二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- ポケモンバトルM・EVO【サン・ムーン編突入!】
- 日時: 2016/12/23 03:17
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
『読者の皆様へ』
どうも、初めましての方は初めまして、タクです。今回のこの小説は、所謂対戦実況小説といったところでしょうか。
現在、他の小説の進みがなかなか良い感じになっているため、この小説の連載を決意しました。
タイトルはM(メガ)・EVO(エヴォ)、その名の通りメガシンカをテーマにした作品になると思います。また、第六世代で追加要素のあったポケモンに視点を当てていきたい所です。
また、今回のサン・ムーン発売に合わせて、第七世代を舞台にした対戦も描いていく予定です。
そして、この小説は種族値、努力値、個体値とった3値やHABCDSVなどの記号や、略称なんかが出てくる、所謂「廃人仕様」となっております。
一応、初心者の方にも配慮したような表現を極力心がけたいですが、あらかじめこういったことを知っている前提で読んでほしいと思います。
また、この作品と舞台は違いますが世界観を共有している、モノクロさん著『BOHパ対戦記録譚』があります。そちらの方も、よろしければご覧下さい。
ちなみに、作者のフレンドコードも載せておきます。XYにおけるフレンドサファリのタイプはノーマルで、ヒメグマ、ドゴーム、ラッキーが出ます。
フレコ:2809−9638−8089
※注意※
・本作品はバトルビデオを元にして作られたノンフィクションと一部フィクションです。
・そして、ストーリー中心です。小説という以上、当然ではありますが。
・ポケモンの擬人化あります。つーか、それらのポケモン中心です。
・分かりづらいかもしれない設定多々。
・選出画面があったり無かったり。
・イラストは後々用意するかもしれませんが、クオリティは期待しない方が良いです。
・メタ発言? んなもん日常茶飯事。
・にわか発言&下手糞プレイ? んなもん日常茶飯事。
・対戦相手の名前は改変して使用します。
・対戦相手への誹謗中傷はおやめください、メガボーマンダのスカイスキン捨て身タックルとシャンデラの眼鏡大文字が襲い掛かります。
・BGM置いてるけど、ポケモンじゃないかもしれない。
また、作者は対戦・交換などは大歓迎です。フレコは自分の雑談スレ『タクのノベルス・ポケモン図書館』に置いています。バトルビデオをこの小説に使わせていただくかもしれません。
以上のことを守ってうちのポケモン達の活躍を生暖かい目で見守ってやってください。
目次
第一部:エリア開放編
プロローグ
>>01
パート1:謎の敵・静炎邸
>>02 >>03 >>04 >>05 >>06 >>07 >>10 >>11
パート2:遮断された箱庭・氷海水域
>>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>19 >>20
パート3:湖の決闘・中部緑域
>>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>32
パート4:忍の街・群雲街域
>>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38 >>39 >>40 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47
パート5:この風が泣いている・天獄峡域
>>48 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55 >>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63
パート6:雷電霹靂・雷電械域
>>75 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80 >>81 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>92
パート7:暴龍警報・頂龍山域
#1:絶望の淵へ
>>103 >>104 >>105 >>106
#2:反撃の狼煙
>>107 >>110 >>111 >>112 >>113 >>114 >>115
