二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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ポケモンバトルM・EVO【サン・ムーン編突入!】
日時: 2016/12/23 03:17
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

『読者の皆様へ』

どうも、初めましての方は初めまして、タクです。今回のこの小説は、所謂対戦実況小説といったところでしょうか。
現在、他の小説の進みがなかなか良い感じになっているため、この小説の連載を決意しました。
タイトルはM(メガ)・EVO(エヴォ)、その名の通りメガシンカをテーマにした作品になると思います。また、第六世代で追加要素のあったポケモンに視点を当てていきたい所です。
また、今回のサン・ムーン発売に合わせて、第七世代を舞台にした対戦も描いていく予定です。

そして、この小説は種族値、努力値、個体値とった3値やHABCDSVなどの記号や、略称なんかが出てくる、所謂「廃人仕様」となっております。
一応、初心者の方にも配慮したような表現を極力心がけたいですが、あらかじめこういったことを知っている前提で読んでほしいと思います。

また、この作品と舞台は違いますが世界観を共有している、モノクロさん著『BOHパ対戦記録譚』があります。そちらの方も、よろしければご覧下さい。


ちなみに、作者のフレンドコードも載せておきます。XYにおけるフレンドサファリのタイプはノーマルで、ヒメグマ、ドゴーム、ラッキーが出ます。

フレコ:2809−9638−8089


※注意※
・本作品はバトルビデオを元にして作られたノンフィクションと一部フィクションです。
・そして、ストーリー中心です。小説という以上、当然ではありますが。
・ポケモンの擬人化あります。つーか、それらのポケモン中心です。
・分かりづらいかもしれない設定多々。
・選出画面があったり無かったり。
・イラストは後々用意するかもしれませんが、クオリティは期待しない方が良いです。
・メタ発言? んなもん日常茶飯事。
・にわか発言&下手糞プレイ? んなもん日常茶飯事。
・対戦相手の名前は改変して使用します。
・対戦相手への誹謗中傷はおやめください、メガボーマンダのスカイスキン捨て身タックルとシャンデラの眼鏡大文字が襲い掛かります。
・BGM置いてるけど、ポケモンじゃないかもしれない。



 また、作者は対戦・交換などは大歓迎です。フレコは自分の雑談スレ『タクのノベルス・ポケモン図書館』に置いています。バトルビデオをこの小説に使わせていただくかもしれません。

以上のことを守ってうちのポケモン達の活躍を生暖かい目で見守ってやってください。


目次

第一部:エリア開放編


プロローグ
>>01

パート1:謎の敵・静炎邸
>>02 >>03 >>04 >>05 >>06 >>07 >>10 >>11

パート2:遮断された箱庭・氷海水域
>>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>19 >>20

パート3:湖の決闘・中部緑域
>>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>32

パート4:忍の街・群雲街域
>>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38 >>39 >>40 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47

パート5:この風が泣いている・天獄峡域
>>48 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63

パート6:雷電霹靂・雷電械域
>>75 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>92

パート7:暴龍警報・頂龍山域

#1:絶望の淵へ
>>103 >>104 >>105 >>106
#2:反撃の狼煙
>>107 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>115
#3:龍の守護者
>>116 >>117 >>118 >>119 >>120
#4:最後の守護級
>>121 >>126 >>127 >>129 >>131 >>134 >>135 >>136


パート8:仲間達が待つ場所へ
>>137


第二部:新世代編

パート1:セントラル・フィールドへ
>>138 >>139 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>150 >>151 >>152 >>153 >>154

パート2:留学生は突然に……


登場携帯獣紹介
>>70

用語解説
>>71


番外編:始末屋の日常と非日常

パート1:前々前作でラスボス役やっててもキツい奴はキツいので以下略
>>95 >>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32



パート7:暴龍警報(8) ( No.112 )
日時: 2015/04/16 23:43
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「で、どういうことですか」

 流石のムゥも、苛立ちが隠せなかった。自分達を呼び出し、病院を抜け出して図書館に行くというのだから、当然と言えば当然であるのだが。
 一方の、ガメリオは、若干面白そうな笑みを浮かべていたのだった。
 
「ガブリ姉が言うには、だ。セブンスドラゴンを倒す方法は、どうやら電脳図書館の蔵書に記録されている」
「それだけじゃないわ。電脳図書館は、このボックスサーバーのあらゆるバックヤードスペースに繋がっているの」
「なーるほど、それが目当てって訳ですかィ」

 ケケッ、とガメリオが笑った。

「前から電脳図書館とやらに興味があったんでさァ。それに、バックヤードベースとやらも気になるますゼィ」

 バックヤードスペース。それは、ボックスの世界を構築するための、裏舞台のようなものである。
 電脳図書館が作られた理由は、それらのスペースから常に情報を採取し、”蔵書”として管理するために他ならない。
 それだけではなく、インターネットのデータから取り寄せた電子図書もばっちり保管済みだ。
 つまり、この電脳世界のありとあらゆる情報が集まっている場所、それが電脳図書館なのだ。
 さて、いつものボマーならば此処でボケることだっただろう。しかし、妙に真剣な面付きで、3人を前にし、言った。
 
