【三次元】運命の人が男と女とは限らない【ナマモノ注意!!】
作者/ 枝豆豆腐

〝初恋〟-2- ※学パロ 視点 小林
後でごめんってメールしておこう。
だって設楽は電話が苦手だと言っていたから
食べかけのアイスを一気に食べた、ズキズキと頭が痛い。
辛い。
でもこんなもの全然軽く感じる
設楽はもう俺のことなんて 好きじゃない
つーか、好きにはなれない。
でも。友達のままでいさせてほしい。
これ以上遠くに行かないで、見てるだけでかまわない。
………なのにあんな喧嘩売る態度とっちゃったなぁ。
『統』って時々名前で呼ばないから。
隣り歩いたりしないから。
用事もないのに電話したりしないから。
苦手って言われたのに、電話してたから嫌いになったのかな?
「小林!!」
遠くから設楽の声。
「……………」
無言で振り向いた。
「俺の好きな、人はな小林「知ってるよ。好きな人居るなら協力する」
微笑んで言った。すると設楽はなんとも言えない表情をする。
そしていきなり肩を掴まれて、強引に引き寄せられると
キスをされた。そして乱暴に離される。
俺はどんな顔をしていたんだろう?
ただ分かることは、泣いていたかもしれない。
設楽は唖然として俺を見ていた。泣くと思ってなかっただろう?
こんな冗談、許される訳がない。
「………………小林?」
「………なんだそりゃ」
「へっ?だってお前俺のこと好きじゃなかった?」
心臓がピクっと一瞬だけ揺れた。
時間が止まる。思わず眼を見開いてしまった。
オドオドしながら設楽は笑っている。
………自分の真剣な気持ちを嘲笑われたと俺は思った。
すると持っていたアイスの棒を設楽に何故か投げつけた。
「………もう逢わない」
えっ? 自分で言ったのに意味が分からない
「…………もういいよ、なんかシラけた。俺帰る」
何言ってんだよ。もう逢わないなんて言ってんじゃねぇよ。
自分とは裏腹に思考は動く。気付けば設楽を通り抜けて帰っていた。
友達でさえいられなくなった。
………いいんだ。これで未練が切れれば
「………あのアイス、当たりだったのに。」
夕陽の下、一人で家に帰っていった。
あれからというと、まったく設楽を見なくなった。
嬉しいのは嬉しいんだけど時々寂しくて、キレイな景色とかを
見つけると設楽に見せたくなってすぐに写真を撮る癖がまだ今も
消えてないことを知った。仕方なく文を書かずに設楽に送信した。
なんとなーく満足している自分を取り払い、
教室でのんびりと読書を楽しんでいた。最近設楽は姿を去ったが
その代わり今までになかった噂話を聞くようになった。
『知ってる?最近設楽くんって喧嘩ばっかしてるらしいよ』
『あぁ知ってる、独りで喧嘩ばかりしてるから顔とか痣と傷だらけ』
『マジで!?アイツって安い喧嘩は買わないって有名だったじゃん』
『キレイな顔だったけど、今は絆創膏だらけでしょ~~~』
『顔が好きだったのにぃ。なんか最悪』
『でも。まだ喧嘩に負けたことはないらしいぜ』
『知ってるか!?アイツここの周りの喧嘩が強い強豪の私立高校を何個も潰してるんだって。
次は日本一強い不良が集うあの高校だってよ』
風の噂が耳に入ってくる。
鬱陶しい。でもやはり友達として心配になる。
設楽は今どこかの安い不良と喧嘩をしているのかなぁ。
俺が好きでタイプだったキレイな顔に痣とか傷をつくって、
確かに設楽は喧嘩をすることがあった。けどそれは安い喧嘩じゃ
なくて、価値のある喧嘩をしていたと思う。
小さい頃はよく助けてもらった。
無傷で敵を倒してしまう設楽に惚れていた。
もしかしたら、その時から設楽のことが大好きだったのかもしれない。
ガラッ!!!!!!! ビシャツ!!!!!!!!
入り口のドアが勢いよく開いたと思ったら、すぐに閉まった。
不意に視線をずらしてみると、そこには顔に痣と切り傷だらけで
絆創膏を乱雑に貼った設楽が居た。ドスっと自分の席に座る。。。
切れた口元、白い肌も傷口だらけ。
クラスは沈黙に包まれる。それが癪に障ったのか、
机を足で蹴り飛ばす。きゃあああと悲鳴を上げる女子。
俺も少しだけビクッとしてしまった。そしておでこの小さい古傷が
ズキズキと痛む。
「しょーもないやつらだな。おい小林」
設楽に呼ばれた。無視する。
何回も呼ばれると思ってたら、いきなり腕を掴まれてひっぱられる
いたっと小さく呟くと気付けば教室を飛び出していた。
廊下にいる生徒たちが俺らを見てくる。怖い、すごく怖かった。
誰もいない渡り廊下。
俺は力を振り絞って腕を振り解いた。設楽はゆっくりと振り向く
「…………いたいよ。」
「俺って凄くない?今日ねぇ最強の不良が集う私立を倒しちゃった。」
設楽からしたらそいつらなんて弱いもんだろう。
「そんな安い喧嘩、恥ずかしいと思わないのか?
…………しかも急にどうしたの?なんか別人になっちやったね」
「好きな人出来たからかな」
イタイ。イタイ。心が軋む
どんな人なんだろう?
喧嘩が強い人が好きなのかな?その人は
「…………それで俺になんの用?」
「お前さぁ、俺のこと好きだったじゃん?だからヤろうよと思ってな。」
「別に俺はお前のことなんて好きじゃない。なんの勘違いをして……」
突然の突然。設楽に押し飛ばされた。壁に叩きつけられる
痛すぎて気を抜いていると、押さえつけられる。真正面には
設楽の顔がある。近くから見れば見るほど痛々しい傷跡たちだ。。。
「本当に嫌なら力ずくで抵抗すれば?」
「………………………」
「小林が本気で抵抗したら、どうなるんだろう?」
「俺は設楽に付き合うほど暇じゃないんだよね。もう茶番はいいかな?」
イラっとした顔した。そして設楽はガッと前髪を引っ張った。
「ざけんなッ、調子こいてんじゃねぇぞ」
「イタタ……………」
「…………はっ」
いままでは余裕のある顔をしていたのに、いきなり顔色が変わる。
すると引っ張っていた手の力を緩めて放した。
「……………ワリ」
「………ああ、何?もしかしてこれ?」
そう言って俺は前髪を上げて小さい古傷を見せた。
抑えていた手も放してしまった。設楽は気まずそうにしている。
この傷はまだ俺と設楽が小学生の頃
貧弱な俺はよくいじめられていて、いつも設楽に助けられていた。
だけどある日、一度だけ設楽は喧嘩に負けたことがある。
負けた訳ではないんだけど、まだ倒していない敵チームを設楽が
倒していたら、俺は敵チームの一人に殴られて吹っ飛ばされ
岩に激突。それを設楽は直撃していて、敵チームも逃げちゃって。
設楽は血の気がサーッと冷めすぎて、その場で立ち竦んでた。
その日から設楽はこの傷跡を見ると停止してしまうようになった。
だからなるべく前髪を伸ばして、傷を見えなくした。
初めて設楽が喧嘩に負けた記憶を打ち消すために
俺に傷を負わせてしまった罪悪感を消すために

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