#3:龍の守護者
>>116 >>117 >>118 >>119 >>120
#4:最後の守護級
>>121 >>126 >>127 >>129 >>131 >>134 >>135 >>136
パート8:仲間達が待つ場所へ
>>137
第二部:新世代編
パート1:セントラル・フィールドへ
>>138 >>139 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>150 >>151 >>152 >>153 >>154
パート2:留学生は突然に……
登場携帯獣紹介
>>70
用語解説
>>71
番外編:始末屋の日常と非日常
パート1:前々前作でラスボス役やっててもキツい奴はキツいので以下略
>>95 >>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32
- パート2:遮断された箱庭(1) ( No.12 )
- 日時: 2015/02/20 22:41
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
「……お嬢様。お父様が心配になっておられました」
「大丈夫、と伝えておいて、ギルガメシュ」
「畏まりました」
ギルガメシュ、と呼ばれた男はサーベルを腰に刺した初老の執事だった。
静炎邸を運営するに当たって、サポート役は必須。フレイの父が彼女に付けたのが、ギルガルドの種族であるこの男だった。
「でも、ゆっくり休んでギルガメシュ」
「しかし、昨日の謎の敵……私の力を以ってしても倒すことは出来ず、結局貴方様の手を煩わせてしまいました。真に申し訳ありません」
「一番悔しいのはあたしよ。貴方達をこんな目に合わせてしまったもの。敵はボマーの同属、つまりボーマンダの姿をしていた訳だけど、相性の関係があったとはいえ、結局あたしは住人を守るどころか傷つけてしまった。それどころか、客人に大怪我を負わせてしまったわ」
管理人、失格ね、とフレイは自嘲するように言った。
「今回の件は、貴方様の過失ではないのです」
「……ごめんなさい。でも、自分を責めることしか、今のあたしには出来ないのよ」
皮肉ね、と彼女は続けた。
「破壊力SS……ボマーとあたしの他に、この称号を持つのは4人しかいないらしいけど、こんな物騒な称号の付く火力を持っていながらあたしは自分自身でさえ燃やすことが出来ないのが苦しいわ。そして……水なら兎も角、氷如きで消えてしまう弱い炎。皆を守ることすら出来ない小さい炎。いっそ、消えてしまいたい」
「自棄にならないでください、お嬢様」
「分かってるわ、冗談よ」
無理に軽く言って見せたが、彼女自身相当な自責の念を負っており、そう簡単には消えないだろう。
「万が一、どうしようも無くなったときは、ポケモンバンクがあるし、深く考えなくても良いのかもしれないけど」
ポケモンバンク。1000ボックス以上のスペースを持つインターネット上のサーバーだ。
此処の守りは銀行というだけあって厳重だからだ。
そのとき、呼び鈴が鳴ったらしく、使いの火の粉がやってくる。
すぐに迎えに行こう、とフレイは部屋を飛び出し、玄関の方に駆けていくのだった。
時は9時。
ボマー達が来る時間だった。
***
「さあ、調査だこのヤロー! 暴れるぞぉーっ!」
「戦闘狂がバレるので止めてください」
既に居もしない敵をぶっ壊す気満々の戦闘狂にして戦闘バカのクレイジードラゴンのボマーは、いい歳こいてこの調子だった。
あくまでも、調査なのだから、まだ戦うとは限らないのに。
「マスターの意思は『邪魔な奴が居たら問答無用で叩き潰せ』とのことだよ」
「本当、エースポケモンとプレイヤーは似ますね……」
黙れ。
小賢しい戦略より、圧倒的火力で叩き潰すのが好きなのだから、自然と考えもそうなってくる。あくまでもゲームの中では、だが。
「でもさ、マスターはまだ、現状を完全には把握してないんだし」
すると、扉が開き奥からフレイが走ってくる。
「あんたらは本当、おめでたいわね。特にバカマンダ」
「開口一口がそれかよ……!」
『アクアの冷凍裏拳(パンチ)! ボマーは倒れた』
「もう、ややこしいから黙っててください」
青筋立てながら、早速怒鳴りそうな馬鹿を冷凍裏拳(パンチ)で黙らせたアクア。威嚇が入ってない上にメガでないマンダ程度、これで余裕である。
「さて、フレイさん。実は僕、昨日あの光の落下地点を計算していたのですが、このボックス全体のうち、6つのボックスエリアに落ちたものと思われます」