「チャモの記憶を頭ごと持っていきやがった、あのオノノクスだけじゃねえ、セブンスドラゴン全員を倒すため、俺は行くぜ。そこでお前らに頼みがある」

 
 確かめるように、彼は続けた。



「---------残ったお前らで、俺に協力してくれねえか」


 それは、仲間への一種の警告でもあった。
 彼が何をしようとしているのか。
 
「着いてこなくても俺は構わん。むしろ、此処で首を横に振ってくれることを、俺は望んでいる」

 もう、全員が分かっていた。
 セブンスドラゴンの倒し方を調べるだけで、この男が終わらせるわけがない、と。
 殴りこみに行くのだ。手負いの体で、頂龍山域へ。
 こんな馬鹿に協力する馬鹿がどこにいるだろうか。ボマーは、無理を承知で言っていた。

「---------今更何言ってんの。あんた1人じゃ、犬死するだけでしょ」

 しかし、それは違っていた。

「ボマーさん、私達だって悔しくないわけじゃないんですよ」
「旦那。あんたが死地に行くってんなら、俺も行く。それが筋を通すって奴ですぜィ」

 残った2人も、ボマーに着いていく覚悟を見せていた。
 はっ、と鼻で笑い、ボマーは背中を向けて先に下の階へ降りるエスカレーターへ向かっていく。


「お前ら……本当、馬鹿だよ。俺に負けず劣らずの……」


 目に溜まった雫を見せないように。


 ***


 中央区域、電脳図書館。
 いつもの服を着ていたら、ほぼ誰にもバレなかった。後で騒ぎにはなるではあろうが。
 しかし、やたらでかく、古代の建物(パルテノン神殿ぽい何か)だとかそういうのを模した外見のこの図書館の前で、感嘆の声をボマーは漏らしていた。

「すっげーな。こんなん誰が作ったんだ」
「オーダーはうちのマスターらしいわ。美術系(自称)の」

 内装は、それこそ普通の図書館のそれであった。
 ただし、しばらく誰も足を踏み入れていないらしい。これだけ大きな図書館でありながら。
 その理由は、大体察せた。
 この電脳社会でわざわざ図書館なんぞに足を運ぶ奴など、いないからである。

「おっ、忍者関連のコーナーもありましたゼィ」

 ホログラムパネルが出現し、蔵書のエリアへ案内してくれる仕組みらしい。
 そして、忍者関連の本を手に取ったガメリオは、うれしそうな顔でそれをすぐに読みふけり始めたのだった。

「というか、難しい本ばっかりね。人が寄り付かないのも分かるわ」
「一般的な書物も結構置いてあるんだがな。なにぶん数が多い上に専門的な書物にばっかり目が行って、一般の客には敷居が高すぎる」

 何故、この図書館に人が来ないのか、大体分かった。
 置いてある本が多すぎること。そして、難しい本が多いこと。
 案内パネルが搭載されていても、本の在り処まで行くのに骨が折れる。
 というか、受付だとか従業員は誰も居ないのだろうか。
 さっきから、きょろきょろと辺りを見回してはみるが、不自然なくらい静かだし、誰も居ないのである。
 と思った矢先だった。


「-----------珍しい。こんなところに人が来るとは」


 男の声だった。
 にこにこ、としており第一印象は笑顔の似合う好青年、だった。綿毛のマフラー、青髪、手に抱えた本。
 優男という言葉が似合い、糸目が、余計にそれを引き立てる。
 だが、何かを感じたのか、ボマーは他の3人が気づかなかったことを口に出した。

「……あんた、ドラゴンだな。俺と同じ力を感じる。だが、同時に--------不快にさせて悪いとは思うが、俺らが最も嫌う力も感じるぞ。何モンだ?」
「おやおや。鋭い」

 男は笑顔を崩さずに返す。

「ちょっとボマー、何言って---------ああ、すいません! この馬鹿が失言を……貴方がこの図書館の従業員だったりします?」

 フレイがボマーと男の間に割って入り、男に謝った。
 だが、彼はあくまでも朗らかさを崩さない。

「いや、良いんだよ。むしろ、久々の来客に喜んでいるくらいだ」
「まあ、何であれ、だ。セブンスドラゴンについての蔵書が無いか、教えてくれないか」
 
 図々しさを崩さず、ボマーは続けた。
 が、しかし。男の様子に変化が現れたのは、見えた。

「……セブンスドラゴン?」

 男の表情が曇った。

「どうして、それについて?」
「復活したってのが正解か」
「……私が此処に引きこもっている間に、一体何が……」
「おいコラ、今何て」

 ああ、失礼申し遅れた、と男は謝罪の言葉を述べた。
 そして---------


「私の名前は、トト。この図書館の主にして、マスターの最初のドラゴンなんだ」


 決して彼らには無視できない身の上も述べたのだった。

パート7:暴龍警報(9) ( No.113 )
日時: 2015/04/20 23:35
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「……マスターの最初のドラゴン?」

