【三次元】運命の人が男と女とは限らない【ナマモノ注意!!】

作者/ 枝豆豆腐

〝君を好きな理由〟-1-    ※ドS×毒舌王


俺は、何年も生きてきて、一度も体験したことがないことがある。
それは「心から惚れた人」である。
自分のものにしてしまいたい、という欲求に掻き立てられたことがない
言わば、皆無。束縛も嫉妬もしない。
第三者からしたらそれって、物凄く冷めてると思われるのか?

違う。ただそこまで惚れていないからだ。
言わば上辺だけ惚れちゃいましたよーみたいな
……………こんなこと嫁に聞かれたら本当に困るんだけどさぁ

ぶっちゃけなところ、嫁も実際そうである
その頃の俺はあぁ心から惚れてんだなぁと思っていた。
でも、月日が経つにつれ、薄れていくのである。

嫌いとかじゃない、好きとかじゃない

ただただ 普通なのである。

「俺、彼女出来る予感」

携帯を弄りながら、日村さんがボソっと呟く。

「日村さん。現実逃避のために嘘はダメですよ」
「嘘じゃねぇよ。本当だって」
「あ、そうか。日村さん男の子大好きですもんね」
「好きじゃねぇよ!!!しかも、会話になってないし」

意味分かんねぇ……と言うと
また日村さんは携帯を弄り始めた。
そこまで大好きな人なのだろうか?
そもそも、日村さんって心から惚れた人が居るのかな?

「………ねぇ、日村さん」
「なんだよ?」
「日村さんって、心から惚れた人とか居る?」
「そうだなぁ………分からないや……」
「分からないってどういう意味?」

疑問を口にすると、日村さんはえっ?という顔をした。

「だってほら、今このメールしてる子かもしれないし
もしかしたら昔の子と再会して、その子かもしれないし
………今までたいしたことなかった女友達かもしれないじゃん」

日村さんにそんな女友達が居るのか、と言いたかったが
面倒くさいから止めた。

「そういうものかなぁ」
「意外にそうなんだって、何気なく友達だった子が
突然だよ、突然可愛く見えてその時自分が、心から惚れてたんだって
気付くもんだよ。人間って」
「ふ~~~ん」

日村さんに語られてもなぁ………。
だけど、少しだけ同意してしまった。何気なくねぇ………
男しかいねぇや。

「…………おい」
「ん?」
「ん?じゃねぇよ。もう少しで収録始まるぞ」
「あぁそう。じゃあ行こうか日村さん」

椅子から立ち上がって、ドアに向かうと
ガチャとドアノブを回して開ける。そして廊下を歩く
いつものことでも、少しだけ憂鬱になる。

なんかねぇ………お前の日常はどーせずっと変わらないんだから
心から惚れた奴なんて求めてんじゃねーよと言われてる気分で
物凄く嫌だ。廊下がエスカレーターみたいに動けばなぁなんて思ったり

「なにお前、心から惚れたいのか?」
「まぁねぇ」
「だったら、芸能界で探してみたらいいじゃん」
「嫌だよ。汚いオカマとか無駄な筋肉とか暑苦しい奴とかさぁ居るし
あと、毛深い二の腕とか最悪!!」

まさに、地獄だよ。

「………別に俺、男とは言ってないだろ」
「えっ?いや、違うよ、これはね、ほらなんつーの」
「お前もしかして………ホモなのか?」
「違うって!!!ただの想像だよ、想像」
「なんつーう想像だよ。まぁいいけどさ」

スタジオに繋がるドアを開けると、たまり場に
キカナイトのメンバーがもう集まっていた。
さまぁ~ずさんやおぎやはぎやザキヤマたちが雑談している中
一人、本を読んでいる有吉が居た。

「有吉~~~!!」

俺が呼ぶと、本を読んでいる有吉は無視をした。
あれっ?俺結構、有吉と仲良いんだけどなぁ~~~
機嫌悪いのかな?

「無視とかヒドくない、有吉って呼んでるのによぉ」

有吉の傍に寄ってみると、有吉は本に隠れて見えなかったが
ぐっすりと寝ていた。本を読んだまま
多分、読んでいたげと疲れに負けて寝てたのかと俺は考えた。

スーー……スーー……、寝息が聞こえる。
寝てる時は毒も吐かない、可愛い奴なのによぉ
俺は有吉の寝顔を見ていた。するといつもと違う発見をする。

こいつ、こんなにふわふわして透き通る髪してんだぁ

薄いけど紅い唇してんだぁ

白い肌だなぁ スーツだけど細い二の腕って分かるなぁ

意外に針金のような指してるよなぁ

天使みてぇだなぁ……………ん?


なに言ってんの?俺?


「…………ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

大きい声で叫んでしまった。ううっと有吉が呻きながら起きる。
そしてギロっと俺の方を睨んだ。その目はもう………恐ろしいですよ。
悪魔みたいな、澱んでいます。はい。

「あぁ?うるせぇんだけどマジで」
「しゅ、収録前だから起こそうかなぁと思って」
「もうちょっと起こし方あったでしょ?………まぁいいですけど」

むくっと立ち上がると、すかさず日村さんをいじめ始めた。
日村さんのリアクションに肩を揺らして笑う有吉
…………笑うと可愛いよなぁ。アイツ

ん?

俺、もしかして…………有吉に惚れてる?

………いやいやいやいや!!!!!
それは絶対にないって

「知ってるか有吉、設楽のやろーさぁ
今ね、心から惚れてる人を探してるらしいよ」
「余計なこと言わないでよ、日村さん」

日村さんからその事を聞いた有吉は、俺の方を振り向いて言ったんだ。

「マジですか?へぇー意外と純愛者なんですね。惚れちゃいますよ」

くくっと笑う有吉


冗談だと分かってたはず

でも、その時の俺は

有吉の惚れちゃいます発言に

胸をどきゅーんとやられてしまったのである。

ぽっと顔が熱く、心臓がジンジンと痛い。


その瞬間 俺は人生で初めての




心から惚れたのである。





「なに?どうしたの?」

有吉が近くに寄ってくる。あぁ寄らないでくれ………!!!
抱きしめられる傍に有吉が居る。上目使いで俺を見ている。
さらさらの髪をなびかせて、キレイな瞳で

「……………うばっ!!!!」

がばっと有吉に抱きしめた。

「ぎゃーーーーーー!!!!」
「惚れたかもーーー!!」
「てめぇ…………きめぇんだよ………!!!」

すると、有吉からアッパーをくらった。
スローモーションに飛ばされる俺、床に落ちた頃には
鼻血が出ていた。

「なんだ、なんだ」

大竹さんが騒いでいる。その時スタッフから収録はじまりまーすの声。

「………発情してんじゃねぇよ。」

有吉にそう言い残され、みんなは俺を凝視してスタジオへ。
助けてくれたのはスタッフだけでした…………。


…………あーあ、嫌われちった。