【三次元】運命の人が男と女とは限らない【ナマモノ注意!!】

作者/ 枝豆豆腐

〝自信家でドSな彼がいるんだが、彼は本当は頑張り屋かもしれない〟-3-    視点 小林


稽古場に着くと、普通にスタッフさんたちが
俺を扱ってくれている。

………いやいや。仮にも俺はお姫様役で来てるんだぞ

なんかツッコミを入れてくれよ。

そんな俺の切なる願いは通じることなく
昨日のいざこざで頬を赤く腫らした設楽が駆け寄ってきた。

「大丈夫。俺がみんなに口裏合わせといた」
「口裏合わせたって何?」
「えっ、なんで小林がお姫様役やるのかってこと」
「なんて言ったの?」
「小林は俺の恋人だからさって言ったんだ」

俺はすぐさま設楽を殴った。
いや、殴らずにはいられなかったのかもしれない
バカだなぁ………バカの次元を越えている。
本当に設楽は頭がいいのか、バカなのかが分からないやつだ。

だから苦手な分野だ こんなにも手を焼かなくてはいけない。

………でも。なんか嬉しかったから

「いてっ!!!………最近の小林は無駄に暴行を振るうよね」
「その一発で許すんだから、有難く思えバカ」

それ以上何も言わずに、設楽に付き添ってみた。

「本当に来てくれたんですね」
「頑張りましょうね、小林さん」

役者さんたちは優しく応援をしてくれた。
最初は不安もあったけどみんな良い人たちである。
演出家の人は俺が初めて女性役をやるからといって
女性口調とかしぐさとかを一から教えてもらった。

上手くいけば、みんなが褒めてくれる。

断らなくてよかったなぁと少し思ったり

「小林、オカマみたいだな(笑)」

…………ならなかったり。




そうこうしてる間に時間はあっという間に過ぎ。
明日はとうとう本番当日
設楽はまた俺の家に来て、ソファの上でゴロゴロしながら
台本を読んでいた。

「チケット完売だってね」
「そりゃあそうだ。ファンからしたら小林の女装なんてレア中のレア」
「設楽、お前の王子役もレアなんじゃないの?」
「………とりあえず。俺らの力ってことだな」

ニコっと笑って設楽は言う。

思わず俺も笑ってしまった。

「小林、ちょっと俺に付き合ってくれない?」
「何?」
「この台詞言い慣れないから、お前で練習するわ」
「ふーん。いいよ分かった(俺も言われ慣れてないし………)」

すると設楽は立ってと俺に言った。設楽に従って立つと
設楽はしゃがんで、跪くと、俺の右手を掴み手の甲にキスをした。
それだけど顔中が熱くて仕方ない。

「…嗚呼、なんて美しいんだ。
ミルクのように白い肌。
闇のように漆黒な黒い髪。
そして青空のように澄んでいる瞳。
私は貴方に囚われてしまったようだ。
ぜひ、私の妃として一生一緒に歩いてほしい」

いつもと違う真剣な表情で設楽はいう。
その顔は本当にかっこよくて、声も甘くて、
何より言い慣れてないないせいか顔が真っ赤になっている。

この俺が台詞が飛びそうなほどだ。

でも、設楽だって真面目にやっているんだから
台詞を言わないと。

「あぁ、王子さま。それは出来ません。
貴方には私ではない大切な婚約者がいらっs「ぐ~~~~」」
「……ごめん小林、ちょっと腹へってて……………」

……………ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

声にならない声を上げた。

「なんでお前はいいときに………(怒)」
「ごめん、ごめん」
「別にいいよ………お腹すいたなら、このクッキーあげるよ」
「えっ?………いいよ!!夕飯食ったばっかだし」
「そう。ならいいけど」