 言うまでもがな。マスターが最初に育てた対戦用ドラゴンは、ガブリアスであるガブリだったはずだ。
 にも関わらず、目の前の男は自分が最初のドラゴンだという。
 その表情に嘘が含まれているとは思えないが、確かな信憑性も得られないのだった。
 表情筋は先ほどから、緩む気配が見当たらない。
 不気味さ、と同時に目の前の男から放たれるオーラが相当なものだと、感じた。
 ボマーは唇が乾いたものの、舌でそれを舐めることすら忘れていた。肌が泡立つ。本能が、目の前の男を天敵と認識しているようだ。
 フレイは男の覇気を感じ取った。今まで、表面化していなかったものがいきなりあふれて来たからか、脚が震えて来る。
 ガメリオでさえ、目の前の男に気圧されていた。
 ムゥに至っては涙で眼が潤んでいたほどである。

「……成る程、妖精の魂か」

 ようやく、ボマーは言葉を紡げた。
 天敵、でようやくピンと来たのだ。

「妖精の魂……ですか?」
「成る程ね。目の前のこの人が、まさしくそれだと」
「道理でヤバそうな訳だぜィ」
「ご名答」

 メガシンカポケモンが、新たにタイプを得るとき、特にドラゴンが追加されるポケモンと、フェアリーが追加されるポケモンには、”魂”が必要である。
 ただし、それには、多くの修羅場を乗り越えてきたポケモンであることが条件なのだ。
 プレイヤーの見えない場所、つまりサイバー空間内から、対戦まで。
 それらの試練を潜り抜けたもののみ、”魂”は与えられる。
 龍と成るものには、”龍の魂(ドラゴンソウル)”。主にリザードンなどがそれだ。
 妖精と成るものには、”妖精の魂(フェアリーソウル)”。主にタブンネなどが例として挙げられる。
 その種類のポケモンに限り、上に挙げた魂が宿っていなければ、メガシンカは出来ない。故に、この種類のポケモンは相当な訓練を積むのだ。その代わり、とてつもない力を手にすることができるのであるが。
 目の前の男からは、少なくと別格の強さを感じられた。同時に、妖精の力も感じた。
 ドラゴンにも関わらず、妖精の力を感じるのはこのためだろう。
 さらに。

「それだけじゃねえ。あんた、相当のベテランだろ」

 歴戦の力。
 それが彼の体からひしひしと伝わってくるのだ。

「しばらく対戦は引退していたんだけどね」
「どーりで、俺らが気圧されてるわけだ」
「それもそのはず。私がマスターの元に最初に来たのは、第五世代なのだから」

 第五世代。それもBW2の頃だ、と彼は付け加えた。

「旅パの頃からの付き合いなのさ。第五世代が終わってから、しばらくは、この図書館の中に居たんだけど」
「成る程、納得だ。それならば、妖精の魂を持っていてもおかしくはねえ」
「マスターからメガストーンを渡されたときは、正直困惑したよ。対戦の誘いも断った。だが------------」

 彼の顔が、初めて変わった。硬く、決意に満ちたような表情だった。


「----------相手がセブンスドラゴンというのならば、致し方ない」


 止むを得ない、といったところか。
 最近まで彼はこの図書館に引きこもっていたらしい。影の携帯獣のことも知らないようだった。
 しかし。セブンスドラゴンの事件は知っているようである。

「奴らについて教えよう。私の書斎に着いて来てくれないか」
「あ、ああ……」
 
 崩した表情を再び笑顔に戻し、彼は言ったものの、ボマー達の心境は未だに冷や汗ものである。
 その静かな迫力に押され、4人はトトの書斎に行くことになったのだった。
 

 ***


「緊急事態発生、緊急事態発生!」

 中央区域、中央管制局。此処には、ポケモンではないデータ生命体・セキュリティが住んでいる、ボックス内の全エリアの管理を行う場所である。雷電械域から提供された技術により、不審なプログラム、データなどが入ってきていないか、住民の数は正常か、などである。ただし、此処最近影の携帯獣によって、通信がジャックされてそれが行えない状況にあった。
 だが、守護級が討伐されたエリアは、再び管理ができるようになったのである。
 そして。
 今回感知された異常は余りにも大きいものだった。

「6つの方向より、影の携帯獣と思われるポケモンが接近しています!」
「データの容量が恐ろしいほど大きいな……モニターに映せ!」
「はいっ!」

 モニターには、中央区域から見て6つの方向より、それぞれ50kmほど離れた場所から、それぞれ1匹ずつのドラゴンがこの中央区域めがけて飛んでくる様が映し出されていた。
 だが、ドラゴンの力は明らかに通常のものとは規格が違う。影の携帯獣である以上に、とても大きな存在なのであろう。

「奴らが接近している途中に、氷海水域、中部緑域、雷電械域、群雲街域、天獄峡域があります!」

 ちなみに、いずれのエリアの中で最も遠いとされるのが、頂龍山域である。
 そして、妖精部隊が全滅したと知るや、山域のワープ装置は既に閉ざされていた。さらに今回の敵の発生源もこのエリアだと分かったのだ。
 しかし、他のエリアは頂龍山域に比べると、遠い場所にあるわけではないのである。

