゴンの突破は容易になる。
「意地は貫いた。後は頼みましたぜぃ、旦那ッ!!」
「おうっ!!」
起き上がるヌメルゴン。
再び暴れ出し、ガメリオを殴り倒した。
そのまま吹っ飛ばされるガメリオ。流石に耐え切れない。
【ヌメルゴンの逆鱗!!】
【ガメリオは倒れた!!】
どさぁっ、と地面に突っ伏すガメリオ。
しかし。
これで突破口は開かれた。
【タクはボマーを繰り出した!!】
「そんじゃ俺様の出番だな」
前に進み出るのはボマーだった。
そのまま擬人化形態を解き——自らの真の姿を現す。
「相手はまだ逆鱗状態が解けてない——なら、いける!」
怒りに任せて狂い暴れる軟体龍を睨み、ボマーはその翼を広げた。
そして、大きく、咆哮する。
【ボマーの威嚇で、ヌメルゴンの攻撃力が下がった!】
これで攻撃力も削いだ。
「そんじゃ行くか——お待ちかねのメガシンカ!!」
咆哮するカロスの軟体龍。
相対するはホウエンの暴慢龍。
その脚に枷の如く嵌められたメガストーンが——共鳴を起こした。
進化の光がボマーの身体を包み込む——
【タクのメガバングルとボマーのメガストーンが反応した!】
真紅の翼を広げ、プロテクターを身に着け、咆哮したボマーは地面へ降り立った。
これこそが更なる高み、メガシンカ。
このボックス最大の切札となる存在であった。
【ボマーはメガボーマンダにメガシンカした!】
「ノガサン……ノガサンゾ……!!」
「へっ、誰も逃げやしねぇよ!! 教えてやる。この世界の常識——」
次の瞬間、ボマーの身体に赤い稲光が現れる。
そして、彼の戦意がどんどん高まっていく——
【ボマーの竜の舞! ボマーの攻撃と素早さが上がった!】
「——ボーマンダは初手竜舞ってことをな!!」
これにより、ボマーの攻撃と素早さは一段階ずつ上昇した。
しかし、このままではヌメルゴンの逆鱗をまともに食らってしまう。
幾らボーマンダでも一致弱点では耐えるのは難しい——ただし、メガボーマンダとなれば話は別だ。
【ヌメルゴンの逆鱗! 効果は抜群だ!】
暴れ狂うヌメルゴンの腕がボマーへ炸裂する——しかし。
「んだよ。その程度か?」
「ナ、バカナ……一致弱点ダゾ……!? ギイイッ!?」
【ヌメルゴンは反動で混乱した!】
「俺は威嚇さえ入ってりゃガブの逆鱗でも耐えられるんだ。舐めんな」
『ボマー残り体力:79/171』
確かに手痛い一撃ではあった。
だが、彼はまだ戦える。
メガボーマンダの物理耐久は威嚇と合わせることで、タガの外れたものとなりえる。
大抵の物理攻撃、場合によっては4倍弱点でも耐える事があるのだ。
故に——ボーマンダはガブリアス、ましてヌメルゴンの逆鱗を起点にすることなど容易い。メガシンカで強化されたのは火力だけではない。その脅威の物理耐久は無振りでも十分に発揮される。
全ての弾を防盾で弾き返す戦闘機のように攻撃を受け止め、そして全てを殲滅する爆撃機のように破壊を振り撒く。それがメガボーマンダの戦い方なのだ。故に、よりデリケートで慎重かつ大胆な動かし方が必要である。
「んじゃ、いい加減落ちて貰うぜ。捨て身タックルで今反動を食らうのはアレだから、空元気を代わりに食らって貰おうか——!!」
スカイスキンで底上げされた火力では、素の空元気すら強力な威力に成りえる。
竜の舞を積んだ後は、捨て身タックルと違い、反動を食らわない強力なダメージソースにもなるのだ。
物理耐久の低いヌメルゴンは、上空からのその攻撃を前にして落ちるしかない——ボマーが構え、翼を三日月の形へと変え、空へと飛び立ったその時であった。
【相手の影はヌメルゴンをひっこめた!】
「んあ? 交代? まあいい、大抵のヤツは負担を掛け——」
余裕そうな笑みを浮かべたボマーの表情は——次の瞬間、歪むことになる。
「キャハハハハハ、キャハハハハ……美味しそうねぇ……味見、味見させててよぉ……!!」
【相手の影は、クチートを繰り出した!】
- パート1:セントラル・フィールドへ ( No.151 )
- 日時: 2016/07/28 13:39