「しかし、何なのかしら。この光……」
光といっても、いずれも赤や黒の稲妻が走り、お世辞にも綺麗といえるものではない雰囲気だった。
アクアの開いたタブレットには、その映像が映し出されており、昨日の記憶を鮮明に思い出させるものだった。
「なんにせよ、嫌な予感がするのだけは確かだ」
「あ、復活した」
「俺的には、やはり昨日の影と関連付けた方が良いと思うぜ。何となく、似てる気がするんだ」
「ま、正体が何であっても、敵ならぶっ飛ばすだけ、でしょ?」
「分かってるじゃねえか」
「なら、決まりですね------------」
と、アクアが振り向き、早速まずどこに行きましょうか、と言おうとしたそのときだった。
「大変大変大変大変大変大変だーっ!!」
轟! と風が舞う。
甲高い声の響いた空中を見上げると、そこには鷹の姿をした烈火ポケモン、ファイアローが羽ばたいていた。
わざわざ体力を消耗する原型の姿でいるのだから、何かがあったのだろうか。
「コママさんじゃないですか、どうしたんですか?」
「バトルスポットが、バトルスポットが……」
ファイアローのコママ。実戦では主役級である、対戦界の零戦。
「え? マジ? そこまで褒めてくれんの?」
「地の文をナチュラルに読まないで下さい」
ただし、この小説ではモブ同然である。
「い、嫌だァァァァァーッ」
***
コママに案内され、やってきたのはネットワーク接続用対戦サーバー、バトルスポットだった。
インターネットに繋げば、ロビーからネットワークへの海へと潜り、対戦が出来るというものだ。
しかし、今はそのロビーへの部屋は固く閉ざされていた。てっきり、先日の襲撃を受けてか、セキュリティプログラムが封鎖したのかと思った。
「これは……」
「バトルスポット自体はすぐに復旧したんだ」
「じゃあ、何で封鎖されてんだ!?」
コママは口を開いた。
「恐ろしい……誰かが、ネットワークサーバーを襲撃したって……!」
「ネットワークサーバー!?」
ボマーが真っ先に声を上げる。
「なんだそりゃ!!」
「知らねぇ癖に何驚いてるんですか、あんたは」
「じゃあ、何だよ。そのネットワーク何たらって」
「要するに、バトルスポットのネットワークを管理するサーバーの事ですが、それが事実ならば……」
ごくり、とアクアは唾を飲み込んで言った。
「全世界のプレイヤーがバトルスポット及びGTSなどのネット機能が利用できなくなったってことですよ!」
衝撃が走る。つまりはそういう事である。
-----------それだけじゃない。折角、ポケモンバンクを万が一の最後の逃げ場所に考えていたのに!
全世界のポケモンを預かる巨大サーバー、ポケモンバンク。最悪はこれに逃げることもできなくはなかった。それも叶わなくなってしまったが。
しかし、普通のポケモンやコンピューターウイルスでは、そんな大事なサーバーの守りを壊し、機能停止に追い込むほどに襲撃するのは不可能だ。
たいていはセキュリティにデリートされて終わりである。
「それを掻い潜る程の存在、ってことなの!?」
「誰なのさっ、そんなのいるの、あっくん!」
「……にわかに信じ難いですし、まずいですね。ネットへの接続が出来なくなった以上は、こちらは完全に閉じ込められた状態……言わば、このボックスは閉ざされた箱庭。もう、僕らはポケモンバンクなどに逃げることも出来ないってことです……!! 後、地の文をナチュラルに読むのはやめてください」
これは、敵からの宣戦布告なのだろうか。
全世界のコンピューターが、未知の脅威に晒されようとしていた--------------!!
- パート2:遮断された箱庭(2) ( No.13 )
- 日時: 2015/02/22 10:38
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「……ま、逃げる気なんざ、元からねーよ」
ボマーの口角が上がる。
「俺達はポケモンだ!! 生まれながらに戦うサダメを負った戦闘生命体だ! 逃げて生き延びるくらいなら、戦ってデータの塵になって死んだほうがまだマシだってもんよっ!」
高らかに言うボマー。戦闘バカの彼は、逃げることを知らない。そして、許さない。
こうなったら自分達がポケモンである以上、その意地を見せ付けてやれ、と言っているようだった。
「そうでしたね。僕らはいつだってそうでした」
「あたし達に出来ることをやるしかないわね」