「住人を避難させて、ワープ装置を切るんだ!」
「了解!」

 それぞれのエリアと中央区域を繋ぐワープ装置から住民を避難させてから、それらの繋がりを絶つことで時間を稼ぐ、それが彼らの考えであった。幸い、それぞれのエリアと中央区域の間はワープなしだと30kmほど離れているのである。
 そして、その考えはすぐさま、エリアの住民に伝えられることになった。


 ***


「……これは、ジッとしている暇は無いな」

 少年・旋は既に強大な龍の気配を感じ取っていた。

「……立ち向かうつもりですか。旋君」
「……無謀」

 避難警報を伝えられた天獄峡域。
 逃げ出すもの、まだ脅威を実感できないもの。
 そして---------実感した上で逃げない者。
 シェムハザと雲切は、そんな旋のことを心配していた。

「俺は結局、前を踏み出せなかった。せめて、俺は迫ってくる敵とやらを倒す義務があるのではないか」
「君は自分をいじめたがる悪癖があります。より、危険な方へ、危険な方へ、と突っ張ってしまう」
「……シェムハザさん、雲切さん、頼む。あんたらは中央区域に--------」

 
 チャキン


 金属音と共に、旋の喉へ冷たい何かが宛がわれた。

「……馬鹿……死にたいのか」

 雲切が、いきり立った表情で問い詰めた。冷たい何か、とは彼女の刀なのだ。
 彼の肌が泡立ち、抵抗する意識を失わせる。

「まあ、そういうことです。我々だって同じ考えなのですから。君が1人で行くというのには確かに反対だ」
「……え?」
「……連れて行け、私達も」

 意外だった。
 シェムハザも、雲切も、最初からやる気だったらしい。

「……すまない」

 そう答え、彼は一歩、踏み出したのだった。

パート7:暴龍警報(10) ( No.114 )
日時: 2015/04/21 22:50
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

「セブンスドラゴンは、悪性データ生命体と呼ばれる中でも、特にタチの悪い部類に入るんだ」

 書物を取り出しながら、トトは言った。
 彼の見せたページには、データ生命体についての記述が記されていた。
 そして、セブンスドラゴンについても。

「広義の名称としては、循環種と呼ばれるものだよ」

 ボマー達は、その意味が何となく分かった。
 あの、無限に再生する能力のことだ。
 アクアは、ボックスのどこかにバックアップを大量に保存してあると言っていた。
 トトは、そんなことお構いなしに続ける。

「そして、奴らの性質として、まず小さなウイルスプログラムである”母体”がボックスのような大きなデータベースに寄生する」

 まるで寄生虫のようだ、とボマーは思った。
 しかも、こんなものが自然発生する世の中だ。悪質なデータの残骸の集合体らしいのだから、余計にタチが悪い。

「そして、その中にあるデータの隙間を見つけて、大量のバックアップを増やしていくんだ。誰にも気付かれずに」

 ぞっ、とボマー達の背にフシデが走っていった。
 ただし、これには制約があると彼は語る。
 まず、寄生している場所が元々そこまで広いとはいえないため、バックアップデータがその空間で実体化し、戦うことができないのである。バックアップデータは圧縮されており、必要に応じて転送されるというのである。
 そのため、別のプログラムに母体を守らせている、と彼は言った。
 余りにも詳しい情報。まるで、過去にも同じことがあったようだ。

「過去にも例があったのか? セブンスドラゴン以外に」
「ああ。別のボックスでね。そのときは、エスパーポケモンだったらしい。ただ、寄生していたエリアが早く特定でき、中を守っていたプログラムは大したことはなく、母体を倒すことでバックアップも消滅した、と記録が残っている。実体化していた敵は、もう二度と再生しなかったそうだ」

 しかし、セブンスドラゴンは倒されなかった。
 対処法が同じだと分かっているのならば、それを実行すればよかっただけにも関わらず。
 
「以前のセブンスドラゴン襲撃の時は駄目だったのか?」
「……掃討班は二度と帰ってこられなかったと聞いた」
「中を守っていた、敵のプログラムが強かった、ってことですかィ」

 そして。今はセントラル・フィールドの調査班の力も借りれない。
 どこに敵が寄生しているのか、全く分からないのである。
 
「だが、あんたなら分かるはずだ、トト。この図書館には、多くのバックヤードエリアに繋がるワープ装置が地下にある。ここの検索エンジンをフル稼働させれば、不可能じゃない」

 唯一つの希望を除いて。
 目の前のトトは、思った以上に早く首を縦に振った。


「……外がそんなことになっていたとは、知らなかった。情けない。私で良ければ、幾らでも力になろう」

 
 だが、彼ほどの男が、何故図書館に引き篭もっていたのか。謎である。
 笑顔の裏には、暗い影が落とされていた。


 ***


「……このままで良いのか」

 ユキキングは、警報令を聞き、居ても立っても居られなくなった。
 このまま、自分達は病院のベッドでのうのうと寝ているだけで良いのか。
 立てる。
 体はもう、動かせる。
 まだ、完全に再生が終わっていないだけだ。
 そのときだった。端末の着信が鳴った。