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
【クチートの威嚇で攻撃が下がった!】
キィッ、と放たれる殺意の視線。
これにより、上がった攻撃力が元に戻ってしまう。
現れたのは永遠の宿敵・クチート。
何度もじゃれつかれ、攻撃を理不尽に耐えられ、そして屠られてきた思い出が蘇ってくる。
化物染みた火力と物理耐久、そして先制技である不意打ちの所持。
これにより、圧倒的な制圧力を持つポケモンだ。
「ドラゴン……ドラゴンドラゴンドラゴンドラゴンンンンンンン!!」
狂ったように叫ぶクチート。
しかし。対するボマーは——
「テメェ、舐めてんのか」
唸るようにして言った。
その表情に、怯えは無かった。
【ボマーの空元気! 効果はいまひとつのようだ】
『クチート残り体力70%』
「ドラゴンがフェアリーに勝てる訳が無い、とは誰の言葉だったか——よーく言ったモンだ」
ギリッ、と牙を剥き出しにすると獲物を捉える。
その鋭い眼差しで。
「ボマー……」
「ちょっとお仕置きが必要のようだな。俺様を見くびってやがる」
「ゲキャキャキャキャキャァァァァーッ!! ドラゴンは大人しくフェアリーに喰われるしかないのよおぉぉぉ!!」
【黒い影の怨念が瘴気を生み出す——!!】
次の瞬間——クチートの身体が変化する。
禍々しい邪悪な瘴気に包まれながら、顎は2つに分かれ、脚は袴のようになる。
【クチートはメガクチートにメガシンカした!】
何度も何度も見せつけられたその姿。
それこそが——メガクチートであった。
「ギャキャキャキャキャキャァァァァーッ!! イタダキマァァァァァァァァァァス!!」
メガクチートの耐久力は化け物染みていると言っても過言ではない。
数値だけで見ればメガボーマンダ程ではないが、威嚇でそれを更に底上げしている上に鋼・フェアリーという優秀な組み合わせが弱点を少なくしている。
しかも、対面で殴り合った場合、ガブリアスの地震さえも耐えるというよくわからない防御力はさながら怪物か。まして、ボーマンダのサブウェポンでは正面から倒すことは出来ないだろう。
さらに、不意打ちや剣の舞といった多彩な攻め技も有しており、これによって今までボマーは落とされてきた。
何度も。何度もだ。
そして今度も、ボマーの首を捻じ切ろうと、鋼の顎で彼に襲い掛かる——地震を耐えて、そのまま反撃のじゃれつくで倒すつもりなのだ。幾らメガボーマンダでも、特性:力持ちで強化された一致抜群のじゃれつくを耐えることは出来ない——
「舐めんじゃねえよ」
【ボマーの地震!】
——はずだった。
刹那。
ボマーが地面へ降り立つ。そして、大きく大地が揺れ——メガクチートの分厚い装甲を衝撃波で貫通し——そのまま粉砕する。
『クチート残り体力——0%』
「ア、ギ……何デダ——」
【クチートは倒れた!】
心底不愉快そうな顔でボマーは吐き捨てる。
「舐め腐るのも大概にしろよ。例え、竜舞が無くともメガ前のクチートへの威嚇入りの捨て身タックルダメージとメガ後への威嚇入り地震のダメージでH振りメガクチートは粉砕出来るんだよ。元々の攻撃力の空元気と地震がテメェに耐えきれるわけが無かったんだ」
そう。
メガクチートは確かに硬い。ガブリアスの地震、ましてサブウェポンの地震でも倒す事は難しい。しかし、それはあくまでもメガシンカ後の話だ。
メガ前に下手に受け出しをすると、物理型メガボーマンダの場合——次の地震が受けきれなくなるのだ。
しかも、メガボーマンダ自体がかなりの物理耐久を有しているので、不意打ちで落とすことは出来ない。
よって——今のクチートへの交換は悪手、完全にボマーをドラゴンだと見くびっていた結果だと言えたのだった。
「確かにクチートはあたしが居れば処理できる。だけど、ボマーもただ怖がってただけじゃない——天敵への与ダメをちゃんと知っていたのね。だから立ち向かうことが出来た」
「まあ、旦那で倒せることに越した事は無いですからねい。そして素早さが上がった今——旦那は完全に無双モードだ」
「このまま3タテコース、行くぜッ!!」