「そうそうっ! やっと纏まってきたよ!」
「……あのー、俺モブっぽいし、そろそろ帰っていいのかね」
「あ、そうですね。ありがとうございます。お礼の森のヨウカンです」
「うん、そうだね。頂いておくよ」
失礼した、とコママはそのまま飛び去っていこうとする。
「……俺対戦では主役級なのに……PGLでも常に首位なのに」
「俺様に対する嫌味は良いから早よ行けや」
「ひいっ、逆鱗捨てて空元気なんか搭載してるお前に俺が適う訳がないだろ!?」
***
「で、当のアクア君はさっきから、あの扉の前に座って、何やってるんだろ」
「あいつは、機械弄りも好きだからな。頭が良いってのは、どこででも役に立つもんだ」
アクアの周りには、ホログラムのパネルなどが幾つも浮かび上がっていた。扉の前で胡坐をかき、真剣そうな眼差しで中央のパネルを見つめながら、キーボードを機械的に叩き続けるだけだ。
「……やはり、ですか」
「お、部位破壊に成功したぞ」
「先輩ー、右の方に回ってー」
「あんたら、誰がモンハンやって良いって言いましたか、コラ。3DSの中で3DSやってんじゃないよ」
ささっ、と手に持っていたそれを隠し、チャモとボマーがアクアの方に向き直った。
「何か分かったの、アクア君」
「フレイ先輩はまともで助かります。さて。かなり分かったことがありますよ」
ブイン、と無機質な音を立てて大型のパネルが表示された。
「6つのエリア。昨日、光が落ちた6つのエリアに、このプロテクトが繋がっているんですよ」
「え、それってつまり」
「はい、ボマー先輩。正解です」
「まだ何も言ってねぇけど」
ボックスのエリア6つに、紅い点が映し出された。
「この離れた6つのエリアに、このプロテクトに関する何かがあるのかもしれないということです」
表示された画面には6つのエリアの名前が映されていく。
極寒育ちの氷タイプや水タイプが生活する”氷海水域(ヒョウカイスイイキ)”。
機械に覆われて電気や鋼タイプの蔓延った”雷電械域(ライデンカイイキ)”。
鬱蒼とした緑の大地にして草タイプの領域”中部緑域(チュウブリョクイキ)”。
古き日本を感じさせる江戸時代のような街”村雲街域(ムラクモガイイキ)”。
光に満ちた飛行ポケモンの楽園にして地獄”天獄峡域(テンゴクキョウイキ)”。
覇気に満ちた龍ポケモンのかつての大戦場”頂龍山域(チョウリュウサンイキ)”。
「おっけー、そこを叩けば良いんだな」
「ですが、事は一刻を争います。出来れば、二手に分かれていきたいところですね」
確かに、アクアの言うことも一理ある。固まって行って全滅するよりはましだろうし、二手に分かれて行った方が効率が良いのも事実だ。
「本音は炎2人が被っている現状が余り好ましくないのもあるんですよ。それに、行き先は仮にもボックス。こちらの仲間になってくれるポケモンは幾らでもいるでしょう」
「幾らでも、か」
「ま、二手で行くのは賛成ね。若干不安だけど」
「というわけで、チーム分けどうします?」
全員押し黙った。
「とりあえず、あたし達炎組は分かれるとして……」
「同年代組で行った方が良いんじゃねえか?」
「ま、そうですね。僕らも同じ意見です……って」
「〜ねえか?」と言ったのはボマーではない。
「よーう」
ぞっ、として振り返るとフランクな挨拶が返ってきた。
言ったのは、ファイアローのコママだったのだ。
「うわっまだ居たんですか!!」
「お、おいおい待てよ。驚きすぎ。第三者の俺から見てもそう思うんだよ。レートでもお前らの活躍は見てきたけど、ラグバシャっていう組み合わせは地味に相性補完できてるし、何よりボーマンダとシャンデラも同じ。先輩後輩で行くよりは、こうやった方が良いんじゃないかって、思ったのさ」
「で、何でまだいるんだテメェ」
「修復作業に狩り出されちまいそうになって、逃げてきたところだ」
「最悪だなコイツ」
「本格的に害鳥ね」
「ちょっ、そこまで言う必要ある!?」
仕方が無い。自業自得である。この後コママは、追いかけてきたポケモンによって、しっかりと修復作業に狩り出されたのだった〜BAD END〜
「助けてくれぇぇぇ、働くのヤダよぉぉぉ」
「ばいばーい、ニートアローさん」
「ですが、コママさんの言ったとおりでもありますね」
「ああ。主人がパーティを組むときに一番気にしているのは、相性補完と役割だ。俺とフレイ、お前とチャモ。これで組むだけで、3匹目以降次第で幾らでも補完が利きやすいってことだ」
「あんたとまた組むのね……癪だけどレートでも何度も共に戦ったから仕方ないか」