「……ワシだ」
『ユキキングさん、久々ですね』

 聞き覚えのある声だった。
 風のような少年の姿が脳裏に浮かぶ。

『俺達は、ボマー師匠達に……任せっきりで良いのでしょうか』
「……」
『お願いです。無理は禁物だが、今は時間が惜しい! 敵は全方位から中央区域を囲んでいる。逃げ場を無くすつもりなんです!』
「……馬鹿モン。誰が頼むか」

 ぶっきらぼうに、彼は言った。
 しかし。



「人に頼む前に、ワシが行くわい」



 豪快な笑みも、同時に浮かべていたのだった。

『ユキキングさん……』
「おい、若造。心配せんでも良い。このボックスには、あの馬鹿マスターと馬鹿に影響された馬鹿ばっかりだからな。わざわざ呼びかける必要は無いだろう」
『……はい!』


 ***


『アクア、おいらは行くぞ』

 端末から聞こえてきたのは、唐突な宣言だった。
 傷心状態だった彼は、入院していたはずの、あの少年が今何処にいるのか問い詰めたくなった。
 しかし。
 もう、そんな気力は無かった。

「勝手に……してください」
『お前の仇はおいらの仇だ。絶対討つ』

 ふざけるな。


「ふざけるなッ!!」


 何でこうも死にたがるんだ。
 そんな憤りが彼の中にはあった。
 しかし。

『それは、こっちの台詞だッ!!』

 そんな思いは断ち切られた。


『お前達が助けてくれた分だけ、今度はおいら達が助ける番だ! 警報なんざ、糞食らえだ!! 中部緑域に行くぞ、おいらは!!』


 そこで、通話は途切れた。
 
「……僕達は、何をやってるんだ……! 肝心なときに、あの人たちは何やってるんだ……!」


 ***


「コイル軍団に告ぐ! 我々は迫り来る夷敵にいつまでも屈していて良いのか! 警報に従い、このまま逃げて良いのだろうか!」

 雷電械域、工場。
 女、ボルルは目の前の単眼磁石ポケモン・コイル、レアコイル、そしてジバコイル達に呼びかける。
 

「敢えて言おう、クズであると!! 電気タイプに生まれた以上、電気の如く奴等を始末するのが、我等の誇りではないのか!!」


『イエス、マム!!』


 が、慌てて誰かがボルルに駆け寄ってきた。
 弟のデインだ。

「ちょっと姉さん、何やってるんだ!」
「まだ分からんか。コイル軍団の結成だ」
「何で軍人調!? 何この幾何学隊列!?」
「ふん、この中にいるレアコイルとジバコイルが、あの馬鹿に借りがあるんだとな。結局、この間も助けられてしまった。お前はモーターの強化改修を急げ!」
「イ、イエス、マム!!」

 
 ***


 遅れて、フレイの持っていた端末にも、例の警報が発信されてきた。
 書斎の検索エンジンが唸りを上げている間に、書物を調べていた一行は、それから目を離す。
 
「……強大な力を持った6体のドラゴンが中央区域に向かっているらしいわ」
「何だと!? こんなことやってる暇は---------」
「駄目だ、旦那。あっしらには、バックアップの居場所を探して潰す、という仕事がある」
「だ、だけどよぉ!?」
「それと、よ」

 フレイは、敵が通過する場所には、いずれも別のエリアがある、ということだった。
 それにより、住民が避難をしていること。
 そして----------

「中央区域や、そのエリアから合計何体かのポケモンが、奴等を止めようとしている」

 危険だ、とボマーは感じた。このままでは、無駄死にするポケモンが、また出てくるであろう。

「止めないと-----------」
「ボマーさん!!」

 ムゥが、彼の袖を引っ張った。

「それじゃ、今私達が此処にいる意味が無くなっちゃいます!! そのためにも、早くバックアップを叩かないと!!」
「だ、だけどなァ!?」

 そのときだった。
 今度は、ガメリオの通信端末に連絡が入った。どうやら、メールのようだった。
 それを早業で読み終えた彼は、くっ、と息を漏らす。

「……クナイさんまで……何やってんだィ、あの人ァ!!」

 クナイまでもが、セブンスドラゴンを止めに行ったのだった。
 
「おい、トトの旦那!! 割り出しは終わらないのかィ!?」
「もう少し時間がかかる! 待ってくれ!!」

 タイムリミットは、刻々と近づいていた。
 破滅への、タイムリミットが。

パート7:暴龍警報(11) ( No.115 )
日時: 2015/04/22 00:37
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「続報です!! 中央区域に向かって進軍しているドラゴンが、遂にそれぞれのエリアへ辿り着きました!!」