【相手の影はヌメルゴンを繰り出した——】
「遅いッ!!」
【ボマーの空元気! ヌメルゴンは倒れた!】
再び姿を現したヌメルゴン。
しかし、既に暴走戦闘機状態のボマーの前では倒れるしかないのだ。
そのまま空元気で倒されてしまった。
竜の舞で素早さが上昇したボマーに、もう敵は無い。
【相手の影はシャンデラを繰り出した!】
「何だァ? こっちの仲間と同じポケモンを出してどういうつもりだコラ」
最後に現れたのはシャンデラであった。
しかし。一番強いメガクチートも、シャンデラも、ボマーは既に知っている。
この程度——最早敵ではない。
「これでシメェだ!!」
【ボマーの捨て身タックル!】
三日月状に広がった刃の羽。
それで、思いっきり勢いを付けてボマーは飛んだ。
そして——影を、切り裂いた。
「俺様を、ボーマンダを、600族を舐めるんじゃねぇぇぇぇーっ!!」
『シャンデラ残り体力0%』
【シャンデラは倒れた!】
【影の携帯獣との勝負に勝った!】
***
「ギ、バカナ——」
クチートは他の影諸共消滅した。
その姿を見届け、ボマーは呟く。
「——俺の知ってるメガクチートは、もっとつえーぞ。テメェみてーな紛いモンなんざより、よっぽど慈悲深く、そして無慈悲なまでに、強い」
「ともあれ、一件落着ね。最後にまたあたしに似たのも出てきたけど、最近影の携帯獣ではシャンデラが流行ってるのかしら」
「敵で出てくる分はそこまで強くないんですがねぇ、旦那、お嬢」
「何それ、シャンデラを馬鹿にしてんの」
「敵で出てくる分って言ったろうが」
レートやフリーで出てくるシャンデラは基本、スカーフ、眼鏡、風船。ある程度高い火力で押し切ることも出来るので、そこまで怖くは無い。
最も、害悪・受けの駆逐を役割に置いているこちらのシャンデラは、モノクロ氏曰く、どうやら対面すると相当警戒するらしい。
「さて、行くぞ闘技場に」
「そうね」
「ですねぃ」
がちゃり、と重い扉をこじ開ける。
そこには——
「オイオイ、マジかよ——」
既に、何度か見たもの。遠巻きからではあるが、確かに見えた。
それは制御コンピューターだった。触手のようなものが闘技場のど真ん中に貼りついている。
そして——観客席であるこちらからだと遠いが、それを守っているのは影の携帯獣。
どうやらここを制圧するつもりらしい。
だが、それに立ち向かうのは——ルカ、ムゥ、モーターの3人。
「……何故、コンピューターが……!」
「後はムゥちゃん達に任せるしかないわね」
「お手並み拝見といこうかねぃ」
既に始まろうとしている対戦。
3人は、固唾をのんでそれを見守る——
***
「やっとたどり着いたのは良いが——成程、さっきの奴らか。俺の波動弾食らって倒れてねぇとは」
あっけらかんとした表情でルカは言った。
むしろ、倒れてくれていなくて良かった、と付け加える辺りバトルマニアっぷりが伺える。
そしてそれは真の姿を現す。
現れたのはガルーラ、現環境トップメタの親子ポケモンであった。そして、眷属で2つの影も現れる。
「私はこのコンピューターの守護級(ガーディアン)……近づくものは全て排除するよ……覚悟しな!」
咆哮を上げるガルーラ。
メガシンカで脅威の火力と耐久を得たこちらは、まさに大きな威圧感を与える。
「こっちは3匹——相手も3匹のようデスね……しかもボスはガルーラデスか」
「ど、どうしますか、順番は」
「なーに任せろ。先発は俺が出る」
ずいっ、と進み出るルカ。
どうやら先発メガガルーラを予想してのことらしい。確かにここ最近、先発ガルーラ繰り出しが多い気がする。
「まあ、理には適ってるネ」
「こっちにはそれ以上選択の余地がないんですけどね……」
「ンじゃあ行くか、オメーら。シンオウ組の実力見せてやろうや——」
「そういやこの3人、シンオウ出身ポケモンだったネ……」
「頼むから同郷ならセクハラは勘弁してほしいのです……」
こうして。
闘技場の決闘が始まったのであった——
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