「んだとテメェ」
「喧嘩はやめてください、冷パンと波乗りしますよ」
「喧嘩両成敗ー」
青ざめた2人は、同時に言った。
『やめてください、死んでしまいます』
と。
***
くじ引きで決めた結果、ボマーとフレイは6つあるボックスエリアのうち、”氷海水域”に行くこととなった。
「ちょっと待てコラ、何で俺がそんなところに行かなきゃいかんのだ」
「あたしだって同じよ、死ねって言うの? 死ねって言うの? あたしらに?」
「敵が水・氷複合タイプだったら尚良いですねー」
「死ねってか? 本格的に死ねってか?」
「うっせぇですね、くじ引きの結果に従えよ、バカマンダ」
「ヤメテ! 冷凍パンチ向けるのやめて! インテリキャラから眼鏡ヤクザになってねぇかコイツ」
ラグラージのA種族値は120。本来、種族から見れば攻撃的な性質だ。知的冷静なアクアは例外といえど、アタッカーをやったBOHを通して好戦的な本能が目覚めてしまったのであろう。
元々、辛らつで言いたいことは言う性格ではあったが、此処までではなかった。
「まあ仕方ねぇ。行くぞ! フレイ」
「そうね。逆に味方が氷・水タイプならばパーティにも美味しいわ」
と言いながら去っていく2人を見て、アクアは心の中で呟いた。
-----------くじとは言え、この上なく心配ですね……。
と。
「さて、僕達は-----------」
「”中部緑域”って出たよ」
「うーむ……」
アクアは溜息をついた。
「早速、嫌な予感しかしません……」
- パート2:遮断された箱庭(3) ( No.14 )
- 日時: 2015/02/22 23:35
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
「ユウキリンリン、ゲンキハツラツ、キョウミシンシン、イキヨウヨウ」
「活気付けにアドバンス・アドベンチャー歌ってるのは良いけど、めっちゃ震えてるわよ、あんた」
「ガックブルブル、ガックブルブル、ガックブルブル、ガックブルブル」
「もう、何言ってんのか分からないわよ!」
そういうフレイも、ブレザーの上にコートを着込んでいる。そして、外出時には絶対つける、トレードマークの黒いネックウォーマーを首に付けていた。そのネックウォーマーにはご丁寧にC145とプリントされている。
にも関わらず、少し足が震えているのが分かる。
ボマーはファーコートを何重に着ているにもかかわらず、ガクガク震えていたが。というか着込みすぎて、もうお前誰だという状態だ。
今歩いているのが、極寒の地・氷海水域の流氷の上、というのもあるが。
氷の柱が辺りには沢山立っている。
「助けてくれ〜死んじまうよぉぉぉ」
「仕方ないわね……」
ぽうっ、とボマーは自分の身体が温かくなった気がした。だんだん暑くなってきたので、ファーコートをデータの塊に変換し、元の上下ジャージの姿に戻った。
「おっ、すげぇ! あったかいぞ!」
「火の粉ちゃん、しばらくボマーを暖めてあげて」
青い火の粉の精は、うなずくとボマーの周りを漂い始めた。
「だけど、寒いのはあたしも苦手だわ……。あの思い出が蘇っちゃう」
「何言ってんだ、弱気なことを。いーか、誰にだってミスるときはあるんだよ」
「爆風の中で問答無用であたしの中の温度が下がっていく感覚。身体の中を燃す炎が消えていく感覚。あたしが初めて真に”怖い”って思った瞬間よ」
「ばっきゃろ。んなこと言ったら、氷4倍弱点の俺はどうなるんだ-----------」
先をずんずん、と歩いていたボマーはそこで言葉を失った。
「ん?」とフレイも立ち止まって、ボマーの位置まで駆けた。
「何てこった……」
彼は青ざめた声を上げる。
そこには、死屍累々。先ほどまで普通に立っていた氷の柱は何本も圧し折られていた。
倒れた原型のポケモン達が沢山横たわっていた。
それも、いずれもユキメノコのみぞれ、オニゴーリのコキュートス、ミロカロスのヘルメス、ダイケンキのミルマなど、水や氷タイプなどのポケモンばかりだった。
「ど、どうしたんだ……皆……!」
しかし、いずれもマスターが育てたポケモンだ。
そして、真ん中に瘴気が見える。
影だ。その影が何かと戦っているのが見えた。
真っ白な巨体だ。
ユキノオーが、影と戦っているのだ。
「ユキキングの親父っ!!」
「あの影と戦っているのかしら。助けないと!」
ユキノオーのユキキング。このエリアの主を務める程の大物だ。ボマーも親父と呼んで慕うほどである。
フレイとボマーは影の方に向かって、駆け寄る。