この時、なんで俺は気付かなかったのかを
今改めて後悔している。

でも少しは異変に気付いていたのかも

………いや、気付いてないな。



<設楽視点>

当日。舞台の客席は満員だった。
やはり俺らの力は計り知れないことをしみじみと実感しつつ
小林のお着替えタイムを待っていた。

俺は後半部分だから、まだ着替えなくてもいいと言われたので
小林の着替えを見に行ったら
案の定、何見に来てんだよっ!!と怒られた。

そして外に出されて、今に至るのである

正直言って、俺らは特に告白もしてないのに恋人感が出ている。
一応小林に俺は惚れていると言ったが、特に何もない。
やはりちゃんと気持ち伝えないとなぁ………

小林が俺のことを大好きと知った今

勝利は確実にそこにある。

この舞台が終わった帰りにでも、告白しよ。うん、絶対に。

「設楽!!」

おっ。とうとう着替えが終わったのかと思い振り向いた。

「………………」
「どう?つーかなんで黙ってんの?」

予想以上に良すぎて、何も言えない自分がいた。

黒髪でストレート。化粧もあんまりしてないのに白い肌。
ルージュが塗られた唇はやけにエロくて、
青のパステルカラーのドレスが清楚で。

世界で一番 お姫様みたいだなぁと思った。

「……………完璧すぎる。」

そう言うと小林は絶対に顔が赤くして、

「嘘つけ、………でも嬉しい。ありがとう」

微笑んで言う。

「………………完璧すぎて……俺、勃っちゃった」

冗談なのに頭を叩かれた。

「変態が。自分の出番までにちゃんと着替えとけよ」

小林は俺にそう言って、舞台に出て行った。
客席からは歓喜の悲鳴が上がっている。

かわいーとか
キレイーだとか。

すると小林は客席の方を向いて

「そんなこと知ってるわ」

ドヤ顔で言った。盛り上がる客席。
流石、長年舞台でアドリブかましてる奴だな。

舞台の端でずっと小林を見ていた。

時間が過ぎるのを忘れて見ていると、スタッフさんに呼ばれた。
早く着替えてくださいと言われ、はいと返事をすると
せっせと着替えてスタンバイする。

………小林。待っててね

後でかっこよく告白するから。

そう胸に誓い、舞台を出て行った。


<小林視点>

あの二人して慣れていなかったシーンもクリアして、
いよいよラストスパート。
ちょっとした設楽の異変に気付いた。

「なぁ、設楽。お前途中で少しだけ足フラっとしたなかった?」
「えっ?してないけど」
「………なら別にいいけどさ」
「小林さん、次出番なんでスタンバイお願いします」

スタッフさんにそう言われ、スタンバイして、舞台に出た。
このシーンは婚約者と別れた王子が俺を迎えにいくシーン。。。
最後の最後だ。これで終わり。

そろそろ設楽が出る時間だ

チラッと舞台袖を見ると、設楽がクラッとした。

あれっ?

「姫、あんなところに王子が…………!!」

台詞が言われ、設楽が舞台に出てきた。
フラフラとしながら三歩ぐらい歩いたとき、突然バタンと倒れた。

静まる舞台と客席。

俺は役とかどーでもよくなって、設楽にかけよっていた。

「おいっ設楽!!!設楽ったら!!!!!!」

設楽は目を閉じた。


<設楽視点>

あれ…………全然動けない。。。
………ん?
なんかフワフワするな。

もしかして、地面に足ついてない。

ってことは………お姫様抱っこ!?

目ほ開けると、そこにはお姫様抱っことはほど遠い

「…………なぜ米俵抱き!!!!」
「おっ気がついたか?」

俺はお姫様姿の小林の米俵抱きをされていた。
どうやら、俺は貧血で倒れて仮眠室に運ばれる途中だったらしい。

「なんだよ貧血って。最近飯食ってなかったんだろ?」
「……………実はダイエットしてた」

不摂生のせいでお腹がぽっこりと出てしまい
それを日村さんにイジられた。

それが嫌で嫌で仕方なくて、運動は苦手だから
食べないダイエットをしていた結果…………………こうなった。。。