 セキュリティプログラムの1体が、叫ぶ。
 そして、モニターには6体の映像が映し出されていた。
 この映像は、中央区域にも流されている。
 街のポケモン達は不安そうな顔で、その光景を見ていた。

「北より、キングドラ接近中!! 氷海水域の流氷を砕き、海を裂いて進んでいます!!」
「東より、オノノクスが中部緑域に辿り着きました!! 森の木を破壊しています!!」
「西より、群雲街域にヌメルゴンが侵入!! 粘液に触れた場所が、次々に溶解していきます!!」
「西南より、雷電械域にガブリアスが出現!! 電気を絶ち、発電所を破壊していきます!!」
「南から、天獄峡域にサザンドラとカイリューが現れました!! 熱線であらゆるものを破壊していきます!!」

 あらゆるウイルスプログラムを試したが、破壊される気配はない。
 打つ手なし、と全員が諦めムードに包まれた時だった。

「あ、あれ、これは-----------!?」

 
 ***


 軟体龍・ヌメルゴンは、そこで進むのをやめた。身体はどす黒いオーラに包まれており、ファンシーな目は空ろだった。
 その目をきょろきょろ、とあちこちに向ける。
 殺気をふと感じたからだ。
 次の瞬間-----------ゴミ箱が四方八方から”出現”した。
 
「-----------ダストシュート!!」

 そして、それがヌメルゴンへ向かっていき-----------爆発する。
 
「-----------忍法、不法投棄(ダストシュート)。良い子の皆は真似しないように」

 汚いな、流石忍者きたない。
 ゲッコウガの姿となったクナイは、既に罠を仕掛けていた。
 誰もいない、無人の街に。
 大量のゴミ箱は、いずれも光学迷彩で加工されており、ヌメルゴンが近づいた瞬間に現れ、飛び出すようにされていた。
 ヌメルゴンの物理耐久は高くは無い。
 塩を掛けられたナメクジの如く、どろどろ、と溶けていく。

「……む?」

 視界が薄暗くなった。
 

『データ再構築。肉体を転送します』


 次の瞬間、ヌメルゴンの龍の波動が至近距離でクナイの体を焼き尽くした------------ように見えた。

「成る程。再生能力に加えて、その際に近距離ならばワープできるのか」

 ヌメルゴンは、倒したはずの敵の声を聞き、その方向へ向き直った。
 建物の屋根の上に、クナイの姿が。

「残念だが、それは身代わりだ。拙者の速さを舐めるな」

 傷を負っていたとは思えない程の早業で、彼は答えた。
 ----------ガメリオ達が何をしているかは知らん。だが、この街を救ってくれたあいつらに、せめてもの恩返しをしたい!!


 ***


「ギッシャアアアアアアアアアアアアアア!!」

 ハサミギロチンにより、森の木が次々に倒されていく。
 牙王龍・オノノクスだ。
 チャモの首を跳ね飛ばした、その斧のような牙で、何も考えずに直進していく-------------が、そこで進むのをやめた。
 いや、それ以上進めなかった。
 頭が吹っ飛んでしまったからだ。

「チャモって奴にも同じことやったんだろ? お相子だ」

 そこには、メガジュカインとなったラプターの姿があった。
 しかし、これで終わるとは思っては居ない。
 すぐさま、肉体を完全に再生させてしまう。

「ギッシャアアアアアアアアアアアアアア!!」

 興味をこちらに向けたようだ。
 オノノクスにとって、ラプターはすぐに壊れるおもちゃ、という認識でしかないからだ。
 だが、その認識は間違っている。
 速い。
 あまりにも速過ぎて、オノノクスには着いて来られないのである。

「密林の覇者の異名は、伊達じゃねえ!!」

 二撃目の龍の波動が、オノノクスの胴体を貫いた--------------



 ***


 海底龍・キングドラは、見境なく氷海水域の氷を叩き割った。
 そして、渦を巻き起こし、ただただ暴れ狂う。
 氷海水域の寒冷気候など、水タイプを持つこの龍には関係のないことだった。
 しかし。
 

「ふんぬっ!!」


 海底龍は、周囲の海水諸共一瞬で、凍り付いた。
 メガユキノオーと成ったユキキングが、そこに佇んでいた。
 
「王を名乗る資格は、貴様には無い」
「グギュルギュルギュルルリリリリリリ……!!」

 呻き声を喉で上げるキングドラは、氷を叩き割り、再び現れる。そこに開いた穴から海へ潜った。
 逃げたのではないことは、当然ユキキングも理解している。
 そして、再び不意をうって攻撃するつもりなのだ。
 氷を破り、敵の背後を取ろうと氷の海面へ思いっきり浮上するキングドラだったが----------


 ゴツン!!