「貴様……許さんっ!!」
「忌々シイ……携帯獣メ……邪魔ダッ……!!」
「此処は、貴様の居るべき場所では、無い!! この冷気で永久に凍るが良い!!」
影の姿がだんだんはっきりとしてくる。
空間が裂けて、穴が開いた。
そして、空間と穴の境から、牙が生えてきた。そして、穴の中央に人影があった。
次の瞬間、人影が暗黒の球を放つ。
しかし。
「むんっ!!」
ユキキングの身体から光が放たれる。
そして、更なる存在へと”進化”を果たした。
メガユキノオーと成ったのだ。
「砕いてくれるわぁぁぁーっ!!」
その玉を掌で粉砕するユキキング。
しかし、彼に向かって走ってくるボマーが叫ぶ。
「ダメだ、親父!! メガシンカするんじゃねえ!!」
次の瞬間。
ユキキングの背後に手が伸びる。
空間が僅かに裂けている。
ぐさり、とその手がユキキングの胴を貫いた。
「が、はっ」
「メガシンカノエネルギー……ツイでに貰うか……ふふふ」
だんだん、言葉が饒舌になってくる。
そして、力尽きたのかユキキングの姿が元に戻る。
「うむむむ、フハハハハ!! 馴染む……最高に馴染むぞ!!」
ふははははは、と笑いながら空間が閉じていく。そして、影は完全に姿を消した。
遅かった。
いや、相手の方が遥かに速かったのだ。
「お、親父ィィィーッ!!」
「バ、バカな……! ワシのメガシンカが……!」
「おい、しっかりしろ、親父!」
空ろな眼をしていたユキキングはそのまま動かなくなった。
「くっ、くそっ!!」
「気を失っているだけだわ」
「仕方がねぇ。俺だってこのままじゃ黙っていられない、奴が何処に行ったのか、探さないと」
「待ちなさい。今回のあたしらの目的は、アクア君に指示された、ロックの繋がっている位置に向かう、ということよ」
「だ、だけどよ! このままじゃ、収まりが付かねぇよ!!」
と、ボマーが怒鳴ったそのときだった。
うっ、うっ、とすすり泣く様な声が聞こえる。
それに気づいたらしく、ボマーはその方向へ走る。
「うっ、うっ、おじちゃあん……」
折れた柱の影に誰かがいる。小柄な少女のようだった。
「お、おいっ! 誰か居るのか!?」
「きゃあああ!? 氷柱針ィィィーッ!!」
へ? と上空を見上げたボマーは思った。
---------あ、死んだわこれ。
と。
『ボマーに効果は抜群だ!! ボマーは倒れた』
***
「ん……あ?」
眼を開けると、そこには2人の少女が見えた。
まだ、おぼろげにしか見えないが。
「俺は、いったい……」
「ごめんなさいっ!! 驚いちゃって、つい!!」
涙目になって謝る少女。彼女の体躯は見たところ、かなり小さく、茶色のファーコートを羽織っており、さらにフードを被っていて内気な印象を持った。
「あたし、ムゥって言います……」
「ムゥ? 聞かねぇ名前だな? 俺はボマー、よろしく」
「あたしはフレイ、よろしく」
さて、とフレイは続けた。
「この子の親はあんたと同じパーティで戦ったことがあるみたいだけど? 」
「あ?」
そういえば、似たような雰囲気の女を見たことがあるような気がする。
が、あの女は相当背が高かった気がするが。
「私と、私の母の種族は……マンムーです……」
「どわい、マンムー!?」
「はい……私の母さんは、貴方とレートで戦ったことがあるって」
「ああ、別のサーバーからやってきたあいつか」
「私はその娘です」
なーるほど、あの女は子持ちだったのかー、とボマーは思い返す。
しかし、マンムーにしては彼女の体躯は釣り合わない程に小さい。あくまでも、擬人化体の姿ではあるが。
「あたし、あの影がやってきたとき、怖くてずっと隠れていて……」
「ま、こんな小さな子に、あんなのは酷だわな」
「おじちゃんが戦ってるときも、泣きながら隠れているしか出来なくて……」
泣きそうになりながら、彼女は言った。
「でも、仮にもマスターの育成を受けたのに、情けなさ過ぎるわ」
しかし、フレイはばっさり、と冷たく言った。
「お、おい、お前」
「仲間がやられてるときに、自分だけ戦いもせずに、メソメソ泣いてたのよ!! あたしがムカ付くのは、泣いてばっかで何もしない奴よっ!! そういうのを弱っちいって言うのよ!!」
うっ、とムゥの顔が歪む。そして、すぐにわんわんと泣き出してしまった。
「おい、フレイっ!」
「行くわよ、ボマー。ムカ付いたわ」
「だ、だけどよ、あんな言い方は……!」
「知ったこっちゃないわっ!!」
----------ムカ付くのよ、昔のあたしを見ているようで、ムカ付くのよ!
先に行くフレイを追うため、ボマーは仕方なく走っていくのだった。
未だ泣き続ける少女を置いて。
- パート2:遮断された箱庭(4) ( No.15 )
- 日時: 2015/02/22 16:58
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
辿り着いたエリアには、びったりと溶けたどろどろの鉄のようなものが張り付いており、中央に柱のような機械が存在感を放っていた。
アクアの指示していたエリアは此処だが、あからさまに異質な雰囲気を放っている。
「おい、フレイっ!!」
「そりゃ、怖いとかそういう感覚は分かるわ。でも、大事なのは恐怖に立ち向かうこと。泣いて何もしないのは唯の臆病者。恐怖を司るゴーストタイプがこんな事を言うのはおかしいかしら」
「だけどよ、生き残ってたのはあいつだけだぜ、仲間にすれば--------!」
「馬鹿ねっ!! 仲間が戦っているときに助けられないような臆病者が、対戦でまともに戦える訳が無いじゃない!!」
激昂して、返すフレイ。
相当怒っているのが分かる。ボマーは、自分の周りを回っている火の精が赤く燃え上がっているのが見えた。
---------ガスバーナーの赤い炎って酸欠故に起こるんだったっけか? こいつ、興奮したらいっつもこうなっちまうんだよな……。
そして、嫌な予感がする。
---------こういうときに限って、こいつはしくじるんだ。あの地獄のクリスマスもそうだった。
「何、ぼーっとしてんのよっ!! あれを見て!!」
「えっ」
フレイが指差した方向を見ると、瘴気が発生しそこから空間が裂けて牙が生えてくるのが見えた。
「こないだのボーマンダとは違うな……」
「発生の仕方? そうね。何ていうか、あれよりも一段階上って感じがするわ」
ピキピキ、と割れた空間から人が現れる。
それは金髪で座禅を組んだ男だった。
身体はやつれてはいるが、筋肉質だ。
「ふ、ふははは、のこのこと来たか、忌々しい携帯獣め……!」
しかし、前回に増しておぞましい程の邪悪を感じる。
「私はね、大っ嫌いなんだよ。お前達みたいにうざっぽく追ってくる奴が」
「ちっ、なんて野郎だ。こっからでも覇気をビリビリと感じらぁ」
「折角完全体まで成長したんだ。私の力、特と見やがれやぁぁぁ!!」
ビキビキ、と周りの割れた空間が収束する。そして、現れたのは、黄色い身体の狐のようなポケモン・フーディンだった。
「私はなぁ、全てのフーディンの恨みから生まれたんだぁ!! 何でメガシンカしたのに、種族値が90しか上がらないんだ? 特防の種族値修正の10も入れろってことか? 納得行かん!」
「真に遺憾だぜ、そんなんでこんな化物生まれたら、俺らはどうしたら良い」
「うっせぇ! メガシンカして種族値100上昇した奴の意見は聞いてないのさ!! 赤い害鳥の流行、使用率激減、挙句の果てには夢特性厳選用という始末! メガ特性のトレースはそんなものの為に使うんじゃねぇんだよ! 前の世代までの輝きが嘘のようだっ!」
「そうだな。夢特性厳選ならサーナイトとかでやれば良いもんな」
「酷い!!」
ぶっちゃけると、こいつの言っていることは全て恨み言にしか聞こえない。
そんなものは仕方ないだろう。恨むならば、環境の逆を行く強化をしたゲーフリを恨め、と。
恨むならば、蔓延る赤い害鳥を恨め、と。
どうせマスターは夢特性厳選が面倒で、フーディンなんか使わないんだから。
「そして私は今は、このエリアのガーディアンっ!! 近づくものは全てデリートする! 全六体いるメガシンカポケモンのうちの一角さ!」
「最弱だな、種族値上昇の点で。襷の方が使いやすいぜ、ぶっちゃけ」
「さっき言った、昨日のマンダより一段階上っていうのは撤回するわ」
「おいいい!! 舐めきってんじゃないよ!!」
「単タイプより妖複合のサーナイトの方がよっぽど使いやすいもんな」
お、の、れぇぇぇ、とフーディンの身体が黒いオーラを纏った。
「どうせお前らは2人しか居ないんだ!! 消え散れぇぇぇ!!」
次の瞬間、空気中の塵が集まり、念力が実体化した。
サイコショックだ。
「うわっ、卑怯だぞ!!」
「うるせぇぇぇ、先制技の無いてめーらなんざ、私のサイコショックで十分なん------------」
ぐさり。
一瞬、何が起こったのか分からなかったが、目の前のフーディンの額に何かが刺さったのは分かった。
「……先制技なら、此処にあります……!」
振り返ると、そこにはムゥの姿があった。
「あんた、何で此処に……!」
「私だって、いつまでも泣いてばっかりじゃないっ! 弱くなんか、ないもんっ!!」
「へへん、思わぬ助っ人が出て来やがったな、どーするよ黄色いの」
おのれ……とフーディンが額を擦る。
「氷の礫か……!! 小賢しい!! 俺の自慢のおでこに傷を付けやがってぇぇぇ!! 血ィ出てるよ! どうしてくれんの! ファイアローじゃなかっただけ、まだマシだよ!」
確かに、ファイアローのブレバならば頭に風穴が開いていたところである。というか、頭吹っ飛んでね?