 氷は砕けない。
 見れば、何か細いものが氷のフィールドに食い込んでいる。

「すまんのう。根を張る、で此処ら一帯はもう補強した。海底から氷を砕く不意打ちは通用せんぞ。しかも、根は氷の小さなヒビから奥まで通している。無論、海水までな-----------」

 次の瞬間、巨大な根がキングドラを捕らえた--------------


 ***


 海王龍・カイリューと、凶暴龍・サザンドラは、天獄峡域を破壊しながら進んでいた。
 しかし、ふと動きを止める。
 メガピジョット、トゲキッス、エアームド。

「……此処は通さん。下郎が」
「神に誓い、貴方達を滅しましょう」
「……処刑……」

 彼らからすれば、唯の雑魚にしか、最初は見えなかった。
 カイリューは自らの必殺技である神速で追い抜こうとする。しかし。
 暴風が襲い掛かった。
 羽根が圧し折れて、動きが止まる。
 一方のサザンドラは、龍の波動で暴風を巻き起こすメガピジョットをめがけて放つ。しかし。

「龍の攻撃は、私には通用しませんよ」

 シャムハザがそれを受け止め、微粒子として流した。
 思わず怯むサザンドラ。
 だが、それだけでは終わらなかった。
 直後、カイリューも体勢を立て直そうとするが、ビリッ、と何かが破れるような感覚を覚えた。
 サザンドラの首筋からも同じ音が聞こえる。


「……もう、斬った」


 鋼の刃により、2体の龍の身体は真っ二つに裂けたのだった。
 しかし。無限循環種である彼らがこの程度でくたばるわけはない。
 再びバックアップデータをどこからか読み込んで、この世に復活する。

「まだ、動けたのか」
「これは厳しいですね」
「……嘘が下手……2人とも」

 まだまだやる気の猛禽3匹。
 シェムハザ、雲斬、そして旋。
 彼らは今にも、目の前の敵に襲い掛からんとしていた-----------。


 ***


「くっ、駄目だ!! まさかガブリアスが来るなんて!!」

 工場内に入り込んだ、砂迅龍・ガブリアスは、まず手当たり次第に機械やコイル達を殲滅しだした。
 呻き声を上げるボルル。電気タイプと地面タイプでは、絶望的に相性が不利なのだ。
 自らもメガシンカして、目覚めるパワーをブチ当てていくが、全く歯が立たない------------


 ざくり


 直後。ガブリアスの身体が縦に真っ二つになった。


「すまんな。遅れてしまった」


 笑みを少し零し、そこにまっすぐ立っていたのは------------真のガブリアスである女・ガブリだった。

「休んでいるつもりだったが、やめた。このエリアは私が来たからには、もう大丈夫だ」

 一方、敵のガブリアスはすぐさま再生を開始する。

「ほう。まだやるのか龍の面汚しめ」
「ガルルル……!!」

 ギリギリ、と歯軋りをしたガブリアスは、ガブリに敵意の視線を向けた。
 それは殺意。
 明らかにそれは、彼女へ向けられている。
 しかし、一向に彼女は怯む様子を見せないのである。

「ガブリ……大丈夫なのか、身体は」
「私を誰だと思っている」

 ボルルに笑みで返した彼女は、誇らしげに言った。


「現環境トップメタ・ガブリアスとは私のことだろう」

パート7:暴龍警報(12) ( No.116 )
日時: 2015/04/29 10:08
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

  ***

 
 -----------お、おい、こいつらやばすぎる!!
 -----------やべぇよ、皆やられちまうなんて!!
 -----------く、来るッ!!
 -----------いぎゃあああああああああああああああああ


 仲間の携帯獣がミンチにされていくのが分かった。
 目玉が飛び出し、胴は裂かれ、そこに転がされていく。
 鬼のような形相の3匹の携帯獣。
 この3匹だけに、彼らは全滅した。
 ただ1人を残して。
彼に残された手段は、仲間が殺される隙に-----------------逃げることだった。


 ***

「すげぇ……! みんな、セブンスドラゴンを食い止めてやがるぞ!」

 端末の映像には、それぞれのエリアでの激闘が映されていた。ボックス内を巡回する飛行ユニットが撮影したものである。
 ボマーは流石マスターが育てたポケモンだ、と言いたいところであったが、当のマスターが肝心なところで役に立たないド無能マスターだったことも思い出した。現に今もそうである。タクのことであるが。

「……おい、トト、大丈夫か?」

 ボマーが肩を叩くと、彼は我に帰ったように「あ、ああ、すまない」と返す。
 すると、そのときだった。検索エンジンがブザーを鳴らし、検索結果を知らせた。
 そこには、自分達が求めていた情報、敵の居場所が記されていた。
 ”FD-4267923”。これがそのエリアの番号だった。


「やった、検索エンジンが遂に敵の居場所を突き止めた!」


 全員は歓声を上げた。しかし、「まだ喜ぶのは早い」と彼だけは張り詰めた表情をしていた。
 それで全員も我に帰ったかのように静まる。
 思い返せば、敵のバックアップデータを守っていたプログラムは、セントラル・フィールドの掃討班を抹殺したほどの実力者であるのだから。
 しかし、それをボマーはだけど、と否定してみせた。
 
「……俺達ポケモンのスペックは、第五世代よりも上がっている。かつての掃討班が勝てなかったとしても、今のオレ達が勝てない道理はねぇ」

 ポケモンを舐めるな、と彼は言いたいのだ。
 第六世代になって、強化された自分達を。
 一度は負けた。だが、それさえも、逆境させも乗り越えて、ボマーは目の前の敵に立ち向かおうとしているのだ。