最も---------と彼は続ける。
「居たところで、どうにかなる問題ではあるまいっ!!」
後ろから5体のポケモンが現れる。
スピアー、メタグロス、サワムラー、ゴローニャ、カビゴン。
なるほど、確かにアロー対策はばっちりのようだ。
ゴローニャ1体だけだが。
「成る程ね、初代統一か。面白いっ!! あ、グロスいるの忘れてた」
「相手になるわ。焼き尽くすまで!」
「私も……戦います……!」
信用ならないわね、とフレイは冷たく言う。
「泣いてばかりで何にもしなかったのが戦力になるとは思えないわ」
「……居ても立っても居られなくなったんです」
「余計なお世話よっ!! 弱虫に助けられる程、破壊力SSの名は伊達じゃ無いわ!」
「まあ待て、フレイ。折角のマンムーだ。丁度俺も氷タイプもだが、地面タイプが欲しかったところでな。こいつの力を使わせていただこうじゃねえか」
「……仕方ないわね!」
彼女は渋るが、このまま選出画面に移行する。
「覚悟しろ、私の超能力には誰も敵うまい……!!」
- パート2:遮断された箱庭(5) ( No.16 )
- 日時: 2015/02/22 19:48
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「しかし、敵の面子だがどっからどう見ても、随分ひねてんな」
「サワムラーとかチョイスが渋すぎるわ」
「ま、あのフーディンじゃあねぇ?」
フーディン
メタグロス
ゴローニャ
スピアー
サワムラー
カビゴン
呆れたような物言いのボマー。完全に舐めきっているようだった。
しかし、メタグロスは冷凍パンチで死ぬ可能性が高いし(クリアボディで威嚇無効)ゴローニャは頑丈で耐えられてフレイが死ぬ可能性が高い。
だがグロスは、HD特化クレセを乱数2発にできるほどの火力を持つフレイで余裕だろう。C145は伊達ではない。
「ま、取り合えずだ。初手はムゥ、行けるか?」
「この子を初手に任せるの?」
「……分かりました。やります」
意外な言葉が返ってきた。
さっきの泣き虫な姿からはとても想像できない。
苛立ちが最高潮に達したフレイは、
「何よ、あんたっ! さっきは何で戦わなかったのよ!!」
「戦いましたっ!!」
強い言い返し方に今度はフレイの方が驚いてしまった。
「私だって、あの時最初は戦ったんです。でも、余りにも強くて……気づいたら、逃げてて……そしたらおじちゃんがあいつと戦っていたんです」
「そーだったのか」
もう、逃げるのは嫌なんです、と彼女は続けた。
成る程、あくまでもユキキングが戦っていたときに隠れていただけで、彼女は戦っていたのだ。
フレイは心底後悔した。話もロクに聞かずに彼女のことを軽蔑してしまったのだ。
「弱っちいだなんて、言われたくないんです……私にだって意地があります」
選出確定
ムゥ:マンムー♀
それは、勇気のこもった眼差しだった。
「良いじゃねぇか。やってやろうぜ、フレイ。まずは一面ボスだ。ぶっ潰してやろうじゃねえか!」
「……そうね」
選出確定
ボマー:ボーマンダ♂
フレイ:シャンデラ♀
「そんじゃまあ、ぱーっと終わらすか、ぱーっとな!!」
相手側の選出も決まったようだ。
「面倒だな……この世界のルールで戦わなければならないというのは……!」
「へっ、上からぶっ叩いて終わらせてやるぜ!」
3匹の姿が、本来の原型の姿となる。
ボーマンダ、シャンデラ、マンムーとしての本来の姿だ。
「さあ、祭りの始まりだ!」
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