「そうよ! ボマーとトトのメガシンカだけじゃない、此処にいる全員が第六世代で強化されたポケモンだから!」
「力を合わせれば、勝てないはずは無いのです!」
「ま、サクッと殺ってサクッと終わらせようぜィ、トトの旦那ァ」

 その言葉を聞いて、ようやく安心したのか。トトは表情を緩めると言った。


「分かった。案内しよう。バックヤードベースへ」


 彼は立ち上がり、すぐさま書斎から出る。
 それに、ボマー達は着いていった。そこから先は、暗い階段が続いていた。しばらく誰も使っていなかったようだった。
 薄暗くて不気味だったが、ようやく1つの部屋に出た。そこの異様に固められた鍵を解除すると、扉が開く。
 大きな円盤のようなものがコンピューターに繋がれている部屋だった。

「----------だけど、本当に良いのかい」

 止めるように、彼は言った。まるで、何かに怯えているようだった。彼ほどの力を持っている人物が何を言っているんだ、とボマーは言おうとしたが、それは流石に憚られた。
 今此処は、バックヤードベース内のコンピューター。此処で検索したエリアへワープ装置で飛ぶことができる、この図書館の地下にある最大のギミックである。

「……おいおい、一刻の猶予もないって言っただろ。行くぜ」
「あ、ああ……」

 彼の顔色が少し悪くなっていることに、フレイは気付いた。
 しかし、ボマーが強引に押し込むようにしてワープ装置に突き出したため、それを問う暇もなく。
 そして、トトも「す、すまない」と言うと、すぐさまワープ装置へ向かっていったのだった----------


 ***


「何だ、此処は」

 開口一口、それがボマーの台詞だった。殺風景な、青いキューブのようなものが浮かんでいるエリア。
 ただ変わっていたとすれば、だ。
 ドラゴンが、水晶のようなものに入っていた、ということである。
 それも1つや2つではない。何百個も。
 
「これが、バックアップデータ、というわけか」

 と、そのときだった。水晶の1つが消滅し、再び新たに現れる。
 フレイは思わず、トトに問うた。

「これは何?」
「多分、相手がバックアップを此処から取り寄せたんだろうね」

 成る程。連中はこうして、バックアップを呼び寄せていたのか、とフレイは感心した。
 そういえば、である。こういうときに、一番厄介なのは敵ではなく、調子に乗ってうろうろしまくるボマーである。
 何かやらかしていなければ良いのだが-----------

「おーよちよち、可愛いなー」

 ずっこけた。ボマーが1匹のイーブイを抱きかかえている。パッと見、微笑ましい光景ではある。
 
「迷子か? 何でこんなところに居るんだろうな」

 問題は、ボマーが少し目を離したそのときであった。
 フレイの顔は青ざめる。
 -----------イーブイの首がみるみるうちに、濁ったピンク色に染まって口をカパッと開けている-------------

「ボマー!! そのイーブイ(?)を離しなさい!!」
「は、何を言ってるんだおま-----------」

 ようやく気付いた。
 このイーブイ(顔だけは恐らくニンフィアであろう)は、ハイパーボイスの構えを取っていたということに。
 キィィィィ、と空気が肺へ吸い込まれる音が聞こえてくるからである。
 ボマーの顔は、今度こそ真っ青になり------------


「うおおおおおおおおおおおおおお、ふんぬらばああああああああああああああああああああ!!」


 絶叫半分にイーブイを投げ飛ばす。高く高く舞い上がったそれは次の瞬間-------------強烈な音波でバックアップを巻き込み、エリアを役数m圏内、吹っ飛ばした。
 バックアップはすぐさま再生したものの(したら困るのであるが)、直撃ではないといえ、巻き込まれたボマーはぶっ倒れたままだった。

「きゃうっ!?」

 さらに、今度はムゥが悲鳴を上げた。
 何かに捕まってしまっているようだった。
 それは、拘束リングのようなもので、ムゥの身体を縛っていく。

「く、苦しいですよぉ……助けてくださーい!」
「ムゥちゃん!?」

 思わずフレイが声を掛けたが、時既に遅し。完全に動きを縛られていた。
 そして、極めつけは虚空から現れた2体の携帯獣。
 炎を纏うサルの姿をした火炎ポケモン、ゴウカザル。そして磁石のような姿をした磁場ポケモン・ジバコイルだった。
 やつらが敵の刺客だとすれば。残った3人は囲まれたのだ。ムゥとボマーを助けに行くには、敵を倒すしかない。

「……これは、あのときの雪辱を晴らすときなのか」

 3つの影を見渡しながら、トトは呟く。

「丁度3対3、丁度良いですゼィ。この際、奴等だけならやっちまいまさァ」
「そうね。何が何でも突破しないと!」
「……そうだね」

 彼は噛み締めるように言った。


「……何が何でも倒さないと」


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